説明

電動ミシン

【課題】 安全性の高い無線コントローラを備えたミシンを提供する。
【解決手段】
コントローラ2を踏み込むと最初にミシン本体1を起動する信号を出力し、更に該踏み込み量に応じた縫い速度(駆動速度)の信号を送る。制御装置11には、制御内容を変更する有効/無効切替装置30接続され、コントローラ2の指令信号を無効/有効に切り替える。有効/無効切替装置30を無効に切り替えると、制御装置11はコントローラ2からの指令を無視し、例えばミシン駆動信号を受信しても、モータ駆動装置12に対して停止信号を出して、モータを停止した状態に維持する。従って有効/無効切替装置30により無効を選択しておけば、コントローラ2の誤操作があっても、ミシン本体1はこれに応答せず、安全を維持できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電動ミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
電動ミシンの始動、停止及び駆動速度(縫い速度)の制御は、ミシン本体に備えられたレバーか或いはミシン本体に接続された足踏み式のコントローラで行う構成が普通であるが、該足踏み式のコントローラをコードレス化して、無線でミシンの制御を行うことが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特許第2722769号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、無線コントローラを使用する場合、外来ノイズや誤操作等により、ミシンが勝手に始動したり、使用者が意図しない動作を行ったりすることが考えられる。
例えば針へ糸を通す作業、布をセットする作業など他の作業中に、無線コントローラを誤って踏むと、使用者が意図しない状況でミシンが始動することになり、極めて危険である。また、無線コントローラは可搬性があるため、他の場所で物を乗せられて始動信号を出力してしまうことなども考えられる。更に無線で信号を送るため、ノイズの影響を受けやすく、この点の配慮も必要であり、安全上の対策が望まれていた。
本発明は上記従来技術の問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の電動ミシンは、ミシン本体に無線で接続する無線コントローラと、ミシン本体側に備えられ、前記無線コントローラからの指令信号を受信する受信装置と、該受信装置で受信した指令信号に基づいてミシンの稼働を制御する制御装置と、前記制御装置の制御内容を変更する変更装置と、を備えたことを特徴とする。
前記変更装置としては、無線コントローラからの指令信号を無効にすることが可能な無効/有効切り替え装置が可能である。この切り替え装置を本体側に装着しておけば、使用者が任意に無線コントローラからの指令を無効化でき、ノイズや誤操作などによる誤動作を防止できる。
更に前記無線コントローラがミシンの始動と停止及び駆動速度を指令する信号を出力する構成において、前記変更装置が、前記始動指令に対して低速度で始動するように制御内容を変更する、構成を採用することも可能である。
この構成において、変更装置で低速度始動を選択しておけば、誤操作があっても、ミシンは低速度で始動するため、使用者が意図しない状況でも対処が可能である。また、このモードで使用者が普通に使用しても、始動時に低速度になるだけであるため、該モードのまま使用することも可能である。
更に前記変更装置が、前記駆動速度指令に対して、最高速度制限を設定し、該最高速度以上の速度で駆動しないように制御内容を変更するようにすることも可能であるし、また、前記駆動速度指令に対して実際に駆動する速度の比率を変更するようにすること等も可能である。これらの速度制御内容の変更により安全性を確保することが可能になる。
なお、上記構成は、その中の1又は1以上の任意のものを設けても良いし、全てを設けても良い。
更に前記ミシン本体側に、前記無線コントローラの状態を表示するように構成することも可能である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のミシンによれば、無線コントローラの誤操作やノイズ等に起因する誤動作の危険を防止することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、この電動ミシンはミシン本体1とコントローラ2を備える。ミシン本体1とコントローラ2との間はケーブルがなく、コードレスになっており、無線により接続されている。
ミシン本体1には表示装置5が設けられ、種々の表示を行い、またこの実施形態ではコントローラ2からの送信内容を表示するようになっている。
ミシン本体1にはまた操作装置6が設けられており、使用者が種々の操作を行えるようになっている。
【0008】
コントローラ2は足踏み式になっており、コントローラ2を踏み込むと最初にミシン本体1を起動する信号を出力し、更に該踏み込み量に応じた縫い速度(駆動速度)の信号を送るようになっている。
【0009】
コントローラ2は図2に示すように、送信装置20を備えており、使用者の踏み込みに対応した指令信号を送信するようになっている。
【0010】
ミシン本体1は受信装置10を備えており、送信装置20からの指令信号を受信装置10で受信し、この指令信号に応じて制御装置11がモータ駆動装置12を制御して、ミシンの縫い動作を行わせるように構成されている。
【0011】
この実施形態では、検知装置4により送信装置20からの信号から踏み込みレベル、信号レベルなどの情報を検知して、制御装置11を経由して表示装置5に表示するようになっている。また、送信装置20から電池などの電源の残量、その他の電源情報が送られるように構成されており、これらの情報も表示装置5に表示するように構成されている。更に制御装置11は、電源残量、信号レベル、その他の情報に基づいて、電源の交換などの警告を表示装置5に表示するように構成されている。また、必要に応じてミシンの停止などの指令を出して、不具合の発生を未然に防止するように構成することも可能である。
【0012】
制御装置11には、更に制御内容を変更する変更装置3が設けられており、使用者が制御内容の修正を行うことができるようになっている。
この実施形態では、変更装置3として有効/無効切替装置30と速度制御変更装置31を設けている。
【0013】
