説明

難燃剤

【課題】自ら被膜となり、燃焼時に必要な空気の供給を抑制する効果を併せ持つ、難燃剤を提供する。
【解決手段】(a)以下の式で表わされるアミノ基を含むシラン化合物
4−n−Si−(OR’)
(式中、Rはアミノ基含有の有機基を表わし、R’はメチル基、エチル基またはプロピル基を表わし、nは1〜3から選択される整数を表わす);及び
(b)HBO及びBからなる群から選択される少なくとも1種のホウ素化合物:
を、(a)成分1モルに対して(b)成分0.02モル以上の比率で反応させて得られる反応生成物を含む、高分子物質と、
(c)リン化合物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物と、
を含む、難燃剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自ら被膜となり、燃焼時に必要な空気(酸素)の供給を抑制する効果を併せ持つ、難燃剤に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック、ゴム、木材、繊維などの有機材料は燃焼しやすいため、難燃剤を用いて難燃処理や防炎処理を施す場合がある。
【0003】
難燃剤は、三酸化アンチモン、水酸化マグネシウムなどの無機系、リン酸エステル化合物をはじめとするリン系や、テトラブロモビスフェノールAなどの臭素系などの種類がある。
また、粉体の難燃剤は難燃処理や防炎処理を施したい被処理物に練りこむことにより、また、液状の難燃剤は難燃処理や防炎処理を施したい被処理物に含浸あるいは練りこむことにより、使用される。
【0004】
特許文献1(特開2003−253123号公報)には、有機ケイ素化合物と、ホウ酸あるいはリン酸と、水を含有する水系難燃処理組成物を、木材に処理した難燃化材料が、記載されている。特許文献1に記載の水系難燃処理組成物は、水を必須成分として含有しており(特許請求の範囲)、ゲル化させず(段落番号0059)、しかも、皮膜を形成するものではない。
【0005】
【特許文献1】特開2003−253123号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
粉体の難燃剤をプラスチックやゴムに練りこんで難燃性を付与した場合、その組成物中に相溶性のない粉体が混合することから、プラスチックやゴムの強度が低下することが多い。また、液状の難燃剤をプラスチックやゴムに練りこんで難燃性を付与した場合、プラスチックやゴムに含まれる難燃剤が可塑剤として働き、また、浸みだしてしまうことがあるので、用途が限定されることがある。
【0007】
さらに、液状の難燃剤を木材などに含浸させるには、加工時間が長くかかったり、大掛かりな設備を要することがある。
【0008】
本発明は、前記の課題を解決したものであり、自ら被膜となり、燃焼時に必要な空気(酸素)の供給を抑制する効果を併せ持つ、難燃剤を提供するものである。
【0009】
本発明は、ゾル・ゲル法などで必要とされる加水分解などの複雑な工程を要せず、透明性が高く、かつハードコート特性に優れた高分子物質に、リン化合物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を配合してなる新規な難燃剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は前記の課題を解決したものであり、
(a)以下の式で表わされるアミノ基を含むシラン化合物
4−n−Si−(OR’)
(式中、Rはアミノ基含有の有機基を表わし、R’はメチル基、エチル基またはプロピル基を表わし、nは1〜3から選択される整数を表わす);及び
(b)HBO及びBからなる群から選択される少なくとも1種のホウ素化合物:
を、(a)成分1モルに対して(b)成分0.02モル以上の比率で反応させて得られる反応生成物を含む、高分子物質と、
(c)リン化合物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物と、
を含む、難燃剤に関する。
【0011】
更に、本発明は、前記の高分子組成物を含むコーティング剤に関する。
【発明の効果】
【0012】
ゾル・ゲル法などで必要とされる加水分解などの複雑な工程を要せず、しかも耐候性が高く、優れた光学特性(例えば透明性など)と、かつハードコート特性に優れ、しかも、自ら被膜となり、燃焼時に必要な空気(酸素)の供給を抑制する効果を併せ持つ、難燃剤が得られる。本発明の難燃剤は、木材、紙、プラスチック、ゴムなどに対して難燃性を付与することが可能である。たとえば、本発明の難燃剤を、紙または布に塗布することにより、粉落ちのない難燃性シートを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(詳細な説明)
