説明

防眩タイプの車両用インサイドミラー装置

【課題】従来の防眩タイプの車両用インサイドミラー装置では、ミラー(2、2)の反射面の角度調整がスムーズに行われない場合があると言う点である。
【解決手段】ステー2の他端にミラーハウジング3を反射面角度調整機構を介して保持し、このミラーハウジング3に操作レバー4およびミラー5を反射率切替機構を介して保持する。この結果、反射面角度調整機構と反射率切替機構とがそれぞれ独立しているので、ミラーハウジング3を角度調整してミラー5の反射面の角度を調整する際に、ミラーハウジング3の角度調整力が反射面角度調整機構に直接作用して反射率切替機構に作用しないので、ミラー5の反射率が昼間用の反射率または夜間用の反射率に切り替わることがなく、したがって、ミラー5の反射面の角度調整をスムーズに行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車室内に取り付けられ、自車の後方を視認し、かつ、操作レバーの切替操作によりミラーの反射率を切り替えることができる防眩タイプの車両用インサイドミラー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の防眩タイプの車両用インサイドミラー装置は、従来からある(たとえば、特許文献1、特許文献2)。以下、この防眩タイプの車両用インサイドミラー装置について説明する。なお、括弧つきの符号は、特許文献1、特許文献2にそれぞれ対応する。この防眩タイプの車両用インサイドミラー装置は、ミラー(2、2)が固定されているミラーハウジング(1、8)と、前記ミラーハウジング(1、8)に反射率切替機構(12、3)を介して保持されている操作レバー(8´、11)およびブラケット(3´、5)と、一端が車体に固定されかつ他端に反射面角度調整機構(4a、12)を介して前記ブラケット(3´、5)が保持されているステー(4、4)とを備えるものである。
【0003】
以下、この防眩タイプの車両用インサイドミラー装置の作用について説明する。操作レバー(8´、11)を切替操作すると、反射率切替機構(12、3)を介して、ミラーハウジング(1、8)がブラケット(3´、5)に対して切り替わって、ミラーハウジング(1、8)に固定されているミラー(2、2)の反射率が昼間用の反射率または夜間用の反射率に切り替わる。また、ミラーハウジング(1、8)を角度調整すると、反射率切替機構(12、3)およびブラケット(3´、5)および反射面角度調整機構(4a、12)を介して、ミラーハウジング(1、8)がステー(4、4)に対して回動傾動して、ミラーハウジング(1、8)に固定されているミラー(2、2)の反射面の角度がドライバーの視線に合わせて調整される。
【0004】
ところが、前記の従来の防眩タイプの車両用インサイドミラー装置は、ミラー(2、2)を固定するミラーハウジング(1、8)が反射率切替機構(12、3)およびブラケット(3´、5)および反射面角度調整機構(4a、12)を介してステー(4、4)の他端に保持されているものである。このために、前記の従来の防眩タイプの車両用インサイドミラー装置は、ミラーハウジング(1、8)を角度調整してミラー(2、2)の反射面の角度を調整する際に、ミラーハウジング(1、8)の角度調整力が反射率切替機構(12、3)に作用して、ミラー(2、2)の反射率が昼間用の反射率または夜間用の反射率に切り替わって、ミラー(2、2)の反射面の角度調整がスムーズに行われない場合がある。
【0005】
【特許文献1】実開平6−44642号公報
【特許文献2】特開2003−191791号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明が解決しようとする問題点は、前記の従来の防眩タイプの車両用インサイドミラー装置では、ミラー(2、2)の反射面の角度調整がスムーズに行われない場合があると言う点である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、ステーの他端にミラーハウジングを反射面角度調整機構を介して保持し、このミラーハウジングに操作レバーおよびミラーを反射率切替機構を介して保持する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明の防眩タイプの車両用インサイドミラー装置は、上記の課題を解決するための手段により、操作レバーを切替操作すると、反射率切替機構を介して、ミラーがミラーハウジングに対して切り替わって、ミラーの反射率が昼間用の反射率または夜間用の反射率に切り替わる。