説明

除雪機

【課題】硬く締まった雪に対しても除雪効果を高めることができる除雪機を提供する。
【解決手段】機体フレーム9の前方に車輌前後方向に対して略垂直に沿った掻き取りオーガ48bの回転軸48aを有するオーガ部48が配設されており、オーガ部48が揺動機構7により揺動軸48dの軸線回りに揺動される。
ここで、制御部C1によりオーガ揺動除雪モードP2が実行されると、オーガ部48を揺動軸48dの軸線回り一方側(右回転)および他方側(左回転)に交互に揺動させるべく、揺動機構7が制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除雪機に関し、特に、硬く締まった雪に対しても除雪効果を高めることができる除雪機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、機体フレームと、前記機体フレームの前部に配設されたオーガ部とを有し、オーガ部の掻き取りオーガにより積雪を掻き取った上で、排雪シューターから排雪する除雪機が公知である。
また、オーガ部を地面(積雪面)に対して可及的に平行に配置すべく、オーガ部を車輌前後方向に沿った揺動軸の軸線回りに揺動させることにより、機体フレームに対して傾けて配設可能とする構成も公知となっている(例えば、特許文献1参照)。このように、オーガ部を地面に対して可及的に平行に配置させることによって、オーガ部と地面(積雪面)との接触領域を大きくして、掻き取り効率を高めることができる。
【0003】
しかしながら、上記のようにオーガ部と地面との接触面積を大きくしても、硬く締まった雪に対しては、掻き取りオーガによる掻き取りが困難となり、オーガ部が積雪面上に乗り上げてしまう結果、除雪が十分に行えない問題があった。
【特許文献1】特開2004−108105号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記従来技術に鑑みなされたものであり、硬く締まった雪に対しても除雪効果を高めることができる除雪機の提供を、一の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る除雪機は、機体フレームと、前記機体フレームに配設されたエンジンと、前記エンジンによって作動的に駆動される走行装置と、前記機体フレームの前部に配設され、掻き取りオーガの回転軸が車輌前後方向に対して略垂直に沿い且つ前記回転軸が車輌前後方向に沿った揺動軸の軸線回りに揺動可能なように機体フレームに支持されたオーガ部と、前記オーガ部を前記揺動軸の軸線回りに揺動させる揺動機構と、前記揺動機構による前記オーガ部の前記揺動軸回りの揺動を制御する制御部とを具備し、前記制御部は、前記オーガ部を前記揺動軸の軸線回り一方側および他方側に交互に揺動させるオーガ揺動除雪モードを実行し得ることを特徴とするものである。
【0006】
上記構成の除雪機によれば、機体フレームの前方に車輌前後方向に対して略垂直に沿った掻き取りオーガの回転軸を有するオーガ部が配設されており、オーガ部が揺動機構により揺動軸の軸線回りに揺動される。
ここで、制御部によりオーガ揺動除雪モードが実行されると、オーガ部を揺動軸の軸線回り一方側および他方側に交互に揺動させるべく、揺動機構が制御される。
【0007】
このように、オーガ部を揺動軸の軸線回り一方側および他方側に交互に揺動させることにより、オーガ部の回転軸に軸支される掻き取りオーガの車輌幅方向両端部のうち下方に位置する側の端部において、オーガ部の接地圧が高まるため、除雪効果を高めることができる。したがって、硬く締まった雪に対しても効果的に除雪することができる。
【0008】
好ましくは、前記オーガ揺動除雪モード開始時における前記オーガ部の開始位置に対する前記オーガ部の傾斜角を検知する角度検知手段を具備し、前記オーガ揺動除雪モードにおいて、前記オーガ部の前記揺動軸の軸線回りの揺動方向を切り替える切替条件は、前記角度検知手段の検知結果に基づいて、前記傾斜角が所定角度以上となることである。
【0009】
この場合、角度検知手段により、前記オーガ揺動除雪モード開始時におけるオーガ部の開始位置からのオーガ部の傾斜角が検知される。そして、前記オーガ揺動除雪モードにおいて、角度検知手段の検知結果に基づいて、制御部により揺動機構を介してオーガ部が制御され、前記オーガ揺動除雪モード開始時における前記オーガ部の開始位置に対する前記オーガ部の傾斜角が所定角度となる毎に、前記オーガ部の前記揺動軸の軸線回りの揺動方向が切り替えられる。
したがって、予め地面に対して掻き取りオーガの回転軸が略平行となるように、オーガ部を位置させておくことにより、掻き取りオーガの回転軸が地面に対して所定の傾斜角となるまでオーガ部を揺動することができ、実際の地面に合わせた除雪作業を容易に行うことができる。
【0010】
より好ましくは、前記揺動軸の軸線回りの揺動による前記オーガ部の負荷量を検知する揺動負荷検知手段を具備し、前記制御部は、前記揺動負荷検知手段が所定値以上の負荷量を検出した場合、前記切替条件に関わらず、前記オーガ部の前記揺動軸の軸線回りの揺動方向を切り替える。
【0011】
この場合、揺動負荷検知手段により、揺動軸の軸線回りの揺動によるオーガ部の負荷量が検知される。そして、当該検知結果に基づいて、オーガ部に所定値以上の負荷がかかった場合には、前記切替条件を満たしていなくても、制御部により揺動機構を介してオーガ部が制御され、オーガ部の揺動軸の軸線回りの揺動方向が切り替えられる。
これにより、揺動途中であっても、障害物や地形変化により地面に直接接触した場合に、オーガ部への負荷量が増大したことをもって検知し、オーガ部の押し付け力の超過を防止し、障害物や地面の破損を防止するとともに、負荷量の増大によるオーガ部および揺動機構の変形や破損を防止することができる。
【0012】
好ましくは、前記制御部は、前記オーガ揺動除雪モードにおいて、前記走行装置の速度を所定速度以下に制限するべく前記エンジンを制御する。
