説明

雨水の排水管路構造

【課題】逆流防止弁によって雨水流路からの雨水の逆流を防止するとともに、逆流防止弁のメンテナンス作業が比較的容易な雨水の排水管路構造を提供する
【解決手段】雨水の排水管路構造100は、地中に埋設され、地上に開口する点検口22dが形成された補助ます22と、補助ます22と宅外の側溝102とを接続し、地中に埋設された管105と、少なくとも一部が点検口22dの下方に位置するように補助ます22の内部に配置された逆流防止弁10と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨水の排水管路構造に係り、特に、逆流防止弁を備えた雨水の排水管路構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば戸建て住宅等において雨が降った場合、雨水は雨樋等から宅内のますに集められ、ますから宅外の雨水流路(例えば、側溝や雨水本管等)に排出される。また、宅内に雨水貯留浸透槽が設置されている場合には、雨水は雨水貯留浸透槽にいったん集められ、その後、雨水貯留浸透槽から、あるいは宅内のますを経て、宅外の雨水流路に排出される。
【0003】
ところで、短時間の間に大量の雨が降った場合などでは、宅外の雨水流路の水量が増え、上記雨水流路から宅内のますに向かって雨水が逆流するおそれがある。そこで、宅内のますと宅外の雨水流路との間の配管に逆流防止弁を設置することが提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−268608号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載された排水管路構造では、逆流防止弁は、宅内のますと雨水本管とを接続する配管内に設置されており、当該配管の全体が地中に埋設されている。そのため、逆流防止弁を配管内に設置した後に、逆流防止弁に付着したごみを取り除く等のメンテナンス作業を行うことは困難であった。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、逆流防止弁によって雨水流路からの雨水の逆流を防止するとともに、逆流防止弁のメンテナンス作業が比較的容易な雨水の排水管路構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る雨水の排水管路構造は、地中に埋設され、地上に開口する点検口が形成されたますと、前記ますと所定の雨水流路とを接続し、地中に埋設された管路と、少なくとも一部が前記点検口の下方に位置するように前記ますの内部に配置された逆流防止弁と、を備えたものである。
【0007】
上記排水管路構造によれば、逆流防止弁がますの内部に配置され、ますの点検口を通じて逆流防止弁のメンテナンス作業を行うことができる。したがって、排水管路構造を敷設した後に、逆流防止弁のメンテナンス作業を比較的容易に行うことが可能となる。
【0008】
前記排水管路構造において、前記ますの内部における前記逆流防止弁の上流側に、封水部の少なくとも一部が形成されていることが好ましい。
【0009】
このことにより、逆流防止弁とともに封水部によっても、異臭や害虫の上流側への侵入を防ぐことができる。
【0010】
前記排水管路構造は、流入口および流出口が形成され、上下方向に延びる略有底筒状のます本体を有する上流側のますをさらに備え、前記逆流防止弁が配置されたますは、上流端が前記ます本体の流出口とつながり、上流側に行くにしたがって下方から側方に向かって湾曲したエルボ管と、管継手を介して前記エルボ管に接続され、または前記エルボ管と一体的に形成され、前記点検口が形成された上下方向に延びる点検筒と、を有し、前記逆流防止弁は、前記点検筒の下側に配置され、前記ます本体の底部から前記エルボ管の底部にわたって前記封水部が形成されるものであってもよい。
【0011】
このことにより、前記ますと上記上流側のますとを一体的に取り扱うことによって(例えば、一つのますとして取り扱うことによって)、排水管路構造を容易に配設することができる。
【0012】
あるいは、前記排水管路構造は、前記ますの流出口に接続され、上流側に行くにしたがって側方から下方に向かって湾曲したエルボ管をさらに備え、前記逆流防止弁は、前記エルボ管の内部に配置され、前記エルボ管の上流端が前記ます内の水に浸漬されることによって、前記ますの内部に前記封水部が形成されるものであってもよい。
【0013】
このことにより、逆流を防止するとともにメンテナンス作業が容易な雨水の排水管路構造を、比較的容易に形成することができる。
【0014】
