説明

電動アクチュエータ

【課題】円滑なシフト操作およびセレクト操作をシフトセレクト軸に行わせることができる電動アクチュエータを提供すること。
【解決手段】ナット59の底面59Bには、シフトセレクト軸15の軸方向に沿う長溝である第1ガイド溝201が形成されている。第1ガイド溝201には、アーム60の先端部60Aが自由状態で嵌っており、アーム60の先端部60Aと、第1ガイド溝201の長手方向の内壁とが係合している。アーム60の基端部60Bは、シフトセレクト軸15の外周に固定されている。ナット59の一面59Aには、円筒状の嵌合突起203が突出形成されている。ハウジング22の内壁面22Bに形成され、ねじ軸61の軸方向M21,22に沿う長溝である第2ガイド溝202に嵌合突起203が嵌合している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シフト操作のためにシフトセレクト軸を軸まわりに回転させるとともに、セレクト操作のために前記シフトセレクト軸を軸方向移動させる電動アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、マニュアルトランスミッションの変速が自動化された自動制御式マニュアルトランスミッション(Automated Manual Transmission)の変速装置が知られている。このような変速装置には、シフトレバーを操作して、変速機構の変速段を切り換える電動アクチュエータが備えられている。
たとえば下記特許文献1では、電動モータの回転駆動力によってシフトセレクト軸を軸まわりに回転させてシフト動作を行わせたり、電動モータの回転駆動力によってシフトセレクト軸を軸方向に移動させたりするシフト/セレクト駆動装置が、電動アクチュエータの一例として開示されている。このシフト/セレクト駆動装置は、電動モータの回転駆動力を、シフトセレクト軸を回転させるための力に変換するための第1変換機構と、当該回転駆動力を、シフトセレクト軸を軸方向移動させるための力に変換するための第2変換機構とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−75097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、電動モータの回転駆動力を増幅して出力するために、第1変換機構(シフト変換機構)には、減速機構の1つであるボールねじ機構やアームが備えられている。たとえば、ボールねじ機構は、シフトセレクト軸と食違い角が90°の食違い軸の関係をなすねじ軸と、ねじ軸にボールを介して係合するナットとを有している。具体的には、電動モータの駆動力がねじ軸に入力されるようになっており、アームの一端がナットに同行回転可能に結合されるとともに、アームの他端がシフトセレクト軸に一体回転可能に連結される。具体的には、アームの他端とシフトセレクト軸との連結は、スプライン嵌合によって実現されている。そして、電動モータの回転によりナットがねじ軸の軸方向に移動し、このナットの移動に同伴してアームがシフトセレクト軸まわりに揺動し、これにより、シフトセレクト軸が回転されるようになっている。
【0005】
しかしながら、このような構成では、シフトセレクト軸をスムーズに軸方向移動させることが難しいという問題がある。たとえば、アームとシフトセレクト軸との間の寸法精度が低いと、一対のスプライン部の間に形成されている噛合いのための隙間が部分的に狭くなり、シフトセレクト軸の軸方向移動に同伴して、アームの他端が当該シフトセレクト軸の軸方向に移動するおそれがある。そして、アームの他端が軸方向移動すると、アームがシフトセレクト軸に対して直交姿勢から傾倒することにより、一対のスプライン部の間に形成されている噛合いのための隙間がさらに狭くなり、その結果、軸方向移動するシフトセレクト軸の外周がアームの他端のスプライン部内周を抉るおそれがある。
【0006】
アームの他端をシフトセレクト軸に固定させることができればこのような問題は解消するのであるが、シフト操作のためにアームの一端がナットに結合されている前記の構成では、アームの他端を軸方向移動可能なシフトセレクト軸に固定させることはできない。したがって、アームの他端をシフトセレクト軸に固定させる場合には、シフトセレクト軸を円滑に回転させるための構成も同時に検討する必要がある。
【0007】
そこで、この発明の目的は、円滑なシフト操作およびセレクト操作をシフトセレクト軸に行わせることができる電動アクチュエータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、シフト操作のためにシフトセレクト軸(15)を軸まわりに回転させるとともに、セレクト操作のために前記シフトセレクト軸を軸方向(M11,M12)移動させる電動アクチュエータ(21)であって、回転駆動力を生じさせる電動モータ(23)と、前記電動モータからの回転駆動力を、前記シフトセレクト軸をその軸まわりに回転させるように駆動させる力に変換するシフト変換機構(24)とを含み、前記シフト変換機構は、前記シフトセレクト軸と所定の食違い角の食違い軸をなし、前記電動モータの回転駆動力を受けて回転するねじ軸(61)と、前記シフトセレクト軸の軸方向に沿う第1ガイド溝(201)を有し、前記ねじ軸に取り付けられたナット(59)とを有するボールねじ機構(58)と、一端(60A)が前記第1ガイド溝に自由状態で収容されつつ、当該一端が前記第1ガイド溝に係合し、かつ他端(60B)が前記シフトセレクト軸の外周に固定され、前記ナットの前記ねじ軸の軸方向(M21,M22)移動に伴って前記シフトセレクト軸まわりに揺動し、前記シフトセレクト軸を回転させるアーム(60)とを含み、前記電動アクチュエータは、前記ねじ軸における複数の前記軸方向位置で、前記ナットが前記ねじ軸まわりに回転するのを阻止するまわり止め手段(202,203)をさらに含む、電動アクチュエータである。
【0009】
なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表すが、特許請求の範囲を実施形態に限定する趣旨ではない。以下、この項において同じ。
