説明

電動工具

【課題】木材等の加工材に対して縁取り加工や溝切り加工等の加工を行う電動工具において、駆動モータとの絶縁性を確保することができつつ、ベースにより把持される外周面の寸法精度を高める。
【解決手段】内側ハウジング25と外側ハウジング31とを一体化した2重のハウジング構造で構成されている。ここで駆動モータ40に面する内部側となる内側ハウジング25は合成樹脂を材料にして成形されている。またベース60に面する外部側となる外側ハウジング31はアルミニウムを材料にして成形されている。内部に装置される駆動モータ40との絶縁性を確保することができつつ、ベース60により把持されるモータハウジング21の把持外周面35の寸法精度を高めることができる。もってベース60に対して工具本体15を良好に摺動させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材等の加工材に対して縁取り加工や溝切り加工等の加工を行う電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般にトリマあるいはルータと称される、木材等の加工材に対して縁取り加工や溝切り加工等の加工を行う電動工具が知られている。このような電動工具は、ベースと、モータユニットとも称される工具本体とを備える。ベースは、加工材に載置させる等により加工材に対して当接させることができる。これに対して工具本体は、ベースに対する相対位置を決めてベースにて支持される。ここで、ベースに対する相対位置が決められた工具本体は、ベースが当接する加工材に対しての相対位置も決まることとなる。このように加工材に対しての相対位置が決められた工具本体は、内蔵される駆動モータによりスピンドルを回転駆動させ、スピンドルに取り付けられたビットにより加工材を加工する。なお、ビットは、スピンドルに対して加工材の加工に応じて適宜のもの選択して取り付けることができる。
このような工具本体は、筐体として機能するハウジングの内部に駆動モータが装置される。このため、このハウジングは、駆動モータの筐体として機能を有しつつ、加工材に対して位置決めするためのベースに把持される機能を有する(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−234001
【特許文献2】特開2002−337073
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、上記したハウジングは、内部に装置された駆動モータ等の電気部品に対する絶縁性を確保するために、絶縁性に優れる合成樹脂を材料とした成形品にて構成される。しかしながら、このような合成樹脂にて成形されたハウジングは、吸水により変形してしまったり、温度変化により撓みが生じてしまったりすることがある。そうすると、ハウジングの外周面の寸法が一部変わってしまっていることにより、ベースに対して工具本体を摺動させる場合にベースが工具本体の外周面に引っ掛かってしまうことがあり、摺動させ難いという場合も生ずる。
他方、ベースによりハウジングの外周面を均一に締め付けることができるように、上記したハウジングを金属の成形品にて構成することも考えられている。このように金属の成形品とした場合には、ベースによりハウジングを把持するにあたり、上記した合成樹脂を材料とする成形品のような変形を無くすことができ、ハウジングの外周面を均一に締め付けることができる。しかしながら、このように金属の成形品とした場合には、上記したハウジングの内部に装置される駆動モータ等の電気部品との絶縁性を確保することが困難なものとなってしまう。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであって、本発明が解決しようとする課題は、木材等の加工材に対して縁取り加工や溝切り加工等の加工を行う電動工具において、内部に装置される駆動モータ等の電気部品との絶縁性を確保することができつつ、ベースにより把持されるハウジングの外周面の寸法精度を高めたものとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するにあたって、本発明に係る電動工具は次の手段を採用する。