【0013】
この場合、制御部によりオーガ揺動除雪モードが実行されると、走行装置の速度が所定速度以下に制限される。したがって、通常時より低速で除雪作業が行われることとなり、硬く締まった雪に対して掻き取りオーガが雪を掻き取る回数を相対的に増やすことにより、除雪効果をより高めることができる。
【0014】
好ましくは、前記走行装置は、左右一対のクローラを有し、それぞれのクローラが独立して駆動可能に構成されており、前記制御部は、前記オーガ揺動除雪モードにおいて、前記オーガ部の車輌幅方向両端部のうち下方に位置する端部側のクローラを上方に位置する端部側のクローラに比べて増速させる。
【0015】
この場合、走行装置は、左右一対のクローラであり、それぞれのクローラが独立して駆動される。そして、オーガ揺動除雪モードにおいて、制御部により走行装置が制御されて、オーガ部の車輌幅方向両端部のうち下方に位置する端部側のクローラが上方に位置する端部側のクローラに比べて増速される。
したがって、オーガ部において接地圧が高められた側のクローラのトルクを上昇させて、オーガ部の当該端部における押し付け力を向上させることができ、除雪効果をより高めることができる。その一方で、オーガ部が雪を掻き取る際の負荷による当該接地側のクローラにおけるスリップの発生および回転力の低下を防止し、除雪機の直進安定性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る除雪機によれば、オーガ部を揺動軸の軸線回り一方側および他方側に交互に揺動させることにより、オーガ部の回転軸に軸支される掻き取りオーガの車輌幅方向両端部のうち下方に位置する側の端部において、オーガ部の接地圧が高まるため、除雪効果を高めることができる。したがって、硬く締まった雪に対しても効果的に除雪することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る除雪機の好ましい実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。図1は除雪機の全体側面図、図2は図1の除雪機のオーガ部を示す正面図、図3は図1の除雪機の伝動系統を示す側面図、図4は図1の除雪機の伝動系統を示す上面図、図5はギヤボックスのカバーを取り外した状態の、除雪機の揺動機構の斜視図、図6は除雪機の揺動機構の上面図、図7は図6のギヤボックス部分の拡大上面図、図8は除雪機の揺動機構の背面図、図9はギヤボックス部分の断面背面図、図10は除雪部と機体フレームの取り付けを示す側面図である。
【0018】
図1において、除雪機の全体構成から説明する。機体フレーム9の前部には除雪部1が配設されている。除雪部1は、機体フレーム9の前端に連設したブロアハウジング46内にブロアが収納される。ブロアハウジング46の上部の進行方向左側には、雪吹上口46aが配設され、当該雪吹上口46a上に左右回動可能に投雪シュート47が突出されている。一方、ブロアハウジング46前部には、後述するオーガ入力軸48dに略垂直且つ通常時において車輌方向左右に沿った回転軸48aと、当該回転軸48a回りに回転可能な掻き込みオーガ48bと、前記回転軸48aの両端を軸支した状態で前記掻き込みオーガ48bを収納したオーガカバー48cとで構成されるオーガ部48が配置されている。
オーガ部48は、機体フレーム9に対して前記オーガ入力軸48d回りに揺動可能に構成されている。本実施形態においては、除雪部1全体が機体フレーム9に対しオーガ入力軸48d回りに揺動可能に構成されることにより実現されている。
前記掻き込みオーガ48bと前記ブロアとは同時に駆動されて、該掻き込みオーガ48bの回転軸48a回りの回動によって雪を砕いて中央側へ掻き込み、ブロアによって上方へ吹き飛ばし、投雪シュート47によってガイドされて任意の方向へ排出されるように構成されている。
【0019】
前記投雪シュート47の下部には王冠状に形成された旋回座49が一体的に設けられており、該旋回座49の側方に図示しない旋回モータが取り付けられている。該旋回モータの出力軸上にはギヤを備えており、該ギヤと旋回座49の外周下部に形成した歯部を噛合させている。そして、操作ボックス14上のシュート調整レバーを操作することにより、ギヤが回動してギヤと噛合する旋回座49が回動し、投雪シュート47が回動し、投雪方向が変更される。
なお、旋回モータを用いずに、手動で投雪シュート47を回動する構成としてもよい。この場合は、運転操作部40の側部に投雪シュート回動用ハンドルを配設する。投雪シュート47は、該ハンドルの回動に連動して回動し、投雪方向が変更される。
【0020】
投雪シュート47の上端には、投雪キャップ45が設けられている。該投雪キャップ45の下端は、投雪シュート47の上端に、回動可能に枢支されており、操作ボックス上のシュート調整レバーを操作することによって、投雪キャップ45が上下方向に回動し、投雪角度が変更され、投雪距離を調節することができる。
【0021】
図1に示すように、前記オーガカバー48後部両側下部より左右対称位置に突設されるステー6の下部には、そり8が固設されており、該そり8の底面が地面と接するようにして、前記除雪部1が安定して接地するようにしている。そり8のステー6への取付位置の変更により、除雪部1の高さを微調整することも可能である。
【0022】
なお、本除雪機は、そり8の代わりに、ローラを前記ブロアハウジング46下端に枢設する構成としてもよい。この場合は、除雪部1の安定性が向上すると同時に、機体走行時の抵抗が減少して、除雪作業時に機体が滑らかに走行を行うことができるようになる。
なお、前記ローラを除雪部1に配設する場合にも、ローラの取付位置を上下調節可能に構成することが可能である。
【0023】
