説明

電力デマンド方法および電力デマンド装置

【課題】運転計画に基づいて電力消費機器が運転した場合に消費すると予測される電力量を加味して予測消費電力量を算出する電力デマンド方法および電力デマンド装置を提供する。
【解決手段】電力使用量の予測開始時点直近の消費電力量の実測値、機器データ記録手段2に記録された機器情報、および運転計画取得手段3が取得した運転計画に基づいて、所定期間の電力使用量を予測する際の基準条件を設定し、当該基準条件と予測開始時点以降の運転計画とを比較して基準条件に対する変化量を算出し、算出した変化量および機器情報に基づいて所定区間の電力使用量を予測する消費電力量予測手段4を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建物等の施設における電力消費機器の電力消費を計画量以内に抑制するための電力デマンド方法および電力デマンド装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電力デマンド制御は、所定のインターバル内において対象の建物の使用電力量を予測し、当該所定のインターバル終了時に、あらかじめ計画された目標消費電力量を超過しないように電力消費機器の運転を制御するものである。電力消費機器は、例えば建物の中に設置された空調機などであり、こられの電力消費機器は個別の制御プログラムにより起動または停止の制御が行われている。
【0003】
従来の電力デマンド制御は、例えば所定時間経過毎に電力消費機器の消費電力量を取得して積算し、実際に使用した消費電力量を元に予測消費電力量を算出し、算出した予測消費電力量があらかじめ計画された目標消費電力量を超過すると予測される場合には、超過しないように電力消費機器の運転を制御している。具体的には、目標消費電力量の超過量に応じた電力の遮断を示した電力デマンドデータを生成し、オペレータの要求に応じて停止すべき機器を決定し、停止すべき機器の発停優先順位、遮断レベル情報および遮断予定時刻などを提示する電力デマンド装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。これにより、実際の電力消費量を目標電力量以下に抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許平9−215193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の電力デマンド装置は以上のように構成されているので、実際に使用した消費電力量の実績値から使用割合が変化しないことを条件とし、当該実績値から予測消費電力量を算出するため、算出された予測消費電力量の精度が低いという課題があった。すなわち、算出された予測消費電力量に基づいて電力消費機器を制御した場合であっても、あらかじめ計画された目標消費電力量以下に制御することができないという課題があった。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、電力消費機器の使用電力量の実測値に、今後運転計画に基づいて電力消費機器が運転した場合に消費すると予測される電力量を加味して予測消費電力量を算出する電力デマンド方法および電力デマンド装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の請求項1に係る電力デマンド方法は、電力消費機器の少なくとも機器種別および定格電力を含む機器情報を取得して記録するステップと、電力消費機器の運転計画を取得するステップと、予測開始時点直近の消費電力量の実測値、機器情報、および運転計画に基づいて、所定期間の電力使用量を予測する際の基準条件を設定し、当該基準条件と予測開始時点以降の運転計画とを比較して基準条件に対する変化量を算出し、算出した変化量および機器情報に基づいて所定区間の電力使用量を予測するステップとを備えるものである。
【0008】
この発明の請求項2に係る電力デマンド方法は、予測開始時点以降に運転計画に変更が生じたと判定した場合に、変更後の運転計画に基づいて電力使用量を再予測するステップとを備えるものである。
【0009】
この発明の請求項3に係る電力デマンド方法は、電力消費機器の負荷に変化が生じたと判定した場合に、当該負荷に変化が生じた時点の直近の消費電力量の実測値および機器状態を取得して基準条件を再設定し、再設定した基準条件と負荷に変化が生じた時点以降の運転計画とを比較して再設定した基準条件に対する変化量を算出し、算出した変化量および機器情報に基づいて所定区間の電力使用量を再予測するステップとを備えるものである。
