説明

集水性能を備える側溝の施工方法および同施工方法に用いられる集水金具

【課題】既設の側溝を略そのまま利用して、工期および施工費用の削減を図りながら、集水性能を備えた側溝を、現場で容易に施工できる、側溝の施工方法を提供する。
【解決手段】既設の側溝1の側溝本体2から蓋版3を撤去し、側溝本体2の両側壁2bの内側に位置する蓋掛り6の上に、側溝の幅方向に延びる集水穴8を備える補強繊維入りコンクリート製の蓋版7を新たに複数設置し、各蓋版7の上面に、側溝の長手方向に延びる集水スリット15を備える集水金具10を取付けると共にネット11を配置し、路盤31上面から、集水金具10の集水スリット15を除く各蓋版7の上面全体に亘り、舗装表層34を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設の側溝を略そのまま使用して、工期短縮を図りながら、集水性能を備える側溝を容易に施工でき、施工後も長期に亘り集水能力を確保できる側溝の施工方法と、同施工方法に用いられる集水金具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車道の路肩に連続設置されるコンクリート製側溝として、断面略U字形の側溝がある。従来タイプの側溝は、内部に長手方向に延びる集水路を形成する底部と側壁から断面略U字形に形成される側溝本体と、同側溝本体の上面開口部の蓋掛りに設置されるコンクリート製の蓋版とを備えた構造とされている。
【0003】
かかる側溝によれば、車道の不透水性舗装路に降った雨水は、横断勾配に沿って側溝側に流れ、蓋版の集水穴から側溝本体内の集水路に流れ落ちるようになっている。
【0004】
不透水性舗装路は、雨足が激しく、降雨量が多くなると、舗装路の表面が水浸しになり、車両走行時のハイドロプレーニング現象等の要因となることから、近年では、透水性舗装路が採用されつつある。透水性の舗装路は、表層の舗装部に比較的大粒の骨材を使用し、骨材間に透水隙間を形成したもので、舗装路に降った雨水は速やかに表層から地中に浸透し、浸透し切れなかった雨水が表層を通り側溝に排水される。
【0005】
透水性舗装路に設置される側溝として、側溝蓋を、上下に貫通する集水穴を形成した非透水性コンクリート層の上に透水性コンクリート層を結合させた2層構造として予め型枠を用いて製作して、側溝本体の上に装着し、透水性舗装路の透水性表層内を通る雨水を側溝本体の舗装路側側壁の上部に形成した通水部を通して側溝蓋の透水性コンクリート層に導入し、そこから非透水性コンクリート層の集水穴を通して側溝本体の内部に集水する技術が知られている(特許文献1参照)。
【0006】
また、側溝本体の上面開口部に上下に貫通する集水穴を形成した側溝蓋を装着し、側溝本体の上面を透水性表層によって覆うようにした技術が知られている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2000−179034号公報
【特許文献2】特開2005−23776号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1の側溝は、予め型枠を用いて側溝蓋を製作するので、現場での側溝蓋の施工が難しく、現場で施工する場合、側溝本体内部に支持材で支持された型枠内にコンクリートを打設して製作する必要があり、型枠の設置、型枠の除去等の作業が必要になり、また、排水を中断せず、続行したままの型枠施工が難しいという問題がある。
【0008】
また、上記特許文献2の側溝は、側溝蓋を現場施工できる利点があるものの、側溝蓋に鋼板を用いており、雨水による腐蝕を招き、腐蝕した鋼板の一部が側溝本体内部に落下し、排水を妨げる問題がある。鋼板に錆止め塗装やメッキ処理等を施したとしても、腐蝕条件の厳しい環境下、たとえば腐蝕ガスや海水、凍結防止剤(塩化カルシウム等)等に晒される環境下での使用では十分な耐久性の確保が難しく、また、錆止め塗装やメッキ処理によるコスト上昇の問題も残る。
【0009】
さらに、上記特許文献2の側溝は、側溝本体の上面に形成した透水性表層が、長年の埃、塵、砂等の蓄積により目詰まりして、集水能力が低下し、大量の降雨があった場合には舗装路上が水浸しになるおそれがある。透水性表層の目詰まりの問題は、大量の降雨の他、大量の火山灰や黄砂が降下する地域にあっては特に問題が大きい。
