説明

雲台

【課題】重量平衡機構に備えたスプリングにあらかじめ弾性力を付与するときの操作の負担を軽減することのできる雲台を提供すること。
【解決手段】雲台1において、弾性力調節機構15は、回転操作部16と、この回転操作部に結合され、回転操作部の回転にともなってスライドするカム17と、このカムが有するカム面23に接触するカムフォロア18とを備え、カムフォロアは、重量平衡機構5に支持されており、重量平衡機構では、カムフォロアがカムと接触する位置によってスプリングに付与される弾性力の大きさが可変とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搭載される撮影機器が傾動する際に発生する回転モーメントと平衡可能に抗力を発生させる雲台に関する。
【背景技術】
【0002】
ビデオカメラや映画用カメラなどの撮影機器は、雲台を介して三脚に取り付けられる。撮影機器には、被写体の動きに合わせた水平面内および垂直面内の移動が要求されることから、雲台には、それらの移動を実現するための機構が組み込まれている。また、雲台では、撮影機器の移動操作をスムーズなものとするために、水平面内の回転に対しては緩衝機構が、垂直面内の傾動に対しては緩衝機構および重量平衡機構が設けられている。緩衝機構および重量平衡機構のいずれも、撮影機器の移動をほぼ一定の操作力で行うことができるようにしている。
【0003】
重量平衡機構は、雲台に搭載される撮影機器が垂直面内を傾動する際に発生する回転モーメントと平衡可能に抗力を発生するものである。抗力の発生方式は、スプリングによるものが一般的である。
【0004】
ところで、撮影機器の重量はまちまちであり、このため、重量平衡装置には、スプリングに発生させる弾性力を撮影装置の重量に対応させて適当な大きさに調節することが要求される。
【0005】
このような要求に対して、下記特許文献1に記載された雲台では、内部ギアによって回転する親ネジが、座に対するスライド部材の位置を調節し、異なる重量のカメラに適応するようにスプリングの初期圧縮状態を調節するようにしている。また、特許文献1に記載された雲台では、下部ハウジングの側壁から突出して設けられたホイールの回転操作によって、ピニオンを介して内部ギアが回転する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国公開特許公報US 2010/0243851 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された雲台については、ギア比の設定により、ホイールの回転に必要な操作力をある程度軽減させることができるが、ホイールを回す量が増大するという問題がある。また、ホイールの回し終わり近くになると、スプリングに弾性力が蓄積されているので、ホイールの回転に要する操作力が増大するという問題もある。このようなホイールの回転量および操作力の増大は、撮影機器の操作者に負担を課すことになる。
【0008】
本発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、重量平衡機構に備えたスプリングにあらかじめ弾性力を付与するときの操作の負担を軽減することのできる雲台を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の雲台は、傾動可能とされ、撮影機器が搭載可能な取付台と、スプリングを備え、取付台に搭載される撮影機器が傾動する際に発生する回転モーメントと平衡可能に弾性力がスプリングに発生する重量平衡機構と、取付台に搭載される撮影機器の重量に対応させ、重量平衡機構の前記スプリングにあらかじめ弾性力を付与する弾性力調節機構とを備えた雲台において、弾性力調節機構は、回転操作部と、この回転操作部に結合され、回転操作部の回転にともなってスライドするカムと、このカムが有するカム面に接触するカムフォロアとを備え、カムフォロアは、前記重量平衡機構に支持されており、重量平衡機構では、カムフォロアがカムと接触する位置によってスプリングに付与される弾性力の大きさが可変とされていることを特徴としている。
【0010】
この雲台においては、カムのカム面は湾曲面であり、このカム面では、カムフォロアとの接触の基準位置から回転操作部の回し終わりの位置にかけて、湾曲面へ仮想的に引いた接線のカムのスライド方向に対する傾きが次第に小さくなっていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の雲台によれば、重量平衡機構に備えたスプリングにあらかじめ弾性力を付与するときの操作の負担が軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の雲台の一実施形態を示した要部斜視図である。
【図2】図1に示した雲台の断面を概略的に示した要部断面図である。
