説明

陽電子放出断層撮影−磁気共鳴断層撮影複合装置および陽電子放出断層撮影−磁気共鳴断層撮影複合装置による検査空間内の検査対象の画像表示方法

【課題】陽電子放出断層撮影画像化と磁気共鳴断層撮影画像化とが互いに妨害しないようにする。
【解決手段】 陽電子放出断層撮影装置は、検査空間に付設された装置部分10と第1の評価ユニット711とを有し、装置部分10は電子装置ユニット12を有するガンマ線検出器ユニット11を含む。磁気共鳴断層撮影装置は導体20を有するストリップ線路アンテナ装置として構成されている高周波アンテナ装置20と、高周波アンテナ装置20よりも検査空間40の遠くに配置されている傾斜磁場コイルシステム22とを有し、傾斜磁場コイルシステム22と高周波アンテナ装置20との間に配置された高周波シールド21および第2の評価ユニット80も有する。各導体20は電子装置ユニット12を有するガンマ線検出器ユニット11を含む。導体20は高周波アンテナ装置20によって生じさせられた高周波放射を透過させないシールドカバーとして構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査空間内の検査対象の画像表示を行なうための陽電子放出断層撮影−磁気共鳴断層撮影複合装置(PET−MRT複合装置)に関する。更に、本発明は、陽電子放出断層撮影−磁気共鳴断層撮影複合装置による検査空間内の検査対象の画像表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴断層撮影(Magnetic Resonance Tomography;MRT)および陽電子放出断層撮影(Positron Emission Tomography;PET)は、今日では、多くの病気および健康上の障害の正確な診断の不可欠の方法である。当該器官または器官部分を正確に3次元で撮像し、更に当該器官または器官部分における生理学的および生化学的な経過を分子レベルまで追跡することができる。
【0003】
MRTの長所は多くの器官を最高級の位置分解能で正確に撮像できることにある。コンピュータ断層撮影(Computer Tomography;CT)に比べ、この方法は潜在的に有害な電離放射線なしで済む。これに対して、PETの長所は、特に機能的な画像化、すなわち生化学的および生理学的な活動状態の撮像にある。しかしながら、PETは例えば約5mmの比較的劣る位置分解能を持ち、この分解能は検査対象の付加的な放射線被曝なしにはもはや増大し得ない。両方法の組み合わせにより、MRTの高い位置分解能をPETからの機能的な情報と共に更に正確な診断に利用することができる。
【0004】
CTおよびPETの複合測定は専門家に既に知られている。この場合に、患者は直接に続けてCT装置の検出器リングおよびPET装置の検出器リングに通される。発生した画像はコンピュータに集められる。類似の考えが陽電子放出断層撮影−磁気共鳴断層撮影についても存在する。例えばPET装置はMRT装置の直後に配置することができる。PETはMRTの後に行なわれる。それゆえ、患者は1つの寝台上でMRT装置からPET装置へ運ばれる。すなわち、両装置は空間的に互いに分離されており、従って両撮像法は互いに独立に時間的に前後して実行される。
【0005】
検査空間を有する診断用MRT装置は知られている(例えば、特許文献1参照)。このMRT装置は高周波アンテナ装置および傾斜磁場コイルシステムを含み、高周波アンテナ装置が傾斜磁場コイルシステムよりも検査空間の近くに配置されている。傾斜磁場コイルシステムと高周波アンテナ装置との間には円筒状の高周波シールドが配置されている。
【0006】
均一磁場を発生するために簡単に調整できるMRT装置用の高周波アンテナ装置は知られている(例えば、特許文献2参照)。この種の高周波アンテナ装置は専門家の世界ではストリップ線路アンテナ装置とも呼ばれる。
【特許文献1】独国特許第4414371号明細書
【特許文献2】米国特許第4825163号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、スペースを節約しかつPET画像化とMRT画像化とが互いに妨害しない陽電子放出断層撮影−磁気共鳴断層撮影複合装置を提供することにある。更に、本発明の他の課題は、時間を節約しかつPET画像化とMRT画像化とが互いに妨害しない方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
