説明

電動作業機

【課題】無負荷時の電力の消費を低減して電動作業機のエネルギ効率を向上させる。
【解決手段】電圧変換部103は、電圧制御部104から入力された信号値が目標値となるように制御することにより、電池40からの電力を昇圧してモータ50に作用させる。制御部108は、モータ50に流れる電流に基づいてモータ50の負荷が小さい状態である無負荷状態であるか否かを判定する。制御部108は、モータ50が無負荷状態であると判断したときには、モータ50が無負荷状態でないときに比して、電圧制御部104から電圧変換部103に出力される信号値が大きくなるように制御信号を送信し、電圧変換部103からモータ50側に出力される電圧を小さくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電動作業機としては、モータによって被駆動物(例えば、回転刃)が駆動される電動作業機(例えば電動刈払機)であって、モータの回転数を調整可能な電動刈払機が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この電動刈払機では、ハンドルに備えられたスイッチが操作者によって操作されると、電力源とモータとの間に設けられたコンバータでモータの印加電圧を変化させ、モータの回転数を変更している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−217843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の電動刈払機では、操作者によるスイッチ操作に応じてモータの回転数が設定されるため、例えば刈払作業する場所を移動したり刈払作業を行わずに同行者と話しなどをしているときに操作者がモータの回転数を高いままにしていると、無駄な電力が消費されてしまう。特に、モータの電力源として電動刈払機に電池が搭載されているときには、無駄な電力が消費されると電動刈払機で作業できる時間が短くなってしまい、電動刈払機での作業時間を確保するには大きな電池が必要となって電動刈払機全体の重量が大きくなってしまう。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、無負荷時の電力の消費を低減して電動作業機のエネルギ効率を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る電動作業機は、
電力源からの電力を受けて作業具を駆動する電動機と、
前記電力源と前記電動機とに接続され、前記電動機に印加する電圧を調整可能な電源回路部と、
前記電動機の負荷を検出する負荷検出手段と、
前記検出された電動機の負荷に基づいて前記電動機に印加する電圧を変更するように前記電源回路部を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
前記制御手段は、前記検出された電動機の負荷が第1の所定負荷より小さいときに前記電動機に印加する電圧を小さくするよう前記電源回路部を制御してもよい。
【0008】
また、前記制御手段は、前記検出された電動機の負荷が所定期間に亘って第2の所定負荷より小さいときに前記電動機への電力の供給が停止されるように前記電源回路部を制御してもよい。
【0009】
前記電源回路部によって調整された電圧に関連する調整関連電圧を検出する調整関連電圧検出手段を更に備え、前記電源回路部は、前記検出された調整関連電圧に基づいて前記電動機に印加する電圧を調整し、前記制御手段は、前記検出された電動機の負荷に基づいて、前記調整関連電圧検出手段により検出される調整関連電圧を変更する、ものであってもよい。
【0010】
あるいは、前記負荷検出手段は、前記電動機に流れる電流に関連する電流値を検出することにより前記電動機の負荷を検出してもよい。
【0011】
また、前記負荷検出手段は、前記作業具から発せられる音量を検出することにより前記電動機の負荷を検出してもよい。
【0012】
さらに、前記電力源として電池が搭載されてもよい。
【0013】
また、前記電動機は、回転子と、固定子とを有し、前記回転子は出力軸と一体に回転し、前記回転子と前記固定子との何れか一方は、前記出力軸の軸方向視において前記出力軸を中心に円周方向に配列した略環状の複数のコイルが設けられた円板状のコイルディスクを有し、前記回転子と前記固定子との何れか他方は、前記コイルディスクを前記出力軸の軸方向に通過する磁束を発生する磁束発生手段を有する、ものであってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、無負荷時の電力の消費を低減して電動作業機のエネルギ効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態としての電動作業機(電動刈払機)の外観の一例を示す外観斜視図である。
【図2】図1の電動作業機の駆動部の様子の一例を示す断面図である。
【図3】モータの出力軸と回転子を分解した様子の一例を示す分解図である。
【図4】回転子をコミュテータディスク側から軸方向視した様子の一例を示す説明図である。
【図5】コイルディスクを軸方向視した様子の一例を示す説明図である。
【図6】固定子を出力軸の軸方向から見た様子の一例を示す説明図である。
【図7】電源部の構成の概略を示す構成概略図である。
【図8】電源部の具体的な回路の一例を示す回路図である。
【図9】電源部の動作の一例を示すフローチャートである。
【図10】実施形態の電源部の動作の一例を示すタイムチャートである。
【図11】変形例の電源部の構成の概略を示す構成概略図である。
【図12】変形例の電源部の具体的な回路の一例を示す回路図である。
【図13】変形例の電源部の動作の一例を示すタイムチャートである。
【図14】変形例の電源部の構成の概略を示す構成概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係る電動作業機を図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係る電動作業機(電動刈払機)20の外観の一例を示す外観図である。実施形態の電動作業機20は、主棹部22と、主棹部22に取付けられた操作部26と、作業具(刈刃34)を駆動する駆動部30と、駆動部30に電力を供給する電源部36と、を備える。
【0018】
主棹部22は、前端に駆動部30が取付けられると共に後端に電源部36が取付けられ、駆動部30と電源部36とを連結する。主棹部22は、例えばアルミニウム合金や強化プラスチックなどによって中空の棒状に形成され、駆動部30が取付けられる後側にカバー24が設けられている。主棹部22の内部には、駆動部30と電源部36とを電気的に接続する電源線23が挿通されている。主棹部22の真ん中よりやや後方には操作部26が取付けられられ、操作者は、この操作部26を持つと共に、操作部26の前側に設けられた補助ハンドル23を持って、電動作業機20を操作することができる。操作部26は、操作者が握るハンドル27と、ハンドル27に設けられたトリガレバー28と、を備える。トリガレバー28は、ハンドル27に対して回動可能に形成され、操作者がハンドル27を持った状態で操作可能に形成されている。トリガレバー28が操作者によって握られることで、電源部36から駆動部30に電力が供給され、電動作業機20が起動される。なお、実施形態では、図示するように、補助ハンドル23は、D字状のものとしたが、主棹部22から軸対象に延出するU字状やT字状のものとするなど如何なる形状としてもよい。
