説明

電動工具

【課題】木材等の端縁加工に用いられるトリマにおいて、加工材に当接させるベースとして丸形ベースを備える場合に、これを異なる形状のベースに交換できるようにして作業内容に適切な形状のベースを選択できるようにする。
【解決手段】本体支持部22のベース取り付け座部21に、標準の丸形ベースに代えて傾斜ベースアッセンブリの角形ベース61を取り付け可能とする。また、丸形ベースに代えてオフセットベースを取り付け可能とする。作業内容に適切な形状のベースを選択して取り付けることにより、作業の効率化を図ることができ、また他部品の流用によるコスト低減を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばトリマあるいはルーターと称される電動工具であって、主として木材等の加工材の端縁に沿って移動させることによりその縁取り加工や溝切り加工等を行う場合に用いられる電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばトリマは、工具本体を支持する円環形状の本体支持部と、本体支持部の下面に取り付けて加工材の上面に当接させるベースを有するベースアッセンブリを備えている。本体支持部の下部にはベース取り付け座部が一体に設けられており、このベース取り付け座部にベースが貼り付け状態で取り付けられる。工具本体はモータユニットとも称されるもので、駆動源としての電動モータを内装しており、この電動モータにより回転するスピンドルを下面から突き出した状態に備えている。このスピンドルにビットとも称される刃具が装着される。
多くの場合、円筒形状をなす本体支持部の下部に張り出し状に設けた円環形状をなすベース取り付け座部に合わせてベースは円環形状(円形)をなすものが用いられている。しかしながら、特殊な加工作業向けに傾斜ベースアッセンブリやオフセットベースアッセンブリが提供されている。傾斜ベースアッセンブリは、ベースが当接される加工材に対して本体支持部を傾斜支持する機能を有するもので、ベースには通常矩形のものが用いられている。また、下記の特許文献に開示されているようにオフセットベースアッセンブリは、工具本体のスピンドルに対してオフセットさせたオフセット軸に刃具を取り付けて壁際の際切り作業を効率よく行う場合に用いられるもので、そのオフセットベースにはより面積の大きな例えば扇形のものが用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許公報第7552749号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、加工材に当接させるベースについては、作業内容に応じて様々な形状のものが提供されてはいるが、これらは共通の本体支持部に対して交換して取り付けることができず、互換性のないものであった。
本発明は、共通の本体支持部に、作業内容に合わせて様々な形状のベースを選択して取り付けることができる電動工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は下記の発明によって解決される。
第1の発明は、電動モータにより回転するスピンドルを備えた工具本体と、工具本体を支持する本体支持部とこの本体支持部のベース取り付け座部に取り付けられて加工材に当接されるベースを備えたベースアッセンブリを備え、スピンドルに取り付けた刃具をベースの下面から下方へ突き出して加工材の加工を行う電動工具であって、ベース取り付け座部に、形状について異なる二種類以上のベースを選択して取り付け可能な電動工具である。
第1の発明によれば、トリマやルーター等の電動工具について、作業内容等に合わせて形状の異なるベースを共通の本体支持部に交換して取り付けることができるので、部品共通化によるコスト低減を図ることができる。
第2の発明は、第1の発明において、異なる形状のベースとして円形又は矩形のベースを選択してベース取り付け座部に取り付け可能な電動工具である。
第2の発明によれば、円形のベースと矩形のベースを選択して、共通の本体支持部に取り付けることができ、これによりコスト低減を図りつつ、作業内容により適切な形状のベースを選択して利用することができる。
第3の発明は、第2の発明において、矩形のベースは、傾斜ベースアッセンブリ用のベースである電動工具である。