PET−MRT複合装置に関する課題は本発明によれば請求項1における特徴事項よって解決される。
【0009】
本発明によれば、PET(陽電子放出断層撮影)装置とMRT(磁気共鳴断層撮影)装置とを備え、検査空間内の検査対象の画像表示を行なうためのPET−MRT複合装置において、
PET装置は、
検査空間に付設され、検査空間から検査対象によって放出されたガンマ線を検出しガンマ線を相応の電気信号に変換するために電子装置ユニットをそれぞれ有する少なくとも2つのガンマ線検出器ユニットを含む装置部分と、
検査対象のPET画像のための電気信号を評価する第1の評価ユニットと
を有し、
MRT装置は、
少なくとも2つの導体を有するストリップ線路アンテナ装置として構成され、検査空間への高周波励起パルスの送出および/または検査空間からの検査対象の磁気共鳴信号の受信を行なう高周波アンテナ装置と、
検査空間から高周波アンテナ装置よりも遠くに配置され、検査空間に傾斜磁場を発生する傾斜磁場コイルシステムと(すなわち、高周波アンテナ装置が傾斜磁場コイルシステムよりも検査空間の近くに配置されている。)、
高周波アンテナ装置と傾斜磁場コイルシステムとの間に配置され、高周波アンテナ装置と傾斜磁場コイルシステムとの減結合を行なう高周波シールドと、
検査対象のMRT画像のための磁気共鳴信号を評価する第2の評価ユニットと
を有し、
ストリップ線路アンテナ装置の各導体は、それぞれ、電子装置ユニットを有する1つのガンマ線検出器ユニットを含み、
ストリップ線路アンテナ装置の導体は、それぞれのガンマ線検出器ユニットおよびそれらに付設された電子装置ユニットのために、高周波アンテナ装置によって生じさせられた高周波放射を透過させないシールドカバーとして構成されている。
【0010】
本発明によれば、MRT装置内へのPET装置部分の組み込みによって、ほぼ単一のMRT装置の寸法に相当するPET−MRT複合装置が提供される。この場合に、PET放射線が高周波アンテナ装置をほぼ透過し、従ってほぼ損失なしにPET装置部分のガンマ線検出器に達するという特性が利用される。更に、ストリップ線路アンテナ装置の導体がシールドカバーとして構成されることにより、一方では高周波アンテナ装置から出る高周波放射がPET装置部分のガンマ線検出器に到達しないこと、他方ではPET装置部分から出る高周波妨害放射がほとんど検査空間へ到達しないことが達成される。しかしながら、傾斜磁場に対してストリップ線路アンテナ装置の導体は透過性に構成されているので、本発明による装置の信頼できるMRT動作が保証されている。
【0011】
本発明によるPET−MRT複合装置の有利な実施態様は請求項1の従属請求項に記載されている。
【0012】
特に好ましくは、ストリップ線路アンテナ装置の各導体は第1の導電膜装置およびこれに対向配置された第2の導電膜装置を有し、両導電膜装置は誘電体によって互いに隔離され、導電膜装置は電気絶縁性の隙間によって分離されている並べて配置された複数の導体路を含み、第1の導電膜装置における隙間は第2の導電膜装置における隙間に対してずらして配置され、隣接する導体路は高周波電流を導く橋絡片を介して互いに接続されている。高周波アンテナ装置によってストリップ線路アンテナ装置の導体中に誘導された電流は隣接する導体間を主として橋絡片を介して流れる。橋絡片を適切に配置するならば、傾斜磁場コイルシステムに起因する複数の導体路を介する環状電流も、MRT装置の動作周波数範囲にある共振周波数を有する電流も全く誘導されない。他方では、傾斜磁場コイルシステムの傾斜磁場に対するストリップ線路アンテナ装置の導体の透過性は橋絡片によっては殆ど邪魔されない。
【0013】
橋絡片の少なくとも一部分は金属箔片によって形成されていると好ましい。それにより、隙間を設けられた基本構成に基づいてストリップ線路アンテナ装置の導体がフレキシブルに形成可能かつ適合可能である。
【0014】
更に、橋絡片の少なくとも一部分は静電容量によって形成されていると好ましい。静電容量の大きさは、静電容量が傾斜磁場コイルシステムの動作周波数に対しては大きなインピーダンスを有し、一方高周波アンテナ装置の動作周波数に対してはインピーダンスを無視できるように選定される。これにより、ストリップ線路アンテナ装置の導体に、傾斜磁場によって誘導された閉じられた電流回路が形成されるのが回避される。
【0015】
