説明

難燃性粘着剤組成物、難燃性粘着テープおよび難燃性粘着シート

【課題】難燃性に優れるとともに、初期粘着性および粘着性の経時安定性にも優れた難燃性粘着剤組成物、並びに、そのような難燃性粘着剤組成物を用いた難燃性粘着テープおよび難燃性粘着シートを提供する。
【解決手段】(A)成分としての芳香環含有ビニル共重合体と、(B)成分としての難燃剤と、を含む難燃性粘着剤組成物等であって、(B)成分である難燃剤が、芳香族リン酸エステルを含むとともに、(B)成分の配合量を、(A)成分100重量部に対して、70〜200重量部の範囲内の値とし、かつ、(A)成分を共重合する際の単量体成分として、(a)芳香環含有ビニル化合物の配合量を全単量体中、20重量%以上の値とし、(b)カルボキシル基含有ビニル化合物の配合量を全単量体中、0重量%または0〜1重量%(但し、0重量%は含まない。)の範囲内の値とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性粘着剤組成物、難燃性粘着テープおよび難燃性粘着シートに関する。特に、難燃性に優れるとともに、初期粘着性および粘着性の経時安定性にも優れた難燃性粘着剤組成物、難燃性粘着テープおよび難燃性粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品等に使用される電気絶縁テープ等は、その安全性の基準として、例えば、UL94規格におけるVTM−0〜2レベルの高い難燃性が求められている。
そこで、電気絶縁テープ等における粘着剤組成物の難燃性を向上させるため、一般に、粘着剤組成物に対して、各種難燃剤を含有させる方法が採られている。そして、かかる難燃剤としては、塩素や臭素等のハロゲン系化合物や、ハロゲン系化合物および酸化アンチモンを併用したもの等が一般的であった。
しかしながら、ハロゲン系化合物の難燃剤は、燃焼時にハロゲン系ガスが発生するため、人体に有害なばかりか、有色であるため、透明性が要求される電気絶縁テープ等には、使用しにくいという問題が見られた。
【0003】
そこで、これらの問題を解決すべく、ハロゲン系化合物以外の難燃剤として、リン酸エステル系難燃剤を配合してなる粘着剤組成物を用いた難燃性粘着テープが提案されている(例えば、特許文献1および2)。
より具体的には、特許文献1には、基材の少なくとも片面に、リン酸エステル系難燃剤(α)と、メラミン系樹脂粒子(β)を含む粘着剤層が設けられた難燃性粘着テープであって、該粘着剤層中のベースポリマー100重量部に対して、(α+β)で表される合計配合量が45〜250重量部、かつ、(α/β)で表される比率が、0.2〜5の範囲内の値となるように、リン酸エステル系難燃剤(α)およびメラミン系樹脂粒子(β)が配合されてなる難燃性粘着テープが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、基材の少なくとも片面に、芳香族縮合リン酸エステル系難燃剤(α)と、リン酸エステル(β)と、を含む粘着剤層が設けられた難燃性粘着テープであって、該粘着剤層中のベースポリマー100重量部に対して、(α+β)で表される合計配合量が45〜250重量部、かつ、(α/β)で表される比率が、0.3〜3の範囲内の値となるように、芳香族縮合リン酸エステル系難燃剤(α)およびリン酸エステル(β)が配合されてなる難燃性粘着テープが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許3983889号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特許3983890号公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1および2に開示されたリン酸エステル系難燃剤等を用いてなる難燃性粘着テープにおいて、それぞれ相反特性である難燃性および粘着性の良好なバランスをとることが容易でないという問題が見られた。
すなわち、粘着性を向上させるために、カルボキシル基含有ビニル化合物を所定量使用した場合、粘着主剤が酸系粘着主剤となるとともに、かかる酸系粘着主剤が触媒となって、リン酸エステル系難燃剤を加水分解させ、その結果、粘着性が経時的に著しく低下するという問題が見られた。
【0007】
そこで、本発明者らは、以上のような事情に鑑みて、鋭意努力したところ、粘着主剤として、(A)芳香環含有ビニル共重合体を用い、これを共重合する際の単量体成分として、(b)カルボキシル基含有ビニル化合物の使用量を厳格に制限する一方で、(a)芳香環含有ビニル化合物を所定量用いるとともに、難燃剤としての芳香族リン酸エステル(B)を所定割合にて配合することにより、芳香族リン酸エステル(B)の加水分解を効果的に抑制し、かつ、初期の粘着性を効果的に向上させるとともに、粘着性の経時的な低下についても効果的に低減できることを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明の目的は、難燃性に優れるとともに、初期粘着性および粘着性の経時的安定性にも優れた難燃性粘着剤組成物、並びに、そのような難燃性粘着剤組成物を用いた難燃性粘着テープおよび難燃性粘着シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、(A)成分としての芳香環含有ビニル共重合体と、(B)成分としての難燃剤と、を含む難燃性粘着剤組成物であって、(B)成分である難燃剤が、芳香族リン酸エステルを含むとともに、(B)成分である難燃剤の配合量を、(A)成分である芳香環含有ビニル共重合体100重量部に対して、70〜200重量部の範囲内の値とし、かつ、(A)成分である芳香環含有ビニル共重合体を共重合する際の単量体成分として、(a)芳香環含有ビニル化合物の配合量を全単量体中、20重量%以上の値とし、(b)カルボキシル基含有ビニル化合物の配合量を全単量体中、0重量%または0〜1重量%(但し、0重量%は含まない。)の範囲内の値とすることを特徴とする難燃性粘着剤組成物が提供され、上述した問題を解決することができる。
すなわち、本発明の難燃性粘着剤組成物であれば、難燃剤としての芳香族リン酸エステルを所定割合で配合することにより、難燃性粘着剤組成物の安全性および透明性を維持しつつ、優れた難燃性を得ることができる。
また、(b)成分として、カルボキシル基含有ビニル化合物、すなわち、分子内にカルボキシル基を有するビニル化合物の配合量を所定以下に厳格に制限し、より好ましくは、実質的に使用しないことにより、カルボキシル基の触媒作用によって、難燃剤としての芳香族リン酸エステルが加水分解を起こし、それに起因して、難燃性粘着剤組成物の難燃性および粘着性が、経時的に低下することを効果的に抑制することができる。
さらに、(a)成分として、芳香環含有ビニル化合物、すなわち、分子内に芳香環構造を有するビニル化合物を所定量用いていることから、初期および経時における良好な粘着特性を得ることができる。
より具体的には、(b)成分としてのカルボキシル基含有ビニル化合物の配合量を所定以下に厳格に制限することによって、通常、難燃性粘着剤組成物における初期粘着性等が不足すると思われがちであるが、(a)成分としての芳香環含有ビニル化合物を所定量用いていることから、十分な初期粘着性を得ることができ、かつ、かかる粘着性を、経時的にも効果的に維持することができる。
なお、本発明における「難燃性粘着剤組成物」とは、未架橋の難燃性粘着剤組成物であっても、架橋後の難燃性粘着剤組成物であっても、上述した配合組成を有する難燃性粘着剤組成物であれば、全て含まれる広い意味である。
【0009】
また、本発明の難燃性粘着剤組成物を構成するにあたり、(a)成分である芳香環含有ビニル化合物が、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ビフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エトキシ化o−フェニルフェノールアクリレート、フェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、2−ナフトエチル(メタ)アクリレート、2−ナフトキシエチルアクリレート、2−(4−メトキシ−1−ナフトキシ)エチル(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレートであることが好ましい。
このように構成することにより、非弾性的な難燃性粘着剤組成物を得られやすく、これが難燃剤である所定の液状芳香族リン酸エステルによって可塑化されると、さらに非弾性的な難燃性粘着剤組成物を得られやすくなり、粘着性を高くすることができる。
【0010】
また、本発明の難燃性粘着剤組成物を構成するにあたり、芳香族リン酸エステルのうち少なくとも一種が、液状芳香族リン酸エステルであるとともに、当該液状芳香族リン酸エステルの配合量を、(B)成分である難燃剤の全体量に対して、30重量%以上の値とすることが好ましい。
このように液状芳香族リン酸エステルを所定量用いることにより、難燃性を維持しつつも、難燃剤が難燃性粘着剤組成物の表面において析出する現象、所謂ブルーミングの発生を、効果的に抑制することができる。
また、かかる液状芳香族リン酸エステルを所定量用いることにより、(a)成分である芳香環含有ビニル化合物、例えば、フェノキシエチルアクリレート等を構成単位として含む(A)成分である芳香環含有ビニル共重合体に対して、優れた可塑効果を発揮して、難燃性粘着剤組成物における粘着特性をさらに良好なものとすることができる。
【0011】
また、本発明の難燃性粘着剤組成物を構成するにあたり、上述した液状芳香族リン酸エステルが、縮合型の液状芳香族リン酸エステルであることが好ましい。
このように構成することにより、ブルーミングの発生を効果的に抑制することができるとともに、非縮合型の液状芳香族リン酸エステルを加えた場合と比較し、より高い難燃性を得ることができる。