第3の発明によれば、傾斜ベースアッセンブリのベースを、本体支持部に一体に設けられたベース取り付け座部に取り付けることができ、これにより部品共通化によるコスト低減を図りつつ、作業内容により適切な形状のベースを選択して利用することができる。
第4の発明は、第1の発明において、異なる形状のベースとして、使用者が把持する補助把持部を備えた把持部付きベースを選択してベース取り付け座部に取り付け可能な電動工具である。
第4の発明によれば、使用者は補助把持部を把持して当該電動工具の移動操作を行うことができ、これにより部品共通化によるコスト低減を図りつつ、加工作業を迅速かつ楽に行うことができるようになる。
第5の発明は、第4の発明において、把持部付きベースとして、オフセットベースアッセンブリのオフセットベースを取り付け可能な電動工具である。
第5の発明によれば、オフセットベースアッセンブリのオフセットベースを、スピンドルに直接刃具を取り付けて行う通常加工用の本体支持部に取り付けることができ、これにより部品共通化によるコスト低減を図りつつ、作業内容により適切な形状のベースを選択して利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】円形のベースを取り付けたトリマの全体正面図である。
【図2】円形のベースを取り付けたベースアッセンブリの正面側の斜視図である。
【図3】円形のベースを取り付けたベースアッセンブリの背面側の斜視図である。
【図4】円形のベースの斜視図である。
【図5】円形のベースを図4中矢印(V)方向から見た下面図である。
【図6】矩形のベースを取り付けたベースアッセンブリの斜視図である。
【図7】オフセットベースを取り付けたベースアッセンブリの斜視図である。
【図8】傾斜ベースアッセンブリを取り付けたトリマの全体斜視図である。
【図9】オフセットベースアッセンブリを取り付けたトリマの全体斜視図である。
【図10】オフセットベースの上面側斜視図である。
【図11】オフセットベースを図10中矢印(XI)方向から見た下面図である。
【図12】補助把持部付きのオフセットベースを取り付けたベースアッセンブリの斜視図である。
【図13】オフセットベースに対するアタッチメントの取り付け状態を図12中矢印(XIII)方向から見た一部破断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
次に、本発明の実施形態を図1〜図13に基づいて説明する。図1に示すようにこのトリマ1は、電動モータを内装した工具本体10と、この工具本体10を加工材Wに対して保持するためのベースアッセンブリ20を備えている。
工具本体10は概ね円柱体形をなすもので、その下面にスピンドル11が突き出す状態に備えられている。このスピンドル11に刃具12が装着されている。
図2及び図3に示すようにベースアッセンブリ20は、加工材Wの上面に当接させる円形の丸形ベース23と円筒形状の本体支持部22を有している。本体支持部22の内周側に工具本体20が挿入されて保持されている。刃具12を丸形ベース23の下面から下方へ突き出させて加工材Wの主として端縁部に押し当て、この押し当て状態で当該トリマ1を端縁部に沿って移動させることにより当該加工材Wの縁取り加工を行うことができる。
丸形ベース23は、本体支持部22の下部に一体に設けたベース取り付け座部21の下面に貼り付け状態で取り付けられている。ベース取り付け座部21は円環形状を有しており、その内周側は工具本体10の刃具12を下面側へ通過させるための逃がし孔21cとして機能する。ベース取り付け座部21の下面全面に、同じ円環形状を有する丸形ベース23が貼り付け状態に取り付けられている。この丸形ベース23は、ベース取り付け座部21から取り外して形状の異なる別のベースに交換することができる。これについてはさらに後述する。
ベース取り付け座部21の上面に本体支持部22が上方へ起立する状態に設けられている。本実施形態の場合、ベース取り付け座部21と本体支持部22は、アルミニウムを素材とする鋳物製で一体に成形されている。
使用者は、当該トリマ1を移動操作する際には、一方の手で工具本体10の頭部(上部)若しくは本体支持部22を把持し、他方の手でベース取り付け座部21を押え付けて、当該トリマ1の加工材Wに対する位置を制御する。このため、本体支持部22は工具本体10を保持する機能の他、使用者が把持する把持部としての機能を有している。
【0008】
