説明

難燃性ポリプロピレン樹脂組成物の製造方法

【課題】家電用部品類、住宅設備部品、自動車用部品類等に好適に使用することができる難燃性、耐熱老化性のポリプロピレン樹脂組成物を提供する。
【解決手段】
少なくともポリプロピレン樹脂、有機系難燃剤及びアンチモン化合物を含有するポリプロピレン樹脂組成物の製造方法であって、平均粒径が300〜1000μm、粒径1680μm以上の割合が20重量%以下のポリプロピレン樹脂粉末並びに有機系難燃剤及びアンチモン化合物を混合することを特徴とするポリプロピレン樹脂組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性ポリプロピレン樹脂組成物の製造方法に関する。詳しくは本発明は、難燃性と耐熱老化性の両方を満足するポリプロピレン樹脂組成物、特に粉末状の樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン樹脂は機械物性に優れた材料であり、家電部品、自動車部品などに広く使用されている。なかでも、コンデンサーケース、冷蔵庫蒸発皿、温風ヒーターカバー、コンセント部品等に使用する場合には、耐熱老化性、難燃性等が要求されることも多い。ポリプロピレン樹脂の耐熱老化性を改善するために、主にビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペジル)セバゲート等のアミン系酸化防止剤、2,6−ジターシャリブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−ターシャリブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等のフェノール系酸化防止剤等の酸化防止剤が適宜処方されている。
【0003】
一方、ポリプロピレン樹脂に難燃性を付与するために、各種の難燃剤及びアンチモン化合物等の難燃助剤を配合する処方が広く知られている。これらの難燃性ポリプロピレン樹脂組成物は、難燃剤及びアンチモン化合物の配合量が多いため、ポリプロピレン樹脂と難燃剤及びアンチモン化合物とが均一分散になり難く、いわゆる偏積を起こしやすい問題がある。特に取り扱いを容易にした大粒径の難燃剤を用いると偏積が顕著なものとなった。偏積が生じた場合、成形品の性状にむらが発生し、難燃性能が不足する問題があった。その他に難燃剤を配合すると、耐熱老化性が低下するといった問題もあり、より多くの酸化防止剤を配合せざるを得ない状況であった。これはコストアップになるだけではなく、ポリプロピレン樹脂の機械的特性に好ましくない影響を与える。
【0004】
難燃剤成分の偏積を解決する方法として、ポリプロピレン樹脂ペレットとパラフィン系オイルを混合した後に、難燃剤及び難燃助剤を混合し、溶融混練することを特徴とする難燃性ポリプロピレン樹脂組成物の製造方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。かかる方法によれば、偏積が少なく安定した難燃性が発現するが、耐熱老化性を向上させるものではなかった。
【0005】
また、難燃性と耐候性の向上を目的として、ポリオレフィン100重量部に対して、トリス(臭素化ネオペンチル)フォスフェート0.1〜50重量部と三酸化アンチモン0.05〜20重量部及び紫外線吸収剤0.01〜2重量部が配合されてなる組成物が提案されており(特許文献2、請求項1参照)、その実施例中に自社製のポリオレフィン粉末を使用した事例が開示されている。しかし、ポリオレフィン粉末がどのような性状の樹脂粉末であるかについて、全く記載されておらず、また耐熱老化性に関する記述もない。本発明者の知見によれば、このような特定のフォスフェートを用いる場合には十分満足すべき耐熱老化性は得られない。
【0006】
【特許文献1】特開2004−168955号公報
【特許文献2】特開平5−214174号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ポリプロピレン樹脂組成物中における難燃剤の偏積(分布のバラツキ)をより一層改良し、難燃性能と耐熱老化性能を向上させた難燃性ポリプロピレン樹脂組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記の技術背景の下に様々な試行錯誤を試みた結果、特定の粒径分布を持つポリプロピレン系樹脂粉末を使用し、これを有機系難燃剤及びアンチモン化合物と共に配合することにより、ポリプロピレン系樹脂組成物中の難燃剤の偏積が少なく耐熱老化性能が向上し、かつ難燃性能も改善されることを見出した。更には上記のポリプロピレン系樹脂粉末との混合に好適な、特定の粉末特性を有する有機系難燃剤及びアンチモン化合物を見出した。本発明はこれらの知見を基に完成されたものである。
【0009】
すなわち、本発明の要旨は、少なくともポリプロピレン樹脂、有機系難燃剤及びアンチモン化合物を含有するポリプロピレン樹脂組成物の製造方法であって、平均粒径が300〜1000μm、粒径1680μm以上の割合が20重量%以下のポリプロピレン樹脂粉末並びに有機系難燃剤及びアンチモン化合物を混合することを特徴とするポリプロピレン樹脂組成物の製造方法に存する。
【0010】
