説明

防虫剤

【課題】有効成分として植物精油類を用いる防虫剤であって、その防虫効果を長期間維持することのできる防虫剤を提供すること。
【解決手段】有効成分として植物精油類を含有する無機または有機質担体を、実質的に有効成分を透過しない包装材に封入してなる防虫剤であって、前記包装材が、孔径0.05〜2.00mmφの孔部を0.1〜10.0個/cmの割合で有することを特徴とする防虫剤とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば衣類害虫用として好適な防虫剤に関する。
【背景技術】
【0002】
古くから、衣類害虫の防除手段としては、薬剤を用い、繊維製品のあるところに害虫が侵入しない状況としたり、殺虫したりすることで、食害等を防止してきた。
【0003】
このような従来用いられている衣類害虫に対する薬剤は、例えば、パラジクロロベンゼン、カンファーまたはナフタレン等がある。また、ピレスロイド系化合物を有効成分として含有することを特徴とする衣類害虫用防虫剤も知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、パラジクロロベンゼン等は、臭気があったり、また、ある種のピレスロイドを有効成分とした場合には金属や観賞用生物に悪影響を及ぼすことがある。
これらの悪影響がないように、かつ消費者の天然嗜好にも応えるために、植物精油を用いた防虫剤も提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、植物精油をそのまま用いた場合、短期間で揮散してしまい、防虫効果を長期間維持できないという問題点があった。
【特許文献1】特開昭63−126808号公報
【特許文献2】特開平5−97618号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明の目的は、有効成分として植物精油類を用いる防虫剤であって、その防虫効果を長期間維持することのできる防虫剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のとおりである。
1.有効成分として植物精油類を含有する無機または有機質担体を、実質的に有効成分を透過しない包装材に封入してなる防虫剤であって、前記包装材が、孔径0.05〜2.00mmφの孔部を0.1〜10.0個/cmの割合で有することを特徴とする防虫剤。
2.植物精油類が、スペアミントオイル、ユーカリオイル、キュベバオイル、ハッカオイル、レモングラスオイル、ローズマリーオイル、ラベンダーオイル、ボアドローズオイル、マジョラムオイル、ホップオイル、ベルガモットオイル、ピネン、リナロール、カルボンから選択される少なくとも1種であることを特徴とする前記1に記載の防虫剤。
3.前記有機質担体が、パルプ成形体またはパルプ集合体から選択される少なくとも1種であることを特徴とする前記1または2に記載の防虫剤。
4.包装材が、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアクリルエチレン・酢酸ビニル共重合体およびポリアクリルニトリルから選択される少なくとも1種からなることを特徴とする前記1〜3のいずれかに記載の防虫剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明の防虫剤は、植物精油類を封入する包装材が、特定孔径の孔部を特定割合で有するので、植物精油類の過剰な揮散を抑制しつつ、防虫有効量を持続して揮散することができ、それにより防虫効果を長期間維持することができる。また、有効成分として植物精油類を用いているので、臭気の問題や化学物質の有効成分による悪影響を受けることはない。更に、消臭、防カビ効果も付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の防虫剤をさらに詳細に説明する。
本発明に係る防虫剤は、有効成分である植物精油類を含有させた無機または有機質担体を、実質的に有効成分を透過しない包装材に封入し、該包装材には特定の孔部を特定の割合で形成して該有効成分の揮散量を制御するものである。
【0009】
(植物精油類)