本体支持部22は、その正面側において上部のスリット部22aとその下側の窓部22bを備えており、正確には断面C字形を有してその拡径方向に適度な弾性を有している。スリット部22aにクランプ装置25が設けられている。このクランプ装置25は、支軸25aを介して左右方向に傾動操作可能に設けられたレバー25bを備えている。図2においてレバー25bを手前側のアンクランプ位置(右方)に傾動操作すると、クランプロッド25cに設けたカム部(図では見えていない)の作用が解除されて本体支持部22がその弾性により拡径方向(スリット部22aが幅広になる方向)に緩み、これにより工具本体10を本体支持部22に対して上下に変位可能かつ上方へ抜き出して取り出し可能となる。レバー25bを左方のクランプ位置に傾動操作すると、クランプロッド25cのカム部の作用により本体支持部22がその弾性に抗して縮径方向(スリット部22aが幅狭になる方向)に縮められて工具本体10が本体支持部22に強固にクランプされる。
クランプ装置25には、調整機構26が併設されている。クランプロッド25cの端部には調整ダイヤル26aが取り付けられている。また、図3に示すようにスリット部22aにおいてクランプロッド25cには調整ギヤ26bが取り付けられている。調整ダイヤル26aを回転操作すると、クランプロッド25cを介して調整ギヤ26bが一体で回転する。図1に示すように調整ギヤ26bは、工具本体10の側部に設けたラック部13に噛み合わされている。ラック部13は工具本体10の側部に上下に沿って設けられている。ラック部13の左右両側には、工具本体10のベースアッセンブリ20に対する取り付け位置であって、刃具12の突き出し寸法を表示するための目盛り13a,13bが表示されている。クランプ装置25をアンクランプした状態で調整ダイヤル26aを回転操作すると、ラック部13に対する調整ギヤ26bの噛み合いを経て工具本体10を上下に変位させることができる。本体支持部22に対する工具本体10の上下位置を調整した後、レバー25bをクランプ位置に傾動操作すると、工具本体10が調整した上下位置にクランプされる。
正面側の窓部22bは、加工材Wに対する刃具12の加工部位を使用者が逃がし孔21cを経て覗き見るための窓部であり、スリット22aよりも左右に大きな開口幅で設けられている。
【0009】
ベースアッセンブリ20のベース取り付け座部21と本体支持部22には、使用者が把持した際の把持感を高め、かつ高い滑り止め機能を持たせるための工夫がなされている。ベース取り付け座部21の周縁部であって前側の2箇所には、凹凸形状の滑り止め部21a,21aが設けられている。使用者が指先でベース取り付け座部21を加工材Wに押え付ける際に、この滑り止め部21a,21aに指先を当接させることにより高い滑り止め機能が発揮させる。本実施形態では、右手でベース取り付け座部21を押え付ける場合と左手でベース取り付け座部21を押え付ける場合の双方に対応してベース取り付け座部21の前部寄りの左右2箇所に滑り止め部21a,21aが設けられている。
また、左右の滑り止め部21a,21aに対応してその後方にはそれぞれ指止め壁部21b,21bが設けられている。両指止め壁部21b,21bは、ベース取り付け座部21の上面であって、本体支持部22の窓部22bの左右下端部からベース取り付け座部21の上面に沿って設けられている。この両指止め壁部21b,21bによって、ベース取り付け座部21を押え付けた指先が内周側の逃がし孔21c側に滑ることが防止される。
本体支持部22の周囲には、エラストマー(ゴム状の弾性力を有するポリマー(重合体))が被覆されている。このエラストマー被覆部30は、本体支持部22の背面側のほぼ半周の範囲と、正面側の窓部22bの上側に左右から張り出す逆L字形の範囲にわたって左右対称に設けられている。エラストマー被覆部30の背面側のほぼ半周の範囲は、使用者の把持した手の主として手の平が当接される。エラストマー被覆部30の左右側部とその上部から窓部22bの上方へ張り出す範囲には、把持した手の主として指先が当接される。特に、窓部22bの上方に左右から張り出す範囲の一方には親指が当接され、他方には人指し指が当接される。
このエラストマー被覆部30の左右側部には、それぞれ同じく逆L字形の範囲にわたって滑り止め部31,32が設けられている。左右の滑り止め部31,32には、それぞれ上下に延びる縦縞模様の突条31a〜31a、32a〜32aが設けられている。図示するように各突条31a,32aは、それぞれ下側ほど背面側へ変位する方向に僅かな角度で傾いている。このため、本体支持部22を把持する手の指先の進入方向(差し出し方向)及びその逆の滑り方向が多くの場合、斜め上方であることを考慮した場合における当該滑り止め部31,32の滑り止め機能がより一層高められている。
