説明

難燃性接着材料

【課題】 難燃性ホットメルトにおいて、基材樹脂に対する難燃性物質の配合割合を、多くした場合は難燃性が向上するものの接着性が低くなり、逆に少なくした場合は接着性が高くなるものの難燃性が低下し、いずれか一方の特性が失われるため、本来の難燃性と接着性とを同時に具備させることが困難であった。
【解決手段】 熱可塑性樹脂を基材としてノンハロゲン難燃性物質を含む難燃性組成物と、熱可塑性樹脂を基材とする接着性組成物よりなり、前記基材樹脂に対する難燃性物質の配合割合と被膜特性を利用し、難燃性組成物下塗り(第1)層と接着性組成物上塗り(第2)層とに分けて重層被膜を形成する、これら1対の組成物からなる難燃性接着材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等から発生する電磁波を遮蔽するための各種電磁波シールド材に塗工する材料として、特にハロゲン化合物のように燃焼時に有毒なダイオキシンが発生することなく、高度の難燃性能と接着性能とを同時に具備する難燃性接着材料に関する。
【背景技術】
【0002】
産業用機器、医療用機器、家庭用電化製品等、その他各方面で発生する電磁波による影響からの対策、すなわち、EMI対策として筐体等やそれらの開閉機構に電磁波シールドガスケットに代表される各種のシールド材が装着される。一般に電子機器が一層小型化され、筐体等に半密閉状態で収納されることが多いため蓄熱しやすくなり、発火を防止するなど安全性を高めるため、機器本体に関係するすべての部材に対して難燃化が求められており、その指標となるUL規格において、UL94,V−0を満足することが必要となっている。
【0003】
電磁波シールドガスケット等シールド材を難燃化する材料としては、近年までとりわけ難燃性の高いハロゲン系難燃剤が多く使用されてきた。しかしハロゲン系難燃剤は、燃焼時300〜600℃において有毒なダイオキシンが発生し環境汚染の原因になるため、使用が大きく制限され、現在ではノンハロゲン系難燃剤が高い普及率で用いられている。
【0004】
ハロゲン化合物に代わる難燃性材料としては、リン系化合物、アルミニウム化合物、マグネシウム化合物、膨張性黒鉛、アンチモン化合物、その他のノンハロゲン難燃材料が実用化されている。しかし、アンチモン化合物は人体に有毒であることから使用されなくなってきた。また難燃性を高めるため、複数の難燃性材料を組み合わせて配合し相乗効果をねらっても、ハロゲン化合物に匹敵するほどの難燃性を得ることは難しく、配合量を大幅に増加させないかぎり期待したほどの難燃効果が得られず、その場合に基材(ベース)樹脂に対して多量に配合する必要がある。
【特許文献1】 特開2007−203726号公報
【0005】
特許文献1は、本出願人の提案によるもので、難燃性を向上させるとともに、組成物中に膨張性黒鉛を含まないために、樹脂媒体に対して各難燃剤が良好に分散して生産効率を向上することができ、加えて塗工厚を厚くしても塗工筋が発生することなく、高品質の導電性生地を得ることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電磁波シールド材として、例えば電磁波シールドガスケットでは樹脂製発泡体の外周に導電性生地を巻回して形成される。この導電性生地の芯材側片面には、多くはホットメルト等の接着剤層が形成されている。電磁波シールドガスケットに難燃性付与するためには、導電性生地を難燃性にする必要があり、また難燃性の導電性生地の芯材側片面には難燃性のホットメルト層が塗工される。
【0007】
ホットメルトの具備すべき性能としては、本来的な接着性とともに前記した難燃性がきわめて重要である。ホットメルトとしては、例えばベースとなるポリウレタン等の基材樹脂に有機溶剤を加えて粘度調整し、ノンハロゲン系難燃剤である膨張性黒鉛、金属水酸化物、リン含有化合物等の難燃剤を配合し、混練したものが用いられる。しかしながら、ノンハロゲン系難燃剤を用いて、ホットメルトに難燃性を付与する場合、複数の種類の難燃剤を組み合わせるとともに、これらの難燃剤を基材樹脂に対して大量に配合しなければ、ハロゲン系難燃剤に匹敵するほどの難燃性を付与することは難しい。
【0008】
