説明

電動圧縮機の漏れ電流検査方法

【課題】検査効率と検査精度の高い電動圧縮機の漏れ電流検査方法の提供。
【解決手段】電動圧縮機内に誘電性液体を充填してモータのコイルを誘電性液体中に浸漬した状態でコイルに所定電圧を印加した後、第1検査工程で、第1の所定時間経過時T1の電流値I1が第1基準電流値以下である検査品を合格品とし、第2検査工程で、第1検査工程で第1基準電流値を超えた検査品について、第1の所定時間よりも長い第2の所定時間T2経過時の電流値I2が第2基準電流値以下である検査品を合格品とし、第2基準電流値を超える検査品を不合格品とし、第1基準電流値は、第1検査工程において、第2検査工程で不合格品となるべき検査品は不合格品となるが、第2検査工程で合格品となるべき検査品の一部が不合格品となることを許容する予測基準電流値とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動圧縮機のモータのコイルからハウジングに漏洩する漏れ電流が基準値以下であるか否かを検査する電動圧縮機の漏れ電流検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電動圧縮機のモータのコイルとモータを収容するハウジングとの間は空気との接触環境下では漏れ電流が生じないように高度な絶縁処理が施されているが、圧縮機運転中はコイルとハウジング内部は冷媒と潤滑油の接触環境に曝される。通常使用されるフロン系冷媒やエーテル系又はエステル系潤滑油は誘電体であるため、冷媒や潤滑油を介してコイルからハウジングに漏れ電流が生じやすい。更に電動圧縮機の製造工程でハウジングにモータを組み付け固定する際にモータのコイルに傷が付くことがあり、この傷が大きな漏れ電流の原因となることがある。漏れ電流は車体を介してエンジン、ブレーキ、パワーステアリング等の駆動要素を制御する制御部に流れて制御に悪影響を与え、駆動要素を誤作動させ重大事故を引き起こすおそれがある。このため、電動圧縮機の製品には漏れ電流に関して品質合格基準としての厳しい基準値が定められ、製品の漏れ電流がこの基準値以下であるか否かが検査される。
【0003】
一方、誘電体に直流電圧を印加したとき誘電体に流れる全電流Iは、図5に示すように、充電電流Ii、吸収電流Ia、及び漏れ電流ILの総合計である。この全電流Iは、吸収電流Iaの変化に沿って減少するが次第に緩やかな変化となり、吸収電流Iaの影響がなくなるまで減少し最終的には漏れ電流ILに収束する。漏れ電流を測定するためには全電流が収束するまで待って収束後の電流を測定する必要があり、全電流が収束するまでにかなり時間がかかる。このため漏れ電流の正確な測定をするには誘電体に直流電圧を印加してから10分後の電流を漏れ電流として扱うのが一般である。
【0004】
一方、漏れ電流を短時間で検査する方法に関しては特許文献1の方法が提案されている。この方法は、キャパシタの漏れ電流を検査する際に、キャパシタを設定電圧まで充電した後、この設定電圧を保つようキャパシタに充電し、設定電圧を保つ間に流れる定常電流を計測し、定常電流に基づいて漏れ電流を測定することにより、短時間で容易に漏れ電流を検査することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−133189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、電動圧縮機の漏れ電流を検査する際に、個々の製品の漏れ電流の検査に10分もの長時間を使って大量生産される全製品について検査すれば、検査に要する総時間が膨大なものとなり検査効率が低下する。一方、検査効率向上のために個々の製品の検査時間を短縮すれば、正確な漏れ電流の検査はできず検査精度は低下する。また、特許文献1に記載の方法では、キャパシタが大容量のものの場合には、設定電圧まで充電するのにかなりの時間がかかる。冷媒や潤滑油に曝される電動圧縮機は大容量キャパシタと同様の電気的挙動を示すことから、この方法で電動圧縮機の漏れ電流を検査すると充電にかなりの時間を要するために短時間で検査することはできない。