説明

雨水利用装置

【課題】建物の屋根に降った雨水に含まれるゴミを多量に含む初期雨水を分離し貯留すると共に、初期雨水分離後の雨水を取水する時に汚れを生じさせず、簡単にゴミの除去及び濾過・吸着ができ、目詰まりが起こりにくく、点検や保守がしやすい雨水利用装置を提供する。
【解決手段】雨水利用装置は雨水タンク19の中空状の蓋体4と蓋体内部に設置される複数の浄化部9と濾過部17とで構成される。雨水管より送られた雨水を蓋体内部のドーム状ネット7で粗いゴミの除去、第一沈殿室12で微細なゴミを沈殿させ、ブラッシ部14で浮遊するゴミの除去をし、第二沈殿室15でさらに微細なゴミを沈殿させ、その後濾過部17で濾過し、吸着させるものである。さらに流速を早めるために濾過層17−aの下に多くの排出孔18を設けている。また蓋体中心部の上筒5と下筒11が分離でき、蓋体4のカバー10を取り除ける事で蓋体内部の清掃や濾材交換を容易にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は雨水を利用するため竪どいの途中から雨水を取り出して雨水に含まれるゴミや土砂などを除去して雨水を利用できるようにした雨水利用装置に関するものである
【背景技術】
【0002】
竪どいから雨水を取水・利用する装置は雨水をそのまま取水する装置及びフィルターをつけたものが従来技術として知られている。
【0003】
これらの装置で雨水をそのまま取水する装置はゴミが多く、利用は庭の散水や打ち水に限られていた。またフィルターをつけた装置はゴミが詰まって雨水があふれ出るものやフィルターにゴミがたまり、そのゴミが後から降り続く雨を汚しているものがある。
【0004】
上記の問題を解決しようと下記文献に示すような中空の蓋体の中に曲折自在なブラッシ状の浄化部材並びに濾過部材を設置したものもあった。しかし、このブラッシは蓋体の中に一定の形状がない曲折自在に設置されているため、ブラッシのない空間ができそこからゴミがすり抜けるという点や濾過部材にこれらすり抜けたゴミが詰まるという点があった。またブラッシが雨水の流入口より取り出しにくく、蓋体に挿入されているブラッシの汚れ具合が把握できず、維持管理がしにくい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許公開2001−214471
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記従来技術の問題点を解決する事を課題とする。具体的には建物の屋根に降った雨水に含まれる鳥の羽や蝉など昆虫の死骸・土塊・落ち葉などのゴミを多量に含む初期雨水を分離し貯留すると共に、初期雨水分離後の雨水を取水しようとする時に汚れを生じさせず、簡単にゴミの除去及び濾過・吸着によって良質の水を得、目詰まりが起こりにくく、点検や保守がしやすくすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は雨水利用装置は雨水タンクの中空状の蓋体とこの蓋体内部に設置される複数の浄化部とこの浄化部で浄化した雨水を濾過部の濾過層に通して濾過しさらに吸着層で吸着させる雨水利用装置であって、蓋体上端の中心に雨水注入管から雨水を取水する上筒があり、上筒は下筒と分離可能である。上筒内にある下方に径が漸増するドーム状ネット及び底の浅い籠によって雨水に含まれる大きく粗いゴミが浄化される。下筒の底は蓋体の下部に当接し、下筒のオーバーフロー様の第一沈殿室の下部で雨水に含まれる比較的重いゴミを沈殿させる。第一沈殿室で沈殿したゴミを含まない残りの雨水は底の浅い籠より少し下部の下筒外周に所定の間隔であけられた雨水排出孔より、下筒の外側に流れ、下筒の外側の壁面に配されたブラッシ部によって浮遊するゴミが濾され、断面がU字状のオーバーフロー様の第二沈殿室に導かれる。
【0008】
第二沈殿室に導かれた雨水は、第二沈殿室でさらに細かなゴミを沈殿させた後、U字状の外側より濾過部へ導かれる。濾過部では濾過部上層の濾過層でヤシ殻活性炭など数種類の濾材により雨水を濾過し、さらに下層の吸着層で化学繊維や不織布等で雨水に含まれる非常に細かなゴミを吸着させる。このように雨水に含まれるゴミの除去、沈殿、浮遊ゴミの除去、濾過、吸着をおこなう複数の浄化、沈殿、濾過、吸着装置を蓋体内に備えた。
