防犯センサ
【課題】
距離情報と大きさ情報とを同時に取得できて、検知精度を向上させると共に情報処理を容易に行うことができ、かつセンサの小型化が図れてコスト的に有利な防犯センサを提供する。
【解決手段】
警戒エリア内に存在する物体までの距離と該物体の大きさとを同時に測定可能な距離画像センサと、該距離画像センサで得られた距離画像の距離情報と大きさ情報とに基づき、物体が人体より大きいか人体より小さいかを区別して侵入者か否かを判定する判定手段と、を備える。距離画像センサは、投光手段から投光された光の反射光を受光手段で受光することによって得られた距離画像の全画素について距離測定を行い、また、背景光を除去可能なCMOS撮像素子によって形成される。
距離情報と大きさ情報とを同時に取得できて、検知精度を向上させると共に情報処理を容易に行うことができ、かつセンサの小型化が図れてコスト的に有利な防犯センサを提供する。
【解決手段】
警戒エリア内に存在する物体までの距離と該物体の大きさとを同時に測定可能な距離画像センサと、該距離画像センサで得られた距離画像の距離情報と大きさ情報とに基づき、物体が人体より大きいか人体より小さいかを区別して侵入者か否かを判定する判定手段と、を備える。距離画像センサは、投光手段から投光された光の反射光を受光手段で受光することによって得られた距離画像の全画素について距離測定を行い、また、背景光を除去可能なCMOS撮像素子によって形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、距離撮像素子により撮影した距離画像の距離情報と大きさ情報とに基づいて、侵入者等を検知することが可能な防犯センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の防犯センサとしては、例えば特許文献1に開示されている。この防犯センサ(侵入監視装置)は、監視領域の光学画像を撮影する撮像手段と、監視領域に向かう複数の測距方向それぞれについて順次対象物までの距離を測定する測距手段と、侵入者等を検知する侵入検知手段とを備え、侵入検知手段により光学画像の変化領域と距離変化を生じた測距ポイントとの相関を考慮して、侵入者の判定を行うようにしたものである。
【特許文献1】特開2002−208073号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような防犯センサにおいては、撮像手段で得られた光学情報と測距手段により測定された複数ポイントの距離情報との相関に基づいて侵入者を判定する方式であるため、測距ポイントを外れた侵入物等の場合にその判定(検知)を高精度に行うことが困難な場合があると共に、光学情報と複数ポイントの距離情報とを位置的に対応させる必要があったり、撮像手段と測距手段との間の位置ズレ等を補正する必要があり、光学情報と距離情報に基づいて侵入者を判定するための情報処理のプロセスが複雑化し易い。また、撮像手段と測距手段が別体で構成されて配置されるため、センサ自体が大型化して、例えば設置の汎用性やコスト面でも劣ることになる。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、距離情報と大きさ情報とを同時に取得できて、検知精度を向上させると共に情報処理を容易に行うことができ、かつセンサの小型化が図れてコスト的に有利な防犯センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を達成すべく、本発明のうち請求項1に記載の発明は、警戒エリア内に存在する物体までの距離と該物体の大きさとを同時に測定可能な距離画像センサと、該距離画像センサで得られた距離画像の距離情報と大きさ情報とに基づき、物体が人体より大きいか人体より小さいかを区別して侵入者か否かを判定する判定手段と、を備えることを特徴とする。
【0006】
そして、前記距離画像センサは、請求項2に記載の発明のように、投光手段から投光された光の反射光を受光手段で受光することによって得られた距離画像の全画素について距離測定を行うことが好ましい。また、前記距離画像センサは、請求項3に記載の発明のように、近赤外波領域に感度のある撮像素子を用いたり、請求項4に記載の発明のように、近赤外波領域に感度のある撮像素子を用いると共に、投光手段として近赤外波領域に波長を持つ投光素子を用いることが好ましい。さらに、前記距離画像センサは、請求項5に記載の発明のように、背景光を除去可能なCMOS撮像素子によって形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明のうち請求項1に記載の発明によれば、距離画像センサで得られた警戒エリア内に存在する物体の距離画像の距離情報と大きさ情報とに基づき、判定手段により物体が人体より大きいか小さいかを区別して侵入者か否かを判定するため、一つの距離画像センサで警戒エリア内の物体に関する距離情報と大きさ情報とを同時に取得できて、物体の判定を高精度に行うことができると共に、例えば両情報の補正が不要になる等、情報処理を容易かつ効率的に行うことができ、かつセンサの小型化を図れてコスト的に有利な防犯センサを提供することができる。
【0008】
また、請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、距離画像センサが距離画像の全画素について距離測定を行うため、物体までの距離を正確に測定できて、物体の判定を一層高精度に行うことができる。
【0009】
また、請求項3に記載の発明によれば、請求項1または2に記載の発明の効果に加え、距離画像センサが近赤外波領域に感度のある撮像素子を用いるため、昼夜に係わらず警戒エリアの距離画像を得ることができて、警戒エリアへの侵入者の検知を精度良く行うことができる。
【0010】
また、請求項4に記載の発明によれば、請求項1ないし3に記載の発明の効果に加え、距離画像センサが、近赤外波領域に感度のある撮像素子を用いると共に投光手段として近赤外波領域に波長を持つ近赤外LED等の投光素子を用いるため、昼夜に係わらず得られた距離画像で距離や大きさを測定できて、警戒エリアへの侵入者の検知を一層精度良く行うことができる。
【0011】