従って、本発明は、検査効率が高く且つ検査精度も高い電動圧縮機の漏れ電流検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、電動圧縮機内に誘電性液体を充填してモータのコイルを誘電性液体中に浸漬した状態でコイルと圧縮機のハウジングとの間に所定電圧を印加した後、所定時間経過後にモータから圧縮機のハウジングに流れる漏れ電流を検査する電動圧縮機の漏れ電流検査方法であって、第1の所定時間経過時の電流値が第1基準電流値以下である検査品を合格品とし、第1基準電流値を超える検査品を第2検査工程での検査対象品とする第1検査工程と、第1検査工程で第1基準電流値を超えた検査品について、第1の所定時間よりも長い第2の所定時間経過時の電流値が第2基準電流値以下である検査品を合格品とし、第2基準電流値を超える検査品を不合格品とする第2検査工程とを含み、第1基準電流値は、第1検査工程において、第2検査工程で不合格品となるべき検査品は不合格品となるが、第2検査工程で合格品となるべき検査品の一部が不合格品となることを許容する予測基準電流値であり、第2基準電流値は、検査品の漏れ電流の合否を最終的に決定する合否基準電流値である、ことを特徴としている。
【0008】
この構成によれば、第1検査工程での合格品は第2検査工程での検査対象とされないので、電圧印加後の第1の所定時間をT1とし、第2の所定時間をT2とし、全検査品数をSとし、第1検査工程での合格品数をAとするとき、全検査品数Sの各々について検査時間T2をかけて検査する場合に比べて、(T2−T1)S−T2(S−A)だけ検査時間を短縮することができる。しかも、第1検査工程では、第2検査工程で不合格品となるべき検査品は不合格品となるから、第1検査工程での合格品の漏れ電流は第2検査工程の第2基準電流値(合否基準電流値)以下であることが保証される。更に、第2検査工程では、第1検査工程の不合格品の全品が第2基準電流値(合格基準電流値)を基準として検査されるから、第1検査工程の不合格品の一部に第2検査工程で合格品となるべき検査品が含まれているとしても、その検査品は第2検査工程で合格品として検査することができる。従って、この構成によれば、検査品全数を一つの合否基準電流値で合否検査したのと同じ検査結果を得ることができ、しかも全数検査に要する検査時間を短縮することができる。
【0009】
本発明は、上記構成において更に、第1検査工程と第2検査工程との間に中間検査工程を含み、中間検査工程は、第1検査工程で第1基準電流値を超えた検査品を検査対象とし、第1の所定時間と第2の所定時間の中間の所定時間経過時の電流値が中間基準電流値以下である検査品を合格品とし、中間基準電流値を超える検査品を第2検査工程での検査対象品とし、中間基準電流値は、第1基準電流値と第2基準電流値との中間の値であり、且つ、中間検査工程において、第2検査工程で不合格品となるべき検査品は不合格品となるが、第2検査工程で合格品となるべき検査品の一部が不合格品となることを許容する予測基準電流値であるように構成することが好ましい。
【0010】
この構成によれば、第1検査工程及び中間工程での合格品は第2検査工程での検査対象とされないので、第1の所定時間をT1とし、中間の所定時間をTmとし、第2の所定時間をT2とし、全検査品数をSとし、第1検査工程での合格品数をAとし、中間検査工程での合格品数をBとするとき、全検査品数Sの各々について検査時間T2をかけて検査する場合に比べて、(T2−T1)S―Tm(S−A)―T2(S−A−B)だけ検査時間を短縮することができる。しかも、第1検査工程及び中間検査工程では、第2検査工程で不合格品となるべき検査品は不合格品となるから、第1検査工程及び中間検査工程での合格品の漏れ電流値は第2検査工程の第2基準電流値以下であることが保証される。更に、第2検査工程では、中間検査工程の不合格品の全品が第2基準電流値(合否基準電流値)を基準として検査されるから、中間検査工程の不合格品の一部に第2検査工程で合格品となるべき検査品が含まれているとしても、その検査品は第2検査工程で合格品として検査することができる。従って、この構成によれば、検査品全数を一つの合否基準電流値で合否検査したのと同じ検査結果を得ることができ、しかも全数検査に要する検査時間を更に短縮することができる。
【0011】
第1基準電流値は、標本としての複数の電動圧縮機の第1の所定時間経過時の電流値と第2の所定時間経過時の電流値の測定データに基づいて回帰分析により予測値の下限信頼区間曲線を求め、この下限信頼区間曲線と第2基準電流値とを用いて求めることが好ましい。中間基準電流値は、標本としての複数の電動圧縮機の第1の所定時間と第2の所定時間の中間の所定時間経過時の電流値と第2の所定時間経過時の電流値の測定データに基づいて回帰分析により予測値の下限信頼区間曲線を求め、この下限信頼区間曲線と第2基準電流値とを用いて求めることが好ましい。第2基準電流値は、所定の誘電性液体を使用した場合の合否基準電流値であり、製品性能の要求値として決定される。第2基準電流値(合否基準電流値)は製品性能の要求値として定めることができる。誘電性液体としては冷媒、潤滑油又はそれらの混合物が好ましく、誘電性液体中の含水量を200ppm以下とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、電動圧縮機の漏れ電流検査方法において、一つの合否基準電流値で全数検査する場合に比べて全数検査に要するトータルの検査時間を短縮することができ、しかも、一つの合否基準電流値で検査品を全数検査した場合と同じ検査精度を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は本発明に係る電動圧縮機の漏れ電流検査方法を実施する検査装置の説明図である。