この構成によれば、アームの他端は、シフトセレクト軸に固定的に取り付けられている。シフトセレクト軸を軸方向移動させる場合に、シフトセレクト軸がアームを抉ることがないので、そのため、シフトセレクト軸の軸方向移動をスムーズに行わせることができ、これにより、シフトセレクト軸を良好にセレクト操作させることができる。
【0010】
また、シフト変換機構のボールねじ機構のナットには、シフトセレクト軸の軸方向に沿う第1ガイド溝が設けられている。アームの一端が前記第1ガイド溝に自由状態で収容されつつ、第1ガイド溝の内壁に係合することにより、当該アーム一端がナットに同行移動可能に取り付けられている。したがって、シフトセレクト軸が軸方向移動すると、その軸方向移動に同伴して、アームがシフトセレクト軸の軸方向に沿って移動する。また、アームがシフトセレクト軸上のいずれの位置にあっても、アームの一端とナットとの間の係合状態は保たれる。
【0011】
さらには、ナットのねじ軸まわりの回転が、複数のねじ軸の軸方向位置で阻止されている。つまり、ナットにおけるねじ軸の軸方向の位置によらずに、ねじ軸まわりの回転が阻止される。そのため、ナットのねじ軸の軸方向位置によらずに、ねじ軸に入力される回転駆動力を、ナットをねじ軸の軸方向に移動させる力に変換することができる。これにより、シフトセレクト軸を良好にシフト操作させることができる。
【0012】
以上により、円滑なシフト操作およびセレクト操作をシフトセレクト軸に行わせることができる電動アクチュエータを提供することである。
なお、前記ねじ軸は、前記シフトセレクト軸と90°の食違い角の食違い軸をなしていてもよい。
請求項2記載の発明は、前記電動モータおよび前記シフト変換機構を収容するハウジング(22)をさらに含み、前記ハウジングは前記ねじ軸に対向する対向面(22B)を有し、前記まわり止め手段は、前記ナットおよび前記対向面の一方に設けられ、前記ねじ軸の軸方向に沿う第2ガイド溝(202)と、前記ナットおよび前記対向面の他方に形成され、前記第2ガイド溝に嵌合する嵌合突起(203)とを備えている、請求項1記載の電動アクチュエータである。
【0013】
この構成によれば、ハウジングの対向面に形成された第2ガイド溝に、ナットの嵌合突起が嵌合する。または、ナットに形成された第2ガイド溝に、ハウジングの対向面に形成された嵌合突起が嵌合する。これにより、簡単な構成で、ねじ軸の軸方向位置の全域におけるナットのねじ軸まわりの回転を阻止することができる。
請求項3に記載のように、前記第2ガイド溝の内壁と前記嵌合突起の外周との間にはすべり軸受(205,206,207)が介装されていてもよい。
【0014】
請求項4に記載にように、前記アームの前記他端には、前記シフトセレクト軸の外周を取り囲む円環状部(73)が設けられており、前記シフトセレクト軸は前記円環状部内に圧入されることにより、前記他端が前記シフトセレクト軸の外周に固定されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態の電動アクチュエータが適用された変速装置の一部構成の概略分解斜視図である。
【図2】図1に示す電動アクチュエータの構成を示す斜視図である。
【図3】図1に示す電動アクチュエータの構成を示す断面図である。
【図4】図3の切断面線IV‐IVから見た断面図である。
【図5】図3の矢視Vから見た底面図である。
【図6】嵌合突起が第2ガイド溝に嵌合している状態を示す図である。
【図7】シフト動作時におけるシフト変換機構の状態変化を示す図である。
【図8】セレクト動作時におけるシフト変換機構の状態変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態の変速駆動装置3が適用された変速装置1の一部構成の概略分解斜視図である。変速装置1は、変速機2と、変速機2を変速駆動する変速駆動装置3とを備えている。
変速機2は、公知の常時かみ合い式の平行軸歯車動力伝達機構により構成された動力伝達機構(図示しない)と、動力伝達機構の動力伝達経路を、複数の動力伝達経路の間で切り換えるための変速操作機構6と、これら動力伝達機構および変速操作機構6を収容するギヤハウジング7とを備えている。変速機2を含む構成の変速装置1は、乗用車やトラックなどの車両に搭載されている。動力伝達機構における動力伝達経路の切換えにより、動力伝達比を異ならせることができる。
【0017】
変速操作機構6はギヤハウジング7内に収容され、互いに平行に延びる複数のフォーク軸10A,10B,10Cを有している。フォーク軸10Aは軸方向M1,M2に移動可能に設けられている。フォーク軸10Bは軸方向M3,M4に移動可能に設けられている。フォーク軸10Cは軸方向M5,M6に移動可能に設けられている。軸方向M1、M3およびM5は、互いに同じ方向を向きかつ互いに並行な軸方向である。軸方向M2、M4およびM6は、それぞれ、軸方向M1、M3およびM5と逆向きの軸方向である。
【0018】
フォーク軸10A,10B,10Cは、軸方向M1,M3,M5(M2,M4,M6)から見て一直線上に位置するように並置されている。各フォーク軸10A,10B,10Cの途中部には、変速駆動装置3によって駆動されるフォークヘッド12A,12B,12Cが固定されている。これらのフォークヘッド12A,12B,12Cは、軸方向M1,M3,M5に関して揃っている。各フォークヘッド12A,12B,12Cは変速駆動装置3に対向する対向面を有している。各対向面は同一平面を有している。各対向面には、係合凹所14A,14B,14Cが形成されている。インターナルレバー16の他端部16bは、係合凹所14A,14B,14Cの内部空間を通って、各フォークヘッド12A,12B,12Cとの係合のための係合位置間を移動することができる。
【0019】
また、各フォーク軸10A,10B,10Cには、動力伝達機構の動力伝達経路を切り換えるために操作される被操作部材(図示しない。たとえばクラッチスリーブやシンクロナイザ機構など)と係合するためのシフトフォーク11(図1では、フォーク軸10Aに設けられたシフトフォーク11のみを示す)が固定されている。シフトフォーク11の軸方向M1〜M6移動により、シフトフォーク11を被操作部材に係合させることができ、その被操作部材を駆動することができる。なお、図1には係合凹所14A,14B,14Cとして係合溝が示されているが、係合溝に代えて係合孔を採用してもよいのは言うまでもない。