また、ミラーハウジングを角度調整すると、反射面角度調整機構を介して、ミラーハウジングがステーに対して回動傾動して、ミラーハウジングに反射率切替機構を介して保持されているミラーの反射面の角度がドライバーの視線に合わせて調整される。このように、この発明の防眩タイプの車両用インサイドミラー装置は、ミラーハウジングが反射面角度調整機構を介してステーの他端に保持されており、かつ、ミラーが反射率切替機構を介してミラーハウジングに保持されているものである。すなわち、反射面角度調整機構と反射率切替機構とは、それぞれ独立している。このために、この発明の防眩タイプの車両用インサイドミラー装置は、ミラーハウジングを角度調整してミラーの反射面の角度を調整する際に、ミラーハウジングの角度調整力が反射面角度調整機構に直接作用して反射率切替機構に作用しないので、ミラーの反射率が昼間用の反射率または夜間用の反射率に切り替わることがなく、したがって、ミラーの反射面の角度調整をスムーズに行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、この発明にかかる防眩タイプの車両用インサイドミラー装置の実施例のうちの2例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0010】
図1〜図8は、この発明にかかる防眩タイプの車両用インサイドミラー装置の実施例1を示す。以下、この実施例1における防眩タイプの車両用インサイドミラー装置の構成について説明する。なお、この明細書および特許請求の範囲中、「後方」、「後」とは、自動車の前進行方向と逆方向であって、ドライバー側から見た後方、後を言う。また、「前」とは、自動車の前進行方向であって、ドライバー側から見た前をいう。さらに、「上」、「下」、「左」、「右」は、ドライバー側から見た上、下、左、右を言う。
【0011】
図において、符号1は、この実施例1における防眩タイプの車両用インサイドミラー装置(以下、単に「ミラー装置」と称する)である。前記ミラー装置1は、ステー2と、ミラーハウジング3と、操作レバー(または、ノブ)4と、ミラー5と、ミラーホルダ6と、反射面角度調整機構と、反射率切替機構と、を備える。
【0012】
前記ステー2は、たとえば、合成樹脂製から構成されている。前記ステー2の一端は、車体に装備されている。すなわち、前記ステー2の一端は、脱落機構(図示せず)を有するベースなどの取付手段(図示せず)により、車室内の取付箇所(図示せず)、たとえば、フロントインサイドルーフパネルやフロントウインドパネル内面などに脱落可能に取り付けられている。この結果、前記ミラー装置1に所定値以上の衝撃力がかかると、前記ステー2の一端が車体から脱落するので、前記ミラー装置1に緩衝作用が作用して、安全性が確保されている。前記ステー2の他端には、反射面角度調整機構としての球部21が一体に設けられている。
【0013】
前記ミラーハウジング3は、たとえば、合成樹脂製から構成されている。前記ミラーハウジング3は、一面(後面)31が開口しかつ他面(前面)32が閉塞した中空形状、すなわち、内部33が中空の形状をなす。前記開口部31の縁部(外周部)の全周には、断面ほぼ半球形状の半球凸部311が一体に設けられている。
【0014】
前記閉塞部32のほぼ中央には、反射面角度調整機構としてのほぼ半球形状の弾性ドーム部321が一体に設けられている。前記弾性ドーム部321の内部には、内径が前記球部21の外径より小さい球凹部322が設けられている。また、前記弾性ドーム部321の外側には、複数枚(この例では、8枚)の補強用のリブ323が一体に設けられている。さらに、前記弾性ドーム部321の前後には、内径が前記球凹部322の内径より小さい前開口324と、内径が前記前開口324の内径より小さい後開口325とがそれぞれ設けられている。前記球部21を前記前開口324から球凹部322中に圧入することにより、前記ミラーハウジング3は、前記ステー2の他端に反射面角度調整機構(球部21およびドーム部321などからなる機構)を介して保持される。そして、反射面角度調整機構の前記球部21の外面と前記弾性ドーム部321の球凹部322の内面との双方には、弾性圧着による摩擦力が発生しているので、前記ミラーハウジング3は、前記ステー2の他端に、振動や熱などにより変位することなく保持される。また、前記閉塞部32の下部、すなわち、前記弾性ドーム部321の下側には、窓部326が設けられている。前記窓部326は、前記操作レバー4の一部が前記ミラーハウジング3内から外部に突出させるためのものであって、前記操作レバー4の操作範囲よりも広い空間を有する。