また、かかる縮合型の液状芳香族リン酸エステルを用いることにより、(a)成分である芳香環含有ビニル化合物、例えば、フェノキシエチルアクリレート等を構成単位として含む(A)成分である芳香環含有ビニル共重合体に対して、優れた可塑効果を発揮して、難燃性粘着剤組成物における粘着特性をさらに良好なものとすることができる。
【0012】
また、本発明の難燃性粘着剤組成物を構成するにあたり、(a)成分である芳香環含有ビニル化合物が、フェノキシエチル(メタ)アクリレートであって、(B)成分である難燃剤が、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)および1,3−フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)の少なくとも一つであることが好ましい。
このように構成することにより、所定の単量体成分に由来した(A)成分である芳香環含有ビニル共重合体に対して、(B)成分である難燃剤が、所定の可塑効果を発揮し、難燃性粘着剤組成物における良好な粘着特性を示すことができる。
また、このような難燃剤であれば、(A)成分である芳香環含有ビニル共重合体からのブルーミングの発生を効果的に抑制することができるとともに、より高い難燃性を得ることができる。
【0013】
また、本発明の難燃性粘着剤組成物を構成するにあたり、(A)成分である芳香環含有ビニル共重合体を共重合する際のさらなる単量体成分(c)として、水酸基含有ビニル化合物、すなわち、分子内に水酸基(ヒドロキシル基)を有するビニル化合物を、全単量体の合計量中、1〜15重量%の範囲内の値で配合することが好ましい。
このように構成することにより、難燃性粘着剤組成物に架橋剤を添加した場合に、芳香環含有ビニル共重合体同士の架橋を、効果的に行うことができ、難燃性粘着剤組成物の粘着力や貯蔵弾性率の調整を、容易に行うことができる。
【0014】
また、本発明の難燃性粘着剤組成物を構成するにあたり、(C)成分として、(A)成分である芳香環含有ビニル共重合体に対する架橋剤を含むことが好ましい。
このように構成することにより、難燃性粘着剤組成物の粘着力や貯蔵弾性率の調整を、容易に行うことができる。
【0015】
また、本発明の別の態様は、基材の片面または両面上に、(A)成分としての芳香環含有ビニル共重合体と、(B)成分としての難燃剤とを含む難燃性粘着剤組成物を粘着剤層として備えた難燃性粘着テープであって、(B)成分である難燃剤が、芳香族リン酸エステルを含むとともに、(B)成分である難燃剤の配合量を、(A)成分である芳香環含有ビニル共重合体100重量部に対して、70〜200重量部の範囲内の値とし、かつ、(A)成分である芳香環含有ビニル共重合体を共重合する際の単量体成分として、(a)芳香環含有ビニル化合物の配合量を全単量体中、20重量%以上の値とし、(b)カルボキシル基含有ビニル化合物の配合量を、全単量体中、0重量%または0〜1重量%(但し、0重量%は含まない。)の範囲内の値とすることを特徴とする難燃性粘着テープである。
すなわち、粘着性に優れているばかりか、UL94規格の所定レベルを満たす難燃性粘着テープが得られることから、例えば、電子部品の絶縁用テープおよび電子機器内での固定・結束用テープ等の用途に、好適に使用することができる。
【0016】
また、本発明の難燃性テープを構成するにあたり、JIS Z 0237:2000の10.4 180度引き剥がし粘着力の測定に準じて測定される難燃性テープの初期粘着力、および60℃、95%RHの環境下に7日間放置した後における放置後の粘着力から、下記計算式(1)を用いて算出される粘着力保持率(%)を75〜125%の範囲内の値とすることが好ましい。
粘着力保持率(%)=(放置後の粘着力/初期粘着力)×100 (1)
すなわち、粘着力の変化が少ないことから、電子部品の絶縁用テープおよび電子機器内での固定・結束用テープ等の用途に、さらに好適に使用することができる。
【0017】
また、本発明のさらに別の態様は、基材の片面または両面上に、(A)成分としての芳香環含有ビニル共重合体と、(B)成分としての難燃剤とを含む難燃性粘着剤組成物を粘着剤層として備えた難燃性粘着シートであって、(B)成分である難燃剤が、芳香族リン酸エステルを含むとともに、(B)成分である難燃剤の配合量を、(A)成分である芳香環含有ビニル共重合体100重量部に対して、70〜200重量部の範囲内の値とし、かつ、(A)成分である芳香環含有ビニル共重合体を共重合する際の単量体成分として、(a)芳香環含有ビニル化合物の配合量を全単量体中、20重量%以上の値とし、(b)カルボキシル基含有ビニル化合物の配合量を、全単量体中、0重量%または0〜1重量%(但し、0重量%は含まない。)の範囲内の値とすることを特徴とする難燃性粘着シートである。
すなわち、粘着性に優れているばかりか、UL94規格の所定レベルを満たす難燃性粘着シートが得られることから、例えば、防炎用品の品質表示ラベル、壁紙、電子機器筐体または部品の情報表示ラベル等の用途に、有効に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1(a)〜(d)は、難燃性粘着剤組成物等の使用態様、および難燃性粘着テープ等の製造方法を説明するために供する概略図である。
【図2】図2は、単量体成分(b)の配合量と、難燃性粘着剤組成物の粘着性と、の関係を説明するために供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態は、(A)成分としての芳香環含有ビニル共重合体と、(B)成分としての難燃剤と、を含む難燃性粘着剤組成物であって、(B)成分である難燃剤が、芳香族リン酸エステルを含むとともに、(B)成分である難燃剤の配合量を、(A)成分である芳香環含有ビニル共重合体100重量部に対して、70〜200重量部の範囲内の値とし、かつ、(A)成分である芳香環含有ビニル共重合体を共重合する際の単量体成分として、(a)芳香環含有ビニル化合物の配合量を全単量体中、20重量%以上の値とし、(b)カルボキシル基含有ビニル化合物の配合量を、全単量体中、0重量%または0〜1重量%(但し、0重量%は含まない。)の範囲内の値とすることを特徴とする難燃性粘着剤組成物である。
すなわち、本発明の第1の実施形態は、図1(a)〜(d)に例示するような態様で用いられる難燃性粘着剤組成物であって、図面を適宜参照して、具体的に説明する。
【0020】
1.(A)成分:芳香環含有ビニル共重合体
(1)単量体成分(a)
また、(A)成分である芳香環含有ビニル共重合体を共重合する際の単量体成分(a)として、芳香環含有ビニル化合物、すなわち、その構造中に芳香族基を含む共重合可能なビニル化合物の配合量を、全単量体(100重量%)中、20重量%以上の値とすることを特徴とする。
この理由は、かかる単量体成分(a)であれば、上述したように、(A)成分を共重合する際の単量体成分として、単量体成分(b)を実質的に用いない場合であっても、その代替成分として機能し、効果的に初期および経時における粘着性を向上させることができるためである。
すなわち、本発明においては、(A)成分を共重合する際の単量体成分として、カルボキシル基含有ビニル化合物を実質的に用いないことから、一般的見解に基づけば、難燃性粘着剤組成物における初期の粘着性が不足するおそれがある。
しかしながら、単量体成分(a)として、芳香環含有ビニル化合物を所定量用いれば、芳香環同士が、(A)成分である芳香環含有ビニル共重合体中で所定以上の相互作用を有することから、カルボキシル基含有ビニル化合物の代替成分として、効果的に機能し、初期粘着性を十分に得ることができる。
さらに、単量体成分(a)であれば、(B)成分である難燃剤としての芳香族リン酸エステルの加水分解を安定的に抑制することができることから、経時的にも粘着性を効果的に維持することができる。
その他、(A)成分を共重合する際の単量体成分(a)としての芳香環含有ビニル化合物の種類によって、例えば、フェノキシエチルアクリレート等の芳香環含有ビニル共重合体であれば、所定の芳香族リン酸エステルによって、効果的に可塑化され、難燃性粘着剤組成物において、さらに良好な粘着特性を示すことができる。
【0021】
また、かかる単量体成分(a)の種類としては、分子内に芳香環構造を有するビニル化合物であれば特に制限されるものではないが、例えば、芳香環含有(メタ)アクリレートであることが好ましい。
すなわち、このような芳香環含有(メタ)アクリレートは、所定の構造を持ったアルコールを、アクリル酸とエステル縮合反応させることによって種類に富む化合物が得られやすく、共重合成分として、これらから選択して用いることによって、難燃性粘着剤組成物の機械的特性や耐久性、あるいは、粘着特性を容易に調整することができるためである。
【0022】
また、かかる単量体成分(a)の種類に関して、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ビフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エトキシ化o−フェニルフェノールアクリレート、フェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、2−ナフトエチル(メタ)アクリレート、2−ナフトキシエチルアクリレート、2−(4−メトキシ−1−ナフトキシ)エチル(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも一種を用いることが好ましい。
この理由は、(A)成分である芳香環含有ビニル共重合体を共重合する際に、共重合成分として、このようなフェノキシエチルアクリレート等を用いた場合、側鎖の運動性が高いために、得られる芳香環含有ビニル共重合体の過度の運動性の低下を防ぎ、非弾性的な難燃性粘着剤組成物を得られやすく、難燃剤である所定の液状芳香族リン酸エステルによって可塑化されると、さらに非弾性的な難燃性粘着剤組成物を得られやすくなり、粘着性を高めることができるためである。