【図2】図2は本発明に係る電動圧縮機の漏れ電流検査方法の説明図である。
【図3】図3は第1基準電流値の求め方の説明図である。
【図4】図4は中間基準電流値の求め方の説明図である。
【図5】図5は誘電体に直流電圧を印加したとき誘電体に流れる電流の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明に係る電動圧縮機の漏れ電流検査方法を実施する検査装置の説明図である。同図において、電流測定器2は電動圧縮機1の接続端子3を介してモータ4のコイル5に接続されるとともに、電動圧縮機1のハウジング7に接続されている。電流測定器2から直流電圧(例えば500V)の印加電圧が接続端子3を介してコイル5/ハウジング7間に印加される。電動圧縮機1の内部には誘電性液体6が充填され、コイル5の全体が誘電性液体6の液面下に浸漬され、コイル5とハウジング7との間は誘電性液体6で満たされている。電圧印加によりコイル5から漏れ電流が生じると、この漏れ電流はハウジング7を介して電流測定器2により測定され、測定データは電流測定器2に接続されたパソコン8で収集され解析される。
【0015】
誘電性液体としては、例えばHFC−32、HFC−125、HFC−134、HFC−134a、HFC−143a、HFC−152a、HFC−161、HFC−1234yfなどのフロン系冷媒;ポリアルキレングリコール系、ポリアルキレングリコールエステル系、ポリオールエステル系などの潤滑油;又はこれらの混合物を使用することができる。本発明で使用する誘電性液体はこれらの物質に限定されず、これらの物質と同程度の体積抵抗率を有する液体であれば使用することができる。誘電性液体中の水分は検査精度に影響を及ぼすので200ppm以下とすることが好ましい。
【0016】
図2は本発明に係る電動圧縮機の漏れ電流検査方法の説明図である。コイル5に直流電圧を印加すると、図1に示すように、コイル5/ハウジング7間に、充電電流Ii、吸収電流Ia、及び漏れ電流ILが流れ、その総合計である全電流I(以下、「電流」という。)は、吸収電流Iaの変化に沿って減少するが次第に緩やかな変化となり、吸収電流Iaの影響がなくなるまで減少し最終的には漏れ電流ILに収束する。図2において、本発明は、第1検査工程で第1の所定時間T1経過時の電流I1を、第2検査工程で第2の所定時間T2経過時の電流I2を測定し、必要に応じて更に、中間検査工程で中間の所定時間Tm経過時の電流Imを測定する。第2の所定時間T2の経過時(例えば、600秒経過時)には電流I2は漏れ電流ILに略収束している。従って、本発明では、第2の所定時間T2の経過時の電流I2を漏れ電流ILとしている。
【0017】
第1検査工程で使用する第1基準電流値及び中間検査工程で使用する中間基準電流値は次のようにして求めることができる。すなわち、先ず使用すべき所定の誘電性液体を決定し、所定の誘電性液体を使用した場合の合否基準電流値としての第2基準電流値を製品性能の要求値として決定する。次に、第1基準電流値及び中間基準電流値を決定するための統計基礎データを収集する。この統計基礎データ収集のために、電動圧縮機の生産品を回帰分析するのに充分な台数を標本として用意する。標本として用意した電動圧縮機について、所定の誘電性液体を使用した上記測定方法により、第1の所定時間T1経過時の電流値I1、中間の所定時間Tm経過時の電流値Im、第2の所定時間T2経過時の電流値I2を測定し、測定データのバラツキを回帰分析する。この回帰分析において、第1の所定時間T1経過時の電流値I1を縦軸の変数とし、第2の所定時間T2経過時の電流値I2を横軸の変数としたときの測定データのバラツキから回帰直線を求め、その回帰直線に対する測定データのバラツキから予測値の下限信頼区間曲線を求める。この予測値の下限信頼区間曲線と第2基準電流値とから第1基準電流値を求めることができる。更に、中間の所定時間Tm経過時の電流値Imを縦軸の変数とし、第2の所定時間T2経過時の電流値I2を横軸の変数としたときの測定データのバラツキから、回帰直線を求め、その回帰直線に対する測定データのバラツキから予測値の下限信頼区間曲線を求める。この下限信頼区間曲線と第2基準電流値とから中間準電流値を求めることができる。回帰直線及び予測値の下限信頼区間曲線の信頼度はそれぞれ95%以上が好ましく、99%以上が一層好ましい。