【図3】図1に示した雲台のカムを示した要部側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の雲台の一実施形態を示した要部斜視図である。図2は、図1に示した雲台の断面を概略的に示した要部断面図である。
【0014】
雲台1では、水平に配置される基部2に縦フレーム3が設けられている。縦フレーム3は、基部2に対して垂直上方に延びている。ビデオカメラや映画用カメラなどの撮影機器を搭載可能とした取付台4は、縦フレーム3により垂直面内を傾動自在に支持されている。取付台4は、図1では図示を省略している。重量平衡機構5は、取付台4と相対的に垂直面内を傾動自在に設けられ、縦フレーム3に支持されている。すなわち、重量平衡機構5は、取付台4の傾動方向と反対方向に傾動するようになっている。
【0015】
重量平衡機構5は、図2に示したように、スプリング6を備えている。スプリング6は、図1では図示を省略している。スプリング6は、垂直方向に配置された中心軸7の外周に配置されている。また、スプリング6は、中心軸7の上端にねじ止めにより固定されたエンドキャップ8と、縦フレーム3の側面部に設けられた、図1に示した軸受け9にピン10を介して回動自在に支持された座11との間に設けられ、エンドキャップ8と座11の間で伸縮可能とされている。図1に示したように、ピン10は、座11の外側方に突出している。伸縮によってスプリング6には弾性力が発生し、弾性力は、撮影機器が傾動する際に発生する回転モーメントと平衡可能に作用する。重量平衡機構5は、ピン10が軸受け9に回動自在に支持されているため、垂直面内をスムーズに傾動する。
【0016】
中心軸7は、座11の中心部を上下方向に貫通しており、座11に対して上下にスライド可能とされている。座11では、その中心部に、上方に突出する筒部12が座11と一体に設けられ、中心軸7は筒部12内を上下方向に貫通し、中心軸7のスライドが筒部12によってガイドされる。
【0017】
また、重量平衡機構5では、図2に示したように、中心軸7の下端に支持軸13がピン14を介して連結され、支持軸13は、中心軸7の下方に延びている。支持軸13が下方に移動すると、中心軸7が下方にスライドし、エンドキャップ8と座11の間の距離が短くなり、スプリング6が収縮する。逆に、支持軸13が上方に移動すると、中心軸7が上方にスライドし、エンドキャップ8と座11の間の距離が長くなり、スプリング6は元の長さに戻る。
【0018】
また、雲台1は、重量平衡機構5のスプリング6にあらかじめ弾性力を付与する弾性力調節機構15を備えてもいる。弾性力調節機構15は、回転操作部16と、カム17と、カムフォロア18とを備えている。回転操作部16は、雲台1の外郭を形成するケーシング(図示なし)の外側に配置され、撮影機器の操作者の手指で握ることのできる握り19を有している。握り19は、回転操作部16の外側に突出して設けられている。このような回転操作部16は、左右両方向の回転が可能とされている。
【0019】
カム17は、左右一対として設けられており、回転操作部16側に位置する一端部において連結部20により連結されている。連結部20には、その中央部に雌ネジが形成されている。この雌ネジには、回転操作部16の裏面側から後方に突出して設けられた雄ネジ21が螺合している。カム17では、回転操作部16側に位置する下面が切り上げられ、切欠部22が形成され、切欠部22の上端から回転操作部16と反対側の下面にはカム面23が形成されている。カム面23は、下方に突出する湾曲面とされ、なだらかに下っている。カム17は、回転操作部16を回転させ、雄ネジ21が連結部20の雌ネジに進入すると、回転操作部16側に引き寄せられる。回転操作部16を逆回転させ、雄ネジ21が連結部20の雌ネジから外れていくと、回転操作部16から遠ざかるように移動する。このようなカム17の移動は、水平なスライドとして実現される。カム17の水平なスライドをより確実とするために、弾性力調節機構15では、カム17のスライド方向の前後に1本ずつガイドピン24が設けられている。ガイドピン24は、円柱状のピンであり、縦フレーム3の側面に対して垂直方向に配置され、左右一対のカム17の上端面に接触している。カム17の上端面は平面状とされている。ガイドピン24は、縦フレーム3との接続部にブッシュ(図示なし)が設けられ、回転自在となっている。ガイドピン24にガイドされてカム17は水平にスライドする。
【0020】