本体支持部22の背面下部には、定規固定部24が設けられている。この定規固定部24に平行定規(図示省略)をセットして定規固定ねじ24aを締め付けると、本体支持部22の背面側に平行定規を取り付けることができる。取り付けた平行定規を例えば加工材Wの端縁に当接させた状態で当該トリマ1を移動させることにより、加工材Wの端縁に対する刃具12の切り込み深さを一定に保持して当該トリマ1を平行移動させることができ、これにより高精度の縁取り加工を迅速に行うことができる。
【0010】
前記した円形をなす通常加工用(オフセット加工用ではなく、スピンドル11に直接刃具12を取り付けて行う加工、以下同じ)の丸形ベース23は、ベース取り付け座部21の下面から取り外すことができる。図4及び図5には、取り外した丸形ベース23が単独で示されている。この丸形ベース23は、ベース取り付け座部21とほぼ同径の円形平板をなすもので、加工材Wへの傷付きを防止するために樹脂を素材として成形されている。この丸形ベース23の中心には、ベース取り付け座部21の逃がし孔21cとほぼ同径の逃がし孔23aが形成されている。丸形ベース23の背面側には、定規固定ねじ24aに対する矩形の逃がし凹部23cが設けられている。
この丸形ベース23は、4本の固定ねじ(図示省略)によってベース取り付け座部21の下面に貼り付け状態で取り付けられる。逃がし孔23aの周囲四箇所には、この4本の固定ねじを挿通するための座繰り付きのねじ挿通孔23b〜23bが設けられている。図5に示すように丸形ベース23の下面側に、各ねじ挿通孔23bの座繰りが形成されている。丸形ベース23側のねじ挿通孔23b〜23bに対応して、ベース取り付け座部21の下面4箇所にねじ孔21d〜21dが設けられている。図2では、前側の二箇所のねじ孔21d,21dのみが見えている。従って、丸形ベース23の下面側から各ねじ挿通孔23bに固定ねじを挿入してベース取り付け座部21側のねじ孔21dに締め込むことにより、当該丸形ベース23がベース取り付け座部21の下面に貼り付け状態に固定される。
逆に、4本の固定ねじを緩めることにより丸形ベース23をベース取り付け座部21の下面から取り外すことができる。本実施形態のトリマ1は、通常加工用の円形の丸形ベース23に代えて、ベース取り付け座部21には、図6に示すように傾斜ベースアッセンブリ60用の矩形をなす角形ベース61を取り付けることができる。さらに、この角形ベース61に代えてベース取り付け座部21には、図7に示すようにオフセットベースアッセンブリ40のオフセットベース41を取り付けることができる。また、図12に示すようにこのオフセットベース41にはさらに補助把持部50を取り付けることができる。以下、順に説明する。
【0011】
先ず、図8には、工具本体10を従来公知の傾斜ベースアッセンブリ60に取り付けたトリマ1が示されている。傾斜ベースアッセンブリ60は、工具本体10を支持する円筒形の本体支持部62を傾斜支持台63に傾動可能に支持した構成を備えている。傾斜支持台63は矩形を有しており、その左右両側に傾斜支持壁部63a,63aを備えている。両傾斜支持壁部63a,63a間に本体支持部62の下部が前後に約45°の範囲で傾動可能に支持されている。本体支持部62の傾斜支持台63に対する傾斜位置は、固定ねじ64,64を締め付けることにより固定される。
傾斜支持台63のほぼ中央には、スピンドル11及び刃具12を下面側へ通過させるための逃がし孔63bが設けられている。この逃がし孔63bの周囲であって、ベース取り付け台座部63の四隅には、ねじ孔63c〜63cが設けられている。ほぼ正方形の矩形をなすベース61は、このねじ孔63c〜63cに下面側から締め込んだ固定ねじ(図示省略)によって傾斜支持台63の下面側に貼り付け状態で取り付けられている。従って、4本の固定ねじを緩めることによりベース61を傾斜支持台63の下面から取り外すことができる。
取り外した矩形のベース61は、図6に示すように傾斜加工用ではない通常加工用の本体支持部22のベース取り付け座部21に取り付けることができる。このベース61の中央にも、上記傾斜支持台63の逃がし孔63bとほぼ同径の逃がし孔61aが設けられており、この逃がし孔61aはベース取り付け座部21の逃がし孔21cにも整合される。
