説明

雨水貯留装置

【課題】上記課題に鑑みてなされたものであり、雨水を貯留し、不純物等を沈殿させ、さらに濾過するとともに渟水を防ぎ、良質の水を備蓄可能な雨水貯留装置を提供することである。
【解決手段】雨水を貯留し前記雨水が含む不純物を沈殿させる貯留・沈殿槽と、前記貯留・沈殿槽の水を受け入れて濾過する濾過槽と、前記貯留・沈殿槽内の水位が所定位置よりも上昇したとき、前記貯留・沈殿槽内の水をサイフォン現象で外部に排出する第1の排出手段と、前記濾過槽内の水位が所定位置よりも上昇したとき、前記濾過槽内の水をサイフォン現象で外部に排出する第2の排出手段と、を有し、前記第1の排出手段の吸入口を、前記貯留・沈殿槽内に沈殿する不純物の位置に設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨水を貯留して濾過する雨水貯留装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、東京を初めとする巨大都市ばかりか地方の中規模都市にも高層共同住宅が建設されている。しかし、今回の「東日本大震災」でも明らかに成った様に、日本の電力供給が如何に不安定な状態であるかが分かった。加えて、「東海・東南海・南海地震の同時発生」や「首都圏直下形地震」が叫ばれているが、若し、これが現実なものとして発生したら、停電や断水が起こることは必定であろう。
【0003】
行政や地震対策を叫ぶ学者達は「3日間の飲料水と食料の備蓄を」と呼び掛けているが、その3日後の飲料水の入手は如何(どう)するのであろうかと疑問を感じないでは居られない。高層共同住宅に居住している人々は、福島第一原発の事故を体感する以前は、普段何の疑いもなく使用していたエレベーターだが、以後はその停止の不安を感じているものと推察する。実際に停電と同時に断水が発生したら毎日その階から地上に下りて水を貰い受け、また高層階まで担ぎ上げなければならないだろう。その行為は健常者にとっても「苦痛以外の何物でもないだろうと」推察する。況してや、足に障碍の有る人や高齢者にとっては耐えられない行為であろう。
【0004】
これに対し、特許文献1や特許文献2では、雨水の貯留、利用について提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−128622号公報
【特許文献2】特開2002−167813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、雨水には思いの外不純物が含まれているのでそれを濾過して除去しなければならない上、沈殿した不純物を自然の力で排出すること、貯留された水に虫を侵入させないこと、光合成に因る藻の発生を防ぐこと、渟水(例えば水が長期間に亘って滞留すること)を起こさせないこと、高層階に設置した貯水槽や濾過槽が地震に因り飛翔し、二次災害を起こさせないことを念頭に置き、工夫が必要である。
【0007】
ところが、特許文献1や特許文献2では、特に、渟水の問題については、何ら検討されていないものであった。
【0008】
出願人は、高層共同住宅の各階層に住む個人所有者、賃借者を問わず、個々のベランダを利用して、各々、夫々の人が、「雨水貯留・沈殿槽」及び「雨水濾過槽」を設置し、雨水を直接的に利用出来る様にとの思いで、本発明に至った。