さらに、請求項5に記載の発明によれば、請求項1ないし4に記載の発明の効果に加え、距離画像センサが背景光を除去可能なCMOS撮像素子によって形成されているため、省電力化に優れた素子の使用が可能になると共に、集積回路に組み込んで小型化等を図ることができて、コスト的に一層有利な防犯センサを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1〜図8は、本発明に係わる防犯センサの一実施形態を示し、図1がその基本構成を示すブロック図、図2が距離画像センサの一例を示すブロック図、図3〜図5が設置状態の一例を示す模式図、図6〜図8がその動作を示すフローチャートである。
【0013】
図1に示すように、本発明に係わる防犯センサ1は、距離画像センサとしてのCMOS撮像素子2と、このCMOS撮像素子2で得られた画像に基づいて物体を判定する距離大きさ判定部3(以下、単に判定部3という)と、該判定部3で得られた情報を出力する出力部4等で構成されている。また、CMOS撮像素子2には、投光手段としての近赤外LED5が接続されると共に、近赤外LED5による反射光を集光するためのレンズ6等が接続されている。
【0014】
前記CMOS撮像素子2は、例えば図2に示すように、フォトダイオード7a、光波同期電荷電圧蓄積部7b及びバッファ7c等で形成された多数の画素回路7と、各光波同期電荷電圧蓄積部7bに接続されたタイミング制御回路8と、水平シフトレスジスタ9及び垂直走査回路(垂直レジスタ)10と、出力バッファ11等を備え、これらが半導体基板上にMOS構造によって構築されている。
【0015】
そして、このCMOS撮像素子2は、フォトダイオード7aからの電荷を近赤外LED5からの光の継続動作と同期させて交互に電荷転送して蓄積を行い、蓄積電荷の配分比から物体までの距離を求めると共に、近赤外LED5による反射光が存在しない期間に、背景光による電荷を転送して、背景光除去のための電荷蓄積を行うようになっている。
【0016】
また、このCMOS撮像素子2は、前記画素回路7として近赤外波領域に感度のある数百〜数万画素を有し、1画素毎に距離測定を行い1画素毎に距離情報を出力可能、すなわち全画素同時に距離測定が可能に構成されている。この時、画素数は多ければ多い程、物体の大きさに対する精度は向上するが、物体を撮像した際に人体の大きさか小動物の大きさかを区別できる程度の画素数(例えば1画素に割り当てられる警戒エリアの大きさが5cm角程度)であれば良い。
【0017】
また、前記近赤外LED5は、複数個配置されるかあるいはこれらと投光レンズ等によって、警戒エリア13(図3及び図4参照)内に近赤外光を投光するように設定されている。この時、近赤外LED5から変調光を投光することにより、投光開始タイミングと受光開始タイミングが前述したタイミング制御回路8(もしくはCPU等の外部デバイスに設けたタイミング制御回路)によって制御されるようになっている。
【0018】
このように構成されたCMOS撮像素子2(防犯センサ1)は、例えば図3及び図4に示すように、床面12上の所定高さ位置の壁面等に水平方向に向けて設置されて、複数個の近赤外LED5あるいはこれらと投光レンズ等により、図の点線で示す面状の警戒エリア13内の全域に投光されるようになっている。ここで、CMOS撮像素子2を水平方向に設置した場合の、防犯センサ1による侵入者と2種類の小動物の判定方法の一例を、図3〜図5に示す模式図と図6に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0019】
先ず、図6に示すように、警戒エリア13内に移動物体がない状態で防犯センサ1に電源が供給されると、該防犯センサ1の検知(監視)動作が開始(S101)されて、近赤外LED5による反射光をCMOS撮像素子2で撮像することにより得られた撮像画像(距離画像という)が取得(S102)され、この距離画像に基づいて判定部3で移動物体が有りか否かが判断(S103)される。この判断S103は、後述するようにして記憶された基準画像と今回測定した距離画像とを比較し、距離画像の各画素の距離情報が基準画像の距離情報に対して変化した画素がある場合に移動物体が「有り」と判断され、距離画像の全ての画素の距離情報に変化がない場合に移動物体が「無し」と判断される。
【0020】
そして、この判断S103で「NO」の場合、すなわち移動物体が無い場合は、撮像した距離画像が前記基準画像として記憶(S104)され、ステップS102に戻る。また、判断S103で「YES」の場合、すなわち移動物体が有る場合は、距離情報が変化した画素数に基づいて、移動物体が人体よりも大きいか否かが判断(S105)される。この判断S105は、距離画像に基づく画素数(大きさ情報)とその各画素の距離値及び基準画像からの距離差等によって、例えば次のようにして行われる。
【0021】
すなわち、警戒エリア13内に図3及び図4に示すように、侵入者14(人体)、鼠等の小動物15、鳥等の小動物16が存在した場合、CMOS撮像素子2で正面側から撮像される侵入者14や小動物15、16の画像は、図5に示す形状となる。そして、図3〜図5に示す位置関係において、侵入者14と小動物15は、その距離が共に遠いものの大きさを示す画素数が侵入者14は多く小動物15は少なくなり、この大きさの違いによって侵入者14と小動物15が区別される。また、侵入者14と小動物16の場合は、距離において侵入者14までが遠く小動物16までが近くなり、大きさにおいて侵入者14が大きく小動物16が小さくなって、距離と大きさの両方の違いによって侵入者14と小動物16とが区別される。
【0022】
このように、距離画像によって、遠くて小さいものあるいは大きくても近いと判定したものが小動物15、16として判断され、この時、侵入者14や小動物15、16の大きさの判定は、距離変化があった画素のうち連続する画像数を計数することで精度良く行われるようになっている。また、侵入者14の判断は、侵入者14がついたて等を持ちながら侵入したり、車等に乗って侵入する場合も考えられることから、侵入者14の大きさの上限については特に規定しないようになっており、侵入者14の大きさの下限も小動物15、16の大きさとラップしない値に設定されている。
【0023】
そして、図6の判断S105で「NO」の場合、すなわち移動物体が人体よりも小さくて小動物15もしくは小動物16と判断した場合は、ステップS102に戻り、該ステップS102以降を繰り返す。また、判断S105で「YES」の場合、すなわち移動物体が人体(侵入者14)であると判断した場合は、出力部4から所定の警報を発する発報(S106)を行う。この時の発報は、一般的な警報音であっても良いし、侵入者14に対して威嚇効果のあるもの、あるいは遠隔地にいる警備員に知らせる効果のあるもの等、適宜の警報手段を採用することができる。
