説明

雨水貯水装置を備えた建物

【課題】雨水利用に好適な場所への設置が可能であり、しかも雨水タンクを安定状態に支持する。
【解決手段】建物10は基礎11の上に設置された建物本体12を有しており、一階部分の一側面には、外壁が屋内側に凹むことで形成されたアルコーブ31が設けられている。アルコーブ31においては、アルコーブ空間を挟んで両側にアルコーブ袖壁部34が設けられており、アルコーブ袖壁部34の内部空間には、雨水を貯める雨水タンクが設置されている。基礎11は、アルコーブ袖壁部34の下方に配置された袖壁基礎部を有しており、雨水タンクはアルコーブ袖壁部34の内部空間において袖壁基礎部の上に載置されている。雨水タンクは建物躯体としての柱や床大梁に対して固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨水貯水装置を備えた建物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
住宅等の建物において、雨樋を流れる雨水を雨水タンクに貯め、貯めた雨水を植物や地表面への水撒きに利用する技術が提案されている。例えば、建物が構築されている敷地において、給水ポンプ付きの雨水タンクが建物に隣接させて屋外に設置され、給水ポンプが駆動することで雨水タンクの水が庭に撒かれるという技術がある(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−303163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、雨水タンクが屋外に設置されていると、その雨水タンクにより建物の外観が損なわれることが懸念され、建物の外観悪化を抑制しようとすると、タンク設置場所が制約されるという不都合を生じる。そして、タンク設置場所の制約から、例えば建物の裏手や敷地の隅部に雨水タンクが設置されることになると、庭や、建物正面の玄関アプローチ等に対して雨水タンク内の水を散水しようとする場合にその使い勝手が悪いという不都合が生じる。また、雨水タンクは雨水の貯留により重量が嵩むため、その支持構造を大掛かりにする必要があり、その大掛かりな設備を新たに設けなければならないという不都合も生じる。
【0005】
本発明は、雨水利用に好適な場所への設置が可能であり、しかも雨水タンクを安定状態に支持することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、第1の発明の雨水貯水装置を備えた建物は、建物の外面を流れる雨水が流れ込む雨水配管と、該雨水配管を通じて流れ込んだ雨水を貯める雨水タンクとを有する雨水貯水装置を備えており、建物外壁において外壁面材の屋内側には、前記雨水タンクが設置されたタンク設置スペースが設けられており、前記タンク設置スペースにおいては、建物躯体により支持された状態で前記雨水タンクが設置されていることを特徴とする。
【0007】
第1の発明によれば、雨水タンクが外壁面材の屋内側に設置される構成となっているため、建物の外側から見れば雨水タンクが隠され、その雨水タンクにより建物外観が損なわれることはない。また、外観悪化に起因する設置場所の制約が無くなることから、建物において例えばその正面側や、庭に直面する建物側面側に雨水タンクを設置することが可能となり、雨水を散水等に用いる際の使い勝手が良好となる。さらに、雨水タンクは建物の躯体に支持された状態で設置されるため、大掛かりな支持構造を新たに設けなくても、すなわちタンク支持構造として新規な構造を過剰に付加しなくても、雨水タンクを好適に支持できる。以上により、建物において、雨水利用に好適な場所への設置が可能であり、しかも雨水タンクを安定状態に支持することができる雨水貯水装置を実現できる。
【0008】
第2の発明では、柱及び梁からなる鉄骨ラーメン構造の建物ユニットが複数連結された構築されたユニット式の建物であって、前記柱及び前記梁は前記建物躯体に含まれており、前記雨水タンクは、前記柱及び前記梁の少なくとも一方により支持されている。
【0009】
第2の発明によれば、ユニット式の建物において建物ユニットが鉄骨ラーメン構造を有するため、その柱や梁を支持体として雨水タンクが支持されることにより、雨水タンクの支持強度を高めることができる。
【0010】
第3の発明では、前記建物ユニットにおいて前記雨水タンクが、前記柱及び前記梁よりもユニット外側とならないように配置されている。
【0011】
第3の発明によれば、建物ユニットにおいて柱及び梁よりもユニット外側にならないように雨水タンクが配置されるため、建物ユニットの輸送時において雨水タンクが輸送の支障になることはなく、雨水タンクの先付けが可能となる。したがって、雨水タンクの設置作業について、建築現場での作業負担が増加するということを回避できる。
【0012】
第4の発明では、前記建物ユニットにおける床部分には、前記雨水タンクの下端部を囲むようにして囲い梁部が設けられている。
【0013】
第4の発明によれば、建物ユニットの床部分において囲い梁部に囲まれて雨水タンクが設置される。これにより、タンク設置スペースが囲い梁部として確保される。この場合、雨水タンクの下端部を建物躯体(ここではユニット梁部)で支持する際に、その支持構造を容易かつ強固に構築できる。
【0014】
第5の発明では、前記建物躯体を有する建物本体が建物基礎の上に載置されており、前記タンク設置スペースは、前記建物基礎の上面の上方に設けられており、前記雨水タンクは、前記建物基礎の上面にて前記雨水タンクからの荷重が支えられた状態で載置されている。
【0015】
第5の発明によれば、雨水タンクが建物基礎の上に設置されているため、雨水タンクから建物本体の建物躯体に加えられる荷重が低減される。この場合、雨水タンクが建物基礎及び建物躯体の両方で支えられているため、雨水タンクに対する建物の耐荷重強度を高める構成を実現できる。
【0016】
第6の発明では、前記建物外壁の屋外側には、該建物外壁の屋外面が屋内側に向けて凹むことで形成されたアルコーブが設けられており、前記アルコーブは、アルコーブ空間を挟んで両側に配置されたアルコーブ袖壁部を有しており、前記タンク設置スペースは、前記アルコーブ袖壁部の内部空間により形成されている。