第1の評価ユニットは、PET装置部分の内部および外部を延びる少なくとも1つの信号線を介してPET部分の電子装置ユニットに接続され、PET装置部分の内部を延びる信号線の部分は、電子装置ユニットに付設されたそれぞれ1つのフィルタ、特に帯域通過フィルタ、または高域通過フィルタとノッチフィルタとのカスケードを備えている。帯域通過フィルタに関して、下限周波数は、非常に低い周波数の傾斜磁場信号が信号線を介して高周波放射に対して遮蔽されたPET装置部分には到達し得ないように選ばれている。しかしながら、PET信号の十分に低いスペクトル成分は、外側に向けて第1の評価ユニットに到達することができるべきである。帯域通過フィルタの上限周波数は、PET装置部分の高周波スペクトル成分がMRT装置の高周波信号をなんとか妨害しないように選ぶべきである。高域通過フィルタとノッチフィルタとのカスケードを有する構成については、64MHzの中間周波数の場合例えば0.5MHzの帯域幅を有するMRT装置の高周波信号は非常に狭い帯域であることが利用される。ノッチフィルタは正確にMRT装置の高周波信号の周波数に合わせられる。更に、高域通過フィルタの限界周波数は、非常に低い周波数の傾斜磁場信号が、信号線を介して、高周波放射に対して遮蔽されたPET装置部分に到達し得ないように選ぶことができる。その場合に、PET信号の十分に低いスペクトル成分は外に向けて第1の評価ユニットに到達し得るべきである。
【0016】
陽電子放出断層撮影装置部分の全ての構成要素は非磁性材料から構成されていると特に好ましい。それにより、PET−MRT複合装置内の、特に検査空間内の磁場の不均一性が回避される。
【0017】
PET装置部分の電子装置ユニットがそれぞれ少なくとも1つの保護ダイオードを備えているならば特に有利である。それにより、電子装置ユニットに付設された少なくとも1つの保護ダイオードは、MRT装置の高周波アンテナ装置から出る高い破壊的な場の強さを有し得る励起パルスによる破壊から電子装置ユニットを守る。
【0018】
方法に関する課題は本発明によれば請求項9における特徴事項によって解決される。
【0019】
本発明によれば、PET装置とMRT装置とを備えたPET−MRT複合装置による検査空間内の検査対象の画像表示方法において、
PET装置は、
検査空間に付設され、電子装置ユニットをそれぞれ有する少なくとも2つのガンマ線検出器ユニットを含み、ガンマ線検出器ユニットが検査空間から検査対象によって放出されたガンマ線を検出し、電子装置ユニットが検出されたガンマ線を相応の電気信号に変換する装置部分と、
検査対象の陽電子放出断層撮影画像のための電気信号を評価する第1の評価ユニットと
を有し、
MRT装置は、
少なくとも2つの導体を有するストリップ線路アンテナ装置として構成され、検査空間への高周波励起パルスの送出および/または検査空間からの検査対象の磁気共鳴信号の受信を行なう高周波アンテナ装置と、
検査空間から高周波アンテナ装置よりも遠くに配置され、検査空間に傾斜磁場を発生する傾斜磁場コイルシステムと(すなわち、高周波アンテナ装置が傾斜磁場コイルシステムよりも検査空間の近くに配置されている。)、
高周波アンテナ装置と傾斜磁場コイルシステムとの間に配置され、高周波アンテナ装置と傾斜磁場コイルシステムとの減結合を行なう高周波シールドと、
検査対象の磁気共鳴断層撮影画像のための磁気共鳴信号を評価する第2の評価ユニットと
を有し、
少なくとも高周波アンテナ装置から送出された各励起パルスの持続時間の間、第1の評価ユニットは検査対象のPET画像のための電気信号を評価せず、
ストリップ線路アンテナ装置の各導体は、それぞれ、電子装置ユニットを有する1つのガンマ線検出器ユニットを含み、
ストリップ線路アンテナ装置の導体は、それぞれのガンマ線検出器ユニットおよびそれらに付設された電子装置ユニットのために、高周波アンテナ装置によって生じさせられた高周波放射を透過させないシールドカバーとして構成されている。
【0020】
第1の評価ユニットが、少なくとも高周波アンテナ装置から送出された各励起パルスの持続時間の間に測定されたPET信号を評価しないことによって、評価ユニットによって受信された信号が実際にもPET放射に由来し、MRT装置の高周波アンテナ装置から出る高周波妨害放射に由来しないことが保証されている。それにより、本発明による装置の信頼できるPET動作が保証されている。更に、本発明による方法においては、本発明によるPET−MRT装置におけると同じ利点がもたらされる。
【0021】
本発明による方法の有利な実施態様は請求項9の従属請求項に記載されている。
【0022】
高周波アンテナ装置から送出された各励起パルスの持続時間の間、PET装置部分の電子装置ユニットはエネルギーを供給されないと特に好ましい。それにより、PET装置部分における電力損失の低減が達成される。