また、本発明の他の要旨は、平均粒径が300〜1000μm、粒径1680μm以上の割合が20重量%以下のポリプロピレン樹脂粉末、粒径範囲0.5〜200μmの有機系難燃剤粉末、及び平均粒径0.1〜10μm、最大粒径30μm以下のアンチモン化合物粉末をドライブレンドしてなる難燃性ポリプロピレン樹脂粉末組成物に存する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ポリプロピレン樹脂組成物中における難燃剤の偏積(含有量分布のバラツキ)をより一層改良し、難燃性能と耐熱老化性能を向上させた難燃性ポリプロピレン樹脂組成物が提供される。特に有機難燃剤として取扱いの容易な粗粉末品を使用しても、偏積のない充分満足すべき樹脂組成物が得られる。酸化防止剤、熱安定剤等の配合量を増加することなくポリプロピレン樹脂が有する優れた機械的物性を発現することができ、家電用部品類、住宅設備部品、自動車用部品類等に好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
1.ポリプロピレン樹脂組成物の構成成分
(1)ポリプロピレン樹脂粉末
本発明の難燃性ポリプロピレン樹脂組成物の製造方法に用いるポリプロピレン樹脂は、プロピレン単独重合体、又はプロピレンと炭素数2〜10のプロピレン以外のα−オレフィンとの共重合体、例えば、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体、プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体などから選ばれる樹脂である。共重合体に用いるα−オレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテンなどから選ばれ、なかでも、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセンが好ましく、特にエチレンが好ましい。
【0013】
ポリプロピレン樹脂がプロピレンとα−オレフィンとのランダム共重合体である場合、共重合体中のα−オレフィン含量は、好ましくは0.1〜20重量%、より好ましくは0.5〜12重量%、さらに好ましくは1〜8重量%である。α−オレフィン含量が20重量%を超えると、UL94燃焼テスト時の滴下の影響で綿着火し易くなり難燃性レベルが低下するので好ましくない。ポリプロピレン樹脂がプロピレン・α−オレフィンブロック共重合体である場合、プロピレン・α−オレフィン共重合部分のα−オレフィン含有量は、70重量%以下が好ましく、更に好ましくは30〜60重量%である。α−オレフィン含有量が70重量%以上となると、UL94燃焼テスト時の滴下の影響で綿着火し易くなり難燃性レベルが低下するので好ましくない。
【0014】
ポリプロピレン樹脂のメルトフローレート(MFR)は、好ましくは5〜100g/10分、より好ましくは10〜80g/10分、さらに好ましくは20〜60g/10分である。MFRが5g/10分未満となるとUL94燃焼テスト時の滴下の影響で綿着火し易くなり、難燃性レベルが低下する傾向があり好ましくない。一方、MFRが100g/10分を超えると成形加工性が悪くなり、好ましくない。ここで、MFRは、JIS K7210(230℃、21.18N荷重)に準拠して求める値である。
【0015】
ポリプロピレン樹脂粉末の平均粒径は300〜1000μm、好ましくは300〜900μm、より好ましくは300〜700μmである。平均粒径が1000μmを超えると、偏積が大きくなり、耐熱老化性が低下する傾向なので好ましくない。一方、平均粒径が300μm未満であると、作業時に粉の舞いあがり等が生じ作業環境が悪くなるので好ましくない。ポリプロピレン樹脂粉末中の微粉としては、粒径300μm未満のものが対象となるが、本発明においてはかかる微粉の含有量は、通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下である。一方、ポリプロピレン樹脂粉末は粒径1680μm以上の成分が20重量%以下、好ましくは10重量%以下、より好ましくは1重量%以下である。該成分が20重量%を超えると、偏積が大きくなり、耐熱老化性が低下する傾向なので好ましくない。
【0016】
なお、ポリプロピレン樹脂粉末の粒径の測定はJIS標準篩を用いて行った。すなわち、JIS Z8801に準拠した標準篩(目開き2800、1680、1000、710、500、250、105μm及び受け皿、蓋)を用いて、目開きの小さい順に積み重ねポリプロピレン樹脂粉末約300gを最上部に入れ、蓋をした後に篩いの準備する。これをロータップ式篩振とう機に固定し15分間振とうした。各篩上のポリプロピレン樹脂粉末の質量を求め、その質量分布をもって粒径分布(粒度分布)とした。この粒径分布より積算重量が50重量%に相当する粒径を平均粒径とした。また篩最上部のものを最大粒径(最大粒度)として求めた。
【0017】
本発明に規定する粒径をもつポリプロピレン樹脂粉末の製造方法は特に制限されない。例えば、重合反応によって得られた樹脂粉末をそのまま用いてもよく、また、重合粉末を溶融混練し造粒したペレットを粉砕して得られる粉末を用いてもよい。さらに前記粉末を篩等にかけて、所定の平均粒径に調整した粉末を用いてもよい。重合触媒としては微粒状の三塩化チタンよりもマグネシウム化合物を担体とする四塩化チタン系触媒又は無機珪酸塩担体のメタロセン系触媒など、粗粒状触媒を用いたスラリー重合、無溶媒バルク重合又は気相重合により得られる粉末が好ましい。粗粒状触媒を用いた場合、該粗粒状触媒の形状に類似した本発明に好適なポリプロピレン樹脂粉末が容易に得られるからである。重合体粉末の大きさは、主として触媒粒径と重合活性(触媒効率)に左右されるものである。
【0018】