【0019】
次に、図2から図6を参照して、駆動部30について説明する。図2は、図1の電動作業機20の駆動部30の様子の一例を示す断面図である。駆動部30は、図1および図2に示するように、電源部36からの電力を受けて動力を出力するモータ50と、モータ50を覆うモータケーシング32と、モータ50からの動力によって回転する刈刃34(作業具)と、を備える。モータケーシング32は、主棹部22と内部が連通するよう主棹部22前端に取付けられ、主棹部22側に吸気口32aが設けられると共にモータ50の側面に相当する位置に排気口32bが設けられている。
【0020】
モータ50は、電力を受けて出力軸52に動力を出力する整流子モータとして構成され、出力軸52と、この出力軸52と一体に回転する回転子53と、モータケーシング32に固定された固定子54および摺動子55と、を備える。
【0021】
出力軸52は、モータケーシング32に設けられた軸受57,58により回転可能に軸支され、その一端が、モータケーシング32から突出し、刈刃34が取付けられている。図3に、モータ50の出力軸52と回転子53を分解した様子の一例を示す。出力軸52は、図示するように、回転子53を支持可能なフランジ部52aを有し、フランジ部52aの一端側に回転子53が取り付けられて出力軸52と回転子53とが一体に回転するように形成されている。
【0022】
回転子53は、フランジ61と、コミュテータディスク62と、4つのコイルディスク64が積層されて形成されたコイル基板63と、複数の絶縁板67,68と、駆動部30を冷却するファン65と、から構成されている。フランジ61は、例えばアルミニウム合金により形成され、中空円筒状の軸部61aと、軸部61aから延出する円板状のフランジ部61bと、を有する。フランジ61は、軸部61aの内周面が出力軸52の外周面と嵌合して互いに回り止め固定され、軸部61aの外周面には、フランジ部61bの一端側に絶縁板67を介してコミュテータディスク62が取り付けられ、フランジ部61bの他端側に絶縁板68を介してコイル基板63が取り付けられている。ファン65は、複数のブレード65aを有し、回転子53が回転することでモータケーシング32の吸気口32aから外気を取り込んで排気口32bから排気し、駆動部30を冷却する。図6に、ファン65を軸方向から見た様子の一例を示す。ファン65は、図示するように、外周方向に突出する複数のブレード65aが軸回りに等間隔に形成されている。
【0023】
コミュテータディスク62と4つのコイルディスク64とは、絶縁体基板と導体パターンとから構成されたプリント配線板により形成される。図4に、回転子53をコミュテータディスク62側から軸方向視した様子の一例を示し、図5に、コイルディスク64を軸方向視した様子の一例を示す。コミュテータディスク62と4つのコイルディスク64とは、図3〜図5に示すように、中心にフランジ61の軸部61aが挿入される穴が開いた円板状にそれぞれ形成されている。
【0024】
コミュテータディスク62の上面には、コミュテータ(整流子)の導体パターンが円環状に形成され、コイルディスク64の上面及び下面には、コイルの導体パターンがそれぞれ円環状に形成されている。コイルディスク64には、導体パターンの内周側と外周側との端部に当たる位置に、コイルディスク64を軸方向に貫通するスルーホール64a,64bが設けられ、このスルーホール64a,64bに半田が充填されてコイルディスク64の上面に形成された導体パターンと下面に形成された導体パターンとが電気的に接続されている。これにより、コイルディスク64には、軸方向視において略コ字状の複数のコイル64cが形成される。そして、4つのコイルディスク64は、軸方向視においてそれぞれに形成された導体パターンが一致するように、または、それぞれ予め定められた角度ずつズレるように積層されてコイル基板63を構成する。また、コミュテータディスク62の導体パターンの外周側の端部に当たる位置には、コミュテータディスク62を軸方向に貫通するスルーホール62aが設けられ、このスルーホール62aに対応する位置において、2つの絶縁版67,68やフランジ61のフランジ部61bにも軸方向に貫通する孔が内周に絶縁部材を配して設けられ、これらのスルーホール62aや孔に半田が充填されてコミュテータディスク62のコミュテータの導体パターンとコイルディスク64の複数のコイル64cとが電気的に接続されている。
【0025】
固定子54は、図2に示すように、永久磁石であるマグネット71と、一対の上ヨーク72および下ヨーク73と、から構成されている。上ヨーク72および下ヨーク73は、鉄等の磁性体によって円環板状に形成されており、モータケーシング32にそれぞれ固定されている。上ヨーク72は、回転子53の上面と対向するように、詳細にはコミュテータディスク61より外周側でコイルディスク64のコイル64cと対向するように配置され、下ヨーク73は、回転子53の下面と対向するように、詳細にはコイルディスク64のコイル64cと対抗するように配置されている。マグネット71は、周方向に配列された複数の磁極を有して円環状に形成されており、下ヨーク73の上面に固着されている。こうした構成により、上ヨーク72および下ヨーク73は、マグネット71が発生する磁束がコミュテータディスク62及びコイルディスク64を出力軸52の軸方向に通過するように、磁路を形成する。
【0026】
摺動子55は、回転子53の上面に摺接するように、詳細にはコミュテータディスク62に摺接するように、モータケーシング32に固定されている。摺動子55は、電源線29を介して電源部36に接続されている。
【0027】
こうして構成された実施形態のモータ50では、電源部36からモータ20の摺動子55に電圧が印加されると、コミュテータディスク62を介して回転子53のコイル64cに電圧が印加される。回転子53には、固定子54が発生する磁束が軸方向に通過しており、回転子53に流れる電流は、この磁束と垂直方向かつ出力軸52の中心軸と直交するように流れるため、出力軸52を中心とする回転力が発生し、回転子53や出力軸52,出力軸52に取付けられた刈刃34が一体に回転する。
【0028】