前記機体フレーム9の両側後部より後上方に、左右一対のハンドル10が突出されており、該ハンドル10の下部に運転操作部40が形成されている。該ハンドル10の上部間には、操作ボックス14が配置される一方、両側のハンドル10上に後述する走行系伝動機構を操作する走行クラッチレバー51と後述する作業機系伝動機構を操作する作業クラッチレバー52とがそれぞれ配設されている。前記走行クラッチレバー51および作業クラッチレバー52は握っているときのみ作動し、手を放すと停止するデッドマンクラッチレバーとして構成されている。
また、前記操作ボックス14上には図1に示すように、除雪部1のオーガ部48を揺動操作するための揺動操作レバー16と、オーガ部48の制御モードを断続的に揺動させるオーガ揺動除雪モード(後述)に切り替えるモード切替スイッチ(レバー)17と、一定時間オーガ揺動除雪モードを実行させるモード実行スイッチ(ボタン)18とが配設されている。詳しくは後述する。
さらに、操作ボックス14上には、走行変速レバー、エンジン回転レバーおよびシュート調整レバー等が配設され、操作ボックス14下方には、駐車ブレーキも兼用するサイドクラッチレバー53が配設されている。
【0024】
前記機体フレーム9上には、図3に示すように、車輌前方側に出力軸600が突出されたエンジン60が載置される。前記エンジン60の下方には、車輌前方側に入力軸631が突出された状態でHST式変速装置(図示せず)およびデファレンシャル機構(図示せず)等の伝達機構を内部に有するトランスミッション630が配設されている。トランスミッション630の入力軸631からの動力は、HST式変速装置およびデファレンシャル機構等を介してトランスミッション630の左右から突出された出力軸632に伝達される。トランスミッション630の左右には、機体フレーム9に取り付けられたクローラフレーム42に軸支された左右一対のクローラ50R,50Lを有し、それぞれのクローラ50R,50Lが独立して駆動可能なクローラ式走行装置50が配設されている。
より詳しくは、クローラ50R,50Lは、前記クローラフレーム42に軸支され、トランスミッション630の出力軸632と最終伝達機構640を介して作動連結された駆動スプロケット2と、前記クローラフレーム42に軸支され、前記駆動スプロケット2の後方に配設された従動スプロケット3と、前記駆動スプロケット2および前記従動スプロケット3の間に巻回され、駆動スプロケット2の回転に伴って前記従動スプロケット3に動力を伝達するクローラベルト5とを具備している。駆動スプロケット2の回転に伴ってクローラベルト5が回転することにより、除雪機が走行可能となる。
エンジン60の出力軸600と、前記掻き込みオーガ48bの回転軸48aを回転させるオーガ入力軸48dとは、作業機系伝動機構610により作動連結されるとともに、エンジン60の出力軸600と、トランスミッション630の入力軸631とは、走行系伝動機構620により作動連結される。
【0025】
より詳しく説明する。作業機系伝動機構610は、前記エンジン60の出力軸600に相対回転不能に支持された作業駆動プーリ611と、前記オーガ入力軸48dに相対回転不能に支持された作業従動プーリ612と、前記作業駆動プーリ611および前記作業従動プーリ612の間に巻回されたベルト613とを具備する。また、走行系伝動機構620は、前記エンジン60の出力軸600に相対回転不能に支持された(作業駆動プーリ611と同軸の)走行駆動プーリ621と、前記トランスミッション630の入力軸631に相対回転不能に支持された走行従動プーリ622と、前記走行駆動プーリ621および前記走行従動プーリ622の間に巻回されたベルト623とを具備する。
また、作業機系伝動機構610および走行系伝動機構620には、駆動プーリ611,612および従動プーリ621,622の間に配設されたベルト613,623に、ロッドを介して押圧可能なテンションローラ(図示せず)が設けられており、各クラッチレバー51,52の操作に応じて前記テンションローラがベルト613,623を押圧して、ベルト613,623にテンションを与えることにより、エンジン60からの動力が駆動プーリ611,621から従動プーリ612,622に伝動される結果、除雪部1(オーガ部48)およびクローラ式走行装置50に伝動される。
なお、作業機系伝動機構610および走行系伝動機構620は、ベルトカバー43により被覆されている。
【0026】
また、機体フレーム9の左側面中央よりやや前方側に、バッテリー搭載台25が突設され、該バッテリー搭載台25にバッテリー26が搭載されている。該バッテリー26は、支持部材とバッテリーカバーとによって固定されている。なお、本実施例では機体フレーム9の左側面中央よりやや前方側に該バッテリー26を配置しているが、機体後方などに配置することもでき、バッテリーを配設する場所は限定されるものではない。
また、図1に示すように、機体フレーム9の後方内部には、除雪部1の高さを調節するための電動リフティング機構80が配置されている。該電動リフティング機構80は、後述する電動揺動機構と同じく、モータ、歯車機構およびリンク機構を有し、該リンク機構をクローラ式走行装置50に連結し、前記モータの駆動でリンク機構を回動して除雪部1の高さ調節を可能としている。
【0027】
次に、本発明の除雪部1を前記オーガ入力軸48d回り一方側および他方側(左右)に揺動させる電動の揺動機構について図5〜図10を用いて説明する。
前記電動揺動機構7は、アクチュエータとしてのモータ21と、前記モータ21の出力を減速する減速歯車機構を備えたギヤボックス20と、ギヤボックス20の出力である駆動軸64の回転を前記揺動軸としての前記オーガ入力軸48a回りの揺動に変換するリンク機構とを具備する。ここでは、モータ21およびギヤボックス20がオーガ部48(除雪部1)側に設けられ、リンク機構のギヤボックス20とは反対側の端部が機体フレーム9側に取り付けられている。
また、前記減速歯車機構は、前記モータ21の出力軸22に相対回転不能に支持されたウォーム31と、前記ウォーム31に噛合した状態で前記モータ21の出力軸22に対し略垂直な駆動軸64に相対回転不能に支持されたウォームホイル32とを具備する。