したがって、共重合成分として、フェノキシエチルアクリレート等を用いた場合、フェノキシエチルアクリレート等を用いない場合と比較して、難燃性粘着剤組成物において、さらに良好な粘着特性を示すことができる。
これらのうちでも、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシ化o−フェニルフェノールアクリレートからなる群から選択される少なくとも一種を用いることが好ましく、フェノキシエチル(メタ)アクリレートを用いることがより好ましい。
【0023】
また、(A)成分である芳香環含有ビニル共重合体を共重合する際における、単量体成分(a)の配合量を、全単量体の合計量中、20重量%以上の値とすることを特徴とする。
この理由は、かかる単量体成分(a)の配合量が20重量%未満の値となると、難燃性粘着剤組成物における粘着性が不十分になる場合があるためである。
但し、かかる単量体成分(a)の配合量が過度に多くなると、初期粘着力や粘着力保持率の調整が困難となる場合がある。
したがって、(A)成分である芳香環含有ビニル共重合体を共重合する際における、単量体成分(a)の配合量を、全単量体中、25重量%〜75重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、30重量%〜70重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、単量体成分(a)の配合量が、全単量体の合計量中、100重量%の場合、すなわち、単独重合体となる場合も含んでいるが、本発明の場合、そのような場合であっても、芳香環含有ビニル共重合体と称するものとする。
【0024】
次いで、表1に示される実施例1および2の初期粘着力と粘着力保持率の結果より、単量体成分中における単量体成分(a)の配合量と、難燃性粘着剤組成物の粘着性との関係を説明する。
なお、難燃性粘着剤組成物や、粘着力および粘着力保持率の測定条件等の詳細については、実施例において記載する。
【0025】
まず、実施例1および2の初期粘着力の結果から理解されるように、フェノキシエチルアクリレートの配合量が増加するのにともなって、難燃性粘着剤組成物における初期粘着力は増加している。
したがって、フェノキシエチルアクリレートは、後述するアクリル酸の初期粘着力向上効果程ではないものの、難燃性粘着剤組成物における初期粘着力の向上に寄与することが理解される。
また、実施例1および2の粘着力保持率の結果から理解されるように、フェノキシエチルアクリレートの配合量にかかわらず、難燃性粘着剤組成物における粘着力保持率は、安定して高い値を保持しており、後述するアクリル酸の粘着力保持率低下傾向のような傾向は見られない。
よって、実施例1および2の初期粘着力と粘着力保持率の結果から、単量体成分(a)としてのフェノキシエチルアクリレートは、初期粘着力を向上させつつ、経時においても、その粘着力を安定的に維持できることが理解される。
【0026】
また、(a)成分としてのフェノキシエチルアクリレートの配合量が、全単量体中、20重量%未満の値となると、初期粘着力が過度に低い値となる場合がある。
一方、(a)成分としてのフェノキシエチルアクリレートの配合量が、全単量体中、20重量%以上の値であれば、初期粘着力を向上させつつ、経時においても、その粘着力を安定的に維持できることが、別途、確認されている。
よって、上述したように、(a)成分としてのフェノキシエチルアクリレートの配合量を、全単量体中、20重量%以上の値とすることが好ましいことが理解される。
【0027】
(2)単量体成分(b)
また、(A)成分である芳香環含有ビニル共重合体を共重合する際の単量体成分(b)として、カルボキシル基含有ビニル化合物を実質的に含まないことを特徴とする。
より具体的には、(A)成分である芳香環含有ビニル共重合体を共重合する際における全単量体中、単量体成分(b)の配合量を0重量%または0〜1重量%(但し、0重量%は含まない。)の範囲内の値とすることを特徴とする。
この理由は、単量体成分(b)の配合量をかかる範囲内の値とすることにより、粘着主剤としての(A)成分である芳香環含有ビニル共重合体が、カルボキシル基の触媒作用によって、難燃剤としての芳香族リン酸エステルを加水分解することを低減することができるためである。このことにより、加水分解により生成するリン酸やフェノール類の分解物に起因して、難燃性粘着剤組成物の粘着性が、経時的に低下することを効果的に抑制することができる。
なお、単量体成分(b)の種類としては、分子内にカルボキシル基を有するビニル化合物であれば特に制限されるものではなく、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等が挙げられる。
【0028】
次いで、図2を用いて、単量体成分(b)の配合量と、難燃性粘着剤組成物の粘着性との関係を説明する。
すなわち、図2には、横軸に、全単量体の合計量中の単量体成分(b)としてのアクリル酸の配合量(重量%)を採り、左縦軸に、得られた難燃性粘着剤組成物における初期粘着力(N/25mm)を採った特性曲線Aと、右縦軸に、得られた難燃性粘着剤組成物における粘着力保持率(%)を採った特性曲線Bとが、それぞれ示してある。
ここで、難燃性粘着剤組成物の初期粘着力とは、23℃、50%RH条件下に7日間放置し、十分に架橋させた難燃性粘着剤組成物の粘着力を指し、難燃性粘着剤組成物の粘着力保持率とは、難燃性粘着剤組成物を、所定の高温高湿環境下に放置する前後での粘着力の変化割合を意味し、具体的には下記計算式(1)にて表わされる値を意味する。
粘着力保持率(%)=(放置後の粘着力/初期粘着力)×100 (1)
なお、放置前の難燃性粘着剤組成物は、23℃、50%RHの条件下7日間放置し、十分に架橋させたものを用いた。
その他、難燃性粘着剤組成物や、粘着力および粘着力保持率の測定条件等の詳細については、実施例において記載する。
【0029】
まず、特性曲線Aから理解されるように、アクリル酸の配合量が増加するのにともなって、難燃性粘着剤組成物における初期粘着力は増加している。
したがって、アクリル酸は、難燃性粘着剤組成物における初期粘着力の向上に寄与することがわかる。
一方、特性曲線Bから理解されるように、アクリル酸の配合量が増加するのにともなって、難燃性粘着剤組成物における粘着力保持率は急激に低下している。
より具体的には、アクリル酸の配合量が、全単量体の合計量中の配合量が1重量%を超えただけで、難燃性粘着剤組成物における経時の粘着力を急激に低下させてしまうことがわかる。
よって、特性曲線AおよびBからは、単量体成分(b)としてのアクリル酸は、初期粘着力こそ向上させるものの、経時においては、逆に粘着力を低下させてしまうため、実質的に配合しない方が好ましいことが理解される。
【0030】
(3)単量体成分(c)
また、(A)成分である芳香環含有ビニル共重合体を共重合する際のさらなる単量体成分(c)として、水酸基含有ビニル化合物、すなわち、分子内に水酸基(ヒドロキシル基)を有するビニル化合物を含むことが好ましい。
この理由は、かかる単量体成分(c)をさらに含むことにより、難燃性粘着剤組成物に、後述する架橋剤を添加した場合に、芳香環含有ビニル共重合体同士の架橋を、効果的に行うことができ、難燃性粘着剤組成物の粘着力や貯蔵弾性率の調整を、容易に行うことができるためである。
【0031】
また、かかる単量体成分(c)の種類としては、分子内にヒドロキシル基を有するビニル化合物として、例えば、ビニルアルコール、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
これらのうち、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルおよび(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルが、特に好ましい。
【0032】
また、(A)成分である芳香環含有ビニル共重合体を共重合する際における、単量体成分(c)の配合量を、全単量体の合計量中、1〜15重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、単量体成分(c)の配合量が1重量%未満の値となると、(B)成分である難燃剤としての芳香族リン酸エステルを多くした場合に、十分な凝集力を得ることができないためである。一方、単量体成分(c)の配合量が15重量%を超えた値となると、難燃性粘着剤組成物の粘着性が過度に低下する場合があるためである。
したがって、単量体成分(c)の配合量を、全単量体の合計量中、1.5〜12重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、2〜10重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0033】
(4)単量体成分(d)
(A)成分である芳香環含有ビニル共重合体は、それを共重合する際の単量体成分(d)として、アルキル基の炭素数が1〜12の(メタ)アクリル酸エステルを必要に応じて含むことが好ましい。
この理由は、単量体成分(d)を適当量配合することによって、粘着性の調整がしやすいためである。
より具体的には、かかる単量体成分(d)としての(メタ)アクリル酸エステルにおけるアルキル基の炭素数が12よりも大きな値となると、側鎖同士が配向・結晶化することにより、得られる難燃性粘着剤組成物の粘着性が低下する場合があるためである。
一方、かかる(メタ)アクリル酸エステルのアルキル基の炭素数が過度に小さいと、得られる難燃性粘着剤組成物の貯蔵弾性率が大きくなりすぎて、耐久性が不十分になる場合があるためである。
したがって、かかる単量体成分(d)としての(メタ)アクリル酸エステルにおけるアルキル基の炭素数を、2〜10の範囲内の値とすることがより好ましく、3〜8の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0034】