【0017】
建物にアルコーブが設けられている場合、アルコーブ袖壁部の内部空間がデッドスペースになることが考えられる。この点、第6の発明によれば、アルコーブ袖壁部の内部空間をタンク設置スペースとして有効利用することができる。また、建物においてアルコーブは建物の意匠性を高めるべく設けられ、例えば建物正面の玄関付近に設けられることや、庭に直面して設けられることが考えられる。この点、アルコーブ袖壁部に雨水タンクを設けられていれば、建物正面の玄関や庭に対する散水等を容易に実施できる。
【0018】
第7の発明では、前記雨水タンクの貯水量が所定の満タン量になった場合に、前記雨水配管を流下する雨水を建物周囲の地中排水部側に向けて排出する排出配管を備え、前記排出配管が、前記タンク設置スペース内に前記雨水タンクと共に設けられている。
【0019】
第7の発明によれば、雨水タンクが満タンになると、その後雨水配管を雨水が流れてきても、排出配管を通じて雨水、すなわち余剰となった雨水が地中排水部側に向けて排出される。これにより、屋外でなく建物の外壁面材の屋内側に雨水タンクが設けられる構成にあっても、雨水の余剰分がオーバーフローして外壁面材よりも屋内側が濡れたり汚れたりするのを抑制できる。
【0020】
第8の発明では、前記排出配管は、前記雨水配管において前記雨水タンクよりも上流側部分から分岐して設けられ、前記雨水配管から前記排出配管が分岐する分岐部分には、前記雨水タンクの貯水量が前記満タン量に到達する以前は前記雨水タンクへの雨水の流入を許容し、前記雨水タンクの貯水量が前記満タン量に到達した後は前記雨水タンクへの雨水の流入を禁止するとともに前記排出配管への雨水の流入を許容するように雨水経路を切り替える経路切替手段が設けられている。
【0021】
第8の発明によれば、雨水タンクが満タンになった場合、雨水はそれ以上雨水タンクに流入せず、建物周囲の地中排水部側に向けて排出される。この場合、雨水タンクへの余剰雨水の流入自体が抑制されるため、例えば雨水タンクにおいて雨水の余剰分をオーバーフローさせて排出する構成と比べて、大雨時等、大量の雨水が流れる場合における雨水の流れの滞りを抑制できる。
【0022】
なお、経路切替手段としては、雨水の貯水量に応じて流路を切り替えるフロート付きの流路切替弁を用いる構成や、コントローラが、雨水タンクに設けた水位センサの検出結果に基づいて電気式の流路切替弁を開閉させる構成が考えられる。
【0023】
第9の発明では、外気温度を検出する外気温度検出手段と、前記外気温度検出手段により検出された外気温度があらかじめ定めた判定値よりも大きくなったか否かを判定する温度判定手段と、前記雨水タンクに設けられ、該雨水タンクから屋外側に水を放出する放水管と、前記放水管からの駆動放水を行う放水駆動手段と、前記温度判定手段により検出された前記外気温度が前記判定値よりも大きくなった場合に、前記放水駆動手段を駆動させて前記放水管からの放水を行う制御手段と、を備えている。
【0024】
第9の発明によれば、例えば夏期において外気温度が高い場合に、雨水タンクから屋外地表面に水を放出することで、打ち水効果により涼気を建物内空間に取り込むことが可能となる。しかも、放水制御が制御手段により行われるため、人が雨水タンクの貯留水を屋外地表面に撒くという手間を省くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】建物の外観を示す図。
【図2】建物の一階部分及び二階部分の間取り図。
【図3】建物ユニットの構成を示す斜視図。
【図4】アルコーブユニットの構成を示す斜視図。
【図5】アルコーブ袖壁部における躯体の配置と基礎構造とを説明するための図。
【図6】図2(a)のA−A線断面図。
【図7】建物におけるアルコーブ周辺の外観斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を具体化した一実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、建物10の外観を示す図であり、(a)は正面図、(b)は概略斜視図である。図2は、建物10の一階部分及び二階部分の間取り図である。
【0027】
図1に示すように、住宅等の建物10は、2階建てユニット式建物として構築され、建物基礎としての基礎11の上に設置された建物本体12と、建物本体12の上方に設置された屋根13とを有して構成されている。建物本体12は、複数の建物ユニット20が互いに連結される等して構築されており、一階部分と二階部分とを有している。屋根13は寄せ棟式の屋根であり、建物本体12の全体を覆うようにして設置されている。ただし、屋根13は切り妻式の屋根や平屋根であってもよい。
【0028】
建物ユニット20の構成について図3を参照しつつ説明する。図3は建物ユニット20を示す斜視図である。
【0029】
建物ユニット20は、鉄骨ラーメン構造を有しており、その四隅に配設される4本の柱21と、各柱21の上端部及び下端部をそれぞれ連結する各4本の天井大梁22及び床大梁23とを備える。そして、それら柱21、天井大梁22及び床大梁23により直方体状の骨格(躯体)が形成されている。柱21は四角筒状の角形鋼よりなる。また、天井大梁22及び床大梁23は断面コ字状の溝形鋼よりなり、その開口部が向き合うようにして、すなわち溝部をユニット内側に向けるようにして設置されている。なお、溝形鋼の相対向する一対のフランジは上下に位置している。
【0030】
建物ユニット20の長辺部(桁部)の相対する天井大梁22の間には、所定間隔で複数の天井小梁25が架け渡されて固定されている。同じく建物ユニット20の長辺部(桁部)の相対する床大梁23の間には、所定間隔で複数の床小梁26が架け渡されて固定されている。天井小梁25及び床小梁26は、それぞれ同一の間隔でかつ短辺側(妻側)の天井大梁22及び床大梁23に水平に設けられている。例えば、天井小梁25はリップ溝形鋼よりなり、床小梁26は角形鋼よりなる。天井小梁25によって天井面材27が支持され、床小梁26によって床面材28が支持されている。
【0031】