ホットメルトの機能としては、前記した難燃性とともに本来的な接着性がきわめて重要であり、これらの性能を損なうことなく具備するものでなければならない。ところが、ホットメルト用難燃剤としてノンハロゲン系難燃剤を使用する場合、ハロゲン系難燃剤と比べて2倍量程度の配合を要し、その結果ある程度良好な難燃効果が得られたとしても、接着性(ホットメルトの熱優着性能)が大きく損なわれる。また、基材樹脂自体に元々有している成型性、耐熱性、耐湿性、あるいは柔軟性、復元性が損なわれ、電磁波シールドガスケットに要求される物性が損なわれ、ホットメルトとしての本来の用途に適さなかったり、耐久性が低下することになる。
【0009】
本出願人の提案による前記特許文献1に記載した難燃性組成物は、組成物中の難燃性固形物の割合を増やした場合に難燃性が高くなるものの接着性が低くなり、また減らした場合は逆に接着性が高くなるものの難燃性が低くなり、いずれか一方の特性が失われ本来の難燃性と接着性とを同時に併せもたせることが困難であることを見出した。
【0010】
本発明は、前記した従来技術に有する問題点を解決しようとするもので、高度の難燃性能と接着性能とを併せもった難燃性接着材料を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(本発明の第1の特徴)
熱可塑性樹脂を基材としてノンハロゲン難燃性物質を含む難燃性組成物と、熱可塑性樹脂を基材とする接着性組成物よりなり、前記難燃性組成物を下塗り層として、前記接着性組成物を上塗り層として、重層被膜を形成するこれら組成物1対よりなることを特徴とする。
【0012】
(本発明の第2の特徴)
前記熱可塑性樹脂を基材とする接着組成物中にノンハロゲン難燃性物質を含むものであって、その難燃性物質が難燃性組成物中に含まれる難燃性物質と同種の材料でなり、かつ難燃性物質の配合割合が難燃性組成物に含まれる配合割合以下であることを特徴とする。
【0013】
(本発明の第3の特徴)
前記難燃性接着材料を構成する熱可塑性の各基材樹脂がポリウレタン樹脂であり、難燃性物質がポリリン酸化合物、金属水酸化物、赤リンのうちの複数種を含む混合系難燃剤であって、かつ前記基材樹脂を不揮発分換算100重量部に対し、混合系難燃剤300重量部以上含むものを難燃性組成物とし、150重量部以下含むものを接着性組成物とすることを特徴とする。
【0014】
(本発明の第4の特徴)
前記難燃性接着材料が、電磁波シールドガスケット用のホットメルト接着剤であることを特徴とする。
【0015】
前記難燃性接着材料を構成する熱可塑性樹脂を基材とした接着組成物中のノンハロゲン難燃性物質が、前記難燃性組成物に含まれる難燃性物質と同種でそれより少ない割合で配合し含むことを特徴とする。
【0016】
難燃性接着材料が電磁波シールドガスケット用のホットメルト接着剤であって、これら熱可塑性の基材樹脂をポリウレタン樹脂とし、難燃性物質をポリリン酸化合物、金属水酸化物、赤リンを含む混合系難燃剤とし、かつ基材樹脂100重量部に対し前記混合系難燃剤300重量部以上配合したものを難燃性組成物、150重量部以下配合したものを接着性組成物とするものである請求項1に記載の難燃性接着材料。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、電磁波シールド材、主として樹脂発泡体等芯材の外周に導電性生地を巻回し接着した電磁波シールド性ガスケットにおいて、導電性生地の表面に塗工する下塗り(第1層)用の樹脂組成物の難燃性と、上塗り(第2層)用の樹脂組成物の接着性を組み合わせて各々性能を分担させたことにより、難燃性または接着性のいずれも低下することなく、ハロゲン系難燃剤に劣らない高度の難燃性と基材樹脂本来の接着性とを得ることができる。またハロゲン化合物のように燃焼時に有毒物質を発生することなく安全性の高い電磁波シールド性ガスケットを得ることができる。
【0018】