植物精油類としては、室温で揮散して、防虫効果を発揮するものであれば特に制限されないが、例えば、ヒノキオイル、月桃オイル、ヒバオイル、スペアミントオイル、ユーカリオイル、キュベバオイル、ハッカオイル、レモングラスオイル、ローズマリーオイル、ラベンダーオイル、ボアドローズオイル、マジョラムオイル、ホップオイル、ベルガモットオイル、α−ピネン、β−ピネン、ニームオイル、リナロール、カルボン、カモミールオイル等の1種又は2種以上が好ましい。防虫効果持続の点で、α−ピネン、スペアミントオイル及びリナロール又はα−ピネン、リナロール及びラベンダーオイルを組み合わせて用いることがより好ましい。
【0010】
(無機または有機質担体)
前記植物精油類を担持させる無機または有機質担体としては、無機多孔質担体(例えば、ケイ酸塩、シリカ、ゼオライト、アルミナなど)、紙、パルプ、有機高分子担体(例えば、セルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体など)、などが挙げられ、これらの1種または2種以上を組み合わせて使用でき、粒状、粉状、打錠状、マット状、シート状などの剤型で使用できる。更に必要に応じてゲル化担体(カラギーナン、ゼラチン、アルギン酸など)、昇華性担体(アダマンタン、シクロドデカン、ノルボルナンなど)が使用できる。これらの無機または有機質担体のなかでは、紙、パルプ、セルロース系担体が植物精油類の吸収、保持力に優れ、防虫効果が持続されるので好ましく、中でもパルプ成形体またはパルプ集合体がさらに好ましい。
【0011】
本発明におけるパルプ成形体またはパルプ集合体の原料となるパルプは、特に制限はなく、機械パルプ、化学パルプ、ケミグランドパルプ、セミケミカルパルプ等がいずれも使用可能である。これらの原料パルプの成形体には粒状、粉状、シート状などがある。成形方法は、特に限定されないが、得られるパルプ成形体は空隙率が高く、高い吸油性および吸液性を有するものがよい。粒状パルプの製造方法としては、例えば特公昭62−60491号公報等に開示の方法を採用することができる。
【0012】
粒状パルプの粒径としては特に制限されないが、1〜15mm程度、好ましくは4〜9mmであるのがよく、また形状も球状ないし顆粒状のほか、錠剤形状、矩形のマット形状などの任意の大きさ、形状のものを採用することができる。粉状パルプは、その粒径が上記粒状パルプの粒径より小さいものであり、形状も特に制限されない。また、シート状パルプとしては、特に制限されないが、厚さ0.1〜10mm程度、好ましくは1〜5mmのものが好適に使用できる。シート状パルプは、所望の形状や寸法に裁断して使用することができ、後述する包装材に封入可能な大きさとすればよい。
【0013】
また、これらの成形体に代えて、あるいはこれらの成形体と共に、紙(和紙や洋紙等)や木粉等も使用可能である。本発明におけるパルプ成形体とは、これらの紙や木粉をも含む概念である。本発明におけるパルプ集合体とは、パルプ繊維の集合体をいい、一定の形態を有しないものである。パルプ繊維同士は互いに結合あるいは絡合している必要はない。このような集合体であっても、高い空隙率と高い吸油性および吸液性とを得ることができる。さらに、市販されているネコ砂等のパルプ成形体を用いてもよい。
【0014】
本発明において、植物精油類は、無機または有機質担体に飽和含浸量まで含有させて用いることができる。また、同じ材質からなる担体であってもその形状により飽和含浸量に違いがある場合、植物精油類の含浸量は、適宜調整すればよい。具体的には、粒状パルプに植物精油類を担持させる場合、粒状パルプの質量に対して5〜30%、好ましくは7〜14%、さらに好ましくは10〜12%の量を含有させればよく、シート状パルプを使用する場合は、シート状パルプの質量に対して10〜90%、好ましくは20〜60%、さらに好ましくは30〜50%の量を含有させればよい。
【0015】
(包装材)
本発明に使用される包装材は、実質的に有効成分を透過しない材質からなるものであれば特に制限されず、種々のプラスチックフィルムが挙げられる。本発明において、実質的に有効成分を透過しないとは、無機又は有機質担体に含有された有効成分である植物精油類が防虫作用を発揮するだけの揮散量が透過しないことを意味し、それ以下の微量の透過も全く無いことではない。
【0016】