【0024】
このステップS106で発報したら、例えばこの状態を記憶させてステップS102に戻り該ステップS102以降を繰り返すか、あるいは発報状態を維持した状態で検知動作を停止させる。これにより、CMOS撮像素子2で撮像された距離画像に基づく距離情報と大きさ情報とにより、侵入者14と小動物15、16が区別されて、侵入者14と判定された場合にのみ発報されることになる。
【0025】
なお、以上のフローチャートにおいては、警戒エリア13内に移動物体が無い状態を基準画像として設定したが、例えば、基準画像を図7及び図8に示すよう設定することもできる。以下、図6と同一ステップには同一符号を付して説明する。先ず、図7に示すフローチャートの場合は、ステップS102で取得した距離画像に基づいて移動物体が有りか否かが判断(S103)され、移動物体が無しの場合、すなわち判断S103で「NO」の場合は、取得した距離画像が基準画像として記憶(S104)されると共に、判断S103で移動物体が有りその大きさが人体より小さい場合、すなわち判断S105で「NO」の場合も、取得した距離画像が基準画像として記憶(S104)される。
【0026】
つまり、このフローチャートの場合は、電源が投入されて検知動作が開始されると、移動物体の有無に係わらず基準画像が設定されることになって、防犯センサ1の動作開始が確実に行われると共に、移動物体が侵入者でない場合もその距離画像が記憶されて比較されることから、移動物体の移動(すなわち侵入者14)を正確に検知できることになる。
【0027】
また、図8に示すフローチャートの場合は、距離画像が取得(S102)されると、先ず基準画像取得要求が有りか否かが判断(S107)され、この判断S107で「YES」の場合、すなわち防犯センサ1の適宜位置に設けた接点入力、音声入力、伝送路(電話回線等)からの信号、ワイヤレスによる信号受信等の要求入力部(図示せず)から基準画像取得要求があった場合は、取得した距離画像が基準画像として記憶(S104)される。そして、判断S107で「NO」の場合に移動物体が有りか否かが判断(S103)され、移動物体が無く判断S103で「NO」の場合にステップS102に移行すると共に、判断S103で「YES」の場合に人体より大きいか否かが判断(S105)されることになる。
【0028】
つまり、このフローチャートの場合は、外部から基準画像の取得要求があつた場合にのみ、基準画像を取得して防犯センサ1が動作可能な状態に設定されることになる。このように、基準画像の設定は、防犯センサ1の動作開始時に自動的に設定したりあるいは外部操作により設定する等、防犯センサ1の設置場所や監視対象物等に応じて適宜のタイミングで設定することができるし、フローチャート自体も基本的に同様の動作が得られる適宜のフローチャートを採用することができる。
【0029】
このように、上記実施形態の防犯センサ1にあっては、CMOS撮像素子2で撮像された警戒エリア13の距離画像の距離情報と大きさ情報とに基づき、判定部3により移動物体が侵入者14か小動物15、16かを判定して、侵入者14の場合に発報するため、一つのCMOS撮像素子2で警戒エリア13内の移動物体に関する距離情報と大きさ情報とを同時に取得できて、例えば距離画像と大きさ情報を別々に取得する場合に必要となる両情報の補正が不要になる等、情報処理を容易かつ効率的に行うことができると共に、侵入者14を高精度に検知することができる。特に、近赤外波領域に感度のあるCMOS撮像素子2によって距離画像の全画素について距離測定を行うため、昼夜に係わらず移動物体までの距離や大きさを正確に測定できて、移動物体としての侵入者14や小動物15、16の区別を一層精度良く判定することができる。
【0030】
また、一つのCMOS撮像素子2を使用することで対応できて、光学画像と距離画像を別々の手段で設ける従来例に比較して、防犯センサ1自体の小型化を図ることができると共に、コスト的に安価に形成することができる。また、CMOS撮像素子2が、近赤外波領域に感度のある撮像素子と投光手段としての近赤外LED5を使用しているため、昼夜に係わらず距離や大きさの測定を一層精度良く行うことができ、これらにより、防犯センサ1の汎用性を向上させて、各種の警戒エリアに好適に設置することが可能となる。
【0031】
さらに、電源が投入された際に、移動物体が検知されない距離画像、あるいは小動物15、16等の人体よりも小さい移動物体が検知された距離画像を、判定部3により基準画像として自動的に設定するようにすれば、基準画像の自動設定が可能となって、防犯センサ1の使い勝手を向上させることができる。また、基準画像を外部操作によって設定するように構成すれば、警戒が必要で侵入者等が存在しない場合の距離画像を基準画像として設定できて、使い勝手と検知動作の信頼性を一層高めることができる等、防犯センサ1の設置場所に最適な基準画像の設定を簡単に行うことが可能となる。
【0032】
また、距離画像センサが背景光を除去可能なCMOS撮像素子2によって形成されているため、省電力化に優れた素子の使用が可能になると共に、その他の情報処理が可能な集積回路等に組み込むことで、CMOS撮像素子2の一層の小型化等を図ることができて、コスト的に一層有利な防犯センサ1を得ることが可能となる。さらにまた、警戒エリア13内の侵入者14や小動物15、16の距離画像によりこれらを判別するため、例えば建物の外周4辺のみを警戒し、外の道路と建物に近い敷地内は警戒したくない場合のように、警戒したいエリアと警戒したくないエリアとが接近している場合に、従来のようにマスキング等の処理を施す必要がなくなり、防犯センサ1の設置コストの低減化が図れる等、コスト的に一層有利な防犯センサ1を提供することが可能となる。
【0033】
ところで、以上の説明においては、CMOS撮像素子2を水平方向に向けて設置したが、本発明に係わる防犯センサ1はこの例に限定されず、例えば図9及び図10に示すように、CMOS撮像素子2を下方向に向けて設置することもできる。以下、この設置形態を前記設置形態と同一部位には同一符号を付して説明する。この場合のCMOS撮像素子2(防犯センサ1)は、例えば天井の所定位置に設置されて、近赤外LED5から床面12に向けて投光することにより、図の点線で示す面状の警戒エリア13が設定されるようになっている。
【0034】