【0010】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたもので、既設の側溝を略そのまま利用して、工期短縮を図りながら、集水性能を備える側溝を容易に施工することができ、また、施工後は長期に亘り側溝の十分な集水能力を維持確保できる、側溝の施工方法と、同施工方法に用いられる集水金具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に係る側溝の施工方法は、
既設側溝の側溝本体から蓋版を撤去し、
前記側溝本体の両側壁の蓋掛りの上に、溝幅方向に延びる集水穴を備える補強繊維入りコンクリート製の蓋版を新たに複数設置し、
当該設置した各蓋版の上面に、側溝の長さ方向に所定のスリット幅を保持して延びる集水スリットを備える集水金具を取付け、
各蓋版の、集水金具の被取付面以外の上面に、ネットを配置し、
前記側溝本体に隣接する既設の舗装表層または当該舗装表層の除去後の路盤上面から、集水スリットの周囲で各蓋版の上面全体に亘り、舗装表層を形成することを特徴とする。
【0012】
請求項1に係る側溝の施工方法によると、既設の側溝を略そのまま利用して、短工期かつ少ない施工費用で、集水性能を備える側溝を現場で容易に施工できる。すなわち、既設の蓋版を撤去しかつ新たに側溝本体の開口部に設置した蓋版が永久型枠の役割をして、施工後の型枠取外し等の付帯作業を不要とし、また、各蓋版の上に予めネットを敷くから、施工時に舗装材料の骨材等がネットに保持されて、骨材等が蓋版の集水穴から側溝本体内部に落下せず、施工を確実にし、短工期かつ少ない施工費用で現場で容易に施工できる。
【0013】
蓋版は補強繊維入りコンクリート製で強度が高く、舗装材料の敷設、転圧に際して下から支持材で蓋版を支持しなくてすむ。また、側溝本体内を排水等が流れていても、側溝の施工を中断することなく続行できて、施工の作業効率化、施工期間の短縮に寄与する。
【0014】
施工に際し、補強繊維入りコンクリート製の蓋版とネットを用いるから、施工後の側溝は、鋼板を用いる場合のごとき雨水による腐蝕の心配がなく、従って、舗装材料が側溝内に落下して集水能力を阻害するおそれがなく、腐蝕ガスや海水、凍結防止剤(塩化カルシウム等)等に晒される厳しい環境下であっても、十分な耐久性を確保することができる。
【0015】
なお、本発明の施工方法は、側溝が設けられる舗装路であれば、適用できる場所は、車道、歩道、駐車場、公園などに限られない。
【0016】
本発明の請求項2に係る側溝の施工方法は、前記側溝本体に隣接する舗装表層を路盤から除去した際に、当該舗装表層の除去分に合わせて前記側溝本体の両側壁の上部を切除することを特徴とする。
【0017】
請求項2に係る側溝の施工方法によると、舗装表層の除去分に合わせて側溝本体の両側壁の上部を切除することにより、側溝本体の両側壁の上面を路盤上面と同一レベルに合わせ、その後の新たな舗装表層の、路盤上面から蓋版上面にかけての連続した敷設作業を容易にする。
【0018】
本発明の請求項3に係る側溝の施工方法は、前記各蓋版を前記蓋掛りに設置した状態で、各蓋版の両側面と側溝本体の側壁内面との間に形成される隙間に充填材を充填することを特徴とする。
【0019】
請求項3に係る側溝の施工方法によると、蓋版と側溝本体の側壁内面との間に形成される隙間に充填材を充填して、各蓋版のがたつきを無くし、各蓋版の上に敷設した透水性舗装表層に車両走行時の振動等が加わっても、舗装表層にひび割れや裂け目が生じることを防ぐことができる。また、これにより、側溝本体の上面開口部に対して厚み寸法や幅寸法の小さい既存の蓋版や蓋版成型用の型枠をそのまま利用でき、側溝の施工費用をさらに低減できる。
【0020】
本発明の請求項4に係る側溝の施工方法は、前記集水金具を、前記蓋版の上面の集水穴に挿通されるボルトにより、蓋版の上面に取付けることを特徴とする。
【0021】