【0010】
この発明の請求項4に係る電力デマンド方法は、所定区間を複数の時間帯に分割し、分割した各時間帯の運転計画と基準条件とを比較して初期条件に対する変化およびその変化量を取得し、取得した変化量および電力消費機器の定格電力に基づいて各時間帯の電力使用量を予測するステップとを備えるものである。
【0011】
この発明の請求項5に係る電力デマンド装置は、電力消費機器の少なくとも機器種別および定格電力を含む機器情報を取得して記録する機器情報記録手段と、電力消費機器の運転計画を取得する運転計画取得手段と、電力使用量の予測開始時点直近の消費電力量の実測値、機器情報記録手段に記録された機器情報、および運転計画取得手段が取得した運転計画に基づいて、所定期間の電力使用量を予測する際の基準条件を設定し、当該基準条件と予測開始時点以降の運転計画とを比較して基準条件に対する変化量を算出し、算出した変化量および機器情報に基づいて所定区間の電力使用量を予測する消費電力量予測手段とを備えるものである。
【0012】
この発明の請求項6に係る電力デマンド装置は、予測開始時点以降に運転計画に変更が生じたと判定した場合に、変更後の運転計画に基づいて電力使用量を再予測する消費電力量予測手段を備えるものである。
【0013】
この発明の請求項7に係る電力デマンド装置は、電力消費機器の負荷に変化が生じたと判定した場合に、当該負荷に変化が生じた時点の直近の消費電力量の実測値および機器状態を取得して基準条件を再設定し、再設定した基準条件と負荷に変化が生じた時点以降の運転計画とを比較して再設定した基準条件に対する変化量を算出し、算出した変化量および機器情報に基づいて所定区間の電力使用量を再予測する消費電力量予測手段を備えるものである。
【0014】
この発明の請求項8に係る電力デマンド装置は、所定区間を複数の時間帯に分割し、分割した各時間帯の運転計画と基準条件とを比較して初期条件に対する変化量を算出し、算出した変化量および機器情報に基づいて各時間帯の電力使用量を予測する消費電力量予測手段を備えるものである。
【発明の効果】
【0015】
この発明の請求項1,5によれば、電力消費機器の電力使用量の予測開始時点直近の消費電力量の実測値、機器情報、および運転計画に基づいて、所定期間の電力使用量を予測する際の基準条件を設定し、当該基準条件と予測開始時点以降の運転計画とを比較して基準条件に対する変化量を算出し、算出した変化量および機器情報に基づいて所定区間の電力使用量を予測するように構成したので、電力消費機器の運転計画に応じて電力機器ごとの機器情報を考慮した電力使用量を算出することができ、予測した電力使用量のぶれを抑制することができる。
【0016】
この発明の請求項2,6によれば、予測開始時点以降に運転計画に変更が生じたと判定した場合に、変更後の運転計画に基づいて電力使用量を再予測するように構成したので、電力消費機器の運転計画の状況に応じて電力使用量を予測することができる。これにより、あらかじめ設定された目標電力量を超過することなく、また不要な電力消費機器の遮断や電力の使い過ぎをその都度確認することができる。
【0017】
この発明の請求項3,7によれば、電力消費機器の負荷に変化が生じたと判定した場合に、当該負荷に変化が生じた時点の直近の消費電力量の実測値および機器状態を取得して基準条件を再設定し、再設定した基準条件と負荷に変化が生じた時点以降の運転計画とを比較して再設定した基準条件に対する変化量を算出し、算出した変化量および機器情報に基づいて所定区間の電力使用量を再予測するように構成したので、電力消費機器の負荷の変化に応じて電力消費量を予測することができる。これより、あらかじめ設定された目標電力量を超過することなく、また不要な電力消費機器の遮断や電力の使い過ぎをその都度確認することができる。
【0018】
この発明の請求項4,8によれば、所定区間を複数の時間帯に分割し、分割した各時間帯の運転計画と基準条件とを比較して初期条件に対する変化およびその変化量を取得し、取得した変化量および電力消費機器の定格電力に基づいて各時間帯の電力使用量を予測するように構成したので、電力消費機器の運転計画に基づいてきめ細かに電力使用量を予測することができ、より精度の高い電力使用量を予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施の形態1による電力デマンド装置の構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1による電力デマンド装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】実施の形態1による電力デマンド装置の消費電力量予測手段の動作を示すフローチャートである。