すなわち、本発明の第1の発明に係る電動工具は、木材等の加工材に対して縁取り加工や溝切り加工等の加工を行う電動工具であって、前記加工材に対して前記加工を行う工具本体と、前記加工材に対して当接する加工材当接面を有しつつ前記加工材に対する前記工具本体の相対位置を決めて該工具本体を支持するベースとを備え、前記工具本体は、内部に前記加工材を加工するにあたっての駆動力を得るための回転駆動機構が装置されつつ外部に前記ベースに把持される外周面が形成されるハウジングを有し、前記ハウジングは、前記回転駆動機構に面する内部側を樹脂を材料にして成形される内側ハウジングとして形成し、前記ベースに面する外部側を金属を材料にして成形される外側ハウジングとして形成し、該内側ハウジングと該外側ハウジングとを一体化して2重のハウジング構造として構成されていることを特徴とする。
なお、この回転駆動機構は、主として回転駆動力を発生する駆動モータが主たる構成として挙げられる。また、この駆動モータは、ハウジング側に固定される固定子と、この固定子に対して相対的に回転する回転子とを備える。
【0007】
この第1の発明に係る電動工具によれば、内側ハウジングと外側ハウジングとを一体化した2重のハウジング構造で構成されている。
ここで、回転駆動機構に面する内部側となる内側ハウジングは樹脂を材料にして成形されているので、樹脂材料特有の性質により、回転駆動機構(駆動モータ等を含む)からなる電気部品からの、電気および熱の伝導を絶縁することができる。また、ベースに面する外部側となる外側ハウジングは金属を材料にして成形されているので、ベースに把持される外周面を、吸水により変形させてしまったり温度変化により撓ませてしまったりするのを防止することができる。
したがって、内部に装置される回転駆動機構を含む電気部品との絶縁性を確保することができつつ、ベースにより把持されるハウジングの外周面の寸法精度を高めることができる。もってベースに対して工具本体を良好に摺動させることができる。
【0008】
第2の発明に係る電動工具は、前記第1の発明に係る電動工具において、前記回転駆動機構を前記内側ハウジングに組み付ける際の組付け方向と、該回転駆動機構が組み付けられた該内側ハウジングを前記外側ハウジングに組み付ける際の組付け方向とが、互いに対向する方向にて設定されて、該内側ハウジングと該外側ハウジングとが重ねられて構成されていることを特徴とする。
この第2の発明に係る電動工具によれば、回転駆動機構を内側ハウジングに組み付ける際の組付け方向と、回転駆動機構が組み付けられた内側ハウジングを外側ハウジングに組み付ける際の組付け方向とが、互いに対向する方向にて設定されている。これによって、回転駆動機構が内側ハウジングに対してかける荷重と、回転駆動機構が組み付けられた内側ハウジングが外側ハウジングに対してかける荷重とを、重ならないようにすることができる。したがって、これら内側ハウジングと外側ハウジングとにかけられる荷重を分散させることができて、ハウジング全体としての強度を向上させることができ、さらにハウジングの外周面の周面形状の寸法精度も維持することができる。もって、ベースにより把持されるハウジングの外周面の寸法精度を高めることができて、ベースに対して工具本体を良好に摺動させることができる。
【0009】
第3の発明に係る電動工具は、前記第1または前記第2の発明に係る電動工具において、前記回転駆動機構は、固定子と回転子とを具備する駆動モータを有し、前記ハウジングに具備される前記ベースに把持される外周面は、前記固定子のうち前記加工材に向く側とは反対側の端部分を覆う位置まで延在していることを特徴とする。
この第3の発明に係る電動工具によれば、ハウジングに具備されるベースに把持される外周面は、固定子のうち加工材に向く側とは反対側の端部分を覆う位置まで延在している。これによって、ベースに把持される外周面は、ハウジングの内部に装置される固定子から支持され易くなる。したがって、ベースにより把持されるハウジングの外周面の寸法精度を良好に維持することができて、ベースに対して工具本体を良好に摺動させることができる。
【0010】
第4の発明に係る電動工具は、前記第1から前記第3のいずれかの発明に係る電動工具において、少なくとも前記ハウジングに具備される前記ベースに把持される外周面の周面形状は、機械加工により成形されていることを特徴とする。
なお、該機械加工としては、外周面の周面形状精度を高めるために鋳物による成形品に対して機械的な切削機械加工を行う場合等が挙げられる。