本発明の請求項4に係る側溝の施工方法によると、各蓋版にボルト挿通用の穴を新たに加工することなく、各蓋版に設けられた集水穴を利用して、同集水穴にボルトを挿通して、同ボルトにより、金具本体の取付部を各蓋版の上面に取付けることができる。これにより、各集水金具を各蓋版の上面に効率良くボルトで取付けることができ、施工の作業効率に優れる。
【0022】
本発明の請求項5に係る側溝の施工方法は、集水金具の一部に位置決め用ピンを取付け、同位置決め用ピンを蓋版の上面の集水穴に挿入して、集水金具を蓋版に対し位置決めすることを特徴とする。
【0023】
請求項5に係る側溝の施工方法によると、位置決め用ピンを用いて、各集水金具を蓋版の上面の所定位置に容易に取付けることができ、集水金具の取付作業性に優れ、施工の作業効率を良くする事ができる。
【0024】
本発明の請求項6に係る集水金具は、所定の幅を保持して互いに平行に配置される断面L字形の金具本体と補助片とを連結部で互いに連結してなり、前記金具本体の取付部が、前記蓋版の上面の集水穴に挿通されるボルトにより、蓋版の上面に取り付けられる構成であることを特徴とする。
【0025】
本発明の請求項7に係る集水金具は、前記ボルトが、ボルト軸の下端に左右に延びる一対の水平係止部を備えると共に、ボルト軸の上端にナットが螺合される構成であり、金具本体の取付部に設けた長穴状のボルト穴からその直下の蓋版の集水穴にボルト軸の下端を左右一対の水平係止部と共に挿通して、左右一対の水平係止部を蓋版の下面に係止させると共に、当該係止状態でボルト軸の上端のナットを締めることにより、金具本体の取付部が各蓋版の上面に固定される構成であることを特徴とする。
【0026】
本発明の請求項7に係る集水金具によると、集水穴を利用して、ボルトにより、集水金具を蓋版の上面に簡単に効率よく取り付けることができる。
【0027】
本発明の請求項8に係る集水金具は、金具本体または補助片のいずれか一方に、蓋版に対し集水金具を位置決めするための、集水穴に挿入される位置決め用ピンが取り付けられていることを特徴とする。
【0028】
本発明の請求項9に係る集水金具は、所定の広幅を保持して互いに平行に配置される断面L字形の金具本体と補助片との間の内側空間に格子状に区画された多数列の集水スリットを形成する集水枠体が収納配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
以上説明したように、本発明に係る側溝の施工方法によると、既設側溝を略そのまま利用して、工期短縮を図りながら、車道や歩道等から側溝まで連続する、集水性能を備える側溝を現場で容易にかつ効率良く施工できる。また、施工後の側溝は、雨水等による腐蝕に対して十分な耐久性を備え、幅広い環境下で使用できるという効果を奏する。
【0030】
さらに、集水スリットを備える集水金具を蓋版上面の所定位置に取付けることで、透水性を備える舗装表層が、長年の塵埃や砂の蓄積によって目詰まりし、透水性舗装表層自体の集水性能が次第に低下した場合であっても、舗装表層上を流れる雨水が集水スリットから側溝内に集水されるので、側溝の集水性能を長期に亘り維持確保できるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1ないし図9は本発明の第1実施形態を示すもので、図1に示す側溝1は、車道30の路肩に連続して設置されており、本発明の施工方法により施工される。以下に、図1に示す側溝1の施工手順を説明する。
【0032】
まず、図2に示すように、既設の側溝本体2から、既設の蓋版3を撤去する。
側溝本体2は、断面略U字形のコンクリート製ブロックであり、図2に示すように、底部2aと左右の側壁2bとによって、その内部空間に長手方向に延びる集水路4が形成されている。この側溝本体2の上面開口部5には撤去された蓋版3が設置されていた左右の蓋掛り6が両側壁2bの上端内面側に位置して形成されている。
【0033】
既設の蓋版3を撤去したら、図3に示すように、既設の側溝本体2に隣接する路盤31上の既設の不透水性舗装表層32を除去する。また、不透水性舗装表層32の除去分に合わせて、既設の側溝本体2の両側壁2bの上部2cを切除する。
【0034】