そして、この防犯センサ1においても、CMOS撮像素子2で撮像される侵入者14や小動物15、16の形状は図10に示すようになり、この形状に基づく大きさと距離とにより、水平方向に設置した場合と同様にして、警戒エリア13内の侵入者14と小動物15、16を区別することができる。この時、侵入者14と小動物15は、距離において侵入者14が近く小動物15が遠くなり、大きさにおいて侵入者14は大きく小動物15は小さくなって、距離と大きさの両方の違いにより区別され、また、侵入者14と小動物16は、距離において侵入者14が遠く小動物16が近くなり、大きさにおいて略同じとなって、距離の違いによって区別される。
【0035】
また、この例の場合には、侵入者14や小動物15、16を上面側から撮像するため、例えばやや大きめの鼠等の小動物17が図に示すように机18上に存在する場合、その距離画像の違いが不明瞭になる場合があり、このような場合には、図11に示すフローチャートによって、侵入者14と小動物17を区別することができる。すなわち、判断S103で移動物体が有りと判断されると、移動物体の大きさが、人体より小さいか、大きいかあるいは略同一かが判断(S108)され、この判断S108で移動物体の大きさが人体と略同一の場合は、移動量が所定値以上か否かが判断(S109)される。
【0036】
この判断S109は、移動物体の移動前、移動中、移動後の各距離情報の距離差(移動量)を判定部3で算出することにより求められ、この移動量が判定部3に予め記憶されている基準値と比較されて、例えば移動量が基準値(所定値)未満で移動が比較的遅い場合は、移動物体が侵入者14(人体)であると判定して発報(S106)する。一方、移動量が基準値より大きい場合は、移動物体が素早く移動する小動物15、16等であり侵入者14ではないと判定して判断S109で「YES」となり、ステップS102に移行して該ステップS102以降を繰り返す。なお、判断S108で「小さい」もしくは「大きい」と判断された場合は、図6の判断S105の「NO」もしくは「YES」と同様に処理される。
【0037】
つまり、この例の場合は、遠くて小さいもの、大きくても近いものが小動物15、16として判定されると共に、大きさが略同一の場合に移動前後と移動中の移動量が大きいものが小動物17として判定されることになる。これにより、上方から撮像される距離画像の移動物体の距離や大きさに所定差が無い場合でも、移動物体の移動量に基づいて侵入者14か小動物17かが明確に区別されることになり、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。なお、図11に示す判定方法は、図6〜図8に示すCMOS撮像素子2を水平方向に向けて設置する場合のフローチャートに組み込むことも勿論可能である。
【0038】
なお、上記実施形態においては、警戒エリア13を面状に形成したが、例えば線状(ラインセンサ)であって良い。この警戒エリア13を線状に形成した場合は、縦方向は人体の高さよりも長く横方向は数cmから数十cmに設定して、侵入者14と小動物15〜17を区別するように構成することができると共に、線状に設定することで投光エリアを狭めることができて、近赤外LED5の数の低減化や消費電流をより小さくすることができる。この線状の警戒エリア13を使用する場合は、CMOS撮像素子2を例えば縦長に構成してその画素数を減らす方法、投光エリアが線状となるように狭めることにより測定エリアを制限する方法、画素数と投光エリアはそのままで線状エリアの情報のみを判定対象とする方法等の適宜の方法を採用することができる。
【0039】
また、上記実施形態においては、判定部3により人体と小動物かを区別したが、例えば警戒エリア13が屋外の場合には、落ち葉等を小動物と同様に侵入者と区別することも勿論可能である。さらに、上記実施形態においては、CMOS撮像素子2を水平方向と下方向に向けて設置したが、例えば斜め方向に向けて設置することも勿論可能であるし、CMOS撮像素子2自体や防犯センサ1の構成、投光手段の構成等も一例であって、例えばCMOS撮像素子2と判定部3を同一半導体基板上に構築したり、投光手段として近赤外波領域以外の光を使用する等、本発明の各発明に係わる要旨を逸脱しない範囲において適宜に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、撮像素子としてCMOS撮像素子を使用した防犯センサに限らず、距離画像が得られる各種の撮像素子を使用した防犯センサにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係わる防犯センサの一実施形態の基本構成を示すブロック図
【図2】同そのCMOS撮像素子のブロック図
【図3】同設置状態の側面の模式図
【図4】同その平面の模式図
【図5】同その正面の模式図
【図6】同動作の一例を示すフローチャート
【図7】同他の動作を示すフローチャート
【図8】同さらに他の動作を示すフローチャート
【図9】同他の設置状態の側面の模式図
【図10】同その平面の模式図
【図11】同その動作の一例を示すフローチャート
【符号の説明】
【0042】
1・・・防犯センサ、2・・・CMOS撮像素子、3・・・距離大きさ判定部、4・・・出力部、5・・・近赤外LED、6・・・レンズ、7・・・画素回路、7a・・・フォトダイオード、7b・・・光波同期電荷電圧蓄積部、7c・・・バッファ、8・・・タイミング制御回路、9・・・水平シフトレジスタ、10・・・垂直走査回路、11・・・出力バッファ、12・・・床面、13・・・警戒エリア、14・・・侵入者、15〜17・・・小動物、18・・・机。
【技術分野】
【0001】
本発明は、距離撮像素子により撮影した距離画像の距離情報と大きさ情報とに基づいて、侵入者等を検知することが可能な防犯センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の防犯センサとしては、例えば特許文献1に開示されている。この防犯センサ(侵入監視装置)は、監視領域の光学画像を撮影する撮像手段と、監視領域に向かう複数の測距方向それぞれについて順次対象物までの距離を測定する測距手段と、侵入者等を検知する侵入検知手段とを備え、侵入検知手段により光学画像の変化領域と距離変化を生じた測距ポイントとの相関を考慮して、侵入者の判定を行うようにしたものである。