この第4の発明に係る電動工具によれば、少なくともハウジングに具備されるベースに把持される外周面の周面形状は機械加工により成形されているので、外周面の周面形状の加工精度を高めるのに有利となる。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明に係る電動工具によれば、内部に装置される回転駆動機構を含む電気部品との絶縁性を確保することができつつ、ベースにより把持されるハウジングの外周面の寸法精度を高めることができる。
第2の発明に係る電動工具によれば、ベースにより把持されるハウジングの外周面の寸法精度を高めることができてベースに対して工具本体を良好に摺動させることができる。
第3の発明に係る電動工具によれば、ベースにより把持されるハウジングの外周面の寸法精度を良好に維持することができて、ベースに対して工具本体を良好に摺動させることができる。
第4の発明に係る電動工具によれば、外周面の周面形状の加工精度を高めるのに有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】分離させた工具本体とベースとを示す電動工具の斜視図である。
【図2】工具本体をベースに装着した状態の電動工具の正面図である。
【図3】電動工具の正面視横断面を示す断面図である。
【図4】電動工具の側面視横断面を示す断面図である。
【図5】モータハウジングの組付けを概念的に示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る電動工具を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。図1は、分離させた工具本体15とベース60とを示す電動工具10の斜視図である。図2は、工具本体15をベース60に装着した状態の電動工具10の正面図である。なお、以下では、説明をする上で分かり易くするために図示記載の通りで上下前後左右を規定する。
図1に示す電動工具10は、トリマと広く称されるものであり、木材等の加工材Wに対して縁取り加工や溝切り加工等の加工を行うものである。電動工具10は、概略、加工材Wに対して加工を行う工具本体15と、工具本体15を支持するベース60とを備える。工具本体15は、後に詳述するが、内部に加工材Wに対して加工を行うにあたっての回転駆動力を発生させる駆動モータ40が装置される。この駆動モータ40は、本発明に係る回転駆動機構に相当する部分である。この駆動モータ40は、スピンドル41を回転駆動させる。回転駆動するスピンドル41の先端には、刃具としてのビットBを取り付けるためのチャック機構58が設けられている。チャック機構58は、コレットコーンと称され、ビットBを挟持する。このようにして、工具本体15はスピンドル41によりビットBを回転駆動させて加工を行う。なお、この工具本体15の内部構造の説明は、次のベース60の説明の後にする。
【0014】
ベース60は、加工材Wに対して当接する加工材当接面67を有しつつ、加工材Wに対する工具本体15の相対位置を決めて工具本体15を支持する。ベース60は、概略、加工材Wに対して当接するベース本体61と、ベース本体61に対して一体化状態で設けられる把持構造部71とを備える。ベース本体61は、工具本体15のビットBをベース60の下面となる加工材当接面67から下側に突出し可能に構成される。ベース本体61は、概略、対面鍔形部62と、ベースアタッチメント65とを備える。この対面鍔形部62は、対面鍔形部62の中心部分に上下に貫通する突出し孔63が設けられている。この突出し孔63からは、対面鍔形部62の下側に位置する加工材当接面67から工具本体15のビットBを下側に突き出すことができるようになっている。また、この対面鍔形部62は、前後左右平面に張り出した鍔形に形成されている。この対面鍔形部62の下面側には、ベースアタッチメント65が適宜の螺子止めされて対面鍔形部62に装着されている。この対面鍔形部62の上面側には、上側に向いて筒状に延びた把持構造部71が立設されている。なお、ベースアタッチメント65は、対面鍔形部62と同様の形状にて形成され、この対面鍔形部62に対して着脱可能に構成される。この対面鍔形部62に装着されたベースアタッチメント65の下面が、加工材Wに対して当接する加工材当接面67として形成される。なお、図示符号59は、平行定規を取り付けるための留め具である。
【0015】
