説明

集光レンズおよび光走査装置

【課題】 入射角度が大きい場合でも集光効率に優れ、かつ、量産に適した集光レンズを提供すること。
【解決手段】 集光レンズ1は、ビーム走査装置から出射された走査ビームが被照射物で反射した光を光検出器9に集光させるための樹脂製のレンズであって、光入射面2および光出射面3のうち、光入射面2の側には、同心円状の溝21、22、23によってフレネルレンズ状の分割レンズ面11、12、13、14が複数、形成されている。4つの分割レンズ面11、12、13、14のうち、3つの分割レンズ面12、13、14は、同心円状の複数の段差30が形成された回折レンズ面になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集光レンズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビーム走査装置は、レーザプリンタ、デジタル複写機、ファクシミリなどの画像形成装置や、バーコード読取装置、車間距離測定装置などの測定装置に幅広く使用されている。これらの機器のうち、画像形成装置に用いられているビーム走査装置は、レーザ光源から出射されたレーザビームをポリゴンミラーで周期的に偏向させ、感光体の被走査面上に反復走査する。これに対して、測定装置に用いられているビーム走査装置では、走査ビームが被照射物で反射した反射ビームを光検出器で受光することにより、情報を検出している。このとき、反射ビームは、ポリゴンミラーによる走査角度に対応する角度で光検出器に向かう。光検出器に向かう光路には、図3(a)に示す集光レンズ1′が配置され、この集光レンズ1′によって反射ビームを集光する。ここで、集光レンズ1′は、できるだけ大きな光量を光検出器に導くようにできるだけ広い面積を有している。また、集光レンズ1′に対しては、バーコード読取装置の場合には、商品などに接触しないように表面が平面であって、かつ、軽量化を目的に薄いことが要求されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、集光レンズ1′において、検出光量を多く確保することを目的に有効面積を広げると、レンズ肉厚が厚くなり、表面の出っ張りが大きくなってしまう。そこで、集光レンズには、図3(b)に示すようなフレネルレンズ1″が用いられることがある。このようなフレネルレンズ1″であれば、表面の平面化と肉薄化の双方をある程度、満たしている。
【0004】
しかしながら、フレネルレンズ1″の場合には、肉薄化するほどレンズ面の分割数を増やす必要があるため、所望の特性を得ようとすると、製造が困難になるという問題点がある。また、集光レンズには所定の範囲の入射角度をもってビームが入射する。このため、集光レンズへの入射角度が大きい場合には、光検出器の面積から収束光が外れないように集光レンズと光検出器との距離を縮める必要があるが、このようなレイアウトを採用すると、集光力をさらに高める必要があり、そのため、曲率半径を小さくする必要がある。従って、フレネルレンズ1″において分割数をさらに増やすことになるが、このような構造のフレネルレンズ1″の場合、図3(c)の領域A、Bをそれぞれ図3(d)、(e)に拡大して示すように、入射角度が大きい光線L11に溝20′の部分でのケラレが発生し、照度が著しく低下するという問題点がある。さらに、フレネルレンズ1″の外周部では、レンズの接線角が大きくなるため、図3(d)に示す光線L12のように、レンズに入射できず、照度が低下してしまうという問題点がある。
【0005】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、入射角度が大きい場合でも集光効率に優れ、かつ、量産に適した集光レンズを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の集光レンズでは、光入射面および光出射面のうちの少なくとも一方に、溝によってフレネルレンズ状の分割レンズ面が複数、形成され、当該複数の分割レンズ面には、複数の段差が形成された回折レンズ面が含まれていることを特徴とする。
【0007】
本発明において、前記溝、前記分割レンズ面、および前記段差は、例えば、同心円状に形成されている。
【0008】
本発明では、フレネルレンズとしての特徴と回折レンズとしての特徴とを兼ね備えており、屈折と回折の双方を利用する。このため、屈折のみを利用する従来のフレネルレンズと比較して薄型化が容易である。また、分割数を減らすことができるため、分割レンズ面の境界部分に発生する溝での光のケラレが少なく、透過率が向上する。