【0023】
しかし、高周波アンテナ装置から送出された各励起パルスの持続時間の間、PET装置部分の電子装置ユニットが待機動作に切り換えられると有利である。待機動作、すなわちエネルギーを節約した準備動作において、一方ではPET装置部分における電力損失の低減が達成され、他方ではPET装置部分が高速で応答可能であり、大きな遅延なしに撮影モードに切換可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下において本発明の有利な装置の実施例を図面に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこの装置に決して限定されない。具体的に説明するために、図面は縮尺通りに示されておらず、特定の特徴を概略的に示している。
図1は陽電子放出断層撮影(PET)−磁気共鳴断層撮影(MRT)複合装置の概略図を示し、
図2Aは金属箔片からなる橋絡片を有するストリップ線路アンテナ装置の導体の横断面図を示し、
図2Bは金属箔片および静電容量からなる橋絡片を有するストリップ線路アンテナ装置の導体の部分平面図を示し、
図3は図1によるPET−MRT複合装置の切抜き部分図を示し、
図4はPET−MRT複合画像化方法のためのPET−MRT複合装置の作動時の時間的経過を概略的に示す。
【0025】
図1乃至図4において互いに対応する部分は同一の符号を付されている。
【0026】
図1には検査空間40内の検査対象41の画像表示を行なうためのPET−MRT複合装置が横断面図で示されている。PET−MRT複合装置は、MRT装置と、PET装置部分10が組み込まれているPET装置とから構成されている。
【0027】
図を見やすくするために、MRT装置に必須であり検査空間40内に静磁場を発生するコイルは示されていない。座標系100によるx,y,z方向の独立の互いに垂直な傾斜磁場を発生するために、MRT装置は傾斜磁場コイルシステム22を含み、このコイルシステムはここでは単純化されて概略的に示されている。更にMRT装置に付設されて、検査空間40内への励起パルスの発生および/または検査空間40からの検査対象41の磁気共鳴信号の受信を行なう高周波アンテナ装置20が示されている。ここに示されている高周波アンテナ装置20の実施形態は、検査空間40の周りに湾曲させられた複数の平形導体から構成されている。この種の高周波アンテナ装置20はストリップ線路アンテナ装置とも呼ばれる。図1には例として1つのストリップ線路アンテナ装置の4つの導体20が示されている。傾斜磁場コイルシステム22と高周波アンテナ装置20との間には、傾斜磁場コイルシステム22から高周波アンテナ装置20を特に電磁的に減結合させるための円筒状の高周波シールド21が示されている。高周波シールド21は、傾斜磁場コイルシステム22によって発生された信号を低周波領域では透過させ、高周波アンテナ装置20よって発生された信号を高周波領域では透過させないように構成されている。
【0028】
PET装置部分10はこの実施例においては4つのガンマ線検出器11を含む。検査対象41から放出されたPET放射がこれらのガンマ線検出器11により検出され、ガンマ線検出器11に付設された電子装置ユニット12により相応の電気信号が発生される。ガンマ線検出器11として、例えば検査空間40に向けられた多数のシンチレーション検出器111(図3参照)が使用される。
【0029】
電子装置ユニット12を有する個々のガンマ線検出器11は、それぞれ、ストリップ線路アンテナ装置の導体20の内部に配置されている。このために、導体20はある程度のボリュームまで広げられている。導体20は高周波放射をほとんど透過させないように構成されている。しかし、傾斜磁場に関して、導体20は透過性であるように構成されている。
【0030】
電気的なPET信号は、信号線610を介してPET装置部分10の端子13に接続されている評価ユニット711に達する。評価ユニット711はプロセスコンピュータを有し、このプロセスコンピュータにより電気的なPET信号からPET画像が求められる。PET装置部分10のエネルギー供給は、PET装置部分10、特にPET装置部分10の電子装置ユニット12に接続されているオンオフ可能な電源装置710によって確保される。IIIで示されている切抜き部分の詳細は図3から明らかである。電子装置ユニット12を有する個々のガンマ線検出器11は、評価ユニット711のために1つの共通端子13を有するように一括接続されている。同様に、ガンマ線検出器11およびそれに付設された電子装置ユニット12のエネルギー供給は電源装置710への個別接続線を介して行なわれる。ガンマ線検出器11と電子装置ユニット12との相互の接続は図1には図を見やすくするために描かれていない。電子装置ユニット12を有する各ガンマ線検出器11は個々に評価ユニット711に接続され、電子装置ユニット12を有する各ガンマ線検出器11は個々に電源装置710からエネルギー供給されることも考え得る。