【特許文献1】特開2002−208073号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような防犯センサにおいては、撮像手段で得られた光学情報と測距手段により測定された複数ポイントの距離情報との相関に基づいて侵入者を判定する方式であるため、測距ポイントを外れた侵入物等の場合にその判定(検知)を高精度に行うことが困難な場合があると共に、光学情報と複数ポイントの距離情報とを位置的に対応させる必要があったり、撮像手段と測距手段との間の位置ズレ等を補正する必要があり、光学情報と距離情報に基づいて侵入者を判定するための情報処理のプロセスが複雑化し易い。また、撮像手段と測距手段が別体で構成されて配置されるため、センサ自体が大型化して、例えば設置の汎用性やコスト面でも劣ることになる。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、距離情報と大きさ情報とを同時に取得できて、検知精度を向上させると共に情報処理を容易に行うことができ、かつセンサの小型化が図れてコスト的に有利な防犯センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を達成すべく、本発明のうち請求項1に記載の発明は、警戒エリア内に存在する物体までの距離と該物体の大きさとを同時に測定可能な距離画像センサと、該距離画像センサで得られた距離画像の距離情報と大きさ情報とに基づき、物体が人体より大きいか人体より小さいかを区別して侵入者か否かを判定する判定手段と、を備えることを特徴とする。
【0006】
そして、前記距離画像センサは、請求項2に記載の発明のように、投光手段から投光された光の反射光を受光手段で受光することによって得られた距離画像の全画素について距離測定を行うことが好ましい。また、前記距離画像センサは、請求項3に記載の発明のように、近赤外波領域に感度のある撮像素子を用いたり、請求項4に記載の発明のように、近赤外波領域に感度のある撮像素子を用いると共に、投光手段として近赤外波領域に波長を持つ投光素子を用いることが好ましい。さらに、前記距離画像センサは、請求項5に記載の発明のように、背景光を除去可能なCMOS撮像素子によって形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明のうち請求項1に記載の発明によれば、距離画像センサで得られた警戒エリア内に存在する物体の距離画像の距離情報と大きさ情報とに基づき、判定手段により物体が人体より大きいか小さいかを区別して侵入者か否かを判定するため、一つの距離画像センサで警戒エリア内の物体に関する距離情報と大きさ情報とを同時に取得できて、物体の判定を高精度に行うことができると共に、例えば両情報の補正が不要になる等、情報処理を容易かつ効率的に行うことができ、かつセンサの小型化を図れてコスト的に有利な防犯センサを提供することができる。
【0008】
また、請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、距離画像センサが距離画像の全画素について距離測定を行うため、物体までの距離を正確に測定できて、物体の判定を一層高精度に行うことができる。
【0009】
また、請求項3に記載の発明によれば、請求項1または2に記載の発明の効果に加え、距離画像センサが近赤外波領域に感度のある撮像素子を用いるため、昼夜に係わらず警戒エリアの距離画像を得ることができて、警戒エリアへの侵入者の検知を精度良く行うことができる。
【0010】
また、請求項4に記載の発明によれば、請求項1ないし3に記載の発明の効果に加え、距離画像センサが、近赤外波領域に感度のある撮像素子を用いると共に投光手段として近赤外波領域に波長を持つ近赤外LED等の投光素子を用いるため、昼夜に係わらず得られた距離画像で距離や大きさを測定できて、警戒エリアへの侵入者の検知を一層精度良く行うことができる。
【0011】
さらに、請求項5に記載の発明によれば、請求項1ないし4に記載の発明の効果に加え、距離画像センサが背景光を除去可能なCMOS撮像素子によって形成されているため、省電力化に優れた素子の使用が可能になると共に、集積回路に組み込んで小型化等を図ることができて、コスト的に一層有利な防犯センサを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1〜図8は、本発明に係わる防犯センサの一実施形態を示し、図1がその基本構成を示すブロック図、図2が距離画像センサの一例を示すブロック図、図3〜図5が設置状態の一例を示す模式図、図6〜図8がその動作を示すフローチャートである。
【0013】
図1に示すように、本発明に係わる防犯センサ1は、距離画像センサとしてのCMOS撮像素子2と、このCMOS撮像素子2で得られた画像に基づいて物体を判定する距離大きさ判定部3(以下、単に判定部3という)と、該判定部3で得られた情報を出力する出力部4等で構成されている。また、CMOS撮像素子2には、投光手段としての近赤外LED5が接続されると共に、近赤外LED5による反射光を集光するためのレンズ6等が接続されている。
【0014】
前記CMOS撮像素子2は、例えば図2に示すように、フォトダイオード7a、光波同期電荷電圧蓄積部7b及びバッファ7c等で形成された多数の画素回路7と、各光波同期電荷電圧蓄積部7bに接続されたタイミング制御回路8と、水平シフトレスジスタ9及び垂直走査回路(垂直レジスタ)10と、出力バッファ11等を備え、これらが半導体基板上にMOS構造によって構築されている。
【0015】
そして、このCMOS撮像素子2は、フォトダイオード7aからの電荷を近赤外LED5からの光の継続動作と同期させて交互に電荷転送して蓄積を行い、蓄積電荷の配分比から物体までの距離を求めると共に、近赤外LED5による反射光が存在しない期間に、背景光による電荷を転送して、背景光除去のための電荷蓄積を行うようになっている。
【0016】
また、このCMOS撮像素子2は、前記画素回路7として近赤外波領域に感度のある数百〜数万画素を有し、1画素毎に距離測定を行い1画素毎に距離情報を出力可能、すなわち全画素同時に距離測定が可能に構成されている。この時、画素数は多ければ多い程、物体の大きさに対する精度は向上するが、物体を撮像した際に人体の大きさか小動物の大きさかを区別できる程度の画素数(例えば1画素に割り当てられる警戒エリアの大きさが5cm角程度)であれば良い。
【0017】
また、前記近赤外LED5は、複数個配置されるかあるいはこれらと投光レンズ等によって、警戒エリア13(図3及び図4参照)内に近赤外光を投光するように設定されている。この時、近赤外LED5から変調光を投光することにより、投光開始タイミングと受光開始タイミングが前述したタイミング制御回路8(もしくはCPU等の外部デバイスに設けたタイミング制御回路)によって制御されるようになっている。