さらに、前記リンク機構は、前記駆動軸64の端部に相対回転不能に取り付けられたアーム33と、前記アームの前記駆動軸64の軸線から偏心した位置に一端が取り付けられたリンクロッド55と、機体フレーム9に固着され、前記リンクロッド55の他端が軸線回り相対回転自在に取り付けられた固定軸57とを具備する。
【0028】
順に説明する。除雪部1のブロアハウジング46の側面には、ギヤボックス取付座61が固着されており、その取付座61にギヤボックス20が固設されている。つまり、雪吹上口46aと左右逆側にギヤボックス20が配置されて、ブロアハウジング46上部の空間を有効利用し、ギヤボックス20がブロアハウジング46の上部に位置することで、作業時に巻き上げる泥や水等ができるだけかからないようにしている。
【0029】
前記ギヤボックス20の前面には、アクチュエータとしてモータ21が固設される。該モータ21の出力軸22は、右側方に突出されており、ギヤボックス20の内側に挿通された状態で、後述するように除雪部1から減速歯車機構及びリンク機構を介して機体フレーム9と連結する構成としている。前記ギヤボックス20内には、ウォーム31とウォームホイル32とを有する減速歯車機構が収納支持されている。前記出力軸22の先端は、継手23内に挿入された状態で、ジョイントピン24で回転軸29の一端と固定され、モータ出力軸22と回転軸29とが連結されている。なお、モータ21は油圧モータとすることも可能である。
【0030】
前記回転軸29は、ベアリング62と段付のカラー63を介してギヤボックス20に回転自在に支持され、該回転軸29の中央部にウォーム31が固設されている。なお、前記段付のカラー63の内径部にはブッシュが取り付けられている。該ウォーム31はウォームホイル32と噛合され、該ウォームホイル32は歯車機構の出力側歯車として、その出力軸となる駆動軸64に固設されている。該駆動軸64は、前後方向に沿った状態でギヤボックス20に回転自在に支持されている。該駆動軸64の後側端は、ギヤボックス20より後方に突出しており、当該端部上にアーム33が固設される。駆動軸64の前側端は、平座金65を介してボルト66で固定され、アーム33がウォームホイル32と一体的に回動するように構成されている。ここでは、アーム33の先端は、通常時(機体フレーム9に対し除雪部1が水平である状態)において略水平方向右側に位置している。なお、ギヤボックス20に設けられた軸穴の内径部にはブッシュ等の軸受が取り付けられ、ウォームホイル32の回動による駆動軸64への焼き付きが防止されている。
【0031】
また、前記アーム33の先端にはピン54が固設され、リンクロッド55の一端が前記ピン54に回転自在に支持されている。
また、前記機体フレーム9の前面の右側下方に平面視U字形状のリンクロッド受座56が固設されている。該リンクロッド受座56には固定軸57が挿通されている。前記リンクロッド55の他端には、当該固定軸57を挿通可能とする取付穴を有し、固定軸57の軸線方向に延出された固定パイプ67が固着されている。そして、リンクロッド受座56および固定パイプ67が固定軸57に挿通された状態で、平座金を介して割りピン等で固定されることにより、リンクロッド55が固定軸57回り回動可能に支持されている。
【0032】
このように構成された揺動機構7において、前記操作レバー16を操作して、モータ21を駆動させると、ウォーム31が回転し、該ウォーム31に噛合したウォームホイル32も回転する。
例えば、モータ21を駆動して前記ウォームホイル32を背面視において右回転させると、アーム33も同方向に回転し、該アーム33の先端が下方に下がるように回転する。このとき、リンクロッド55は、自身が下方に下がることにより、機体フレーム9を下方に押し下げ、その反力で除雪部1が相対的に揺動軸48a回り一方側(背面視左回転方向、言い換えるとオーガ部48が左下がりになる状態)に揺動される。
また、ウォームホイル32を背面視において左回転させると、アーム33も同方向に回転し、アーム33の先端が上方に上がるように回転する。このとき、リンクロッド55は、自身が上方に上がることにより、機体フレーム9を上方に引き上げ、その反力で除雪部1が相対的に揺動軸48a回り他方側(背面視右回転方向、言い換えるとオーガ部48が右下がりになる状態)に揺動される。
【0033】
このように、電動で除雪部1の傾きを容易に調整することができ、また、作業者の操作力を軽減することができる。また、ウォーム31とウォームホイル32を用いているため、小型のモータ21を用いて左右揺動ができるとともに、任意位置で停止させてもウォームホイル32は惰性や重量等により回転することがなく、除雪部1を任意の傾きで停止させることができ、微調整も容易にできる。なお、前記アーム33の先端にリンクロッド55を支承するためのピン穴を複数個設け、リンクロッド55を異なるピン穴の位置で回転自在に支持することによって、除雪部1の傾きを調節する範囲を変えることとしてもよい。
また、ギヤボックス20の故障時等の非常時には、アーム33およびリンクロッド受座56からリンクロッド55を外して、手動で傾きを調節することも可能である。
【0034】
前記ギヤボックス20は、上方から下方に向けて開放されており、カバー15により覆われる。図9に示すように、本実施例におけるカバー15は、上部カバー15aと下部カバー15bとで構成されている。上部カバー15aにより、ギヤボックス20の上部から側部の一方側が被装され、下部カバー15bにより、前記側部の一方側から底部が被装されている。
カバー15a,15bを外すと、図5に示すように、前記ウォーム31とウォームホイル32が剥き出しとなり、メンテナンス作業等を行うことができる。このように、前記ウォーム31とウォームホイル32とは、ギヤボックス20に着脱可能に取り付けられたカバー15で覆われているため、ウォーム31とウォームホイル32とが雨や雪などで濡れて錆びたり、石などを噛み込み故障することを防止することができるとともに、作業者の安全を確保することができる。さらに、カバー15は着脱可能であるため、グリス注油等のメンテナンス作業等を容易に行うことができる。また、旋回モータのカバーを一体化し、ギヤボックス20と兼用することにより、雨や雪などの侵入を効果的に防止することができる。