【0009】
以上のように良質の水を得るために複数の浄化、沈殿、濾過、吸着装置を備えたこれらの装置によって雨水は抵抗を受け、流下速度は漸次緩慢になり、多量の降雨には耐えられず、溢水するおそれがある。それを解消し、流下速度を一定に保つため、第二沈殿室は第一沈殿室ほぼ2倍の容積を、濾過吸着装置では第二沈殿室のほぼ2倍の容積を持ち、さらに濾過吸着部では下端に多数の排出口を持つこととした。
【発明の効果】
【0010】
本発明では初期雨水貯留後の雨水を雨水タンクの上部開口に被着する中空状の蓋体内部の複数の浄化部で雨水に含まれるゴミの除去、オーバーフロー様の第一沈殿室・第二沈殿室で細かいゴミの沈殿、ブラッシ部で異物の収集、さらに濾過部で微細なゴミを分別吸着させることにより、雨水を良質の利用範囲の広い水にすることができる。
【0011】
本発明の濾過部ではオーバーフロー様の第二沈殿室の容積の約2倍、第二沈殿室がオーバーフロー様の第一沈殿室の容積の約2倍、下筒が雨水注入管の約2倍になるようにしており、なおかつ濾過層の下端に雨水タンクへの多数の排出口があり、多量の降雨にも耐えられる。
【0012】
本発明は雨水タンクに被着する蓋体内にて雨水の処理を全て行うため、これらの保守・点検はこの蓋体を取りはずす事によって容易に保守・点検が行える。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】雨水利用装置の設置例
【図2】雨水タンクの中空状の蓋体
【図3】中空状の蓋体の水平方向A部分断面図
【図4】上部開口ならびに雨水タンク
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0014】
以下本発明を実施例として揚げた図面に基づいて説明する。図2は蓋体4で、矢印は雨水の流れを指している。この実施例での雨水利用装置は図1の蓋体4と図1の初期雨水貯留筒22と雨水タンク19とで構成される。初期雨水貯留筒は直径10cmから18cmで高さ(h)1mから2mの円筒形の筒である。初期雨水貯留筒22の上部は先に向かって漸次細くなり、初期雨水貯留筒の上端22−aは竪どい1に繋がりさらにT字型分岐2につながる。初期雨水貯留筒の下部は先端に向かって漸次細くなり、初期雨水貯留筒の下端22−bはその先にねじ式の蓋27が付き、蓋27は取り外しができる。さらにねじ式蓋27の中央部分に水栓28が付き、水栓28のジョイント部26はねじ式蓋27を境に初期雨水貯留筒22内にあり、水栓28の開閉コック29はねじ式蓋27の直下にあり、常に閉栓した状態で使われる。
【0015】
水栓28のジョイント部26に10数センチのホース25をはめ込み、その先端にネット24を緊結し、打ち上げ花火の燃えかすや土塊や昆虫等の死骸が入らないようにする。これらのゴミは落下してねじ式蓋27の内側に溜まり、降雨終了後水栓の開閉コック29を開栓し、雨水を排出したのち、ねじ式蓋27を取り外してねじ式蓋27の内側に溜まった土塊や・昆虫の死骸を掃除して、ゴミを取り除き再びねじ式蓋27を装着する。尚ホース25の先端につけるネット24は急須などの注ぎ口に嵌めこまれている半球状のネットが最適である
【0016】
初期雨水貯留筒22の初期雨水貯留容量は屋根面積×0.5〜1mm÷竪どいの本数で算出され,その貯留量を許容する貯留筒である。[0014]の大きさの説明にあるように重量がかかるので外壁に緊結することが望ましい。
【0017】
竪どい1を流れ落ちる雨水は降雨があるとまず初期雨水貯留筒22に流れる。この貯留筒22内にはフロート23があり、降雨と同時にフロート23は徐々に上昇し、満水になると初期雨水貯留筒の上端22―aにフロートが当接することにより閉じられ、雨水はT字型分岐2の横方向から雨水管3を通り、雨水タンク19の蓋体4の中心にある上筒5に導かれる。
【0018】
雨水注入管3は竪どい1の径と同じか、それ以上が望ましい。また雨水タンク19の蓋体4はT字型分岐2より20cm以上、下の位置にあることがよく、また竪どい1と雨水タンク19が離れた位置にある場合はT字分岐2と蓋体4の垂直間隔tは30cm以上があるのが望ましい。落差が少ないならば雨水管3の中に雨水が滞る。