図1、図2に示すように、建物10において一階部分の一側面には、建物外壁としての外壁29を部分的に屋内側に後退させてアルコーブ(凹所)31が形成されており、そのアルコーブ31の屋内側には居室32が形成され、アルコーブ31の屋外側には例えば庭が形成されている。アルコーブ31には、建物ユニット20の柱21の屋外側に設けられた外壁面から屋内側に後退した位置にアルコーブ窓部33が設けられており、アルコーブ窓部33の左右両側であってアルコーブ31の側方部分にはアルコーブ袖壁部34が設けられている。アルコーブ袖壁部34は、アルコーブ窓部33に対して屋外側に向けて延びた部分により形成されており、アルコーブ窓部33の屋外側であって左右の両アルコーブ袖壁部34の間となる空間がアルコーブ空間Sとなっている。
【0032】
アルコーブ袖壁部34は、屋内方向に向けて斜めに配置された袖壁面材35によりアルコーブ空間Sから区画されて形成され、袖壁面材35の裏面側に形成された内部空間34aを有しており、その内部空間34aに柱21が収容された構成となっている。袖壁面材35は、アルコーブ31の屋外開放側に向けてアルコーブ空間Sの幅寸法が徐々に大きくなるように斜めに設置されており、袖壁面材35によりアルコーブ31の入隅コーナー部分が覆われている。
【0033】
ここで、外壁29は屋外面を形成する外壁面材38を含んで構成されている。外壁面材38は、例えば窯業系サイディングボードにより形成され、例えば溝形鋼よりなる外壁フレームを介して天井大梁22や床大梁23に対して固定されている。袖壁面材35は、例えばガルバリウム等の化粧板により形成され、外壁面材38とは異なる色やデザインとされている。
【0034】
外壁29は、屋内面を形成する内壁面材39を有しており、その内壁面材39はアルコーブ袖壁部34の屋内側にも配置されている。この場合、アルコーブ袖壁部34の内部空間34aは、建物外周におけるユニット外周ライン(図2の一点鎖線)に沿って延びている外壁面材38と、そのユニット外周ラインよりも内側において斜めに延びている袖壁面材35と、内壁面材39とにより囲まれていることになる。内壁面材39は、例えば石膏ボードにより形成され、軽量鉄骨材よりなる下地フレームを介して天井大梁22や床大梁23に対して固定されている。なお、内壁面材39の屋内側には壁断熱材65(図6参照)が設けられており、内壁面材39、壁断熱材65、下地フレームにより内壁ユニットが構成されている。
【0035】
また、二階部分には、アルコーブ31の上方となる部位にインナバルコニー41が設けられている。インナバルコニー41は、1つの建物ユニット20の約半分のスペースを使って設けられるものであり、その屋内側に居室42が形成されている。特に、インナバルコニー41は、建物ユニット20を短手方向に二分してその一方に設けられている。この場合、1つのユニット躯体内に屋内部とインナバルコニー41とが形成されている。インナバルコニー41と居室42との間には例えば掃出窓からなるバルコニー窓部43が設けられており、バルコニー窓部43の左右両側であってインナバルコニー41の側方部分にはバルコニー袖壁部44が設けられている。
【0036】
バルコニー袖壁部44は、屋内方向に向けて一部が斜めに配置されたバルコニー壁面材45によりバルコニー空間から区画されて形成されており、バルコニー壁面材45の裏面側に形成された内部空間44aを有しており、その内部空間44aには柱21が収容されている。バルコニー壁面材45は、袖壁面材35と同様、例えばガルバリウム等の化粧板により構成されている。バルコニー壁面材45は、インナバルコニー41の屋外開放側に向けてバルコニー空間が広がるように設置されており、バルコニー壁面材45によりインナバルコニー41の入隅コーナー部分が覆われている。また、インナバルコニー41の屋外開放側には手摺部46が設けられており、手摺部46は、インナバルコニー41の床面を形成するバルコニー床部47から上方に向けて延びている。
【0037】
一階側のアルコーブ袖壁部34と二階側のバルコニー袖壁部44とは互いに真下及び真上となる位置に設けられている。この場合、アルコーブ袖壁部34の内部空間34aとバルコニー袖壁部44の内部空間44aとは上下に並んでいることになるが、それら内部空間34a,44aはバルコニー床部47に仕切られている。
【0038】
図4は、一階部分のアルコーブ31を構築するために用いられる建物ユニット(以下、アルコーブユニット20Aという)を示す斜視図である。アルコーブユニット20Aは、図3で説明した建物ユニット20と同様の基本構成を有しており、四隅に配設される柱21と、各柱21を連結する天井大梁22及び床大梁23とを備える点で同様であり、床部分の構成が相違している。図4には、図3と同じ構成については同じ符号を付しており、その説明については省略する。
【0039】
アルコーブユニット20Aにおいては、建物ユニット20と相違する構成として、短辺側の一対の床大梁23に架け渡すようにして中間梁51が設けられている。中間梁51は、長辺側の床大梁23に平行に設けられている。その一方で、建物ユニット20における長辺側の一対の床大梁23のうち一方は設けられておらず、中間梁51は床大梁23が接続されていない方の柱21寄りに配置されている。
【0040】
中間梁51は、床大梁23と同じ溝形鋼により構成されるとともに、床大梁23と同じ高さ位置に設けられており、その両端部が図示しないブラケットにより短辺側の一対の床大梁23に連結されている。中間梁51は、その溝部を床大梁23に向けて設けられており、床小梁26は、床大梁23同士に架け渡されるのではなく、長辺側の床大梁23と中間梁51との間に架け渡されて固定されている。
【0041】
中間梁51を挟んで床大梁23とは反対側の各柱21には、床大梁23と平行に延びる袖壁梁片54がそれぞれ接続されている。袖壁梁片54は、短尺状の溝形鋼よりなり、その溝部を中間梁51に向けて配置されている。各袖壁梁片54の先端部には、中間梁51に向けて延びる袖壁梁連結フレーム55がそれぞれ接続されている。それら袖壁梁連結フレーム55は、短辺側の床大梁23に対して斜めに設けられ、中間梁51側の端部同士の離間距離が、袖壁梁片54側の端部の離間距離よりも小さくなるように配置されている。