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、雨水を貯留し、不純物等を沈殿させ、さらに濾過するとともに渟水を防ぎ、良質の水を備蓄可能な雨水貯留装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、雨水を貯留し前記雨水が含む不純物を沈殿させる貯留・沈殿槽と、前記貯留・沈殿槽の水を受け入れて濾過する濾過槽と、前記貯留・沈殿槽内の水位が所定位置よりも上昇したとき、前記貯留・沈殿槽内の水をサイフォン現象で外部に排出する第1の排出手段と、前記濾過槽内の水位が所定位置よりも上昇したとき、前記濾過槽内の水を自然流下で外部に排出する第2の排出手段と、を有し、前記第1の排出手段の吸入口を、前記貯留・沈殿槽内に沈殿する不純物の位置に設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、雨水を貯留し、不純物等を沈殿させ、さらに濾過するとともに渟水を防ぎ、良質の水を備蓄可能な雨水貯留装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明による雨水貯留装置の一実施の形態を示す平面図である。
【図2】図1に示した雨水貯留装置の正面図である。
【図3】本発明による雨水貯留装置の別の実施の形態の平面図であり、縦置きである「貯留・沈殿槽」110と「濾過槽」160とを見やすさのため、上下において示す図である。
【図4】図3に示した雨水貯留装置を縦置きにしての正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
雨水貯留装置の課題として、貯留された水が長期に亘り使用されないと渟水を起こすおそれが有る点、また雨水に含まれている不純物も底部に設けた排水口を開放し、人為的に排出しなければならない点が挙げられる。従来、この問題は、特に、多層階住宅に於いて、下層居住者に不快感を与えることになり、不向きに思われる。
【0015】
図1は、本発明による雨水貯留装置の一実施の形態を示す平面図である。また図2は、図1に示した雨水貯留装置の正面図である。図1および図2では、内部構造が見えるように、外壁を切り欠いて見せている。この図1および図2の例では、「貯留・沈殿槽」110と「濾過槽」160とを並列配置している。「貯留・沈殿槽」110および「濾過槽」160のそれぞれは、例えば、直径50cm、高さ70cm程度の蓋付きのポリ容器で構成することができる。これらの容器、蓋はすべて内部を遮光する。
【0016】
本発明の雨水貯留装置100に於ける雨水貯留方式は、通常の雨に於いては、降雨と共に縦樋に流れ下る雨水の全量を導入管で「貯留・沈殿槽」110に導き、水面が上昇し、それに伴い常水面以上の水は「送水管(1)」111で「濾過槽」160に送られるが、やや強い雨が降ると、「沈澱物排出管」112からも貯留水が吸入され、「放流管(1)」113を通じて別系統でも放流させることが出来る。更に強い雨が降ると、水面は上昇し「放流管(1)」113の中の空気が滅失しサイフォン現象が発生する。そのとき、容器内底(「貯留・沈殿槽」110の底)に沈殿した汚泥も激しい勢いで吸い込み、容器(「貯留・沈殿槽」110)の外へ排出させることが出来る。これは自然現象の一環であるから、下層階の居住者に不快感を起こさせないばかりか、この装置(雨水貯留装置100)が役目を果たしている限り、容器(「貯留・沈殿槽」110)内の清掃等に手を付ける必要は無い。只、このサイフォン現象を放置すると容器内の水の大方が失われてしまうので、「放流管(1)」113の適当な高さに空気孔114を設けてその現象を止める必要がある。それが、サイフォン停止水面の空気孔114である。
【0017】
また、豪雨の時は、「放流管(1)」113及び、「濾過槽」160を介しての放流量を超えるので、容器(「貯留・沈殿槽」110)の上縁116より溢水させるのが最善であるゆえ、容器(「貯留・沈殿槽」110)上縁116とその蓋115との間には適当な空隙が必要である。しかし、そこには水を求めて侵入して来る虫を防ぐ為の虫除けの「多毛材」117を貼り付けるのが好ましい。蓋115のほぼ中央には「雨水導入管」118が貫通しており、この「雨水導入管」118を介して、雨水が「貯留・沈殿槽」110内に流れ込む。
【0018】