本発明の難燃性接着材料は、全体として樹脂組成物に配合する難燃剤の割合が最小限ですみ、リン酸エステルの配合量が可塑剤として作用するだけの量ですむことから、生地に塗工した場合の表層でブリード(滲み出し)やブロッキング(貼り付き)を起こすことがなく、長期にわたって安定した状態を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の最良の形態を説明する。本発明の難燃性接着材料は、特に電磁波シールド用ガスケットにおいて、合成樹脂発泡体の外周に導電性生地を巻回し接合する際のホットメルト(熱融着)用接着剤に適用する。基材となる熱可塑性高分子樹脂化合物としては、ポリエーテル型ポリオールとイソシアネート、またはポリエステル型ポリオールとイソシアネート、を原料とするウレタン樹脂、ポリアクリル酸エステル系のアクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂等があげられる。なかでも本発明で対象とする各難燃剤との相溶性や分散性にすぐれ、樹脂組成物として塗工する際の作業性のよさ等からウレタン樹脂またはアクリル樹脂が好ましく、とりわけウレタン樹脂が好適に使用することができる。
【0020】
本発明の難燃性接着材料は、下塗り(第1)層用の難燃性組成物と上塗り(第2)層用の接着性組成物との1対で構成するが、これらに使用する樹脂は同種のものであっても異種のものであってもよい。しかしながら、下塗り(第1)層と上塗り(第2)層との間に十分な密着性が必要であることから、同種のものから選定することが親和性を高めることになるため好ましく無難である。
【0021】
後述する難燃剤を配合するにあたって、ウレタン樹脂等の樹脂材料は、塗工の容易な液状であることが求められ、例えば樹脂固形分35〜40%の有機溶剤溶液として、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジメチルホルムアミド等の有機溶剤により3000mPa・s程度に粘度調整した市販品を使用することができる。この樹脂溶液は、難燃剤を配合することによって、また自然蒸発によって粘度が上昇するため、製造する際に前記有機溶剤を用いて適宜希釈し粘度調整をする。
【0022】
難燃性物質として用いるポリリン酸化合物としては、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸シアヌレート等が代表例としてあげられるが、なかでもポリリン酸アンモニウムは元素としてのリン(P)の含有量が多く、安価であることから好適に使用できる。配合量が少なくなると難燃性が低下し、多くなると樹脂本来の物性が低下して脆くなる傾向がある。
【0023】
難燃性物質として用いる金属水酸化物としては、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛等の金属元素と、その水酸化物の1種以上から選択することができる。なかでも水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムは難燃材料として有効であり、比較的安価であることから好適に使用することができる。配合量が少なくなると難燃性が低下し、多くなると樹脂本来の物性が低下して脆くなる傾向がある。
【0024】
これらの難燃性物質に加えて赤リンと水酸化アルミニウムとを併用することが好ましい。
特に、赤リンは炭化を促進し酸素遮断効果を促進するため好ましく、さらに水酸化アルミニウムと併用することによりその滴下防止作用と相乗して効果的な難燃性能を発揮する。また市販の水酸化アルミニウムで周囲を被覆した赤リンを用いた場合も、同様の効果をもたらし難燃性物質全体としての配合量を低減化につなげることができるため一層好適である。その場合にリンの燃焼で発生する有毒なホスフィンガスを抑えることができる。
【0025】
前記難燃性物質とともに、必要に応じて接着性を増大させるための可塑剤を配合する。なかでも可塑性と難燃性とを同時に有するリン酸エステルは本発明の難燃性接着材料の配合にあたってきわめて好適な材料となる。
【0026】
リン酸エステルとしては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジホスフェート等の公知の化合物を使用することができるが、より難燃性を高めるためには縮合型リン酸エステルを使用するのが好ましい。また縮合型リン酸エステルは分子量が大きいため、低分子量のリン酸エステルと比べて、特に生地等の繊維に塗工した場合にブリードし(滲み出し)難く、経時変化を遅らせる効果がある。これらの代表例としては、オキシ塩化リンと2価のフェノール系化合物との反応生成物、またはオキシ塩化リンとアルキルフェノールとの反応生成物、等があげられる。配合量が多くなると高分子樹脂化合物が極端に軟化する傾向があり、またブリードを起こすとともにブロッキング(生地の重なり部分の貼り付き)をおこすために好ましくない。