【図4】実施の形態1による電力デマンド装置が記録する機器情報一覧を示す図である。
【図5】実施の形態1による電力デマンド装置が記録する機器の運転スケジュールの一例を示す図である。
【図6】実施の形態1による電力デマンド装置の予測消費電力量の算出結果を示す説明図である。
【図7】実施の形態1による電力デマンド装置の予測消費電力量の算出結果を示す説明図である。
【図8】実施の形態1による電力デマンド装置が記録する機器の運転スケジュールの一例を示す図である。
【図9】実施の形態1による電力デマンド装置の予測消費電力量の算出結果を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1による電力デマンド装置の構成を示すブロック図である。
電力デマンド装置10は、消費電力量取得手段1、機器データ記録手段2、運転計画記録手段3、消費電力量予測手段4および目標電力量設定手段5で構成されている。また、電力デマンド装置10には、電力を消費する複数の機器(機器21a,21b,・・・,21n、以下、総称して機器群21と記載する)で構成される電力消費機器20、および電力デマンド装置10が予測した消費電力量に基づいて機器群21の運転制御を行う制御装置30が外部接続されている。なお、機器群21の運転制御は、制御装置30により自動制御するように構成してもよいし、ユーザの手動により制御するように構成してもよい。
【0021】
消費電力量取得手段1は、例えば建物などに設置された空調機、エレベータ、防犯設備、照明などの機器群21の消費電力量を取得する。取得した消費電力量は、メモリ部などの記憶領域(不図示)に記録される。なお、消費電力は機器群21に設置された電力計などにより計測される。機器データ記録手段2は、電力を消費する機器群21の機器データをあらかじめ記録し、例えば機器一覧表などとして保有している。機器データの詳細は後述する。運転計画記録手段3は、機器データ記録手段2に記録された機器データを参照し、機器群21の運転スケジュールを読み出して記録する。機器群21には、あらかじめ運転スケジュールが設定されており、運転/停止のタイムスケジュールが決められている。
【0022】
消費電力量予測手段4は、消費電力量取得手段1の記憶領域に格納された機器群21の消費電力量を実績使用電力量として取得し、当該実績使用電力量と、運転計画記録手段3に記録された運転スケジュールとに基づき、所定の時間帯における機器群21の運転状態、所定の時間帯における消費電力割合への影響とからあらかじめ設定した1サイクルの時間帯の予測消費電力量を算出する。目標電力量設定手段5は、契約電力情報を有し、当該契約電力に基づいて目標電力量を設定する。
消費電力量予測手段4は、例えば算出した予測消費電力量が、目標電力量設定手段5が設定した目標電力量以下であるか、あるいは目標電力量より大きいか判定し、予測消費電力量が目標電力量以下である場合には目標電力量に達すまでの電力量を算出し、目標電力量より大きい場合には目標電力量に対する超過量を算出する。また、予測した消費電力量のみを出力するように構成してもよいし、予測した消費電力量と目標電力量以下かを示す情報とを合せて出力するように構成してもよい。
【0023】
また、目標電力を複数段備える電力デマンド制御に対応して、目標電力量設定手段5および消費電力量予測手段4を次のように構成してもよい。
例えば、目標電力を3段階で設定する場合、目標電力設定手段5は第1の目標電力<第2の目標電力<契約電力のように目標電力を設定する。消費電力量予測手段4は、算出した予測消費電力量が、目標電力量設定手段5が設定した第1の目標電力、および第2の目標電力より大きいか判定を行う。予測消費電力量が第1の目標電力量以下である場合には、消費電力量予測手段4は第1の目標電力量に達するまでの電力量を算出する。また、予測消費電力量が第1の目標電力より大きく、第2の目標電力以下である場合には予備警報を発報する制御指示を出力する。また、予測消費電力量が第2の目標電力より大きい場合には、機器群21のいずれか、あるは全ての機器への電力供給を遮断する制御指示を出力する。
【0024】
制御装置30は、種々構成可能であるが、例えば消費電力量予測手段4から入力される、目標電力量に達するまでの電力量に応じて、機器群21のうち節電運転を行っている機器を通常運転に戻す、あるいは停止している機器を稼動させるなどの制御を行う。一方、目標電力量に対する超過量に応じて、機器群21を停止する、あるいは節電運転へ切り替えるなどの制御を行う。