また、ギヤボックス20の底面に位置する下部カバー15bには、図9に示すように、複数個の水抜き穴20aが設けられている。これにより、ギヤボックス20内に水が万一浸入した場合、水はギヤボックス20の底面に向かって流れ、水抜き穴20aから排出される結果、ギヤボックス20内に溜まらない。水抜き穴20aの数は、ギヤボックス20から水が十分に排出できる数であれば限定されるものではない。さらに、水抜き穴20aは作業者の指が入らない程度の大きさとして、安全を確保している。
【0035】
また、図8および図10に示すように、機体フレーム9の前端面上には上ガイドプレート68が固設されている。上ガイドプレート68は、側面視L字状且つ後面視略三日月状に構成されている。また、機体フレーム9の前端下には、下ガイドプレート69が固設されている。下ガイドプレート69は、側面視U字状且つ後面視略三日月状に構成されており、開放側を下に向けて固設されている。上ガイドプレート68の上部と下ガイドプレート69の下部とは、曲率半径及び中心が同一の円弧状に配置されている。そして、この円弧状部は除雪部1の後端の上下に固設されたスペーサ70とカバー受け71とによりガイドされ、オーガ部48の傾倒時にはカバー受け71が前記上ガイドプレート68の下部に形成した水平平面部68aと当接することで、除雪部1の揺動が制限される。
【0036】
前記カバー受け70,71は、ブロアハウジング46後面の上下に略対称に固設されている。スペーサ70の厚さは、ガイドプレート68,69と略同じであり、スペーサ70の内側の円弧状部は、ガイドプレート68,69の外側円弧状部と略同じ形状となるように、ガイドプレート68の外周外側にスペーサ70が配置される。カバー受け71は、後面視でスペーサ70とガイドプレート68,69の一部と重複するように配置された状態で固定されている。
このような構成によれば、除雪部1を左右揺動操作して、最大揺動角度に達すると、スペーサ70の側面が上ガイドプレート68の下部に形成した水平平面部68aと当接することになり、除雪部1がそれ以上同じ方向に揺動しないように規制される。
【0037】
以上のような除雪機において、前記オーガ部48を制御するための本発明に係る制御方法について説明する。図11は図1の除雪機における制御装置を示すブロック図、図12は図11の制御装置の制御方法を示すフローチャートである。
本実施形態の除雪機は、上記構成に加えて、図11に示すように、前記揺動機構7を介して機体フレーム9に対して前記オーガ部48(除雪部1)の前記揺動軸(オーガ入力軸48d)回りの揺動を制御する制御部C1を具備し、前記制御部C1は、前記モード切替スイッチ(ここではレバー)17またはモード実行スイッチ(ここではボタン)18の操作に応じて、前記オーガ部48を前記揺動軸48dの軸線回り一方側(ここでは、オーガ部48が右下がりとなる方向であり、以下、右回りと言う。図2の矢符R方向参照)および他方側(ここでは、オーガ部48が左下がりとなる方向であり、以下、左回りと言う。)に交互に揺動させるオーガ揺動除雪モードP2を実行し得るものである。
前記モード切替レバー17は、通常除雪モードP1とオーガ揺動除雪モードP2とを切り替え可能な操作レバーであり、前記モード実行スイッチ18は、人為操作された際に、所定時間、前記オーガ揺動除雪モードP2が実行されるように構成される。
【0038】
前記制御部C1は、制御プログラムPを実行するマイコン等のコンピュータで構成され、適宜、メモリ、外部記憶装置および入出力手段等(図示せず)が組み込まれており、記憶手段に記憶された情報を読み出すとともに前記制御プログラムPを実行することができる。また、制御部C1は、モード実行ボタン18等の操作時からの時間を計測可能なタイマーC2を有している。このタイマーC2は、コンピュータに内蔵されたものでもよいし、別途外部から接続されたものであってもよい。
本実施形態の制御プログラムPは、オーガ部48を機体フレーム9に対して固定した状態で掻き込みオーガ48bを回転軸48a回りに回転させて除雪作業を行う通常除雪モードP1と、オーガ部48を機体フレーム9に対して揺動させた状態で掻き込みオーガ48bを回転軸48a回りに回転させて除雪作業を行うオーガ揺動除雪モードP2とを有している。
【0039】
また、本実施形態の除雪機は、前記オーガ揺動除雪モードP2開始時における前記オーガ部48の開始位置に対する前記オーガ部48の傾斜角Δθを検知する角度検知手段C3を具備している。具体的には、基準位置(ここでは、オーガ部48の回転軸48aが機体フレーム9に対して水平な位置)からの角度θが角度検知手段C3により検知可能に構成され、前記オーガ揺動除雪モードP2の開始位置における開始角度θと現在位置における現在角度θとの差を演算することにより、前記傾斜角Δθを検知する。
なお、本実施形態における現在角度θは、前記基準位置から前記右回りに正の値、前記左回りに負の値をとるものとする。すなわち、現在角度θは、右回りに増大し、左回りに減少する。
ここで、角度検知手段C3は、揺動機構7のアクチュエータであるモータ21の回転角を検知するポテンショセンサ等とすることにより実現可能である。また、モータ21をステップモータとして、制御パルスをモニタすることとしてもよい。また、実際に揺動軸48d回りの回転角をポテンショセンサにより検知することとしてもよい。
【0040】
また、本実施形態の除雪機は、前記揺動軸48dの軸線回りの揺動による前記オーガ部48の負荷量を検知する揺動負荷検知手段C4を具備している。具体的には、前記モータ21の負荷量を計測するロードセルやモータ21の電流変化により検知可能である。また、地面と接触するオーガ部48の車両幅方向両端部に直接的にロードセル等を設けることとしてもよい。