【0042】
ここで、アルコーブ31のアルコーブ窓部33は、アルコーブユニット20Aの中間梁51に沿ってその上方に設けられており、中間梁51に対して固定されている。また、アルコーブ袖壁部34の袖壁面材35は、アルコーブユニット20Aの袖壁梁連結フレーム55に沿って延びているとともに、その袖壁梁連結フレーム55に対して固定されている。
【0043】
アルコーブ袖壁部34の内部空間34aは、袖壁面材35が斜めに設置されて壁厚さが不均一になっていることなどに起因して、例えば外壁29の内部空間に比べて大きくなっており、内部空間34aをデッドスペースとしておくのは、建物内の空間を有効利用する上で好ましくない。
【0044】
そこで、本実施形態では、雨水を貯める雨水タンク56をアルコーブ袖壁部34の内部空間34aに設置し、それによって内部空間34aをタンク設置スペースとして有効利用するようにしている。ここで、建物10には、雨水タンク56を含んで構成された雨水貯水装置が設置されている。
【0045】
図5は、アルコーブ袖壁部34における躯体の配置と基礎構造とを説明するための図であり、(a)はアルコーブ袖壁部分の基礎を示す平面図、(b)は基礎上に設置された建物躯体を示す平面図である。
【0046】
基礎11は、地中に埋設されるフーチング部とそのフーチング部から地上に立ち上げられた立ち上がり部とからなる鉄筋コンクリート造の布基礎よりなり、アルコーブ窓部33の下方に設置されるアルコーブ基礎部57と、アルコーブ袖壁部34の下方に設置される袖壁基礎部58と、アルコーブ以外において建物外壁に沿って設置される外壁基礎部59とを有している。袖壁基礎部58は、アルコーブ袖壁部34と略同様の平面形状かつ大きさでコンクリートが打設されることで構成されている。
【0047】
基礎11において袖壁基礎部58には、配水管などが挿通配置されるか又は自身が配水管となるスリーブ(基礎埋設管)61と、建物ユニット20を基礎11上に固定するためのアンカーボルトが挿入されるアンカーホール62とが設けられている。スリーブ61は上下方向に延びる向きで基礎11に埋設され、その上端部分が基礎の天端よりも上方に突き出されている。本実施形態では、スリーブ61は、L字管にて構成されており、上下方向に延び上端が開口している鉛直部以外に、基礎内部において水平方向に延びる水平部を有し、その水平部が基礎側面から地中に延びるように構成されている(図6参照)。なお、スリーブ61の水平部が、建物周囲の地中に設けられる地中配水管に接続されている。
【0048】
そして、袖壁基礎部58の上面にアルコーブユニット20Aの柱21が立設されるとともに、各基礎部の上面に沿って延びるようにして床大梁23や中間梁51、袖壁梁片54、袖壁梁連結フレーム55が配設されている。これら床大梁23や中間梁51、袖壁梁片54、袖壁梁連結フレーム55が「囲い梁部」に相当する。アルコーブ袖壁部34の内部空間34aは、それら床大梁23、袖壁梁片54、袖壁梁連結フレーム55により囲まれた部分において袖壁基礎部58の上面の上方に形成されている。
【0049】
次に、雨水タンク56の設置構造について図6,図7を参照しつつ説明する。図6は図2(a)のA−A線断面図、図7は建物におけるアルコーブ31周辺の外観斜視図である。なお、図6においては、説明の便宜上、雨水タンク56の外観を図示するとともにオーバーフロー管76を図示し、さらに雨水タンク56に関する電気的な構成を示すブロック図を図示している。雨水タンク56は、アルコーブ空間Sの両側の各アルコーブ袖壁部34のそれぞれに内蔵されているが、雨水タンク56の設置構造は同じであるため、ここでは、建物10の隅角に配置されたアルコーブ袖壁部34についての説明を行い、もう一方のアルコーブ袖壁部34についての説明は省略する。
【0050】
図6に示すように、雨水タンク56は内部空間34aにおいて袖壁基礎部58の上に設置されている。雨水タンク56は、内部空間34aに収納可能な大きさ及び形状とされており、内部空間34a内に配置されている柱21に沿って上下方向に延びている。雨水タンク56は、その下部周囲が袖壁梁片54等の囲い梁部により囲まれた状態となっており、その状態で柱21や床大梁23、中間梁51、袖壁梁片54、袖壁梁連結フレーム55に対してアングルやブラケット等の支持部材を介して固定されている。
【0051】
雨水タンク56は、基礎上プレート63を挟んで袖壁基礎部58の上に載置されている。基礎上プレート63は金属板により形成され、雨水タンク56の下面と袖壁基礎部58の上面との隙間を埋めるスペーサとなっている。雨水タンク56はアンカーボルト等の固定具により袖壁基礎部58に対して固定されている。例えば、アングルやブラケット等の支持部材が雨水タンク56に溶接等により接続されており、支持部材はアンカーボルトがアンカーホール62に挿入されることによりアルコーブユニット20Aと共に袖壁基礎部58に対して固定されている。なお、アルコーブユニット20Aの躯体が建物躯体に相当する。
【0052】
雨水タンク56の屋内側には、内壁面材39の屋外側面に沿って延びるように壁断熱材65が設けられている。壁断熱材65はグラスウール等の繊維系断熱材やポリウレタンフォーム等の発泡系断熱材により形成されており、壁断熱材65の屋外側に雨水タンク56が設置されている。この場合、壁断熱材65は雨水タンク56の側面に沿って延びた状態となっている。
【0053】
雨水タンク56には、雨水配管としての接続管66を介して雨樋が接続されている。雨樋には屋根面から雨水が流れ込むとともに、バルコニー床部47の上面から雨水が流れ込むようになっており、接続管66は、建物外面よりも内側(外壁面材38よりも屋内側)に設けられ、雨水タンク56の上面又は上部側面に接続されている。雨水タンク56には、その雨水タンク56に貯められた水をアルコーブ31のアルコーブ床部31aに向けて放出する放水管67が接続されている。なお、雨水タンク56には、接続管66から流れ込む雨水から木葉やゴミを取り除くためのフィルタが着脱可能に設けられている。アルコーブ袖壁部34の屋内側において内壁面材39には、フィルタの着脱作業を行うための点検口が作業容易な高さ位置(例えば居室32の床面から1.3m)に設けられている。