【0020】
変速駆動装置3は、変速操作機構6にシフト動作およびセレクト動作を行わせるための円柱状のシフトセレクト軸15と、シフトセレクト軸15をシフト動作およびセレクト動作させるための回転駆動源として用いられる電動アクチュエータ21とを備えている。シフトセレクト軸15は中心軸線17を有している。シフトセレクト軸15はギヤハウジング7に、シフトセレクト軸15の軸まわり(すなわち中心軸線17まわり)に第1または第2軸回転方向R1,R2に回転可能に、かつ第1または第2軸方向M11,M12に移動可能に支持されている。シフトセレクト軸15はフォーク軸10A,10B,10Cのそれぞれといわゆる90°の食違い軸の関係をなす状態に配置されている。第2軸回転方向R2は第1軸回転方向R1と逆向きの回転方向である。第2軸方向M12は、第1軸方向M11と逆向きの軸方向である。
【0021】
シフトセレクト軸15の途中部には、ギヤハウジング7内に収容されるインターナルレバー16の一端16aが固定されている。インターナルレバー16は、シフトセレクト軸15の中心軸線17まわりに、シフトセレクト軸15と同伴回転する。シフトセレクト軸15の先端部(図1に示す左手前部)は、ギヤハウジング7外に突出している。
電動アクチュエータ21により、シフトセレクト軸15が第1軸方向M11移動されると、インターナルレバー16が第1軸方向M11に移動させられる。また、電動アクチュエータ21により、シフトセレクト軸15が第2軸方向M12移動されると、インターナルレバー16が第2軸方向M12に移動させられる。そして、セレクト方向位置でインターナルレバー16の他端部16bが所要のフォークヘッド12A,12B,12Cに係合し、これによりセレクト動作が達成される。
【0022】
一方、電動アクチュエータ21によりシフトセレクト軸15が第1軸回転方向R1に回転されると、インターナルレバー16がシフトセレクト軸15まわりに第1軸回転方向R1に回動させられる。また、電動アクチュエータ21によりシフトセレクト軸15が第2軸回転方向R2に回転されると、インターナルレバー16がシフトセレクト軸15まわりに第2軸回転方向R2に回動する。その結果、インターナルレバー16と係合しているフォークヘッド12A,12B,12Cが、フォーク軸10A,10B,10Cの軸方向M1〜M6に移動し、これにより、シフト動作が達成される。
【0023】
図2は、電動アクチュエータ21の構成を示す斜視図である。図3は、電動アクチュエータ21の構成を示す断面図である。図4は、図3の切断面線IV‐IVで切断したときの断面図である。なお、図2では、シフトセレクト軸15の図示を省略している。以下、図2〜図4を参照して、電動アクチュエータ21の構成について説明する。
電動アクチュエータ21は、有底略筒状のハウジング22を備えている。電動アクチュエータ21は、ギヤハウジング7(図1参照)の外表面または車両の所定箇所に固定されている。
【0024】
電動アクチュエータ21は、たとえばブラシレス電動モータからなる電動モータ23と、電動モータ23により発生された回転トルク(回転駆動力)を、シフトセレクト軸15を軸まわりに回転させる力に変換するためのシフト変換機構24と、電動モータ23によって発生させられた回転トルクを、シフトセレクト軸15を第1または第2軸方向M11,M12に移動させる力に変換するためのセレクト変換機構25と、電動モータ23によって発生させられた回転トルクの伝達をシフト変換機構24およびセレクト変換機構25に断続するための切換ユニット26とを備えている。シフト変換機構24、セレクト変換機構25および切換ユニット26はハウジング22内に収容されている。
【0025】
ハウジング22の開口部(図3に示す左側)は、略板状の蓋27によって閉塞されている。このハウジング22および蓋27は、それぞれたとえば鋳鉄やアルミニウムなどの金属材料を用いて形成されており、蓋27の外周がハウジング22の開口部に嵌め合わされている。蓋27にはその内面(図3に示す右面)と外面(図3に示す左面)とを貫通する円形の貫通孔29が形成されている。また、蓋27の外面には、電動モータ23の本体ケーシングが固定されている。電動モータ23は、回転方向R11(電動モータ23の出力軸側から見て時計まわり。「CW」ともいう)と回転方向R12(たとえば逆方向)とに正逆回転可能な電動モータであり、この電動モータ23としてたとえばブラシレス電動モータが採用されている。電動モータ23は、その本体ケーシングがハウジング22外に露出するように取り付けられている。電動モータ23の出力軸40は、シフトセレクト軸15と、食違い角90°の食違い軸の関係をなして配置されている。第1および第2軸方向M11,M12(図4参照)と直交する所定の方向(図3に示す左右方向)に沿って延びている。出力軸40は蓋27の貫通孔29を介してハウジング22の内部に臨んでおり、切換ユニット26に対向している。
【0026】
図4に示すように、ハウジング22は、シフトセレクト軸15における先端(図4に示す下端)側の部分や、シフト変換機構24の各構成部品を主に収容する略箱状の主ハウジング22Aを含んでいる。主ハウジング22Aは、第1側壁111(図4参照)と、第2側壁112(図4参照)と、シフトセレクト軸15の基端寄りを支持するための第1の軸ホルダ113(図4参照)と、シフトセレクト軸15の先端部を収容支持するための第2の軸ホルダ114(図4参照)と備えている。
【0027】
第1側壁111の内側の側面は、平坦面からなる第1内壁面111A(図4参照)である。第2側壁112の内側の側面は、平坦面からなる第2内壁面112A(図4参照)である。第2内壁面112Aは第1内壁面111Aと対向し、第1内壁面111Aと平行に形成されている。
第1の軸ホルダ113は、第1側壁111の外壁面(第1内壁面111Aとは反対側の面)から外方に膨出して形成されており、たとえば円柱状に形成されている。第1の軸ホルダ113は第1側壁111と一体的に形成されている。第1の軸ホルダ113および第1側壁111には、断面円形の挿通孔104が形成されている。挿通孔104は第1の軸ホルダ113および第1側壁111を、それらの厚み方向(図4に示す上下方向)に貫通している。挿通孔104には、シフトセレクト軸15が挿通されている。