把持構造部71は、上記した対面鍔形部62と一体化されるC形筒状部72と、このC形筒状部72の前側に配設されるクランプ装置76とを備える。C形筒状部72は、上面視C形をなすように、前側にスリット73が形成されている。このスリット73は、次に説明するクランプ装置76によるクランプによりスリット幅が拡縮する。このスリット73のスリット幅の拡縮により、C形筒状部72の内周面距離は拡縮する。つまり、C形筒状部72の内周面距離が縮んだ場合には、この縮みによりC形筒状部72は工具本体15の把持外周面35を把持することとなる。逆に、このC形筒状部72の内周面距離が拡がった場合には、工具本体15の把持外周面35に対して緩んだ状態となり、C形筒状部72は工具本体15の把持外周面35に対して摺動可能な状態とする。
このC形筒状部72のスリット73の下側には、窓部74が形成されている。この窓部74は、ビットBを下側に突き出させるための突出し孔63が見えるように形成されている。なお、C形筒状部72の外側周面の一部には、手握り部75として、このC形筒状部72の外側周面を被覆するようにエラストマーが配設されている。この手握り部75となるエラストマーは、適宜間隔の凹凸外面形状が形成されている。このため、この手握り部75は、適宜間隔の凹凸外面形状とエラストマーの弾性とにより、手握りした際に把持し易いものとなっている。
クランプ装置76は、上記したC形筒状部72の前側に位置するスリット73に対して架け渡すように配設されている。このクランプ装置76は、詳細について図示していないが、概略、上記したスリット73のスリット幅を拡縮させるレバー機構と、ベース60に対して工具本体15を昇降させるダイアル機構とを具備して構成される。なお、このクランプ装置76は、これらレバー機構とダイアル機構との双方の機構に共用される操作ロッドが具備されて構成されている。このようにして、クランプ装置76は、ダイアル機構により加工材Wに対する工具本体15の相対位置を適宜決めた後に、レバー機構によりC形筒状部72にて把持外周面35を把持して工具本体15を支持するものとなっている。
【0016】
次に、工具本体15の内部構造について説明する。図3および図4は、工具本体15を上記したベース60に装着した状態の断面図である。詳しくは、図3は、電動工具10の正面視横断面を示す断面図であり、図1ではIII−III断面矢視を示している。図4は、電動工具10の側面視横断面を示す断面図であり、図1ではIV−IV断面矢視を示している。
図3および図4に示すように、工具本体15は、ハウジング20を具備して構成される。このハウジング20は、工具本体15としての外装をなしつつ、内部に駆動モータ40等を内蔵する筐体として機能する。このハウジング20は、加工材W側となる図示下側に位置されるモータハウジング21と、図示上側に位置されるヘッドハウジング36とを一体化させることにより構成される。このモータハウジング21とヘッドハウジング36とは、図2に示すように螺子部材39,39により上下で螺子締結されることにより一体化されている。以下、モータハウジング21の詳細構造を説明する前に、このハウジング20の内部に装置される駆動モータ40等の内蔵装置類について先ず説明する。
【0017】
工具本体15には、次のような内蔵装置類が装置されている。図3および図4に示すように、略円柱形状にて形成される工具本体15は、その中間部分においてスピンドル41が上下に延在するように駆動モータ40が装置されている。この駆動モータ40は、本発明に係る回転駆動機構に相当するものであり、広く利用されるブラシモータにて構成されている。この駆動モータ40は、駆動軸としてスピンドル41を回転駆動させる。このスピンドル41は、工具本体15の内部に工具本体15の長さ方向に沿って延在するように配置されている。なお、このスピンドル41の下端は、加工材W側となるモータハウジング21内の下端側から突き出している。これに対し、スピンドル41の上端は、ヘッドハウジング36内の上端近くに位置している。このため、スピンドル41の下端側は、モータハウジング21内の下端側に配設される下側ボールベアリング51にて回転可能に軸支されている。このスピンドル41の上端側は、ヘッドハウジング36内の上端側に配設される上側ボールベアリング52にて回転可能に軸支されている。
【0018】