【0009】
本発明において、前記複数の分割レンズ面における屈折力と、前記回折レンズ面における回折力とは同一方向であることが好ましい。このように、屈折による集光力と回折による集光力とを同一方向にすれば、各分割レンズ面の曲率半径を大きくすることができる。
【0010】
本発明において、前記複数の分割レンズ面は、例えば、互いに異なるレンズ形状を備えている。例えば、前記複数の分割レンズ面は、互いに異なる非球面を備えている。このように各分割レンズ面の形状を最適化すれば、スポット径を小さくすることができる。特に、分割レンズ面を非球面形状とすれば、前記複数の分割レンズ面が所定波長の光に対して単一の焦点を備えている構造を実現できる。その結果、スポット径を小さくすることができる。
【0011】
本発明において、前記分割レンズ面に前記段差が形成されていないときには当該分割レンズ面の回折次数を0次とした場合、前記複数の分割レンズ面では、レンズ中心側に位置する分割レンズ面の回折次数がレンズ外周側に位置する分割レンズ面よりも低いことが好ましい。このように構成すると、外周側の分割レンズ面でも接線角を小さくすることができるため、入射角が大きな光であっても、レンズに入射させることができる。
【0012】
本発明において、前記分割レンズ面同士の境界領域に位置する前記溝の方向が光の屈折方向と略平行であることが好ましい。このように構成すると、溝部分に入射した光が光検出器側に向けて照射されるのを防止することができる。また、溝の角度が広がるため、レンズを製造するための金型に対する加工が容易である。また、レンズ素材を加工して集光レンズを製造する場合でも、加工が容易である。
【0013】
本発明において、レンズ材料は、例えば樹脂である。樹脂製レンズであれば、金型成形により効率よく製造できるなど、安価である。また、軽量化にも適している。
【0014】
本発明において、前記光入射面および前記光出射面のうち、光入射面に前記複数の分割レンズ面が形成され、光出射面は、単調な平面あるいは曲面であることが好ましい。このように構成すると、光出射面については複雑な加工を施す必要がない。
【0015】
本発明において、前記段差のピッチは、以下の式
mλ/(n−1)
但し、mは回折次数、λは波長、nはレンズ素材の屈折率
で表される段差高さの5倍以上であることが好ましい。このように構成すると、回折効率を向上させることができ、透過率を向上させることができる。
【0016】
本発明を適用した集光レンズは、当該集光レンズによって、走査ビームが被照射物で反射した反射ビームを光検出器に集光する光走査装置などに用いられる。
【発明の効果】
【0017】
本発明を適用した集光レンズは、フレネルレンズとしての特徴と回折レンズとしての特徴とを兼ね備えており、屈折と回折の双方を利用する。このため、屈折のみを利用する従来のフレネルレンズと比較して薄型化が容易である。また、分割数を減らすことができるため、分割レンズ面の境界部分に発生する溝での光のケラレが少なく、透過率が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図面を参照して、本発明を適用した集光レンズを説明する。
【0019】
[実施の形態1]
図1(a)、(b)、(c)、(d)はそれぞれ、本発明の実施の形態1に係る集光レンズの構成を示す説明図、その中央領域を拡大して示す説明図、外周側領域を拡大して示す説明図、および外周側の別の領域を拡大して示す説明図である。
【0020】
図1(a)、(b)、(c)、(d)に示す集光レンズ1は、ビーム走査装置から出射された走査ビームが被照射物で反射した光を光検出器9に集光させるための樹脂製のレンズであって、光入射面2および光出射面3のうち、光入射面2の側には、同心円状の溝21、22、23によってフレネルレンズ状の分割レンズ面11、12、13、14が複数、形成されている。これに対して、光出射面3は、単調な平面あるいは曲面である。
【0021】
複数の分割レンズ面11、12、13、14には、同心円状の複数の段差30が形成された回折レンズ面が含まれており、本形態では、4つの分割レンズ面11、12、13、14のうち、3つの分割レンズ面12、13、14が回折レンズ面になっている。
【0022】
ここで、段差30のピッチは、以下の式
h1=mλ/(n−1)
但し、mは回折次数、λは波長、nはレンズ素材の屈折率
で表される段差30の高さh1の5倍以上であり、広い。
【0023】