また、単量体成分(d)、すなわち、アルキル基の炭素数が1〜12の範囲内の値である(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシルおよび(メタ)アクリル酸ドデシル等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
そして、単量体成分(d)の配合量を、通常、(A)成分を構成する全単量体に対して、80重量%以下の値とすることが好ましく、25〜75重量%の範囲内の値とすることがより好ましい。
また、上述してきた単量体成分(a)〜(d)は、(A)成分である芳香環含有ビニル共重合体を構成する主成分であるため、通常、単量体成分(a)〜(d)の配合量の総和を、(A)成分を構成する全単量体の合計量中、70重量%以上の値とすることが好ましく、80重量%以上の値とすることがより好ましく、90重量%以上の値とすることがさらに好ましい。
【0035】
(5)重量平均分子量
また、(A)成分である芳香環含有ビニル共重合体の重量平均分子量を10万〜200万の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる重量平均分子量が10万未満の値となると、難燃性粘着剤組成物の耐久性が不十分となる場合があるためである。一方、かかる重量平均分子量が200万を超えた値となると、粘度増大等による加工適性の低下を抑制することが困難になる場合があるためである。
したがって、(A)成分である芳香環含有ビニル共重合体の重合平均分子量を30万〜150万の範囲内の値とすることがより好ましく、50万〜120万の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、かかる重量平均分子量は、ポリスチレン換算によるゲルパーミエーションクロマトグララフィー(GPC)法により測定することができる。
以上、芳香環含有ビニル共重合体について説明してきたが、本発明における(A)成分としての芳香環含有ビニル共重合体は、一種単独で用いてもよいし、単量体成分の組成や重量平均分子量の異なる二種以上を併用してもよい。
さらにまた、共重合形態についても特に制限されるものではなく、ランダム、ブロック、グラフト共重合体のいずれであってもよい。
【0036】
2.(B)成分:難燃剤
本発明の難燃性粘着剤組成物は、(B)成分である難燃剤として、芳香族リン酸エステルを含むことを特徴とする。
この理由は、芳香族リン酸エステルであれば、難燃性粘着剤組成物の安全性および透明性を維持しつつ、優れた難燃性を得ることができるためである。
すなわち、芳香族リン酸エステルであれば、従来のハロゲン系化合物と異なり、燃焼時に人体に有毒なハロゲン系ガスが発生することがない上、芳香環含有ビニル共重合体との相溶性が良いため、透明性が要求される物品に対しても容易に使用することができるためである。
その一方で、芳香族リン酸エステルであれば、燃焼場における気相において、効果的にラジカルトラップ効果を発揮することができるとともに、固相においても効果的にチャーを形成し、断熱・酸素遮断効果を発揮することができるためである。
なお、チャーの形成とは、燃焼時に組成物中における高分子中の水素や酸素を引き抜き、高分子を炭化させ、不燃の炭化層膜を形成することを意味する。
【0037】
また、かかる芳香族リン酸エステルは、縮合型と、非縮合型と、に大別されるが、本発明では、どちらの型の芳香族リン酸エステルでも用いることができる。
より具体的には、縮合型の芳香族リン酸エステルとしては、1,3−フェニレンビス(ジキシレニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)および1,3−フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
また、非縮合型の芳香族リン酸エステルとしては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジル2,6−キシレニルホスフェートおよび2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
【0038】
また、(B)成分である難燃剤の配合量を、(A)成分である芳香環含有ビニル共重合体100重量部に対して、70〜200重量部の範囲内の値とすることを特徴とする。
この理由は、(B)成分である難燃剤の配合量をかかる範囲とすることにより、難燃剤が難燃性粘着剤組成物の表面において析出する現象、所謂ブルーミングの発生を効果的に抑制して、透明性および粘着性を安定的に保持しつつ、優れた難燃性を得ることができるためである。
すなわち、かかる配合量が70重量部未満の値となると、難燃剤の添加効果が十分に発現せず、所望の難燃性を得ることが困難になる場合があるためである。一方、かかる配合量が200重量部を超えた値となると、十分な凝集力を得ることが困難になる場合があるためである。
したがって、(B)成分である難燃剤の配合量を、(A)成分である芳香環含有ビニル共重合体100重量部に対して、75〜180重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、80〜170重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0039】
また、芳香族リン酸エステルのうち少なくとも一種が、液状芳香族リン酸エステル、すなわち、25℃において液体である芳香族リン酸エステルであることが好ましい。
この理由は、このような液状芳香族リン酸エステルであれば、ブルーミングの発生を、より効果的に抑制することができるためである。
また、液状芳香族リン酸エステルの種類としては、例えば、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジル2,6−キシレニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェートおよび1,3−フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
なお、液状芳香族リン酸エステルの粘度の値(25℃測定)を、50000mPa・sec以下の値とすることが好ましく、10〜30000mPa・secの範囲内の値とすることがより好ましく、100〜25000mPa・secの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0040】
また、上述した液状芳香族リン酸エステルが、縮合型の液状芳香族リン酸エステルであることが好ましい。
この理由は、非縮合型の液状芳香族リン酸エステルを用いた場合、ブルーミングの発生については効果的に抑制できるものの、難燃性に劣る場合があるためである。
一方、縮合型の液状芳香族リン酸エステルであれば、ブルーミングの発生を効果的に抑制しつつ、難燃性にも優れるためである。
そして、このような縮合型の液状芳香族リン酸エステルとしては、例えば、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)および1,3−フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)が挙げられる。
【0041】
また、液状芳香族リン酸エステルの配合量を、(B)成分である難燃剤の全体量に対して、30重量%以上の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる液状芳香族リン酸エステルの配合量が30重量%未満の値となると、ブルーミングの発生を効果的に抑制することが困難になる場合があるためである。
また、かかる液状芳香族リン酸エステルを所定量用いることにより、(a)成分である芳香環含有ビニル化合物、例えば、フェノキシエチルアクリレート等に対して可塑効果を発揮して、難燃性粘着剤組成物における粘着特性をさらに良好なものとすることができるためである。
したがって、液状芳香族リン酸エステルの配合量を、(B)成分である難燃剤の全体量に対して、50重量%以上の値とすることがより好ましく、70重量%以上の値とすることがさらに好ましい。
【0042】
なお、本発明の効果を損なわない範囲であれば、芳香族リン酸エステルとして、25℃において固体である芳香族リン酸エステルを、さらに含んでもよい。
かかる25℃において固体である芳香族リン酸エステルとしては、例えば、1,3−フェニレンビス(ジキシレニルホスフェート)、トリフェニルホスフェート等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
また、(B)成分である難燃剤は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、芳香族リン酸エステル以外に、その他の難燃剤を含んでもよい。
その他の難燃剤としては、例えば、ホスファゼンや、ポリリン酸アンモニウム等のリン元素含有化合物が好適に用いられる。
【0043】
3.(C)成分:架橋剤
また、本発明の難燃性粘着剤組成物を構成するにあたり、(C)成分として、(A)成分である芳香環含有ビニル共重合体に対する架橋剤を含むことが好ましい。
この理由は、(C)成分である架橋剤により、(A)成分である芳香環含有ビニル共重合体同士を架橋することで、難燃性粘着剤組成物の粘着力や貯蔵弾性率の調整を、容易に行うことができるためである。
【0044】
(1)種類
また、かかる架橋剤としては、イソシアナート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート系架橋剤を好ましく挙げることができる。
この理由は、これらの架橋剤を含むことにより、難燃性粘着剤組成物の粘着力や貯蔵弾性率を、より好適な範囲に調節することができるためである。