ベース61は、ベース取り付け座部21に設けた4箇所のねじ孔21d〜21dに固定ねじを下面側から締め付けることにより固定することができる。従って、4箇所のねじ孔21d〜21dの相互の間隔(ピッチ)は、傾斜ベースアッセンブリ60の傾斜支持台63に設けた4箇所のねじ孔63c〜63cの間隔に一致している。
円形のベース23に代えて矩形のベース61を本体支持部22のベース取り付け座部21に取り付けることにより、例えばこのベース61の端縁を平行定規として機能させることにより当該トリマ1を精確かつ迅速に移動操作することができ、これにより作業の効率化を図ることができる。
【0012】
次に、図9には、工具本体10を従来公知のオフセット加工用のオフセットベースアッセンブリ40に取り付けたトリマ1が示されている。オフセットベースアッセンブリ40は、本体支持部42の下面にオフセットベース41を取り付けた構成を備えている。
本体支持部42は前記通常加工用の本体支持部22に相当するもので、円筒形状をなし、その内周側に工具本体10が保持される。なお、図9ではクランプ装置25の図示が省略されている。
この本体支持部42の正面側に、オフセット機構49が装備されている。オフセット機構49は、本体支持部42の正面側に一体に設けたオフセットケース42a内に、軸受け46,47を介してオフセット軸43を回転自在に支持した構成を備えている。
このオフセット機構49を備えたオフセットベースアッセンブリ40を用いる場合、工具本体10のスピンドル11には駆動プーリ44が取り付けられる一方、刃具12が取り外される。駆動プーリ44と、オフセット軸43に取り付けた従動プーリ45との間に駆動ベルト46が掛け渡されている。オフセット軸43の下端部に刃具12が取り付けられる。このオフセット加工用の本体支持部42を用いることにより刃具12を工具本体10のスピンドル11に対してオフセットさせたオフセット軸43に取り付けることができる。
工具本体10が起動すると、駆動プーリ44と従動プーリ45に対する駆動ベルト46の噛み合い作用により回転動力がオフセット軸43に伝達されて刃具12がオフセット位置で回転する。刃具12は、オフセットベース41の前端部に設けた逃がし孔41aを経て下面側に突き出されている。
このオフセットベースアッセンブリ40を用いることにより、工具本体10を進入若しくは接近させることが困難な壁際での際切り加工や狭小スペースでの縁取り加工等のオフセット加工を行うことができるようになる。
オフセットベースアッセンブリ40の場合、オフセットベース41の取り付け座41bに本体支持部42が4本の固定ねじ48〜48で取り付けられている。この4本の固定ねじ48〜48を緩めることにより、本体支持部42及びオフセット軸43を含むオフセット機構49をオフセットベース41から取り外すことができる。本体支持部42から取り外したオフセットベース41が図10及び図11に単独で示されている。
【0013】
図10及び図11に示すようにこのオフセットベース41は、正面側が山形で背面側が半円形状の平板をなすもので、オフセットケース42aを含めて本体支持部42を側方へはみ出させない程度に大きな面積及び形状を有している。このオフセットベース41の上面ほぼ中央に、オフセット加工用の本体支持部42を取り付けるための円形の取り付け座41bが設けられている。このオフセット加工用の取り付け座51bの背面側(図1において上側)には、通常加工用の本体支持部22を取り付けるための円形の取り付け座41cが設けられている。
この背面側の取り付け座41cの中央には逃がし孔41gが設けられている。この逃がし孔41gは、円形の丸形ベース23の逃がし孔23aに相当するもので、後述するようにこの取り付け座51bに通常加工用の本体支持部22を取り付けると、そのベース取り付け座部21の逃がし孔21cに上記逃がし孔41gが整合され、両逃がし孔21c,41gの内周側にスピンドル11が挿通され、また刃具12が通過して当該オフセットベース41の下面側に突き出される。
本実施形態では、中央側のオフセット加工用の取り付け座41bと背面側の通常加工用の取り付け座41cが前後にオーバーラップして設けられている。
両取り付け座41b,41cの内周側にそれぞれ4つの座繰り付きのねじ挿通孔41d〜41dが設けられている。なお、上記したように両取り付け座41b,41cが前後にオーバーラップして中央の2箇所のねじ挿通孔41d,41dが両取り付け座41b,41cで共用されているため、合計6箇所にねじ挿通孔41d〜41dが設けられている。