【0041】
続いて、制御部C1の制御に基づいた前記除雪機の制御モードP1,P2について図12のフローチャートに基づいて説明する。本実施形態の制御モードP1,P2においては、[モード]、[開始角度]、[現在角度]、[傾斜角]、[揺動角]および[揺動方向]の6つのパラメータを用いてオーガ部48の制御が行われる。[モード]は、現在の制御モード(図12において、通常除雪モードP1は「通常」で表し、オーガ揺動除雪モードP2は「揺動」で表す)を示し、[開始角度]は、オーガ揺動除雪モードP2開始時において角度検知手段C3にて検知された角度θを示し、[現在角度]は、現在の角度検知手段C2により検知される角度θを示し、[傾斜角]は、前記現在角度と前記開始角度との差Δθを示し、[揺動角]は、開始角度位置である揺動中心から揺動可能な最大の角度θsを示し、[揺動方向]は、オーガ部48の揺動している方向(前記左または右回転。図12においては単に「左」または「右」で表す)を示している。
【0042】
まず、通常除雪モードP1においては、パラメータ[モード]は、「通常」となっている(ステップS1)。そして、作業クラッチレバー52が操作された(ONとなった)場合(ステップS2でYes)、掻き込みオーガ48bが回転軸48a回りに回転する。この状態で走行クラッチレバー51を操作してクローラ式走行装置50を走行させることにより、除雪作業が行われる。この際、地面の形状に合わせて、適宜、揺動操作レバー16を操作して機体フレーム9に対するオーガ部48の角度を変化させることが可能である。
除雪作業中、制御モードに変更がなければ(ステップS5においてNo)、パラメータ[モード]を「通常」に維持し(ステップS6でNoおよびステップS7)、除雪作業制御を繰り返す。
除雪作業中において、作業クラッチレバー52が操作されなくなる(OFFとなった)場合(ステップS2でNo)、前記作業機系伝動機構610のテンションローラがベルト613へのテンションが弱まる方向に動き、掻き込みオーガ48bの回転が停止される(ステップS4)。
【0043】
ここで、モード切替レバー17またはモード実行ボタン18が操作されると、制御部C1は、制御モードをオーガ揺動除雪モードP2に移行させる(ステップS5においてYes)。現時点では、パラメータ[モード]は、「通常」であるので(ステップS8においてYes)、パラメータ[開始角度]を角度検知手段C3にて検知された現在角度に設定する(ステップS9)とともにパラメータ[揺動方向]を「右」に初期設定(ステップS10)した上で、パラメータ[モード]を「揺動」に変更する(ステップS11)。
なお、モード実行ボタン18が押下操作された際は、当該操作時からタイマーC2により時間計測が行われる。
【0044】
本実施形態のオーガ揺動除雪モードP2の開始時においては、揺動機構7のモータ21をアクチュエータとして駆動して、オーガ部48を揺動軸48d回り一方側(背面視右回転)させる制御を行う(ステップS12でYesおよびステップS13)。このとき、後述するようにモータ21の回転が角度検知手段C3により監視される(ステップS14)。
さらに、オーガ部48の現在角度θは、角度検知手段C3により検知され、検知された値がパラメータ[現在角度]の値に設定される(ステップS15)。加えて、傾斜角Δθ=θ−θが演算され、パラメータ[傾斜角]の値が設定される(ステップS16)。さらに、オーガ部48の前記開始位置(揺動中心)からの最大傾斜角が揺動角θsとして設定される(ステップS17)。揺動角θsは、予め機械的に定められていてもよいし、場合に応じて複数の揺動角θsの中から人為操作により選択可能としてもよい。揺動角θsを人為的に選択可能とすることにより、掻き込みオーガ48bの押し付け力を場合に応じて任意に調整して、除雪効果を調整することができる。
【0045】
そして、設定された前記揺動角θsと演算された傾斜角Δθとが比較され(ステップS18)、傾斜角Δθが揺動角θsを超えるまで、ステップS2からステップS17までが繰り返される(ステップS18でNo)。この際、パラメータ[現在角度]および[傾斜角]の値は、ともに増大しながら順次更新される。
前記傾斜角Δθが揺動角θsを超えると(ステップS18でYes)、揺動方向を切り替えるべく、パラメータ[揺動方向]を「左」に更新する(ステップS19)。
これにより、次回の制御ループにおいて、揺動機構7のモータ21を逆回転させて、オーガ部48を揺動軸48d回り他方側(背面視左回転)させる制御に切り替える(ステップS12でNoおよびステップS20)。
なお、前述のように、オーガ部48の右回転制御中においては、角度検知手段C3によって前記モータ21の回転が監視されるが、前記モータ21が回転していない場合(ステップS14でNo)にはすぐに揺動方向を変更すべくステップS19へと移行する。モータ21が回転していないことは、例えば、角度検知手段C3において検知される値(現在角度θ)が所定時間変化しない(動かない)ことをもって検知可能である。このようにして、モータ21が回転しなくなったことをもってオーガ部48が地面等に接触したことを検知し、それ以上同方向に揺動させないようにする。地面等の保護および除雪機の保護のためである。
【0046】
左回転制御においては、右回転の場合と同様に、パラメータ[現在角度]、[傾斜角]、[揺動角]が設定される(ステップS22からステップS24)。そして、設定された前記揺動角θsと演算された傾斜角Δθとが比較され(ステップS25)、傾斜角Δθが揺動角θsを超えるまで、ステップS2からステップS12およびステップS20からステップS25までが繰り返される(ステップS25でNo)。ただし、前述の通り、本実施形態においては、左回転によりパラメータ[現在角度]は単調減少するため、傾斜角Δθ=θ−θと定義する(ステップS23)ことにより、傾斜角Δθを右回転と同様に単調増加させている。