この駆動モータ40は、上記したようにブラシモータにて構成されるものであり、固定子としてのフィールド42と、回転子としてのアーマチュア43と、整流子としてのコンミテータ44と、カーボンブラシ45とを備える。なお、後に詳述するが、フィールド42およびアーマチュア43は、ハウジング20のうちモータハウジング21内に配置されている。これに対して、コンミテータ44およびカーボンブラシ45は、ハウジング20のうちヘッドハウジング36内に配置されている。
フィールド42は、モータハウジング21に対して固定支持されている。アーマチュア43とコンミテータ44とは、回転可能に軸支されるスピンドル41に対して固定支持されている。コンミテータ44は、カーボンブラシ45との電気的な接続によってアーマチュア43に電力供給する。電力供給されたアーマチュア43は磁界を発生し、フィールド42に対してアーマチュア43を相対的に回転するように作用させ、このアーマチュア43を固定支持するスピンドル41を回転駆動させる。
また、フィールド42は、コアに電線を巻くことにより構成されている。このフィールド42は、アーマチュア43と対面するフィールド本体421と、このフィールド本体421から食み出して巻かれる巻き線部422とを備える。なお、フィールド本体421は、アーマチュア43と対面するように配置される。このフィールド本体421の上下の長さは、このアーマチュア43の上下の長さと同様の長さにて形成されている。また、このフィールド42は、後に説明する内側ハウジング25に螺子部材54により螺子止めされている。
【0019】
また、コンミテータ44およびカーボンブラシ45の上側には、コントローラ46、コンデンサ47、端子台48、変速コントローラ49等の電気部品が配設されている。また、上記したコンミテータ44およびカーボンブラシ45の近くには、この工具本体15の電源をオンオフ操作するためのスイッチ50が設けられている。なお、上記した変速コントローラ49は、外部に露出される変速操作ダイアル491から操作入力できるようになっており、この操作入力に応じてスピンドル41の回転速度を設定することができる。また、スイッチ50は、外部に露出されるオンオフ操作部501から操作入力できるようになっており、この操作入力に応じて工具本体15の電源をオンオフすることができる。
また、上記した下側ボールベアリング51と、フィールド42およびアーマチュア43との間には、送風ファン53が設けられている。この送風ファン53は、上記したスピンドル41に固定支持されている。このため、送風ファン53は、スピンドル41の回転に応じて回転し、ハウジング20内を下から上に向けて風を送るようになっている。また、この工具本体15の上部には、外部電源から内部に電力を供給するための電源コード55が配設されている。図示符号56は電源コード55を保護するコードガードであり、図示符号57は電源コード55をクランプするクランプ部材である。このクランプ部材57は、後に詳述する内側ハウジング25とともに電源コード55をクランプ挟持している。
なお、このように各種の電気部品が配設される工具本体15の上端部分には、ヘッドハウジング36によりカバーされている。このヘッドハウジング36には、通風孔37が設けられている。
【0020】
次に、上記した内蔵装置類を内蔵するハウジング20について説明する。このハウジング20は、上記したようにモータハウジング21とヘッドハウジング36とを一体化することにより構成される。
モータハウジング21について説明する。モータハウジング21は、内部に駆動モータ40のフィールド42およびアーマチュア43が装置されつつ、外部にベース60に把持される把持外周面35が形成される。このモータハウジング21は、内側ハウジング25と外側ハウジング31とを一体化した2重のハウジング構造として構成されている。つまり、モータハウジング21は、内側ハウジング25の外周を覆うように外側ハウジング31の円筒が重ねられている。このため、モータハウジング21は、内側ハウジング25と外側ハウジング31とを径方向にて隣接配置した、断面視2層構造となるように構成されている。
内側ハウジング25は、駆動モータ40に面するようにモータハウジング21内部側を構成する。この内側ハウジング25は、いわゆる合成樹脂等の樹脂を材料にして成形されている。なお、この内側ハウジング25の材料となる合成樹脂等の樹脂は、電気の伝導を絶縁する性質を有しているとともに、熱の伝導を絶縁する性質も有している。