また、本形態では、複数の分割レンズ面11、12、13、14における屈折力と、回折レンズ面における回折力とは同一方向である。
【0024】
また、複数の分割レンズ面11、12、13、14は、例えば、互いに異なるレンズ形状を備えており、本形態では、レンズ設計データの一例を後述するように、複数の分割レンズ面11、12、13、14は、互いに異なる非球面を備えている。
【0025】
このように構成した集光レンズ1は、フレネルレンズとしての特徴と、回折レンズとしての特徴とを兼ね備えており、光線Lで示すように、入射光を屈折と回折の双方を利用して光検出器9に集光する。ここで、分割レンズ面11、12、13、14同士の境界領域に位置する溝21、22、23の方向は、例えば、図1(c)に光線L11で示すように、光の屈折方向と略平行である。
【0026】
このような集光レンズ1のレンズ設計データは、例えば、以下のとおりである。なお、以下に説明するレンズ設計デ−タにおいて、レンズ面の非球面形状Z(R)は、回転対称で、半径座標rに対して下式
Z(R)=cr2/[1+{1−(1+k)c221/2
+A4・r4+A6・r6+・・
で表される。cは曲率半径Rの逆数、kは円錐定数、A4、A6・・はそれぞれ、4次、6次・・の非球面係数である。なお、非球面係数の表示において、A−4、A−6、A−8・・・は、それぞれA4、A6、A8・・・を示し、Eに続く数字mは、1×10mを意味する。なお、以下の各設計デ−タは最内周から外周へ向かう順番に記述してある。
【0027】
設計データ
分割レンズ面11(回折レンズ面)
半径 (mm)=0〜8.5
Y曲率半径(R)=11.8
コ−ニック定数(k)=0.33427513
4次の係数(A−4)=−2.57E−05
6次の係数(A−6)=−2.56E−06
8次の係数(A−8)=3.89E−08
10次の係数(A−10)=−3.20E−10
回折次数=0
光路差関数R^2=0
光軸方向シフトΔ=0
溝21
半径 (mm)=8.5〜10.6
Y曲率半径(R)=直線
分割レンズ面12(回折レンズ面)
半径 (mm)=10.6〜13.8
Y曲率半径(R)=14.5106212
コ−ニック定数(k)=−1.22252023
4次の係数(A−4)=3.21E−05
6次の係数(A−6)=−3.29E−08
8次の係数(A−8)=3.20E−10
10次の係数(A−10)=−7.70E−13
回折次数=1
光路差関数R^2=−2.272727273
光軸方向シフトΔ=−4
溝22
半径 (mm)=13.8〜15.6
Y曲率半径(R)=直線
分割レンズ面13(回折レンズ面)
半径 (mm)=15.6〜18.0
Y曲率半径(R)=15.81927282
コ−ニック定数(k)=−1.380370538
4次の係数(A−4)=2.92E−05
6次の係数(A−6)=−1.31E−08
8次の係数(A−8)=7.74E−11
10次の係数(A−10)=−1.03E−13
回折次数=1
光路差関数R^2=−1.136363636
光軸方向シフトΔ=−9
溝23
半径 (mm)=18.0〜19.6
Y曲率半径(R)=直線
分割レンズ面14(回折レンズ面)
半径 (mm)=19.6〜22.0
Y曲率半径(R)=17.44361546
コ−ニック定数(k)=−1.31833077
4次の係数(A−4)=1.99E−05
6次の係数(A−6)=2.03E−09
8次の係数(A−8)=1.28E−11
10次の係数(A−10)=−1.30E−14
回折次数=1
光路差関数R^2=−1.136363636
光軸方向シフトΔ=−13
【0028】
このように構成した本形態の集光レンズ1は、フレネルレンズとしての特徴と、回折レンズとしての特徴とを兼ね備えており、入射光を屈折と回折の双方を利用して光検出器9に集光する。このため、屈折のみを利用する従来のフレネルレンズと比較して、レンズ厚を例えば4mmまで薄型化できる。また、集光能力が高いため、集光レンズ1と光検出器9との距離を18mmにまで縮めることができる。
【0029】
また、回折を併用したため、分割数を例えば、4つにまで減らすことができる。従って、溝21、22、23の数が少ない分、分割レンズ面11、12、13、14の境界部分に発生する溝21、22、23での光のケラレが少なく、透過率が向上する。
【0030】
さらに、複数の分割レンズ面11、12、13、14における屈折力と、回折レンズ面における回折力とは同一方向である。このため、各分割レンズ面11、12、13、14の曲率半径を大きくすることができる。
【0031】