また、前記した逃がし孔41aの上側にも、2つの座繰り付きのねじ挿通孔41e,41eが設けられている。オフセットベース41の背面側の後端部には、通常加工用の丸形ベース23と同じく定規固定部24の定規固定ねじ24aを逃がすための逃がし凹部41fが設けられている。
本実施形態では、図7に示すようにこのオフセット加工用のオフセットベース41を丸形ベース23に代えて通常加工用の本体支持部22のベース取り付け座部21の下面に取り付けることができる。図示するように、通常加工用の本体支持部22は、オフセットベース41の背面側の取り付け座41cに取り付けられる。この場合、取り付け座41cの内周側のねじ挿通孔41d〜41dに挿通した4本の固定ねじをそれぞれベース取り付け座部21のねじ孔21dに締め込んで当該本体支持部22がオフセットベース41の上面側に取り付けられる。従って、取り付け座41cの内周側のねじ挿通孔41d〜41dは、ベース取り付け座21のねじ孔21d〜21dと同じ間隔で配置されている。
このように、円形の丸形ベース23に代えて、通常加工用の本体支持部22により大きな面積のオフセットベース41を取り付けることにより、工具本体10をより安定した姿勢で移動操作させることができ、これにより加工材Wの端縁加工等と迅速かつ楽に行うことができるようになる。
【0014】
次に、上記のように通常加工用の本体支持部22にオフセットベース41を取り付けた場合には、このオフセットベース41にさらに補助把持部50を取り付けることができる。図12に示すように、オフセットベース41の正面側端部には、アタッチメント52を介して補助把持部50が取り付けられている。アタッチメント52の詳細が図13に示されている。このアタッチメント52は、オフセットベース41の上面に当接される当接板部52aと、当接板部52aの上面側に設けた台座部52bと下面側に設けた支持凸部52cを備えている。下面側の支持凸部52cは、オフセットベース41の正面側端部に設けた逃がし孔41a内にガタツキなく挿入され、これにより台座部52bがオフセットベース41の上面に当接されている。台座部52bに設けた2つのねじ孔52e,52eに対して、逃がし孔41aの周囲に設けた2つのねじ挿通孔41e,41eを経て固定ねじ53,53を締め付けることにより、当該アタッチメント52がオフセットベース41に固定される。
上面側の台座部52bの上面には、補助把持部取り付け用のねじ孔52dが設けられている。このねじ孔52dに、補助把持部50の取り付けねじ軸部50aを締め付けることにより当該補助把持部50をオフセットベース41の正面側端部に起立状態で取り付けることができる。このように、アタッチメント52を介して補助把持部50が、逃がし孔41aと同軸であって、オフセット位置と同軸(オフセット軸43と同軸)に取り付けられる。
図12に示す補助把持部50には、ハンマドリルやドライバドリル等のその他の手持ち工具に用いられるサブハンドルが流用されている。その他の手持ち工具から取り外したサブハンドルをアタッチメント52を介してそのままオフセットベース41に取り付けることにより当該サブハンドルを補助把持部51として利用することができる。特に、図12に示す補助把持部50の場合、その把持高さが本体支持部22とほぼ同じになるよう台座部52bの高さ寸法等が設定されている。このため、使用者は左手と右手をほぼ同じ高さで把持することができるので、当該トリマ1に対して左右均等な把持力で把持して楽な姿勢で安定した加工を行うことができる。
【0015】
以上のように構成した本実施形態の電動工具1によれば、加工材Wに当接させるベースについて、作業内容等に合わせて形状の異なるベース23,41,61を共通の本体支持部22に交換して取り付けることができるので、加工作業の効率化を図ることができるとともに、部品共通化によるコスト低減を図ることができる。
また、標準の丸形ベース23とは形状の異なるベースとして、傾斜ベースアッセンブリ60の矩形ベース61とオフセットベースアッセンブリ40のオフセットベース41を流用する構成であるので、傾斜ベースアッセンブリ60やオフセットベースアッセンブリ40を使用しない場合にこれらの矩形ベース61及びオフセットベース41を有効に活用することができる。