プラスチックフィルムの種類としては、薬剤に対する親和性がそれ程高くない、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアクリルエチレン・酢酸ビニル共重合体およびポリアクリルニトリルから選ばれた1種又は2種以上が好ましく、中でもポリエステルとしてポリエチレンテレフタレート(PET)と、ポリプロピレンとして無延伸ポリプロピレン(CPP)とを積層したものが、シール性に優れ、有効成分を透過しにくいという理由から好ましい。特に、PETの上面に不織布をさらに積層する形態は、当該不織布を外側に、CPPを内側にして袋体を構成したものに植物精油類を担時させた担体を充填すると、揮散した植物精油類の一部が不織布に保持され、さらにそこから再揮散して、効果を持続、高めるという効果が奏されるため、特に好ましい。不織布の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、レーヨン、ナイロン、ポリエステル、セルロース等が挙げられる。プラスチックフィルムの厚みは、10〜200μm、好ましくは10〜70μmである。上記PETとCPPとを積層する形態では、PETの厚みは5〜60μmが好ましく、CPPの厚みは5〜60μmが好ましい。また、不織布は、目付け量が10〜30g/mであることが好ましい。
包装材は、植物精油類を含有する無機または有機質担体を内部に収納した後に、その開口部をインパルスシール、ヒートシール、接着剤などにより接着して塞ぐように構成することができる。
【0017】
本発明では、包装材が、孔径0.05〜2.00mmφの孔部を0.1〜10.0個/cmの割合で有することを特徴としている。さらに好ましい孔部の孔径は、0.1〜1.0mmφ、特に好ましくは0.2〜0.8mmφであり、さらに好ましい孔部の個数の割合は0.2〜5.0個/cm、特に好ましくは0.3〜0.5個/cmである。包装材に前記孔部を設ける手段としては、特に制限されないが、目的とする孔径に相当する外部直径を有する針を包装材に穿刺する手段が挙げられる。例えば、多数の突起を有する金型を高温に熱し、包装材に押し当てて突起を貫通させる等の方法が挙げられる。
【0018】
包装材が形成する面積(片面表面積)に対する、上記植物精油類を含有する無機または有機質担体の占める面積の割合は、粒状パルプでは10〜80%が好ましく、30〜60%がさらに好ましい。またシート状パルプでは10〜90%が好ましく、50〜80%がさらに好ましい。本発明に用いる包装材と植物精油類を担持させた無機または有機質担体の関係において、前記の割合とすることで、包装材内に空気の対流に適した空隙が形成され、有効成分を安定して持続揮散することができる。
【0019】
具体的には、CPPとPETとを積層し、当該PETの上面にさらに不織布を積層した積層体に、孔部を上記範囲の孔径及び個数となるように設けた包装材を、不織布が外側となるようにして、縦4〜15cm、横4〜15cmの袋体に成形する。有機質担体として粒状パルプを使用する場合は、例えば、植物精油類を5〜30%含有させた粒径4〜9mmのパルプ粒を1〜5g程度この袋体に封入し、また、シート状パルプを使用する場合は、例えば、植物精油類を10〜90%含有させた縦3〜12cm、横3〜12cm、厚み1〜5mmのシート状パルプを前記袋体に封入して、本発明の防虫剤を構成すればよい。
【0020】
また、本発明の防虫剤には必要に応じて、例えば、安定化剤(BHT、BHA等)、香料(フローラル、ブーケ等)、色素(青色、黄色、赤色等)、脱臭剤(光触媒、無光触媒、活性炭、炭等)、除菌剤(竹、柿やグレープフルーツの抽出物、銀や銅化合物、そのイオン等)、保留剤(パラフィン、ナフテン等の揮発性の低い有機溶剤等)、タイムインジケータ(終点判別機能)等を併用してもよい。
【0021】
本発明の防虫剤は、包装材に封入された形態をしているので、そのままタンスや引き出し等の所期の場所に必要な個数を配置して用いればよい。この他にも、紙や樹脂等から成形された通気性を有する容器に収納して用いることもできる。このような容器としては、例えば、実開平7−11525号公報、実開平7−7460号公報、特開平9−322689号公報等に記載された容器が挙げられる。
【実施例】
【0022】
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0023】
(実施例1)