さらにまた、複数の分割レンズ面11、12、13、14は、互いに異なる非球面を備えているため、複数の分割レンズ面11、12、13、14の各々が所定波長の光に対して単一の焦点を備えている。このため、光検出器9上でのスポット径を小さくすることができる。
【0032】
また、段差3が形成されていない分割レンズ面11の回折次数を0次とした場合、レンズ中心側に位置する分割レンズ面11の回折次数が0次である一方、レンズ外周側に位置する分割レンズ面12、13、14(回折レンズ面)の回折次数が1次であり、レンズ中心側に位置する分割レンズ面11の回折次数は、レンズ外周側に位置する分割レンズ面12、13、14よりも低い。このため、外周側の分割レンズ面12、13、14でも接線角を小さくすることができるため、図1(c)に光線L13で示すように、入射角が大きな光であっても、集光レンズ1に入射させることができる。
【0033】
また、溝21、22、23の方向が光の屈折方向と略平行であるため、図1(c)に光線L12で示すように、溝21、22、23に入射した光が光検出器側に向けて照射されるのを防止することができる。また、溝21、22、23の角度が広いため、レンズを製造するための金型に対する加工が容易である。
【0034】
また、光出射面3は、単調な平面あるいは曲面であるため、光出射面3については複雑な加工を施す必要がない。
【0035】
なお、段差30のピッチは、段差30の高さh1の5倍以上であるため、段差30の数が少ない。それ故、回折効率を向上させることができ、透過率を向上させることができる。
【0036】
[実施の形態2]
図2(a)、(b)、(c)、(d)はそれぞれ、本発明の実施の形態2に係る集光レンズの構成を示す説明図、その中央領域を拡大して示す説明図、外周側領域を拡大して示す説明図、および外周側の別の領域を拡大して示す説明図である。なお、本形態の集光レンズは、基本的な構成が実施の形態1と同様であるため、互いに対応する部分には同一の符号を付してそれらの詳細な説明を省略する。
【0037】
図2(a)、(b)、(c)、(d)に示す集光レンズ1も、実施の形態1と同様、ビーム走査装置から出射された走査ビームが被照射物で反射した光を光検出器9に集光させるための樹脂製のレンズであって、光入射面2および光出射面3のうち、光入射面2の側には、同心円状の溝21、22、23によってフレネルレンズ状の分割レンズ面11、12、13、14が複数、形成されている。これに対して、光出射面3は、単調な平面あるいは曲面である。
【0038】
本形態では、複数の分割レンズ面11、12、13、14はいずれも、同心円状の複数の段差30が形成された回折レンズ面になっている。
【0039】
ここで、段差30のピッチは、以下の式
h1=mλ/(n−1)
但し、mは回折次数、λは波長、nはレンズ素材の屈折率
で表される段差30の高さh1、h2の5倍以上である。
【0040】
また、本形態では、複数の分割レンズ面11、12、13、14における屈折力と、回折レンズ面における回折力とは同一方向である。
【0041】
また、複数の分割レンズ面11、12、13、14は、例えば、互いに異なるレンズ形状を備えており、本形態では、レンズ設計データの一例を後述するように、複数の分割レンズ面11、12、13、14は、互いに異なる非球面を備えている。
【0042】
このように構成した集光レンズ1は、フレネルレンズとしての特徴と、回折レンズとしての特徴とを兼ね備えており、光線Lで示すように、入射光を屈折と回折の双方を利用して光検出器9に集光する。ここで、分割レンズ面11、12、13、14同士の境界領域に位置する溝21、22、23の方向は、例えば、図2(c)に光線L11で示すように、光の屈折方向と略平行である。
【0043】
このような集光レンズ1のレンズ設計データは、例えば、以下のとおりである。
【0044】
分割レンズ面11(回折レンズ面)
半径 (mm)=0〜9.5
Y曲率半径(R)=12.44212513
コ−ニック定数(k)=−0.57600452
4次の係数(A−4)=1.7459E−05
6次の係数(A−6)=−3.4237E−07
8次の係数(A−8)=4.50666E−09
10次の係数(A−10)=−2E−11
回折次数=2
光路差関数R^2=−2.840909091
光軸方向シフトΔ=0
溝21
半径 (mm)=9.5〜10.8
Y曲率半径(R)=直線
分割レンズ面12(回折レンズ面)
半径 (mm)=10.8〜14.4
Y曲率半径(R)=14.20502747