カムフォロア18は、円柱状のピンであり、重量平衡機構5に設けられた支持軸13の下端部を貫通し、支持軸13に支持されている。カムフォロア18は、ガイドピン24と平行に配置され、カム17のカム面23に接触している。カムフォロア18は、円柱状のピンであることから、カム面23との接触は滑らかである。カムフォロア18の基準位置は、カム17の切欠部22の頂部とされている。カム面23は、上記のとおり、下方に突出し、なだらかに下る湾曲面であるので、回転操作部16の回転操作によってカム17が回転操作部16側に引き寄せられると、カムフォロア18は、カム面23に沿って下方に移動する。このカムフォロア18の下方への移動によって、重量平衡機構5に設けられた支持軸13が引き下げられ、中心軸7が下方にスライドすることから、スプリング6は、エンドキャップ8と座11の間で圧縮され、スプリング6に弾性力が付与される。カムフォロア18が、カム面23に沿ってさらに下方に移動すると、スプリング6はさらに圧縮され、スプリング6に付与される弾性力は次第に大きくなる。一方、回転操作部16を逆回転させると、カム17が回転操作部16から遠ざかるようにスライドするので、カムフォロア18は、カム面23に沿って上方に移動する。重量平衡機構5に設けられた支持軸13は押し上げられ、中心軸7が上方にスライドし、スプリング6の圧縮は次第に解放される。そして、カムフォロア18の基準位置では、スプリング6は初期状態に戻る。
【0021】
このように、重量平衡機構5では、カムフォロア18がカム17と接触する位置によってスプリング6に付与される弾性力の大きさが可変とされている。取付台4に搭載する撮影機器の重量に応じた弾性力をスプリング6にあらかじめ付与することができる。しかも、弾性力の大きさは、カム17とカムフォロア18を備えた弾性力調節機構15によって調節されるため、回転操作部16の回し始めから回し終わりまでの操作力はほぼ一定とすることができ、重量の重い撮影機器への対応も容易である。また、回転操作部16の回転量もさほど大きくはない。したがって、雲台1では、重量平衡機構5に備えたスプリング6にあらかじめ弾性力を付与するときの操作の負担が軽減される。
【0022】
図3は、図1に示した雲台のカムを示した要部側面図である。
【0023】
カム17のカム面23では、図2に示したカムフォロア18との接触の基準位置から回転操作部16の回し終わりの位置にかけて、湾曲面へ仮想的に引いた接線のカムのスライド方向sに対する傾きが次第に小さくなっている。すなわち、カムフォロア18との接触の基準位置に近い側、カム面23のほぼ中間位置、そして、回転操作部16の回し終わりの位置において、湾曲面へ仮想的に引いた接線をそれぞれl、l、lとすると、接線l、l、lとカム17のスライド方向sに平行な直線mとのなす角θ、θ、θの間には、θ>θ>θの関係がある。このように、カム17のカム面23では、カムフォロア18との接触の基準位置から回転操作部16の回し終わりの位置にかけて、湾曲面へ仮想的に引いた接線のカム17のスライド方向sに対する傾きが次第に小さくなっているので、回転操作部16の回転操作に要する力は、回し終わりに近づくにつれて次第に小さくなり、重量の重い撮影機器への対応がより一層容易となっている。
【0024】
本発明の雲台は、以上の実施形態によって限定されるものではない。取付台や重量平衡機構などの細部については、様々な形態が可能である。
【符号の説明】
【0025】
1 雲台
4 取付台
5 重量平衡機構
6 スプリング
15 弾性力調節機構
16 回転操作部
17 カム
18 カムフォロア
23 カム面
、l、l 接線
s スライド方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾動可能とされ、撮影機器が搭載可能な取付台と、
スプリングを備え、前記取付台に搭載される撮影機器が傾動する際に発生する回転モーメントと平衡可能に弾性力が前記スプリングに発生する重量平衡機構と、
前記取付台に搭載される撮影機器の重量に対応させ、前記重量平衡機構の前記スプリングにあらかじめ弾性力を付与する弾性力調節機構とを備えた雲台において、
前記弾性力調節機構は、回転操作部と、この回転操作部に結合され、回転操作部の回転にともなってスライドするカムと、このカムが有するカム面に接触するカムフォロアとを備え、前記カムフォロアは、前記重量平衡機構に支持されており、
前記重量平衡機構では、前記カムフォロアが前記カムと接触する位置によって前記スプリングに付与される弾性力の大きさが可変とされている
ことを特徴とする雲台。
【請求項2】
前記カムのカム面は湾曲面であり、このカム面では、前記カムフォロアとの接触の基準位置から前記回転操作部の回し終わりの位置にかけて、前記湾曲面へ仮想的に引いた接線の前記カムのスライド方向に対する傾きが次第に小さくなっていることを特徴とする請求項1に記載の雲台。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−113970(P2013−113970A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258852(P2011−258852)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【特許番号】特許第5165786号(P5165786)
【特許公報発行日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【出願人】(390041173)平和精機工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】