次に、図7及び図8を参照して電源部36について説明する。図7は、電源部36の構成の概略を示す構成概略図であり、図8は、電源部36の具体的な回路の一例を示す回路図である。電源部36は、電源部36の外縁を形成する電源ケーシング38と、この電源ケーシング38に収容された電池40と、同じく電源ケーシング38に収容されて電池40とモータ50との間に電気的に介在して接続された電源回路100と、を備える。ここで、電池40は、二次電池や燃料電池など如何なるものとしてもく、図示しない電源コードを介して充電可能なものとしたり、電源ケーシング38から取り外して交換したり外部の充電装置で充電可能なものとしてもよい。なお、以下の電源回路100の説明では電気的な接続を単に接続という。また、電池40とモータ50との接続の関して電池40側を「前段」といい、モータ50側を「後段」という。
【0029】
電池40は、実施形態では、図8に示すように、リチウムイオン電池からなる複数の素電池40aが直列に接続された電池パックとして構成され、電池40の正極端子(+)および負極端子(−)と、電池40の状態を出力する出力端子である制御信号出力端子(LD)とが電源回路100に接続される。電池40には、複数の素電池40aのうちの最負極側と電池40の負極端子(−)との間に過電流検出抵抗40cが設けられ、また、電池40には、電池40を保護する保護回路40bが設けられている。過電流検出抵抗40cは、素電池40aに流れる電流を検出するためのものである。保護回路40bは、素電池40aや過電流検出抵抗40cに接続され、素電池40aの電圧を検出すると共に、過電流検出抵抗40cの電圧を検出することで素電池40aに流れる電流を検出する。また、保護回路40bは、検出した素電池40aの電圧や素電池40aに流れる電流などに異常が生じていないか判断し、判断した結果に基づく制御信号を制御信号出力端子(LD)を介して電源回路100に出力する。例えば、保護回路40bは、電池40において過放電又は過電流の少なくともいずれかが生じた場合に電池40に異常が生じたと判断し、電池過放電・過電流信号として、正常時に比して電圧が低いLow信号を制御信号出力端子(LD)から出力する。このLow信号への変更は、例えば、制御信号出力端子(LD)を負極端子(−)に短絡させることで行われる。
【0030】
電源回路100は、図7および図8に示すように、操作者の操作に伴ってモータ50と電池40との接続をON/OFFするスイッチ113と、制御によってモータ50と電池40との接続をON/OFFする電源スイッチ回路101と、定電圧Vccを供給する制御用電源部106と、モータ50と電池40との間に介在して接続されてモータ50に作用する電圧を調整する電圧変換部103と、電圧変換部103から出力された電圧に関連した電圧を検出する電圧制御部104と、電源回路100全体を制御する制御部108と、スイッチ113のON/OFF状態を検出するスイッチ状態検出部107と、電圧変換部103に異常信号(電圧低下信号)を出力する電圧検出部102および電流検出部105と、モータ50に流れる電流を増幅して制御部108に出力する電流増幅部110と、を備える。電源回路100は、正極側配線L1の入力端子I1が電池40の正極端子(+)に接続され、負極側配線L2の入力端子I2が電池40の負極端子(−)に接続され、制御部108や電源スイッチ回路101に接続された入力端子I3が電池40の制御信号出力端子(LD)に接続される。
【0031】
スイッチ113は、モータ50と電池40との間に介在して正極側配線L1に設けられ、操作者のトリガレバー28の操作に応じてモータ50と電池40との接続をON/OFFする。スイッチ113がONの状態にされると、モータ50に電池40からの電力が供給されると共に、制御用電源部106にも電池40からの電力が供給される。制御用電源部106は、定電圧電源回路として、電池40から供給される電力を所定の定電圧Vcc(例えば、5Vなど)に変換して制御部108や電源スイッチ回路101,電流検出部105などに供給する。制御用電源部106は、スイッチ113の後段で正極側配線L1と負極側配線L2とに接続され、制御用電源回路106aと、平滑コンデンサ106b,106cとを備える。制御用電源回路106aは、電池40からの電力を定電圧Vccに変換して制御部108などに出力する。制御用電源回路106aは、公知の構成を採用すればよい。平滑コンデンサ106b,106cは、それぞれ、制御用電源回路106aの入力側(電池40側)および出力側(制御部108など側)の電圧を平滑化する。
【0032】
スイッチ状態検出部107は、スイッチ113のON/OFF状態を検出し、検出したON/OFF状態を制御部108に出力する。スイッチ状態検出部107は、3つの抵抗107a〜107cと、FET(Field Effect Transistor)107dとを備える。ここで、FET107dは、実施形態では、nチャネル型のパワーMOSFET(パワー絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)を用いている。抵抗107aは、一端が正極側配線L1に接続され、他端が抵抗107bおよびFET107dのゲート電極に接続される。抵抗107bは、一端が抵抗107aおよびFET107dのゲート電極に接続され、他端が負極側配線L2に接続される。FET107dは、ドレインがノードN1および抵抗107cを介して制御用電源部106からの定電圧配線(Vcc)に接続され、ソースが負極側配線L2に接続される。そして、抵抗107cとFET107dのドレインとの接続点であるノードN1が制御部108に接続されている。こうして構成されたスイッチ状態検出部107では、スイッチ113がON状態になると、直列に接続された抵抗107a,107bに電池40の出力電圧が印加されると共に、直列に接続された抵抗107cとFET107dに定電圧Vccが印加される。また、FET107dのソース−ゲート間には、抵抗107a,107bによって分圧された電池40の出力電圧が印加され、この印加電圧によってFET107dのソース−ドレイン間に電流が流れる。これによって、直列に接続された抵抗107cとFET107dとのうちのソース−ドレイン間の電位差が小さくなり、ノードN1から制御部108(入力ポート108a)にLow信号が出力される。このように、スイッチ状態検出部107は、スイッチ113がON状態になると、制御部108にスイッチ状態検出信号としてLow信号を出力する。
【0033】