厚み12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)と、厚み40μmの無延伸ポリプロピレン(CPP)とを積層し、さらにPETの上面に目付け量14g/mのポリプロピレン製の不織布を積層した積層体により、不織布を外側にした袋体(包装材)を構成した。該袋体のサイズは6cm×9cmである。なお袋体を構成する前に、下記表1に示す針を用いて積層体をCPP側より穿刺した。形成された孔部は、針の直径に相当することが確認された。孔部の個数の割合も表1に併せて示す。
次に、有機質担体として、粒径が約7.5mmの粒状パルプを用い、これに有効成分として下記の組成の植物精油類からなる検体1を含浸させた。有効成分の含有量は、粒状パルプの質量に対し、11%であった。続いて、上記袋体に、当該植物精油類を含有する粒状パルプを、袋体内に3.5g(面積(片面表面積)に占める割合としては約50%)となるように充填し、袋体の開口部をインパルスシールにより接着し、本発明の防虫剤を作製した。
【0024】
(検体1)
α−ピネン 60%
スペアミントオイル 10%
リナロール 30%
(検体2)
リナロール 100%
【0025】
40℃条件下において、防虫剤を作製した直後、3日後、6日後の有効成分の累積揮散率を求めた。累積揮散率は、次の式により計算される。
累積揮散率(%)={(防虫剤作製直後の有効成分含有量)−(所定時間経過後の有効成分含有量)}÷(防虫剤作製直後の有効成分含有量) × 100
なお、40℃条件下における試験は加速試験であり、常温条件下では、40℃条件下における3日後、6日後はそれぞれ常温条件下の18日後、36日後に相当するものである。
結果を表1に示す。
【0026】
【表1】

【0027】
上記の試験例のサンプル3において、検体1にかえて検体2を用いて、同様の試験を行い、有効成分の累積揮散率を求めた。
その結果、累積揮散率は、防虫剤作製直後は0%、3日後は23.2%、6日後は32.7%であった。
【0028】
これらの結果から、いずれも常温条件下では36日で30〜40%の累積揮散率と推定されることから、本発明の防虫効果は2〜3ヶ月間の揮散が持続されるものと考えられる。
また、穿刺を不織布側からしてもほぼ同様の結果であった。
【0029】
(比較例1〜2)
上記実施例1で用いた、検体1を含浸させた粒状パルプ3.5gを袋体に充填せず、むきだしにした防虫剤を比較例1として作製した。
また、実施例で用いたものと同じ構成からなる袋体を穿刺せず、孔部を設けない袋体に検体1を含浸させた粒状パルプ3.5gを充填して封入した防虫剤を比較例2として作製した。
40℃条件下に於いて、各防虫剤を作製した直後、3日後、6日後の有効成分の累積揮散率を実施例1と同様にして求めた。
結果は表2に示す。
【0030】
【表2】

【0031】
表2の結果より、比較例1及び2のような防虫剤では有効成分の揮散が速すぎたり、全く得られなかったりして、防虫剤として使用することはできないことがわかる。
これらの結果と比べて、上記実施例1で示したとおり、本発明の防虫剤が、有効成分の揮散効果の持続性に優れていることが明らかである。
【0032】
(実施例2)
上記実施例1の、サンプル3からなる防虫剤(検体1を含浸したもの)を本実施例2に用いた。
容積50リットルの引き出し用衣装ケースにセーター8着を並べた。セーターは4着ずつ重ね、引き出しの手前と奥の2列に並べた。
供試卵として、産卵後数日のイガの卵20個を用いた。これを羊毛布の袋に入れ、さらにそれをメッシュ状の袋に入れ、上記引き出し用衣装ケースのセーターの最上部に設置した。
続いて、上記引き出し用衣装ケースのセーターの最上部に、上記防虫剤を1個置き引き出しを閉めた状態として、14日後、及び28日後に卵から孵化した幼虫の数より殺卵率を求めた。なお、引き出し用衣装ケースの保管条件は、25℃、60%RHである。
また殺卵率は、次の式により計算される。
殺卵率(%)={20−(孵化した幼虫の数)}/20 × 100
その結果、殺卵率は14日後で38.4%、28日後で46.8%であり、殺卵効果の持続が確認された。尚、防虫剤を用いないで同様の試験を実施した結果、殺卵率は14日後、28日後ともに0%であった。
【0033】
(実施例3)
上記実施例1の、サンプル3からなる防虫剤(検体1を含浸したもの)を本実施例3に用いた。
容積50リットルの衣装ケースに2cm×2cmの羊毛布をいれ、本発明の防虫剤を1個置き、蓋をして密閉し、25℃、60%RHで3日間置いた。
