説明

電力系統制御システム及び電力系統制御方法

【課題】電力系統全体で効率的な送電を行うことができる電力系統制御システムを提供する。
【解決手段】系統制御サーバGSの指令値算出部GSaは、電力系統Ls上の任意ノードiでの同時刻の電圧Vi及び位相θiを取得し、該取得値から任意ノードiの有効電力Pi及び無効電力Qiを取得する。これら同時刻の電圧Vi、位相θi、有効電力Pi及び無効電力Qiから任意ノードi,j間の配線損失Lijを算出し、電力系統Lsの総配線損失Lを取得する。そして、制御対象の太陽光発電システムG2及び無効電力補償装置G3に対し、電力系統Lsの総配線損失Lが小となるような無効電力指令値QG2_0,QG3_0を算出し、制御対象の制御を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力系統全体の高効率な運用を目的とした電力系統制御システム及び電力系統制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の主たる電力供給は、火力、水力、原子力発電所に設置される大型の発電機から需要家側に略一方向に行われている。この電力供給には、需要家側で消費される有効電力の他に、需要家側での電圧を維持するための無効電力が含まれている。しかしながら、先の発電所は需要家から地理的に遠い場所にあるため、需要家までの送電距離が長く、無効電力に伴う位相ずれによる力率の低下が大きい。そのため、需要家近傍において、調相リアクトルや調相コンデンサ等の調相器を用いて力率の改善が行われている。また、無効電力の長距離送電を行うと系統配線での損失が大きくなる他、系統配線の容量が決まっていることから、送電可能な有効電力量が低下してしまう。
【0003】
また近年では、太陽光等の再生可能エネルギーから電力を得る分散型電源が数多く電力系統に連系されつつあり、分散型電源に備えられる電力変換装置(パワーコンディショナ)から発電に伴う電力が需要家側から系統に逆潮流されるようになってきている。しかしながら、このような逆潮流が多くなると、分散型電源の系統との連系点にて電圧値が上昇するといった問題が懸念されるようになってきた。電圧値が上昇すると、先の調相器で電圧上昇を抑制しようと動作するが、その調整量には限度がある。例えば日中に太陽光発電出力が大きくなると(太陽光発電が大量導入された地域では特に)、調相器の調整可能な容量を超えてしまう場合が想定される。この場合、電圧値上昇の許容範囲の逸脱を回避するため、分散型電源にて出力抑制するように動作するが、当然ながら系統への出力機会損失となる。
【0004】
そこで、例えば特許文献1において、分散型電源が無効電力を系統に出力することが提案されている。需要家に設置された分散型電源は、系統との連系点の電圧値に応じて、通常運転、無効電力出力、出力抑制、解列等の判定閾値を設定している。そして、通常運転時に連系点の電圧値が上昇すると、出力抑制の前に無効電力を出力する制御に切り替え、出力機会損失が極力生じないようになっている。また同文献1では、系統上の起点位置からの需要家の距離に応じて判定閾値を異なるものとし、需要家の地理的な違いから出力機会(売電機会)に不公平感が生じないようにしている。
【0005】
また、例えば特許文献2において、分散型電源が系統に出力する有効電力に応じた無効電力を出力する提案もなされている。つまり、同文献2では、出力する有効電力が系統電圧に及ぼす影響(電圧変動)を小さくする無効電力の算出が行われ、該算出に基づく無効電力の注入により系統電圧の安定化が可能になるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4266003号公報
【特許文献2】特開2009−177882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、太陽光、風力を用いるソーラープラントやウインドファームといった大規模な再生可能エネルギーの発電所から系統に電力を供給するような場合では、系統電圧の維持を図るために必要な無効電力の多くを火力発電所から供給することになる。上記したように、遠隔地にある火力発電所からの無効電力の送電は損失が大きく有効電力の送電量増大の妨げとなるため、こういった大規模な再生可能エネルギーの発電を行う場合も考慮して、電力系統全体で効率的な送電を行うことを考慮する必要があった。
【0008】
そういった観点で特許文献1,2を見てみると、特許文献1に開示の技術では、系統の他の分散型電源の挙動を考慮して、通常運転、無効電力出力、出力抑制、解列等の判定閾値を需要家の距離に応じて変更しているものの、分散型電源以外の他の電力機器の挙動や配線損失までは考慮されてはいない。電力系統全体で効果的な無効電力の制御が行われているとは言えなかった。
【0009】
また特許文献2に開示の技術においても、系統の他の分散型電源(太陽光発電システム)の挙動や分散型電源以外の他の電力機器の挙動、配線損失等の考慮がなされていないため、こちらの技術においても電力系統全体で効果的な無効電力の制御が行われているとは言えなかった。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、電力系統全体で効率的な送電を行うことができる電力系統制御システム及び電力系統制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、所定電力系統上の任意ノードでの時刻同期測定による同時刻の少なくとも電圧及び位相を取得する測定値取得手段と、前記取得した同時刻の電圧及び位相を少なくとも用いて前記任意ノードの有効電力及び無効電力を取得する電力値取得手段と、前記取得した任意ノードの同時刻の電圧、位相、有効電力及び無効電力を少なくとも用いて任意ノード間の配線損失を算出し、前記電力系統の総配線損失を取得する配線損失取得手段と、前記電力系統への有効電力又は無効電力の出力が可能な制御対象の出力指令値であり、前記電力系統の総配線損失が小となるような前記制御対象の出力指令値を算出する出力指令値算出手段と、前記算出した出力指令値に基づいて前記制御対象を制御する系統制御手段とを備えたことをその要旨とする。