なお、強雨及び豪雨の時、「雨水導入管」118より「貯留・沈殿槽」110内に流入した水が、容器底に溜まった沈殿物への影響を極力緩和させることを目的として、「雨水導入管」118の下部には「流勢緩和籠119」を取付ける。また、容器の底120は中央部を高くし、貯留水内の不純物が周辺部に円滑に移動しやすい様に底面には凹みを設けない。
【0019】
「沈殿物吸入管」121はその「端末」122を塞ぎ、適当な間隔で「沈殿物吸入口」123を設け、沈殿域全体より平均的に吸入出来る様にする。また「沈澱物吸入管」121は横引なる故、設置時に管内の空気に拠る浮力を抑えること、及び以後の底部への居つきを良くする目的で「吸入管押え」124を適当に配置する。
【0020】
「濾過槽」160へ水を送る「吸入管」125の給水口は渟水を作らない為に下部に設け、「濾過槽」160へ水を送る「送水管(1)」111の高さは「放流管(1)」113の横引管の高さより若干下げることに拠り、平常時の降雨では「濾過槽」160にのみ水を送ることが出来る。
【0021】
また、「貯留・沈殿槽」110を「濾過槽」160と並列配置する場合、「貯留・沈殿槽」110より直接貯流水を取出す必要があるので、容器(「貯留・沈殿槽」110)下部に「雨水取出水栓」126を設ける。この場合容器内の貯留水には水圧が無いので、固定コマ水栓かコック(活栓)を用いる必要がある。
【0022】
以下、「濾過槽」160の構造について説明する。
【0023】
この「濾過槽」160の構造を説明すると、容器は「貯留・沈殿槽」110とほぼ同形と考えて良いが、「貯留・沈殿槽」110との違いは、容器底の水の流れを中央に集めたい点にある。従って、容器底全体を平面にするか、底央をやや凹面にするかの必要がある。
【0024】
先ずは、「濾過槽」160において、「貯留・沈殿槽」110の「雨水取出水栓」126と同じ位置に、濾過水を取り出す固定コマ水栓やコックなどの「取出水栓」162を取り付け、次に「異径管」163の太管の部分に釣鐘形の穴を適当に開け、その穴が「吸水口」165になるように容器中央に伏せ、其の上部の細管に適合した「異径ソケット」164を更に組み合わせ、サイフォン現象防止の為の「空気孔」166を持った「送水管(2)」167を「異径ソケット」164に接続し、「取出水栓」162に固定の「バルブソケット」168の下部まで綺麗に水で洗浄された(瀘材は全て綺麗に水で洗浄された物を使用するので以後この説明は省く)川砂利(粒度3mm〜25mm)を敷き詰めて「川砂利層」169を形成し、集水の為の「網目管」170(商品名「プラスチックメッシュパイプ」)を其の「バルブソケット」167に接続させ、更に其の網目管と直角方向に適当な間隔で容器の外周に見合った長さの「網目管」170を配置する。この目的は「濾過槽」160内の水を広い範囲から集めることと、且つ速やかに取出す為である。そして、其の「網目管」170のズレや変形を防ぐ様に更に「川砂利層」169で「網目管」170を包む様に嵩上げする。
【0025】
その上に上部層の濾過材が下部層に混入することを防止する目的の「隔異濾材(イ)」171を敷き、この場合「隔異濾材(イ)」171は中央に縦管に見合った穴の有るシートであり、以後これを有穴隔異瀘材とも言う。
【0026】
この「有穴隔異瀘材」171の上には、楔形に切断破砕された木炭の切片を適当な高さまで敷き詰める。この「木炭層」172を敷く目的は、木炭が持つ微小且つ多孔の穴に水の匂い成分を吸着させることである。従って、この層を通過させることに拠り、無味無臭の水が得られることになる。故に、この層では、この木炭と水との接触面が多く成る様に木炭を数センチの長さに切断し、年輪方向と直角に鏨で破砕し楔形に加工した物を使用する。
【0027】
その上に上述の有穴隔異瀘材と同様の「隔異瀘材(ロ)」173を敷き、さらにその上に小粒砂利(粒度5mm〜12mm)を敷き、「小粒砂利層」174を形成する。
【0028】
例えば酸性雨のように還元が必要な場合、この「小粒砂利層」174を、大理石等の石灰岩質で形成することによって、中和が可能な場合がある。