中でも、イソシアナート系架橋剤であれば、芳香環含有ビニル共重合体が、単量体成分(d)としての分子内にヒドロキシル基を有するビニル化合物を含有する場合には、そのヒドロキシル基と反応して、芳香環含有ビニル共重合体同士を効果的に化学架橋させることができるためである。
【0045】
また、かかるイソシアナート系架橋剤の具体例としては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−又は2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエート等の脂肪族ジイソシアネート、例えば、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−ビス( イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネートもしくはその混合物、4,4’−トルイジンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、例えば、1,3−又は1,4−キシリレンジイソシアネートもしくはその混合物、ω、ω’−ジイソシアネート−1、4−ジエチルベンゼン、1,3−又は1,4−ビス(1−イソシアネート−1−メチルエチル)ベンゼンもしくはその混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネート、例えば、トリフェニルメタン−4,4’,4”−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、1,3,5−トリイソシアネートヘキサン等のトリイソシアネート、例えば、4,4’−ジフェニルジメチルメタン−2,2’−5,5’−テトライソシアネート等のポリイソシアネート単量体、上述したポリイソシアネート単量体から誘導されたダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、炭酸ガスと上述したポリイソシアネート単量体とから得られる2,4,6−オキサジアジントリオン環を有するポリイソシアネート、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3’−ジメチロールヘプタン、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の重量平均分子量200未満の低分子量ポリオールの上述した各種イソシアネートへの付加体、分子量が200〜200,000のポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリヒドロキシアルカン、ひまし油、ポリウレタンポリオール等の上述した各種イソシアネートへの付加体等が挙げられる。
【0046】
(2)配合量
また、(C)成分としての架橋剤の配合量を、(A)成分である芳香環含有ビニル共重合体100重量部に対して、0.01〜20重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる架橋剤の配合量が0.01重量部未満の値となると、(B)成分である難燃剤としての芳香族リン酸エステルの添加により、凝集力が過度に低下した場合に、十分な粘着力や貯蔵弾性率を得ることが困難になる場合があるためである。
一方、かかる架橋剤の配合量が20重量部を超えた値となると、芳香環含有ビニル共重合体同士の架橋が過剰になって、逆に、粘着力が低下しやすくなる場合があるためである。
上記の結果を得るためには、(C)成分としての架橋剤の配合量を、(A)成分である芳香環含有ビニル共重合体100重量部に対して、0.1〜18重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、0.3〜15重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、架橋剤は、必要に応じて、溶媒に溶解又は分散させたものを添加する場合があり、その場合には、溶媒を含んだ量を架橋剤の量として示すことがあるが、本段落における配合量は、溶媒を含まない(C)成分としての架橋剤そのものの量(固形分の量)を指す。
【0047】
4.希釈溶剤
本発明の難燃性粘着剤組成物において、各成分の分散性を改善したり、剥離フィルム等に難燃性粘着剤組成物を塗布する際に、適切な粘度に調整したりする観点から、溶剤を使用することができる。
かかる溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、エチルイソブチルケトン、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等が好ましく、溶剤を加えた際の粘着剤組成物の濃度は、5〜70重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
【0048】
5.添加剤
また、他の添加剤として、難燃性粘着剤組成物中に、粘着付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤、充填剤、高屈折率化剤、拡散剤等を含有させることも好ましい。
また、その場合、添加剤の種類にもよるが、その配合量を、(A)成分である芳香環含有ビニル共重合体100重量部に対して、0.1〜20重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
【0049】
6.難燃性粘着剤層
難燃性粘着剤組成物は、下記工程(1)〜(3)を経て、難燃性粘着剤層として構成することができる。
(1)(A)成分としての芳香環含有ビニル共重合体と、(B)成分としての難燃剤と、を含む難燃性粘着剤組成物であって、(B)成分である難燃剤が、芳香族リン酸エステルを含むとともに、(B)成分である難燃剤の配合量を、(A)成分である芳香環含有ビニル共重合体100重量部に対して、70〜200重量部の範囲内の値とし、かつ、(A)成分である芳香環含有ビニル共重合体を共重合する際の単量体成分として、(a)芳香環含有ビニル化合物の配合量を全単量体中、20重量%以上の値とし、(b)カルボキシル基含有ビニル化合物の配合量を全単量体中、0重量%または0〜1重量%(但し、0重量%は含まない。)の範囲内の値とする難燃性粘着剤組成物を準備する工程
(2)難燃性粘着剤組成物を、基材に対して塗布して、塗布層を形成する工程
(3)難燃性粘着剤組成物を架橋させて、塗布層を難燃性粘着剤層とする工程
以下、難燃性粘着剤層を構成するに至る工程につき、図面を適宜参照して、具体的に説明する。
【0050】
(1)工程(1)(難燃性粘着剤組成物の準備工程)
工程(1)は、具体的には、まず、単量体成分(a)および(b)を共重合させ、(A)成分である芳香環含有ビニル共重合体を得ることが好ましい。
かかる共重合の方法は、従来公知の重合方法等を採用することができ、特に限定されるものではないが、溶液重合を採用することが好ましい。
また、溶液重合を行う場合に用いる溶媒としては、上述した難燃性粘着剤組成物の希釈溶剤として挙げたものを用いることができるが、中でもトルエン、酢酸エチルを用いることが好ましい。
また、共重合を行う際に、重合開始剤を添加することが好ましい。
かかる重合開始剤は、従来公知の重合開始剤等を採用することができ、特に限定されるものではないが、アゾ系重合開始剤を用いることが好ましい。
また、(A)成分である芳香環含有ビニル共重合体は、工程(1)移行の工程における取り扱い性、加工適性の向上を目的として、任意の固形分に希釈することができる。
なお、希釈溶剤としては、溶液重合に用いた溶液との相溶性を妨げない範囲で、上述した希釈溶剤を用いることができる。
次いで、得られた溶剤中の(A)成分に対して、(B)成分である難燃剤としての芳香族リン酸エステル等と、(C)成分である架橋剤等と、を添加し、難燃性粘着剤組成物の溶液を得ることが好ましい。
【0051】
(2)工程(2)(難燃性粘着剤組成物の塗布工程)
工程(2)は、図1(a)に示すように、難燃性粘着剤組成物を、基材2に対して塗布して塗布層1を形成する工程である。
かかる基材としては、剥離フィルムが好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルムや、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンフィルムに対し、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アルキッド樹脂等の剥離剤を塗布して、剥離層を設けたものが挙げられる。
なお、かかる剥離フィルムの厚さは、通常、20〜150μmの範囲内の値とすることが好ましい。
【0052】
また、基材上に難燃性粘着剤組成物を塗布する方法としては、例えば、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等を用いて、溶剤を加えた難燃性粘着剤組成物を塗布して塗布層(塗膜)を形成した後、乾燥させることが好ましい。
このとき、塗布層の厚さを、乾燥時基準において、1〜100μmの範囲内の値とすることが好ましく、5〜50μmの範囲内の値とすることがより好ましい。
この理由は、塗布層の厚さが薄すぎると、十分な粘着特性が得られない場合があり、逆に、厚すぎると、残留溶剤が問題となる場合があるためである。
また、乾燥条件としては、通常、50〜150℃で、10秒〜10分の範囲内とすることが好ましい。
【0053】
(3)工程(3)(塗布層の架橋工程)
工程(3)は、難燃性粘着剤組成物を架橋させて、塗布層を難燃性粘着剤層とする工程である。
すなわち、図1(b)に示すように、基材としての剥離フィルム2上で乾燥させた状態の塗布層1の表面に対し、別の基材としてのテープ基材101等を積層させた状態で架橋させて、難燃性粘着剤層10とすることが好ましい。
なお、架橋は、上述した塗布層の乾燥工程と、シーズニング工程を通して行われる。