粉砕法によるポリプロピレン樹脂粉末の製造例としては、ポリプロピレン樹脂ペレットを用いて凍結粉砕機、湿式コロイドミル、樹脂用粉砕機等の粉砕機で粉砕し、分級する方法で製造することができる。ポリプロピレン樹脂粉末の形態については、球状、円盤状、削り屑状、不定形状等いずれでもよく、特に限定されるものではない。
【0019】
(2)有機系難燃剤
本発明で用いる難燃剤としては、有機ハロゲン系難燃剤、有機リン系難燃剤、グアニジン系難燃剤などの有機系難燃剤が用いられる。上記有機ハロゲン系難燃剤としては、例えば、ハロゲン化ジフェニル化合物、ハロゲン化ビスフェノール系化合物、ハロゲン化ビスフェノールビス(アルキルエーテル)系化合物、ハロゲン化フタルイミド系化合物などの有機ハロゲン化芳香族化合物系難燃剤が好ましく、とりわけハロゲン化ビスフェノールビス(アルキルエーテル)系化合物が好ましい。
【0020】
上記ハロゲン化ジフェニル化合物としては、例えば、ハロゲン化ジフェニルエーテル系化合物、ハロゲン化ジフェニルケトン系化合物、ハロゲン化ジフェニルアルカン系化合物等が挙げられ、なかでもデカブロモジフェニルエーテル等のハロゲン化ジフェニルエーテル化合物が好ましい。
【0021】
上記ハロゲン化ビスフェノール系化合物としては、例えば、ハロゲン化ビスフェニルアルカン類、ハロゲン化ビスフェニルエーテル類、ハロゲン化ビスフェニルチオエーテル類、ハロゲン化ビスフェニルスルフォン類等が挙げられ、なかでもビス(3,5−ジブロモ−4−ハイドロキシフェニル)スルフォン等のハロゲン化ビスフェニルチオエーテル類が好ましい。
【0022】
ハロゲン化ビスフェノールビス(アルキルエーテル)系化合物としては、例えば、(3,5−ジブロモ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)−(3−ブロモ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)メタン、1−(3,5−ジブロモ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)−2−(3−ブロモ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)エタン、1−(3,5−ジブロモ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)−3−(3−ブロモ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)プロパン、(3,5−ジクロロ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)−(3−クロロ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)メタン、1−(3,5−ジクロロ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)−2−(3−クロロ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)エタン、1−(3,5−ジクロロ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)−3−(3−クロロ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)プロパン、ビス(3、5−ジブロモ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)メタン、1,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)エタン、1,3−ビス(3,5−ジブロモ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジクロロ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)メタン、1,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)エタン、1,3−ビス(3,5−ジクロロ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)プロパン、2−ビス(3,5−ジクロロ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)プロパン、(3,5−ジブロモ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)−(3−ブロモ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)ケトン、(3,5−ジクロロ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)−(3−クロロ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)ケトン、ビス(3,5−ジブロモ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)ケトン、ビス(3,5−ジクロロ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)ケトン、(3,5−ジブロモ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)−(3−ブロモ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