次に、図4に示すように、既設の側溝本体2の両側壁2bの内側に位置する蓋掛り6の上に、前記撤去した蓋版3よりも板厚の薄い補強繊維入りコンクリート製の蓋版7を新たに連続して複数設置する。この新設の蓋版7には、上下面に貫通し溝幅方向に延びる複数個(図6の例では、幅方向に2列、長さ方向に4列、合計8個)の集水穴8が設けられている。
【0035】
新設の蓋版7によれば、補強繊維をコンクリート内に混入することによりコンクリートの養生、固化後に圧縮強度、引張強度、衝撃性、靱性等を向上させることができ、これにより、蓋版7の厚さを薄くして軽量化を図りつつ、強度を高めることが可能である。蓋版7のコンクリート内に混入する補強繊維としては、ガラス繊維、炭素等の無機繊維、合成樹脂等の繊維が挙げられる。例えば繊維径が約15μm程度、繊維長さが約38μm程度の繊維を集束したものを混入して混練する。
【0036】
上記蓋版7は、図2に示す従来の蓋版3の厚さよりも薄く、図4に示すように、蓋版7の厚さTが、蓋版7を側溝本体2の蓋掛り6に設置した状態で、蓋版7の上面が図4に示す側溝本体2の前記蓋掛り6から上部2cを切除した後の上端面と実質上同一レベルになるものを用いる。
【0037】
また、蓋版7の幅W1は、従来の蓋版の幅と同じでもよいが、本実施形態では、従来の蓋版の幅に比して狭いもの、すなわち、左右の幅W1が前記側溝本体2の上面開口部5の幅W2に対して少し小さいサイズのものを用いることができる。これにより、専用のサイズの蓋版を新たに型枠から製作する必要はなく、既存の複数サイズの中から適宜最適な蓋版を選択し、これを有効利用できる。この場合、蓋版7の左右両側面と各蓋掛り6の奥の側壁内面との間に形成される隙間Sには、図5に示すように、アスファルトやモルタル等の充填材9を充填し、蓋版7と側溝本体2との間のがたつきを無くすようにする。
【0038】
次に、図5および図6に示すように、既設の側溝本体2の両蓋掛り6の上に設置した新設の各蓋版7の上面に、路肩の縁石33に沿って延びる集水金具10を路肩寄りに取付ける。また、集水金具10の周囲で各蓋版7に跨ってその上面の大部分にネット11を配置する。
【0039】
前記集水金具10は、図7(A)(B)に示すように、所定の幅を保持して互いに平行に配置される断面L字形の金具本体12と補助片13とを連結部14で互いに連結したものであり、互いに平行に配置される断面L字形の金具本体12と補助片13との間の内側空間に上下に連通する集水スリット15が形成されている。集水金具10の大きさは、例えば、蓋版7のサイズが長さ×幅×幅=500mm×380mm×60mmの場合、長さ500mm弱とし、集水スリット15の幅は9mmとする。また、集水金具10の高さは、蓋版7上面から路盤31の上に施工される透水性舗装表層34の厚さと同じとし、車道の場合は50mm、歩道の場合は40mmの高さとする。
【0040】
集水金具10の断面L字形の金具本体12の取付部16には、蓋版7の集水穴8の位置に合わせて両端にボルト穴17が設けられている。したがって、各ボルト穴17から直下の蓋版7の集水穴8に専用ボルト18を挿通し、同専用ボルト18によって、集水金具10が蓋版7の上面に取り付けられるようになっている。また、補助片13の下面には、両端の集水穴8に挿入することで蓋版7に対する集水金具10を位置決めする位置決め用ピン19が、ちょうど各ボルト穴17と同じ位置に溶接等により取付け固定されている。
【0041】
専用ボルト18は、図5および図8(A)に示すように、ボルト軸20の下端に集水穴8を上下に挿通可能な左右の水平係止部21を備えると共に、ボルト軸20の上端にナット22が螺合される構造となっている。また、集水金具10側のボルト穴17は、ボルト軸20の下端の左右の水平係止部21がそのまま挿通できるように、幅方向に延びる長穴形状となっている。
【0042】
上記専用ボルト18を用いて、予めボルト軸20の上端にナット22を螺号しておき、図6に示すように、蓋版7の上面の縁石33寄りに集水スリット15が長手方向を向くように集水金具10を配置し、かつ、補助片13の位置決め用ピン19を両端の集水穴8に挿入して集水金具10側のボルト穴17と蓋版7側の集水穴8とを位置合わせした状態で、図5に示すように、各ボルト穴17から直下の集水穴8にかけて、専用ボルト18の、ボルト軸20の下端の左右の水平係止部21,21を一旦挿通し、ボルト軸20を軸回りに90度回動させる。