【0012】
この発明では、電力系統上の任意ノードでの同時刻の電圧及び位相が少なくとも取得され、該取得値から任意ノードの有効電力及び無効電力が取得される。これら同時刻の少なくとも電圧、位相、有効電力及び無効電力から任意ノード間の配線損失が算出され、電力系統の総配線損失の取得が可能となる。そして、有効電力又は無効電力の系統出力が可能な制御対象に対し、電力系統の総配線損失が小となるような出力指令値が算出され、該出力指令値に基づいて制御対象が制御される。これにより、各制御対象では電力系統の総配線損失が小となるような出力制御がなされるため、電力系統の送電効率の向上が可能となる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電力系統制御システムにおいて、前記制御対象は、有効電力及び無効電力の系統出力が可能な分散型電源、無効電力の系統出力が可能な調相器を含み、前記出力指令値算出手段は、前記分散型電源が出力する有効電力を最大化する一方、前記分散型電源が出力する無効電力、前記調相器が出力する無効電力、前記電力系統の総配線損失が最小化するような前記制御対象の出力指令値を算出することをその要旨とする。
【0014】
この発明では、制御対象として分散型電源及び調相器が含まれ、分散型電源が出力する有効電力を最大化する一方、分散型電源が出力する無効電力、調相器が出力する無効電力、電力系統の総配線損失が最小化するような制御対象の出力指令値が算出され、制御対象が制御される。これにより、電力消費地の近隣に配置されることが多い分散型電源や調相器から好適に無効電力が注入されて電力系統の総配線損失を低減させつつ、分散型電源が出力する有効電力量を増加させることが可能となる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の電力系統制御システムにおいて、前記制御対象は、有効電力及び無効電力の系統出力が可能な分散型電源、無効電力の系統出力が可能な調相器を含み、前記出力指令値算出手段は、前記分散型電源が出力する有効電力を最大化する一方、前記調相器が出力する無効電力、前記電力系統の総配線損失が最小化するような前記制御対象の出力指令値を算出することをその要旨とする。
【0016】
この発明では、制御対象として分散型電源及び調相器が含まれ、分散型電源が出力する有効電力を最大化する一方、調相器が出力する無効電力、電力系統の総配線損失が最小化するような制御対象の出力指令値が算出され、制御対象が制御される。これにより、電力消費地の近隣に配置されることが多い調相器から好適に無効電力が注入されて電力系統の総配線損失を低減させつつ、分散型電源が出力する有効電力量を増加させることが可能となる。この場合、調相器が出力する無効電力の負担が増加する分、分散型電源が出力する有効電力量を増加できる。
【0017】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の電力系統制御システムにおいて、前記制御対象は、更に化石燃料を使用する発電所発電設備を含み、前記出力指令値算出手段は、前記発電所発電設備が出力する有効電力及び無効電力を含んで最小化するような前記制御対象の出力指令値を算出することをその要旨とする。
【0018】
この発明では、制御対象として更に化石燃料を使用する発電所発電設備が含まれ、発電所発電設備が出力する有効電力及び無効電力を含んで最小化するような制御対象の出力指令値が算出され、制御対象が制御される。これにより、化石燃料を使用する発電所発電機の出力の最小化が図られることから、化石燃料の使用量削減、二酸化炭素の排出削減に大きく寄与できる。
【0019】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電力系統制御システムにおいて、前記出力指令値算出手段は、前記取得した任意ノードの電圧、有効電力、無効電力を少なくとも用い、その有効電力及び無効電力の一方又は両者の時間変化量を加味して最小化するような前記制御対象の出力指令値を算出することをその要旨とする。
【0020】
この発明では、任意ノードの有効電力及び無効電力の一方又は両者の時間変化量が加味されて最小化するような制御対象の出力指令値が算出され、制御対象が制御される。これにより、系統事故等による系統電圧低下が発生した場合であっても、速やかに反応して制御対象を通じて速やかな系統電圧復帰が可能となる。
【0021】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電力系統制御システムにおいて、前記制御対象の出力指令値は、無効電力指令値であることをその要旨とする。
この発明では、無効電力指令値を通じて各制御対象に対して電力系統の総配線損失が小となるような出力制御がなされ、電力系統の送電効率の向上が図られる。また、出力指令値として無効電力指令値のみとすれば、指令値の算出、制御対象への指令値の出力が容易となる。
【0022】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の電力系統制御システムにおいて、前記制御対象は、分散型電源として太陽光発電システムを含むことをその要旨とする。
【0023】
この発明では、制御対象の分散型電源として太陽光発電システムが制御対象に含まれ、太陽光発電システムを通じて電力系統の送電効率の向上が図られる。また、導入が進む太陽光発電システムを制御対象とすることで、制御の効果は大きい。
【0024】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の電力系統制御システムにおいて、前記測定値取得手段は、前記任意ノードでの同時刻の電圧及び位相を取得することをその要旨とする。
【0025】