また、シーズニング工程の条件および期間としては、例えば、後述する実施例のごとき条件等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0054】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態は、基材の片面または両面上に、(A)成分としての芳香環含有ビニル共重合体と、(B)成分としての難燃剤とを含む難燃性粘着剤組成物を粘着剤層として備えた難燃性粘着テープであって、(B)成分である難燃剤が、芳香族リン酸エステルを含むとともに、(B)成分である難燃剤の配合量を、(A)成分である芳香環含有ビニル共重合体100重量部に対して、70〜200重量部の範囲内の値とし、かつ、(A)成分である芳香環含有ビニル共重合体を共重合する際の単量体成分として、(a)芳香環含有ビニル化合物の配合量を全単量体中、20重量%以上の値とし、(b)カルボキシル基含有ビニル化合物の配合量を全単量体中、0重量%または0〜1重量%(但し、0重量%は含まない。)の範囲内の値とすることを特徴とする難燃性粘着テープである。
以下、本発明の第2の実施形態を、第1の実施形態と異なる点を中心に、図1を参照しつつ、具体的に説明する。
【0055】
1.テープ基材
本発明の難燃性粘着テープにおいては、基材がテープ基材であるとともに、当該テープ基材の少なくとも一方に、第1の実施形態において記載した難燃性粘着剤層を備えることを特徴とする。
また、かかるテープ基材の材料物質としては、テープとしての用途に使用可能であれば、特に制限されるものではない。
したがって、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリアラミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテル・エーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリ(4−メチルペンテン−1)および耐熱性を有するポリオレフィンフィルム等が挙げられる。
なお、テープ基材の難燃性を向上させるべく、テープ基材に対して、芳香族リン酸エステル等の難燃剤を含有させたり、リン酸エステル、金属水和物、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアラミド、ポリフェニレンサルファイト等の難燃性の高いコーティング材料を塗布したりしてもよい。
【0056】
また、テープ基材の厚さは、使用する材料や、用途によっても多少異なるが、一般に3〜300μmの範囲内の値とすることが好ましく、5〜100μmの範囲内の値とすることがより好ましい。
また、テープ基材の幅については、テープの用途に応じ、適当な幅とすることができるが、通常、3〜200mmの範囲内の値とすることが好ましい。
また、10mm〜10mの幅のテープ基材を用いて、テープ基材上に難燃性粘着剤層を形成する工程、あるいは難燃性粘着剤層にテープ基材を積層させる工程を経た後に、難燃性粘着剤層付きテープ基材を上述の適当な幅に裁断してもよい。
【0057】
また、テープ基材の塗布層が形成される面側に、表面処理を施してあることも好ましい。
このような表面処理としては、例えば、プライマー処理、コロナ処理、火炎処理などが挙げられるが、特に、プライマー処理であることが好ましい。
この理由は、このようなプライマー層を形成したテープ基材を用いることにより、テープ基材に対する難燃性粘着剤層の密着性をさらに向上させることができるためである。
なお、このようなプライマー層を構成する材料としては、セルロースエステル(例えば、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースニトレート、およびそれらの組み合わせ)、ポリアクリル、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリビニルエステル、ポリビニルアセタール、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルブチラール、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
また、プライマー層の厚さについても、特に限定されないが、通常、0.05μm〜10μmの範囲内の値とすることが好ましい。
【0058】
2.難燃性粘着剤層
また、図1に示すように、本発明の難燃性粘着テープ100における難燃性粘着剤層10は、第1の実施形態として記載した特定の難燃性粘着剤組成物からなる難燃性粘着剤層とすることを特徴とする。
なお、かかる難燃性粘着剤層の具体的な内容については、既に第1の実施形態において説明したのと同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0059】
また、難燃性粘着剤層10の厚さを1〜100μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、難燃性粘着剤層の厚さをかかる範囲とすることにより、所望の粘着力等の粘着剤特性を、より安定的に発揮させることができるためである。すなわち、かかる厚さが1μm未満の値となると、所望の粘着力を発現しにくくなり、浮き剥れ等の不具合が生じやすくなる場合があるためである。
一方、かかる厚さが100μmを超えた値となると、被着体汚染や糊残りなどの不具合が生じやすくなる場合があるためである。
したがって、難燃性粘着剤層の厚さを5〜70μmの範囲内の値とすることがより好ましく、10〜50μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0060】
また、テープ基材に対する難燃性粘着剤層の形成方法としては、図1(a)〜(c)に示すように、基材としての剥離フィルム2上において形成された塗布層1における剥離フィルム2の無い側の表面を、直接、別の基材としてのテープ基材101に対して密着させることにより積層させ、その後、架橋させて、難燃性粘着テープ100aを得ることが好ましい。
あるいは、剥離フィルム上に塗布した難燃性粘着剤組成物を、先に架橋させ、難燃性粘着剤層とした後、テープ基材に対して積層させてもよい。
また、得られた難燃性粘着テープを被着体に貼合する方法としては、図1(c)〜(d)に示すように、まず、難燃性粘着剤層10に積層してある剥離フィルム2を剥離し、次いで、現れた難燃性粘着剤層10の表面を、被着体200に対して密着させることにより貼合することが好ましい。
なお、かかるテープ基材に対する難燃性粘着剤組成物の積層は、テープ基材の片面のみに積層してもよいし、両面に積層し、テープのいずれの面であっても被着体に貼合できるようにしてもよい。
このようにして得た難燃性粘着テープは、主に物品の係止、封止、接着のために用いられ、例えば、電子部品の絶縁用テープおよび電子機器内での固定・結束用等の用途に供される。
【0061】
3.粘着力保持率
また、JIS Z 0237:2000の10.4 180度引き剥がし粘着力の測定に準じて測定される難燃性テープの初期粘着力、および60℃、95%RHの環境下に7日間放置した後における放置後の粘着力から、下記計算式(1)を用いて算出される粘着力保持率(%)を75〜125%の範囲内の値とすることが好ましい。
粘着力保持率(%)=(放置後の粘着力/初期粘着力)×100 (1)
この理由は、このように粘着力保持率を制御することによって、粘着力の変化が少ない難燃性テープの製造を安定的に管理することができるためである。
すなわち、電子部品の絶縁用テープおよび電子機器内での固定・結束用テープ等の用途に、さらに好適に使用することができる。
但し、かかる粘着力保持率(%)の値が過度に大きくなると、製造の後に、期間を置かずに使用した場合と、製造後、一定期間保管した後に使用した場合で粘着力が異なり、いずれかの値が難燃性テープに要求されている粘着力の範囲から逸脱してしまうことになりかねない。
したがって、難燃性テープにおける粘着力保持率(%)の値を80〜120%の範囲内の値とすることがより好ましく、90〜110%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0062】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態は、基材の片面または両面上に、(A)成分としての芳香環含有ビニル共重合体と、(B)成分としての難燃剤とを含む難燃性粘着剤組成物を粘着剤層として備えた難燃性粘着シートであって、(B)成分である難燃剤が、芳香族リン酸エステルを含むとともに、(B)成分である難燃剤の配合量を、(A)成分である芳香環含有ビニル共重合体100重量部に対して、70〜200重量部の範囲内の値とし、かつ、(A)成分である芳香環含有ビニル共重合体を共重合する際の単量体成分として、(a)芳香環含有ビニル化合物の配合量を全単量体中、20重量%以上の値とし、(b)カルボキシル基含有ビニル化合物の配合量を全単量体中、0重量%または0〜1重量%(但し、0重量%は含まない。)の範囲内の値とすることを特徴とする難燃性粘着シートである。
以下、本発明の第3の実施形態を、第1および第2の実施形態と異なる点を中心に、具体的に説明する。
【0063】
本発明の難燃性粘着シートにおいては、基材がシート基材であるとともに、当該シート基材の少なくとも一方に、第1の実施形態において記載した難燃性粘着剤層を備えることを特徴とする。
また、シート基材の材料物質やシート基材の厚さおよび表面処理等、並びに、難燃性粘着剤層については、基本的に、第2の実施形態としての難燃性粘着テープにおけるテープ基材および難燃性粘着剤層と同様にすることができる。
【0064】
また、後述するように、難燃性粘着剤シートと、難燃性粘着テープとでは、その用途が大きく異なるため、難燃性粘着シートにおけるシート基材の面積は、一般に1cm2〜10m2の範囲内の値とすることが好ましく、3cm2〜5m2の範囲内の値とすることがより好ましい。