【0028】
挿通孔104の内周壁には、第1すべり軸受101(図4参照)が内嵌固定されている。第1すべり軸受101は、挿通孔104に挿通されているシフトセレクト軸15の途中部(先端部よりもやや基端寄り)の外周を取り囲み、シフトセレクト軸15の途中部の外周を摺接支持している。
第2の軸ホルダ114は、第2側壁112の外壁面(第2内壁面112Aとは反対側の面)から外方に膨出して形成されており、たとえば略円筒状に形成されている。第2の軸ホルダ114は第2側壁112と一体的に形成されている。第2の軸ホルダ114の内周面および底面によって、シフトセレクト軸15の先端部(図4に示す下端部)を収容する円柱状の先端部収容溝115(図4参照)が区画されている。先端部収容溝115の内周壁は、円筒状の挿通孔104と同軸の中心軸線を有する円筒状に形成されている。
【0029】
先端部収容溝115の内周壁には、第2すべり軸受102(図4参照)が内嵌固定されている。第2すべり軸受102は、先端部収容溝115に収容されているシフトセレクト軸15の先端部の外周を取り囲んで、当該先端部の外周を摺接支持している。シフトセレクト軸15は、これら第1および第2すべり軸受101,102によって、その中心軸線17まわりに回転可能にかつ第1および第2軸方向M11,M12移動可能に支持されている。
【0030】
挿通孔104における第1すべり軸受101の外側の部分には、ごみや埃がハウジング22内(主ハウジング22A内)に進入しないように、挿通孔104の内周壁とシフトセレクト軸15の外周との間をシールするためのシール部材103が介装されている。
第1の軸ホルダ113において、厚み方向(図4に示す上下方向)に関しシール部材103と第1すべり軸受101との間には、ロックボール106が配設されている。具体的には、挿通孔104の内周壁と、第1の軸ホルダ113の外周面とを貫通する貫通孔105内にロックボール106が収容されている。ロックボール106は、円筒状の先端部収容溝115の中心軸線(すなわちシフトセレクト軸15の中心軸線17)と直交する方向(直交方向)に延び、略円筒状をなすともに、当該方向(直交方向)に沿って移動可能に設けられている。ロックボール106の先端部は半球状をなしており、次に述べる係合溝107に係合する。
【0031】
シフトセレクト軸15の外周には、第1および第2軸方向M11,M12に間隔を空けて、周方向に延びる複数本(たとえば3本)の係合溝107が形成されている。各係合溝107は全周にわたって設定されている。ロックボール106がその長手方向に移動することにより、先端部が挿通孔104の内周壁よりも中心軸線17側(図4に示す左方)に突出して、その先端部が係合溝107と係合して、シフトセレクト軸15の第1および第2軸方向M11,M12移動を阻止する。これにより、シフトセレクト軸15は、第1および第2軸方向M11,M12への移動が阻止された状態で、一定力で保持される。
【0032】
シフトセレクト軸15の外周における第1すべり軸受101が摺接する部分と第2すべり軸受102が摺接する部分との間には、雄スプライン121(図4参照)と、ピニオン36が噛み合う後述するラック122(図4参照)とが、第1すべり軸受101側からこの順で形成されている。
図3に示すように、切換ユニット26は、電動モータ23の出力軸40と同軸に連結された伝達軸41と、伝達軸41と同軸にかつ、同伴回転可能に設けられた第1ロータ42と、伝達軸41に同軸にかつ、同伴回転可能に設けられた第2ロータ44と、第1ロータ42と第2ロータ44との間で伝達軸41の連結先を切り換えるためのクラッチ機構39とを備えている。
【0033】
伝達軸41は、電動モータ23側に設けられた小径の主軸部46と、主軸部46の第1ロータ42側の軸方向端部(図3に示す右端部)に、主軸部46と一体的に設けられ、主軸部46よりも大径の大径部47とを備えている。
第1ロータ42は、伝達軸41に対し電動モータ23側と反対側に配置されている。
第1ロータ42は、電動モータ23側の軸方向端部(図3に示す左端部)の外周から径方向外方に向けて張り出す第1アーマチュアハブ54を備えている。第1アーマチュアハブ54は大径部47の電動モータ23側と反対側の面(図3に示す右面)に対向して配置されている。
【0034】
第2ロータ44は、伝達軸41の大径部47に対し第1ロータ42と反対側、すなわち電動モータ23側に配置されており、伝達軸41の主軸部46の周囲を取り囲んでいる。第2ロータ44は、電動モータ23側と反対側の軸方向端部(図3に示す右端部)の外周から径方向外方に向けて張り出す第2アーマチュアハブ55を備えている。第2アーマチュアハブ55は大径部47の電動モータ23側の面(図3に示す左面)に対向して配置されている。言い換えれば、第1ロータ42(の第1アーマチュアハブ54)および第2ロータ44(の第2アーマチュアハブ55)が、伝達軸41の大径部47を挟むように配置されている。
【0035】
クラッチ機構39は、第1ロータ42と断続して、伝達軸41と第1ロータ42とを連結/解放するシフト側電磁クラッチ(シフト側電磁クラッチ)43と、第2ロータ44と断続して、伝達軸41と第2ロータ44とを連結/解放するセレクト側電磁クラッチ(第2クラッチ)45とを備えている。
シフト側電磁クラッチ43は、第1フィールド48と第1アーマチュア49とを備えている。第1アーマチュア49は、伝達軸41の大径部47の軸方向他方側の面(図3に示す右面)に第1アーマチュアハブ54の電動モータ23側の面(図3に示す左面)と微小間隔を隔てて配置されており、略円環板状をなしている。第1アーマチュア49は鉄などの強磁性体を用いて形成されている。第1フィールド48は、ヨーク内に第1電磁コイル50を内蔵しており、ハウジング22に固定されている。
【0036】