この内側ハウジング25は、図4等に示すように、下端側が送風ファン53が配置される部分まで延在し、上端側がコンミテータ44が配置される部分まで延在している。また、この内側ハウジング25の上端近くとなるコンミテータ44周辺の形状については、入り組んだ適宜の形状で形成されている。これに対し、この内側ハウジング25のコンミテータ44より下側の形状については、このコンミテータ44周辺を底形状とする略有底筒形状をなして形成されている。
【0021】
これに対して外側ハウジング31は、ベース60に面するようにモータハウジング21外部側を構成する。この外側ハウジング31は、アルミニウムとなる金属を材料にして成形される。この外側ハウジング31は、図4等に示すように、下端側が下側ボールベアリング51が配置される部分まで延在し、上端側がコンミテータ44が配置される部分まで延在している。この外側ハウジング31のコンミテータ44より下側の形状については、下側ボールベアリング51周辺を底形状とする略有底筒形状をなして形成されている。これに対し、この外側ハウジング31の上端近くとなるコンミテータ44周辺の形状については、この略有底筒形状の開口径が拡大するように形成されている。
ここで、外側ハウジング31の外側面は、均一な外周径にて形成される把持外周面35が設けられている。この把持外周面35は、上記したベース60のC形筒状部72の内周面と面接触にて挟持されることにより把持される部分となっている。このため、この把持外周面35は、C形筒状部72に挿し込んだ場合に滑らかに摺動できるようになっている。具体的には、外側ハウジング31の把持外周面35は、鋳物による成形品に対して機械的な切削機械加工(機械加工)を行うことにより形成されている。これにより、この把持外周面35は、外周面の周面形状精度は高められており、上下に真っ直ぐとなるストレート形状にて形成される。
【0022】
また、この把持外周面35は、フィールド42のうち加工材Wに向く側とは反対側の上端を覆う位置まで延在している。具体的には図4に示すように、把持外周面35は、この把持外周面35の上端位置がフィールド42の上端位置よりも下側に位置するように設定されている。ここで、工具本体15を最も加工材W側に接近させた状態(工具本体15を最下端に位置させた状態)で、ベース60のC形筒状部72により工具本体15を把持した場合には、このベース60のC形筒状部72の上端位置は、把持外周面35の上端位置よりも下側に位置している。このため、この状態のベース60のC形筒状部72の上端位置は、フィールド42の上端位置よりも下側に位置することとなる。このため、工具本体15を最も加工材W側に接近させた状態(工具本体15を最下端に位置させた状態)でC形筒状部72により把持される把持外周面35は、フィールド42が内装される部分となっている。
また、このラック33は、把持外周面35の前面側に対して、ベース60に対する工具本体15の挿し込み方向(図示上下方向に)に沿って設けられている。ラック33は、ベース60に対して工具本体15を昇降させるダイアル機構のギアが噛合するように形成される。なお、このラック33に隣接する横側には、ベース60に対する工具本体15の相対位置を指し示すための表示目盛り34が設けられている。
【0023】
図5は、内側ハウジング25および外側ハウジング31の組付けを概念的に示す図である。図5(A)は、内側ハウジング25に駆動モータ40を組み付ける際の工程を模式的に示している。図5(B)は、外側ハウジング31に駆動モータ40を組み付けた内側ハウジング25を組み付ける際の工程を模式的に示している。図5(C)は、図5(A)および図5(B)の工程を経てハウジング20に駆動モータ40が組み付けられた例を模式的に示している。
モータハウジング21は、図5(A)、図5(B)、図5(C)の順で、内側ハウジング25と外側ハウジング31とを重ねるようにして組み付けて構成される。この際、駆動モータ40を内側ハウジング25に組み付ける際の組付け方向と、駆動モータ40が組み付けられた内側ハウジング25を外側ハウジング31に組み付ける際の組付け方向とは、互いに対向する方向にて設定されている。
図5(A)では、駆動モータ40を内側ハウジング25に組み付けている。この際、駆動モータ40は、内側ハウジング25に対して開口下側から内部に組み込むようにしてい組み付けている。ここで内側ハウジング25は、上記したように略有底筒形状をなして形成されているため、内側ハウジング25を底側を構成する上側部分は、外部圧力による変形に対しての強度が高いものとなっている。