【0015】
前記内部33には、軸受用のリブ331が一体に設けられている。前記リブ331は、前記弾性ドーム部321の左右両側でかつ前記閉塞部32の上側から2枚ずつ突設されている。左右2枚ずつ計4枚の前記リブ331の先端部には、絞り部を介して円形の透孔332がそれぞれ設けられている。また、前記内部33には、軸受兼補強用のリブ333が一体に設けられている。前記リブ333は、前記弾性ドーム部321の左右両側でかつ前記閉塞部32から1枚ずつ上下に突設されている。前記2枚のリブ333の下部には、円形の透孔334がそれぞれ設けられている。かつ、前記2枚のリブ333の相対向する面には、ガイド335がそれぞれ設けられている。前記ガイド335は、前記リブ333の前記開口部31側の縁から前記透孔334までの間に設けられているガイド用の長溝を有する。さらに、前記内部33には、バー形状の弾性部336が一体に設けられている。前記弾性部336は、前記窓部326の上縁の左右から突設されかつ前記窓部326の上縁に沿って左右に設けられている。
【0016】
前記操作レバー4は、たとえば、合成樹脂製から構成されている。前記操作レバー4の中間部には、円柱形状の回転軸41が左右に一体に設けられている。前記回転軸41の両端(左右両端)を前記ガイド335を介して前記リブ333の前記透孔334中に回転可能に挿入することにより、前記操作レバー4の中間部は、前記ミラーハウジング3に回転可能に保持される。前記透孔334を有するリブ333と、前記回転軸41とは、前記操作レバー4の中間部を前記ミラーハウジング3に回転可能に保持する第2回転保持手段を構成する。前記操作レバー4の一端には、操作用のノブ42が一体に設けられている。すなわち、前記ノブ42は、前記回転軸41の中央部から一体に突設されている。前記ノブ42は、前記窓部326から外側に突出する。前記操作レバー4の他端の左右両側には、円柱形状の係合凸部43がそれぞれ一体に設けられている。すなわち、前記2個の係合凸部43は、前記回転軸41の左右両端部から2枚のリブを介して一体に突設されている。前記2個の係合凸部43の先端は、後記長孔65に容易に係合できるように面取り、すなわち、一部が斜めに切除されている。前記操作レバー4の中間部には、当接部44が一体に設けられている。すなわち、前記当接部44は、前記回転軸41の中間部から一体に突設されている。前記当接部44は、前記弾性部336に第1位置と第2位置との間を切替移動可能に常時当接する。
【0017】
前記ミラー5は、たとえば、合成樹脂製またはガラス製から構成されている。前記ミラー5は、板形状のプリズムミラーであって、図5および図6の縦断面において、断面の上側の肉厚が厚く、断面の下側の肉厚が薄い。前記ミラー5の裏面すなわち前面(前記ミラーハウジング3の閉塞部32に対向する面)には、反射膜処理(図示せず)が施されている。前記反射膜処理は、フィルムにアルミ蒸着を施した蒸着フィルムを貼ったり、ミラー5の裏面にアルミ蒸着を直接施したり、ミラー5の裏面に銀色塗装を直接塗布したりする処理などである。
【0018】
前記ミラーホルダ6は、たとえば、合成樹脂製から構成されている。前記ミラーホルダ6は、前記ミラー5より一回り大きいパン形状(浅い凹形状)をなす。前記ミラーホルダ6の立壁の内面の全周には、浅い溝61が設けられている。前記溝61の幅は、前記ミラー5の肉厚と同様に、上側が大きく、下側が小さい。前記ミラーホルダ6の底壁の内面(後面であって、前記ミラー5の裏面に対向する面)には、前記ミラー5の裏面が固定手段62を介して固定されている。これにより、前記ミラーホルダ6は、前記ミラー5に固定される。前記固定手段62としては、弾性体の両面テープまたは接着剤あるいは溶着(ミラー5が樹脂ミラーの場合)などである。
【0019】
前記ミラーホルダ6の開口部の縁部(外周部)の全周には、断面ほぼ半球形状の半球凸部63が一体に設けられている。また、前記ミラーホルダ6の底壁の外面(前面であって、前記ミラーハウジング3の閉塞部32に対向する面)には、円柱形状の回転軸64が一体に設けられている。前記回転軸64は、前記ミラーホルダ6の一側、すなわち、上側に前記ミラーハウジング3の透孔332に対応して2本設けられている。前記2本の回転軸64を2個1組の前記透孔332にそれぞれ回転可能に嵌合させることにより、前記ミラーホルダ6の一側は、前記ミラーハウジング3に回転可能に保持される。前記透孔332を有するリブ331と、前記回転軸64とは、前記ミラーホルダ6の一側を前記ミラーハウジング3に回転可能に保持する第1回転保持手段を構成する。