本発明における(a)成分と(b)成分とを反応させて得られる反応生成物を含む高分子物質に関しては、本発明者らにより、すでに、2005年5月31日に日本特許出願がなされ(特願2005−159037)、また、2006年5月31日にPCT国際出願がなされた(PCT/JP2006/310859)。本件出願は、これらの日本特許出願及びPCT国際出願の内容を参照することにより、本出願に取り込む。
【0014】
(a)成分(アミノ基を含むシラン化合物)と(b)成分(ホウ素化合物)を混合すると、反応し、数分から数十分で透明で粘稠な液体となり、固化する。これは、ホウ素化合物が、(a)成分中のアミノ基を介して架橋剤として働き、これらの成分を高分子化させて、その結果、粘稠な液体となり、固化するからであると考えられる。なお、(a)成分は液体である。本発明では、上記(a)成分と(b)成分との反応に際し、水を使用しない。
【0015】
(a)成分は、以下の式で表わされるアミノ基を含むシラン化合物である。
4−n−Si−(OR’)
(式中、Rはアミノ基含有の有機基を表わし、R’はメチル基、エチル基またはプロピル基を表わし、nは1〜3から選択される整数を表わす。)
【0016】
ここで、Rはアミノ基含有の有機基を表わすが、たとえば、モノアミノメチル、ジアミノメチル、トリアミノメチル、モノアミノエチル、ジアミノエチル、トリアミノエチル、テトラアミノエチル、モノアミノプロピル、ジアミノプロピル、トリアミノプロピル、テトラアミノプロピル、モノアミノブチル、ジアミノブチル、トリアミノブチル、テトラアミノブチル、及び、これらよりも炭素数の多いアルキル基またはアリール基を有する有機基を挙げることができるが、それらに限定されない。γ―アミノプロピルや、アミノエチルアミノプロピルが特に好ましく、γ―アミノプロピルが最も好ましい。
【0017】
(a)成分中のR’はメチル基、エチル基またはプロピル基を表わす。その中でも、メチル基及びエチル基が好ましい。
【0018】
(a)成分中のnは1〜3から選択される整数を表わす。その中でも、nは2〜3であるのが好ましく、nは3であるのが特に好ましい。
すなわち、(a)成分としては、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランが特に好ましい。
なお、本発明においては、(a)成分のアミノ基を含むシラン化合物としては、当該シラン化合物を予め加水分解した加水分解品を使用することもできる。
【0019】
(b)成分は、HBO及びBからなる群から選択される少なくとも1種のホウ素化合物である。(b)成分は、好ましくは、HBOである。
【0020】
(a)成分と(b)成分との反応における両成分の使用量は、(a)成分1モルに対して(b)成分0.02モル以上の比率であり、好ましくは、0.02モル〜8モルの比率、より好ましくは、0.02モル〜5モルの比率である。
(a)成分1モルに対し、(b)成分が0.02モル未満では、固化に要する時間が長くなったり、充分に固化しなかったりすることがある。また、(b)成分が8モルを越すと、(b)成分が(a)成分に溶解せず残ってしまうことがある。
【0021】
本発明の高分子物質(a)成分と(b)成分との混合条件(温度、混合時間、混合方法など)は、適宜選択することができる。通常の室温条件では、数分から数十分で透明で粘稠な液体となり、その後、固化する。固化する時間や得られる反応生成物の粘度や剛性はホウ素化合物の割合でも異なる。
【0022】
前記ホウ素化合物(b)は、好ましくは、炭素数1〜7のアルコールに溶解したホウ素化合物アルコール溶液である。炭素数1〜7のアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、各種プロピルアルコール、各種ブチルアルコール、及びグリセリンなどが挙げられるが、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールが好ましい。当該アルコール溶液を使用することにより、(b)成分を(a)成分に溶解する時間を短縮できる。なお、取り扱い上アルコール中のホウ素化合物の濃度は高いほうが好ましい。
【0023】
前記反応生成物は、好ましくは、水を添加して加水分解する工程を経ないで(a)成分と(b)成分を反応させて得られる反応生成物である。
【0024】
(c)成分は、リン化合物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物である。
【0025】
(c)成分を配合することにより、本発明の難燃剤には、難燃機能が付与される。
【0026】
(c)成分は、リン化合物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物であれば特に限定されない。(c)成分としては、例えば、リン酸及びそのエステルを挙げることができる。