)エーテル、(3,5−ジクロロ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)−(3−クロロ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)エーテル、ビス(3,5−ジブロモ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)エーテル、ビス(3,5−ジクロロ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)エーテル、(3,5−ジブロモ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)−(3−ブロモ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)チオエーテル、(3,5−ジクロロ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)−(3−クロロ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)チオエーテル、ビス(3,5−ジブロモ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)チオエーテル、ビス(3,5−ジクロロ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)チオエーテル、(3,5−ジブロモ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)−(3−ブロモ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)スルフォン、(3,5−ジクロロ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)−(3−クロロ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)スルフォン、ビス(3,5−ジブロモ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)スルフォン、ビス(3,5−ジクロロ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)スルフォンが挙げられ、なかでも臭素化ビスフェノールA(臭素化脂肪族エーテル)、臭素化ビスフェノールS(臭素化脂肪族エーテル)、塩素化ビスフェノールA(塩素化脂肪族エーテル)、塩素化ビスフェノールS(塩素化脂肪族エーテル)、とりわけエーテル化テトラブロモビスフェノールA、エーテル化テトラブロモビスフェノールSが好ましい。
【0023】
エーテル化テトラブロモビスフェノールAとして、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)プロパンが例示される。エーテル化テトラブロモビスフェノールSとして、ビス(3,5−ジブロモ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)スルフォンが例示される。
【0024】
上記有機リン系難燃剤としては、例えば、トリクレジルホスフェート、トリ(β−クロロエチル)ホスフェート、トリ(ジブロモプロピル)ホスフェート、2,3−ジブロモプロピル−2,3−クロロプロピルホスフェート等のリン酸エステルもしくはハロゲン化リン酸エステル、ホスホン酸化合物、ホスフイン酸誘導体等が主に挙げられる。
【0025】
上記グアニジン系難燃剤としては、窒化グアニジンなどのグアニジン化合物等が挙げられる。
【0026】
上記有機系難燃剤は、単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。また、これら有機系難燃剤、特にハロゲン系難燃剤は、アンチモン化合物と併用することにより、相乗効果を発現することができる。有機系難燃剤は、通常、粉末の性状で製造されている。この粉末の性状について特定の粒径分布があり、難燃剤自身の特性により粒径が異なっている。粉末は微粉末品でも、粗粉末品でもよい。また、実際の使用上の観点から、たとえば粉の舞い上がり等の取り扱いにくさの問題を解消するため、ある程度大粒状のもの、粗粒状のもの、顆粒状のもの等を商品として販売・流通させている場合も多く、これらも本発明に利用できる。即ち、本発明において用いられる有機難燃剤の粗粉末品は、上記のような粗粒状のもの、顆粒状のもの等を含むものである。
【0027】
本発明における有機系難燃剤は、好ましくは平均粒径が1〜2500μm、より好ましくは5〜2000μmの粉末状のものが使用される。平均粒径がこの値よりも大きくなると、混練する際に難燃剤が樹脂中に偏積する不都合が生じる。その結果、耐熱老化性が低下するので好ましくない。一方、有機系難燃剤の平均粒径がこの値を下回ると超微粉となって取り扱いに難儀を生じるため、作業上好ましくない。また、粒径分布の形態としては横軸に対数で粒子径、縦軸に粒子径に対応する存在量の片対数グラフを記した場合に、平均粒径が5〜20μmの範囲において釣鐘状分布をしていることが好ましい。市販品の中で、微粉末品としては、帝人化成社品(製品名ファイヤーガードFG3100)等、粗粉末品としては丸菱油化工業社品(ノンネン52)等が入手可能であるので、そのまま、又は適宜に粒径範囲や粒径分布の形態を調整して利用することができる。通常、平均粒径が1〜150μmの粉末は微粉末品として、平均粒径が1000〜2500μmの粉末は粗粉末品として取り扱われる。特に本発明においては、ポリプロピレン樹脂として特定の樹脂粉末が使用される結果、取扱いの容易な有機系難燃剤の粗粉末品をそのまま配合しても偏積が生じないので好適に使用することができる。