【0031】
MRT装置の作動は、同様にプロセスコンピュータを有する他の評価ユニット80を介して行なわれる。高周波アンテナ装置20は、高周波送信−受信ユニット720を介して評価ユニット80に接続されている。高周波アンテナ装置20は、評価ユニット80によって制御されて、高周波送信−受信ユニット720によって励起パルスを送出するために励振される。それに従って高周波アンテナ装置20によって受信された磁気共鳴信号は、再び高周波送信−受信ユニット720を介して、場合によって高周波送信−受信ユニット720内に組み込まれた増幅器により増幅されて、評価ユニット80に伝達される。評価ユニット80は磁気共鳴信号からMRT信号を求める。
【0032】
傾斜磁場コイルシステム22の電流供給は、図1における実施例によれば、同様に評価ユニット80によって制御されて、傾斜磁場コイルシステム22に接続されている電流供給手段722により行なわれる。PET装置部分10に付設された第1の評価ユニット711と、MRT装置に付設された第2の評価ユニット80との間の接続も存在し、この接続を介して第1の評価ユニット711に第2の評価ユニット80から信号が伝達され、これらの信号は励起パルスの持続中に第1の評価ユニット711における評価中断を生じさせる。更に、場合によっては、特にPET装置部分10の電子装置ユニット12にエネルギーを供給するオンオフ可能な電源装置710がMRT装置の駆動に依存して同様に駆動されるようにするために、電源装置710は評価ユニット80にも接続されている。
【0033】
評価ユニット711,80により得られたPET断層画像およびMRT断層画像は、好ましくは画像出力を有するプロセスコンピュータ90に伝達され、プロセスコンピュータ90により断層画像が計算により重ねられ、PET−MRT複合画像として出力される。
【0034】
図2Aにはストリップ線路アンテナ装置の導体20の一部分が横断面図で示されている。ストリップ線路アンテナ装置の導体20は、それぞれ並べて配置された複数の導体路31からなる2つの特に銅製の金属膜装置36,37を含む。各導体路31は電気絶縁性の隙間34によって分離されている。両金属膜装置36,37は、金属膜装置36,37間に配置されている誘電体35、特にガラス繊維組織で強化されたエポキシ材料もしくはテフロン(登録商標)材料からなる誘電体35上に形成されている。両金属膜装置36,37はそれらの導体路31および隙間34がずらされて配置されている。
【0035】
図2Bはストリップ線路アンテナ装置の導体20の一部の平面図を示す。描かれた導体路31はここでは例として互いに平行に構成されている。上側の金属膜装置36は高周波アンテナ装置20側の金属膜装置36である。上側の金属膜装置36の隣接する導体路31は、高周波電流を導く橋絡片32,33を介して互い接続されている。高周波アンテナ装置20によって上側の金属膜装置36に誘導された電流は隣接する導体路31間を橋絡片32,33を介して流れる。橋絡片32,33の一部は、それぞれ隣接する導体路31を電気的に互いに接続する金属箔32として構成することができる。この電気的接続は例えば半田付け、点溶接あるいは圧接により形成することができる。傾斜磁場コイルシステム22によって上側の金属膜装置36に誘導された電流が複数の導体路31を介する閉じられた電流路を形成しないようにするために、いくつかの橋絡片32,33は静電容量33、特にセラミックコンデンサとして構成されている。静電容量33の大きさは、高周波アンテナ20によって誘導された高周波電流にとっては静電容量33が無視できるインピーダンスとなり、一方傾斜磁場コイルシステム22によって誘導された電流にとってはインピーダンスが非常に高くなるように選ばれている。橋絡片32,33の図2Bに示された配置は具体的な説明として用いたにすぎない。橋絡片32,33の配置の選択時には、傾斜磁場コイルシステム22によって誘導された環状電流が複数の導体路を介して流れることができないように、しかも磁気共鳴装置の動作周波数の範囲にある共鳴周波数を有する電流も流れることができないようにすることに注意すべきである。