また、かかるシート基材の平面形状は、何ら制限されるものではなく、例えば、長方形、円形、楕円形および三角形等の単純な形状から、被着体の表面形状に適宜対応させた複雑な形状であってもよく、さらには、平面内に穴あき部や切れ込み部等が設けられていてもよい。
【0065】
また、このようにして得られた難燃性粘着シートは、情報表示ラベル、意匠性の付与を目的としたラベルまたはシート等に用いることができ、例えば、防炎物品の品質表示ラベル、壁紙、電子機器筐体または部品の情報表示ラベル等の用途に使用される。
【実施例】
【0066】
以下、実施例を参照して、本発明をさらに詳細に説明する。
【0067】
[実施例1]
1.難燃性粘着剤組成物の調製
下記(A)成分としての芳香環含有ビニル共重合体100重量部と、(B)成分としての難燃剤80重量部と、(C)成分としての架橋剤2.7重量部と、から難燃性粘着剤組成物を調製した。なお、表1中の数値は、固形分換算された値を示す。
また、表1中、単量体成分(a)〜(d)の配合量は、全単量体(100重量%)に対する配合量(重量%)を意味する。
さらに、(B)および(C)成分の配合量は、それぞれ(A)成分を100重量部とした場合の配合割合(重量部)を意味する。
【0068】
(1)(A)成分について
窒素雰囲気下において、容器内に、単量体成分(a)としてのフェノキシエチルアクリレート(PEA)28重量部と、単量体成分(c)としてのアクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEA)2重量部と、単量体成分(d)としてのアクリル酸n−ブチル(BA)70重量部と、重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル0.3重量部と、溶媒としての酢酸エチル150重量部とを、収容した。
次いで、60℃で8時間の条件で重合させ、重量平均分子量が60万である芳香環含有ビニル共重合体を含むポリマー溶液を得た。
次いで、得られたポリマー溶液を撹拌しながら、酢酸エチルを加え、(A)成分としての芳香環含有ビニル共重合体が、酢酸エチルに溶解した固形分35重量%の芳香環含有ビニル共重合体溶液を得た。
なお、芳香環含有ビニル共重合体の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー法(以下、GPC法と略記する。)にて測定した。
すなわち、まず、ポリスチレンを用いて検量線を作成した。以降、重量平均分子量は、ポリスチレン換算値で表す。次いで、芳香環含有ビニル共重合体等の測定対象の濃度が1重量%のテトラヒドロフラン(THF)溶液を準備し、東ソー(株)製、GEL PER MEATION CHROMATOGRAPH HLC−8020(TSKGEL GMHXL、TSKGEL GMHXL、TSKGEL G2000HXLからなる3連カラム)にて40℃、THF溶媒、1ml/分の条件にて重量平均分子量を測定した。そして、ガードカラムとして、東ソー(株)製、TSK GUARD COLUMNを使用した。
【0069】
(2)(B)成分について
得られた(A)成分としての芳香環含有ビニル共重合体溶液(固形分35重量%)100重量部に対して、(B)−1成分としての液状芳香族リン酸エステルの一種であるビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)(ADEKA(株)製、FP−600、固形分100重量%、粘度13000mPa・sec、以下、単にFP−600と称する場合がある。)を28重量部添加した。
すなわち、(A)成分としての芳香環含有ビニル共重合体100重量部に対して、(B)−1成分としてのビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)80重量部を添加した。
【0070】
(3)(C)成分について
さらに、得られた(A)成分としての芳香環含有ビニル共重合体溶液100重量部に対して、(C)−1成分としてのキシレンジイソシアナート系架橋剤(東洋インキ製造(株)製、BXX5640、固形分35重量%、以下、単にBXX5640と称する場合がある。)を、上述した(B)−1成分の添加と同時に、溶媒を含む量として2.7重量部添加し、それらを均一に混合し、難燃性粘着剤組成物溶液とした。
すなわち、(A)成分としての芳香環含有ビニル共重合体100重量部に対して、(C)−1成分としてのキシレンジイソシアナート系架橋剤を固形分として2.7重量部添加した。
【0071】
2.難燃性粘着剤組成物溶液の塗布
次いで、剥離フィルムとしての厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート製剥離フィルム(リンテック(株)製、SP−PET381031)の剥離処理面に対し、得られた難燃性粘着剤組成物溶液を、乾燥後の厚さが20μmとなるように、ロールナイフコーターを用いて塗布した。
次いで、90℃で1分間乾燥処理を施した後、テープ基材としてのポリイミドフィルム(東レ−デュポン(株)製、カプトン100H、厚さ25μm)に対してラミネートした。
また、これとは別に、90℃で1分間乾燥処理後の難燃性粘着剤組成物を、テープ基材としてのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製、ルミラー50T60、厚さ50μm)に対して、上述の条件と同様にしてラミネートした。
【0072】
3.難燃性粘着剤組成物のシーズニング
次いで、上述のようにして得られた難燃性粘着剤組成物の塗布層と、テープ基材と、からなる2種類の積層体を、それぞれ23℃、50%RH(相対湿度)の条件下に7日間放置(シーズニング)し、難燃性粘着剤組成物を十分に架橋させ、実施例1の難燃性粘着テープとして、テープ基材がポリイミドフィルムであるものと、ポリエチレンテレフタレートフィルムであるものと、の2種類の難燃性粘着テープを得た。
【0073】
4.評価
(1)ブルーミングの評価
テープ基材としてポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた方の難燃性粘着テープにて、難燃性粘着剤層におけるブルーミングの発生を評価した。
すなわち、上述した難燃性粘着テープを、23℃、50%RHの環境下に7日間静置した後、難燃性粘着剤層に結晶等の凝集物が存在するか否かを、目視にて確認し、下記基準に沿って評価した。得られた結果を表2に示す。
○:凝集物が全く確認されない。
△:凝集物がほとんど確認されない。
×:凝集物が顕著に確認される。
【0074】
(2)難燃性の評価
テープ基材としてポリイミドフィルムを用いた方の難燃性粘着テープにて、難燃性粘着テープの難燃性を評価した。
すなわち、上述した難燃性粘着テープから剥離フィルムを剥離した後、アンダーラボラトリーズ社発行のプラスチック材料の燃焼性試験規格UL94の垂直燃焼試験方法に準じて、UL94VTMランクを判定した。また、このとき、VTM−0〜2のいずれにも適合しなかった場合を不合格と判定した。得られた結果を表2に示す。
なお、UL94規格のVTMランクとは、VTM−0が最も難燃性に優れており、VTM−1、VTM−2となるに従って、難燃性が低下することを意味する。
【0075】
(3)粘着性の評価
テープ基材としてポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた方の難燃性粘着テープにて、難燃性粘着テープの粘着性を評価した。
すなわち、上述した難燃性テープの初期粘着力、および60℃、95%RHの環境下に7日間放置した後におけるSUS板に対する粘着力(N/25mm)を、JIS Z 0237:2000の10.4 180度引き剥がし粘着力の測定に準じて測定した。測定は、難燃性粘着テープを被着体に貼付した後、24時間経過後に行った。
また、それぞれ測定した初期粘着力および放置後の粘着力から、下記計算式(1)を用いてその粘着力保持率(%)を算出し、保持率として、下記基準に沿って評価した。得られた結果を表2に示す。
粘着力保持率(%)=(放置後の粘着力/初期粘着力)×100 (1)
◎:粘着力保持率の値が90〜110%の範囲内の値である。
○:粘着力保持率の値が80%以上90%未満又は110%を超え、120%以下の範囲内の値である。
△:粘着力保持率の値が75%以上80%未満又は120%を超え、125%以下の範囲内の値である。
×:粘着力保持率の値が75%未満の値または125%を超えた値である。
【0076】
[実施例2]
実施例2では、(A)成分を共重合する際に、単量体成分(a)の配合量を48重量%に変えるとともに、単量体成分(d)の配合量を50重量%に変えたほかは、実施例1と同様に難燃性粘着テープを作製して、評価した。得られた結果を表2に示す。
【0077】
[実施例3]
実施例3では、(A)成分を共重合する際に、単量体成分(a)の配合量を68重量%に変えるとともに、単量体成分(d)の配合量を30重量%に変え、さらに、難燃剤として、(B)−2成分として、下記PX−110を50重量部、(B)−3成分下記PX−200を30重量部となるように配合したほかは、実施例1と同様に難燃性粘着テープを作製して、評価した。得られた結果を表2に示す。
(B)−2成分:クレジルジ2,6−キシレニルホスフェート(大八化学(株)製、PX−110、液状非縮合芳香族リン酸エステル)
(B)−3成分:1,3−フェニレンビス(ジキシレニル)ホスフェート(大八化学(株)製、PX−200、固体状縮合芳香族リン酸エステル)
【0078】
[比較例1]
比較例1では、単量体成分(b)としてのアクリル酸(AAc)10重量%と、単量体成分(d)としてのBA90重量%と、から(A)成分を共重合するとともに、(A)成分としての芳香環含有ビニル共重合体100重量部に対し、(B)−1成分として、FP−600を80重量部、(C)−1成分として下記架橋剤(以下、単にBHS8515と称する場合がある。)が固形分として2.2重量部、(C)−2成分として下記架橋剤(以下、単にE−AXと称する場合がある。)が固形分として0.07重量部となるように添加したほかは、実施例1と同様に難燃性粘着テープを作製して、評価した。得られた結果を表2に示す。