【0018】
このように構成されたCMOS撮像素子2(防犯センサ1)は、例えば図3及び図4に示すように、床面12上の所定高さ位置の壁面等に水平方向に向けて設置されて、複数個の近赤外LED5あるいはこれらと投光レンズ等により、図の点線で示す面状の警戒エリア13内の全域に投光されるようになっている。ここで、CMOS撮像素子2を水平方向に設置した場合の、防犯センサ1による侵入者と2種類の小動物の判定方法の一例を、図3〜図5に示す模式図と図6に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0019】
先ず、図6に示すように、警戒エリア13内に移動物体がない状態で防犯センサ1に電源が供給されると、該防犯センサ1の検知(監視)動作が開始(S101)されて、近赤外LED5による反射光をCMOS撮像素子2で撮像することにより得られた撮像画像(距離画像という)が取得(S102)され、この距離画像に基づいて判定部3で移動物体が有りか否かが判断(S103)される。この判断S103は、後述するようにして記憶された基準画像と今回測定した距離画像とを比較し、距離画像の各画素の距離情報が基準画像の距離情報に対して変化した画素がある場合に移動物体が「有り」と判断され、距離画像の全ての画素の距離情報に変化がない場合に移動物体が「無し」と判断される。
【0020】
そして、この判断S103で「NO」の場合、すなわち移動物体が無い場合は、撮像した距離画像が前記基準画像として記憶(S104)され、ステップS102に戻る。また、判断S103で「YES」の場合、すなわち移動物体が有る場合は、距離情報が変化した画素数に基づいて、移動物体が人体よりも大きいか否かが判断(S105)される。この判断S105は、距離画像に基づく画素数(大きさ情報)とその各画素の距離値及び基準画像からの距離差等によって、例えば次のようにして行われる。
【0021】
すなわち、警戒エリア13内に図3及び図4に示すように、侵入者14(人体)、鼠等の小動物15、鳥等の小動物16が存在した場合、CMOS撮像素子2で正面側から撮像される侵入者14や小動物15、16の画像は、図5に示す形状となる。そして、図3〜図5に示す位置関係において、侵入者14と小動物15は、その距離が共に遠いものの大きさを示す画素数が侵入者14は多く小動物15は少なくなり、この大きさの違いによって侵入者14と小動物15が区別される。また、侵入者14と小動物16の場合は、距離において侵入者14までが遠く小動物16までが近くなり、大きさにおいて侵入者14が大きく小動物16が小さくなって、距離と大きさの両方の違いによって侵入者14と小動物16とが区別される。
【0022】
このように、距離画像によって、遠くて小さいものあるいは大きくても近いと判定したものが小動物15、16として判断され、この時、侵入者14や小動物15、16の大きさの判定は、距離変化があった画素のうち連続する画像数を計数することで精度良く行われるようになっている。また、侵入者14の判断は、侵入者14がついたて等を持ちながら侵入したり、車等に乗って侵入する場合も考えられることから、侵入者14の大きさの上限については特に規定しないようになっており、侵入者14の大きさの下限も小動物15、16の大きさとラップしない値に設定されている。
【0023】
そして、図6の判断S105で「NO」の場合、すなわち移動物体が人体よりも小さくて小動物15もしくは小動物16と判断した場合は、ステップS102に戻り、該ステップS102以降を繰り返す。また、判断S105で「YES」の場合、すなわち移動物体が人体(侵入者14)であると判断した場合は、出力部4から所定の警報を発する発報(S106)を行う。この時の発報は、一般的な警報音であっても良いし、侵入者14に対して威嚇効果のあるもの、あるいは遠隔地にいる警備員に知らせる効果のあるもの等、適宜の警報手段を採用することができる。
【0024】
このステップS106で発報したら、例えばこの状態を記憶させてステップS102に戻り該ステップS102以降を繰り返すか、あるいは発報状態を維持した状態で検知動作を停止させる。これにより、CMOS撮像素子2で撮像された距離画像に基づく距離情報と大きさ情報とにより、侵入者14と小動物15、16が区別されて、侵入者14と判定された場合にのみ発報されることになる。
【0025】
なお、以上のフローチャートにおいては、警戒エリア13内に移動物体が無い状態を基準画像として設定したが、例えば、基準画像を図7及び図8に示すよう設定することもできる。以下、図6と同一ステップには同一符号を付して説明する。先ず、図7に示すフローチャートの場合は、ステップS102で取得した距離画像に基づいて移動物体が有りか否かが判断(S103)され、移動物体が無しの場合、すなわち判断S103で「NO」の場合は、取得した距離画像が基準画像として記憶(S104)されると共に、判断S103で移動物体が有りその大きさが人体より小さい場合、すなわち判断S105で「NO」の場合も、取得した距離画像が基準画像として記憶(S104)される。
【0026】
つまり、このフローチャートの場合は、電源が投入されて検知動作が開始されると、移動物体の有無に係わらず基準画像が設定されることになって、防犯センサ1の動作開始が確実に行われると共に、移動物体が侵入者でない場合もその距離画像が記憶されて比較されることから、移動物体の移動(すなわち侵入者14)を正確に検知できることになる。
【0027】
また、図8に示すフローチャートの場合は、距離画像が取得(S102)されると、先ず基準画像取得要求が有りか否かが判断(S107)され、この判断S107で「YES」の場合、すなわち防犯センサ1の適宜位置に設けた接点入力、音声入力、伝送路(電話回線等)からの信号、ワイヤレスによる信号受信等の要求入力部(図示せず)から基準画像取得要求があった場合は、取得した距離画像が基準画像として記憶(S104)される。そして、判断S107で「NO」の場合に移動物体が有りか否かが判断(S103)され、移動物体が無く判断S103で「NO」の場合にステップS102に移行すると共に、判断S103で「YES」の場合に人体より大きいか否かが判断(S105)されることになる。
【0028】