前記逆流防止弁は、軸を挿通可能な上下方向に延びる軸孔と、雨水を流通させる流通孔とが形成された略水平円盤形状の弁座と、前記軸孔に挿通される上下方向に延びる軸と、前記軸の上側の端部に形成され、上方から見て前記弁座の流通孔を覆う大きさの略水平円盤形状の弁本体と有する弁体と、を備え、前記弁座における前記流通孔の周囲には、上方に向かって広がるようなテーパ面が形成されていることが好ましい。
【0015】
このことにより、弁座に溜まりがちである砂やごみ等の異物は、テーパ面に沿って落下しやすくなる。そのため、必要となるメンテナンス作業の頻度を少なく抑えることができる。
【0016】
前記逆流防止弁が配置されたますは、宅内の雨水を最終的に一箇所に集める最終ますの一部または全部であることが好ましい。
【0017】
このことにより、宅内に複数の雨水配管系統があったとしても、逆流防止弁を設ける箇所は一箇所で済む。そのため、メンテナンス作業が容易になる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、雨水本管等からの雨水の逆流を防止するとともに、逆流防止弁のメンテナンス作業が比較的容易な雨水の排水管路構造を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
<実施形態1>
《雨水の排水管路構造》
図1に示すように、実施形態1に係る逆流防止弁10は、雨水の排水管路構造100の一部である最終ます20の内部に設けられている。この排水管路構造100は、雨水貯留浸透槽101および最終ます20を備えており、宅内の雨水を宅外の側溝102に排出するものである。図示は省略するが、宅内には複数の配管系統が設けられている。それらの配管系統を流れてきた雨水は、合流して雨水貯留浸透槽101に流れ込むか、あるいは、雨水貯留浸透槽101において合流する。そして、雨水貯留浸透槽101に集められた雨水は、最終ます20に供給される。すなわち、宅内の雨水は、最終的には最終ます20において一箇所に集められる。
【0020】
ここで、宅内とは、例えば戸建て住宅や店舗等の敷地のことであり、個人、法人、その他の団体等によって所有される敷地のことである。一方、宅外とは、公共の敷地のことである。
【0021】
雨水貯留浸透槽101には、宅内の雨樋やます等(図示せず)から雨水を導入する管103が接続されている。雨水貯留浸透槽101と最終ます20とは、管104を介して接続されている。最終ます20と側溝102とは、管105を介して接続されている。このような構造により、排水管路構造100は、管103から導入した雨水を雨水貯留浸透槽101、管104、最終ます20、および管105を通じて、宅外の側溝102に排出することとなる。図1において、符号Gは地面を表している。雨水貯留浸透槽101および最終ます20は地中に埋設されており、排水管路構造100の全体が地中に埋設されている。
【0022】
なお、排水管路構造100は、本実施形態のように宅内で集めた雨水を側溝102に排出するものに限らず、宅内で集めた雨水を宅外の地中に埋設された雨水本管(図示せず)に排出するもの等であってもよい。
【0023】
《最終ます》
図2および図3に示すように、最終ます20は、集水ます21と補助ます22とから構成されている。図2に示すように、集水ます21は、有底円筒状の底部21aと、底部21aの上側に接続された略円筒状の胴部21bと、胴部21bの上側に接続された略円筒状の上部21cと、上部21cの上側に形成された点検口21dを覆う蓋21eとを備えている。胴部21bの側部には、管104が接続される受口21fが形成されている。受口21fの内側には、胴部21bの流入口21gが形成されている。底部21aの側部には、流出口21hが形成されている。
【0024】
補助ます22は、側方から上方に向かって湾曲したエルボ管22aと、エルボ管22aの上端部に接続されたT字状のチーズ22bと、チーズ22bの上側に接続された略円筒状の点検筒22cと、点検筒22cの上側に形成された点検口22dを覆う蓋22eとを備えている。エルボ管22aの上流端(すなわち下側の端部)は、集水ます21の底部21aの側部に接続されている。なお、エルボ管22aと集水ます21の底部21aとは別部材であってもよいが、本実施形態のように同一部材であってもよい。すなわち、エルボ管22aと集水ます21の底部21aとは、一体的に形成されていてもよい。
【0025】
図4に示すように、蓋22eはいわゆる格子蓋であり、蓋22eには複数の孔25が形成されている。なお、集水ます21の蓋21eも蓋22eと同様の構成を有しており、蓋21eにも複数の孔25が形成されている(図2参照)。このような孔25は、地表の雨水を集めたり、圧力を開放する点で有用である。ただし、蓋21eまたは蓋22eには、孔25が形成されていなくてもよい。つまり、蓋21eまたは蓋22eは、孔の形成されていない密閉蓋であってもよい。