【0047】
こうして、前記傾斜角Δθが揺動角θsを超えると(ステップS25でYes)、揺動方向を切り替えるべく、パラメータ[揺動方向]を「右」に更新する(ステップS26)。
なお、オーガ部48の左回転制御中においても、角度検知手段C3によって前記モータ21の回転が監視され(ステップS21)、前記モータ21が回転していない場合(ステップS21でNo)にはすぐに揺動方向を変更すべく後述するステップS26へと移行する。
このようにして、交互に揺動方向が切り替えられることにより、オーガ部48が往復揺動される。
そして、モード切替レバー17の操作により制御モードが通常除雪モードP1に戻されるまたはモード実行ボタン18を操作してから所定の時間経過後に自動的に通常除雪モードP1に復帰すると(ステップS5においてNoおよびステップS6においてYes)、オーガ部48の位置をパラメータ[開始位置]の位置に復帰させた上で(ステップS27)、パラメータ[モード]が「通常」に切り替えられる(ステップS7)。オーガ揺動除雪モードP2の終了後、オーガ部48を開始位置に復帰させることにより、再調整を不要とし、作業の効率化を図ることができる。
【0048】
以上のように、制御部C1によりオーガ揺動除雪モードP2が実行されると、揺動機構7がこれに基づいて制御され、オーガ部48が揺動軸48dの軸線回り一方側および他方側に交互に揺動される。
【0049】
このように、オーガ部48を揺動軸48dの軸線回り一方側および他方側に交互に揺動させることにより、オーガ部48の回転軸48aに軸支される掻き取りオーガ48bの車輌幅方向両端部のうち下方に位置する側の端部において、オーガ部48の接地圧が高まるため、除雪効果を高めることができる。したがって、硬く締まった雪に対しても効果的に除雪することができる。
また、モード切替レバー17とは別に、所定時間だけオーガ揺動除雪モードP2に切り替えられ、所定時間経過後通常除雪モードP1に自動的に復帰するモード実行ボタン18を設けることにより、一時的に除雪効果を挙げたい場合に、作業者の手間を省いて迅速かつ効率的にオーガ揺動除雪モードP2を実行させることができる。
【0050】
また、本実施形態においては、前述のように、前記オーガ揺動除雪モードP2において、前記オーガ部48の前記揺動軸48dの軸線回りの揺動方向を切り替える切替条件を前記傾斜角Δθが所定角度(揺動角θs)以上となることとしている。これにより、前記オーガ揺動除雪モードP2の開始時における前記オーガ部48の開始位置に対する前記オーガ部48の傾斜角Δθが所定の揺動角θsとなる毎に、前記オーガ部48の前記揺動軸48dの軸線回りの揺動方向が切り替えられる。
したがって、予め地面に対して掻き取りオーガ48bの回転軸48aが略平行となるように、オーガ部48を位置させておくことにより、掻き取りオーガ48bの回転軸48aが地面に対して所定の傾斜角(揺動角θs)となるまでオーガ部48を揺動することができ、実際の地面に合わせた除雪作業を容易に行うことができる。
【0051】
本実施形態においては、前記揺動負荷検知手段C4により、揺動軸48dの軸線回りの揺動によるオーガ部48の負荷量が検知される。そして、当該検知結果に基づいて、オーガ部48に所定値以上の負荷がかかった場合には、前記切替条件を満たしていなくても、制御部C1により揺動機構7を介してオーガ部48が制御され、オーガ部48の揺動軸48dの軸線回りの揺動方向が切り替えられる。具体的には、図12のフローチャートにおいて、前記所定地位上の負荷を検知した場合、強制的にステップS19またはステップS26まで制御工程をスキップさせる。
これにより、揺動途中であっても、障害物や地形変化により地面に直接接触した場合に、オーガ部48への負荷量が増大したことをもって検知し、オーガ部48の押し付け力の超過を防止し、障害物や地面の破損を防止するととともに、負荷量の増大によるオーガ部48および揺動機構7の変形や破損を防止することができる。
なお、揺動方向を変更する負荷量の基準値は、操作レバー(図示せず)により変更可能に構成されることとしてもよい。
【0052】
また、本実施形態において、前記制御部C1は、前記オーガ揺動除雪モードP2において、前記走行装置50の速度を所定速度以下に制限するべく前記エンジン50を制御する。具体的には、例えば、走行装置50の速度を検知する速度検知手段を設け、所定の速度を超えたら、エンジン50の回転数を下げる制御を行ったり、ブレーキを掛けたり、クラッチを切ったり等の制御を行うことにより実現可能である。
【0053】
この場合、制御部C1によりオーガ揺動除雪モードP2が実行されると、走行装置50の速度が所定速度以下に制限される。したがって、通常時より低速で除雪作業が行われることとなり、硬く締まった雪に対して掻き取りオーガ48bが雪を掻き取る回数を相対的に増やすことにより、除雪効果をより高めることができる。
【0054】
さらに、本実施形態において、前記制御部C1は、前記オーガ揺動除雪モードP2において、前記オーガ部48の車輌幅方向両端部のうち下方に位置する端部側のクローラ50R,50Lを上方に位置する端部側のクローラ50L,50Rに比べて増速させるように制御する。片側のみクローラ50R,50Lを増速させる態様は、前記トランスミッション630のHST変速装置やデファレンシャル機構を制御すること等により実現可能である。また、エンジン60からの動力とは別にクローラ50R,50Lのそれぞれに増速用モータを設け、これを作動制御することによりいずれか一方のクローラ50R,50Lを増速させることとしてもよい。
【0055】
この場合、オーガ揺動除雪モードP2において、制御部C1により走行装置50が制御されて、オーガ部48の車輌幅方向両端部のうち下方に位置する(接地する)端部側のクローラ50R,50Lが上方に位置する(接地しない)端部側のクローラ50L,50Rに比べて増速される。