【0020】
前記ミラーホルダ6の底壁の外面には、長孔65を有する係合部66が一体に設けられている。前記係合部66は、前記ミラーホルダ6の他側、すなわち、下側に前記操作レバー4の前記2個の係合凸部43に対応して2個設けられている。前記2個の係合部66には、前記長孔65が前記ミラー5の反射率の切替方向(前記回転軸64の回転中心線O1を中心とする回転前後方向)に対してほぼ直角に交差する方向(ほぼ上下方向)にそれぞれ開設されている。前記2本の長孔65中に前記2個の係合凸部43をそれぞれ係合させることにより、前記係合凸部43は、前記長孔65中に第1位置と第2位置との間を切替移動可能に係合する。
【0021】
前記透孔332を有するリブ331および前記回転軸64からなる第1回転保持手段と、前記透孔334を有するリブ333および前記回転軸41からなる第2回転保持手段と、前記弾性部336と、前記当接部44と、前記長孔65を有する前記係合部66と、前記係合凸部43とは、トグルタイプの反射率切替機構を構成する。前記操作レバー4と、前記ミラーホルダ6に固定されている前記ミラー5とは、前記反射率切替機構を介して前記ミラーハウジング3に保持される。
【0022】
この実施例1における防眩タイプの車両用インサイドミラー装置1(ミラー装置1)は、以上のごとき構成からなり、以下、その組み付け方について説明する。
【0023】
まず、ミラー5の裏面をミラーホルダ6の底壁の内面に固定手段62により固定する。つぎに、操作レバー4の2本の係合凸部43をミラーホルダ6の2本の長孔65にそれぞれ係合させる。それから、ミラーホルダ6の2本の回転軸64をミラーハウジング3の2個1組の透孔332にそれぞれ回転可能に嵌合させ、かつ、操作レバー4の2本の回転軸41をミラーハウジング3の2個の透孔334にそれぞれ回転可能嵌合させる。そして、ミラーハウジング3の球凹部322中にステー2の球部21を圧入させる。これにより、ミラー装置1は、組み付けられる。ミラーハウジング3の内部33の中空部中には、前記操作レバー4の一部(回転軸41および係合凸部43)および前記ミラー5および前記ミラーホルダ6および反射率切替機構が収納される。また、ミラーハウジング3の開口部31には、ミラー5の反射面が配置される。さらに、ミラーハウジング3の閉塞部32は、反射面角度調整機構を介してステー2の他端に保持される。
【0024】
この実施例1における防眩タイプの車両用インサイドミラー装置1(ミラー装置1)は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。
【0025】
まず、ミラー5が昼間用の反射率の状態(図6(A)および図7(A)および図8(A)に示す状態)のとき、ミラー5の反射面が下に向いた状態にあり、また、操作レバー4のノブ42が前側に突出した状態にある。この状態のとき、操作レバー4の当接部44は、第1位置に位置していてミラーハウジング3の弾性部336に常時弾性当接している。すなわち、図7(A)に示すように、弾性部336の弾性力は、当接部44に矢印方向に常時作用しているので、操作レバー4の係合凸部43には、操作レバー4の回転軸41の回転中心線O2を中心とする矢印方向の回転力が作用する。このために、係合凸部43は、ミラーホルダ6の長孔65の第1位置、すなわち、下方の縁に係合しているので、長孔65の下方の縁には、係合凸部43により矢印方向の押し付け力が作用する。この長孔65の下方の縁に作用する押し付け力と、ミラーホルダ6の回転軸64とミラーハウジング3のリブ331とからなる第1回転保持手段の保持力とにより、ミラーホルダ6は、ミラーハウジング3に保持される。この結果、ミラー5の反射面が下に向いた状態に保持されており、また、操作レバー4のノブ42が前側に突出した状態に保持されている。この状態のときに、入射光線がミラー5に入射すると、この入射光線がミラー5の裏面の反射面で反射して、高い反射率の鏡面反射光線としてドライバーの目に入射する。
【0026】