【0027】
本発明の難燃性接着材料は、難燃性の高い下塗り(第1層)用の難燃性組成物と接着性の高い下塗り(第2層)用の接着性成物の1対で構成するものである。すなわち、下塗り用の難燃性組成物と、上塗り用の接着性組成物の機能を分担させることにより、下塗り用の難燃性組成物に多量の難燃剤を配合するにもかかわらず難燃性接着材料自体の接着性が損なわれることなく、また上塗り用の接着組成物に対する難燃剤の配合量を少量に抑えているにもかかわらず、ハロゲン系難燃剤を配合した場合に匹敵する高い難燃性と接着性とを具備したものとなる。
【0028】
本発明の難燃性接着材料では、難燃性物質の配合割合を節減することができ、たとえ可塑剤として補助的にリン酸エステルを配合したとしてもきわめて少量となる。このため、生地に塗工した表層でブリード(滲み出し)やブロッキング(貼り付き)を起こすことがなく、長期にわたって安定した状態を維持することができる。
【0029】
難燃性の金属被覆生地または金属被覆シートを製造する際は、これらの生地を平面に展開してその上に下塗り用の難燃性組成物を付着しつつ、所定厚さに塗工するよう塗工機の厚さ調整用部具の高さを調整し、生地の上面に沿ってこの部具を走行させて塗工後、加熱乾燥することによって、難燃性組成物で被覆された生地が得られる。上塗り用の接着組成物を塗工する場合も、下塗り用の難燃性組成物を塗工する場合に準じて塗工する。塗工機は公知のものを使用することができる。電磁波シールドガスケット用の導電性生地に塗工する樹脂組成物の厚さは、下塗り(第1)層用の難燃性組成物の場合に不揮発分として30〜300μm、上塗り(第2)層用の接着性組成物の場合に不揮発分として5〜50μm程度が好適である。
【0030】
繊維状の生地に塗工する場合は、下塗り(第1)層用の組成物に含まれる難燃剤が多いため、上塗り(第2)層用の組成物を塗工する際の目止め材としても作用し、それによって塗工厚が均等となるためさらに好ましい。この場合の塗工にコンマロール等の塗工機を用いてもよい。
【実施例】
【0031】
難燃性接着材料の接着性および難燃性の評価試験
接着性、および難燃性の検証は次により行った。すなわち、基材樹脂に対する難燃剤の配合割合を、少なくしたときには接着性が高くなるものの難燃性が低くくなり、多くしたときには接着性が低いものの難燃性が高くなる傾向があるため、それぞれの物性と目的にかなった配合領域を検証するための実験を行った。
【0032】
1.難燃性接着組成物の配合割合と、難燃性、接着性に及ぼす影響の検証
(1)難燃性組成物の配合
ポリウレタン樹脂(坂井工業社製、U−826)のMEK(メチルエチルケトン)溶液(不揮発分35重量%)中に、各実験NO.に示す混合系難燃剤を配合した後、MEKによって粘度4000mPa・s(単位:ミリパスカル)に調整した。
なお、難燃剤は3種類の難燃性物質を混合したものであり、本発明者等によるこれまでの予備試験結果で、もっとも難燃性効果のあった次の組成から採用した。
難燃剤と混合割合
ポリリン酸アンモニウム:クラリアントジャパン社製
水酸化マグネシウム:神島化学工業社製
赤燐系難燃剤:日本化学工業社製
そして、このポリリン酸アンモニウム:水酸化マグネシウム:赤リン系難燃剤を、4:3:3(重量比)の割合で混合した。
【0033】
(2)導電性生地への難燃性模擬接着層の形成
生地材料として、ポリエステル繊維糸を平織りした生地に、銅、ニッケルの2層メッキを施した導電性生地(セーレン社製、SUI−13−315M、厚さ80μm)を準備した。次いで、この導電性生地の片面に塗工機を用いて塗工した後、温度110℃乾燥して厚さ約60μmの難燃性模擬接着層を形成させた。
【0034】
(3)EMI(電磁波シールド用)ガスケットの作製
ポリウレタン樹脂製発泡体(アキレス社製、NZH)をスライサーでスライスした長尺紐状の発泡体片(幅13mm、高さ3.5mm)に、前記難燃性模擬接着層を形成した導電性生地を、加熱成形(生産機)することによって接合し、EMIガスケットを作製した。
【0035】
(4)難燃性模擬接着層の難燃性試験
前記EMIガスケットにつき、UL規格に基いて難燃性試験を行った結果を表1に示す。なお、実験No.5、およびNo.6は、導電性生地表面に塗工された難燃性模擬接着層と発泡体片との接着性能が低く、EMIガスケットとしての形状維持が難しいため難燃性試験の対象から除外した。