電源スイッチ回路101は、スイッチ113の後段で正極側配線L1と負極側配線L2に接続され、制御部108からの制御信号(電源スイッチ制御信号)に応じて正極側配線L1を接続したり接続を解除したりする。電源スイッチ回路101は、2つの抵抗101b,101cと、2つのFET101a,101dと、を備える。ここで、実施形態では、FET101a,101bは、nチャネル型のパワーMOSFETである。FET101aは、前段がソース側で後段がドレイン側となるように正極側配線L1の途中に介在して接続され、ゲートとソースとが、抵抗101bを介して接続されている。また、FET101aのゲートは、抵抗101cを介してFET101dのドレインに接続されている。FET101dは、ドレインが抵抗101cを介してFET101aのゲートに接続され、ソースが負極側配線L2に接続され、ゲートが制御部108および入力端子I3に接続されている。そして、電源スイッチ回路101には、入力端子I3を介して電池40の制御信号出力端子(LD)と接続され、電池40から電池過放電・過電流信号が入力される。こうして構成された電源スイッチ回路101では、制御部108(出力ポート108b)から電源スイッチ制御信号(High信号)がFET101dのゲートに供給されると、FET101dのソース−ドレイン間に電流が流れる。そして、FET101dのソース−ドレイン間に電流が流れると、FET101aのゲートにHigh信号が供給され、FET101aがONする。これにより、正極側配線L1が導通し、電池40からモータ50へ電力が供給される。また、電源スイッチ回路101では、電池40から電池過放電・過電流信号(Low信号)がFET101dのゲートに供給されると、FET101dがOFFし、FET101dのソース−ドレイン間には電流が流れなくなる。そして、FET101aのゲートにLow信号が供給され、FET101aがOFFとなる。これにより、正極側配線L1の接続が解除され、電池40からモータ50への電力の供給が停止され、電池40や電源回路100が保護される。このように、電源スイッチ回路101は、電池40が過放電・過電流となると、正極側配線L1の接続を解除して電池40や電源回路100を保護する。
【0034】
電圧変換部103は、電池40からの電力を、出力電圧を調整してモータ50に作用させることを順次連続して行う。電圧変換部103は、実施形態では、電池40の出力電圧を昇圧する昇圧回路である。電圧変換部103は、モータ50と電源スイッチ回路101との間(より詳細には、電圧検出部102と電圧制御部104との間)に位置して正極側配線L1と負極側配線L2とに接続される。電圧変換部103は、正極側配線L1および負極側配線L2に接続されたスイッチングIC103aと、スイッチングIC103aに接続されたFET103bと、スイッチングIC103aと正極側配線L1との接続点の後段で正極側配線L1に介在するチョークコイル103cと、チョークコイル103cの後段で正極側配線L1に介在するダイオード103dと、2つの平滑コンデンサ103e,103fと、を備える。ここで、実施形態では、FET103bには、nチャネル型のパワーMOSFETを用いている。FET103bは、ソースが負極側配線L2に接続され、ドレインが正極側配線L1に接続され、ゲートがスイッチングIC103aに接続されている。スイッチングIC103aは、電源制御部104からの電圧検出信号が入力され、入力した信号に応じてFET103bのゲートにHigh信号又はLow信号を出力し、FET103bのON/OFFを切り替える。ダイオード103dは、チョークコイル103dによって昇圧された電圧を整流する。平滑コンデンサ103e,103fは、それぞれ、スイッチングIC103aの入力側(電池40側)および出力側(モータ50側)で正極側配線L1と負極側配線L2とに接続され、電圧変換部103の入力側と出力側との電圧を平滑化する。
【0035】
こうして構成された電圧変換部103では、FET103bのON/OFFが切り替わることによりチョークコイル103cがフライバック効果を起こす。フライバック効果が起こることにより、チョークコイル103cの端子間電圧が上昇し、電圧変換部103への入力電圧が昇圧されてモータ50側に出力される。具体的な制御としては、電圧変換部103は、電圧検出部105からの電圧検出信号に応じて、電圧検出信号の信号値が予め定められた目標値(例えば、モータ50が予め定られた回転数で回転するように定められた値)となるように、スイッチングIC103aがFET103bのゲートにHigh信号とLow信号とを切替えて出力する。スイッチングIC103aは、例えば、PWM制御を行って出力電圧を調整する。即ち、スイッチングIC103aは、例えば、電圧制御部104から入力された電圧検出信号の信号値が目標値よりも小さい場合、FET103bに出力する信号デューティー比(Highの期間/スイッチング周期)を大きくし、電圧制御部104から入力された電圧検出信号の信号値が目標値より高い場合、FET103bに供給する信号デューティー比を小さくして、目標とする電圧がモータ50に作用するよう調整を行うのである。なお、電圧変換部103でのディーティ比の変更は、予め定めた変化度合いの範囲内でレート処理などにより順次変化させるものとすればよい。
【0036】
また、電圧変換部103のスイッチングIC103aには、電圧検出部102や電流検出部105からの制御信号も入力される。電圧検出部102や電圧検出部105からの制御信号は、実施形態では、電圧検出部102や電流検出部105で電圧変換部103の出力電圧を小さくすべきと判断されたときに、電圧低下信号として、通常時に比して大きな電圧が電圧変換部103に入力される。電圧変換部103は、電圧低下信号が入力されると、FET103bのON・OFFの切替えデューティ比を小さくしてモータ50に印加する電圧を小さくする。
【0037】
電圧制御部104は、電圧変換部103の後段で正極側配線L1と負極側配線L2に接続され、電圧変換部103の出力電圧に応じた信号である電圧検出信号を電圧変換部103に出力する。電圧制御部104は、3つの抵抗104a〜104cと、FET104dと、を備える。ここで、実施形態では、FET104dは、nチャネル型のMOSFETを用いている。抵抗104aと抵抗104bとは、互いに接続され、その接続点であるノードN3がスイッチングIC103aに接続される。抵抗104a〜104cは、正極側配線L1及び負極側配線L2との間で直列に接続される。FET104dは、ソースが負極側配線L2に接続され、ドレインが抵抗104b,104cの接続点に接続され、ゲートが制御部108(出力ポート108d)に接続される。こうして構成された電圧制御部104では、電圧検出信号として、ノードN3の電位を電圧変換部103に出力する。電圧制御部104では、通常時には、FET104dのゲートに制御部108(出力ポート108d)からHigh信号が供給され、FET104dのソース−ドレイン間に電流が流れる。このため、通常時には、次式(1)で表されるように、電圧変換部103の出力電圧Voutを抵抗104a,104bの抵抗値Ra,Rbで分圧した電圧値Vinが、電圧検出信号として電圧変換部103に入力される。一方、制御部(出力ポート108d)からLow信号がFET104dのゲートに出力されると、FET104dのソース−ドレイン間には電流が流れず、次式(2)で表されるように、電圧変換部103の出力電圧Voutを抵抗104a〜104cの抵抗値Ra〜Rcで分圧した電圧値Vinが、電圧検出信号として電圧変換部103に入力される。したがって、電圧変換部103から同じ電圧が出力されたとしても、制御部108からLow信号が出力されたときには、制御部108からHigh信号が出力されたときに比して、大きな電圧値Vinが電圧検出信号として電圧変換部103に入力される。電圧変換部103は、上述したように電圧制御部104から入力された電圧検出信号の信号値と目標値とを比べて出力電圧を調整するから、制御部108からLow信号が出力されたときには、制御部108からHigh信号が出力されたときに比して、電圧変換部103の出力電圧が小さくなる。