つぎに、図6(A)に示す状態のノブ42をミラーハウジング3に対して矢印方向に前側から下側に引く。すると、図6(B)および図7(B)および図8(B)に示すように、操作レバー4は、ミラーハウジング3に対して回転軸41の回転中心線O2を中心として実線矢印方向に回転する。これに伴なって、当接部44は、同方向に回転して弾性部336を弾性変形させ、また、係合凸部43は、長孔65の第1位置から第2位置に実線矢印方向に切替移動してミラーホルダ6を回転軸64の回転中心線O1を中心として実線矢印方向に回転させる。このとき、図7(B)に示すように、弾性部336の弾性力は、当接部44に矢印方向に常時作用しているので、操作レバー4の係合凸部43には、矢印方向の力が作用する。このために、係合凸部43は、ミラーホルダ6の長孔65の中間位置に係合するので、長孔65の中間位置の後方の縁(ミラー5側の縁)には、係合凸部43により矢印方向の力が作用する。この長孔65の中間位置の後方の縁に作用する力により、ミラーホルダ6およびミラー5は、回転軸64の回転中心線O1を中心として実線矢印方向に確実に回転する。そして、当接部44が弾性変形する弾性部336(デッドセンタ)を乗り越えると、弾性部336の弾性復帰力により、ミラー5がミラーハウジング3に対して夜間用の反射率の状態(図6(C)および図7(C)および図8(C)に示す状態)に自動的に切り替わる。すなわち、当接部44が弾性部336の第1位置から第2位置に切替移動し、かつ、係合凸部43が長孔65の第1位置から第2位置に切替移動して、ミラー5が昼間用の反射率から夜間用の反射率に切り替わる。また、弾性部336の弾性復帰力により、ミラー5を切り替える節度感が得られる。
【0027】
ここで、ミラー5が夜間用の反射率の状態のとき、ミラー5の反射面が上に向いた状態にあり、また、操作レバー4のノブ42が下側に突出した状態にある。この状態のとき、操作レバー4の当接部44は、第2位置に位置していてミラーハウジング3の弾性部336に常時弾性当接している。すなわち、図7(C)に示すように、弾性部336の弾性力は、当接部44に矢印方向に常時作用しているので、操作レバー4の係合凸部43には、操作レバー4の回転軸41の回転中心線O2を中心とする矢印方向の回転力が作用する。このために、係合凸部43は、ミラーホルダ6の長孔65の第2位置、すなわち、上方の縁に係合しているので、長孔65の上方の縁には、係合凸部43により矢印方向の押し付け力が作用する。この長孔65の上方の縁に作用する押し付け力と、ミラーホルダ6の回転軸64とミラーハウジング3のリブ331とからなる第1回転保持手段の保持力とにより、ミラーホルダ6は、ミラーハウジング3に保持される。この結果、ミラー5の反射面が上に向いた状態に保持されており、また、操作レバー4のノブ42が下側に突出した状態に保持されている。この状態のときに、入射光線がミラー5に入射すると、この入射光線がミラー5の表面(反射膜処理が施されている裏面と反対側の面)で反射して、低い反射率の表面反射光線としてドライバーの目に入射する。
【0028】
つづいて、図6(C)に示す状態のノブ42をミラーハウジング3に対して矢印方向に下側から前側に押す。すると、図6(B)および図7(B)および図8(B)に示すように、操作レバー4は、ミラーハウジング3に対して回転軸41の回転中心線O2を中心として破線矢印方向に回転する。これに伴なって、当接部44は、同方向に回転して弾性部336を弾性変形させ、また、係合凸部43は、長孔65の第2位置から第1位置に破線矢印方向に切替移動してミラーホルダ6を回転軸64の回転中心線O1を中心として破線矢印方向に回転させる。このとき、図7(B)に示すように、弾性部336の弾性力は、当接部44に矢印方向に常時作用しているので、操作レバー4の係合凸部43には、矢印方向の力が作用する。このために、係合凸部43は、ミラーホルダ6の長孔65の中間位置に係合するので、長孔65の中間位置の後方の縁(ミラー5側の縁)には、係合凸部43により矢印方向の力が作用する。この長孔65の中間位置の後方の縁に作用する力により、ミラーホルダ6およびミラー5は、回転軸64の回転中心線O1を中心として破線矢印方向に確実に回転する。そして、当接部44が弾性変形する弾性部336(デッドセンタ)を乗り越えると、弾性部336の弾性復帰力により、ミラー5がミラーハウジング3に対して昼間用の反射率の状態(図6(A)および図7(A)および図8(A)に示す状態)に自動的に切り替わる。すなわち、当接部44が弾性部336の第2位置から第1位置に切替移動し、かつ、係合凸部43が長孔65の第2位置から第1位置に切替移動して、ミラー5が夜間用の反射率から昼間用の反射率に切り替わる。また、弾性部336の弾性復帰力により、ミラー5を切り替える節度感が得られる。