したがって、オーガ部48において接地圧が高められた側のクローラ50R,50Lのトルクを上昇させて、オーガ部48の当該端部における押し付け力を向上させることができ、除雪効果をより高めることができる。その一方で、オーガ部48が雪を掻き取る際の負荷による当該接地側のクローラ50R,50Lにおけるスリップの発生および回転力の低下を防止し、除雪機の直進安定性を向上させることができる。
【0056】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更、修正が可能である。
【0057】
例えば、前記オーガ部48の前記揺動軸48dの軸線回りの揺動方向を切り替える切替条件は、他の態様を取り得る。
例えば、前記オーガ揺動除雪モードP2において、前記切替条件は、所定時間の経過であることとしてもよい。この場合、前記オーガ揺動除雪モードP2において、所定時間経過毎に、前記オーガ部48の前記揺動軸48dの軸線回りの揺動方向が切り替えられる。
また、例えば、前記オーガ部48の地面に対する傾斜角を検知する絶対角検知手段を具備し、前記オーガ揺動除雪モードP2において、前記切替条件は、前記絶対角検知手段の検知結果に基づいて、前記地面に対する前記オーガ部48の傾斜角が所定角度以上となることであるとしてもよい。この場合、前記オーガ揺動除雪モードにおいて、前記絶対角検知手段の検知結果に基づいて、前記地面に対する前記オーガ部の傾斜角が所定角度となる毎に、前記オーガ部48の前記揺動軸48dの軸線回りの揺動方向が切り替えられる。
また、例えば、前記オーガ部48の機体フレーム9に対する傾斜角を検知する相対角検知手段を具備し、前記オーガ揺動除雪モードP2において、前記切替条件は、前記相対角検知手段の検知結果に基づいて、前記機体フレーム9に対する前記オーガ部48の傾斜角が所定角度となることとしてもよい。この場合、前記オーガ揺動除雪モードにおいて、前記機体フレーム9に対する傾斜角が所定角度となる毎に、前記オーガ部48の前記揺動軸48の軸線回りの揺動方向が切り替えられる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】除雪機の全体側面図である。
【図2】図1の除雪機のオーガ部を示す正面図である。
【図3】図1の除雪機の伝動系統を示す側面図である。
【図4】図1の除雪機の伝動系統を示す上面図である。
【図5】ギヤボックスのカバーを取り外した状態の、除雪機の揺動機構の斜視図である。
【図6】除雪機の揺動機構の上面図である。
【図7】図6のギヤボックス部分の拡大上面図である。
【図8】除雪機の揺動機構の背面図である。
【図9】ギヤボックス部分の断面背面図である。
【図10】除雪部と機体フレームの取り付けを示す側面図である。
【図11】図1の除雪機における制御装置を示すブロック図である。
【図12】図11の制御装置の制御方法を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0059】
7…揺動機構
9…機体フレーム
48…オーガ部
48a…回転軸
48b…掻き取りオーガ
48d…オーガ入力軸(揺動軸)
50…クローラ式走行装置
50R,50L…クローラ
60…エンジン
C1…制御部
C3…角度検知手段
C4…揺動負荷検知手段
P2…オーガ揺動除雪モード
Δθ…傾斜角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体フレームと、
前記機体フレームに配設されたエンジンと、
前記エンジンによって作動的に駆動される走行装置と、
前記機体フレームの前部に配設され、掻き取りオーガの回転軸が車輌前後方向に対して略垂直に沿い且つ前記回転軸が車輌前後方向に沿った揺動軸の軸線回りに揺動可能なように機体フレームに支持されたオーガ部と、
前記オーガ部を前記揺動軸の軸線回りに揺動させる揺動機構と、
前記揺動機構による前記オーガ部の前記揺動軸回りの揺動を制御する制御部とを具備し、
前記制御部は、前記オーガ部を前記揺動軸の軸線回り一方側および他方側に交互に揺動させるオーガ揺動除雪モードを実行し得ることを特徴とする除雪機。
【請求項2】
前記オーガ揺動除雪モード開始時における前記オーガ部の開始位置に対する前記オーガ部の傾斜角を検知する角度検知手段を具備し、
前記オーガ揺動除雪モードにおいて、前記オーガ部の前記揺動軸の軸線回りの揺動方向を切り替える切替条件は、前記角度検知手段の検知結果に基づいて、前記傾斜角が所定角度以上となることであることを特徴とする請求項1記載の除雪機。
【請求項3】
前記揺動軸の軸線回りの揺動による前記オーガ部の負荷量を検知する揺動負荷検知手段を具備し、
前記制御部は、前記揺動負荷検知手段が所定値以上の負荷量を検出した場合、前記切替条件に関わらず、前記オーガ部の前記揺動軸の軸線回りの揺動方向を切り替えることを特徴とする請求項2記載の除雪機。
【請求項4】
前記制御部は、前記オーガ揺動除雪モードにおいて、前記走行装置の速度を所定速度以下に制限するべく前記エンジンを制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の除雪機。
【請求項5】
前記走行装置は、左右一対のクローラを有し、それぞれのクローラが独立して駆動可能に構成されており、
前記制御部は、前記オーガ揺動除雪モードにおいて、前記オーガ部の車輌幅方向両端部のうち下方に位置する端部側のクローラを上方に位置する端部側のクローラに比べて増速させることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の除雪機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−215045(P2008−215045A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−58138(P2007−58138)
【出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】