【0028】
なお、有機系難燃剤の粒径は、レーザー回折粒径分布測定方法により求められる。測定装置として、例えば、堀場製作所製のレーザー回折(散乱式)粒径分布測定装置を用いることができる。
【0029】
本発明における有機系難燃剤の配合量は、ポリプロピレン樹脂100重量部に対し、3〜50重量部、好ましくは9〜22重量部、より好ましくは10〜18重量部、さらに好ましくは12〜15重量部である。難燃剤の配合量が3重量部未満であると難燃性が十分でなく、50重量部を超えると偏積が生じ配合量に応じた耐熱老化性が発現しないので好ましくない。
【0030】
(3)アンチモン化合物
本発明で用いるアンチモン化合物は、有機系難燃剤と共にポリプロピレン樹脂粉末に配合されることにより難燃効果を増すために用いられる。具体的なアンチモン化合物としては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、三塩化アンチモン、五塩化アンチモンなどのハロゲン化アンチモン、三硫化アンチモン、五硫化アンチモン、アンチモン酸ソーダ、酒石酸アンチモン等が代表的に挙げられる。なお本発明においてはアンチモン化合物には金属アンチモンが含まれるものとする。
【0031】
本発明におけるアンチモン化合物の配合量は、ポリプロピレン樹脂100重量部に対し、1〜40重量部、好ましくは5〜15重量部、より好ましくは5〜11重量部、さらに好ましくは5〜9重量部である。アンチモン化合物の配合量が1重量部未満であると難燃性が十分でなく、40重量部を超えても難燃性の向上は頭打ちとなるので経済性に不利となる。
【0032】
(4)その他の配合成分
本発明の難燃性ポリプロピレン樹脂組成物において、必須の成分ではないが、目的・用途に応じて各種の添加剤を適宜に配合することができる。例えば、パラフィン系オイル、酸化防止剤、紫外線吸収剤、核剤、帯電防止剤、滑剤等が挙げられる。
【0033】
パラフィン系オイルとは、炭化水素系オイルであって、パラフィン鎖炭素数が全炭素中の50重量%以上を占めるものをいい、重量平均分子量が300〜2000のものが好ましい。また、パラフィン系オイルの動粘度は、30〜450mm2/S、好ましくは30〜150mm2/Sである。動粘度が30mm2/S未満であると、難燃剤の偏積改良効果はあまり見られない。ここで、パラフィン系オイルの動粘度は、JIS−Z−8803に従って40℃の温度で測定される値である。上記のような物性を有するパラフィン系オイルとしては、具体的には、出光興産社製「ダイアナプロセスオイル」、エッソ社製「ピュアレックス」等の市販品を例示することができる。
【0034】
パラフィン系オイルの配合量は、ポリプロピレン樹脂100重量部に対し、0.3〜1.3重量部、好ましくは0.3〜1重量部、より好ましくは0.4〜0.6重量部である。前記範囲を満たさないパラフィン系オイルでは配合しても難燃剤の偏積改良効果はあまり見られない。
【0035】
2.難燃性ポリプロピレン樹脂組成物の製造方法
本発明のポリプロピレン樹脂組成物の製造方法は前記ポリプロピレン樹脂粉末、前記有機系難燃剤、前記アンチモン化合物を混合して得るところに特徴がある。ポリプロピレン樹脂として所定の粉末を用いないと、難燃剤の偏積が生じ、難燃性の低下、耐熱老化性の低下が生じ好ましくない。混合の順序には特に制約はなく、前記ポリプロピレン樹脂粉末、前記有機系難燃剤、前記アンチモン化合物を一度に混合する方法、予め前記有機系難燃剤と前記アンチモン化合物を混合したものとポリプロピレン樹脂粉末を混合する方法、予め前記有機系難燃剤と前記ポリプロピレン樹脂粉末を混合したものとアンチモン化合物を混合する方法、予め前記ポリプロピレン樹脂粉末と前記アンチモン化合物を混合したものと有機系難燃剤を混合する方法等が挙げられる。
【0036】
混合工程において、ポリプロピレン樹脂粉末、有機系難燃剤、及びアンチモン化合物を混合する方法は、公知の方法を用いることができ、例えば、タンブラー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、スーパーフローターなどの各種混合機を使用することができる。混合時間は10秒程度の短時間で終了する場合もあるが、通常は1時間以内、例えば、5〜40分で充分である。得られたポリプロピレン樹脂組成物は、そのまま成形に供してもよく、必要に応じて溶融混練して、造粒してペレットを得、それを成形に供してもよい。有機系難燃剤及びアンチモン化合物として、共に所定の粒径分布を有する粉末状の原料を用いた場合は、粉末状のポリプロピレン樹脂組成物が得られるので好ましい。特に、粒径範囲0.5〜200μmの有機系難燃剤粉末(微粉末品)、及び平均粒径0.1〜10μm、最大粒径30μm以下のアンチモン化合物粉末をドライブレンドすることにより粉末状難燃性ポリプロピレン樹脂組成物を得ることができる。また、先に述べたように、有機系難燃剤粉末は粗粉末品であっても、偏積なく配合することができるので、取扱いが容易であるとの観点から使用が推奨される。
【0037】
粉末状のポリプロピレン樹脂組成物は、そのまま成形加工工程で使用することもできるが、予め該組成物を溶融混練して、造粒してペレットにすると、難燃剤の偏積がより一層減少するので好ましい。溶融混練の方法は、各種公知の方法が使用できる。例えば、単軸押出機、二軸押出機、連続式混練機、ブラベンダー、ニーダーなどの各種混練機を使用して、170〜250℃で溶融混練することができる。