【0038】
Vin= Vout・Rb/(Ra+Rb) (1)
Vin= Vout・(Rb+Rc)/(Ra+Rb+Rc) (2)
【0039】
電圧検出部102は、電源スイッチ回路101の後段で電圧変換部103の前段において、正極側配線L1と負極側配線L2と電圧変換部103(スイッチングIC103a)に接続される。電圧検出部102は、4つの抵抗102a〜102dと比較器102eとダイオード102fとを備える。抵抗102aと抵抗102bとは直列に接続されて正極側配線L1と負極側配線L2とを接続し、抵抗102a,102bの接続点であるノードN4が比較器102eのマイナス端子(−)に接続される。抵抗102cと抵抗102dとは直列に接続され、制御用電源部106からの定電圧配線(Vcc)と負極側配線L2とを接続し、抵抗102c,102dの接続点であるノードN5が比較器102eのプラス端子(+)に接続される。比較器102eの出力端子は、ダイオード102fを介して電圧変換部103(スイッチングIC103a)に接続される。こうした構成の電圧検出部102では、比較機102eのマイナス端子(−)に、電池40の出力電圧(電池電圧)を抵抗102a,102bで分圧した電圧が入力され、比較機102eのプラス端子(+)に、制御用電源部106からの定電圧Vccを抵抗102c,102dで分圧した電圧が入力される。そして、プラス端子(+)に入力された電圧値が、マイナス端子(−)に入力された電圧値より大きいときに、比較機102eは、電圧低下信号(High信号)を電圧変換部103に出力する。即ち、電圧検出部102では、電池電圧と定電圧Vccとを間接的に比較して、電池電圧が予め定めた基準A(実施形態では、電池電圧が閾値Aより大きいこと)を満たすか否かを判断するのである。なお、抵抗102a〜102dの抵抗値は、電池電圧が閾値A以下になったときに比較機102eからHigh信号が出力されるように設計すればよい。ここで、閾値Aは、例えば、モータ50に目標とする電圧を印加しようとすると、電池40から流れる電流が電池40の定格値を超えてしまう値などを用いることができる。このように、電圧検出部102は、電池電圧を検出し、検出した電池電圧の大きさが予め定めた基準Aを満たさなくなると、電圧変換部103に電圧低下信号(High信号)を出力する。
【0040】
電流検出部105は、電圧制御部104の後段で負極側配線L2に介在するように配置され、検出信号を電圧変換部103(スイッチングIC103a)に出力する。電流検出部105は、ダイオード105aと比較器105bと5つの抵抗105c〜105gを備える。抵抗105gは、負極側配線L2に介在するよう配置され、その一端がモータ50に接続される。抵抗105gは、モータ50に流れる電流を検出するためのものである。抵抗105gの一端(モータ50の負極側配線L2側)は、抵抗105cを介して比較器105bのプラス端子(+)に接続され、抵抗105gの他端は、抵抗105e,ノードN6,抵抗105dを順に介して比較器105bのマイナス端子(−)に接続される。また、抵抗105d,105eの接続点であるノードN6は、抵抗105fを介して制御用電源部106からの定電圧配線(Vcc)に接続される。比較器105bの出力端子は、ダイオード105aを介して電圧変換部103(スイッチングIC103a)に接続される。こうした構成の電流検出部105では、抵抗105gのモータ50側の電位が抵抗105cを介して比較器105bのプラス端子(+)に入力され、制御用電源部106からの定電圧Vccを抵抗105d,105fで分圧した電圧が比較器105bのマイナス端子(−)に入力される。そして、プラス端子(+)に入力された信号の電圧値が、マイナス端子(−)に入力された信号の電圧値より大きいときに、比較器105bは、電圧低下信号(High信号)を電圧変換部103に出力する。ここで、抵抗105gのモータ50側の電位は、抵抗105gを流れる電流、即ち、モータ50に流れる電流に比例するから、比較器105bでは、間接的にモータ50に流れる電流と定電圧Vccとが比較されることになる。しがたって、比較器105dでは、低電圧Vccに対するモータ50に流れる電流の割合が判定され、モータ50に流れる電流の大きさが基準B(実施形態では、モータ50に流れる電流の大きさが閾値B以下であること)を満たさないときに、電圧低下信号(High信号)を出力するのである。なお、抵抗105c〜105gの各抵抗値は、それぞれ、モータ電流が閾値Bを超えると比較器105bからHigh信号が出力されるように設計すればよい。ここで、閾値Bは、モータ50の定格値に基づいて予め定めたりすることができる。
【0041】
電流増幅部110は、モータ電流の大きさに応じた信号を、電流検出信号として制御部108に出力する。電流増幅部110は、電流検出部105に接続される。電流増幅部110は、増幅器110aと、3つの抵抗110b〜抵抗110dと、を備える。抵抗110dは、一端が抵抗105gのモータ50側に接続され、他端が増幅器110aのプラス端子(+)に接続される。抵抗110cは、一端が抵抗105gの電池負極端子(−)側に接続され、他端が増幅器110aのマイナス端子(−)に接続される。抵抗110bは、一端が増幅器110aの出力端子に接続され、他端が増幅器110aのマイナス端子(−)に接続される。そして、増幅器110aの出力端子が制御部108(A/D変換器108c)に接続される。こうした構成の電流増幅部110では、モータ電流の電流値に応じた電圧である抵抗105gの両端の電位差を増幅し、増幅した電圧を電流検出信号として制御部108(A/D変換器108c)に出力する。
【0042】
制御部108は、図示しないCPU(Central Processing Unit)を中心とした周知のマイクロコンピュータとして構成され、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等の図示しないメモリや入力ポート108a,出力ポート108c,108d,A/D変換器108c,電源部108eなどを備える。制御部108は、予めメモリに記憶されたプログラム、または、通信回線を介して外部から入力されるプログラムに従って処理を行う。電源部108eには、定電圧Vccが入力され、必要な電力が電源部108eから制御部108に供給される。A/D変換器108cには、電流増幅部110から電流検出信号(電圧値)が入力され、制御部108は、入力された電流検出信号をデジタルデータ(電流データ)に変換してメモリ(RAM)に格納し、モータ50に流れる電流に関するデータを取得する。
【0043】