【0027】
(c)成分は、本発明の難燃剤中に、(a)成分100重量部に対し、好ましくは1重量部〜30重量部、より好ましくは2〜25重量部添加する。難燃性は、(c)成分の濃度に依存するが、(c)成分の量が、1重量部未満であると難燃効果を示しにくいことがあり、30重量部を超えると飽和するため経済性の点で好ましくない。
【0028】
(c)成分としては、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート等の芳香族リン酸エステル類、1,3−フェニレンビス(ジキシレニル)ホスフェート、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)等の芳香族縮合リン酸エステル類、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(クロロエチル)ホスフェート等の含ハロゲンリン酸エステル類、ポリオキシアルキレンビスジクロロアルキルホスフェート等の含ハロゲン縮合リン酸エステル類、ポリリン酸、及び赤リン等が挙げられる。
【0029】
本発明の難燃剤は、pH≧3になるようにするのが好ましい。
【0030】
本発明の難燃剤は、(d)成分として、金属アルコキシド及び/又は金属アルコキシドの縮合物を更に含むことができる。すなわち、前記(c)成分添加後(d)成分を添加させることができる。(d)成分を添加することにより、得られる反応生成物中の金属塩の含有率を高めることができ、化学特性をより向上させることができるとともに、(d)成分を用いない場合と同様の粘稠な液体の状態となるので、繊維やフィルム状に加工することができる。
【0031】
(d)成分の金属アルコキシドの金属としては、Si、Ta、Nb、Ti、Zr、Al、Ge、B、Na、Ga、Ce、V、Ta、P、Sb、などを挙げることができるが、これらに限定されない。好ましくは、Si、Ti、Zr、Alであり、より好ましくは、Si、Ti、Zrであり、また、(d)成分の金属アルコキシドは液体であることが好ましいため、Si、Tiが特に好ましい。(d)成分の金属アルコキシドのアルコキシド(アルコキシ基)としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、及びそれ以上の炭素数を有するアルコキシ基を挙げることができる。メトキシ、エトキシ、プロポキシ、及びブトキシが好ましく、メトキシ及びエトキシがより好ましい。
【0032】
(d)成分の金属アルコキシドの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、ブチルトリブトキシシラン、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、メチルトリメトキシチタン、エチルトリエトキシチタン、プロピルトリプロポキシチタン、ブチルトリブトキシチタン、テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトラプロポキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウム、メチルトリメトキシジルコニウム、エチルトリエトキシジルコニウム、プロピルトリプロポキシジルコニウム、及びブチルトリブトキシジルコニウムなどを挙げることができる。その中でも、好ましいものとしては、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、及びメチルトリメトキシシランを挙げることができ、より好ましいものとしては、テトラエトキシシラン及びテトラメトキシシランを挙げることができる。
【0033】
(d)成分の金属アルコキシドの使用量は、(a)成分1モルに対して10モル以下の比率が好ましい。より好ましくは、0.1モル〜5モルの比率である。(a)成分1モルに対し、(d)成分が0.1モル未満では、前述したような(d)成分を添加する効果が得られにくくなることがあり、また、(d)成分が5モルを越すと、硬化時間が長くなることがある。
【0034】
(d)成分の金属アルコキシドの縮合物としては、以下の式(d1)及び(d2)からなる群から選択される少なくとも1種の式で表わされる金属アルコキシドの縮合物(d)を挙げることができる。
【化1】


(式中、Rは、アルキル基を表わし、その一部は水素であってもよく、Rは、夫々独立に同一であっても異なっていてもよく、mは2〜20から選択される整数を表わし、Mは、Si、Ti及びZrからなる群から選択される少なくとも1種の金属を表わす。)
【0035】