【0025】
次に、動作について説明する。
図2は、実施の形態1による電力デマンド装置の動作を示すフローチャートである。
消費電力量取得手段1は、定期的に電力消費機器20の消費電力量を取得する(ステップST1)。消費電力量予測手段4は、あらかじめ設定した消費電力量予測タイミングに達したか判定を行う(ステップST2)。消費電力予測タイミングに達していない場合(ステップST2;NO)、消費電力量予測手段4は、さらに他の機器の負荷変動があったか、あるいは運転計画記録手段3に記録された運転スケジュールに変更があったか否か判定を行う(ステップST3)。他の機器の負荷変動がない、および運転スケジュールに変更がない場合(ステップST3;NO)、フローチャートはステップST1の処理に戻り、上述した処理を繰り返す。
【0026】
一方、消費電力予測タイミングに達した場合(ステップST2;YES)、または他の機器に負荷変動がある、または運転スケジュールに変更が生じた場合(ステップST3;YES)、消費電力量予測手段4は、消費電力量取得手段1が取得した消費電力量を実績使用電力量として取得する(ステップST4)。さらに消費電力量予測手段4は、運転計画記録手段3により記録された消費電力機器の運転スケジュールを取得する(ステップST5)。
【0027】
消費電力量予測手段4は、ステップST4で取得した実績使用電力量、およびステップST5で取得した運転スケジュールに基づいて、あらかじめ設定された1サイクル(例えば、30分など)の消費電力量を予測する(ステップST6)。さらに消費電力量予測手段4は、目標電力量設定手段5が設定した目標電力量を取得し(ステップST7)、ステップST6で算出した予測消費電力量が、取得した目標電力量以下であるか判定を行う(ステップST8)。予測消費電力量が目標電力量以下である場合(ステップST8;YES)、目標電力量に対する到達電力量を算出し(ステップST9)、処理を終了する。一方、予測消費電力量が目標電力量より大きい場合(ステップST8;NO)、目標電力量に対する超過電力量を算出し(ステップST10)、処理を終了する。
【0028】
次に、図2のフローチャートで示したステップST6の消費電力量の予測処理について図3を参照しながら詳述する。図3は、実施の形態1による電力デマンド装置の消費電力量予測手段の動作を示すフローチャートである。
消費電力量予測手段4は、1サイクルの初期情報(基準条件)を取得する(ステップST11)。ここで、初期情報を構成する初期時点とは消費電力量を予測する時点から所定時間(例えば、2分など)遡った期間である。また、初期情報の取得とは、運転計画記録手段3から取得した運転スケジュールを参照して初期時点における機器状態(以下、初期機器状態と称する)を取得し、消費電力量取得手段1から取得した実績使用電力量と、機器データ記録手段2に記録された電力消費機器の定格電力とに基づいて初期時点における消費電力の割合(以下、初期消費電力割合と称する)と、1サイクルの開始時点から初期時点終了時までの電力使用量(初期使用電力量と称する)とを取得することである。また、機器状態とは、機器の「運転中」または「停止」を示す情報である。
【0029】
消費電力量予測手段4は、運転スケジュールを参照し、予測対象となる時間帯の機器状態を取得する(ステップST12)。ステップST12で取得した機器状態に基づいて、予測対象となる時間帯の消費電力割合の変化量および消費電力割合を算出する(ステップST13)。さらにステップST13で算出した消費電力割合の変化量および消費電力割合に基づいて、予測対象となる時間帯終了時の予測消費電力量を算出する(ステップST14)。その後、消費電力量予測手段4は、1サイクルを構成する全ての時間帯について処理を行ったか判定する(ステップST15)。全ての時間帯について処理を行っていない場合(ステップST15;NO)、ステップST12の処理に戻り、上述した処理を繰り返す。一方、全ての時間帯について処理を行った場合(ステップST15;YES)、1サイクルの最終時間帯の予測消費電力量を、当該1サイクルの予測消費電力量とし(ステップST16)、処理を終了する。
【0030】
次に、上述した図3のフローチャートに沿って、具体例を用いて説明する。
まず、図4は、実施の形態1による電力デマンド装置の機器データ記録手段が記録する機器情報一覧を示す図である。