【0043】
ボルト軸20を90度回動させると、図8(B)に示すように、ボルト軸20の水平係止部21が蓋版7の下面に係止する姿勢となるので、ボルト軸20の回動を阻止しながら、ボルト軸20の上端のナット22を締めていく。これにより、図9に示すように、蓋版7の上面に集水金具10を取付けることができる。また、集水金具10の集水スリット15は、集水穴8を通じて集水路4に連通する。このようにして、全ての蓋版7の上面に集水金具10を取付けると共に、蓋版7の上面の、集水金具10の被取付面から車道寄りの大部分に、各蓋板7に跨って、ネット11を配置していく。
【0044】
次いで、図9に示すように、路盤31の上面から、集水スリット15を除く前記各蓋版7の上面全体に亘り、ネット11の上から、透水性舗装材料23を敷設し、転圧する。集水金具10の周囲には、取付部16の上面および補助片13と路肩の縁石33の空間に透水性舗装材料23を敷設する。これにより、路盤31の上面から蓋版7の上面、縁石33の内側面にかけて連なる透水性舗装表層34が形成される。透水性舗装材料23としては、3mm〜10mm程度の大きさの粒度の天然石やスラッジ、砕石等よりなる骨材にバインダーとしてのアスファルトを混合、混練して、層内部には排水性を良好にする透水空隙を有し、耐久性と耐候性が良好なアスファルト混合物を使用する。また、バインダーとしてアスファルトの替りに、合成樹脂、例えばエポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤等を使用してもよい。かかる透水性舗装表層34は、集水スリット15を残して、集水金具10の上端面と同一レベルの高さまで形成される。
【0045】
前記ネット11は、透水性舗装材料23の骨材が蓋版7の上面の集水穴8から内部に落下して集水路4を詰まらせて排水効率が低下するのを防ぐ一方、バインダーとしてのアスファルトと蓋版7との結合強度を高める役目も果たす。ネットの孔の大きさは、骨材やアスファルトが通過しない大きさであればよい。ネットに用いられる材質としては、補強繊維、例えばガラス繊維、炭素等の無機繊維、合成樹脂等の繊維の他、ステンレンス金属製などが挙げられる。
【0046】
なお、側溝本体2は、地盤中の基礎コンクリート35およびその下の砕石36により支持されている。
【0047】
以上の手順に従って施工された側溝によれば、車道30の透水性舗装表層34に降った雨水は、横断勾配に沿って透水性舗装表層34の表面又は内部を通り、各蓋版7の集水穴8を通って、側溝本体2内部の集水路4に流れ落ち、集水される。また、大雨時など、透水性舗装表層34の透水能力を超える降雨があった場合には、透水舗装表層34内に浸透し切れなかった雨水が、透水性舗装表層34の上面から縁石33近くの集水スリット15にことごとく流れ込み、集水穴7を通り、集水路4内に集水される。
【0048】
透水性舗装表層34内に浸透し切れなかった雨水は集水スリット15にことごとく流れ込むから、透水性舗装表層34の透水能力を超える降雨があった場合でも、車道30に雨水が溜まって車道に水溜りが形成されることがない。また、長年の埃、塵、砂等の蓄積により、透水性舗装表層34の透水能力が次第に低下したとしても、集水スリット15が透水性舗装表層34の透水能力を補う役目を果たす。
【0049】
また、例えば波形鋼板を永久型枠として使用する場合は、長期にわたる湿空間での型枠板の腐蝕による側溝内への落下や骨材の落下が排水の妨げとなることがあるが、補強繊維コンクリートからなる蓋版7を永久型枠として使用するから、かかる型枠板の腐蝕による不具合は生じない。この点は、透水性舗装材料23の敷設、転圧作業時に蓋版7の上面に敷くネット11についても、腐蝕の心配がなく、骨材が集水穴8を通して側溝本体2の内部に落下し、集水を妨げることもない。
【0050】
図10は本発明の第2の実施形態を示すもので、透水性の低い舗装表層37に、比較的密粒度の舗装材料を用いて施工する例である。図1に示す構成部材又は構成部品と同一部材又は部品には、同一符号を付してその説明を省略する。
【0051】