この発明では、任意ノードでの同時刻の電圧及び位相の取得が実施され、電流及び位相の取得は実施されない。つまり、アドミタンスの実数・虚数成分等を系統係数データとして取得・保持しておけば、電流及び位相を測定しなくとも、有効電力、無効電力、配線損失等の算出が可能である。この場合、電流測定手段が不要である。
【0026】
請求項9に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の電力系統制御システムにおいて、前記測定値取得手段は、前記任意ノードでの同時刻の電圧及び位相、並びに電流及び位相を取得することをその要旨とする。
【0027】
この発明では、任意ノードでの同時刻の電圧及び位相、並びに電流及び位相の取得が実施される。つまり、電圧及び位相の測定に加え、電流及び位相を測定することで、各測定値から有効電力、無効電力、配線損失等の算出が可能である。この場合、アドミタンスの実数・虚数成分等を系統係数データとして取得・保持する必要がなく、またこれに係る演算負荷が軽減される。
【0028】
請求項10に記載の発明は、所定電力系統上の任意ノードでの時刻同期測定による同時刻の電圧及び位相を少なくとも取得し、前記取得した同時刻の電圧及び位相を少なくとも用いて前記任意ノードの有効電力及び無効電力を取得し、前記取得した任意ノードの同時刻の電圧、位相、有効電力及び無効電力を少なくとも用いて任意ノード間の配線損失を算出して前記電力系統の総配線損失を取得し、前記電力系統への有効電力又は無効電力の出力が可能な制御対象の出力指令値であり、前記電力系統の総配線損失が小となるような前記制御対象の出力指令値を算出し、前記算出した出力指令値に基づいて前記制御対象を制御する電力系統制御方法である。
【0029】
この発明では、請求項1と同様に、電力系統の送電効率の向上が可能となる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、電力系統全体で効率的な送電を行うことができる電力系統制御システム及び電力系統制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】一実施形態における電力系統の概略構成図である。
【図2】系統制御の態様を説明するためのフロー図である。
【図3】別例における系統制御の態様を説明するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示す本実施形態の電力系統Lsは、火力発電所発電機G1にて発電された系統周波数の三相交流電力が第1系統Ls1、第2系統Ls2、第3系統Ls3に順次送電されるようになっている。第1系統Ls1には分散型電源として太陽光発電システムG2が連系され、第2系統Ls2には負荷(図示略)が連系され、第3系統Ls3には無効電力補償装置(SVC)G3が連系されている。
【0033】
第1系統Ls1に連系されている太陽光発電システムG2は、再生可能エネルギーである太陽光から電力を得る太陽光パネルと電力変換装置(パワーコンディショナ)とを備えている(共に図示略)。太陽光発電システムG2は、太陽光パネルにて発電した直流発電電力を電力変換装置にて系統周波数の三相出力電力に変換して第1系統Ls1に出力する。第3系統Ls3に連系されている無効電力補償装置G3は、系統電圧・周波数維持を図るべくその時々に適切な無効電力を生成して第3系統Ls3に出力する。これら太陽光発電システムG2及び無効電力補償装置G3は、系統制御サーバGSと通信可能に接続され、該系統制御サーバGSにて制御されている。
【0034】
系統制御サーバGSには、電力系統Ls上の任意ノードiの同時刻に測定した電圧Vi及び位相θiが入力される。具体的には、図1の電力系統Lsでは4箇所のノードn1〜n4、この場合、発電所発電機G1が連系されるノードn1、太陽光発電システムG2が連系されるノードn2、負荷が連系されるノードn3、及び無効電力補償装置G3が連系されるノードn4のそれぞれから、GPS等を用いた時刻同期手段にて時刻同期を図った上での同時刻の電圧V1〜V4及び位相θ1〜θ4の各測定値が入力される。因みに、電力系統Lsには変圧器や開閉器等が多数配備されており、各ノードn1〜n4の電圧V1〜V4及び位相θ1〜θ4の測定を行う測定器は、各ノードn1〜n4に存在する変圧器や開閉器等に設置することで対応できる。測定器は、GPS信号を受けて時刻同期測定を実施し、その測定値を系統制御サーバGSに送信可能に構成される。
【0035】
また、系統制御サーバGSには、太陽光発電システムG2が出力する有効電力PG2及び無効電力QG2の測定値と、無効電力補償装置G3が出力する無効電力QG3の測定値とが入力される。有効電力PG2及び無効電力QG2,QG3の測定についても、時刻同期手段にて時刻同期を図った上で、先の電圧位相測定と同時刻で行われる。そして、系統制御サーバGSは、入力される各測定値に基づいて、太陽光発電システムG2及び無効電力補償装置G3に対して電力系統Lsの全体を考慮した制御を行う。
【0036】
系統制御サーバGSは、潮流方程式の演算を行って制御対象、本実施形態では太陽光発電システムG2及び無効電力補償装置G3に対する指令値の算出を行う指令値算出部GSaを備えている。指令値算出部GSaには、各ノードn1〜n4の時刻同期させた電圧V1〜V4及び位相θ1〜θ4の各測定値が入力され、また制御対象の太陽光発電システムG2及び無効電力補償装置G3からは有効電力PG2及び無効電力QG2,QG3の各測定値が同じく時刻同期で入力される。指令値算出部GSaは、同時刻に測定された各測定値に基づいてこの電力系統Lsでの送電効率が最大となるように、制御対象である太陽光発電システムG2と無効電力補償装置G3とがそれぞれ出力すべき無効電力とする無効電力指令値QG2_0,QG3_0の算出を行っている。
【0037】
ここで、理論的な考察を行ってみる。電力系統の任意ノードiにおいての有効電力Piと無効電力Qiとの算出に関し、先ず任意ノードiに任意ノードjから流入する電流Iijを求める。電流Iijは、ノードjの電圧をVj、ノードi,j間のアドミタンスをYijとすると(太字表記はベクトル)、次式が成立する。
【0038】
【数1】