機器情報一覧は、機器No、機器の名称、機器の定格、機器の運転スケジュールなどで構成されている。機器No.1の「空調機1階−西」は、定格150kWで、7:50に起動して8:20に停止し、さらに11:00に起動して14:00に停止する運転スケジュールが設定されている。機器No.2の「空調機1階−東」は、定格300kWで、50%の間欠運転を行う運転スケジュールが設定されている。ここで、50%の間欠運転とは、例えば、8:00−8:30の1サイクルで、8:00−8:05、8:10−8:15、8:20−8:25の合計15分のみ運転するものである。機器No.3の「空調機2階−西」は、定格75kWで、8:05に起動して10:00に停止し、さらに12:00に起動して15:00に停止する運転スケジュールが設定されている。
【0031】
また、図5は、図4で示した機器情報一覧に記載された機器No.1からNo.3の機器の運転スケジュールを示す一例である。なお、以下の説明では、30分を1サイクルとし、当該1サイクルを予測対象となる時間帯(5分)で分割した場合を例に説明する。
図5に示す運転スケジュールには、定格150kWの機器1が、8:00から8:20まで運転し、8:20以降は停止し、定格300kWの機器2が、5分毎の50%間欠運転を行い、定格75kWの機器3が、8:00から8:05まで停止し、8:05以降は運転するスケジュールが記載されている。
【0032】
図6は、図5で示した運転スケジュールに基づいて機器を稼動した場合の予測消費電力量の算出結果を示す図であり、図6(a)は算出した予測消費電力量およびその算出に用いる情報および値を示し、図6(b)はその予測消費電力量を示したグラフである。
まず消費電力量予測手段4は、ステップST11として、1サイクルの初期情報を取得する。図6において初期時点は、時刻8:00から5分経過した時点の直近2分であり、当該直近2分の初期消費電力割合が10kW/分であり、時刻8:00から5分経過した時点の初期使用電力量が100kWhであるとする。
【0033】
次に、ステップST12として、時間帯5〜10分の機器状態を取得する。当該処理について図6(a)を参照しながら説明する。
図6(a)は、1サイクルにおける各時間帯、機器名称、初期機器状態、各時間帯における機器状態、初期消費電力割合に対する消費電力割合の変化量、各時間帯における消費電力割合、および各時間帯終了時の予測消費電力量で構成されている。
図6(a)に基づいて時間帯5〜10分において取得される機器状態は、機器1が運転中、機器2が停止、機器3は運転中である。
【0034】
次に、ステップST13として、時間帯5〜10分の消費電力割合の変化量および消費電力割合を算出する。
具体的には、ステップST12で取得した機器状態「機器1が運転中、機器2が停止、機器3は運転中」を初期機器状態と比較すると、機器1は運転状態に変化がなく消費電力割合の変化量は「0」、機器2は運転中から停止に変化するため消費電力割合の変化量は「−300kW/60分=−5kW/分」、機器3は停止から運転中に変化するため消費電力割合の変化量は「75kW/60分=1.25kW/分」となる。
消費電力割合は、初期消費電力割合10kW/分に、上記で求めた消費電力割合の変化量を加算することにより求められる。
【0035】
次に、ステップST14として、時間帯5〜10分の終了時の予測消費電力量を算出する。時間帯終了時の予測消費電力量は、以下の式(1)に基づいて算出される。
P=Pb+Pr×t×(60/ts)・・・(1)
上記式(1)において、Pは時間帯終了時の予測消費電力量(kWh)、Pbは前時間帯終了時の予測消費電力量(kW/分)、tsは1サイクルの時間(分)、Prは消費電力割合(kWh/分)、tは各時間帯の時間(分)を示している。
図6(a)に示した時間帯5〜10分の各条件を上記式(1)に適用すると、時間帯終了時の予測消費電力量は以下の値となる。
P=100+6.25×5×(60/30)=162.5
【0036】
次に、ステップST15として、時刻8:05から8:30までの全ての時間帯について処理したか判定を行い、行っていない場合には、ステップST12の処理に戻り、同様に、時間帯10〜15分、15〜20分、20〜25分、25〜30分の各時間帯終了時の予測消費電力量を算出する。その後、ステップST16として、1サイクルの最終時間帯である25〜30分の時間帯終了時の予測消費電力量を当該1サイクルの予測消費電力量とする。
【0037】
図6(b)は、予測消費電力量を示すグラフであり、実線は実施の形態1の消費電力予測手段4が算出した予測消費電力量を示し、点線は従来の方法により算出した予測消費電力量を示している。従来の算出方法では、初期消費電力割合が1サイクル中で変化しないと仮定し、初期消費電力割合および初期使用電力量を用いて以下の式(2)に基づいて予測消費電力量を算出する。