【0038】
混合工程−溶融混練工程を経る方法において、混合工程の第1工程で、平均粒径300〜1000μm、粒径1680μm以上のものが20重量%以下の粉末状ポリプロピレン樹脂、及び有機系難燃剤とアンチモン化合物を所定量配合し、全体を混合することにより偏積の少ない混合物を得るところに特徴がある。得られた混合物は、難燃剤の偏積が少なく、耐熱老化性、難燃性効果が向上する。
【0039】
ここで、本発明において偏積とは、ポリプロピレン樹脂組成物を得る混合工程で得られた混合物中のプロピレン樹脂と難燃剤及びアンチモン化合物の分散状態を表す指標として用いている。具体的には、混合された試料をホッパーに投入し、押出機で溶融混練し、カッターで粒状(ペレット)とした。このカッター出口のペレットをスタート時より経過時間毎にサンプリングし、各サンプル中に含有される難燃剤及びアンチモン化合物の含有量を求めた。
【0040】
押出機より吐出の経過時間における難燃剤含有量の比率を求め、難燃剤含有量の比率の平均値(AVG)及び標準偏差(σ)から次式によりバラツキ(CV)を求める。このCV値が25%以上の場合、難燃性能を十分に発揮することができないので「偏積あり」と評価する。また、「偏積あり」の場合は、耐熱老化性も同様に充分に発揮していない。
CV(%)=(σ/AVG)×100
【0041】
3.難燃性ポリプロピレン樹脂組成物の用途
本発明の製造方法により得られる難燃性ポリプロピレン樹脂組成物は、難燃剤の偏積がないので、難燃性、耐熱老化性に優れ、しかも安定した品質を発現することができる。このため、テレビバックカバー、コンデンサーケース、スピーカーボックス、冷蔵庫蒸発皿、スイッチ部品、照明用具部品、温風ヒーターカバー、クリスマス電球ソケット等の家電用部品類、暖房便座、温水シャワー便座コントロールカバー、エアコン室外機等の住宅設備部品類、自動車用のヒューズボックス、ディストリビュターカバー等に好適に使用することができる。
【実施例】
【0042】
本発明を以下に実施例を示して具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、評価方法及び使用材料は、以下の通りである。
【0043】
1.評価方法
(1)偏積の評価
(i)ポリプロピレン樹脂粉末と、難燃剤、アンチモン及び酸化防止剤、中和剤等を所定量添加し、20Lスーパーミキサー(川田製、型式SM)に入れ1分間混合した。
(ii)混合した試料を袋に取り出し、次に30mmφの2軸押出機(池貝鉄工社製、型式PCM30)のホッパーへ投入した。その後、200℃で溶融混練し、ストランドカッターでペレット化した。押出機のスタート時よりカッター出口で5分経過時間毎に終了まで約50gずつサンプリングした。本試料のスタート開始時試料をX1、経過毎にXnとした。これを難燃剤含有量の分析試料とした。
(iii)試料の一部を50×50×2mmの金型に入れ、設定温度230℃のプレス機で3分間予熱した後、1MPaで1分間プレスし、設定温度30℃のプレス機に移し10MPaで4分間冷却しプレス成形シートを作成した。
(iv)得られたプレス成形シートを2枚重ねて、下記に示す蛍光X線分析により難燃剤を分析定量した。
(v)試料X1からXnについて、難燃剤含有量を求め、その平均値(AVG)及び標準偏差(σ)から下記式で偏積の指標のバラツキ(CV)を求めた。
CV(%)=(σ/AVG)×100
【0044】
(2)蛍光X線分析
分析装置として、理学電気工業社製、3270型を使用した。分光クリスタルはLiF(フッ化リチウム)を使用した。難燃剤の分析として臭素元素を定量した。分析は、まず難燃剤の濃度既知の検量線用サンプルを作成し、蛍光X線の強度を測定し、X線強度と難燃剤濃度との回帰グラフを作成し、両者の相関性を確認の上、一次回帰式を求めた。次に蛍光X線測定試料を作成し臭素元素の蛍光X線の強度を測定した。前述の回帰式より目的の難燃剤の濃度を求めた。
【0045】
(3)耐熱老化性の評価
ここでの耐熱老化性試験は、以下の試験片を作成し、JIS K7212−Bに準じて150℃の条件下で測定した。即ち、温度200℃で予熱7分、加圧1〜2MPa、3分、及び冷却温度30℃で加圧12MPa、3分の条件で、200×200×0.5mmのシートを作成した。得られたシートより気泡、しわ、異物混入等の異常がなく、厚みの均一な個所から幅35mm、長さ65mmの大きさの試験件を切り出し耐熱老化性試験片とした。耐熱老化試験機(ギアーオーブン、150℃)の回転ドラムへ試験片の取り付けには、アルミのクリップを用い直接試験片にアルミが触れないようにガラステープを介して取りつけた。ギアーオーブンの回転ドラムに試料を取りつけ後、試験片の劣化(クラック及び変色)発生有無を経過時間毎に観察した。観察は朝8時、夕16時のように、1日に2回実施し、劣化発生までの時間を耐熱老化時間とした。
【0046】
(4)難燃性の評価
UL94難燃性試験法(アンダーライター・ラボラトリーズ・コーポレイテッド)の「機器の部品プラスチック材料の燃焼試験」に規定された試験片の作成とそれを用いた試験を行い評価した。溶融混練してペレット化した試料を良く混合してから100Tの射出成形機で200℃の条件下で試験片を作成し、UL94難燃性試験を評価した。試験を20回行い、綿の着火本数を数えた。
【0047】
(5)難燃剤の粒径測定
(i)粗粉末品