【0029】
それから、ミラーハウジング3を掴んで反射面角度調整機構の球部21および球凹部322の中心O3を通る中心線を回転軸として前後上下左右に回動傾動させる。すると、ミラーハウジング3がステー2に対して前後上下左右に回動傾動して、ミラーハウジング3に反射率切替機構を介して保持されているミラー5の反射面の角度がドライバーの視線に合わせて調整される。たとえば、図5(A)に示すように、ミラーハウジング3およびミラー5を下側に向けたり、また、図5(B)に示すように、ミラーハウジング3およびミラー5を正面(後側)に向けたり、さらに、図5(C)に示すように、ミラーハウジング3およびミラー5を上側に向けたりすることができる。
【0030】
この実施例1における防眩タイプの車両用インサイドミラー装置1(ミラー装置1)は、以上のごとき構成からなり、以下、その効果について説明する。
【0031】
ミラー装置1は、ミラーハウジング3が反射面角度調整機構(球部21および球凹部322)を介してステー2の他端に保持されており、かつ、ミラーホルダ6に固定されているミラー5がトグルタイプの反射率切替機構(透孔332を有するリブ331および回転軸64からなる第1回転保持手段、透孔334を有するリブ333および回転軸41からなる第2回転保持手段、弾性部336、当接部44、長孔65を有する係合部66、係合凸部43)を介してミラーハウジング3に保持されているものである。すなわち、反射面角度調整機構と反射率切替機構とは、それぞれ独立している。このために、ミラー装置1は、ミラーハウジング3を角度調整してミラー5の反射面の角度を調整する際に、ミラーハウジング3の角度調整力が反射面角度調整機構に直接作用して反射率切替機構に作用しないので、ミラー5の反射率が昼間用の反射率または夜間用の反射率に切り替わることがなく、したがって、ミラー5の反射面の角度調整をスムーズに行うことができる。
【0032】
しかも、ミラー装置1は、反射面角度調整機構と反射率切替機構とがそれぞれ独立しているので、反射面角度調整機構の調整力と反射率切替機構の切替力とをそれぞれ別個に設定することができ、これにより、反射面角度調整機構の調整操作と反射率切替機構の切替操作とがそれぞれ行い易くなり、また、操作音を小さく抑えることができる。
【0033】
特に、ミラー装置1は、反射面角度調整機構が球部21と球凹部322とからなるので、構造が簡単であり、製造コストを安価にすることができる。
【0034】
また、ミラー装置1は、ミラー5をミラーホルダ6に固定し、このミラーホルダ6を反射面角度調整機構および反射率切替機構を介してミラーハウジング3に取り付けて、ミラー5がミラーハウジング3に保持されるものであるから、ミラー5には、ミラーハウジング3に保持する際の保持応力、また、ミラーハウジング3を介して反射面角度調整機構や反射率切替機構の操作応力などがほとんどかからない。このために、ミラー装置1は、安価でかつ軽量な樹脂製のミラー5を使用することができ、これにより、軽量で低コストのミラー装置を提供することができる。
【0035】
さらに、ミラー装置1は、ミラーハウジング3の開口部31の縁部の全周に半球凸部311を一体に設け、また、ミラーホルダ6の開口部の縁部の全周に半球凸部63を一体に設けたので、ミラーハウジング3の開口部31の縁部およびまたはミラーホルダ6の開口部の縁に当たった際に、この半球凸部311、63が緩衝作用を果たす。
【0036】
さらにまた、ミラー装置1は、透孔332を有するリブ331および回転軸64からなる第1回転保持手段、透孔334を有するリブ333および回転軸41からなる第2回転保持手段、弾性部336、当接部44、長孔65を有する係合部66、係合凸部43から構成されているトグルタイプの反射率切替機構を使用するので、ミラー5をミラーハウジング3に確実に保持させることができ、かつ、ミラー5をミラーハウジング3に対して確実に切り替えることができる。すなわち、ミラー5が昼間用の反射率の状態に切り替わっているとき、図7(A)に示すように、弾性部336の弾性力が第1位置に位置する当接部44に作用して長孔65の第1位置に係合している係合凸部43の押し付け力が長孔65の下方の縁に作用し、この押し付け力と、第1回転保持手段の保持力とにより、ミラー5がミラーホルダ6を介してミラーハウジング3に確実に保持される。また、ミラー5が夜間用の反射率の状態に切り替わっているとき、図7(C)に示すように、弾性部336の弾性力が第2位置に位置する当接部44に作用して長孔65の第2位置に係合している係合凸部43の押し付け力が長孔65の上方の縁に作用し、この押し付け力と、第1回転保持手段の保持力とにより、ミラー5がミラーホルダ6を介してミラーハウジング3に確実に保持される。さらに、ミラー5が昼間用の反射率の状態から夜間の反射率の状態にまた夜間の反射率の状態から昼間の反射率の状態に切り替わるとき、図7(B)に示すように、弾性部336の弾性力が当接部44に作用して長孔65の中間に係合している係合凸部43の押し付け力が長孔65の中間位置の後方の縁に作用し、この力により、ミラー5がミラーハウジング3に対して確実に切り替わる。