すなわち、前記(a)成分と(b)成分との反応に際して、あるいは、反応後、(d)成分を添加することができる。(d)成分を添加することにより、硬度を高めることができ、化学特性をより向上させることができるとともに、粘稠な液体の状態となるので、繊維やフィルム状に加工することができる。
【0036】
(d)成分である前記金属アルコキシドの縮合物の添加量は、前記(a)成分1モルに対し、金属アルコキシドモノマー重量換算で、0.1〜10モルであるのが好ましく、1モル以上であるのが、より好ましい。すなわち、(d)成分の添加量が多すぎる場合には、硬度が低下する傾向があり、逆に、少なすぎる場合には、Si含有量が少なくなるので用途によっては硬度が低下したり化学的耐久性の問題が発生することがある。また、(d)成分の添加量が多すぎる場合には、本発明の難燃剤の被膜を得るための硬化時間が長くなる傾向がある。
【0037】
(d)成分中のRはアルキル基を表わし、その一部は水素であってもよく、Rは、夫々独立に同一であっても異なっていてもよいが、Rは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、及びそれ以上の炭素数を有するアルキル基であり、メチル基あるいはエチル基であるのが好ましい。
【0038】
(d)成分中のmは、2〜20から選択される整数を表わすが、3〜10であるのが好ましく、5であるのが最も好ましい。
【0039】
(d)成分中のMは、Si、Ti及びZrからなる群から選択される少なくとも1種の金属を表わすが、SiまたはTiであるのが好ましく、Siが最も好ましい。
【0040】
(d)成分を構成する金属アルコキシドモノマー単位としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、ブチルトリブトキシシラン、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、メチルトリメトキシチタン、エチルトリエトキシチタン、プロピルトリプロポキシチタン、ブチルトリブトキシチタン、テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトラプロポキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウム、メチルトリメトキシジルコニウム、エチルトリエトキシジルコニウム、プロピルトリプロポキシジルコニウム、及びブチルトリブトキシジルコニウムなどを挙げることができる。
【0041】
(d)成分が前記式(d1)で表わされる場合には、テトラエトキシシランの縮合物(5量体)又はテトラメトキシシランの縮合物(5量体)であるのが好ましく、前記式(d2)で表わされる場合には、エチルトリエトキシシランの縮合物(5量体)又はメチルトリメトキシシランの縮合物(5量体)であるのが好ましい。
【0042】
本発明の難燃剤は、上記のように、(d)成分として、金属アルコキシド(モノマー)及び/又は金属アルコキシドの縮合物を含むことができるが、金属アルコキシドモノマーの粘性は、同縮合物に比べて低いため、金属アルコキシドモノマーを更に含有させることにより、得られる難燃剤の基材への密着性が向上することがあるという優位点があるが、金属アルコキシドモノマーの含有量を、同縮合物と同量以上など多くすると、塗膜を厚くした時の被膜性が低下してしまうことがある。
【0043】
本発明の難燃剤は、上記で列挙した成分以外にも、その用途に応じて、無機フィラー(炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ガラス繊維等)、金属酸化物、金属(亜鉛、アルミニウム等)粉などを含ませることができる。
【0044】
本発明の難燃剤を主成分として含ませることにより、コーティング剤を得ることができる。
【0045】
本発明の難燃剤は、その粘度を1ポイズ以下でも塗工できるため基材の内部に含浸させることにより、その基材材料の素材を活かしながら改質することも可能である。
【実施例】
【0046】
以下に実施例をあげて、本発明をさらに詳しく説明する。
下記の実施例に示す配合の難燃剤は、(a)成分と(b)成分を室温で充分混合してから、反応変性した後、(c)成分を添加攪拌することにより、試料を調製した。
なお、(b)成分はイソプロパノールに分散し10重量%イソプロパノール分散液にして配合した。
【0047】
実施例1
(a)成分としてγ−アミノプロピルトリエトキシシラン((CO)SiCNH)を100重量部、(b)成分としてホウ酸(HBO)を40重量部、(c)成分としてリン酸20重量部を混練し、加熱することにより、アミノシランを脱アルコールした化合物を調製した。得られた化合物に100重量部の水を加え、水和物にすることにより、無機物の多い、シラノールを含んだゾル液からなる難燃剤を調製した。