【0019】
本発明の雨水利用装置を図1と図2に基づいて説明する。上筒5内には下に向かって径が漸増するドーム状ネット7があり、底の浅い籠8のつばの部分にこのドーム状ネット7の下端の外周部分が載り、底の浅い籠8は下筒11上端の外周に懸架する。雨水の中に含まれる大きなゴミはドーム状ネット7の裾に押しやられ、降り続く雨水は大きなゴミに触れることはない。次に雨水は比較的抵抗の少ない多孔質の濾材が入った底の浅い籠8で粗いゴミが除去され、下筒11下部のオーバーフロー様の第一沈殿室12に送り込まれ、ここで細かなゴミが沈殿し、その残りの雨水は底の浅い籠8のすぐ下の下筒10外周に等間隔に設けられた雨水排出孔13よりオーバーフロー式の第二沈殿室15に導かれる。
【0020】
ドーム状ネット7の升目は、網目が1mm程度が望ましい。ドーム状ネット7と底の浅い籠8は初期貯留筒22が満水になった後、雨水を直接受けるので汚れやすい。雨水注入管3と上筒5は上筒5の内径が雨水管3の外径よりわずかに大きく、上筒5は雨水管3に沿って上下に移動できる。なお上筒5は下筒11の上端より2cm下に下筒11の外周にリング状にネジ止めされた上筒受け6によって止まる。ドーム状ネット7と底の浅い籠8の洗浄は雨水注入管3に沿って上筒5を真上方向に引き上げるとできる空間よりドーム状ネット7を取り出して洗浄できる。さらにドーム状ネット7を取り除いたあと底の浅い籠8を取り出し、洗浄及び濾材の交換ができる。また第一沈殿室の洗浄もできる。
【0021】
ブラッシ部14は下筒11の雨水排出孔13の外周直下に外周に沿って仕切り板16との間にある。仕切り板16は下筒11からパイプ状の腕木16−aで数箇所をボルトで固定された筒状の仕切り板16であり、ブラッシ部14は腕木16−a の上に乗る。このブラッシ部14は心棒14−aに多数の針体14−bを放射状に植えつけたリング状のブラッシ部14である。オーバーフロー様の第一沈殿室12でゴミが沈殿した後の残部の雨水は雨水排出孔13よりオーバーフロー様の第二沈殿室15に至る時、ブラッシ部14で、雨水の中に含まれる浮遊ゴミを除去する。
【0022】
このブラッシ部14は多数の針体14−bによって自動車の排ガスに含まれる粒子状浮遊物質や春期に多い黄砂等の除去に役立つ。
【0023】
オーバーフロー様の第二沈殿室15では第一沈殿室12で沈殿しないさらに細かいゴミを沈殿させる。第二沈殿室は第一沈殿室12より容積がほぼ倍以上になり、さらに断面では第二沈殿室15の中間に中仕切り垂れ壁16があり底から3cm程度の隙間が雨水の通り道になっているため、雨水の流水速度が減速されて細かなゴミが第二沈殿室15の底にたまりやすい構造になっている。また第一沈殿室・第二沈殿室の底の隅部分はRを付けるのが望ましい。雨水の流れをスムーズにし、隅部に土や砂・ゴミなどが堆積しにくい。
【0024】
オーバーフロー様の第二沈殿室15でさらに細かいゴミを除去された雨水は第二沈殿室15の外側の濾過部17に導かれる。濾過層17−aではその地域の特性や雨の中に含まれる物質及び住居の環境によって濾材の内容を変えることが望ましい。一般的にはデオライトやヤシ殻活性炭を用い、地域によってアンモニアなどの除去、チッソ酸化物の除去、硫黄酸化物の除去等を行える濾過材で構成し、さらに吸着層17−bでは細菌の吸着を目的とした化学繊維や不織布等で作られた吸着マットを組み合わせることによって雨水タンク19に良質な水を送ることができる。雨水タンク19の容量は設置場所や屋根面積、竪どいの本数にもよるが、200Lから600Lが望ましい。
【0025】
濾過部17は蓋体4の一番外側に位置し、その容積は第二沈殿室15の約2倍ある。この濾過部17は濾材や吸着マットによる抵抗が大きいため表面積を大きくして濾材や吸着マットによる雨水の流通速度低減を抑え、雨水の流下速度を一定に保つ。
【0026】
濾過部17の底の排出口18はドーナツ状に凡そ4cm幅で一周し、この中に直径Фが8mmから1cmの穴が200以上開けられ、濾材や吸着マットで流速が低減した雨水を一気に雨水タンク19送り込める濾過部17の排出口18を持つ。
【0027】