【0054】
図7に示すように、袖壁面材35には、放水管67を内部空間34aからアルコーブ31側に取り出すための取り出し口68が形成されており、放水管67は取り出し口68に挿通した状態で設置されている。アルコーブ31においては、アルコーブ基礎部57によりアルコーブ床部31aが形成されている。アルコーブ床部31aの床面は地上面GLよりも高い位置にあり、アルコーブ窓部33とは反対側の端部が低くなるように水勾配を有している。また、アルコーブ床部31aの屋外側には、コンクリート層等により形成された踏み段71が設けられている。なお、アルコーブ床部31aは外壁29に沿って延びており、外壁29の屋外側に沿って延びる犬走りの一部を形成している。
【0055】
雨水タンク56から放水管67を通じて水がアルコーブ床部31aに撒かれた場合、アルコーブ31や居室32について打ち水効果を得ることができ、しかも、雨水を再利用することができる。ここで、アルコーブ床部31aの床面には、水が流れ込む溝部72が複数設けられている。溝部72は床面に沿って延びており、例えばタイル目地により形成されている。このため、アルコーブ31において床面に水が撒かれた場合に、溝部72に沿って拡がる拡散効果や溝部72での保水効果により打ち水効果がより一層高められることになる。なお、溝部72の底面は、床面と同様に水勾配を有している。また、放水管67は、雨水タンク56の貯留水をアルコーブ31よりも屋外側の庭に撒くように設けられていてもよい。
【0056】
雨水タンク56には、余剰水を排出するオーバーフロー排水口75が設けられている。オーバーフロー排水口75は、雨水タンク56の貯水量の上限となる所定高さ位置に配置されており、雨水タンク56内の水位が所定レベルに達した場合(貯水量が所定の満タン量になった場合)に、貯留水がオーバーフロー排水口75から流れ出すようになっている。オーバーフロー排水口75には、排出配管としてのオーバーフロー管76が接続されており、そのオーバーフロー管76は、地中に埋設された地中排水部としての排水管に接続されている。オーバーフロー排水口75から流れ出た貯留水は、オーバーフロー管76を通じて排水管に排出される。これによって雨水タンク56内の水位が所定レベルより高くなることを回避できる。つまり、雨水タンク56から雨水が溢れることを回避できる。
【0057】
なお、オーバーフロー排水口75は、雨水タンク56の貯水量の上限よりも下方(例えば雨水タンク56の底部)に配置されていてもよい。この場合、雨水タンク56に排水装置が設けられていることが好ましい。例えば、排水装置が、雨水タンク56内にて貯留水に浮くフロートと、フロートの高さ位置に連動してオーバーフロー排水口75を開放する開閉弁とを有しており、水位の上昇に伴ってフロートが所定高さ位置に移動した場合に、開閉弁が開放状態となってオーバーフロー排水口75から排水が行われる構成とする。また、排水装置が、雨水タンク56の水位や貯水量を検出するタンクセンサと、オーバーフロー排水口75を開閉可能な開閉弁とを有しており、タンクセンサの検出値が判定値以上になった場合に、開閉弁が開放される構成とする。いずれの構成でも、雨水タンク56から雨水が溢れることを回避できる。
【0058】
オーバーフロー排水口75は雨水タンク56の側面上部に配置されており、オーバーフロー管76は、アルコーブ袖壁部34の内部空間34aにおいてオーバーフロー排水口75から下方に向けて雨水タンク56に沿って延びるように設置されている。袖壁基礎部58には、オーバーフロー管76を挿通させるための挿通孔がスリーブ等により形成されており、オーバーフロー管76はその挿通孔を通じて排水管まで延びるように敷設されている。この場合、オーバーフロー管76は、屋外側から外壁面材38により覆い隠された状態となっている。
【0059】
雨水タンク56には、放水管67からの駆動放水を行う放水駆動部79が設けられている。放水駆動部79は電動式のポンプを含んで構成されており、放水駆動部79が停止状態にある場合には放水管67からの放水が行われない。建物10においては、放水駆動部79の駆動制御を行う放水システムが構築されている。放水システムにおいて、制御手段としてのコントローラ81は、CPUや各種メモリ等からなるマイクロコンピュータを含んで構成されている。コントローラ81には、放水駆動部79と、外気温度を検出する外気温度センサ82とが電気的に接続されている。外気温度センサ82は、例えばアルコーブ袖壁部34の屋外面に取り付けられており、検出信号をコントローラ81に対して出力する。コントローラ81は、指令信号を出力することで放水駆動部79の動作制御を行う。
【0060】
コントローラ81は、外気温度センサ82により検出された外気温度があらかじめ定めた判定値(例えば28℃)以上であるか否かを判定し、判定値以上である場合に、放水駆動部79を駆動させてアルコーブ床部31aに雨水タンク56の貯留水を撒く。これにより、夏期など人が暑さを感じる時にアルコーブ31にて打ち水を行うことができるとともに、冬期など人が暑さを感じない時に打ち水を行ってしまうことを回避できる。
【0061】
なお、建物10の屋根13には、太陽光発電を行う太陽光パネルが設置されている。太陽光パネルには発電量を検出する発電センサが設けられており、その発電センサはコントローラ81に接続されている。コントローラ81は、発電センサの検出信号に基づいて単位時間当たりの発電量を算出するとともに、その発電量があらかじめ定めた判定値より大きいか否かを判定し、判定値より大きい場合に、上記の外気温度判定処理を行う。この場合、太陽光発電が行われていることを条件として、すなわち晴れていることを条件として雨水タンク56の貯留水を撒くことが可能となる。これにより、雨天であるにもかかわらず雨水タンク56の貯留水が撒かれることを回避できる。
【0062】
ちなみに、日射量を検出する日射量センサが設けられている場合、コントローラ81が、日射量センサの検出信号に基づいて日射量を算出し、その日射量が所定量よりも大きい場合に雨水タンク56の貯留水を撒く構成としてもよい。