【0039】
ノードiに流入する全電流Iiは、総和をとる次式から求められる。
【0040】
【数2】

【0041】
ノードi,j間のアドミタンスYijは、実部成分をGij、虚部成分をBijとすると、
【0042】
【数3】

【0043】
である。尚、この実部成分Gij及び虚部成分Bijは、系統係数データより比較的容易に入手可能である。ノードjにおける位相をθjとすると、電圧Vjは次式で表される。
【0044】
【数4】

【0045】
ノードiでの電圧をViとすると(太字表記はベクトル)、ノードiの有効電力Pi及び無効電力Qiは、
【0046】
【数5】

【0047】
と表すことができる。従って、係数比較により、有効電力Piは、次式、
【0048】
【数6】

【0049】
で求めることができる。また、無効電力Qiは、次式、
【0050】
【数7】

【0051】
で求めることができる。尚、[数6][数7]にて電力系統のノードiでの有効電力Pi及び無効電力Qiを求めるには、ノードi,j間の位相差が必要である。位相値は時々刻々と変化するため、上記したGPS等の時刻同期手段を用いた各種測定値の同時計測が必要である。
【0052】
次いで、ノードiに接続される発電機の出力有効電力をPGi、出力無効電力をQGi、太陽光発電システムの出力有効電力をPPVi、出力無効電力をQPVi、無効電力補償装置の出力無効電力をQSVCi、負荷が消費する有効電力をPLi、無効電力をQLiとすると、(a)発電機ノード、(b)太陽光発電システムノード、(c)SVCノード、(d)負荷ノード、及びこれらが混在する場合の(e)混在ノードでの「潮流方程式」は以下のようになる。Pi,Qiは、[数6][数7]にて表される。
【0053】
(a)発電機ノード
【数8】

【0054】
(b)太陽光発電システムノード
【数9】

【0055】
(c)SVCノード
【数10】

【0056】
(d)負荷ノード
【数11】

【0057】
(e)混在ノード
【数12】

【0058】
次いで、上記の「潮流方程式」を解くには、電力系統の「系統運用条件」や、同系統に連系される電力機器(太陽光発電システム、無効電力補償装置等)の「機器制約条件」といった「束縛条件」を考慮する必要がある。
【0059】
「系統運用条件」としては、(a)線路容量制約、(b)母線電圧制約がある。尚、線路容量をPCi、容量上限値をPCimaxとする。また、電圧下限値をVimin、電圧上限値をVimaxとする。
【0060】
(a)線路容量制約
【数13】

【0061】
(b)母線電圧制約
【数14】

【0062】
「機器制約条件」としては、(a)機器容量制約、(b)力率制約がある。尚、電力系統に連系される電力機器として、この場合、太陽光発電システム、無効電力補償装置とする。ノードiに接続される太陽光発電システムの機器容量をSPVi、その容量上限値をSPVimax、力率をΦ、無効電力補償装置の機器容量をSSVCi、その容量上限値をSSVCimaxとする。
【0063】
(a)機器容量制約
【数15】

【0064】
(b)力率制約
【数16】

【0065】
尚、太陽光発電システムの機器容量SPViは、出力制御以外でも日射変動により時々刻々と変化するものである。
【0066】
次いで、電力系統の配線損失を考えてみる。ノードi,j間の配線抵抗をrij、配線損失をLijとすると、配線損失Lijは次式で表される。
【0067】
【数17】

【0068】
また、ノードi,j間を導通してノードiに流入する有効電力をPij、無効電力をQijとすれば、配線損失Lijは次式のように変形できる。因みに、有効電力Pij及び無効電力Qijは、上記した有効電力Pi及び無効電力Qiの導出過程で求めることができるため、演算が省力化できる。
【0069】
【数18】

【0070】
従って、電力系統における総配線損失Lは、重複分(配線の往復分)を考慮すると、次式のようになる。
【0071】
【数19】

【0072】
そして、電力系統の送電効率を最大化するという目的において、例えば制御対象を太陽光発電システム及び無効電力補償装置とした場合の目的関数Fの最大化演算(MaximizeF)を行うことで、その目的の達成が可能となる。
【0073】
【数20】