下側の金属膜装置37は描かれた実施例では橋絡片を備えていない。しかし、下側の金属膜装置37の導体路31を上側の金属膜装置36に対応させて同様に橋絡片32,33で接続することも考え得る。図を見やすくするために、図2Bには誘電体35が描かれていない。ストリップ線路アンテナ装置の導体20のここに更には図示されていない他の実施例において、この導体は橋絡片32,33を備えた唯一の金属膜装置36のみを有する。この構成のシールド特性および高周波特性は、図2Aおよび2Bに示された構成の良好なシールド特性および高周波特性よりも劣る。しかし、このような構成は簡単に低コストで作ることができる。
【0036】
図3は図1にIIIを付した切抜き部分を具体的に示す。PET装置部分10は端子13を介して信号線610により評価ユニット711に接続されている。PET装置部分10の内部には、電子装置ユニット12を有するガンマ線検出器11が配置されている。PET装置部分10はストリップ線路アンテナ装置のここでは概略的に示された導体20により囲われている。ガンマ線検出器11は並べて配置された複数のシンチレーション検出器111を有する。高周波アンテナ装置20から出る比較的高い場強さによる破壊から保護するために、電子装置ユニット12は少なくとも1つの保護ダイオード121を備えている。電子装置ユニット12は、フィルタ122、特に帯域通過フィルタを介して、または高域通過フィルタとノッチフィルタとのカスケードとして構成されたフィルタを介して、信号線610iによりPET装置部分10の端子13に接続されている。電子装置ユニット12を有する個々のガンマ線検出器11の間で電子装置ユニット12を有するガンマ線検出器11をまとめて接続する信号線(ここには図示されていない)においても、それぞれ1つの相応のフィルタ122が設けられる。
【0037】
図4には、PET−MRT複合画像化方法のための本発明によるPET−MRT複合装置の作動時における時間的経過がダイアグラムに概略的に示されている。横軸は時間軸tを表し、縦軸は励起パルス23の強さIを表す。単位は任意である。このダイアグラムには更に破線14が描かれている。この破線14は、PET装置に付設された評価ユニット711と場合によってはPET装置部分10に付設された電源装置710との作動状態を再現しようとするものである。破線14は、どの時間帯で評価ユニット711がPET画像のためのPET信号を評価し、場合によってはどの時間帯で電源装置710がPET装置部分10、特に電子装置ユニット12にエネルギーを供給するかを示している。励起パルス23のパルス期間Δt11の期間中に評価ユニット711はPET信号を評価せず、電源装置710は場合によっては遮断されるかまたは待機動作に切り換えられる。時間間隔Δt12を有する2つの励起パルス23間において、時間Δt2(Δt2<Δt12)の間、評価ユニット711が評価モードにあり、かつ電源装置710が投入され、PET装置部分10、特に電子装置ユニット12がエネルギーを供給される。MRT装置のパルス列に依存して評価ユニット711および場合によっては電源装置710を制御することは、図1によれば、PET装置部分10に付設された評価ユニット711および場合によっては電源装置710が評価ユニット80によって制御されることによって行なわれる。評価ユニット80は同様にMRT装置に付設された高周波送信−受信ユニット720を制御する。
【0038】
従って、PET−MRT複合画像化方法により、PET画像およびMRT画像の同時撮影が行なわれる。この複合撮影は、MRT画像の単独撮影と同じ長さの時間だけしかかからない。なぜならば、いずれにせよMRT画像化時に存在する2つの励起パルス23の間における期間Δt12をPET画像の撮影に利用することができるからである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】陽電子放出断層撮影(PET)−磁気共鳴断層撮影(MRT)複合装置の概略図
【図2A】金属箔片からなる橋絡片を有するストリップ線路アンテナ装置の導体の横断面図
【図2B】金属箔片および静電容量からなる橋絡片を有するストリップ線路アンテナ装置の導体の部分平面図
【図3】図1によるPET−MRT複合装置からの切抜き部分図
【図4】PET−MRT複合画像化方法のためのPET−MRT複合装置の作動時の時間的経過を概略的に示すダイアグラム
【符号の説明】