【0018】
本発明の検査方法を実施するときは、統計基礎データ収集の際に使用したのと同じ所定の誘電性液体を使用する。第1検査工程では第1の所定時間T1経過時の電流値I1が第1基準電流値以下である検査品を合格品とし、第1基準電流値を超えた検査品だけを第2検査工程で再度検査する。第2検査工程では第2基準電流値以下である検査品を合格品とし、第2基準電流値を超える検査品は不合格品とする。
【0019】
中間検査工程を実施するときは、第1検査工程で第1基準電流値を超えた検査品だけを中間検査工程で再度検査し、中間の所定時間Tm経過時の電流値Imが中間基準電流値以下である検査品を合格品とし、中間基準電流値を超えた検査品だけを第2検査工程で更に再度検査する。第2検査工程では第2基準電流値以下である検査品を合格品とし、第2基準電流値を超える検査品は不合格品とする。
【実施例】
【0020】
統計基礎データ収集のために620台の工場生産品の電動圧縮機を標本として用意した。誘電性液体としてポリアルキレングリコール系潤滑油(含水量150ppm)を使用し、この潤滑油を各標本の電動圧縮機の内部に充填し、モータのコイルの全体を潤滑油の液面下に浸漬させた。この状態で、電流測定器から直流電圧500Vの印加電圧をコイルと圧縮機のハウジングとの間に印加して、コイルから圧縮機に流れる電流について、第1の所定時間T1経過時の電流値I1、中間の所定時間Tm経過時の電流値Im、第2の所定時間T2経過時の電流値I2(漏れ電流値)を測定した。この測定において、第1の所定時間T1を180秒、中間の所定時間Tmを240秒、第2の所定時間T2を600秒とした。誘電性液体として上記潤滑油を使用した場合の合否基準電流値としての第2基準電流値は製品性能の要求値として所定の値を予め決定しておいた。
【0021】
図3は第1基準電流値の求め方の説明図である。同図において、縦軸の変数を第1の所定時間T1経過時の電流値I1とし、横軸の変数を第2の所定時間T2経過時の電流値I2とし、上記620台の電流値I1と電流値I2の測定データのバラツキから信頼度99%の回帰直線を求め、その回帰直線に対する測定データのバラツキから信頼度99%の予測値の下限信頼区間曲線を求め、この下限信頼区間曲線と第2基準電流値との交点から第1基準電流値を求めた。
【0022】
図4は中間基準電流値の求め方の説明図である。同図において、縦軸の変数を中間の所定時間Tm経過時の電流値Imとし、横軸の変数を第2の所定時間T2経過時の電流値I2とし、上記620台の電流値Imと電流値I2の測定データのバラツキから信頼度99%の回帰直線を求め、その回帰直線に対する測定データのバラツキから信頼度99%の予測値の下限信頼区間曲線を求め、この下限信頼区間曲線と第2基準電流値との交点から中間基準電流値を求めた。
【0023】
上記の第1基準電流値、中間基準電流値及び第2基準電流値を用い、上記と同様条件の検査方法により工場生産品の所定多数の電動圧縮機について漏れ電流の検査を行った。この検査では、第1検査工程で電流値T1が第1基準電流値以下の検査品を合格品とし、電流値T1が第1基準電流値を超える検査品を中間検査工程で検査し、中間検査工程で電流値Tmが中間基準電流値以下の検査品を合格品とし、電流値Tmが中間基準電流値を超える検査品を第2検査工程で検査し、電流値T2が第2基準電流値以下の検査品を合格品とし、電流値T2が第2基準電流値を超える検査品を不合格品とした。この検査では、第1検査工程(180秒経過時の検査)で全検査品の約75%が合格品となり、中間検査工程(240秒経過時の検査)で、第1検査工程で合格品とならなかった全検査品の約25%について検査し全検査品の約20%が合格品となった。最後に、第2検査工程(600秒経過時の検査)で、中間検査工程で合格品とならなかった全検査品の約5%について検査し全数検査を終了した。この検査に要した全検査時間をAとし、検査品全数を一つの合否基準電流値(第2基準電流値)で600秒経過時に検査する場合に要する全検査時間をBとすると、A:B=(100×180+25×240+5×600):(100×600)=45:100となる。すなわち、この検査により、検査品全数を一つの合否基準電流値で検査する場合に比べて、検査時間を約55%短縮できた。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は電動圧縮機のモータのコイルからハウジングに漏洩する漏れ電流が基準値以下であるか否かを検査する際に、一つの合否基準電流値で全数検査する場合に比べて全数検査に要するトータルの検査時間を短縮することができ、しかも、一つの合否基準電流値で検査品を全数検査したときと同じ検査精度を得ることができるので、電動圧縮機の漏れ電流の検査方法として利用価値が高い。