【0026】
《逆流防止弁》
逆流防止弁10は、略円盤形状の弁座11と、傘状の弁体12とを備えている。逆流防止弁10は、弁座11がエルボ管22aの差口24とチーズ22bの受口26との間に挟み込まれた状態で、補助ます22の内部に配置されている。
【0027】
図5(a)および(b)に示すように、弁座11は、内側部11bと外周部11aとを有している。外周部11aは、エルボ管22aの差口24とチーズ22bの受口26との間に挟まれる部分であり、平板状に形成されている(図5(b)参照)。内側部11bには、軸を挿通可能な軸孔11cと、雨水を流通させる流通孔11dとが形成されている。本実施形態では、流通孔11dは4つ形成されている。ただし、流通孔11dの形状および個数は、本実施形態のものに何ら限定されるわけではない。なお、内側部11bと外周部11aとは、本実施形態のように一体であってもよいが、別体であってもよい。例えば、内側部11bの外周部分に凸部または凹部を形成し、外周部11aの内周部分に凹部または凸部を形成し、内側部11bおよび外周部11aの凸部と凹部とを係合可能とすることにより、内側部11bと外周部11aとを着脱可能な構成にしてもよい。これにより、外周部11aを除く逆流防止弁10の他の部分を容易に取り外すことが可能となり、掃除や点検を容易に行うことができる。
【0028】
図6(a)および(b)に示すように、弁体12は、軸12aと、軸12aの上端側に形成された弁本体12bと、軸12aの下端側に設けられたストッパ12cとを備えている。軸12aは、弁座11の軸孔11c内にスライド自在に挿通されるものであり、軸12aの外径は軸孔11cの内径よりも若干小さくなっている。弁本体12bは、軸方向から見て、すなわち平面視において、弁座11の流通孔11dを覆う大きさの略円盤形状に形成されている。弁本体12bの上面は、中心側から半径方向外側に向かってなだらかに傾斜する傾斜面となっている。弁本体12bの下面の外周側には、下方に向かって突出する突出部12dが形成されている。この突出部12dには、シールリング12eが嵌め込まれている。詳しくは、突出部12dの底面には、円周上に窪みが形成されており、この窪みにシールリング12eが圧入されている。ストッパ12cは、弁体12が上向きに移動したときに弁座11から離脱しないようにするためのものであり(図7参照)、軸孔11cよりも大きな環状に形成されている。
【0029】
《逆流防止弁の動作》
図7に示すように、雨水が集水ます21から補助ます22に向かって流れると、逆流防止弁10の弁体12が雨水の流れによって押し上げられ、弁座11の流通孔11dが開かれる。これにより、雨水はエルボ管22a内を下側から上側に向かって流れる。すなわち、雨水は補助ます22内を上流側から下流側に向かって流通する。
【0030】
一方、補助ます22内に雨水の流れがない場合、弁体12は自重によって下側に移動し、図8に示すように弁座11の流通孔11dは閉じられる。また、側溝102から最終ます20に向かって雨水が流れる場合、すなわち、下流側から上流側に向かって雨水が逆流する場合にも、弁体12は弁座11上に載置された状態となり、弁座11の流通孔11dは閉じられる。したがって、雨水の逆流は防止される。
【0031】
《封水部について》
図2の仮想線Wは、雨水が流れていないときの水面を表している。このように、雨水が流通していないときであっても、集水ます21および補助ます22の底部には、所定量の水が溜まっている。その結果、集水ます21の底部21aから補助ます22のエルボ管22aにわたって、封水部Sが形成される。
【0032】
逆流防止弁10は、雨水の逆流を防止するだけでなく、下流側から上流側への異臭および害虫等の侵入を防いでいる。本実施形態では、さらに、最終ます20に封水部Sが形成され、この封水部Sによっても異臭および害虫等の侵入が阻止されている。すなわち、異臭および害虫等の侵入を、逆流防止弁10と封水部Sとによって2重に防止している。
【0033】
《逆流防止弁の取付方法》
本実施形態に係る逆流防止弁10は、以下のようにして取り付けることができる。まず、予め弁座11に弁体12を取り付けておく。すなわち、逆流防止弁10を組み立てておく。具体的には、弁座11の軸孔11cに弁体12の軸12aを挿通し、軸12aの先端部にストッパ12cを取り付ける。
【0034】
次に、このようにして組み立てられた逆流防止弁10を、チーズ22bの受口26の内部、またはエルボ管22aの差口24の上端に取り付ける。なお、逆流防止弁10の固定方法は特に限定されないが、例えば、接着剤等を用いて固定することができる。また、この段階では逆流防止弁10を接着剤等で固定せず、単に受口26内に嵌め込み、あるいは差口24の上端に載置するだけでもよい。