【0074】
因みに、[数20]の演算式では、太陽光発電システムの出力有効電力PPViを最大に、一方で太陽光発電システムの出力無効電力QPVi、無効電力補償装置の出力無効電力QSVCi、電力系統の総配線損失Lを最小にする演算が行われる。
【0075】
上記を踏まえ、本実施形態の系統制御サーバGSの指令値算出部GSaには、上記各種の目的関数Fの最大化演算式やその関連式、電力系統Lsの束縛条件(系統運用条件、機器制約条件)が格納されている。
【0076】
そして、指令値算出部GSaは、電力系統Lsの各ノードn1〜n4にて得られる同時刻の電圧V1〜V4及び位相θ1〜θ4を用い、束縛条件を満足しつつ各種演算式による演算を都度実施して、その時々で電力系統Ls全体の無効電力が最適となる各ノードn1〜n4の有効電力P1〜P4及び無効電力Q1〜Q4の算出を行っている。指令値算出部GSaは、電圧V1〜V4及び位相θ1〜θ4と同時刻に得られた太陽光発電システムG2(PV)及び無効電力補償装置G3(SVC)からの有効電力PG2(PPVi)及び無効電力QG2(QPVi),QG3(QSVCi)に基づいて、先の無効電力Q2の算出値から制御対象の太陽光発電システムG2に対する無効電力指令値QG2_0と、無効電力Q3の算出値から制御対象の無効電力補償装置G3に対する無効電力指令値QG3_0とを算出している。指令値算出部GSaは、各無効電力指令値QG2_0,QG3_0をそれぞれ対応する太陽光発電システムG2及び無効電力補償装置G3に対して送信する。
【0077】
太陽光発電システムG2及び無効電力補償装置G3は、指令値算出部GSaから送信されてきた無効電力指令値QG2_0,QG3_0を受信し、該指令値QG2_0,QG3_0に基づいた制御を実施する。太陽光発電システムG2は、無効電力指令値QG2_0に基づく制御にて生成した出力電力(有効電力PG2及び無効電力QG2)を電力系統Ls1に出力する。無効電力補償装置G3は、無効電力指令値QG3_0に基づく制御にて生成した無効電力QG3を電力系統Ls3に出力する。
【0078】
こうして、電力系統Lsには、電力消費地の近隣に配置されることが多い太陽光発電システムG2や無効電力補償装置G3から無効電力QG2,QG3が注入され、遠隔地に設置され送電損失が大きくなる発電所発電機G1からの無効電力の注入が低減される。つまり、電力系統Lsの総配線損失(L)が最小化され、電力系統Lsの送電効率の最大化が図られる。またこの場合の太陽光発電システムG2及び無効電力補償装置G3の無効電力QG2,QG3は電力系統Lsの総配線損失(L)と合わせて最小化されることから、太陽光発電システムG2及び無効電力補償装置G3の無効電力QG2,QG3の出力は極力抑えられる。
【0079】
従って、太陽光発電システムG2にて生成される有効電力PG2の最大化が可能となり、売電可能な電力の最大化が可能となる。また、電力系統Lsに複数の太陽光発電システムG2が別個に連系している場合でも、公平な無効電力QG2の出力指令が行われるため、各太陽光発電システムG2にて生成される売電対象の有効電力PG2が公平に最大化される。また、発電所発電機G1にて生成する無効電力が低減されることから、発電機G1の運転の効率化や発電機G1の容量削減(小型化)に大きく寄与する。
【0080】
本実施形態の電力系統Lsの送電効率を最大化する運用については、図2に示すフローに示す通りである。GPS等の時刻同期手段を用い、所定タイミング毎に随時実施される。
【0081】
ステップS1において、電力系統Lsの各ノードn1〜n4での同時刻の電圧V1〜V4及び位相θ1〜θ4の測定が行われる。また、制御対象(分散型電源、調相器、発電設備等)における同時刻の有効電力、無効電力の測定が行われる。本実施形態では、太陽光発電システムG2(分散型電源)及び無効電力補償装置G3(調相器)を制御対象としており、太陽光発電システムG2の有効電力PG2及び無効電力QG2の測定と、無効電力補償装置G3の測定とが行われる。尚、後述するが、制御対象に火力発電所発電機G1(発電設備)を加えてもよい。
【0082】
ステップS2では、測定した同時刻のn1〜n4の電圧V1〜V4及び位相θ1〜θ4の各測定が系統制御サーバGSに向けて送信される。同じく制御対象の太陽光発電システムG2及び無効電力補償装置G3からも、測定した同時刻の有効電力PG2及び無効電力QG2,QG3の各測定値が系統制御サーバGSに向けて送信される。
【0083】
ステップS3では、送信されてきた各測定値を用い、系統制御サーバGSの指令値算出部GSaにて目的関数Fの最大化演算式等の潮流方程式の演算が行われる。
ステップS4では、ステップS3での演算に基づいて、電力系統Ls全体の無効電力が最適となる各ノードn1〜n4の有効電力P1〜P4及び無効電力Q1〜Q4が算出され、無効電力Q2の算出値から制御対象の太陽光発電システムG2に対する無効電力指令値QG2_0と、無効電力Q3の算出値から制御対象の無効電力補償装置G3に対する無効電力指令値QG3_0とが算出される。