【実施例2】
【0037】
図9〜図13は、この発明にかかる防眩タイプの車両用インサイドミラー装置の実施例2を示す。図中、図1〜図8と同符号は、同一のものを示す。
【0038】
この実施例2における防眩タイプの車両用インサイドミラー装置1A(以下、単に「ミラー装置1A」と称する)は、樹脂ミラー5Aと、小型のミラーホルダ6Aとを使用する。前記樹脂ミラー5A(たとえば、特開2003−291727号公報を参照)は、板形状のプリズムミラーであって、図13の縦断面において、断面の上側の肉厚が厚く、断面の下側の肉厚が薄い。前記樹脂ミラー5Aの裏面には、反射膜処理(図示せず)が施されている。また、前記樹脂ミラー5Aの縁部(外周部)の全周には、断面ほぼ半球形状の半球凸部51が一体に設けられている。さらに、前記樹脂ミラー5Aの裏面の上下両縁部の中間には、位置決め用のスリット52が設けられている。なお、前記半球凸部51を透明な樹脂ミラー5Aに対して着色樹脂で2色成形したり、または、透明樹脂の前記半球凸部51の表面にシボ付け(エンボッシング)を施したりして、前記ミラーハウジング3内を見えなくして見栄えを向上させることができる。
【0039】
前記ミラーホルダ6Aは、前記樹脂ミラー5Aの中央部に対応する大きさの板形状をなす。前記ミラーホルダ6Aの上下両縁部の中間には、位置決め用のリブ67が前記スリット52に対応して一体に設けられている。また、前記ミラーホルダ6Aには、前記の実施例1のミラーホルダ6と同様に、回転軸64と長孔65と係合部66とがそれぞれ設けられている。そして、前記リブ67を前記スリット52に嵌合させるとともに、前記ミラーホルダ6に前記樹脂ミラー5Aを固定手段62を介して固定させる。
【0040】
ミラー装置1Aは、以上のごとき構成からなるので、前記の実施例1におけるミラー装置1とほぼ同様の作用効果を達成することができる。特に、ミラー装置1Aは、小型のミラーホルダ6Aを使用するので、さらに、軽量で低コストのミラー装置を提供することができる。
【0041】
なお、前記の実施例1、2においては、操作レバー4に係合凸部43を、ミラーホルダ6、6Aに長孔65を有する係合部66を、それぞれ設けたものである。ところが、この発明においては、逆に、操作レバー4に長孔を有する係合部を、ミラーホルダ6、6Aに係合凸部を、それぞれ設けたものであっても良いし、または、操作レバー4に係合凸部43と長孔を有する係合部とを設け、ミラーホルダ6、6Aに長孔65を有する係合部66と係合凸部とを設けたものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】この発明にかかる防眩タイプの車両用インサイドミラー装置の実施例1を示す正面側の分解斜視図である。
【図2】同じく、背面側の分解斜視図である。
【図3】同じく、一部を破断した正面図である。
【図4】同じく、図3におけるIV−IV線断面図である。
【図5】同じく、ミラーの反射面角度調整状態を示す説明図であって、図3におけるV−V線断面図である。
【図6】同じく、ミラーの反射率切替状態を示す説明図であって、図3におけるV−V線断面図である。
【図7】同じく、ミラーの反射率切替状態を示す説明図であって、一部拡大縦断面図である。
【図8】同じく、ミラーの反射率切替状態を示す説明図であって、一部拡大横断面図である。
【図9】この発明にかかる防眩タイプの車両用インサイドミラー装置の実施例2を示す正面側のミラーとミラーホルダとの分解斜視図である。
【図10】同じく、背面側のミラーとミラーホルダとの分解斜視図である。
【図11】同じく、一部を破断した正面図である。
【図12】同じく、図11におけるXII−XII線断面図である。
【図13】同じく、図11におけるXIII−XIII線断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1、1A ミラー装置(防眩タイプの車両用インサイドミラー装置)