制御部108(CPU)は、入力ポート108aにスイッチ状態検出信号が入力されると、出力ポート108bから電源スイッチ制御信号を電源スイッチ回路101(FET101d)へ出力する。これにより、電池40からモータ50への電力の供給が開始される。また、制御部108(CPU)では、電流増幅部110から取得した電流データを閾値Cとを比較し、電流データが所定期間(例えば、数秒など)に亘って閾値C以下となった場合には、モータ50の負荷が小さい無負荷状態であると判断し、無負荷検出信号として、Low信号を出力ポート108dから電圧制御部104(FET104dのゲート)に出力する。これにより、電圧制御部104から出力される電圧検出信号の電圧値が上がり、電圧変換部103の出力電圧が下がる。即ち、電流増幅部110は、モータ50に流れる電流を検出することによりモータ50の負荷を検出しており、制御部108は、モータ50が負荷が小さいときにモータ50に印加する電圧を小さくするのである。なお、制御部108(CPU)は、無負荷検出信号(Low信号)を出力しているときに、電流データが所定期間(例えば、数秒など)に亘って閾値C以上となった場合、無負荷状態が終了したと判断して、再び出力ポート108dからHigh信号を出力する。これにより、電圧制御部104が出力する電圧検出信号の電圧値が下がり、電圧変換部103の出力電圧が上がる。このようにモータ50が無負荷状態のときにはモータ50に印加する電圧を小さくして電池40から持ち出される電力を低減させることにより、電力が浪費されるのを防止して電動作業機20のエネルギ効率を向上させることができる。なお、閾値Cは、例えば、モータ50を駆動しており電動作業具20で刈払作業を行っていないときに、電流増幅部110で検出される電流データより若干大きい電流データなどとして予め実験などにより定めることができる。
【0044】
また、制御部108(CPU)は、電流データと閾値Dとを比較し、電流データの電圧値が所定期間(例えば、数十秒など)に亘って閾値Dを下回る場合(モータ電流が所定期間、基準Dを満たさない場合)には、長い間に亘ってモータ50が無負荷状態であると判断し、出力ポート108bからLow信号を電源スイッチ回路101(FET104dのゲート)に出力する。これにより、電源スイッチ回路101は、電池40から電池過放電・過電流信号が供給された場合と同様に、正極側配線L1を非導通にして、電池40からモータ50への電力の供給を停止させる。なお、閾値Dは、閾値Cと同じ閾値であってもよいし、閾値Cよりも小さい閾値としてもよい。このようにモータ50が長い時間に亘って無負荷状態のときには電池40からモータ50への電力の供給を停止することにより、電力が浪費されるのを防止して電動作業機20のエネルギ効率を向上させることができる。なお、制御部108は、無負荷状態に応じて電池40からモータ50への電力の供給を停止したときに、その旨を作業者に報知してもよい。
【0045】
次に、こうして構成された電源回路100の動作を図9に示すフローチャートを用いて説明する。電源回路100は電池40が接続されてスイッチ113がONされるまでは動作せず(ステップS101;NO及びステップS102;NO)、電源回路100に電池40が接続されると共に操作者によってトリガレバー22が引かれてスイッチ113がONされると(ステップS101;YES及びステップS102;YES)、制御用電源部106から定電圧Vccが出力され、定電圧Vccが制御部108に作用することで制御部108が動作を開始する(ステップS103)。また、スイッチ状態検出部107から制御部108にスイッチ状態検出信号が出力されることによって、制御部108は、スイッチのON状態を検出する(ステップS104)。制御部108は、スイッチ113のON状態を検出すると、電源スイッチ制御信号を電源スイッチ回路101に出力する。これにより、電源スイッチ回路101は、正極側配線L1を導通し、電池40からモータ50側への電力の供給が開始される(ステップS105)。
【0046】
電源スイッチ回路101が正極側配線L1を導通すると、電圧変換部103が動作を開始する(ステップS106)。電圧変換部103の動作が開始されると、電源回路100はステップS107〜S111の処理を逐次並行して行う。電圧変換部103は、入力電圧から出力電圧の変換を常時繰り返し連続して行う(ステップS107)。このとき、電圧変換部103は、電圧制御部104から供給される電圧検出信号に応じて、入力された信号値が予め定められた目標値となるよう出力電圧を逐次調整する。これは、操作者によってスイッチ113がOFFされたり電源スイッチ回路101が正極配線L1の接続を解除して、電池40からモータ50への電力の供給が停止されるまで繰り返し行われる。
【0047】
電流検出部105は、モータ50に流れる電流(モータ電流)が基準Bを満たすかを監視し、モータ電流が基準Bを満たさなくなると電圧変換部103に電圧低下信号を出力する(ステップS108)。また、電圧検出部102は、電池40の電圧(電池電圧)が基準Aを満たすかを監視し、電池電圧が基準Aを満たさなくなると電圧変換部103に電圧低下信号を出力する(ステップS109)。電圧変換部103は、電流検出部105や電圧検出部102から電圧低下信号を入力すると、電圧低下信号が入力されない通常時に比して、出力電圧を小さくする。これにより、モータ電流や電池電圧が基準A,Bを満たさない異常時には、電圧変換部103からの出力電圧を小さくして、駆動部30や電源部40を保護することができる。
【0048】
また、制御部108は、電流増幅部110からモータ電流を取得し、取得したモータ電流と閾値Cとを比較して無負荷状態を判定し、判定した結果に応じた信号を電圧制御部104に出力する(ステップS110)。具体的には、取得したモータ電流が閾値Cより大きいときには、モータ50は無負荷状態でない即ち負荷のある作業中であると判断してHigh信号を電圧制御部104に出力し、取得したモータ電流が閾値Cより小さいときには、モータ50が無負荷状態であると判断してLow信号(無負荷検出信号)を電圧制御部104に出力する。これにより、モータ50が無負荷状態のときには、電圧制御部104に無負荷検出信号が入力され、電圧制御部104から電圧変換部103に出力される電圧検出信号の電圧値が大きくなり、電圧変換部103から出力される出力電圧が小さくなる。このようにモータ50が無負荷状態のときにはモータ50に印加する電圧を小さくして電池40から持ち出される電力を低減させることにより、電力が浪費されるのを防止して電動作業機20のエネルギ効率を向上させることができる。
【0049】
さらに、制御部108は、電流増幅部110によって増幅されたモータ電流を検出し、検出したモータ電流が基準D(所定期間に亘って閾値Dより小さくなる)を満たすかを監視する(ステップS111)。具体的には、モータ電流が基準Dを満たさない通常時には、電源スイッチ回路101にHigh信号を送信して正極側配線L1を導通させ、モータ電流が所定期間に亘って閾値D未満となり基準Dを満たすときには、長い時間に亘ってモータ50の無負荷状態が持続されていると判断し、電源スイッチ回路101にLow信号を送信して正極側配線L1を非道通として電池40からモータ50への電力の供給を停止させる。このようにモータ50が長い時間に亘って無負荷状態のときには電池40からモータ50への電力の供給を停止することにより、電力が浪費されるのを防止して電動作業機20のエネルギ効率を向上させることができる。