本実施形態における集水金具40は、第1実施形態の集水金具10と比較すると、より幅広の距離Lをおいて互いに平行に配置される断面L字形の金具本体41および断面L字形の補助片42とを連結部43で互いに連結すると共に、それら金具本体41および補助片42によって形成される内側空間Sに、格子状に区画された多数の集水スリット44を有する幅100mmの金属製の集水枠体45を収納配置した構成となっている。金具本体41および補助片42の内面には集水枠体45を支える支持片46が突設されている。
【0052】
本実施形態の施工において、集水金具40の金具本体41および補助片42を、専用ボルト18によって図10に示すようにして、蓋版7の上面に取り付ける。すなわち、金具本体41の取付部46の両端のボルト穴(図示せず)および補助片42の取付部47の両端のボルト穴(図示せず)に専用ボルト18を上からその下の各集水穴8まで挿通し、蓋版7の下方に突出する各専用ボルト18の下端の左右の水平係止部(図示せず)を90度回動させて蓋版7の下面に係止した状態で、専用ボルト18の上端のナット22を締め付け、これにより集水金具40を蓋版7の上面に固定する。
【0053】
次に、集水金具40の金具本体41および補助片42によって形成される内側空間Sに、集水枠体45を収納配置する。同内側空間Sに集水枠体45が収納配置された状態では、集水枠体45の各集水スリット44が蓋版7の集水穴8を通して集水路4と連通している。
【0054】
次に、集水金具40を除く蓋版7の上面に、集水穴8を覆うようにして補強繊維ネット11を敷き込み、その上に、路盤31の上面から続く透水性舗装表層37を、集水枠体45を除く蓋版7の上面に、集水金具40の上端面と同一高さまで施工する。
【0055】
寒冷地等の場所においては、舗装表層材料に密粒度の高い骨材を使用する場合があり、本実施形態では、格子状に幅方向および長さ方向に多数列の集水スリット44を備える集水枠体35を用いることで、舗装表層37の上面を流れる雨水をことごとく各集水スリット44から側溝本体2の集水路4内に集水することができる。
【0056】
集水枠体45は、格子状に形成されて強度があり、車道の一部として大型車両が通過しても十分な強度を確保でき、また、各集水スリット44の幅は9mm以下であるので、通行人が靴の踵を挟んでしまうこともない。
【0057】
以上説明した実施形態は、既設の側溝本体2に隣接する路盤31上の既設の舗装表層32を除去した後の路盤31上に、舗装表層を新設する例であるが、既設の舗装表層をそのまま残し、既設の舗装表層32の上から、集水スリット44の周囲で新設の蓋版7の上面全体に亘り、舗装表層を新設するようにしてよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明に係る側溝の施工方法は、既設の側溝本体を略そのまま利用して、短期間おび低コストで施工できる、集水性能を備えた側溝の施工方法として、利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に係る第1実施形態を示すもので、本発明の施工方法により施工された側溝を示す説明図、
【図2】図1に示す側溝の施工手順を示すもので、既設の側溝本体から既設の蓋版を撤去した状態を示す断面図、
【図3】図2に示す側溝本体に隣接する舗装表層を除去すると共に、側溝本体の側壁の上部を切除した状態を示す断面図、
【図4】図3に示す側溝本体の開口部に新設の蓋版を設置した状態を示す断面図、
【図5】図4に示す新設の蓋版の上面に集水金具を取付ける様子を示す断面図、
【図6】新設の蓋版の上面に集水金具を取付けると共に、ネットを配置した状態を示す平面図、
【図7】(A)は集水金具の平面図、(B)は集水金具の側面図、
【図8】(A)は専用ボルトの側面図、(B)は専用ボルトの作用を示す平面図、
【図9】図6に示す蓋版の上面に集水スリットを除き車道の路盤上面から続く透水性舗装表層を施工した状態を示す断面図、
【図10】本発明の第2実施形態を示すもので、本発明の施工方法により施工された側溝を示す説明図である。
【符号の説明】
【0060】
1 側溝
2 側溝本体
2a 底部
2b 側壁
2c 側壁の上部