次いで、図5(B)では、駆動モータ40が組み付けられた内側ハウジング25を外側ハウジング31に組み付けている。この際、この内側ハウジング25は、外側ハウジング31に対して開口上側から内部に組み込むようにしてい組み付けている。ここで外側ハウジング31は、上記したように略有底筒形状をなして形成されているため、外側ハウジング31を底側を構成する下側部分は、外部圧力による変形に対しての強度が高いものとなっている。
つまり、図5(C)に示すように、これら内側ハウジング25と外側ハウジング31とにより構成されるモータハウジング21は、上側に内側ハウジング25の底側を配置し、下側に外側ハウジング31の底側を配置している。このため、このモータハウジング21は、外部圧力による変形に対しての強度を上下位置に分散することができる。また、これら内側ハウジング25と外側ハウジング31とのような、略有底筒形状をなして組み付ける構成にあっては、底側よりも開口側の方が開口面積が大きく設定されている。
【0024】
上記した電動工具10によれば、次のような作用効果を奏することができる。
すなわち、上記した電動工具10によれば、内側ハウジング25と外側ハウジング31とを一体化した2重のハウジング構造で構成されている。ここで、駆動モータ40に面する内部側となる内側ハウジング25は合成樹脂等の樹脂を材料にして成形されているので、駆動モータ40からの、電気および熱の伝導を絶縁することができる。また、ベース60に面する外部側となる外側ハウジング31はアルミニウムを材料にして成形されているので、ベース60に把持される把持外周面35を、吸水により変形させてしまったり温度変化により撓ませてしまったりするのを防止することができる。したがって、内部に装置される駆動モータ40との絶縁性を確保することができつつ、ベース60により把持されるモータハウジング21の把持外周面35の寸法精度を高めることができる。もってベース60に対して工具本体15を良好に摺動させることができる。
また、上記した電動工具10によれば、駆動モータ40を内側ハウジング25に組み付ける際の組付け方向と、駆動モータ40が組み付けられた内側ハウジング25を外側ハウジング31に組み付ける際の組付け方向とが、互いに対向する方向にて設定されているので、駆動モータ40が内側ハウジング25に対してかける荷重と、駆動モータ40が組み付けられた内側ハウジング25が外側ハウジング31に対してかける荷重とを、重ならないようにすることができる。したがって、これら内側ハウジング25と外側ハウジング31とにかけられる荷重を分散させることができて、ハウジング20全体としての強度を向上させることができ、さらにモータハウジング21の把持外周面35の周面形状の寸法精度も維持することができる。もって、ベース60により把持されるモータハウジング21の把持外周面35の寸法精度を高めることができて、ベース60に対して工具本体15を良好に摺動させることができる。
また、上記した電動工具10によれば、内側ハウジング25の底側と外側ハウジング31の底側とを上下交互に配置しているので、開口側の開口面積と底側の開口面積との差により生ずる隙間を上下位置に交互に分散することができる。これによって、これら内側ハウジング25と外側ハウジング31との組付けにより生ずる隙間を分散することができて、内側ハウジング25と外側ハウジング31との組付けによるガタツキの軽減を図ることができる。また、上記した電動工具10によれば、把持外周面35は、フィールド42のうち加工材Wに向く側とは反対側の上端を覆う位置まで延在している。これによって、ベース60に把持される把持外周面35は、モータハウジング21の内部に装置されるフィールド42から支持され易くなる。したがって、ベース60により把持されるモータハウジング21の把持外周面35の寸法精度を良好に維持することができて、ベース60に対して工具本体15を良好に摺動させることができる。また、上記した電動工具10によれば、把持外周面35の周面形状は切削機械加工により成形されているので、把持外周面35の周面形状の加工精度を高めるのに有利となる。
【0025】
なお、本発明に係る電動工具にあっては、上記した実施の形態に限定されるものではなく、次のように適宜個所を変更して構成するようにしてもよい。
すなわち、上記した実施の形態の電動工具10にあっては、木材等の加工材に対して縁取り加工や溝切り加工等の加工を行う電動工具としてトリマを例示して説明するものであった。しかしながら、このような縁取り加工や溝切り加工等の加工を行う電動工具としては、ルータのように構成されるものであってもよい。