標準の丸形ベース23とは形状の異なる矩形ベース61を本体支持部22に取り付けることにより、当該矩形ベース61を平行定規として活用できるので、精確な加工を迅速に行うことができるようになる。また、形状の異なるオフセットベース41を用いることにより、同じく平行定規として機能させることができるとともに、面積が大きいことから工具本体10をより安定した姿勢で移動操作することができ、この点でも精確かつ迅速な加工作業を楽に行うことができる。
特に、オフセットベース41を用いる場合には、このオフセットベース41にさらに補助把持部50を取り付けることにより使用者は両手で電動工具1の姿勢を保持しつつ移動操作することができるので、一層安定した移動操作を楽に行うことができるようになる。
以上説明した実施形態には種々変更を加えることができる。例えば、オフセットベース41に二箇所の取り付け座部41b,41cを設けて、中央の取り付け座部41bにオフセット機構付きの本体支持部42を取り付ける一方、背面側の取り付け座部41cに通常加工用の本体支持部22を取り付ける構成を例示したが、両者22,42を共通の取り付け座部に取り付ける構成としてもよい。
オフセットベース41は、その正面側が山形で、背面側が半円形の平板形状を有する構成を例示したが、単純な矩形あるいはその他の平板形状をなすオフセットベースを適用することもできる。
【符号の説明】
【0016】
W…加工材
1…トリマ(トリマ)
10…工具本体
11…スピンドル
12…刃具
13…ラック部、13a,13b…目盛り
20…ベースアッセンブリ(通常加工用)
21…ベース取り付け座部
21a…滑り止め部、21b…指止め壁部、21c…逃がし孔
22…本体支持部
22a…スリット、22b…窓部
23…丸形ベース(通常加工用)
23a…逃がし孔、23b…ねじ挿通孔、23c…逃がし凹部
24…定規固定部、24a…定規固定ねじ
25…クランプ装置
25a…支軸、25b…レバー、25c…クランプロッド
26…調整機構
26a…調整ダイヤル、26b…調整ギヤ
30…エラストマ被覆部
31…滑り止め部(左側)、31a…突条
32…滑り止め部(右側)、32a…突条
40…オフセットベースアッセンブリ
41…オフセットベース、41a…逃がし孔
41b…取り付け座部(オフセット加工用)
41c…取り付け座部(通常加工用)、41d…ねじ挿通孔(本体支持部取り付け用)
41e…ねじ挿通孔(アタッチメント取り付け用)、41f…逃がし凹部
41g…逃がし孔
42…本体支持部(オフセット加工用)
43…オフセット軸
44…駆動プーリ
45…従動プーリ
46,47…軸受け
48…固定ねじ
49…オフセット機構
50…補助把持部(サイドハンドル)、50a…取り付けねじ軸部
52…アタッチメント
52a…当接板部、52b…台座部、52c…支持凸部
52d…ねじ孔(補助把持部取り付け用)
52e…ねじ孔(アタッチメント取り付け用)
53…固定ねじ
60…傾斜ベースアッセンブリ
61…ベース(矩形)
62…本体支持部
63…傾斜支持台、63a…傾斜支持壁部、63b…逃がし孔、63c…ねじ孔
64…固定ねじ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータにより回転するスピンドルを備えた工具本体と、該工具本体を支持する本体支持部と該本体支持部のベース取り付け座部に取り付けられて加工材に当接されるベースを備えたベースアッセンブリを備え、前記スピンドルに取り付けた刃具を前記ベースの下面から下方へ突き出して前記加工材の加工を行う電動工具であって
前記ベース取り付け座部に、形状について異なる二種類以上のベースを選択して取り付け可能な電動工具。
【請求項2】
請求項1記載の電動工具であって、前記異なる形状のベースとして円形又は矩形のベースを選択して前記ベース取り付け座部に取り付け可能な電動工具。
【請求項3】
請求項2記載の電動工具であって、前記矩形のベースは、傾斜ベースアッセンブリ用のベースである電動工具。
【請求項4】
請求項1記載の電動工具であって、前記異なる形状のベースとして、使用者が把持する補助把持部を備えた把持部付きベースを選択して前記ベース取り付け座部に取り付け可能な電動工具。
【請求項5】
請求項4記載の電動工具であって、前記把持部付きベースとして、オフセットベースアッセンブリのオフセットベースを取り付け可能な電動工具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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