【0035】
次に、チーズ22bの受口26をエルボ管22aの差口24に嵌め込む。これにより、逆流防止弁10の弁座11の外周部11aが受口26と差口24との間に挟み込まれ、逆流防止弁10が受口26内に固定される。その後、接着剤等を用いてチーズ22bの受口26とエルボ管22aの差口24とを接着させる。なお、逆流防止弁10は受口26と差口24との間に介在しているので、この際、逆流防止弁10も受口26および差口24に固定されることになる。
【0036】
《実施形態の効果》
以上のように、本実施形態に係る雨水の排水管路構造100によれば、逆流防止弁10は、点検口25を有する補助ます22の内部に配置されている。また、逆流防止弁10は、少なくとも一部が点検口22dの下方に位置するように配置されている。そのため、点検口22dを通じて、弁座11上のごみを取り除く等の逆流防止弁10のメンテナンス作業を行うことができる。したがって、排水管路構造100を敷設した後に、逆流防止弁10のメンテナンス作業を比較的容易に実行することが可能となる。
【0037】
補助ます22は、宅内の雨水を最終的に一箇所に集める最終ます20の一部を構成している。そのため、本実施形態によれば、逆流防止弁10によって、宅内のすべての配管系統に対する逆流を防止することができる。本実施形態によれば、逆流防止弁10を一箇所に設ければ足りるので、逆流防止弁を複数箇所に設ける場合と比べて、メンテナンス作業をより容易に行うことができる。
【0038】
また、本実施形態によれば、集水ます21の底部21aから補助ます22のエルボ管22aにわたって封水部Sが形成されている。言い換えると、補助ます22の内部における逆流防止弁10の上流側に、封水部Sの少なくとも一部が形成されている。そのため、逆流防止弁10とともに封水部Sによっても、異臭や害虫等の上流側への侵入を防止することができる。すなわち、異臭や害虫等の上流側への侵入を二重に阻止することが可能となる。なお、封水部Sの封水が枯渇したとしても、異臭や害虫等の侵入は逆流防止弁10によって阻止される。
【0039】
また、本実施形態では、補助ます22が集水ます21に接続されており、これら集水ます21および補助ます22によって、逆流防止弁付きの最終ます20が構成されている。これら集水ます21および補助ます22を一体的に取り扱うことにより、すなわち、最終ます20を一つの部品として管104および管105に接続することにより、排水管路構造100を容易に敷設することができる。
【0040】
なお、本実施形態に係る逆流防止弁10によれば、弁座11はチーズ22bおよびエルボ管22aとは別体の部材であり、弁座11の外周部11aがチーズ22bの受口26とエルボ管22aの差口24との間に挟まれることによって、チーズ22bおよびエルボ管22aの内部に配置される。そのため、チーズ22bやエルボ管22aの形状に合わせて弁座11を一体的に形成する必要がなく、弁座11の構造を簡単化することができる。
【0041】
また、本実施形態に係る逆流防止弁10によれば、弁座11に弁体12を取り付け、弁座11を受口26と差口24との間に介在させた状態で受口26に差口24を差し込むだけで、容易に固定することができる。したがって、逆流防止弁10の取り付け作業を簡単に行うことができる。
【0042】
また、本実施形態に係る逆流防止弁10によれば、受口を有する任意の管状部材と差口を有する任意の管状部材との接続部分に、容易に設置することができる。互いに管口径(例えば、75mm、100mm等)の合った管状部材を準備すれば、管状部材の種類に関係なく、容易に設置することができる。したがって、汎用性の高い逆流防止弁を実現することができる。
【0043】
また、本実施形態によれば、弁本体12bの弁座11と対向する面にシールリング12eが設けられている。したがって、弁座11に対する弁体12の密着性を向上させることができ、逆流防止機能をより一層向上させることができる。なお、本実施形態では、弁本体12bの弁座11と対向する面にシールリング12eを設けることとしたが、弁座11の弁本体12bと対向する面にシールリング12eを設けるようにしてもよい。この場合にも同様の効果を得ることができる。
【0044】
《変形例》
図5(b)に示すように、上記実施形態に係る逆流防止弁10では、弁座11の流通孔11dの周囲には、垂直に延びる垂直面11fが形成されている。しかし、図9に示すように、弁座11の流通孔11dの周囲に、上方に向かって広がるようなテーパ面11gを形成するようにしてもよい。
【0045】