このため、実験No.5およびNo.6についてはEMIガスケットを形成する前の導電性生地に下塗り用の難燃性組成物と、上塗り用の接着組成物とを順次塗工したシートについてUL規格に基く難燃性試験を行った。
【0036】
(5)難燃性模擬接着層の接着性試験
前記EMIガスケットにつき、導電性生地表面の難燃性模擬接着層と発泡体片との接着試験は、各実験No.に示す難燃性模擬接着剤を、導電性生地上に塗工し被膜形成後48時間自然放置した後、生産機の加熱成形の温度設定を150℃および200℃に設定し、両末端温度での接着・剥離の状態を検証した。その結果を表1に示す。
【表1】

(注)
(1)接着性および難燃性の評価:
○ 良好 △ 十分ではない × 不良
(○) 各組成物塗工後の生地(シート状)について難燃性試験の結果良好
(2)難燃性試験
前記したとおり、実験No.5、およびNo.6の組成物は発泡体に対して接着性 が低く、EMIガスケットとしての形状維持が困難であるため除外した。
【0037】
上記試験結果より、UL規格V−0を満足させるためには、基材樹脂100重量部に対して難燃剤300重両部以上配合する必要があることが判明した。また、基材樹脂100重量部に対して難燃剤300重両部以上、特に400重量部配合したものは各温度における試験とも剥離しやすく接着性が低いものであった。これに対し、基材樹脂100重量部に対して難燃剤300重両部以下配合したものは各温度における試験とも良好な接着性を有することが判明した。
【0038】
2.重層被膜よりなる難燃性接着層の形成
前記1.難燃性接着組成物の配合割合と難燃性、接着性に及ぼす影響につき検証した結果、基材樹脂に対する難燃剤の配合割合を変化させることにより、難燃性と接着性のそれぞれの特性を引き出せることが判明した。このため表1に示す配合において、難燃性が有効に現れた範囲を難燃層、接着性が有効に現れた範囲を接着層として重層することを見出した。依って、表1に示す各実験結果より、難燃性が高かった実験No.5およびNo.6を導電性生地に塗工する下塗り(第1)層に、また接着性が高かった実験No.1およびNo.2を上塗り(第2)層として組み合わせ重層として形成することにより、難燃性と接着性とを同時に具備することを検証ための試験を行った。配合割合と性能試験結果を表2にまとめて示す。
【表2】

(注)
(1)接着性および難燃性の評価:
○ 良好 △ 十分ではない × 不良
【0039】
上記試験結果より、難燃層と接着層とで重層を形成することにより、それぞれの配合割合に有する特性を引き出すことができ、接着性、難燃性とも満足し得る結果となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を基材としてノンハロゲン難燃性物質を含む難燃性組成物と、熱可塑性樹脂を基材とする接着性組成物よりなり、前記難燃性組成物を下塗り層として、接着性組成物を上塗り層として、重層被膜を形成するこれら組成物1対よりなることを特徴とする難燃性接着材料。
【請求項2】
前記接着性組成物は、熱可塑性樹脂を基材とする接着組成物中にノンハロゲン難燃性物質を含むものであって、その難燃性物質が難燃性組成物中に含まれる難燃性物質と同種の材料でなり、かつ難燃性物質の配合割合を難燃性組成物に含まれる配合割合以下とするものである請求項1に記載の難燃性接着材料。
【請求項3】
前記難燃性接着材料を構成する熱可塑性の各基材樹脂がポリウレタン樹脂であり、難燃性物質がポリリン酸化合物、金属水酸化物、赤リンのうちの複数種を含む混合系難燃剤であって、かつ前記基材樹脂を不揮発分換算100重量部に対し、混合系難燃剤300重量部以上含むものを難燃性組成物とし、150重量部以下含むものを接着性組成物とする請求項1および請求項2に記載の難燃性接着材料。
【請求項4】
前記難燃性接着材料が、電磁波シールドガスケット用のホットメルト接着剤である請求項1から請求項3に記載の難燃性接着材料。

【公開番号】特開2009−185266(P2009−185266A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−51214(P2008−51214)
【出願日】平成20年2月1日(2008.2.1)
【出願人】(391020078)日本ジッパーチュービング株式会社 (13)
【Fターム(参考)】