得られた難燃剤の調製液を、ろ紙(5C)に含浸させて被膜を作り、ろ紙重量に対し難燃剤を1/2の重量付着させたものを、防炎試験に供した。防炎試験は、燃焼試験箱内に45度に試験体支持枠を取りつけ、液化石油ガスを燃料として燃焼させたバーナーの炎を試験体に接炎させた。
「残炎時間」とは、着火源を除去した後、試験片が炎を上げて燃える状態が止むまでの時間であり、「残じん時間」とは、着火源を除去した後、試験片が炎を上げずに燃える状態が止むまでの時間である。
防炎試験の結果、残炎時間、残じん時間、共に0秒であった。
【0048】
実施例2
(a)成分としてγ−アミノプロピルトリエトキシシラン((CO)SiCNH)を加水分解したアミノシラン加水分解品を100重量部、(b)成分としてホウ酸(HBO)を40重量部、(c)成分としてリン酸20重量部を混練し、固形分70%の粘ちょうなゾル液からなる難燃剤を調製した。
得られた難燃剤の調製液を、ろ紙(5C)に含浸させて被膜を作り、ろ紙重量に対して難燃剤を1/2の重量付着させたものを、防炎試験に供した。防炎試験の結果、残炎時間、残じん時間、共に0秒であった。
なお、実施例2で調製した粘ちょうなゾル液からなる難燃剤は、用途に応じて水で希釈することにより、好みの粘度に調整した後、難燃剤として使用することもできる。
【0049】
実施例3
(a)成分としてγ−アミノプロピルトリエトキシシラン((CO)SiCNH)を加水分解したアミノシラン加水分解品を100重量部、(b)成分としてホウ酸(HBO)を40重量部、(c)成分としてポリリン酸30重量部を混練し、水を80重量部添加することにより、固形分50%の粘ちょうなゾル液からなる難燃剤を調製した。
得られた難燃剤の調製液を、ろ紙(5C)に含浸させて被膜を作り、ろ紙重量に対して難燃剤を1/2の重量付着させたものを、防炎試験に供した。防炎試験の結果、残炎時間、残じん時間、共に0秒であった。
【0050】
比較例1
(a)成分としてγ−アミノプロピルトリエトキシシラン((CO)SiCNH)を加水分解したアミノシラン加水分解品を100重量部、(b)成分としてホウ酸(HBO)を40重量部を混練し、水を50重量部添加することにより、固形分50%の粘ちょうなゾル液からなる難燃剤を調製した。
得られた難燃剤の調製液を、ろ紙(5C)に含浸させて被膜を作り、ろ紙重量に対して難燃剤を1/2の重量付着させたものを、防炎試験に供した。防炎試験の結果、残炎時間6秒、残じん時間は10秒であった。
【0051】
以上、実施例で示した様に、本発明の難燃剤を含浸させた被処理物は、優れた難燃性を有する。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の難燃剤は、自ら被膜となり、燃焼時に必要な空気(酸素)の供給を抑制する効果を併せ持つ、難燃剤として利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)以下の式で表わされるアミノ基を含むシラン化合物
4−n−Si−(OR’)
(式中、Rはアミノ基含有の有機基を表わし、R’はメチル基、エチル基またはプロピル基を表わし、nは1〜3から選択される整数を表わす);及び
(b)HBO及びBからなる群から選択される少なくとも1種のホウ素化合物:
を、(a)成分1モルに対して(b)成分0.02モル以上の比率で反応させて得られる反応生成物を含む、高分子物質と、
(c)リン化合物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物と、
を含む、難燃剤。
【請求項2】
前記アミノシラン化合物(a)として、当該アミノシラン化合物(a)を予め加水分解した加水分解品を使用する請求項1に記載の難燃剤。
【請求項3】
前記ホウ素化合物(b)が、炭素数1〜7のアルコールに溶解したホウ素化合物アルコール溶液である、請求項1に記載の難燃剤。
【請求項4】
(d)金属アルコキシド及び/又は金属アルコキシドの縮合物を更に含む、請求項1又は請求項2に記載の難燃剤。
【請求項5】
(d)成分中の金属が、Si、Ti及びZrから成る群から選択される少なくとも1つの元素である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の難燃剤。
【請求項6】
(c)リン化合物がリン酸またはそのエステルである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の難燃剤。

【公開番号】特開2010−106105(P2010−106105A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−278027(P2008−278027)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(000003975)日東紡績株式会社 (251)
【Fターム(参考)】