コ−ニック定数(k)=−1.144824178
4次の係数(A−4)=3.45202E−05
6次の係数(A−6)=−1.16675E−08
8次の係数(A−8)=1.39156E−10
10次の係数(A−10)=−2.10401E−13
回折次数=2
光路差関数R^2=−2.272727273
光軸方向シフトΔ=−4.6
溝22
半径 (mm)=14.4〜15.8
Y曲率半径(R)=直線
分割レンズ面13(回折レンズ面)
半径 (mm)=15.8〜18.4
Y曲率半径(R)=15.26028785
コ−ニック定数(k)=−1.771677837
4次の係数(A−4)=4.79866E−05
6次の係数(A−6)=−3.96942E−08
8次の係数(A−8)=1.31887E−10
10次の係数(A−10)=−1.45567E−13
回折次数=2
光路差関数R^2=−1.136363636
光軸方向シフトΔ=−10
溝23
半径 (mm)=18.4〜20.0
Y曲率半径(R)=直線
分割レンズ面13(回折レンズ面)
半径 (mm)=20.0〜22.0
Y曲率半径(R)=17.64423345
コ−ニック定数(k)=−1.268024731
4次の係数(A−4)=2.09441E−05
6次の係数(A−6)=5.02943E−09
8次の係数(A−8)=1.16161E−11
10次の係数(A−10)=−1.3599E−14
回折次数=3
光路差関数R^2=−1.136363636
光軸方向シフトΔ=−13
【0045】
このように構成した本形態の集光レンズ1は、フレネルレンズとしての特徴と、回折レンズとしての特徴とを兼ね備えており、入射光を屈折と回折の双方を利用して光検出器9に集光する。このため、屈折のみを利用する従来のフレネルレンズと比較して、レンズ厚を例えば5mmまで薄型化できる。また、集光能力が高いため、集光レンズ1と光検出器9との距離を14.5mmにまで縮めることができ、このように縮めた分、光検出器9でのケラレを低減することができる。
【0046】
また、回折を併用したため、分割数を例えば、4つにまで減らすことができる。従って、溝21、22、23の数が少ない分、分割レンズ面11、12、13、14の境界部分に発生する溝21、22、23での光のケラレが少なく、透過率が向上する。
【0047】
また、本形態において、複数の分割レンズ面11、12、13、14における屈折力と、回折レンズ面における回折力とは同一方向である。このため、各分割レンズ面11、12、13、14の曲率半径を大きくすることができる。
【0048】
また、複数の分割レンズ面11、12、13、14は、互いに異なる非球面を備えているため、複数の分割レンズ面11、12、13、14の各々が所定波長の光に対して単一の焦点を備えている。このため、光検出器9上でのスポット径を小さくすることができる。
【0049】
また、レンズ中心側に位置する分割レンズ面11、12、13(回折レンズ面)の回折次数が2次であり、レンズ外周側に位置する分割レンズ面14(回折レンズ面)の回折次数が3次であり、レンズ中心側に位置する分割レンズ面11、12、13の回折次数は、レンズ外周側に位置する分割レンズ面14よりも低い。このため、外周側の分割レンズ面14でも接線角を小さくすることができるため、図2(c)に光線L13で示すように、入射角が大きな光であっても、集光レンズ1に入射させることができる。
【0050】
また、溝21、22、23の方向が光の屈折方向と略平行であるため、図2(c)に光線L12で示すように、溝21、22、23に入射した光が光検出器側に向けて照射されるのを防止することができる。また、溝21、22、23の角度が広いため、レンズを製造するための金型に対する加工が容易である。
【0051】
また、光出射面3は、単調な平面あるいは曲面であるため、光出射面3については複雑な加工を施す必要がない。
【0052】
なお、段差30のピッチは、段差30の高さh1、h2の5倍以上であるため、段差30の数が少ない。それ故、回折効率を向上させることができ、透過率を向上させることができる。
【0053】
[他の実施の形態]
上記形態では、ビーム走査装置から出射された走査ビームが被照射物で反射した光を集光させるための集光レンズを説明したが、このような用途に限らず、大面積で薄型が要求される集光レンズであれば、他の用途に集光レンズに本発明を適用してもよい。
【0054】