有効/無効切替装置30は、コントローラ2の指令信号を無効/有効に切り替えるものであり、使用者の意志により、操作装置6を操作してコントローラ2の操作を無効にすることができるようになっている。有効/無効切替装置30を無効に切り替えると、制御装置11は受信装置10が受信したコントローラ2からの指令を無視し、例えばミシン駆動信号を受信しても、モータ駆動装置12に対して停止信号を出して、モータを停止した状態に維持する。
この構成により、有効/無効切替装置30により無効を選択しておけば、コントローラ2の誤操作があっても、ミシン本体1はこれに応答せず、安全を維持できる。
【0014】
有効/無効切替装置30を有効に切り替えた場合には、コントローラ2からの指令に従って、通常の動作を実行するように構成されている。
【0015】
図3に有効/無効切替装置30により無効と有効を切り替えたときの制御装置11の動作を示す。
制御装置11は有効/無効切替装置30の設定内容を確認し(ステップS1)、有効の場合には、コントローラ2からの信号を受信装置10経由で受信し(ステップS2)、送信装置20の踏み込みレベルを確認して(ステップS3)、該踏み込みレベルに応じてモータ駆動装置12を制御してモータを駆動する(ステップS4)。
【0016】
ステップS1で有効/無効切替装置30が無効に切り替わっている場合は、制御装置11はコントローラ2からの信号を無視し、モータ駆動装置12を制御してモータの停止状態を維持する(ステップS5)。
【0017】
この実施形態では、更に有効/無効切替装置30に加えて速度制御変更装置31を備えている。この速度制御変更装置31は種々の機能を備えており、この実施形態では次の3つの機能を有している。
1.コントローラ2の踏み込み開始による始動指令に対して低速度で始動するように制御内容を変更する。
2.コントローラ2の踏み込み量に対応した速度で駆動するが、その最高速度制限を設定し、該最高速度以上の速度で駆動しないように制御内容を変更する。
3.コントローラ2の踏み込み量と駆動速度との比率を変更する。
【0018】
コントローラ2の実際の踏み込み開始に応答して、ミシンを低速度で始動するように構成することにより、安全度を高めることができる。また、誤操作やノイズにより誤動作する場合にも、始動がゆっくりであれば、安全度は高まる。
この始動速度を使用者が設定できるように構成することも可能である。また低速度から通常の縫い速度までの速度の上昇カーブなどを設定できるように構成するようにしても良い。
【0019】
次に、速度制御変更装置31はミシンの最高速度を制限できるようになっている。コントローラ2を誤操作して、コントローラ2を最大に踏み込んでもモータ駆動装置12は最高速度以上にモータを駆動しないようになっている。該最高速度は使用者の任意に設定できるように構成可能である。
この構成により、最高速度が所定の値に抑えられるため、安全な運転が可能である。またコントローラ2の誤操作の際にも一定以上に速度が上がらないため、比較的安全である。
【0020】
更に速度制御変更装置31はコントローラ2の踏み込み量と駆動速度との関係を変更できるようになっている。例えば、最初の踏み込み部分については、誤操作もあり得るから感度を鈍くしておき、踏み込み量に対して増加する速度を小さくしておくことなどが可能である。また、全く応答しない不感領域を設けても良い。
この踏み込み量と速度との関係は種々の態様が可能であり、使用者が目的に応じて種々設定できるように構成することが望ましい。
【0021】
以上説明した実施形態においては、変更装置3により制御内容を種々変更できるから、安全性を高めることができる。特に、有効/無効切替装置30によりコントローラ2からの指令を無効化できるため、誤操作やノイズによる誤動作を防止でき、極めて安全な動作を確保できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態を示す概略図。
【図2】本発明の一実施形態のブロック図。
【図3】本発明の一実施形態の動作を示すフローチャート図。
【符号の説明】
【0023】
1:ミシン本体、2:コントローラ、3:変更装置、4:検知装置、5:表示装置、6:操作装置、10:受信装置、11:制御装置、12:モータ駆動装置、20:送信装置、30:有効/無効切替装置、31:速度制御変更装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミシン本体に無線で接続する無線コントローラと、
ミシン本体側に備えられ、前記無線コントローラからの指令信号を受信する受信装置と、
該受信装置で受信した指令信号に基づいてミシンの稼働を制御する制御装置と、
前記制御装置の制御内容を変更する変更装置と、
を備えたことを特徴とする電動ミシン。
【請求項2】
前記変更装置が、無線コントローラからの指令信号を無効にすることが可能な無効/有効切り替え装置である、
請求項1に記載の電動ミシン。
【請求項3】
前記無線コントローラがミシンの始動と停止及び駆動速度を指令する信号を出力し、
前記変更装置が、前記始動指令に対して低速度で始動するように制御内容を変更する、
請求項1に記載の電動ミシン。
【請求項4】
前記無線コントローラがミシンの始動と停止及び駆動速度を指令する信号を出力し、
前記変更装置が、前記駆動速度指令に対して、最高速度制限を設定し、該最高速度以上の速度で駆動しないように制御内容を変更する、
請求項1に記載の電動ミシン。
【請求項5】
無線コントローラがミシンの始動と停止及び駆動速度を指令する信号を出力し、
前記変更装置が、前記駆動速度指令に対して実際に駆動する速度の比率を変更する、
請求項1に記載の電動ミシン。
【請求項6】
前記ミシン本体側に備えられ、前記無線コントローラの状態を表示するための表示装置を更に備えた、
請求項1又は2又は3又は4又は5に記載の電動ミシン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−20664(P2006−20664A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−198786(P2004−198786)
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【出願人】(000002244)蛇の目ミシン工業株式会社 (79)
【Fターム(参考)】