3 蓋版(既設の蓋版)
4 集水路
5 上面開口部
6 蓋掛り
7 蓋版(新設の蓋版)
8 集水穴
9 充填材
10,40 集水金具
11 ネット
12,41 金具本体
13,42 補助片
14,43 連結部
15,44 集水スリット
16,46,47 取付部
17 ボルト穴
18 専用ボルト
19 位置決め用ピン
20 ボルト軸
21 水平係止部
22 ナット
23 透水性舗装材料
30 車道
31 路盤
32 不透水性舗装表層
33 縁石
34 透水性舗装表層
35 基礎コンクリート
36 砕石
37 舗装表層
45 集水枠体
46 支持片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設側溝の側溝本体から蓋版を撤去し、
前記側溝本体の両側壁の蓋掛りの上に、溝幅方向に延びる集水穴を備える補強繊維入りコンクリート製の蓋版を新たに複数設置し、
当該設置した各蓋版の上面に、側溝の長さ方向に所定のスリット幅を保持して延びる集水スリットを備える集水金具を取付け、
各蓋版の、集水金具の被取付面以外の上面に、ネットを配置し、
前記側溝本体に隣接する既設の舗装表層または当該舗装表層の除去後の路盤上面から、集水スリットの周囲で各蓋版の上面全体に亘り、舗装表層を形成することを特徴とする側溝の施工方法。
【請求項2】
前記側溝本体に隣接する舗装表層を路盤から除去した際に、当該舗装表層の除去分に合わせて前記側溝本体の両側壁の上部を切除することを特徴とする、請求項1記載の側溝の施工方法。
【請求項3】
前記蓋版を前記蓋掛りに設置した状態で、各蓋版の両側面と側溝本体の側壁内面との間の隙間に充填材を充填することを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の側溝の施工方法。
【請求項4】
前記集水金具を、前記蓋版の上面の集水穴に挿通されるボルトにより、蓋版の上面に取付けることを特徴とする、請求項1ないし請求項3記載の側溝の施工方法。
【請求項5】
集水金具の一部に位置決め用ピンを取付け、同位置決め用ピンを蓋版の上面の集水穴に挿入して、集水金具を蓋版に対し位置決めすることを特徴とする、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の側溝の施工方法。
【請求項6】
請求項1記載の側溝の施工方法に用いる集水金具であって、所定の幅を保持して互いに平行に配置される断面L字形の金具本体と補助片とを連結部で互いに連結してなり、前記金具本体の取付部が、前記蓋版の上面の集水穴に挿通されるボルトにより、蓋版の上面に取り付けられる構成であることを特徴とする、集水金具。
【請求項7】
前記ボルトは、ボルト軸の下端に左右に延びる一対の水平係止部を備えると共に、ボルト軸の上端にナットが螺合される構成であり、金具本体の取付部に設けた長穴状のボルト穴からその直下の蓋版の集水穴にボルト軸の下端を左右一対の水平係止部と共に挿通して、左右一対の水平係止部を蓋版の下面に係止させると共に、当該係止状態でボルト軸の上端のナットを締めることにより、金具本体の取付部が各蓋版の上面に固定される構成であることを特徴とする、請求項6記載の集水金具。
【請求項8】
金具本体または補助片のいずれか一方に、蓋版に対し集水金具を位置決めするための、集水穴に挿入される位置決め用ピンが取り付けられていることを特徴とする、請求項6記載の集水金具。
【請求項9】
所定の広幅を保持して互いに平行に配置される断面L字形の金具本体と補助片との間の内側空間に格子状に区画された多数列の集水スリットを形成する集水枠体が収納配置されることを特徴とする、請求項6記載の集水金具。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−221683(P2009−221683A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−65060(P2008−65060)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(591077678)インフラテック株式会社 (17)
【Fターム(参考)】