【0063】
また、踏み段71を挟んでアルコーブ31の反対側である地上部T(例えば庭地面)には、アルコーブ床部31aに対する散水量の程度(散水の過不足)を検出するための水検出部85が設けられている。この水検出部85は、アルコーブ床部31aに対して撒かれた水が、アルコーブ床部31aや踏み段71の表面で気化されずに地上部Tまで流れ込んだことを検出するものであり、水検出部85で水が検出されることは、アルコーブ床部31aに対する散水が過多であることを意味する。なお、水検出部85は、踏み段71から流下する水を貯める水溜部と、その水溜部に設けられる水検出センサとを有し、水検出センサがコントローラ81に接続されている。コントローラ81は、水検出センサにより水有りと検出された場合、又は水検出センサにより所定量以上の水が検出された場合に、アルコーブ床部31aへの散水が過多であると判定し、放水駆動部79の駆動を停止させる。これにより、アルコーブ床部31aや踏み段71から流下した水により地上部Tが水浸しになることを抑制できる。
【0064】
次に、雨水タンク56を有する建物10の構築手順について簡単に説明する。
【0065】
まず、建物ユニット製造工場においてアルコーブユニット20Aを含む建物ユニット20を製造するとともに、雨水タンク56をアルコーブ袖壁部34の内部空間34aに設置し、さらに、アルコーブユニット20Aに対して固定する。この場合、雨水タンク56を、その雨水タンク56の下面がアルコーブユニット20Aの下面と同じ高さ位置となるように配置する。つまり、雨水タンク56をアルコーブユニット20Aよりも下方に突出しないように配置する。なお、雨水タンク56は、アルコーブユニット20Aに対して下方だけでなく、柱21や天井大梁22、床大梁23よりも外側に突き出ないように取り付けられている。
【0066】
その後、雨水タンク56付きのアルコーブユニット20Aを建築現場に搬送し、基礎11の上に載置する。この場合、雨水タンク56がアルコーブユニット20Aより下方に突出していないため、搬送に際して雨水タンク56が破損するということを抑制できる。そして、アルコーブユニット20Aを基礎11に対して固定する作業を行うとともに、雨水タンク56を袖壁基礎部58に対して固定する作業を行う。この場合、アルコーブユニット20Aを設置することで所定位置への雨水タンク56の取り付けが完了するため、建築現場における作業を簡易化できる。しかも、アルコーブユニット20Aを基礎11の上に載置する際に雨水タンク56が破損するということを抑制できる。
【0067】
ここで、雨水タンク56を袖壁基礎部58に固定する前に、雨水タンク56と袖壁基礎部58との間に基礎上プレート63を挟み込む。これにより、雨水タンク56の下面とアルコーブユニット20Aの下面との高さ位置が上下にずれていても、雨水タンク56の荷重が基礎上プレート63を介して袖壁基礎部58に加わる構成を実現できる。つまり、雨水タンク56の荷重をアルコーブユニット20Aの躯体と袖壁基礎部58とに分散させることができる。
【0068】
また、アルコーブユニット20Aを設置する際、雨水タンク56は水が入っておらず比較的軽量であるため、その点を考慮し、建物ユニット製造工場においては雨水タンク56をアルコーブユニット20Aに仮固定しておき、建築現場においてアルコーブユニット20Aの設置後に雨水タンク56を本固定する。これにより、雨水タンク56の設置位置を微調整することが可能となっている。
【0069】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0070】
雨水が雨水タンク56に貯留される建物10において、袖壁面材35を含む外壁面材38の屋内側に雨水タンク56が設置されているため、雨水タンク56により建物10の外観が損なわれることがない。また、外観悪化に起因する設置場所の制約がなくなることから、建物10のファサード側や、正面側、庭に直面する側などに雨水タンク56を設置することが可能となり、雨水を散水等に用いる際の使い勝手が良好となる。さらに、雨水タンク56は建物10の躯体に支持された状態で設置されているため、支持構造を大掛かりにしなくても、すなわちタンク支持構造として新規な構造を過剰に付加しなくても、雨水タンク56を好適に支持できる。以上により、建物10において、雨水タンク56を雨水利用に好適な場所に設置することが可能であり、しかも雨水タンク56を安定状態に支持することができる雨水貯水装置を実現できる。
【0071】
鉄骨ラーメン構造を有する建物10において、雨水タンク56が柱21や床大梁23等の躯体により支持されているため、雨水タンク56に対する建物10の支持強度を高めることができる。しかも、雨水タンク56は、アルコーブユニット20Aにおいてそのアルコーブユニット20Aの外周面よりも外側に突出しないように配置されているため、アルコーブユニット20Aの輸送時において雨水タンク56が輸送の支障になることや破損することが抑制され、雨水タンク56を建物ユニット製造工場等で先付けすることが可能となる。したがって、雨水タンク56の設置作業について、建築現場での作業負担が増加するということを回避できる。
【0072】
アルコーブユニット20Aにおいて、雨水タンク56の下部が囲い梁部(床大梁23、中間梁51、袖壁梁片54、袖壁梁連結フレーム55)により囲まれた状態となっているため、雨水タンク56の下部がアルコーブユニット20Aの躯体に固定される構成において、雨水タンク56に対するアルコーブユニット20Aの躯体(囲い梁部)の支持構造を容易かつ強固に構築できる。
【0073】
雨水タンク56は基礎11(袖壁基礎部58)の上面に載置されているため、雨水タンク56からアルコーブユニット20Aの躯体に加えられる荷重が低減される。この場合、雨水タンク56が袖壁基礎部58及びアルコーブユニット20Aの両方により支えられているため、アルコーブユニット20Aの躯体強度を向上させなくても、雨水タンク56に対する建物10の耐荷重強度を高める構成を実現できる。
【0074】