セレクト側電磁クラッチ45は、第2フィールド51と、第2アーマチュア52とを備えている。第2アーマチュア52は、伝達軸41の大径部47の軸方向一方側の面(図3に示す左面)に第2アーマチュアハブ55の電動モータ23と反対側の面(図3に示す右面)と微小間隔を隔てて配置されており、略円環板状をなしている。第2アーマチュア52は鉄などの強磁性体を用いて形成されている。第2フィールド51はヨーク内に第2電磁コイル53を内蔵しており、ハウジング22に固定されている。第1フィールド48および第2フィールド51は、大径部47、第1アーマチュアハブ54および第2アーマチュアハブ55を挟んで軸方向に沿って並置されている。
【0037】
シフト側およびセレクト側電磁クラッチ43,45を駆動するためのクラッチ駆動回路(図示しない)が接続されている。クラッチ駆動回路には、配線などを介して電源(たとえば24V。図示しない)から電圧供給(給電)されている。クラッチ駆動回路はリレー回路などを含む構成であり、クラッチ駆動回路は、シフト側およびセレクト側電磁クラッチ43,45に対し、それぞれ個別に給電および給電停止を切換え可能に設けられている。なお、クラッチ駆動回路はシフト側およびセレクト側電磁クラッチ43,45の双方を駆動する構成に限られず、シフト側電磁クラッチ43を駆動するためのクラッチ駆動回路と、セレクト側電磁クラッチ45を駆動するためのクラッチ駆動回路とを個別に設けることもできる。
【0038】
クラッチ駆動回路によるシフト側電磁クラッチ43に対する給電により、第1電磁コイル50に通電されると、その第1電磁コイル50が励磁状態になり、第1電磁コイル50を含む第1フィールド48に電磁吸引力が発生する。そして、第1アーマチュア49が第1フィールド48に吸引されて第1フィールド48に向けて変形し、第1アーマチュア49が第1アーマチュアハブ54と摩擦接触する。したがって、第1電磁コイル50への通電により第1電磁コイル50が第1ロータ42に結合(締結)され、伝達軸41が第1ロータ42に連結される。そして、第1電磁コイル50に対する電圧供給が停止され、第1電磁コイル50に電流が流れなくなることにより、第1アーマチュア49に対する吸引力もなくなり、第1アーマチュア49が元の形状に復帰する。これにより、第1電磁コイル50が第1ロータ42から分離して、伝達軸41が第1ロータ42から解放される。つまり、シフト側電磁クラッチ43に対する給電/給電停止を切り換えることにより、電動モータ23から第1ロータ42への回転トルクの伝達を断続させることができる。
【0039】
一方、クラッチ駆動回路によるセレクト側電磁クラッチ45に対する給電により、第2電磁コイル53に通電されると、その第2電磁コイル53が励磁状態になり、第2電磁コイル53を含む第2フィールド51に電磁吸引力が発生する。そして、第2アーマチュア52が第2フィールド51に吸引されて第2フィールド51に向けて変形し、第2アーマチュア52が第2アーマチュアハブ55と摩擦接触する。したがって、第2電磁コイル53への通電により、第2電磁コイル53が第2ロータ44に結合(締結)され、伝達軸41が第2ロータ44に連結される。そして、第2電磁コイル53に対する電圧供給が停止され、第2電磁コイル53に電流が流れなくなることにより、第2アーマチュア52に対する吸引力もなくなり、第2アーマチュア52が元の形状に復帰する。これにより、第2電磁コイル53が第2ロータ44から分離して、伝達軸41が第2ロータ44から解放される。つまり、第2電磁コイル53への給電通電/給電停止を切り換えることにより、電動モータ23から第2ロータ44への回転トルクの伝達を断続させることができる。
【0040】
第2ロータ44の外周には、小径の円環状の第1歯車56が外嵌固定されている。第1歯車56は第2ロータ44と同軸に設けられている。第1歯車56は転がり軸受57によって支持されている。転がり軸受57の外輪は、第1歯車56に内嵌固定されている。転がり軸受57の内輪は、伝達軸41の主軸部46の外周に外嵌固定されている。
シフト変換機構24は、回転運動を直線運動に変換する減速機としてのボールねじ機構58と、このボールねじ機構58のナット59の軸方向移動に伴って、シフトセレクト軸15をその軸まわり(中心軸線17まわり)に回動させるアーム60とを備えている。
【0041】
ボールねじ機構58は、第1ロータ42と同軸(すなわち伝達軸41と同軸)に延びるねじ軸61と、ねじ軸61にボール(図示しない)を介して螺合するナット59とを備えている。ねじ軸61はシフトセレクト軸15と、食違い角が90°の食違い軸の関係をなしている。言い換えれば、ねじ軸61の軸方向M21,M22、およびシフトセレクト軸15の軸方向M11,M12の双方に直交する方向から見て、ねじ軸61およびシフトセレクト軸15は互いに直交している。
【0042】
ねじ軸61は転がり軸受64,67によって軸方向M21,M22への移動が規制されつつ支持されている。具体的には、ねじ軸61の一端部(図3に示す左端部)は転がり軸受64によって支持されており、また、ねじ軸61の他端部(図3に示す右端部)は転がり軸受67によって支持されている。これらの転がり軸受64,67により、ねじ軸61がその軸まわり(その中心軸線80まわり)に回転可能に支持されている。
【0043】
転がり軸受64の内輪は、ねじ軸61の一端部に外嵌固定されている。また、転がり軸受64の外輪は、ハウジング22に固定された、切換ユニット26のケーシングの底壁65の内外面を貫通する貫通孔に内嵌されている。また、転がり軸受64の外輪にはロックナット66が係合されて、ねじ軸61の軸方向M22への移動が規制されている。ねじ軸61の一端部における転がり軸受64よりも電動モータ23側(図3に示す左側)の部分は、第1ロータ42の内周に挿通されて、この第1ロータ42に同伴回転可能に連結されている。転がり軸受67の外輪は、ハウジング22に内嵌固定されている。
【0044】
図3および図4に示すように、ハウジング22(主ハウジング22A)は、ねじ軸61と対向する平坦面からなるハウジング内壁面(対向面)22Bを有している。内壁面22Bは、ねじ軸61に取り付けられたナット59の一面59A(図4に示す左面)に近接している。
図5は、図3の矢視Vから見た底面図である。
【0045】