【0040】
10 PET装置部分
11 ガンマ線検出器
12 電子装置ユニット
13 端子
14 破線
20 高周波アンテナ装置
21 高周波シールド
22 傾斜磁場コイルシステム
23 励起パルス
31 導体路
32 橋絡片
33 橋絡片
34 隙間
35 誘電体
36 金属膜装置
37 金属膜装置
40 検査空間
41 検査対象
80 評価ユニット
90 プロセスコンピュータ
100 座標系
111 シンチレーション検出器
121 保護ダイオード
122 フィルタ
610 信号線
610i 信号線
710 電源装置
711 評価ユニット
720 高周波送信−受信ユニット
722 電流供給手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽電子放出断層撮影装置と磁気共鳴断層撮影装置とを備え、検査空間(40)内の検査対象(41)の画像表示を行なうための陽電子放出断層撮影−磁気共鳴断層撮影複合装置において、
陽電子放出断層撮影装置は、
検査空間(40)に付設され、検査空間(40)から検査対象(41)によって放出されたガンマ線を検出しガンマ線を相応の電気信号に変換するために電子装置ユニット(12)をそれぞれ有する少なくとも2つのガンマ線検出器ユニット(11)を含む装置部分(10)と、
検査対象(41)の陽電子放出断層撮影画像のための電気信号を評価する第1の評価ユニット(711)と
を有し、
磁気共鳴断層撮影装置は、
少なくとも2つの導体を有するストリップ線路アンテナ装置として構成され、検査空間(40)への高周波励起パルス(23)の送出および/または検査空間(40)からの検査対象(41)の磁気共鳴信号の受信を行なう高周波アンテナ装置(20)と、
検査空間(40)から高周波アンテナ装置(20)よりも遠くに配置され、検査空間(40)に傾斜磁場を発生する傾斜磁場コイルシステム(22)と、
高周波アンテナ装置(20)と傾斜磁場コイルシステム(22)との間に配置され、高周波アンテナ装置(20)と傾斜磁場コイルシステム(22)との減結合を行なう高周波シールド(21)と、
検査対象(41)の磁気共鳴断層撮影画像のための磁気共鳴信号を評価する第2の評価ユニット(80)と
を有し、
ストリップ線路アンテナ装置の各導体(20)は、それぞれ、電子装置ユニット(12)を有する1つのガンマ線検出器ユニット(11)を含み、
ストリップ線路アンテナ装置の導体(20)は、それぞれのガンマ線検出器ユニット(11)およびそれらに付設された電子装置ユニット(12)のために、高周波アンテナ装置(20)によって生じさせられた高周波放射を透過させないシールドカバーとして構成されている
ことを特徴とする陽電子放出断層撮影−磁気共鳴断層撮影複合装置。
【請求項2】
ストリップ線路アンテナ装置の各導体(20)は第1の導電膜装置(36)およびこれに対向配置された第2の導電膜装置(37)を有し、
導電膜装置(36,37)は誘電体(35)によって互いに隔離され、
導電膜装置(36,37)は電気絶縁性の隙間(34)によって分離されている並べて配置された複数の導体路(31)を含み、
第1の導電膜装置(36)における隙間(34)は第2の導電膜装置(37)における隙間(34)に対してずらされて配置され、
隣接する導体路(31)は高周波電流を導く橋絡片(32,33)を介して互いに接続されている
ことを特徴とする請求項1記載の陽電子放出断層撮影−磁気共鳴断層撮影複合装置。
【請求項3】
橋絡片(32,33)の少なくとも一部分は金属箔片(32)によって形成されていることを特徴とする請求項2記載の陽電子放出断層撮影−磁気共鳴断層撮影複合装置。
【請求項4】
橋絡片(32,33)の少なくとも一部分は静電容量(33)によって形成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の陽電子放出断層撮影−磁気共鳴断層撮影複合装置。
【請求項5】
第1の評価ユニット(711)は、陽電子放出断層撮影装置部分(10)の内部および外部を延びる少なくとも1つの信号線(610,610i)を介して陽電子放出断層撮影装置部分(10)の電子装置ユニット(12)に接続され、
陽電子放出断層撮影装置部分(10)の内部を延びる信号線(610,610i)の部分(610i)は、電子装置ユニット(12)に付設されたそれぞれ1つのフィルタ(122)、特に帯域通過フィルタを備えている
ことを特徴とする請求項1乃至4の1つに記載の陽電子放出断層撮影−磁気共鳴断層撮影複合装置。
【請求項6】