雨水タンク56はアルコーブ袖壁部34の内部空間34aに設置されているため、アルコーブ袖壁部34の内部空間34aをタンク設置スペースとして有効利用することができる。また、建物10においてアルコーブ31は外観の意匠性を高めるために、例えば建物10のファサードや玄関付近、庭に直面する位置に設けられていることが想定される。この点、雨水タンク56がアルコーブ袖壁部34内に設けられていれば、建物10のファサードや玄関付近、庭に直面する位置に容易に散水することができる。
【0075】
雨水タンク56は内壁面材39の屋外側に配置されているため、内壁面材39により雨水タンク56を覆い隠することができる。これにより、居室32における意匠性が雨水タンク56により低下することを回避できる。しかも、内壁面材39の屋外側には壁断熱材65が設けられているため、雨水タンク56と居室32との間の熱伝導が回避される。これにより、居室32の温度が雨水タンク56又はその雨水タンク56に貯留された雨水により変化するということを抑制できる。
【0076】
雨水タンク56にはオーバーフロー管76が接続されているため、雨水タンク56が満タンになった場合に、その後雨樋や接続管66を雨水が流れてきても、オーバーフロー管76を通じて余剰水が地中の排水管に向けて排出される。これにより、屋外でなく建物10の外壁面材38や袖壁面材35の屋内側に雨水タンク56が設けられていても、雨水の余剰分が溢れて外壁面材38や袖壁面材35よりも屋内側(アルコーブ袖壁部34の内部空間34a)が濡れたり汚れたりすることを抑制できる。
【0077】
夏期等において外気温度が判定値に達している場合に、雨水タンク56の貯留水が放水管67を介してアルコーブ床部31aに撒かれるため、打ち水効果によりアルコーブ31や居室32に涼気を流れ込ませることができる。しかも、コントローラ81により放水制御が行われるため、人が雨水タンク56の貯留水をアルコーブ床部31aに撒くという手間を省くことができる。
【0078】
(他の実施形態)
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。
【0079】
(1)排出配管としてのオーバーフロー管76は、雨水タンク56よりも上流側において接続管66や雨樋から分岐して設けられていてもよい。例えば、オーバーフロー管76が接続管66に接続されている構成とする。この構成では、オーバーフロー管76の分岐部分には、雨水が流れ込む先を接続管66又はオーバーフロー管76に切り替える流路切替弁が設けられている。流路切替弁は、接続管66への雨水の流入を許可する貯留状態と、接続管66への雨水の流入を禁止するとともにオーバーフロー管76への雨水の流入を許可する排出状態とに移行可能とされており、雨水タンク56の貯留量が満タン量に到達していない場合に貯留状態とされ、貯留量が満タン量に到達した時に排出状態に移行する。流路切替弁は、雨水タンク56内の水位に応じて上下するフロートが接続されたフロート付きの流路切替弁となっており、貯留量に応じて開閉するようになっている。なお、流路切替弁及びフロートが経路切替手段に相当する。また、オーバーフロー管76の分岐部分はタンク設置スペース内に設けられていてもよく、屋外空間(例えば雨樋)に設けられていてもよい。
【0080】
この構成によれば、雨水タンク56が雨水により満タンになった場合、雨水はそれ以上雨水タンク56に流入せず、オーバーフロー管76を通じて建物10周囲の排水管に排出される。この場合、雨水タンク56への余剰雨水の流入自体が抑制されるため、例えば雨水タンク56において雨水の余剰分をオーバーフロー管76から排出する構成に比べて、大雨時等、大量の雨水が流れる場合における雨水の流れの滞りを抑制できる。
【0081】
なお、コントローラ81が、雨水タンク56に設けられた水位センサの検出結果に基づいて、電気式の流路切替弁を開閉させることで、雨水がオーバーフロー管76及び接続管66(雨水タンク56)のいずれに流れ込むのかを切り替えてもよい。この場合、コントローラ81、水位センサ、流路切替弁により経路切替手段が構成される。
【0082】
(2)雨水タンク56は、二階部分のバルコニー袖壁部44の内部空間44aに設けられていてもよい。この場合、バルコニー袖壁部44の内部空間44aがタンク設置スペースに相当する。また、雨水タンク56は外壁29の内部空間に設けられていてもよい。要は、外壁面材38の屋内側に存在する空間が、雨水タンク56の設置されるタンク設置スペースとして使用されていればよい。
【0083】
(3)雨水タンク56は、アルコーブ袖壁部34の内部空間34aにおいて、建物10の躯体を介して袖壁基礎部58の上に載置されていてもよい。例えば、床大梁23、中間梁51、袖壁梁片54、袖壁梁連結フレーム55の少なくとも1つの上に載置されている構成とする。また、タンク設置スペースは、基礎11の上面ではなく床大梁23等の建物躯体の上面よりも上方に設けられていてもよい。さらに、雨水タンク56は基礎11に対して固定されていなくてもよい。
【0084】
(4)雨水タンク56は、アルコーブユニット20Aの柱21及び床大梁23の少なくとも一方に対して固定されていればよい。例えば、雨水タンク56が、アルコーブユニット20Aにおいて隣り合う柱21の中間位置に配置され、柱21及び床大梁23のうち床大梁23にだけアングル等の支持部材を介して固定されている構成とする。
【0085】
(5)雨水タンク56は建築現場にて建物躯体に対して取り付けられる構成でもよい。例えば、雨水タンク56がアルコーブユニット20Aの下面から下方に突出した状態で取り付けられ、雨水タンク56の下端部を収納する収納部が基礎11に形成されている構成とする。この場合、雨水タンク56がアルコーブユニット20Aに対して工場先付けされていると、搬送時に雨水タンク56が支障となったり破損したりすることが想定されるため、雨水タンク56はアルコーブユニット20Aに対して現場後付けされることが好ましい。なお、収納部は、基礎11の上面が下方に向けて凹んだ凹部とされている。
【0086】
(6)オーバーフロー管76は、外壁面材38により覆い隠されずに、屋外側に露出した状態で設けられていてもよい。また、基礎11には挿通孔が設けられていなくてもよい。この場合、オーバーフロー管76は基礎11の屋外側又は屋内側を迂回した状態で地中の排水管に接続されていることが好ましい。