【0050】
図10は、実施形態の電源部36の動作の一例を示すタイムチャートである。制御部108は、電流増幅部110から取得した電流データを閾値Cと比較し、電流データが閾値Cを下回って無負荷状態を検出すると(時刻t2,t4)、Low信号(無負荷検出信号)を電圧制御部104に出力して電圧変換部103からの出力電圧を小さくし(図中、電圧VL)、電流データが閾値Cより大きくなって無負荷状態が終わったときには(時刻t1,t3)、High信号を電圧制御部104に出力して電圧変換部103からの出力電圧を大きくする(図中、電圧VH)。これにより、無負荷状態のときに電池40の無駄な電力消費を抑えて電動作業機20のエネルギ効率を向上させることができる。
【0051】
以上説明した本実施形態の電動作業機20では、モータ50に流れる電流を検出することによりモータ50の負荷を検出し、モータ50が無負荷状態のときには、モータ50が無負荷状態でないときに比してモータ50に印加する電圧を小さくするから、モータ50が無負荷状態のときに電池40から無駄に電力が消費されるのを抑制して電動作業機20のエネルギ効率を向上させることができる。また、比較的長い時間に亘ってモータ50が無負荷状態のときには、電池40からモータ50への電力の供給を停止するから、モータ50が無負荷状態のときに電池40から無駄に電力が消費されるのを抑制して電動作業機20のエネルギ効率を向上させることができる。これにより、電動作業機20での作業時間を向上させたり、電池40を小型化して電動作業機20の小型化や軽量化を図ることができる。
【0052】
上述した実施形態の電動作業機20では、電圧変換部103は、電圧制御部104から入力された信号値を、予め定められた目標値となるよう制御を行い、制御部108が電圧制御部104から出力される信号値を操作することで電圧変換部103からの出力電圧を小さくしたが、制御部108が目標値を設定して電圧変換部103に送信されるものとし、無負荷状態では、電圧変換部103の目標値を小さくして電圧変換部103からの出力電圧を小さくしてもよい。また、電圧変換部103の目標値は、適宜変更されるものとしても構わない。例えば、トリガレバー27とは別に、回転数調整レバーを設け、操作者による回転数調整レバーの操作に応じてモータ50の回転数や電圧変換部103の目標値が順次定められてもよい。この場合、例えば、制御部108は、回転数調整レバーに基づいて電圧変換部103の目標値を設定して電圧変換部103に出力し、無負荷状態では、無負荷状態でないときに比して小さい値を電圧変換部103に出力するものとしてもよい。
【0053】
また、上述した実施形態の電動作業機20では、モータ50が所定の回転数で回転するようにモータ50に印加する目標電圧を予め設定しておき、電圧変換部103は、電圧制御部104から入力された電圧が、目標電圧に基づく目標値となるように制御するものとしたが、モータ50の回転数を検出し、検出した回転数に基づいてモータ50が目標とする回転数で回転するように電圧変換部103が電圧を調整してもよい。この場合、制御部108は、モータ50が無負荷状態と判断したときには、無負荷状態でないときに比して、モータ50の目標回転数を低く設定することにより、モータ50に作用する電圧が小さくなるよう制御すればよい。
【0054】
上述した実施形態の電動作業機20では、無負荷状態では、電圧制御部104から電圧変換部103に出力される信号値を操作することで電圧変換部103からの出力電圧を小さくしたが、図11および図12の変形例の電源部36Bに示すように、電圧変換部103の後段に出力調整部120を設け、無負荷状態では、出力調整部120によってモータ50に印加する電圧を小さくしてもよい。変形例の電源部36Bは、出力調整部120を備えた点および電圧制御部104Bが実施形態の電圧制御部104に比して抵抗104cおよびFET104dが省略されている点を除いて実施形態の電源部40と同様であり、同一の構成のものには同一の符号を付して重複する説明は省略する。出力調整部120は、PchFET120aと、2つの抵抗120b,120cと、NchFET120dと、を備える。PchFET120aは、電圧制御部104の後段で正極側配線L1に介在し、ソースが前段に、ドレインが後段に接続されている。抵抗120bは、PchFET120aのソースとゲートとを接続し、抵抗120cは、PchFET120aのゲートと、NchFET120dのソースとを接続する。NchHET120dは、ソースが抵抗120cに、ドレインが負極側配線L2に、ゲートが制御部108の出力ポート108dに接続されている。こうして構成された出力調整部120では、制御部108の出力ポートから出力調整部120にHigh信号が出力されると、PchFET120aのドレイン−ソース間に電流が流れる。PchFET120aのドレイン−ソース間に電流が流れると、モータ50に作用する電圧が小さくなる。
【0055】
この変形例の電源部36Bでは、制御部108は、実施形態と同様の手法によってモータ50の無負荷状態を検出すると、出力ポート108dから所定のデューティ(例えば10%:High10%、Low90%)と所定の周波数(例えば、5KHz)のパルス信号をNchFET120dに出力する。NchFET120dにパルス信号が入力されると、モータ50に作用する電圧もデューティ比に応じたパルス供給となり、モータ50で消費される電力を抑えることが可能となる。また、こうした無負荷状態における制御中に、操作者によって刈払作業が行われ、無負荷状態でなくなったときには、制御部108は、出力ポート108dから一定のHigh信号を常時出力し、パルス供給でない電圧がモータ50に作用する。図13は、変形例の電源部の動作の一例を示すタイムチャートである。図示するように、モータ50が無負荷状態のときには(時刻t2〜t3など)、制御部108の出力ポート108dから出力調整部120にパルス信号が出力され、モータ50には、パルス信号に応じたパルス電圧が作用する。なお、図中、制御部108からパルス信号が出力されているときのNchFET120dのON時のモータ50に作用する電圧が小さくなっているのは、モータ50のインダクタンスによるものであり、ある程度高い周波数(例えば、数十KHzなど)でパルス動作を行うものとすればモータ50に作用する電圧の上昇が抑えられる。こうした構成においても、実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0056】