(C)−1成分:トリレンジイソシアネート系架橋剤(東洋インキ製造(株)製、BHS8515、固形分37.5重量%)
(C)−2成分:エポキシ系架橋剤(綜研化学(株)製、E−AX、固形分5重量%)
【0079】
[比較例2]
比較例2では、(A)成分としての芳香環含有ビニル共重合体100重量部に対し、(B)−3成分としてPX−200が30重量部となるように添加したほかは、比較例1と同様に難燃性粘着テープを作製して、評価した。得られた結果を表2に示す。
【0080】
[比較例3]
比較例3では、(A)成分としての芳香環含有ビニル共重合体100重量部に対し、(B)−4成分として、下記難燃剤化合物(以下、単にSPS−100と称する場合がある。)が30重量部となるように添加したほかは、比較例1と同様に難燃性粘着テープを作製して、評価した。得られた結果を表2に示す。
(B)−4成分:ホスファゼン化合物(大塚化学(株)製、SPS−100)
【0081】
[比較例4]
比較例4では、(A)成分を共重合する際に、単量体成分(b)の配合量を5重量%に変えるとともに、単量体成分(d)の配合量を95重量%に変え、さらに、(A)成分としての芳香環含有ビニル共重合体100重量部に対し、(C)成分としてE−AXを用いず、BHS8515のみが固形分として2.2重量部となるように添加したほかは、比較例1と同様に難燃性粘着テープを作製して、評価した。得られた結果を表2に示す。
【0082】
[比較例5]
比較例5では、(A)成分を共重合する際に、単量体成分(b)の配合量を2重量%に変えるとともに、単量体成分(d)の配合量を98重量%に変えたほかは、比較例1と同様に難燃性粘着テープを作製して、評価した。得られた結果を表2に示す。
【0083】
【表1】

【0084】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0085】
以上、詳述したように、本発明によれば、粘着主剤としての(A)成分である芳香環含有ビニル共重合体を構成する単量体成分として、(b)カルボキシル基含有ビニル化合物を実質的に用いない一方で、(a)芳香環含有ビニル化合物を所定量用いるとともに、得られた粘着主剤に対して、(B)成分である難燃剤としての芳香族リン酸エステルを所定配合割合にて含有させることにより、粘着剤組成物中におけるリン酸エステルの加水分解を効果的に抑制しつつ、粘着性を効果的に向上させることができるようになった。
また、(B)成分である難燃剤として、所定量の液状芳香族リン酸エステルを用いたり、あるいは縮合型の液状芳香族リン酸エステルを用いたり、さらには、1,3−フェニレンビス(ジキシレニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)および1,3−フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)等の特定芳香族リン酸エステルを用いたりすることにより、フェノキシエチルアクリレート等の所定の単量体共重合成分に由来してなる(A)成分である芳香環含有ビニル共重合体に対して、所定の可塑効果を発揮し、難燃性粘着剤組成物における良好な粘着特性や、より高い難燃性を示すことができるようになった。
その結果、UL94規格のVTM−0等を満足する程の難燃性に優れるとともに、粘着特性にも優れた難燃性粘着剤組成物、並びに、そのような難燃性粘着剤組成物を用いた難燃性粘着テープおよび難燃性粘着シートが得られるようになった。
したがって、本発明の難燃性粘着剤組成物等は、例えば、電子部品の絶縁用や、防炎物品の品質表示ラベル等に用いられる難燃性粘着テープおよびシートの高品質化に、著しく寄与することが期待される。
【符号の説明】
【0086】
1:塗布層、2:剥離フィルム、10:難燃性粘着剤層、100:難燃性粘着テープ、101:テープ基材、200:被着体



【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分としての芳香環含有ビニル共重合体と、(B)成分としての難燃剤とを含む難燃性粘着剤組成物であって、
前記(B)成分である難燃剤が、芳香族リン酸エステルを含むとともに、
前記(B)成分である難燃剤の配合量を、前記(A)成分である芳香環含有ビニル共重合体100重量部に対して、70〜200重量部の範囲内の値とし、かつ、
前記(A)成分である芳香環含有ビニル共重合体を共重合する際の単量体成分として、(a)芳香環含有ビニル化合物の配合量を全単量体中、20重量%以上の値とし、(b)カルボキシル基含有ビニル化合物の配合量を全単量体中、0重量%または0〜1重量%(但し、0重量%は含まない。)の範囲内の値とすることを特徴とする難燃性粘着剤組成物。
【請求項2】
前記(a)成分である芳香環含有ビニル化合物が、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ビフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エトキシ化o−フェニルフェノールアクリレート、フェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、2−ナフトエチル(メタ)アクリレート、2−ナフトキシエチルアクリレート、2−(4−メトキシ−1−ナフトキシ)エチル(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも一つであることを特徴とする請求項1に記載の難燃性粘着剤組成物。
【請求項3】
前記芳香族リン酸エステルのうち少なくとも一種が、液状芳香族リン酸エステルであるとともに、当該液状芳香族リン酸エステルの配合量を、前記(B)成分である難燃剤全体に対して、30重量%以上の値とすることを特徴とする請求項1または2に記載の難燃性粘着剤組成物。
【請求項4】
前記液状芳香族リン酸エステルが、縮合型の液状芳香族リン酸エステルであることを特徴とする請求項3に記載の難燃性粘着剤組成物。
【請求項5】
前記(a)成分である芳香環含有ビニル化合物が、フェノキシエチル(メタ)アクリレートであって、前記(B)成分である難燃剤が、1,3−フェニレンビス(ジキシレニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)および1,3−フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)の少なくとも一つであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の難燃性粘着剤組成物。
【請求項6】
前記(A)成分である芳香環含有ビニル共重合体を共重合する際のさらなる単量体成分(c)として、水酸基含有ビニル化合物を、全単量体の合計量中、1〜15重量%の範囲内の値で配合することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の難燃性粘着剤組成物。
【請求項7】
(C)成分として、前記(A)成分である芳香環含有ビニル共重合体に対する架橋剤を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の難燃性粘着剤組成物。
【請求項8】
基材の片面または両面上に、(A)成分としての芳香環含有ビニル共重合体と、(B)成分としての難燃剤とを含む難燃性粘着剤組成物を粘着剤層として備えた難燃性粘着テープであって、
前記(B)成分である難燃剤が、芳香族リン酸エステルを含むとともに、
前記(B)成分である難燃剤の配合量を、前記(A)成分である芳香環含有ビニル共重合体100重量部に対して、70〜200重量部の範囲内の値とし、かつ、
前記(A)成分である芳香環含有ビニル共重合体を共重合する際の単量体成分として、(a)芳香環含有ビニル化合物の配合量を全単量体中、20重量%以上の値とし、(b)カルボキシル基含有ビニル化合物の配合量を全単量体中、0重量%または0〜1重量%(但し、0重量%は含まない。)の範囲内の値とすることを特徴とする難燃性粘着テープ。
【請求項9】
JIS Z 0237:2000の10.4 180度引き剥がし粘着力の測定に準じて測定される難燃性テープの初期粘着力、および60℃、95%RHの環境下に7日間放置した後における放置後の粘着力から、下記計算式(1)を用いて算出される粘着力保持率(%)を75〜125%の範囲内の値とすることを特徴とする請求項8に記載の難燃性粘着テープ。
粘着力保持率(%)=(放置後の粘着力/初期粘着力)×100 (1)
【請求項10】
基材の片面または両面上に、(A)成分としての芳香環含有ビニル共重合体と、(B)成分としての難燃剤とを含む難燃性粘着剤組成物を粘着剤層として備えた難燃性粘着シートであって、
前記(B)成分である難燃剤が、芳香族リン酸エステルを含むとともに、
前記(B)成分である難燃剤の配合量を、前記(A)成分である芳香環含有ビニル共重合体100重量部に対して、70〜200重量部の範囲内の値とし、かつ、
前記(A)成分である芳香環含有ビニル共重合体を共重合する際の単量体成分として、(a)芳香環含有ビニル化合物の配合量を全単量体中、20重量%以上の値とし、(b)カルボキシル基含有ビニル化合物の配合量を全単量体中、0重量%または0〜1重量%(但し、0重量%は含まない。)の範囲内の値とすることを特徴とする難燃性粘着シート。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−167160(P2012−167160A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−28229(P2011−28229)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】