3日後に羊毛布を取り出し、吸水させた脱脂綿を入れたアルミカップ(φ1cm)を設置した口径13cm、高さ10cmのプラスチックカップ(KPカップ)にイガの雌成虫10頭と一緒に入れ、空気孔の開いた蓋をして、2日間25℃条件下に置いた。その2日後に羊毛布への産卵数をカウントする試験を2回行い、その結果をそれぞれ表3に示した。
【0034】
(比較例3)
本発明の防虫剤を用いない以外は実施例3と同様にして羊毛布への産卵数をカウントした。試験はばらつきを抑えるために2回行い、その結果を表3に示した。
【0035】
【表3】

【0036】
表3の結果より、本発明の防虫剤を用いることでイガによる羊毛布への産卵数が顕著に抑制された。この結果から本発明の防虫剤は産卵阻害効果が優れ、防虫効果の持続性に優れていることが明らかである。
【0037】
(実施例4)
厚み12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)と、厚み40μmの無延伸ポリプロピレン(CPP)とを積層し、さらにPETの上面に目付け量14g/mのポリプロピレン製の不織布を積層した積層体により、不織布を外側にした袋体(包装材)を構成した。該袋体のサイズは、縦90mm×横60mmである。なお袋体を構成する前に、直径0.7mmの針を用いて孔部の個数が0.4個/cmとなるように積層体をCPP側より穿刺した。形成された孔部は、針の直径に相当することが確認された。
次に、有機質担体として、パルプ50質量%と綿50質量%を混合して厚み2.8mmのシート状としたシート状パルプを、縦64mm×横54mmの大きさ(3.7g)に裁断したものを用い、これに有効成分として下記の組成の植物精油類からなる検体3を400mg含浸させた。続いて、上記袋体に、当該植物精油類を含有するシート状パルプ(4.1g)を充填し(面積(片面表面積)に占める割合としては約70%)、袋体の開口部をインパルスシールにより接着し、本発明の防虫剤を作製した。
【0038】
(検体3)
α−ピネン 60質量%(240mg)
リロナール 30質量%(120mg)
スペアミント 10質量%(40mg)
【0039】
直径13cm、高さ10cmのプラスチックカップ(KPカップ)に実施例4の防虫剤とイガの成虫(雌雄混合)10頭を入れ、空気孔の開いた蓋をして、25℃、60%RHで24時間静置した。その24時間後に成虫の致死数をカウントした。試験はばらつきを抑えるため3回行い、その致死数合計から致死率を求めた。致死率は、次の式により計算される。
致死率(%)=(致死数の合計/30) × 100
結果を表4に示す。
【0040】
(比較例4〜5)
上記実施例4で用いたものと同じ構成からなる袋体を穿刺せず、孔部を設けない袋体に、検体3を含浸させたシート状パルプ4.1gを封入した防虫剤を比較例4として作製した。
また、実施例4で用いた、検体3を含浸させたシート状パルプ4.1gを袋体に充填せずむき出しにした防虫剤を比較例5として作製した。
比較例4及び比較例5の防虫剤を実施例4と同様にしてイガの成虫の致死数をカウントした。試験は3回行い、その致死数合計から致死率を求めた。結果を表4に示す。
【0041】
【表4】

【0042】
表4の結果より、実施例4は十分な致死効果を示すことが認められた。一方、比較例4はほとんど致死効果が得られず、また、比較例5は致死効果は認められるものの揮散を制御できないため効力の持続に問題があることが容易に想像でき、いずれも防虫剤として適切ではないことがわかった。
【0043】
(実施例5)
厚み12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)と、厚み40μmの無延伸ポリプロピレン(CPP)とを積層し、さらにPETの上面に目付け量14g/mのポリプロピレン製の不織布を積層した積層体により、不織布を外側にした袋体(包装材)を構成した。該袋体のサイズは、縦100mm×横68mmである。なお袋体を構成する前に、直径0.7mmの針を用いて孔部の個数が0.4個/cmとなるように積層体をCPP側より穿刺した。形成された孔部は、針の直径に相当することが確認された。
次に、有機質担体として、パルプ50質量%と綿50質量%を混合して厚み2.8mmのシート状としたシート状パルプを、縦73mm×横58mmの大きさ(4.5g)に裁断し、これに有効成分として植物精油類からなるハーバルミントS5691(品番,塩野香料株式会社製)を2.0g含浸させたものを2枚作製した。続いて、上記袋体に、当該有効成分を含有する2枚のシート状パルプ(合計13g)を充填し(面積(片面表面積)に占める割合としては約62%)、袋体の開口部をインパルスシールにより接着し、本発明の防虫剤を作製した。