2 ステー
21 球部(反射面角度調整機構)
3 ミラーハウジング
31 開口部
311 半球凸部
32 閉塞部
321 弾性ドーム部
322 球凹部(反射面角度調整機構)
323 リブ
324 前開口
325 後開口
326 窓部
33 内部
331 リブ
332 透孔
333 リブ
334 透孔
335 ガイド
336 弾性部
4 操作レバー
41 回転軸
42 ノブ
43 係合凸部
44 当接部
5 ミラー
5A 樹脂ミラー
51 半球凸部
52 スリット
6、6A ミラーホルダ
61 溝
62 固定手段
63 半球凸部
64 回転軸
65 長孔
66 係合部
67 リブ
O1 ミラーの回転中心
O2 操作レバーの回転中心
O3 反射面角度調整機構の中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内に取り付けられ、自車の後方を視認し、かつ、操作レバーの切替操作によりミラーの反射率を切り替えることができる防眩タイプの車両用インサイドミラー装置において、
一端が車体に装備されるステーと、
前記ステーの他端に反射面角度調整機構を介して保持されているミラーハウジングと、
前記ミラーハウジングに反射率切替機構を介して保持されている前記操作レバーおよび前記ミラーと、
を備え、
前記反射面角度調整機構は、前記ステーの他端と前記ミラーハウジングとの間に設けられており、前記ミラーハウジングを操作することにより、前記ミラーの反射面角度を調整することができる機構であり、
前記反射率切替機構は、前記ミラーハウジングと前記操作レバーと前記ミラーとの間に設けられており、前記操作レバーを切替操作することにより、前記ミラーの反射率を昼間用の反射率と夜間用の反射率とに切り替えることができる機構である、
ことを特徴とする防眩タイプの車両用インサイドミラー装置。
【請求項2】
前記反射面角度調整機構の操作部を兼用する前記ミラーハウジングは、一面が開口しかつ他面が閉塞した中空形状をなし、前記中空部中には、前記操作レバーの一部および前記ミラーおよび前記反射率切替機構が収納されており、前記開口部には、前記ミラーの反射面が配置されており、前記閉塞部は、前記反射面角度調整機構を介して前記ステーの他端に保持されている、ことを特徴とする請求項1に記載の防眩タイプの車両用インサイドミラー装置。
【請求項3】
前記ミラーには、ミラーホルダが固定されており、前記ミラーホルダの一側は、前記ミラーハウジングに回転可能に保持されており、
前記操作レバーの中間部は、前記ミラーハウジングに回転可能に保持されており、前記ミラーハウジングから外側に突出する前記操作レバーの一端には、操作用のノブが設けられており、
前記反射率切替機構は、
前記ミラーホルダの一側を前記ミラーハウジングに回転可能に保持する第1回転保持手段と、
前記操作レバーの中間部を前記ミラーハウジングに回転可能に保持する第2回転保持手段と、
前記ミラーホルダの他側および前記操作レバーの他端のうち少なくともいずれか一方に設けられており、前記ミラーの反射率の切替方向に対して交差する方向に開けられている長孔を有する係合部と、
前記ミラーホルダの他側および前記操作レバーの他端のうち少なくともいずれか他方に設けられており、前記長孔中に第1位置と第2位置との間を切替移動可能に係合している係合凸部と、
前記ミラーハウジングに設けられている弾性部と、
前記操作レバーに設けられており、前記弾性部に第1位置と第2位置との間を切替移動可能に常時当接している当接部と、
を備え、前記ノブを切替操作して、前記当接部が第1位置に位置するときに前記係合凸部が前記長孔の第1位置に係合して前記ミラーが昼間用の反射率に切り替わっており、前記当接部が第2位置に位置するときに前記係合凸部が前記長孔の第2位置に係合して前記ミラーが夜間用の反射率に切り替わっている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の防眩タイプの車両用インサイドミラー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−103621(P2006−103621A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−296159(P2004−296159)
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)