P´=Pi+Pir×(ts−tf)×(60/ts)・・・(2)
上記式(2)において、P´は時間帯終了時の予測消費電力量(kWh)、Piは初期使用電力量(kWh)、tsは1サイクルの時間(分)、Pirは初期消費電力割合(kW/分)、tfは初期時点までの時間(分)を示している。
【0038】
図6(a)に示した具体例の初期消費電力割合10kW/分、初期使用電力量100kWhおよび初期時点までの時間5分を上記式(2)に適用すると、従来の予測消費電力量は以下のように算出される。
P´=100+10×25×(60/30)=600
【0039】
目標電力量が、例えば500kWhであった場合、消費電力量予測手段4が機器群21の運転スケジュールを考慮して算出した予測消費電力量は450kWhであり、目標電力量以下となる。一方、機器群21の運転スケジュールを考慮しない従来の方法により算出した予測消費電力量は600kWhとなり、目標電力量500kWhを越え、制御装置30による機器群21の電力量制御が行われる。
このように、図6に示した例では、機器群21の運転スケジュールを考慮してぶれの少ない予測値を算出することにより、従来の算出方法と比較して予測消費電力量が適切に抑制され、機器群21に対する不必要な電力遮断などの制御を抑制することができる。
【0040】
次に、電力消費機器20の機器群21に運転スケジュールおよび機器状態が取得できない機器(例えば、機器21a)が存在し、該機器21aの運転状態が変化して負荷が変動した場合における予測消費電力量の算出について説明を行う。
図7は、図5で示した運転スケジュールに基づいて機器を稼動した場合の予測消費電力量の算出結果を示す図であり、図7(a)は算出した予測消費電力量およびその算出に用いる情報および値を示し、図7(b)はその予測消費電力量を示したグラフである。
まず、消費電力量予測手段4は、ステップST11として、1サイクルの初期情報を取得する。図7において初期時点は、時刻8:00から8分経過した時点の直近2分であり、当該直近2分の初期消費電力割合が5kW/分であり、時刻8:00から8分経過した時点の初期使用電力量が150kWhであるとする。なお、この初期情報は、機器21aの運転状態が変化して負荷が変動し、消費電力割合が変化した後に再設定されたものである。
【0041】
その後、消費電力量予測手段4は、上述したステップST12からステップST15の処理を繰り返し、図7(a)に示す各時間帯終了時の予測消費電力量(kwh)を算出する。なお図7(a)の例では、初期時点が時刻8:00から8分経過した時点であることから、時間帯5〜10分における時間帯終了時の予測消費電力量は8分から10分までの2分を用いて算出する。ステップST16として、図7(a)の時間帯25〜30分の時間帯終了時の予測消費電力量420kWhが1サイクルの予測消費電力量となる。
【0042】
図7(b)は、予測消費電力量を示すグラフであり、実線は実施の形態1の消費電力予測手段4が算出した予測消費電力量を示し、点線は従来の方法により算出した予測消費電力量を示している。初期消費電力割合5kW/分および初期使用電力量150kWhを用いて、上述した式(2)に基づいて予測消費電力量を以下のように算出する。
P´=150+5×22×(60/30)=370
【0043】
目標電力量が、例えば500kWhであった場合、消費電力量予測手段4が機器群21の運転スケジュールを考慮して算出した予測消費電力量は420kWhであり、目標電力量以下となる。一方、機器群21の運転スケジュールを考慮しない従来の方法により算出した予測消費電力量は370kWhとなり、消費電力量予測手段4が算出した予測消費電力量よりも低い値となる。これは目標電力量までの到達電力量が多く見積もられている可能性があり、目標電力量以上の電力の使用が発生する場合もある。このように、図7で示した例では、運転スケジュールおよび機器状態が取得できない機器21aの負荷が変動した後の初期消費電力割合および機器群21の運転スケジュールを考慮してぶれの少ない予測値を算出することにより、従来の算出方法と比較して機器群21による電力量の使い過ぎを抑制することができる。
【0044】
次に、1サイクルの途中で電力消費機器20の運転スケジュールの変更により、消費電力割合が変化した場合における予測消費電力量の算出について説明する。運転スケジュールの変更は、例えば室温の変化により節電運転を行っていた機器の運転スケジュールを通常に戻す場合などが考えられる。
【0045】