また例えば、上記した実施の形態の電動工具10にあっては、内側ハウジング25に対する駆動モータ40の組付け方向と、外側ハウジング31に対する内側ハウジング25の組付け方向とは、互いに対向する方向にて設定されるものであった。しかしながら、本発明に係る電動工具としては、このような組付け方向を限定するものではなく、内側ハウジング25に対する駆動モータ40の組付け方向と、外側ハウジング31に対する内側ハウジング25の組付け方向とが、同方向にて設定されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0026】
10 電動工具
15 工具本体
20 ハウジング
21 モータハウジング
25 内側ハウジング
31 外側ハウジング
33 ラック
34 表示目盛り
35 把持外周面
36 ヘッドハウジング
37 通風孔
39 螺子部材
40 駆動モータ(回転駆動機構)
41 スピンドル
42 フィールド(固定子)
43 アーマチュア(回転子)
44 コンミテータ
45 カーボンブラシ
46 コントローラ
47 コンデンサ
48 端子台
49 変速コントローラ
491 変速操作ダイアル
50 スイッチ
501 オンオフ操作部
51 下側ボールベアリング
52 上側ボールベアリング
53 送風ファン
54 螺子部材
55 電源コード
56 コードガード
57 クランプ部材
58 チャック機構
59 留め具
60 ベース
61 ベース本体
62 対面鍔形部
63 突出し孔
65 ベースアタッチメント
67 加工材当接面
71 把持構造部
72 C形筒状部
73 スリット
74 窓部
75 手握り部
76 クランプ装置
B ビット
W 加工材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材等の加工材に対して縁取り加工や溝切り加工等の加工を行う電動工具であって、
前記加工材に対して前記加工を行う工具本体と、前記加工材に対して当接する加工材当接面を有しつつ前記加工材に対する前記工具本体の相対位置を決めて該工具本体を支持するベースとを備え、
前記工具本体は、内部に前記加工材を加工するにあたっての駆動力を得るための回転駆動機構が装置されつつ外部に前記ベースに把持される外周面が形成されるハウジングを有し、
前記ハウジングは、前記回転駆動機構に面する内部側を樹脂を材料にして成形される内側ハウジングとして形成し、前記ベースに面する外部側を金属を材料にして成形される外側ハウジングとして形成し、該内側ハウジングと該外側ハウジングとを一体化して2重のハウジング構造として構成されていることを特徴とする電動工具。
【請求項2】
請求項1に記載の電動工具において、
前記回転駆動機構を前記内側ハウジングに組み付ける際の組付け方向と、該回転駆動機構が組み付けられた該内側ハウジングを前記外側ハウジングに組み付ける際の組付け方向とが、互いに対向する方向にて設定されて、該内側ハウジングと該外側ハウジングとが重ねられて構成されていることを特徴とする電動工具。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電動工具において、
前記回転駆動機構は、固定子と回転子とを具備する駆動モータを有し、
前記ハウジングに具備される前記ベースに把持される外周面は、前記固定子のうち前記加工材に向く側とは反対側の端部分を覆う位置まで延在していることを特徴とする電動工具。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の電動工具において、
少なくとも前記ハウジングに具備される前記ベースに把持される外周面の周面形状は、機械加工により成形されていることを特徴とする電動工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−196865(P2012−196865A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62261(P2011−62261)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000137292)株式会社マキタ (1,210)
【Fターム(参考)】