【0087】
(7)壁断熱材65は設けられていなくてもよい。この場合、夏期においては、雨水タンク56又はその雨水タンク56の貯留水と居室32の空気との間で熱交換が行われることにより、居室32に冷房効果を付与することが可能となる。これにより、省エネルギ効果を得ることができる。
【0088】
(8)雨水タンク56には、貯留水をトイレの便器に供給するための配管や、貯留水を消火用の貯水タンクに供給するための配管が接続されていてもよい。つまり、雨水タンク56に貯留された雨水は、建物10において中水としてトイレにて使用されてもよく、火災発生時において消火に用いられてもよい。
【0089】
(9)雨水タンク56が設置される建物10は、木造軸組工法や枠組壁工法により構築された建物とされていてもよい。この場合、雨水タンク56は、工場において先付けされるのではなく、建築現場において建物10の躯体に対して取り付けられる。
【符号の説明】
【0090】
10…建物、11…基礎、12…建物本体、20…建物ユニット、20A…アルコーブユニット、21…建物躯体としての柱、23…囲い梁部を構成する床大梁、29…建物外壁としての外壁、31…アルコーブ、34…アルコーブ袖壁部、34a…タンク設置スペースとしての内部空間、38…外壁面材、39…内壁面材、51…囲い梁部を構成する中間梁、54…囲い梁部を構成する袖壁梁片、55…囲い梁部を構成する袖壁梁連結フレーム、56…雨水貯水装置を構成する雨水タンク、66…雨水貯水装置を構成する雨水配管としての接続管、67…放水管、75…オーバーフロー排水口、76…排出配管としてのオーバーフロー管、79…放水駆動手段としての放水駆動部、81…温度判定手段及び制御手段としてのコントローラ、82…外気温度検出手段としての外気温度センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外面を流れる雨水が流れ込む雨水配管と、該雨水配管を通じて流れ込んだ雨水を貯める雨水タンクとを有する雨水貯水装置を備えており、
建物外壁において外壁面材の屋内側には、前記雨水タンクが設置されたタンク設置スペースが設けられており、
前記タンク設置スペースにおいては、建物躯体により支持された状態で前記雨水タンクが設置されていることを特徴とする雨水貯水装置を備えた建物。
【請求項2】
柱及び梁からなる鉄骨ラーメン構造の建物ユニットが複数連結された構築されたユニット式の建物であって、
前記柱及び前記梁は前記建物躯体に含まれており、
前記雨水タンクは、前記柱及び前記梁の少なくとも一方により支持されていることを特徴とする請求項1に記載の雨水貯水装置を備えた建物。
【請求項3】
前記建物ユニットにおいて前記雨水タンクが、前記柱及び前記梁よりもユニット外側とならないように配置されていることを特徴とする請求項2に記載の雨水貯水装置を備えた建物。
【請求項4】
前記建物ユニットにおける床部分には、前記雨水タンクの下端部を囲むようにして囲い梁部が設けられていることを特徴とする請求項2又は3に記載の雨水貯水装置を備えた建物。
【請求項5】
前記建物躯体を有する建物本体が建物基礎の上に載置されており、
前記タンク設置スペースは、前記建物基礎の上面の上方に設けられており、
前記雨水タンクは、前記建物基礎の上面にて前記雨水タンクからの荷重が支えられた状態で載置されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の雨水貯水装置を備えた建物。
【請求項6】
前記建物外壁の屋外側には、該建物外壁の屋外面が屋内側に向けて凹むことで形成されたアルコーブが設けられており、
前記アルコーブは、アルコーブ空間を挟んで両側に配置されたアルコーブ袖壁部を有しており、
前記タンク設置スペースは、前記アルコーブ袖壁部の内部空間により形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の雨水貯水装置を備えた建物。
【請求項7】
前記雨水タンクの貯水量が所定の満タン量になった場合に、前記雨水配管を流下する雨水を建物周囲の地中排水部側に向けて排出する排出配管を備え、
前記排出配管が、前記タンク設置スペース内に前記雨水タンクと共に設けられていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の雨水貯水装置を備えた建物。
【請求項8】
前記排出配管は、前記雨水配管において前記雨水タンクよりも上流側部分から分岐して設けられ、
前記雨水配管から前記排出配管が分岐する分岐部分には、前記雨水タンクの貯水量が前記満タン量に到達する以前は前記雨水タンクへの雨水の流入を許容し、前記雨水タンクの貯水量が前記満タン量に到達した後は前記雨水タンクへの雨水の流入を禁止するとともに前記排出配管への雨水の流入を許容するように雨水経路を切り替える経路切替手段が設けられていることを特徴とする請求項7に記載の雨水貯水装置を備えた建物。
【請求項9】
外気温度を検出する外気温度検出手段と、
前記外気温度検出手段により検出された外気温度があらかじめ定めた判定値よりも大きくなったか否かを判定する温度判定手段と、
前記雨水タンクに設けられ、該雨水タンクから屋外側に水を放出する放水管と、
前記放水管からの駆動放水を行う放水駆動手段と、
前記温度判定手段により検出された前記外気温度が前記判定値よりも大きくなった場合に、前記放水駆動手段を駆動させて前記放水管からの放水を行う制御手段と、
を備えていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の雨水貯水装置を備えた建物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−72205(P2013−72205A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211370(P2011−211370)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(504093467)トヨタホーム株式会社 (391)