上述した実施形態の電動作業機20では、モータ50に流れる電流を検出することによりモータ50の負荷を検出するものとしたが、モータ50の負荷は、モータ50の負荷に関連する他の物理量を検出することにより検出してもよく、例えば、電流増幅部110に代えてまたは加えて、電動作業機20の駆動部30で生じる音を検出することによりモータ50の負荷を検出してもよい。図14に変形例の電源部36Cの構成の概略を示す。変形例の電源部36Cでは、モータ50や刈刃34(作業具)の近傍で音声を検出する音声入力部130(例えば、マイクロフォンなど)と、検出した音声信号を増幅して制御部108に出力する信号増幅部140と、を更に備え、駆動部30で生じる音声を制御部108で検出可能としている。この場合、例えば、検出された駆動部30で生じる音が予め定められた閾値より小さいときには、モータ50に流れる電流に拘わらず無負荷状態であると判断したり、検出された駆動部30で生じる音が予め定められた閾値より小さく、且つ、モータ50に流れる電流が所定量未満のときに無負荷状態であると判断すればよい。なお、こうした閾値は、モータ50を駆動しており電動作業機20で刈払作業を行っていないときに検出される音量より若干大きい値などとして予め実験などにより定めることができる
【0057】
上述した実施形態の電動作業機20では、モータ電流が閾値Cより小さいときに、モータ50に作用させる電圧を小さくし、モータ電流が所定期間に亘って閾値Dより小さくなるときに、電池40からモータ50への電力の供給を停止させるものとしたが、いずれか一方だけが行われるものとしてもよい。
【0058】
上述した実施形態の電動作業機20では、モータ50の負荷を、負極側電極L2に流れる電流を検出することにより検出するものとしたが、モータ50に流れる電流に関連した電流を検出することによりモータ50の負荷を検出すればよく、正極側電極L2の任意の場所に流れる電流を検出することによりモータ50の負荷を検出してもよいし、電池40に流れる電流を検出することによりモータ50の負荷を判定してもよい。
【0059】
上述した実施形態の電動作業機20では、電池40が搭載されるものとしたが、電池40に代えて又は加えて電源コードを備え、電源コードを介して外部電源からの電力を用いて駆動されてもよい。
【0060】
上述した実施形態では、モータ50に刈刃34が取付けられた電動作業機(電動刈払機)20に適用して本発明を説明したが、本発明は電動機によって作業具が駆動される任意の電動作業具に適用することができる。例えば、刈刃34に代えてナイロン刃を作業具として刈払作業を行う電動作業機に適用することもできる。
【0061】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、様々な変更をなし得ることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0062】
20 電動作業機
22 主棹部
23 補助ハンドル
24 カバー
26 操作部
27 ハンドル
28 トリガレバー
29 電源線
30 駆動部
32 モータケーシング
32a 吸気口
32b 排気口
34 刈刃
36,36B,36C 電源部
38 電源ケーシング
40 電池
40a 素電池
40b 過電流検出抵抗
40c 保護回路
50 モータ
52 出力軸
53 回転子
54 固定子
55 摺動子
57,58 軸受
61 フランジ
61a 軸部
61b フランジ部
62 コミュテータディスク
63 コイル基板
64 コイルディスク
64a,64b スルーホール
65 ファン
65a ブレード
67,68 絶縁板
71 マグネット
72 上ヨーク
73 下ヨーク
100,100B,100C 電源回路
101 電源スイッチ回路
102 電圧検出部
103 電圧変換部
104 電圧制御部
105 電流検出部
106 制御用電源部
107 スイッチ状態検出回路
108 制御部
110 電流増幅部
113 スイッチ
120 出力調整部
130 音声入力部
140 信号増幅部
L1 正極側配線
L2 負極側配線
N1〜N5 ノード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力源からの電力を受けて作業具を駆動する電動機と、
前記電力源と前記電動機とに接続され、前記電動機に印加する電圧を調整可能な電源回路部と、
前記電動機の負荷を検出する負荷検出手段と、
前記検出された電動機の負荷に基づいて前記電動機に印加する電圧を変更するように前記電源回路部を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする電動作業機。
【請求項2】
前記制御手段は、前記検出された電動機の負荷が第1の所定負荷より小さいときに前記電動機に印加する電圧を小さくするよう前記電源回路部を制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電動作業機。
【請求項3】
前記制御手段は、前記検出された電動機の負荷が所定期間に亘って第2の所定負荷より小さいときに前記電動機への電力の供給が停止されるように前記電源回路部を制御する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電動作業機。
【請求項4】
前記電源回路部によって調整された電圧に関連する調整関連電圧を検出する調整関連電圧検出手段を更に備え、
前記電源回路部は、前記検出された調整関連電圧に基づいて前記電動機に印加する電圧を調整し、
前記制御手段は、前記検出された電動機の負荷に基づいて、前記調整関連電圧検出手段により検出される調整関連電圧を変更する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電動作業機。
【請求項5】
前記負荷検出手段は、前記電動機に流れる電流に関連する電流値を検出することにより前記電動機の負荷を検出する、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電動作業機。
【請求項6】
前記負荷検出手段は、前記作業具から発せられる音量を検出することにより前記電動機の負荷を検出する、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電動作業機。
【請求項7】
前記電力源として電池が搭載された、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の電動作業機。
【請求項8】
前記電動機は、回転子と、固定子とを有し、前記回転子は出力軸と一体に回転し、前記回転子と前記固定子との何れか一方は、前記出力軸の軸方向視において前記出力軸を中心に円周方向に配列した略環状の複数のコイルが設けられた円板状のコイルディスクを有し、前記回転子と前記固定子との何れか他方は、前記コイルディスクを前記出力軸の軸方向に通過する磁束を発生する磁束発生手段を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の電動作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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