図8は、図4で示した機器情報一覧に記載された機器No.1からNo.3の機器の運転スケジュールを示す一例である。上述した例と同様に30分を1サイクルとし、当該1サイクルを予測対象となる時間帯(5分)で分割した場合を例に説明する。
図8に示す運転スケジュールには、定格150kWの機器1が、8:00から8:20まで運転し、8:20以降は停止し、定格300kWの機器2が、5分毎の50%間欠運転を行う予定であったが、室温の変化により時刻8:15以降間欠運転を中止し、定格75kWの機器3が、8:00から8:05まで停止し、8:05以降は運転するスケジュールが記載されている。
【0046】
図9は、図8で示した運転スケジュールに基づいて機器を稼動した場合の予測消費電力量の算出結果を示す図であり、図9(a)は算出した予測消費電力量およびその算出に用いる情報および値を示し、図9(b)はその予測消費電力量を示したグラフである。
まず、消費電力量予測手段4は、ステップST11として1サイクルの初期情報を取得する。図9の初期条件は図7と同一であり、時刻8:00から8分経過した時点での初期消費電力割合が5kW/分であり、時刻8:00から8分経過した時点の初期使用電力量が150kWhであるとする。なお、運転スケジュールの変更では、消費電力割合には変化が生じないため、初期情報の再設定は行わない。
【0047】
その後、消費電力量予測手段4は、上述したステップST12からステップST15の処理を繰り返し、図9(a)に示す各時間帯終了時の予測消費電力量(kwh)を算出する。なお、図9(a)の例では、機器2において時刻8:15以降間欠運転を中止するとの運転スケジュールの変更が発生していることから、時刻8:15までは実績値とし、以降の時間帯終了時の予測消費電力量を変更後の運転スケジュールに基づき算出する。ステップST16として、図9(a)の時間帯25〜30分の時間帯終了時の予測消費電力量480kWhが1サイクルの予測消費電力量となる。
【0048】
このように、図9に示した例では、1サイクルの途中で機器の運転スケジュールに変更が生じた場合であっても、変更後の運転スケジュールに沿って予測消費電力量を算出することができる。これにより、間欠運転の中止により、予測消費電力量が目標電力量を超えることなどを的確に予測することができる。
【0049】
以上のように、この実施の形態1によれば、電力消費機器20の消費電力量の実績使用電力量、運転スケジュールおよび定格電力に基づいて、初期時点における初期消費電力割合を算出し、算出した初期消費電力割合に対する変化量に基づいて1サイクル中の使用電力量を予測する消費電力量予測手段4を備えるように構成したので、電力消費機器の運転スケジュールに沿った精度の高い予測消費電力量を算出することができる。これにより、電力消費機器に対する不要な電力遮断を抑制する、あるいは電力消費機器による電力の使い過ぎを抑制するなど、効率的な電力消費機器の制御を実行することができる。さらには、精度よく目標電力量の超過を抑制することができ、契約電力を低く抑えることに寄与する効果が得られる。
【0050】
また、この実施の形態1によれば、運転スケジュールに変更が生じたと判定した場合に、変更後の運転スケジュールに沿って1サイクル中の使用電力量を再度予測する消費電力量予測手段4を備えるように構成したので、運転スケジュールの変更や間欠運転の中止などにより使用電力量の変化を考慮した精度の高い予測消費電力量を算出することができる。さらに、あらかじめ設定された目標電力量を超過することなく、不要な電力遮断や電力の使い過ぎをその都度確認することができる。
【0051】
また、この実施の形態1によれば、運転スケジュールおよび機器状態を取得することができない電力消費機器の負荷の変化により変動した消費電力割合を用いて再度1サイクル中の使用電力量を予測する消費電力量予測手段4を備えるように構成したので、外的状況にあわせた予測消費電力量を算出することができる。さらに、あらかじめ設定された目標電力量を超過することなく、不要な電力遮断や電力の使い過ぎをその都度確認することができる。
【0052】
また、この実施の形態1によれば、1サイクルを複数の時間帯に分割し、各時間帯において予測消費電力量を算出する消費電力予測手段4を備えるように構成したので、電力消費機器の運転スケジュールに基づいてきめ細かに電力使用量を予測することができ、より精度の高い予測消費電力量を算出することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 消費電力量取得手段
2 機器データ記録手段
3 運転計画記録手段
4 消費電力量予測手段
5 目標電力量設定手段