また、上記形態では、溝21、22、23、分割レンズ面11、12、13、14、および段差30が同心円状に形成されている集光レンズを説明したが、本発明は、トーリックレンズやシリンドリカルレンズに適用してもよく、シリンドリカルレンズに本発明を適用する場合には、溝や段差はシリンドリカルレンズの軸線に平行に形成されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】(a)、(b)、(c)、(d)はそれぞれ、本発明の実施の形態1に係る集光レンズの構成を示す説明図、その中央領域を拡大して示す説明図、外周側領域を拡大して示す説明図、および外周側の別の領域を拡大して示す説明図である。
【図2】(a)、(b)、(c)、(d)はそれぞれ、本発明の実施の形態2に係る集光レンズの構成を示す説明図、その中央領域を拡大して示す説明図、外周側領域を拡大して示す説明図、および外周側の別の領域を拡大して示す説明図である。
【図3】従来の集光レンズおよびその問題点を示す説明図である。
【符号の説明】
【0056】
1 集光レンズ
2 光入射面
3 光出射面
9 光検出器
11、12、13、14 分割レンズ面
21、22、23 溝
30 段差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光入射面および光出射面のうちの少なくとも一方に、溝によってフレネルレンズ状の分割レンズ面が複数、形成され、
当該複数の分割レンズ面には、複数の段差が形成された回折レンズ面が含まれていることを特徴とする集光レンズ。
【請求項2】
請求項1において、前記溝、前記分割レンズ面、および前記段差は、同心円状に形成されていることを特徴とする集光レンズ。
【請求項3】
請求項2において、前記分割レンズ面に前記段差が形成されていないときには当該分割レンズ面の回折次数を0次とした場合、
前記複数の分割レンズ面では、レンズ中心側に位置する分割レンズ面の回折次数がレンズ外周側に位置する分割レンズ面よりも低いことを特徴とする集光レンズ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、前記複数の分割レンズ面における屈折力と、前記回折レンズ面における回折力とは同一方向であることを特徴とする集光レンズ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかにおいて、前記複数の分割レンズ面は、互いに異なるレンズ形状を備えていることを特徴とする集光レンズ。
【請求項6】
請求項5において、前記複数の分割レンズ面は、互いに異なる非球面形状を備えていることを特徴とする集光レンズ。
【請求項7】
請求項6において、前記複数の分割レンズ面は、所定波長の光に対して単一の焦点を備えていることを特徴とする集光レンズ。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかにおいて、前記分割レンズ面同士の境界領域に位置する前記溝の方向が光の屈折方向と略平行であることを特徴とする集光レンズ。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかにおいて、レンズ素材が樹脂であることを特徴とする集光レンズ。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかにおいて、前記光入射面および前記光出射面のうち、光入射面に前記複数の分割レンズ面が形成され、光出射面は、単調な平面あるいは曲面であることを特徴とする集光レンズ。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかにおいて、前記段差のピッチは、以下の式
mλ/(n−1)
但し、mは回折次数、λは波長、nはレンズ素材の屈折率
で表される段差高さの5倍以上であることを特徴とする集光レンズ。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれかに規定する集光レンズによって、走査ビームが被照射物で反射した反射ビームを光検出器に集光することを特徴とする光走査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−119223(P2006−119223A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−304764(P2004−304764)
【出願日】平成16年10月19日(2004.10.19)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】