【0084】
ステップS5では、ステップS4で算出された各無効電力指令値QG2_0,QG3_0が制御対象の太陽光発電システムG2及び無効電力補償装置G3に対して送信される。
ステップS6では、各制御対象の太陽光発電システムG2及び無効電力補償装置G3がそれぞれの無効電力指令値QG2_0,QG3_0に基づいて個別に制御を実施し、太陽光発電システムG2及び無効電力補償装置G3からは、その時々で電力系統Lsにおいて適切な無効電力QG2,QG3の出力がなされる。これにより、電力系統Lsの送電効率の最大化が図られるようになっている。
【0085】
次に、本実施形態の特徴的な効果を記載する。
(1)系統制御サーバGS(指令値算出部GSa)において、電力系統Ls上の任意ノードiでの同時刻の電圧Vi及び位相θiが取得され、該取得値から任意ノードiの有効電力Pi及び無効電力Qiが取得される。これら同時刻の電圧Vi、位相θi、有効電力Pi及び無効電力Qiから任意ノードi,j間の配線損失Lijが算出され、電力系統Lsの総配線損失Lの取得が可能となる。そして、本実施形態にて制御対象とした太陽光発電システムG2及び無効電力補償装置G3に対し、電力系統Lsの総配線損失Lが小となるような出力指令値(無効電力指令値QG2_0,QG3_0)が算出され、該出力指令値に基づいて制御対象の制御が実施されるようになっている。これにより、各制御対象の太陽光発電システムG2及び無効電力補償装置G3では電力系統Lsの総配線損失Lが小となるような出力制御がなされるため、電力系統Lsの送電効率の向上を図ることができる。
【0086】
(2)太陽光発電システムG2が出力する有効電力PG2を最大化する一方、太陽光発電システムG2が出力する無効電力QG2,QG3、無効電力補償装置G3が出力する無効電力QG、電力系統Lsの総配線損失Lが最小化するような制御対象の出力指令値(無効電力指令値QG2_0,QG3_0)が算出され、制御対象の太陽光発電システムG2及び無効電力補償装置G3の制御が行われる。これにより、電力消費地の近隣に配置されることが多い太陽光発電システムG2や無効電力補償装置G3から好適に無効電力QG2,QG3が注入されて電力系統Lsの総配線損失Lを低減させつつ、太陽光発電システムG2が出力する有効電力PG2を増加させることができる。
【0087】
(3)制御対象の太陽光発電システムG2及び無効電力補償装置G3の出力指令値として無効電力指令値QG2_0,QG3_0のみが算出され出力されることから、その算出、出力を容易に行うことができる。
【0088】
(4)導入が進む太陽光発電システムG2を制御対象とすることで、制御の効果は大きい。
(5)任意ノードiでの同時刻の電圧Vi及び位相θiの取得が実施され、電流及び位相の取得は実施されない。つまり、アドミタンスYijの実数・虚数成分Gij,Bij等を系統係数データとして取得し指令値算出部GSaに保持しておけば、電流及び位相を測定しなくとも、有効電力Pi、無効電力Qi、配線損失L等の算出が可能である。本実施形態では、電流測定手段を必要としない。
【0089】
尚、本発明の実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態に用いる時刻同期を図る手段は、GPS以外であってもよい。例えば、電力系統Lsに併設して専用の時刻同期を図る手段を構築してもよい。
【0090】
・上記実施形態では、系統制御サーバGSの制御対象として、分散型電源に太陽光発電システムG2、調相器に無効電力補償装置G3を対応させたが、これに限定されるものではない。例えば、分散型電源として太陽光発電システムG2の他、風力発電システム、コージェネレーションシステム等、需要家にて備えられる他の発電システムでもよい。調相器として無効電力補償装置G3の他、調相リアクトル、調相コンデンサ等でもよい。また、制御対象に火力発電所発電機G1や水力発電所発電機等の発電設備を加えてもよい。
【0091】
・上記実施形態では、目的関数Fとして[数20]に示すように、太陽光発電システムG2の出力有効電力PG2(PPVi)を最大に、一方で太陽光発電システムG2の出力無効電力QG2(QPVi)、無効電力補償装置G3の出力無効電力QG3(QSVCi)、電力系統Lsの総配線損失Lを最小にする関数を用いたが、目的関数Fを適宜変更してもよい。
【0092】
例えば次式[数21]に示す目的関数Fは、太陽光発電システムG2の出力有効電力PG2(PPVi)を最大に、一方で無効電力補償装置G3の出力無効電力QG3(QSVCi)、電力系統Lsの総配線損失Lを最小にする関数である。
【0093】
【数21】