このように、流通孔11dの周囲にテーパ面11gを形成することにより、弁座11の流通孔11dの周囲に付着した砂やごみ等の異物は、自然落下しやすくなる。そのため、弁座11の流通孔11dの周囲に異物が溜まりにくくなり、弁体12と弁座11との間に異物が噛み込まれることを抑制することができる。したがって、弁体12の開閉動作が安定する。また、流通孔11dをより確実に閉じることができ、より安定した逆流防止効果を得ることができる。
【0046】
特に、上記実施形態では、逆流防止弁10の上方に点検口22dが形成されている。点検口22dには蓋22eが被せられているが、蓋22eには孔25が形成されている。そのため、蓋22eに孔25が形成されていない場合に比べて、地上の砂やごみ等が補助ます22の内部に入り込みやすい。したがって、上述の効果は、より有用なものとなる。
【0047】
なお、上記実施形態では、点検筒22cは、管継手の一種であるチーズ22bを介してエルボ管22aに接続されていた。しかし、点検筒22cをエルボ管22aと一体的に形成してもよい。また、補助ます22から雨水を排出する排出口を点検筒22cに形成するようにしてもよい。
【0048】
<実施形態2>
図10に示すように、実施形態2に係る逆流防止弁10は、管継手40の内部に設けられている。管継手40は、コンクリートます50の流出口51に接続されており、コンクリートます50の内部に配置されている。コンクリートます50の流入口52には、雨水を導入する管104bが接続されている。コンクリートます50の上側には、点検口55が形成されている。管継手40には、コンクリートます50から側溝(図10では図示せず。図1の符号102参照)に向かって雨水を排出する管105が接続されている。
【0049】
図11に示すように、管継手40は、エルボ管41と、円筒状の管44と、逆流防止弁10とを備えている。エルボ管41の一端には差口42が形成され、他端には受口43が形成されている。差口42には、管105が嵌め込まれる(図10参照)。なお、エルボ管41の一端には、差口42の代わりに受口が形成されていてもよい。受口43には、管44が嵌め込まれている。なお、本実施形態では、管44の長さは受口43の長さと略等しく(厳密には、受口43の奥行き寸法と弁座11の厚みを足した長さに等しく)、管44は受口43から突出しないようになっている。ただし、管44の一部が受口43から突出していてもよい。本実施形態では、管44は受口43内に嵌め込まれており、いわゆる差口としての役割を果たしている。なお、管44ではなく、差口を有する管を受口43に嵌め込むことも勿論可能である。
【0050】
逆流防止弁10の構成は実施形態1と同様である。本実施形態では、逆流防止弁10の弁座11は受口43と管44の上端との間に挟み込まれている。
【0051】
図10における符号Wは、雨水が流れていないときのコンクリートます50内の水面を表している。このように、雨水が流通していないときであっても、コンクリートます50には所定量の水が溜まっており、管継手40の下端部は当該水に浸漬される。その結果、コンクリートます50の底部から管継手40の下端部にわたって、封水部Sが形成される。
【0052】
実施形態1と同様、逆流防止弁10は、雨水の逆流を防止するだけでなく、下流側から上流側への異臭および害虫等の侵入を防いでいる。本実施形態においても、異臭および害虫等の侵入は、逆流防止弁10と封水部Sとによって2重に防止されている。
【0053】
管継手40は、逆流防止弁10をエルボ管41の受口43内に配置した状態で、管44を受口43に嵌め込むことによって組み立てられる。なお、実施形態1と同様、差口としての管44と受口43とを接着することにより、逆流防止弁10も受口43内に固定される。
【0054】
本実施形態によれば、逆流防止弁10は、エルボ管41を介して点検口55の下方に配置されている。すなわち、逆流防止弁10はエルボ管41の内部に配置されているが、エルボ管41の少なくとも一部は、コンクリートます50の点検口55の下方に配置されている。したがって、点検口55を通じてエルボ管41内の逆流防止弁10をメンテナンスすることができる。したがって、本実施形態においても、排水管路構造100を敷設した後に、逆流防止弁10のメンテナンス作業を比較的容易に実行することが可能となる。
【0055】
また、本実施形態においても、エルボ管41の下端部すなわち上流端部がコンクリートます50内の雨水に浸漬されることによって、コンクリートます50の内部に封水部Sが形成される。したがって、本実施形態においても、異臭や害虫等の上流側への侵入を逆流防止弁10と封水部Sとで防止することができ、異臭や害虫等の侵入を2重に阻止することができる。
【0056】