JIS Z8801に準拠した標準篩(目開き2800、1680、710、250、149、105、74、44μm及び受け皿、蓋)を用い、目開きの小さい順に積み重ね難燃剤約300gを最上部に入れ、蓋をした後に篩分けの準備をする。これをロータップ式篩振とう機に固定し15分間振とうした。各篩の難燃剤重量を求め、その重量分布をもって粒径分布とした。この粒径分布より50重量%に相当する粒径を平均粒径とした。また篩最上部のものを最大粒径として求めた。
【0048】
(ii)微粉末品
JISの標準篩では粒径分布の確認が困難であるので、レーザー回折(散乱式)粒径分布測定装置(堀場製作所製、LA920型)を用いて測定した。測定は分散媒として純水を用い、機器のレーザー透過率を100%に調整し、次に超音波をかけながらレーザー透過率が80〜90%となるよう試料を入れ、その後、測定を選択し実施した。粒子径0.02〜1000μm間の粒子径別毎に通過分積算量(%)として測定結果が得られる。通過分積算量の最小値の粒径を最小粒径、50%通過分積算量の粒径を平均粒径、通過分積算量の最大値を最大粒径として求めた。
【0049】
2.使用材料
(1)ポリプロピレン樹脂粉末(PP−1)
平均粒径500μm、粒径1680μm以上の割合が0重量%の樹脂粉末。
チーグラー系触媒を使用して製造されたプロピレン単独重合体粉末(MFR10g/10分、平均粒径500μm、日本ポリプロ社製、ノバテックPP MA3粉末)を使用しJIS標準篩を用い、1680μm篩上分をカット品したもの。なお、カットされた1680μm篩上分は4.4重量%であった。
【0050】
(2)ポリプロピレン樹脂粉末(PP−2)
平均粒径850μm、粒径1680μm以上の割合が0重量%の樹脂粉末。
プロピレン系ブロック共重合体(MFR9g/10分、平均粒径1550μm、日本ポリプロ社製、ノバテックPP BC3B粉末)を使用しJIS標準篩を用い、1680μm篩上分をカットしたもの。なお、カットされた1680μm篩上分は64重量%であった。
【0051】
(3)ポリプロピレン樹脂粉末(PP−3)
平均粒径1550μm、粒径1680μm以上の割合が64重量%の樹脂粉末。
プロピレン系ブロック共重合体(MFR9g/10分、平均粒径1550μm、日本ポリプロ社製、ノバテックPP BC3B粉末)をそのまま使用。
【0052】
(4)ポリプロピレン樹脂粉末(PP−4)
平均粒径1000μm、粒径1680μm以上の割合が98%重量%の樹脂粉末。
ポリプロピレン樹脂粉末PP−3を用いて得られた1680μm篩上分98重量%と600μm篩通過樹脂粉末1.2重量%との混合品。
【0053】
(5)ポリプロピレン樹脂粉末(PP−5)
平均粒径650μm、粒径1680μm以上が25%重量%の樹脂粉末。
ポリプロピレン樹脂粉末PP−3を用いて得られた1680μm篩上分25重量%とポリプロピレン樹脂粉末PP−1を用いて得られた1680μm篩通過樹脂粉末75重量%との混合品。
【0054】
以上の5種類のポリプロピレン樹脂粉末(PP−1〜PP−5)について、平均粒径と粒径1680μm以上の粗粒割合(重量%)を[表1]に示した。
【0055】
【表1】

【0056】
(6)難燃剤−1
エーテル化テトラブロモビスフェノールSの例として、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−2,3―ジブロモプロポキシフェニル)スルフォンの粗粉末品(丸菱油化工業社製、ノンネン52:平均粒径1670μm 最大粒径2800μm、最小粒径100μm)。粒径分布を[表2]に示した。
【0057】
(7)難燃剤―2
エーテル化テトラブロモビスフェノールAの例として 2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−2,3−ジブロモプロポキシフェニル)プロパンの微粉末品(帝人化成社製、FG3100:平均粒径15μm、最大粒径150μm、最小粒径1μm)。粒径分布を[表3]に示した。
【0058】
【表2】

【0059】
【表3】

【0060】
(8)アンチモン化合物
三酸化アンチモン(鈴祐化学社製、ファイヤーカットAT3、平均粒径2.2μm)
(9)パラフィンオイル
流動パラフィン(動粘度31mm2/S、分子量420。出光興産社製、PS−32)
【0061】
[実施例1]
(1)混合工程
ポリプロピレン樹脂粉末として(PP−1)を100重量部、難燃剤−1を12重量部、三酸化アンチモンを6重量部、添加剤としてペンタエリスリチルーテトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを0.15重量部、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトを0.2重量部、ステアリン酸カルシウムを0.1重量部、これらを20Lのミキサーに入れ、回転数750rpmで1分間混合した。
(2)溶融混練工程
混合工程で得られた難燃剤を含有する試料を、口径30mmの2軸押出混練機(池貝鉄工社製)を用い温度200℃、スクリュー回転数200rpm、吐出量約10〜13kg/時で溶融混練しペレット化した。ペレット化時にカッター出口でスタート時より5分毎に約50gずつサンプリングして、押出機出口サンプルとし、これを難燃剤分析試料とした。
(3)評価
前記した方法で難燃剤のバラツキ(偏積)、難燃性試験、耐熱老化試験等を実施した。結果を[表4]に示した。難燃剤含有量の偏積が15%と少なく、耐熱老化性が良好であった。また、難燃性も良好であった。
【0062】
[実施例2]