【0094】
この目的関数Fを用いれば、無効電力補償装置G3が出力する無効電力QG3(QSVCi)が増加し、負担分が増加するものの、太陽光発電システムG2が出力する無効電力QG2(QPVi)が無くなることから、太陽光発電システムG2が出力する有効電力PG2(PPVi)を更に増加させることが可能となる。
【0095】
また、例えば次式[数22]に示す目的関数Fは、太陽光発電システムG2の出力有効電力PG2(PPVi)を最大に、一方で無効電力補償装置G3の出力無効電力QG3(QSVCi)、火力発電所発電機G1(発電設備)の出力有効電力PGi及び無効電力QGi、電力系統Lsの総配線損失Lを最小にする関数である。
【0096】
【数22】

【0097】
制御対象に発電設備としての火力発電所発電機G1を含めたこの目的関数Fを用いれば、火力発電所発電機G1の出力の最小化が図られることから、化石燃料の使用量削減、二酸化炭素の排出削減に大きく寄与することができる。尚、この場合も太陽光発電システムG2が出力する無効電力QG2(QPVi)を制御対象に加えてもよい。
【0098】
また、例えば次式[数23]に示す目的関数Fは、電力系統Lsの任意ノードiの電圧Vi、有効電力Pi、無効電力Qiを用いて表されるノードiでの有効電力Piの時間変化量及び無効電力Qiの時間変化量を最小にする関数である。
【0099】
【数23】

【0100】
この目的関数Fを用いれば、系統事故等による系統電圧低下が発生した場合であっても、速やかに反応して無効電力Qiの出力が可能になり、その結果、速やかな系統電圧復帰が可能となる。また、電力系統Lsに同期発電機が接続されていれば、系統電圧復帰の結果、事故等により低下した同期化力がより速やかに回復することから、この点でも系統安定化に大きく寄与することができる。尚、有効電力Piの時間変化量、無効電力Qiの時間変化量の両者を用いず、いずれか一方を用いてもよい。
【0101】
また、上記以外の目的関数Fを設定してもよい。更に、定常状態ではある目的関数Fを設定し、事故等、系統Ls上で何らかの大きな変動を検出した場合は別の目的関数Fに切り替えたり、太陽光発電の行われる昼間と発電の行われない夜間とで別々の目的関数Fに切り替えるようにしてもよい。つまり、同一のハードウェア構成で、目的関数Fを変更するソフト的な変更でそれぞれの要求に適した電力システムを構築することが可能となる。これは、電力事情が大きく異なる世界各国で同一のハードウェアシステムを用いながらも、より柔軟で利用効率の高いシステム運用が可能であることを示している。
【0102】
・上記実施形態では、電力系統Lsの任意ノードiの電圧Vi、位相θi、有効電力Pi、無効電力Qiから電力系統Lsの総配線損失Lを取得し、総配線損失Lが小となるような制御対象の制御が行われたが、制御までを行うシステム構成でなくてもよい。例えば、電力系統Lsの総配線損失Lまでのステップを用い、総配線損失Lを含む種々の電力系統情報を潮流マップとして作成するシステム等に適用してもよい。
【0103】
・上記実施形態では、電圧及びその位相を電圧測定手段にて測定し、測定値から電流値の算出を行ったが、電流及びその位相を測定する電流測定手段を用い、電流値を直接取得するようにしてもよい。三相電力平衡条件を用い、相電流をIPi、相電圧をVPi、ノードiにおける電圧に対する電流の位相差をΦiとすると、ノードiにおける有効電力Pi及び無効電力Qiは次式で表される。
【0104】
【数24】