本実施形態によれば、逆流防止機能を有する管継手40を実現することができる。また、本実施形態においても、弁座11は、エルボ管41の受口43と、差口としての管44との間に挟まれた状態でエルボ管41の内部に配置されるものであり、弁座11はエルボ管41と一体物ではない。そのため、エルボ管41に弁座を形成する必要がなく、逆流防止機能を有する管継手を比較的簡単な構造で得ることができる。また、その他にも、実施形態1と同様の効果を得ることができる。
【0057】
なお、実施形態1と同様、本実施形態においても、弁座11の流通孔11dの周囲に、上方に向かって広がるようなテーパ面を形成するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上のように、本発明によれば、雨水の排水管路構造について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】実施形態1に係る雨水の排水管路構造の構成図である。
【図2】最終ますの縦断面図である。
【図3】最終ますの平面図である。
【図4】蓋の平面図である。
【図5】(a)は弁座の平面図、(b)は(a)のVb−Vb線断面図である。
【図6】(a)は弁体の側面図、(b)は弁体の裏面図である。
【図7】逆流防止弁の弁体が開いた状態の補助ますの縦断面図である。
【図8】逆流防止弁の弁体が閉じた状態の補助ますの縦断面図である。
【図9】変形例に係る弁座の断面図である。
【図10】実施形態2に係る雨水の排水管路構造の構成図である。
【図11】逆流防止弁を備えた管継手の断面図である。
【符号の説明】
【0060】
10 逆流防止弁
11 弁座
11a 外周部
11b 内側部
11c 軸孔
11d 流通孔
11g テーパ面
12 弁体
12a 軸
12b 弁本体
20 最終ます
21 集水ます(上流側のます)
22 補助ます(ます)
22a エルボ管
22b チーズ(管継手)
22c 点検筒
22d 点検口
41 エルボ管
100 雨水の排水管路構造
102 側溝(雨水流路)
105 管(管路)
S 封水部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設され、地上に開口する点検口が形成されたますと、
前記ますと所定の雨水流路とを接続し、地中に埋設された管路と、
少なくとも一部が前記点検口の下方に位置するように前記ますの内部に配置された逆流防止弁と、
を備えた雨水の排水管路構造。
【請求項2】
前記ますの内部における前記逆流防止弁の上流側に、封水部の少なくとも一部が形成されている、
請求項1に記載の雨水の排水管路構造。
【請求項3】
流入口および流出口が形成され、上下方向に延びる略有底筒状のます本体を有する上流側のますをさらに備え、
前記逆流防止弁が配置されたますは、上流端が前記ます本体の流出口とつながり、上流側に行くにしたがって下方から側方に向かって湾曲したエルボ管と、管継手を介して前記エルボ管に接続され、または前記エルボ管と一体的に形成され、前記点検口が形成された上下方向に延びる点検筒と、を有し、
前記逆流防止弁は、前記点検筒の下側に配置され、
前記ます本体の底部から前記エルボ管の底部にわたって前記封水部が形成される、
請求項2に記載の雨水の排水管路構造。
【請求項4】
前記ますの流出口に接続され、上流側に行くにしたがって側方から下方に向かって湾曲したエルボ管をさらに備え、
前記逆流防止弁は、前記エルボ管の内部に配置され、
前記エルボ管の上流端が前記ます内の水に浸漬されることによって、前記ますの内部に前記封水部が形成される、
請求項2に記載の雨水の排水管路構造。
【請求項5】
前記逆流防止弁は、
軸を挿通可能な上下方向に延びる軸孔と、雨水を流通させる流通孔とが形成された略水平円盤形状の弁座と、
前記軸孔に挿通される上下方向に延びる軸と、前記軸の上側の端部に形成され、上方から見て前記弁座の流通孔を覆う大きさの略水平円盤形状の弁本体と有する弁体と、を備え、
前記弁座における前記流通孔の周囲には、上方に向かって広がるようなテーパ面が形成されている、
請求項1〜4のいずれか一つに記載の雨水の排水管路構造。
【請求項6】
前記逆流防止弁が配置されたますは、宅内の雨水を最終的に一箇所に集める最終ますの一部または全部である、
請求項1〜5のいずれか一つに記載の雨水の排水管路構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−228319(P2009−228319A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−75509(P2008−75509)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)