つまり、このフローチャートの場合は、外部から基準画像の取得要求があつた場合にのみ、基準画像を取得して防犯センサ1が動作可能な状態に設定されることになる。このように、基準画像の設定は、防犯センサ1の動作開始時に自動的に設定したりあるいは外部操作により設定する等、防犯センサ1の設置場所や監視対象物等に応じて適宜のタイミングで設定することができるし、フローチャート自体も基本的に同様の動作が得られる適宜のフローチャートを採用することができる。
【0029】
このように、上記実施形態の防犯センサ1にあっては、CMOS撮像素子2で撮像された警戒エリア13の距離画像の距離情報と大きさ情報とに基づき、判定部3により移動物体が侵入者14か小動物15、16かを判定して、侵入者14の場合に発報するため、一つのCMOS撮像素子2で警戒エリア13内の移動物体に関する距離情報と大きさ情報とを同時に取得できて、例えば距離画像と大きさ情報を別々に取得する場合に必要となる両情報の補正が不要になる等、情報処理を容易かつ効率的に行うことができると共に、侵入者14を高精度に検知することができる。特に、近赤外波領域に感度のあるCMOS撮像素子2によって距離画像の全画素について距離測定を行うため、昼夜に係わらず移動物体までの距離や大きさを正確に測定できて、移動物体としての侵入者14や小動物15、16の区別を一層精度良く判定することができる。
【0030】
また、一つのCMOS撮像素子2を使用することで対応できて、光学画像と距離画像を別々の手段で設ける従来例に比較して、防犯センサ1自体の小型化を図ることができると共に、コスト的に安価に形成することができる。また、CMOS撮像素子2が、近赤外波領域に感度のある撮像素子と投光手段としての近赤外LED5を使用しているため、昼夜に係わらず距離や大きさの測定を一層精度良く行うことができ、これらにより、防犯センサ1の汎用性を向上させて、各種の警戒エリアに好適に設置することが可能となる。
【0031】
さらに、電源が投入された際に、移動物体が検知されない距離画像、あるいは小動物15、16等の人体よりも小さい移動物体が検知された距離画像を、判定部3により基準画像として自動的に設定するようにすれば、基準画像の自動設定が可能となって、防犯センサ1の使い勝手を向上させることができる。また、基準画像を外部操作によって設定するように構成すれば、警戒が必要で侵入者等が存在しない場合の距離画像を基準画像として設定できて、使い勝手と検知動作の信頼性を一層高めることができる等、防犯センサ1の設置場所に最適な基準画像の設定を簡単に行うことが可能となる。
【0032】
また、距離画像センサが背景光を除去可能なCMOS撮像素子2によって形成されているため、省電力化に優れた素子の使用が可能になると共に、その他の情報処理が可能な集積回路等に組み込むことで、CMOS撮像素子2の一層の小型化等を図ることができて、コスト的に一層有利な防犯センサ1を得ることが可能となる。さらにまた、警戒エリア13内の侵入者14や小動物15、16の距離画像によりこれらを判別するため、例えば建物の外周4辺のみを警戒し、外の道路と建物に近い敷地内は警戒したくない場合のように、警戒したいエリアと警戒したくないエリアとが接近している場合に、従来のようにマスキング等の処理を施す必要がなくなり、防犯センサ1の設置コストの低減化が図れる等、コスト的に一層有利な防犯センサ1を提供することが可能となる。
【0033】
ところで、以上の説明においては、CMOS撮像素子2を水平方向に向けて設置したが、本発明に係わる防犯センサ1はこの例に限定されず、例えば図9及び図10に示すように、CMOS撮像素子2を下方向に向けて設置することもできる。以下、この設置形態を前記設置形態と同一部位には同一符号を付して説明する。この場合のCMOS撮像素子2(防犯センサ1)は、例えば天井の所定位置に設置されて、近赤外LED5から床面12に向けて投光することにより、図の点線で示す面状の警戒エリア13が設定されるようになっている。
【0034】
そして、この防犯センサ1においても、CMOS撮像素子2で撮像される侵入者14や小動物15、16の形状は図10に示すようになり、この形状に基づく大きさと距離とにより、水平方向に設置した場合と同様にして、警戒エリア13内の侵入者14と小動物15、16を区別することができる。この時、侵入者14と小動物15は、距離において侵入者14が近く小動物15が遠くなり、大きさにおいて侵入者14は大きく小動物15は小さくなって、距離と大きさの両方の違いにより区別され、また、侵入者14と小動物16は、距離において侵入者14が遠く小動物16が近くなり、大きさにおいて略同じとなって、距離の違いによって区別される。
【0035】
また、この例の場合には、侵入者14や小動物15、16を上面側から撮像するため、例えばやや大きめの鼠等の小動物17が図に示すように机18上に存在する場合、その距離画像の違いが不明瞭になる場合があり、このような場合には、図11に示すフローチャートによって、侵入者14と小動物17を区別することができる。すなわち、判断S103で移動物体が有りと判断されると、移動物体の大きさが、人体より小さいか、大きいかあるいは略同一かが判断(S108)され、この判断S108で移動物体の大きさが人体と略同一の場合は、移動量が所定値以上か否かが判断(S109)される。
【0036】
この判断S109は、移動物体の移動前、移動中、移動後の各距離情報の距離差(移動量)を判定部3で算出することにより求められ、この移動量が判定部3に予め記憶されている基準値と比較されて、例えば移動量が基準値(所定値)未満で移動が比較的遅い場合は、移動物体が侵入者14(人体)であると判定して発報(S106)する。一方、移動量が基準値より大きい場合は、移動物体が素早く移動する小動物15、16等であり侵入者14ではないと判定して判断S109で「YES」となり、ステップS102に移行して該ステップS102以降を繰り返す。なお、判断S108で「小さい」もしくは「大きい」と判断された場合は、図6の判断S105の「NO」もしくは「YES」と同様に処理される。
【0037】
つまり、この例の場合は、遠くて小さいもの、大きくても近いものが小動物15、16として判定されると共に、大きさが略同一の場合に移動前後と移動中の移動量が大きいものが小動物17として判定されることになる。これにより、上方から撮像される距離画像の移動物体の距離や大きさに所定差が無い場合でも、移動物体の移動量に基づいて侵入者14か小動物17かが明確に区別されることになり、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。なお、図11に示す判定方法は、図6〜図8に示すCMOS撮像素子2を水平方向に向けて設置する場合のフローチャートに組み込むことも勿論可能である。