【0029】
その上に上述の有穴隔異瀘材と同様の「隔異瀘材(ハ)」175を敷き、さらにその上にビリ(商品名=天竜の川砂利)(粒度2mm〜9mm)を敷き、「ビリ層」176を形成する。
【0030】
その上に上述の有穴隔異瀘材と同様の「無穴隔異瀘材(ニ)」177を敷き、粗砂(川砂)(粒度0.5mm〜5mm)を「放流管(2)」185に取り付けた「バルブソケット」179の下部まで敷いて「粗砂層」178を形成し、縦管に「送水管(2)」167の曲管を取付け「送水管(2)」167を横引し「バルブソケット」179に接続させ、更に粗砂を「横引送水管(2)」180が充分隠れる程度まで敷く。
【0031】
その上に上述の有穴隔異瀘材と同様の「隔異瀘材(ホ)」181を敷き、細砂(珪砂=石英)(粒度0.5mm)を適当な厚さに敷いて「細砂層」182を形成し、さらにその上に「最上瀘材」183を敷き、濾材を押さえる重石の役割を兼ねた「多孔拡散板」184を載せ、槽内は完成する。「多孔拡散板」184は、例えば薄い円板状のステンレス製或いはプラスチック製で、複数の孔を開けたものを用いる。
【0032】
尚、隔異瀘材に強度が必要な面にはプラスチック網を用いるのが最適であり、微小瀘材の下部層への混入を防ぐには、ポリエステル不織布が水で溶解することもなく最適である。
【0033】
次に、図1および図2に示した並列配置の場合の使用方法及び水の流れについて説明する。
【0034】
先ず、「濾過槽」160の「放流管(2)」185の「止水弁」186は常時は開放にして置く。
【0035】
「貯留・沈殿槽」110から「送水管(1)」111によって「濾過槽」160へと送られて来た水は「多孔拡散板」184の上に放流される。この「多孔拡散板」184は「細砂層」182の表面全体に広く水を拡散させることを目的とする。
【0036】
「細砂層」182及び「粗砂層」178に取り込まれた水は重力では殆んど移動しないことが実験の結果分かった。従って、特定の流路を作らせない様にと考えた。そうすれば水は「細砂層」182全域を通過し幾筋かの流れの中で、雨水の中の微粒物が細砂の表面に付着することが期待できる。
【0037】
また、下部の「粗砂層」178は更にそれを補うことが期待出来る。そして「ビリ層」176、「小粒砂利層」174の中に30%〜40%の水が留保されるが、これは潜水(濾過材の中に留保された水)と考えて差支えがない。「木炭層」172に於いても50%の水が留保されるが、遮光された水は光合成が起きないので藻類の発生はない。従って、これらの水は貯留水の一部となる。
【0038】
また、上層の砂層内に取込まれた水は重力では移動しない故、「放流管(2)」185の「止水弁」186が開放されていると、「止水弁」186を介して「横引送水管(2)」180に空気が入り、その「空気孔」166を通じて「濾過槽」160内下部に直接に空気が取込まれる結果となり、「濾過水取出水栓」162からの水の取出しがより円滑なる。
【0039】
断水が発生した非常時には「濾過槽」160の「止水弁」186を止め、「濾過槽」160の「蓋」187を開け、隣の「貯留・沈殿槽」110の「雨水取出水栓」126より得た水を「多孔拡散板」184の上に静かに放流し「濾過槽」160に充分に水を溜めてから使用するのがよい。
【0040】
「濾過槽」160とその蓋187との間には、水を求めて侵入して来る虫を防ぐ為の虫除けの「多毛材」188を貼り付けるのが好ましい。
【0041】
ところで、濾紙(「濾材」183)の交換はその汚れ具合を見て判断するのが良いが、月に1度程度の交換を行うのが望ましい。
【0042】
また、「細砂層」182の洗浄は半年に1度位の割合で掬い出し、「自宅厨房の流し」で米を研ぐ要領で不純物を洗い流し、元の色(例えば白色細砂を用いた場合には、その白色)に戻ったかを視認し再使用する。
【0043】