蓋体4上部はリング状のカバー10がある。リング状のカバー10の内側に下筒5がある。カバー10の大きさは、カバー10の外縁部が濾過部17の外縁部と等しく、カバーの外周に等間隔に出した数本のつめ10により、蓋体4に載る。このカバー10の内側の径は上筒5の外径よりわずかに大きい。ブラッシ部14とオーバーフロー様の第二沈殿室15やブラッシ部14及び濾過部17の洗浄はカバー10を上筒5に沿って上方向へ雨水注入管3の上部まで持ち上げ移動させることにより、ブラッシ部14を取り出して洗浄できる。また第二沈殿室15の洗浄はブラッシ部14を取り出した後、第二沈殿室15の洗浄が行える。また濾過部17の濾材の洗浄や交換並びに吸着マットの交換ができる。
【0028】
以上のように雨水タンク19の上部に被着する中空状の蓋体4は、蓋体4の中で雨水を循環させ、雨水に含まれるゴミを除去・沈殿・浮遊物質の除去・濾過・吸着を蓋体4内で行うことによって雨水を良質な水に変え、雨水の利用範囲を広げる。各装置の洗浄や交換などの維持管理がしやすく、場所を選ばないコンパクトな雨水利用装置である。日本の年間降雨量の平均が1700mm〜1800mmであるのでこれらの効果を出すには蓋体4の直径が30cm以上あることが望ましく、多雨地帯や一度に集中した雨が降る地域は直径40cm程度が望ましい。また[0014]にあげた初期雨水貯留筒22は必ずしも必要ではないが、本発明の雨水利用装置の負担を軽減し、より一層顕著な効果を出すために設置することを勧める。また蓋体4の直径が50cm以上になると降雨時の蓋体4の重さが増すことにより雨水タンク19全体の強度を高める必要がある。
【符号の説明】
【0029】
1.竪どい
2.T字型分岐
3.雨水注入管
4.蓋体
5.上筒
6.上筒受け
7.ドーム状ネット
8.底の浅い籠
9.浄化部
10.カバー
10−a.つめ
11.下筒
12.オーバーフロー様の第一沈殿室
13.雨水排出孔
14.ブラッシ部
14−a. 心棒
14−b. 針体
15.オーバーフロー様の第二沈殿室
16.中仕切り垂れ壁
16−a. 腕木
17.濾過部
17−a. 濾過層
17−b. 吸着層
18.排出口
19.雨水タンク
19−a. 上部開口
20.オーバーフロー
21.雨水タンクの水栓
22.初期雨水貯留筒
22−a.初期雨水貯留筒の上端
22−b.初期雨水貯留筒の下端
23.フロート
24.ネット
25.ホース
26.ジョイント部
27.ネジ式蓋
28.水栓
29.開閉コック
30.U字溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部開口の有底型雨水タンクとこの雨水タンクの上部開口に被着する中空状の蓋体とで成し、この中空状の蓋体は、蓋体内部に複数の浄化部並びに濾過部を有し、更に蓋体の中央に直立される雨水注入管と上部にオーバーフロー様の雨水排出口を有する第一沈殿室とこの第一沈殿室の外周で而も前記雨水排出口の下部に位置して雨水とともに混在する異物を収集するブラッシ部とさらにこのブラッシ部より滴下した雨水をプールする中仕切り垂れ壁を有する第二沈殿室とこの第二沈殿室は更にゴミを沈殿させるように一定空間を有する中仕切り垂れ壁を有し、且つ第二沈殿室の中仕切り垂れ壁の外側にオーバーフローした雨水に含まれる微細なゴミを分別吸着させる前記濾過部と微細なゴミを吸着させた後の雨水を排出させる濾過部の下端に設けられた多数の排出口とでなしたことを特徴とした雨水利用装置。
【請求項2】
前記濾過部はオーバーフロー様の第二沈殿室の容積の約2倍、第二沈殿室がオーバーフロー様の第一沈殿室の容積の約2倍、下筒が雨水注入管の約2倍になるようにしたことを特徴とする請求項1記載の雨水利用装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−104263(P2013−104263A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250248(P2011−250248)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【特許番号】特許第4932963号(P4932963)
【特許公報発行日】平成24年5月16日(2012.5.16)
【出願人】(310008022)