【0038】
なお、上記実施形態においては、警戒エリア13を面状に形成したが、例えば線状(ラインセンサ)であって良い。この警戒エリア13を線状に形成した場合は、縦方向は人体の高さよりも長く横方向は数cmから数十cmに設定して、侵入者14と小動物15〜17を区別するように構成することができると共に、線状に設定することで投光エリアを狭めることができて、近赤外LED5の数の低減化や消費電流をより小さくすることができる。この線状の警戒エリア13を使用する場合は、CMOS撮像素子2を例えば縦長に構成してその画素数を減らす方法、投光エリアが線状となるように狭めることにより測定エリアを制限する方法、画素数と投光エリアはそのままで線状エリアの情報のみを判定対象とする方法等の適宜の方法を採用することができる。
【0039】
また、上記実施形態においては、判定部3により人体と小動物かを区別したが、例えば警戒エリア13が屋外の場合には、落ち葉等を小動物と同様に侵入者と区別することも勿論可能である。さらに、上記実施形態においては、CMOS撮像素子2を水平方向と下方向に向けて設置したが、例えば斜め方向に向けて設置することも勿論可能であるし、CMOS撮像素子2自体や防犯センサ1の構成、投光手段の構成等も一例であって、例えばCMOS撮像素子2と判定部3を同一半導体基板上に構築したり、投光手段として近赤外波領域以外の光を使用する等、本発明の各発明に係わる要旨を逸脱しない範囲において適宜に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、撮像素子としてCMOS撮像素子を使用した防犯センサに限らず、距離画像が得られる各種の撮像素子を使用した防犯センサにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係わる防犯センサの一実施形態の基本構成を示すブロック図
【図2】同そのCMOS撮像素子のブロック図
【図3】同設置状態の側面の模式図
【図4】同その平面の模式図
【図5】同その正面の模式図
【図6】同動作の一例を示すフローチャート
【図7】同他の動作を示すフローチャート
【図8】同さらに他の動作を示すフローチャート
【図9】同他の設置状態の側面の模式図
【図10】同その平面の模式図
【図11】同その動作の一例を示すフローチャート
【符号の説明】
【0042】
1・・・防犯センサ、2・・・CMOS撮像素子、3・・・距離大きさ判定部、4・・・出力部、5・・・近赤外LED、6・・・レンズ、7・・・画素回路、7a・・・フォトダイオード、7b・・・光波同期電荷電圧蓄積部、7c・・・バッファ、8・・・タイミング制御回路、9・・・水平シフトレジスタ、10・・・垂直走査回路、11・・・出力バッファ、12・・・床面、13・・・警戒エリア、14・・・侵入者、15〜17・・・小動物、18・・・机。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
警戒エリア内に存在する物体までの距離と該物体の大きさとを同時に測定可能な距離画像センサと、該距離画像センサで得られた距離画像の距離情報と大きさ情報とに基づき、物体が人体より大きいか人体より小さいかを区別して侵入者か否かを判定する判定手段と、を備えることを特徴とする防犯センサ。
【請求項2】
前記距離画像センサは、投光手段から投光された光の反射光を受光手段で受光することによって得られた距離画像の全画素について距離測定を行うことを特徴とする請求項1に記載の防犯センサ。
【請求項3】
前記距離画像センサは、近赤外波領域に感度のある撮像素子を用いることを特徴とする請求項1または2に記載の防犯センサ。
【請求項4】
前記距離画像センサは、近赤外波領域に感度のある撮像素子を用いると共に、投光手段として近赤外波領域に波長を持つ投光素子を用いることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の防犯センサ。
【請求項5】
前記距離画像センサは、背景光を除去可能なCMOS撮像素子によって形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の防犯センサ。
【請求項1】
警戒エリア内に存在する物体までの距離と該物体の大きさとを同時に測定可能な距離画像センサと、該距離画像センサで得られた距離画像の距離情報と大きさ情報とに基づき、物体が人体より大きいか人体より小さいかを区別して侵入者か否かを判定する判定手段と、を備えることを特徴とする防犯センサ。
【請求項2】
前記距離画像センサは、投光手段から投光された光の反射光を受光手段で受光することによって得られた距離画像の全画素について距離測定を行うことを特徴とする請求項1に記載の防犯センサ。
【請求項3】
前記距離画像センサは、近赤外波領域に感度のある撮像素子を用いることを特徴とする請求項1または2に記載の防犯センサ。
【請求項4】
前記距離画像センサは、近赤外波領域に感度のある撮像素子を用いると共に、投光手段として近赤外波領域に波長を持つ投光素子を用いることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の防犯センサ。
【請求項5】
前記距離画像センサは、背景光を除去可能なCMOS撮像素子によって形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の防犯センサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−323651(P2006−323651A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−146678(P2005−146678)
【出願日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(000101400)アツミ電氣株式会社 (69)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(000101400)アツミ電氣株式会社 (69)
【Fターム(参考)】
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