また、「粗砂層」178の洗浄は数年に1度の割合で掬い出し、「自宅厨房の流し」で米を研ぐ要領で不純物を洗い流すのが望ましい。
【0044】
次に、本発明の別の実施の形態について説明する。
【0045】
図1に示した雨水貯留装置100では、「貯留・沈殿槽」110と「濾過槽」160とを横に並べて並列配置したが、本実施の形態の雨水貯留装置101では、「貯留・沈殿槽」110を上にし、「濾過槽」160を下にして縦に並べて直列配置する。
【0046】
図3は、本発明による雨水貯留装置の別の実施の形態の平面図であり、縦置きである「貯留・沈殿槽」110と「濾過槽」160とを見やすさのため、上下において示す図である。また図4は、図3に示した雨水貯留装置を縦置きにしての正面図である。
【0047】
この実施の形態は、図1および図2の「貯留・沈殿槽」110と「濾過槽」160とを縦置き(直列型)にした点で相違するものの、他の構造はほぼ同様であるので、同じ参照番号を付して、各構造の詳しい説明は省略する。また、「濾過槽」160の濾材についても図1および図2と同様であるので詳しい説明は省略する。
【0048】
以下に、図3および図4に示した直列配置の場合の使用方法及び水の流れについて説明する。
【0049】
先ず、上部に設置した「貯留・沈殿槽」110の「雨水取出管」132の「止水弁(1)」133は閉め、下部に設置した「濾過槽」160の「放流管(2)」185の「止水弁(2)」186は開放の状態を確認する。このとき、当然のことながら、「濾過水取出水栓」162も閉じておく。
【0050】
常時の雨に於いては、「雨水導入管」118より「貯留・沈殿槽」110に入った雨水は「吸入管」125の吸水口より「送水管(1)」111を通り、「濾過槽」160の「給水管」161より「多孔拡散板」184の上に放流され、「濾過槽」160の各濾過層を通過し、濾過槽底部の「吸水口」165より飲込まれ「送水管(2)」167を通り、「止水弁(2)」186を貫け「放流管(2)」185より放流される。
【0051】
強雨に於いては、1系統は上記の水の流れに成るが、上記の系統だけでは処理出来なく成ると、「貯留・沈殿槽」110内の水面は上昇し、「沈殿物吸入管」121の「吸入口」123より水と汚泥を吸い込み、「沈殿物排出管」131を通り「放流管(1)」113より放流が開始される。
【0052】
強雨が更に続くと、その水面が上昇し、やがて「放流管(1)」113内の空気が滅失しサイフォン現象が発生し、槽内に沈殿した不純物を強力な吸引力で、「沈澱物吸入管」121が吸込み、放流口より排出される。このときのサイフォン現象としては、高所に置かれた「貯留・沈殿槽」110の水面とベランダ床面との間には相当の落差が有るので、その吸引力はかなりのものが期待できる。
【0053】
豪雨に於いては、並列型でも説明した通り、「貯留・沈殿槽」110の容器上縁より溢水されるが、サイフォン現象に拠る放水量がかなり期待できるので、この直列型の方が、溢水回数は並列設置形よりも少なく成るものと思われる。
【0054】
「濾過槽」160よりの常時の水の取出しは、「濾過槽」160内にもかなりの水が留保されているので、通常に飲料水として使用するには不足は無いものと思われる。だが、「濾過槽」160内に水が不足した場合、「貯留・沈殿槽」110の「雨水取出管」132に設けられた「止水弁(1)」133を開放し、「送水管(2)」134に水を送り補給すれば良い。このとき必要量を確保した後、その「止水弁(1)」133の弁を閉めることを忘れないことが肝心である。
【0055】
断水時は、水の使用頻度が増すので、先ず、「濾過槽」160の「放流管(2)」185の「止水弁(2)」186を閉じ、「濾過槽」160の「容器蓋」187を開放し、「貯留・沈殿槽」110の「止水弁(1)」133を開き目視の状態で「最上瀘材」183の上端まで水が上がったことを確認し、「止水弁(1)」133を閉め、必要に応じてその繰り返しを行うのが望ましい。