10 電力デマンド装置
20 電力消費機器
30 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力消費機器の消費電力量の実測値を取得し、取得した消費電力量の実測値に基づいて所定期間の電力使用量を予測する電力デマンド方法において、
機器情報記録手段が、前記電力消費機器の少なくとも機器種別および定格電力を含む機器情報を取得して記録するステップと、
運転計画取得手段が、前記電力消費機器の運転計画を取得するステップと、
消費電力量予測手段が、予測開始時点直近の消費電力量の実測値、前記機器情報、および前記運転計画に基づいて、前記所定期間の電力使用量を予測する際の基準条件を設定し、当該基準条件と前記予測開始時点以降の運転計画とを比較して前記基準条件に対する変化量を算出し、算出した変化量および前記機器情報に基づいて前記所定区間の電力使用量を予測するステップとを備えたことを特徴とする電力デマンド方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電力デマンド方法であって、
前記消費電力量予測手段が、前記予測開始時点以降に前記運転計画に変更が生じたと判定した場合に、変更後の運転計画に基づいて前記電力使用量を再予測するステップとを備えたことを特徴とする電力デマンド方法。
【請求項3】
請求項1に記載の電力デマンド方法であって、
前記消費電力量予測手段が、前記電力消費機器の負荷に変化が生じたと判定した場合に、当該負荷に変化が生じた時点の直近の消費電力量の実測値および機器状態を取得して前記基準条件を再設定し、再設定した基準条件と前記負荷に変化が生じた時点以降の運転計画とを比較して前記再設定した基準条件に対する変化量を算出し、算出した変化量および前記機器情報に基づいて前記所定区間の電力使用量を再予測するステップとを備えたことを特徴とする電力デマンド方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3に記載の電力デマンド方法であって、
前記消費電力量予測手段が、前記所定区間を複数の時間帯に分割し、分割した各時間帯の運転計画と前記基準条件とを比較して前記初期条件に対する変化およびその変化量を取得し、取得した変化量および前記電力消費機器の定格電力に基づいて各時間帯の電力使用量を予測するステップとを備えたことを特徴とする電力デマンド方法。
【請求項5】
電力消費機器の消費電力量の実測値を取得し、取得した消費電力量の実測値に基づいて所定期間の電力使用量を予測する電力デマンド装置において、
前記電力消費機器の少なくとも機器種別および定格電力を含む機器情報を取得して記録する機器情報記録手段と、
前記電力消費機器の運転計画を取得する運転計画取得手段と、
電力使用量の予測開始時点直近の消費電力量の実測値、前記機器情報記録手段に記録された機器情報、および前記運転計画取得手段が取得した運転計画に基づいて、前記所定期間の電力使用量を予測する際の基準条件を設定し、当該基準条件と前記予測開始時点以降の運転計画とを比較して前記基準条件に対する変化量を算出し、算出した変化量および前記機器情報に基づいて前記所定区間の電力使用量を予測する消費電力量予測手段とを備えたことを特徴とする電力デマンド装置。
【請求項6】
前記消費電力量予測手段は、前記予測開始時点以降に前記運転計画に変更が生じたと判定した場合に、変更後の運転計画に基づいて前記電力使用量を再予測することを特徴とする請求項5記載の電力デマンド装置。
【請求項7】
前記消費電力量予測手段は、前記電力消費機器の負荷に変化が生じたと判定した場合に、当該負荷に変化が生じた時点の直近の消費電力量の実測値および機器状態を取得して前記基準条件を再設定し、再設定した基準条件と前記負荷の変化が生じた時点以降の運転計画とを比較して前記再設定した基準条件に対する変化量を算出し、算出した変化量および前記機器情報に基づいて前記所定区間の電力使用量を再予測することを特徴とする請求項5記載の電力デマンド装置。
【請求項8】
前記消費電力量予測手段は、前記所定区間を複数の時間帯に分割し、分割した各時間帯の運転計画と前記基準条件とを比較して前記初期条件に対する変化量を算出し、算出した変化量および前記機器情報に基づいて各時間帯の電力使用量を予測することを特徴とする請求項5から請求項7のうちのいずれか1項記載の電力デマンド装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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