図3〜図5に示すように、ナット59は直方体状をなしており、ねじ軸61の軸方向M21,M22の直交方向に長い矩形状をなす底面59Bを有している。ナット59の底面59Bには、長溝である第1ガイド溝201が形成されている。この第1ガイド溝201は、底面59Bの長手方向に長い矩形状をなしている。換言すると、第1ガイド溝201はねじ軸61の軸方向M21,M22の直交方向に沿う方向(すなわち、シフトセレクト軸15の軸方向M11,M12に沿う方向(図4参照))に長手を有している。第1ガイド溝201は断面矩形状をなしている。第1ガイド溝201にはアーム60の先端部(一端)60Aが自由状態で嵌って(収容されて)おり、アーム60の先端部60Aと、第1ガイド溝201の長手方向の内壁201A,201Bとが係合している。
【0046】
図3および図4に示すように、ナット59のハウジング22側の一面59A(底面59Bとは反対向きの面)の略中央部には、内壁面22Bに向けて突出する円柱状の嵌合突起203が形成されている。この嵌合突起203は、長溝である第2ガイド溝202に嵌合している。
図6は、嵌合突起203が第2ガイド溝202に嵌合している状態を示す図である。
【0047】
図3、図4および図6に示すように、ハウジング内壁面22Bには、ねじ軸61に対向する部分に、第2ガイド溝202が形成されている。第2ガイド溝202はねじ軸61に沿って延びており、換言すると、ねじ軸61の軸方向M21,M22に沿う方向に長手を有している。第2ガイド溝202は断面矩形状をなしている。第2ガイド溝202における長手方向に沿う各側壁には、板状すべり軸受205,206が、当該側壁に沿う姿勢で固定的に配設されている。板状すべり軸受205,206には、鋼裏金に銅−錫合金を多孔質に焼結して形成され、その両方の主面に4フッ化エチレン樹脂(PTFE)と特殊添加剤との混合材を塗布した板材を採用している。各板状すべり軸受205,206は、対応する第2ガイド溝202の側壁に接着剤などにより固定されている。
【0048】
一方、円筒状の嵌合突起203の外周には、円筒すべり軸受207が外嵌固定されている。この円筒すべり軸受207の直径は、第2ガイド溝202に配設された一対の板状すべり軸受205,206(の内壁205A,206A)間の間隔と同等かやや小径に設定されている。円筒すべり軸受207には、鋼裏金に銅−錫合金を多孔質に焼結して形成され、その内外両方の周面に4フッ化エチレン樹脂(PTFE)と特殊添加剤との混合材を塗布した円筒材を採用している。円筒すべり軸受207は、嵌合突起203の外周に嵌め合いや接着剤などにより固定されている。
【0049】
嵌合突起203が第2ガイド溝202に嵌合した状態では、円筒すべり軸受207の外周が板状すべり軸受205の内壁205Aおよび板状すべり軸受206の内壁206Aの双方に摺接している。
アーム60は直線状のロッドであり、その全長にわたって断面矩形状に形成されている。アーム60の基端部(他端)60Bには、シフトセレクト軸15に固定するための固定係合部(円環状部)73(図4参照)が設けられている。たとえば円環板状をなしている。しかしながら、固定係合部(円環状部)73が円筒状をなしていてもよい。固定係合部73はシフトセレクト軸15に外嵌されている。シフトセレクト軸15は固定係合部73に対して圧入により(嵌め合い)より固定されている。アーム60はシフトセレクト軸15に対し直交する姿勢でシフトセレクト軸に固定支持されている。そのため、シフトセレクト軸15の回転に同伴して、アーム60はシフトセレクト軸15に直交する面内を揺動する。
【0050】
また、嵌合突起203の外周と第2ガイド溝202の内壁(すべり軸受205,206の内壁205A,206A)との間の係合により、ナット59はねじ軸61まわりの回転が阻止される。具体的には、嵌合突起203と第2ガイド溝202の内壁205A,206Aとの係合によってナット59が、その一面59Aがねじ軸61およびシフトセレクト軸15の双方に平行になるような姿勢に保たれている。したがって、ねじ軸61の回転に伴って、ナット59がねじ軸61の軸方向M21,M22に移動し、このナット59の軸方向移動に同伴して、アーム60の先端部60Aが移動する。
【0051】
したがって、ねじ軸61が回転し、これに伴ってナット59がねじ軸61の軸方向M21,M22に移動すると、アーム60がシフトセレクト軸15まわりに揺動し、このアーム60の揺動に同伴してシフトセレクト軸15が回転する。
図3に示すように、セレクト変換機構25は、第1歯車56と、伝達軸41と平行に延び、回転可能に設けられたピニオン軸95と、ピニオン軸95における一端部(図3に示す左端部)寄りの所定位置に同軸に固定された第2歯車81と、ピニオン軸95の他端部(図3に示す右端部)寄りの所定位置に同軸に固定された小径のピニオン36とを備え、全体として減速機を構成している。なお、第2歯車81は、第1歯車56およびピニオン36の双方よりも大径に形成されている。
【0052】
ピニオン軸95の一端部(図3に示す左端部)は、ハウジング22に固定された転がり軸受96によって支持されている。転がり軸受96の内輪は、ピニオン軸95の一端部(図3に示す左端部)に外嵌固定されている。また、転がり軸受96の外輪は、蓋27の内面に形成された円筒状の凹部97内に固定されている。また、ピニオン軸95の他端部(図3に示す右端部)は、転がり軸受84によって支持されている。ピニオン36とラック122とがラックアンドピニオンにより噛み合っているので、伝達軸41の回転に伴ってピニオン軸95が回転すると、これに伴って、シフトセレクト軸15が第1および第2軸方向M11,M12に移動する。
【0053】
ピニオン軸95の他端部に関連して、ピニオン軸95の回転角を検出するための第1回転角センサ87が配設されている。ハウジング22の底壁(蓋27とは反対側の壁。図3に示す右壁)には、その内外面を貫通するセンサ用孔85が形成されている。第1回転角センサ87は、センサ部(図示しない)と、センサ部に連結された第1センサ軸99とを備えている。第1センサ軸99の先端部は、センサ用孔85を通ってピニオン軸95の先端部(図3に示す右端部)82に同伴回転可能に連結されている。第1回転角センサ87は、ピニオン軸95の回転に同伴して回転する第1センサ軸99の回転角に基づいて、ピニオン軸95の回転角を算出する。この第1回転角センサ87の検出出力により、シフトセレクト軸15の軸方向位置を求めることが可能である。第1回転角センサ87の検出出力は次に述べるECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)88に入力される。