【0056】
その後、雨が降って来たら、「濾過槽」160の「止水弁(2)」186は直ちに開放し、通常の水の流れに戻す。本発明によれば、少しの降雨でも意外なほどの多くの雨水を取り込むことが可能となる。
【0057】
次に、各構成の特徴についてさらに詳しく説明する。
(1)「貯留・沈殿槽」110
・素材は金属またはプラスッチックで作製するが、プラスチック製の場合表面面に遮光塗料を塗り、貯留水に光合成を起こさせない。
【0058】
・樋に流れる雨水の全量を取込み、次の濾過槽へ送り込み、渟水を起させない。
【0059】
・槽内に沈殿された汚泥をサイフォン現象(自然現象)の力により汚泥を排出することができる。従って、装置を人為的に清掃する必要が無い。
(2)「濾過槽」160
・隔異瀘材に拠り、各濾過材が混合することが無いので、ぞれぞれの濾過材の持つ特質を充分に発揮させることが出来る。
【0060】
・隔異濾材に拠り、濾過材が混合することが無いので、分解、再生が容易であり、引越し、移設にも便利ある。
【0061】
・雨水は、濾過層を通過しながら濾過されるが、降雨の停止と共に層内に潜水として保留され、濾過槽内にも可なりの水を蓄えることが出来る。
【0062】
・前項の蓄えられた水も、降雨と共に渟水を起すことなく、送水管を貫け、直接槽外に排出されるので、槽内に蓄えられた水は其の都度、新鮮な水に入れ替わる。
【0063】
・送水管のビリ層部にも通気孔が有るので、その高さでサイフォン現象を停止させる事が出来ると共に、放流管を介して直接ビリ層への空気を送る事も出来る。しかし、「貯留・沈殿槽」の水を人為的に「濾過槽」に移す時は、止水弁を閉めること。また、其の行為を止めた時は、止水弁を開くことが肝要である。
【0064】
・最上濾過材の位置が人体に対して適した高さ故、濾紙の交換が極めて遣り易い。
【0065】
・細砂も珪砂(石英の微粒子)を使うことで、珪砂が白色である故その汚染度が視認し易い。
【0066】
・細砂層が送水管の横引管より上にあり、しかも隔異瀘材で分離されているので、細砂を掬い出して、洗浄が容易である。
【0067】
以上、本発明を説明したが、本発明は、この説明に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で数々の変形および組み合わせが出来ることは勿論である。
【符号の説明】
【0068】
100、101 雨水貯留装置
110 貯留・沈殿槽
160 濾過槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雨水を貯留し前記雨水が含む不純物を沈殿させる貯留・沈殿槽と、
前記貯留・沈殿槽の水を受け入れて濾過する濾過槽と、
前記貯留・沈殿槽内の水位が所定位置よりも上昇したとき、前記貯留・沈殿槽内の水をサイフォン現象で外部に排出する第1の排出手段と、
前記濾過槽内の水位が所定位置よりも上昇したとき、前記濾過槽内の水をサイフォン現象で外部に排出する第2の排出手段と、
を有し、
前記第1の排出手段の吸入口を、前記貯留・沈殿槽内に沈殿する不純物の位置に設けた
ことを特徴とする雨水貯留装置。
【請求項2】
前記貯留・沈殿槽と前記濾過槽とを並列配置したことを特徴とする請求項1に記載の雨水貯留装置。
【請求項3】
前記貯留・沈殿槽を上にして、前記貯留・沈殿槽と前記濾過槽とを直列配置したことを特徴とする請求項1に記載の雨水貯留装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−104211(P2013−104211A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248220(P2011−248220)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(594066497)