第1の評価ユニット(711)は、陽電子放出断層撮影装置部分(10)の内部および外部を延びる少なくとも1つの信号線(610,610i)を介して陽電子放出断層撮影装置部分(10)の電子装置ユニット(12)に接続され、
陽電子放出断層撮影装置部分(10)の内部を延びる信号線(610,610i)の部分(610i)は、電子装置ユニット(12)に付設されたそれぞれ1つのフィルタ(122)、特に高域通過フィルタとノッチフィルタとのカスケードを備えている
ことを特徴とする請求項1乃至4の1つに記載の陽電子放出断層撮影−磁気共鳴断層撮影複合装置。
【請求項7】
陽電子放出断層撮影装置部分(10)の全ての構成要素は非磁性材料から構成されていることを特徴とする請求項1乃至6の1つに記載の陽電子放出断層撮影−磁気共鳴断層撮影複合装置。
【請求項8】
陽電子放出断層撮影装置部分(10)の電子装置ユニット(12)は、磁気共鳴断層撮影装置の高周波アンテナ装置(20)から送出された励起パルス(23)による破壊から保護するために、それぞれ少なくとも1つの保護ダイオード(121)を備えていることを特徴とする請求項1乃至7の1つに記載の陽電子放出断層撮影−磁気共鳴断層撮影複合装置。
【請求項9】
陽電子放出断層撮影装置と磁気共鳴断層撮影装置とを備えた陽電子放出断層撮影−磁気共鳴断層撮影複合装置による検査空間(40)内の検査対象(41)の画像表示方法において、
陽電子放出断層撮影装置は、
検査空間(40)に付設され、電子装置ユニット(12)をそれぞれ有する少なくとも2つのガンマ線検出器ユニット(11)を含み、ガンマ線検出器ユニット(11)が検査空間(40)から検査対象(41)によって放出されたガンマ線を検出し、電子装置ユニット(12)が検出されたガンマ線を相応の電気信号に変換する装置部分(10)と、
検査対象(41)の陽電子放出断層撮影画像のための電気信号を評価する第1の評価ユニット(711)と
を有し、
磁気共鳴断層撮影装置は、
少なくとも2つの導体を有するストリップ線路アンテナ装置として構成され、検査空間(40)への高周波励起パルス(23)の送出および/または検査空間(40)からの検査対象(41)の磁気共鳴信号の受信を行なう高周波アンテナ装置(20)と、
検査空間(40)から高周波アンテナ装置(20)よりも遠くに配置され、検査空間(40)に傾斜磁場を発生する傾斜磁場コイルシステム(22)と、
高周波アンテナ装置(20)と傾斜磁場コイルシステム(22)との間に配置され、高周波アンテナ装置(20)と傾斜磁場コイルシステム(22)との減結合を行なう高周波シールド(21)と、
検査対象(41)の磁気共鳴断層撮影画像のための磁気共鳴信号を評価する第2の評価ユニット(80)と
を有し、
少なくとも高周波アンテナ装置(20)から送出された各励起パルス(23)の持続時間(Δt11)の間、第1の評価ユニット(711)は検査対象(41)の陽電子放出断層撮影画像のための電気信号を評価せず、
ストリップ線路アンテナ装置の各導体(20)は、それぞれ、電子装置ユニット(12)を有する1つのガンマ線検出器ユニット(11)を含み、
ストリップ線路アンテナ装置の導体(20)は、それぞれのガンマ線検出器ユニット(11)およびそれらに付設された電子装置ユニット(12)のために、高周波アンテナ装置(20)によって生じさせられた高周波放射を透過させないシールドカバーとして構成されている
ことを特徴とする陽電子放出断層撮影−磁気共鳴断層撮影複合装置による検査空間内の検査対象の画像表示方法。
【請求項10】
高周波アンテナ装置(20)から送出された各励起パルス(23)の持続時間(Δt11)の間、陽電子放出断層撮影装置部分(10)の電子装置ユニット(12)はエネルギーを供給されないことを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項11】
高周波アンテナ装置(20)から送出された各励起パルス(23)の持続時間(Δt11)の間、陽電子放出断層撮影装置部分(10)の電子装置ユニット(12)は待機動作に切り換えられることを特徴とする請求項9記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−280929(P2006−280929A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−90095(P2006−90095)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】