【0054】
また、ハウジング22内には、シフトセレクト軸15の回転角を検出するための第2回転角センサ89が設けられている。第2回転角センサ89は、センサ部(図示しない)が内蔵された本体90と、センサ部に連結された第2センサ軸94と、第2センサ軸94に外嵌固定されたセクタ歯車91とを備えている。このセクタ歯車91は、シフトセレクト軸15に同伴回転可能に設けられた(外嵌固定された)センサ用歯車92と噛み合っている。第2回転角センサ89は、シフトセレクト軸15の回転に伴って回転する第2センサ軸94の回転角に基づいて、シフトセレクト軸15の回転角を算出する。第2回転角センサ89の検出出力は次に述べるECU88に入力されるようになっている。
【0055】
ECU88は、電動モータドライバ(図示しない)を介して電動モータ23を駆動制御する。また、ECU88はリレー回路(図示しない)を介してシフト側およびセレクト側電磁クラッチ43,45を駆動制御する。なお、ECU88はギヤハウジング7内に収容されていてもよい。
図7は、シフト動作時におけるシフト変換機構24の状態変化を示す図である。
【0056】
この実施形態では、図7(a)に示す状態から、電動モータ23を回転方向R11(図3参照)に回転させ、かつシフト側電磁クラッチ43を接続状態にすると、ねじ軸61が、その軸まわりに(中心軸線80まわりに)回転方向R21(図3参照)に回転する。ナット59のねじ軸61まわりの回転が、ねじ軸61の軸方向M21,M22の全域で阻止されているので、図7(b)に示すように、ナット59がねじ軸61の軸方向M21に向けて移動する。
【0057】
また、後述するように、アーム60がシフトセレクト軸15上のいずれの位置にあっても、アーム60の先端部60Aとナット59との間の係合状態は保たれている。そのため、ナット59の軸方向M21移動に伴って、シフトセレクト軸15に直交する面内をアーム60が(その先端部60Aが軸方向M21移動するように)揺動し、このアーム60の揺動に伴って、シフトセレクト軸15が第1軸回転方向R1に回転させられる。このシフトセレクト軸15の回転に同伴して、インターナルレバー16がシフトセレクト軸15まわりに回転し、これにより、インターナルレバー16と連結されているフォーク軸10A,10B,10C(図1参照)が、軸方向M2,M4,M6(図1参照)に軸方向移動して、シフト操作が行われる。
【0058】
一方、図7(a)に示す状態から、電動モータ23を回転方向R12(図3参照)に回転させ、かつシフト側電磁クラッチ43を接続状態にすると、ねじ軸61が、その軸まわりに回転方向R22(図3参照)に回転する。ナット59のねじ軸61まわりの回転が、ねじ軸61の軸方向M21,M22の全域で阻止されているので、図7(c)に示すように、ナット59がねじ軸61の軸方向M22に向けて移動する。また、次に述べるように、アーム60がシフトセレクト軸15上のいずれの位置にあっても、アーム60の先端部60Aとナット59との間の係合状態は保たれている。そのため、このナット59の軸方向M22移動に伴って、シフトセレクト軸15に直交する面内をアーム60が(その先端部60Aが軸方向M22移動するように)揺動し、このアーム60の揺動に伴って、シフトセレクト軸15が第2軸回転方向R2に回転させられる。このシフトセレクト軸15の回転に同伴して、インターナルレバー16がシフトセレクト軸15まわりに回転し、これにより、インターナルレバー16と連結されているフォーク軸10A,10B,10Cは、軸方向M1,M3,M5(図1参照)に軸方向移動して、シフト操作が行われる。このように、シフトセレクト軸15を良好にシフト操作させることができる。
【0059】
図8は、シフト動作時におけるシフト変換機構24の状態変化を示す図である。この実施形態では、図8(a)に示す状態から、電動モータ23を回転方向R11(図3参照)に回転させ、かつセレクト側電磁クラッチ45を接続状態にすると、ピニオン軸95が回転方向R31(図3参照)に軸まわりに回転し、ピニオン36とラック部122との係合により、シフトセレクト軸15が第1軸方向M11に移動する。このシフトセレクト軸15の軸方向M11に同伴して、インターナルレバー16(図1参照)が第1軸方向M11に移動し、これにより、インターナルレバー16と係合するフォーク軸10B,10C(図1参照)が選択されるセレクト操作が行われる。
【0060】
アーム60の基端部60Bがシフトセレクト軸15の外周に固定されているので、シフトセレクト軸15の軸方向M11移動に同伴して、アーム60がシフトセレクト軸15に対する直交姿勢のまま第1軸方向M11に移動する。アーム60の先端部60Aが、第1および第2軸方向M11,M12に沿って延びる第1ガイド溝201に嵌っているので、第1軸方向M11に移動するアーム60がナット59の一部に干渉するおそれはない。また、アーム60がシフトセレクト軸15の第1および第2軸方向M11,M12のいずれの位置にあっても、アーム60の先端部60Aと第1ガイド溝201の長手方向の内壁201A,201Bとが係合しており、すなわち、アーム60の先端部60Aとナット59との間の係合状態は保たれている。
【0061】
一方、図8(a)に示す状態から、電動モータ23を回転方向R12(図3参照)に回転させ、かつセレクト側電磁クラッチ45を接続状態にすると、ピニオン軸95が回転方向R32(図3参照)に軸まわりに回転し、ピニオン36とラック部122との係合により、シフトセレクト軸15が軸方向M12移動する。このシフトセレクト軸15の軸方向M12移動に同伴して、インターナルレバー16(図1参照)が第2軸方向M12に移動し、これにより、インターナルレバー16と係合するフォーク軸10B,10C(図1参照)が選択されるセレクト操作が行われる。
【0062】