【0105】
又は、線間電流をILi、線間電圧をVLiとすれば、次式で表される。
【0106】
【数25】

【0107】
[数24]若しくは[数25]にて電力系統Lsのノードiでの有効電力Pi及び無効電力Qiを求めるには、電圧・電流間の位相差が必要である。位相値は時々刻々と変化するため、上記と同様にGPS等の時刻同期手段を用いた各種測定値の同時計測が必要である。このように時刻同期可能な電流測定手段を用いることで、[数6][数7]等にて示す系統係数データであるアドミタンスYijの実部成分Gijや虚部成分Bijの取得・保持は不要となり、またこれに係る演算負荷が軽減される。因みに、電力系統Lsの送電効率を最大化処理するフローは、図2に示したステップS1が図3に示すステップS1’に置換され、電流及びその位相の同時測定が追加される。
【0108】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想を以下に追記する。
(イ) 所定電力系統上の任意ノードでの時刻同期測定による同時刻の少なくとも電圧及び位相を取得する測定値取得手段と、
前記取得した同時刻の電圧及び位相を少なくとも用いて前記任意ノードの有効電力及び無効電力を取得する電力値取得手段と、
前記取得した任意ノードの同時刻の電圧、有効電力及び無効電力を少なくとも用いてその一方又は両者の時間変化量を算出する電力変化量算出手段と、
前記電力系統への有効電力又は無効電力の出力が可能な制御対象の出力指令値であり、その有効電力及び無効電力の一方又は両者の時間変化量が小となるような前記制御対象の出力指令値を算出する出力指令値算出手段と、
前記算出した出力指令値に基づいて前記制御対象を制御する系統制御手段と
を備えたことを特徴とする電力系統制御システム。
【0109】
この構成では、任意ノードの有効電力及び無効電力の一方又は両者の時間変化量が加味されて最小化するような制御対象の出力指令値が算出される。これにより、系統事故等による系統電圧低下が発生した場合であっても、速やかに反応して制御対象を通じて速やかな系統電圧復帰が可能となる。
【0110】
(ロ) 所定電力系統上の任意ノードでの時刻同期測定による同時刻の少なくとも電圧及び位相を取得し、
前記取得した同時刻の電圧及び位相を少なくとも用いて前記任意ノードの有効電力及び無効電力を取得し、
前記取得した任意ノードの同時刻の電圧、位相、有効電力及び無効電力を少なくとも用いて任意ノード間の配線損失を算出し、前記電力系統の総配線損失を取得するようにしたことを特徴とする電力系統情報取得方法。
【0111】
この構成では、電力系統の任意ノードの電圧、位相等の測定値、有効電力、無効電力から電力系統の総配線損失が取得される。これにより、総配線損失を含む種々の電力系統情報を潮流マップとして作成するシステム等に適用することができる。
【符号の説明】
【0112】
Ls 電力系統
L 総配線損失
ij 配線損失
n1〜n4 ノード(i,j 任意ノード)
1〜V4 電圧(Vi 電圧)(測定値)
θ1〜θ4 位相(θi 位相)(測定値)
Pi 相電流(測定値)
Pi 相電圧(測定値)
Li 線間電流(測定値)
Li 線間電圧(測定値)
Φi 位相差(測定値)
G2 有効電力(Pi 有効電力)
G2,QG3 無効電力(Qi 無効電力)
G2_0 無効電力指令値(出力指令値)
G3_0 無効電力指令値(出力指令値)
G1 火力発電所発電機(発電設備、制御対象)
G2 太陽光発電システム(分散型電源、制御対象)
G3 無効電力補償装置(調相器、制御対象)
GS 系統制御サーバ
GSa 指令値算出部(測定値取得手段、電力値取得手段、配線損失取得手段、出力指令値算出手段、系統制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定電力系統上の任意ノードでの時刻同期測定による同時刻の少なくとも電圧及び位相を取得する測定値取得手段と、
前記取得した同時刻の電圧及び位相を少なくとも用いて前記任意ノードの有効電力及び無効電力を取得する電力値取得手段と、
前記取得した任意ノードの同時刻の電圧、位相、有効電力及び無効電力を少なくとも用いて任意ノード間の配線損失を算出し、前記電力系統の総配線損失を取得する配線損失取得手段と、
前記電力系統への有効電力又は無効電力の出力が可能な制御対象の出力指令値であり、前記電力系統の総配線損失が小となるような前記制御対象の出力指令値を算出する出力指令値算出手段と、
前記算出した出力指令値に基づいて前記制御対象を制御する系統制御手段と
を備えたことを特徴とする電力系統制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電力系統制御システムにおいて、
前記制御対象は、有効電力及び無効電力の系統出力が可能な分散型電源、無効電力の系統出力が可能な調相器を含み、
前記出力指令値算出手段は、前記分散型電源が出力する有効電力を最大化する一方、前記分散型電源が出力する無効電力、前記調相器が出力する無効電力、前記電力系統の総配線損失が最小化するような前記制御対象の出力指令値を算出することを特徴とする電力系統制御システム。
【請求項3】
請求項1に記載の電力系統制御システムにおいて、
前記制御対象は、有効電力及び無効電力の系統出力が可能な分散型電源、無効電力の系統出力が可能な調相器を含み、
前記出力指令値算出手段は、前記分散型電源が出力する有効電力を最大化する一方、前記調相器が出力する無効電力、前記電力系統の総配線損失が最小化するような前記制御対象の出力指令値を算出することを特徴とする電力系統制御システム。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の電力系統制御システムにおいて、
前記制御対象は、更に化石燃料を使用する発電所発電設備を含み、
前記出力指令値算出手段は、前記発電所発電設備が出力する有効電力及び無効電力を含んで最小化するような前記制御対象の出力指令値を算出することを特徴とする電力系統制御システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の電力系統制御システムにおいて、
前記出力指令値算出手段は、前記取得した任意ノードの電圧、有効電力、無効電力を少なくとも用い、その有効電力及び無効電力の一方又は両者の時間変化量を加味して最小化するような前記制御対象の出力指令値を算出することを特徴とする電力系統制御システム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の電力系統制御システムにおいて、
前記制御対象の出力指令値は、無効電力指令値であることを特徴とする電力系統制御システム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の電力系統制御システムにおいて、
前記制御対象は、分散型電源として太陽光発電システムを含むことを特徴とする電力系統制御システム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の電力系統制御システムにおいて、
前記測定値取得手段は、前記任意ノードでの同時刻の電圧及び位相を取得することを特徴とする電力系統制御システム。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の電力系統制御システムにおいて、
前記測定値取得手段は、前記任意ノードでの同時刻の電圧及び位相、並びに電流及び位相を取得することを特徴とする電力系統制御システム。
【請求項10】
所定電力系統上の任意ノードでの時刻同期測定による同時刻の少なくとも電圧及び位相を取得し、
前記取得した同時刻の電圧及び位相を少なくとも用いて前記任意ノードの有効電力及び無効電力を取得し、
前記取得した任意ノードの同時刻の電圧、位相、有効電力及び無効電力を少なくとも用いて任意ノード間の配線損失を算出して前記電力系統の総配線損失を取得し、
前記電力系統への有効電力又は無効電力の出力が可能な制御対象の出力指令値であり、前記電力系統の総配線損失が小となるような前記制御対象の出力指令値を算出し、
前記算出した出力指令値に基づいて前記制御対象を制御することを特徴とする電力系統制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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