【符号の説明】
【0025】
1 電動圧縮機
2 電流測定器
3 接続端子
4 モータ
5 コイル
6 誘電性液体
7 ハウジング
8 パソコン
T1 第1の所定時間
T2 第2の所定時間
Tm 中間の所定時間
I 全電流
I1 第1の所定時間T1経過時の電流値
I2 第2の所定時間T2経過時の電流値
Im 中間の所定時間Tm経過時の電流値
Ia 吸収電流
Ii 充電電流
IL 漏れ電流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動圧縮機内に誘電性液体を充填してモータのコイルを誘電性液体中に浸漬した状態でコイルと圧縮機のハウジングとの間に所定電圧を印加した後、所定時間経過後にモータから圧縮機のハウジングに流れる漏れ電流を検査する電動圧縮機の漏れ電流検査方法であって、
第1の所定時間経過時の電流値が第1基準電流値以下である検査品を合格品とし、第1基準電流値を超える検査品を第2検査工程での検査対象品とする第1検査工程と、
第1検査工程で第1基準電流値を超えた検査品について、第1の所定時間よりも長い第2の所定時間経過時の電流値が第2基準電流値以下である検査品を合格品とし、第2基準電流値を超える検査品を不合格品とする第2検査工程とを含み、
第1基準電流値は、第1検査工程において、第2検査工程で不合格品となるべき検査品は不合格品となるが、第2検査工程で合格品となるべき検査品の一部が不合格品となることを許容する予測基準電流値であり、
第2基準電流値は、検査品の漏れ電流の合否を最終的に決定する合否基準電流値である、
ことを特徴とする電動圧縮機の漏れ電流検査方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電動圧縮機の漏れ電流検査方法において、
第1検査工程と第2検査工程との間に中間検査工程を含み、中間検査工程は、第1検査工程で第1基準電流値を超えた検査品を検査対象とし、
第1の所定時間と第2の所定時間の中間の所定時間経過時の電流値が中間基準電流値以下である検査品を合格品とし、中間基準電流値を超える検査品を第2検査工程での検査対象品とし、
中間基準電流値は、第1基準電流値と第2基準電流値の中間の値であり、且つ、中間検査工程において、第2検査工程で不合格品となるべき検査品は不合格品となるが、第2検査工程で合格品となるべき検査品の一部が不合格品となることを許容する予測基準電流値である、
ことを特徴とする電動圧縮機の漏れ電流検査方法。
【請求項3】
請求項1に記載の電動圧縮機の漏れ電流検査方法において、
標本としての複数の電動圧縮機の第1の所定時間経過時の電流値と第2の所定時間経過時の電流値の測定データに基づいて回帰分析法により予測値の下限信頼区間曲線を求め、この下限信頼区間曲線と第2基準電流値とを用いて第1基準電流値を求めることを特徴とする電動圧縮機の漏れ電流検査方法。
【請求項4】
請求項2に記載の電動圧縮機の漏れ電流検査方法において、
標本としての複数の電動圧縮機の第1の所定時間と第2の所定時間の中間の所定時間経過時の電流値と第2の所定時間経過時の電流値の測定データに基づいて回帰分析法により予測値の下限信頼区間曲線を求め、この下限信頼区間曲線と第2基準電流値とを用いて中間基準電流値を求めることを特徴とする電動圧縮機の漏れ電流検査方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の電動圧縮機の漏れ電流検査方法において、
誘電性液体が冷媒、潤滑油又はそれらの混合物からなることを特徴とする電動圧縮機の漏れ電流検査方法。
【請求項6】
請求項5に記載の電動圧縮機の漏れ電流検査方法において、
誘電性液体の含水量が200ppm以下であることを特徴とする電動圧縮機の漏れ電流検査方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−73207(P2012−73207A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220274(P2010−220274)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【Fターム(参考)】