アーム60の基端部60Bがシフトセレクト軸15の外周に固定されているので、シフトセレクト軸15の軸方向M12移動に同伴して、アーム60がシフトセレクト軸15に対する直交姿勢のまま第2軸方向M12に移動する。アーム60の先端部60Aが、第1および第2軸方向M11,M12に沿って延びる第1ガイド溝201に嵌っているので、第2軸方向M12移動するアーム60がナット59の一部に干渉するおそれはない。また、アーム60がシフトセレクト軸15の軸方向M11,M12のいずれの位置にあっても、アーム60の先端部60Aと第1ガイド溝201の長手方向の内壁201A,201Bとが係合しており、すなわち、アーム60の先端部60Aとナット59との間の係合状態は保たれている。このように、シフトセレクト軸15を良好にセレクト操作させることができる。
【0063】
以上によりこの実施形態によれば、アーム60の基端部60Bは、シフトセレクト軸15に固定的に取り付けられている。そのため、シフトセレクト軸15を第1および第2軸方向M11,M12移動させる場合に、シフトセレクト軸15がアーム60を抉ることがないので、そのため、シフトセレクト軸15の軸方向M11,M12移動をスムーズに行うことができ、これにより、シフトセレクト軸15を良好にセレクト操作させることができる。
【0064】
以上により、この電動アクチュエータ21により、円滑なシフト操作およびセレクト操作をシフトセレクト軸15に行わせることができる。
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明は他の形態で実施することもできる。
ボールねじ機構58のナット59の底面59Bに第1ガイド溝201が形成されている場合を例に挙げて説明したが、第1ガイド溝201は、ナット59の底面59Bと同伴移動可能に設けられたレール等によって形成される構成であってもよい。
【0065】
また、第2ガイド溝202をハウジング内壁面22Bに設け、かつ嵌合突起203をナット59に形成する場合を例に挙げたが、第2ガイド溝202をナット59の一面59Aに設け、かつ嵌合突起203をハウジング内壁面22Bに形成してもよい。
また、第2ガイド溝202が、ハウジング内壁面22Bに固定的に設けられたレールや、ナット59の一面59Aと同伴移動可能に設けられたレール等によって構成されていてもよいし、第1ガイド溝201は、ナット59と同伴移動可能に設けられたレール等によって形成される構成であってもよい。
【0066】
板状すべり軸受205,206の組および円筒すべり軸受207の一方が取り除かれた構成であってもよいし、その両方が取り除かれた構成であってもよい。
また、アーム60の基端部60Bとのシフトセレクト軸15の外周との固定は、圧入(嵌め合い)ではなく、ネジ止め等や接着等により達成されていてもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0067】
15…シフトセレクト軸、21…電動アクチュエータ、22…ハウジング、22B…内壁面(対向面)、23…電動モータ、24…シフト変換機構、61…ねじ軸、58…ボールねじ機構、59…ナット、60…アーム、60A…先端部(一端)、60B…基端部(他端)、73…固定係合部(円環状部)、201…第1ガイド溝、202…第2ガイド溝、203…嵌合突起、205…板状すべり軸受、206…板状すべり軸受、207…円筒すべり軸受、M11…第1軸方向(シフトセレクト軸の軸方向)、M12…第2軸方向(シフトセレクト軸の軸方向)、M21…軸方向(ねじ軸の軸方向)、M22…軸方向(ねじ軸の軸方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シフト操作のためにシフトセレクト軸を軸まわりに回転させるとともに、セレクト操作のために前記シフトセレクト軸を軸方向移動させる電動アクチュエータであって、
回転駆動力を生じさせる電動モータと、
前記電動モータからの回転駆動力を、前記シフトセレクト軸をその軸まわりに回転させるように駆動させる力に変換するシフト変換機構とを含み、
前記シフト変換機構は、
前記シフトセレクト軸と所定の食違い角の食違い軸をなし、前記電動モータの回転駆動力を受けて回転するねじ軸と、前記シフトセレクト軸の軸方向に沿う第1ガイド溝を有し、
前記ねじ軸に取り付けられたナットとを有するボールねじ機構と、
一端が前記第1ガイド溝に自由状態で収容されつつ、当該一端が前記第1ガイド溝に係合し、かつ他端が前記シフトセレクト軸の外周に固定され、前記ナットの前記ねじ軸の軸方向移動に伴って前記シフトセレクト軸まわりに揺動し、前記シフトセレクト軸を回転させるアームとを含み、
前記電動アクチュエータは、前記ねじ軸における複数の前記軸方向位置で、前記ナットが前記ねじ軸まわりに回転するのを阻止するまわり止め手段をさらに含む、電動アクチュエータ。
【請求項2】
前記電動モータおよび前記シフト変換機構を収容するハウジングをさらに含み、
前記ハウジングは前記ねじ軸に対向する対向面を有し、
前記まわり止め手段は、
前記ナットおよび前記対向面の一方に設けられ、前記ねじ軸の軸方向に沿う第2ガイド溝と、前記ナットおよび前記対向面の他方に形成され、前記第2ガイド溝に嵌合する嵌合突起とを備えている、請求項1記載の電動アクチュエータ。
【請求項3】
前記第2ガイド溝の内壁と前記嵌合突起の外周との間にはすべり軸受が介装されている、請求項2記載の電動アクチュエータ。
【請求項4】
前記アームの前記他端には、前記シフトセレクト軸の外周を取り囲む円環状部が設けられており、
前記シフトセレクト軸は前記円環状部内に圧入されることにより、前記他端が前記シフトセレクト軸の外周に固定されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電動アクチュエータ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−100858(P2013−100858A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244479(P2011−244479)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】