実施例1において使用したポリプロピレン樹脂粉末PP−1をPP−2に変更した以外は、実施例1と同様にして評価をした。その結果を表4に示す。ポリプロピレン樹脂粉末の平均粒径を850μmと大きくしても偏積は少なく、耐熱老化性も良好であった。
【0063】
[実施例3]
実施例1において使用した難燃剤−1を難燃剤−2に変更した以外は、実施例1と同様にして評価をした。その結果を表4に示す。難燃剤の微粉末品を使用しても偏積は少なく、耐熱老化性も良好であった。
【0064】
[実施例4]
実施例2の混合工程において、パラフィンオイル3重量部を追加した以外は実施例2と同様にして評価をした。その結果を表4に示す。
【0065】
[比較例1]
実施例1において使用したポリプロピレン樹脂粉末PP−1をPP−3に変更した以外は、実施例1と同様にして評価をした。その結果を表5に示す。使用したポリプロピレン樹脂粉末中に粒径1680μm以上の粗粒品の割合が多いため、難燃剤の偏積が38%を超えており、結果として、耐熱老化性と難燃性が不良であった。
【0066】
[比較例2]
比較例1の混合工程において、パラフィンオイル3重量部を追加した以外は比較例1と同様にして評価をした。その結果を表5に示す。パラフィンオイルの追加によって難燃剤の偏積は多少改善されたが、耐熱老化性を改善することはできなかった。
【0067】
[比較例3]
実施例1において使用したポリプロピレン樹脂粉末PP−1をPP−4に変更した以外は実施例1と同様に実施し評価をした。その結果を表5に示す。
【0068】
[比較例4]
実施例1において使用したポリプロピレン樹脂粉末PP−1をPP−5に変更した以外は実施例1と同様に実施し評価をした。その結果を表5に示す。ポリプロピレン樹脂粉末の平均粒径650μmのみ本発明の範囲を充足しても、1680μm以上の粗粒品の割合が25重量%と多い場合は、難燃剤の偏積が解決できないことが判る。
【0069】
【表4】

【0070】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともポリプロピレン樹脂、有機系難燃剤及びアンチモン化合物を含有するポリプロピレン樹脂組成物の製造方法であって、平均粒径が300〜1000μm、粒径1680μm以上の割合が20重量%以下のポリプロピレン樹脂粉末並びに有機系難燃剤及びアンチモン化合物を混合することを特徴とするポリプロピレン樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
ポリプロピレン樹脂組成物が、ポリプロピレン樹脂100重量部に対して、有機系難燃剤3〜50重量部、アンチモン化合物1〜40重量部を含有することを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
有機系難燃剤が、有機ハロゲン化芳香族化合物系難燃剤であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリプロピレン樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
有機ハロゲン化芳香族化合物系難燃剤が、エーテル化テトラブロモビスフェノールS又はエーテル化テトラブロモビスフェノールAであることを特徴とする請求項3に記載の難燃性ポリプロピレン樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
有機系難燃剤が、平均粒径1〜2500μmの粉末であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の難燃性ポリプロピレン樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
アンチモン化合物が、平均粒径0.1〜10μm、最大粒径30μm以下の粉末であることを特徴とする請求項1又は2に記載の難燃性ポリプロピレン樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
平均粒径が300〜1000μm、粒径1680μm以上の割合が20重量%以下のポリプロピレン樹脂粉末、粒径範囲0.5〜200μmの有機系難燃剤粉末、及び平均粒径0.1〜10μm、最大粒径30μm以下のアンチモン化合物粉末をドライブレンドしてなる粉末状難燃性ポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項8】
ポリプロピレン樹脂粉末100重量部、有機系難燃剤粉末3〜50重量部及びアンチモン化合物粉末1〜40重量部を含有する請求項7に記載の粉末状難燃性ポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の粉末状難燃性ポリプロピレン樹脂組成物を溶融混練し、次いでペレット化してなる難燃性ポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項10】
ポリプロピレン樹脂組成物中の有機系難燃剤含有量の偏積(バラツキ)が25%以下であることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の難燃性ポリプロピレン樹脂組成物。


【公開番号】特開2006−321878(P2006−321878A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−145228(P2005−145228)
【出願日】平成17年5月18日(2005.5.18)
【出願人】(596133485)日本ポリプロ株式会社 (577)
【Fターム(参考)】