【0044】
(実施例6)
有効成分として植物精油類からなるフローラルハーブS5690(品番,塩野香料株式会社製)を用いた以外は、実施例5と同様にして本発明の防虫剤を作製した。
【0045】
(実施例7)
袋体を縦110mm×横120mmとして構成し、有機質担体として実施例5と同質の厚み2.8mmのシート状パルプを、縦80mm×横110mmの大きさ(9.3g)に裁断し、これに有効成分として植物精油類からなるハーバルミントS5691(品番,塩野香料株式会社製)を3.2g含有させたものを2枚作製した以外は、実施例5と同様にして本発明の防虫剤を作製した。袋体が形成する面積(片面表面積)に対する当該有効成分を含有する2枚のシート状パルプ(合計25g)が占める割合は約67%であった。
【0046】
(実施例8)
袋体を縦110mm×横120mmとして構成し、有機質担体として実施例5と同質の厚み2.8mmのシート状パルプを、縦80mm×横110mmの大きさ(9.3g)に裁断し、これに有効成分として植物精油類からなるフローラルハーブS5690(品番,塩野香料株式会社製)を3.2g含有させたものを2枚作製した以外は、実施例5と同様にして本発明の防虫剤を作製した。袋体が形成する面積(片面表面積)に対する当該有効成分を含有する2枚のシート状パルプ(合計25g)が占める割合は約67%であった。
【0047】
実施例5〜8を、25℃及び40℃条件下にそれぞれ静置し、設置直後、1ヶ月後及び2ヶ月後の有効成分の累積揮散率を測定した。累積揮散率は、次の式により計算される。
累積揮散率(%)={(防虫剤作製直後の有効成分含有量)−(所定時間経過後の有効成分含有量)}÷(防虫剤作製直後の有効成分含有量) × 100
なお、40℃条件下における試験は加速試験であり、40℃条件下における1ヶ月後、2ヶ月後はそれぞれ、常温条件下の6ヶ月後、1年後に相当するものである。
結果を表5に示す。
【0048】
【表5】

【0049】
表5の結果より、25℃条件下では、実施例5〜実施例8のいずれにおいても2ヶ月間で30%程度の揮散率であり、安定した揮散が確認できた。また、40℃条件下での揮散率は、常温下での6ヶ月後に相当する1ヶ月後で40〜46%程度であり、常温下での1年後に相当する2ヶ月後で53%〜63%程度であり、長期間の揮散持続性に優れていることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分として植物精油類を含有する無機または有機質担体を、実質的に有効成分を透過しない包装材に封入してなる防虫剤であって、前記包装材が、孔径0.05〜2.00mmφの孔部を0.1〜10.0個/cmの割合で有することを特徴とする防虫剤。
【請求項2】
植物精油類が、スペアミントオイル、ユーカリオイル、キュベバオイル、ハッカオイル、レモングラスオイル、ローズマリーオイル、ラベンダーオイル、ボアドローズオイル、マジョラムオイル、ホップオイル、ベルガモットオイル、ピネン、リナロール、カルボンから選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の防虫剤。
【請求項3】
前記有機質担体が、パルプ成形体またはパルプ集合体から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2に記載の防虫剤。
【請求項4】
包装材が、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアクリルエチレン・酢酸ビニル共重合体およびポリアクリルニトリルから選択される少なくとも1種からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の防虫剤。

【公開番号】特開2009−51832(P2009−51832A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−198475(P2008−198475)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000100539)アース製薬株式会社 (191)
【Fターム(参考)】