説明

電動機用回転子

【課題】2極、4極、8極、10極、20極及び40極の6種類の電動機用回転子の機械的構造を同一にして、これらの極数の回転子の部品の共通化を図り、コストの低減を図った電動機用回転子を提供する。
【解決手段】回転子鉄心1の外周に40個の溝1cを形成して、これら40個の溝内にそれぞれ40個の永久磁石M1ないしM40を固定し、40個の永久磁石を、2極、4極、8極、10極、20極及び40極の中から選択されたいずれか1つの極数の磁石界磁を構成するように着磁するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁石界磁を有する電動機用回転子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ブラシレス電動機や同期電動機の回転子として、回転子鉄心に永久磁石を取り付けて磁石界磁を構成したものが用いられている。この種の回転子では、特許文献1に示されているように、回転子鉄心の外周に形成した複数の溝内に永久磁石を固定して磁石界磁を構成しているが、従来の回転子では、磁石界磁の極数に応じて、磁石の数及び配置を異ならせていた。
【特許文献1】特開2002−209349号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の電動機用回転子では、回転子の極数に応じて、磁石の数及び配置を変更するようにしていた。そのため、従来の回転子は、極数が異なる種々の電動機に共用することができず、極数が異なる毎に磁石の数及び配置が異なる回転子を製造する必要があったため、コストが高くなるという問題があった。
【0004】
本発明の目的は、極数が異なる種々の電動機に対して、回転子を構成する部品の共通化を図って、コストの低減を図ることができるようにした電動機用回転子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、磁石界磁を有する電動機用回転子に係わるもので、本発明においては、回転子鉄心の外周に、該回転子鉄心の軸線方向に伸びる40個の同寸法の溝が等角度間隔で形成されて、該40個の溝内にそれぞれ同形状の40個の永久磁石が、それぞれの一方の磁極面を前記回転子鉄心の外径方向に露呈させた状態で固定され、40個の永久磁石が、2極、4極、8極、10極、20極及び40極の中から選択されたいずれか1つの極数の磁石界磁を構成するように着磁されている。
【0006】
上記のように構成すると、2極、4極、8極、10極、20極及び40極の6種類の電動機用回転子の機械的構造を同一にして、これらの極数の回転子の部品の共通化を図ることができるため、コストの低減を図ることができる。
【発明の効果】
【0007】
以上のように、本発明によれば、回転子鉄心の外周に40個の溝を形成して、これら40個の溝内にそれぞれ40個の永久磁石を固定して、40個の永久磁石を、2極、4極、8極、10極、20極及び40極の中から選択された極数の磁石界磁を構成するように着磁するようにしたので、2極、4極、8極、10極、20極及び40極の6種類の電動機用回転子の機械的構造を同一にして、これらの極数の回転子の部品の共通化を図り、コストの低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は本発明の第1の実施形態に係わる回転子の正面図で、同図において1は所定の形状に打ち抜かれた鋼板を軸方向に所定枚数積層して一体化した構造を有する回転子鉄心、M1ないしM40は回転子鉄心1に取り付けられた永久磁石である。回転子鉄心1は、図2に示すように、円柱状の本体部分1aの外周に相互間が隔壁1bで区画された同寸法の40個の溝1c,1c,…を形成するとともに、本体部分1aの中央部に回転軸取付用の孔1dを形成し、更に孔1dと溝1c,1c,…との間の部分に、本体部分を軸線方向に貫通した10個の窓部1e1ないし1e10を、本体部分1aの周方向に等角度等間隔で形成した構造を有する。窓部1e1ないし1e10のうち、対称位置にある2つの窓部1e1及び1e6は、回転子鉄心に磁石を取り付ける際に回転子鉄心を保持する治具を挿入し得るようにするためにそれぞれの横断面の輪郭形状が円形を呈するように形成され、他の窓部はほぼ扇形の横断面形状を有するように形成されている。溝1c,1c,…は、回転子鉄心1の軸線方向に同じ断面形状を持って伸びるように設けられ、溝1c,1c,…内に嵌合し得るように形成されたほぼ角柱状の40個の永久磁石M1ないしM40が、溝1c,1c,…内にそれぞれ嵌合されて、接着により回転子鉄心1に固定されている。
【0009】
そして、図1に示した例では、磁石M1ないしM20のそれぞれの、回転子の外径側に向いた磁極がN極を呈し、磁石M21ないしM40の外径側に向いた磁極がS極を呈するように、磁石M1ないしM40が回転子の径方向に着磁されている。この例では、磁石M1ないしM20及び磁石M21ないしM40によりそれぞれ磁石界磁のN極及びS極が構成されて、2極の電動機用回転子R2が構成されている。図1及び図3以下の各図においては、回転子の外径側に向いた磁極がN極である磁石を黒く塗りつぶして示し、回転子の外径側に向いた磁極がS極である磁石を白抜きで示している。
【0010】
図3は本発明の第2の実施形態に係わる回転子の正面図で、この例では、磁石M1ないしM10及びM21ないしM30のそれぞれの外径側(回転子の外径側、以下同じ。)に向いた磁極がN極を呈し、他の磁石の外径側に向いた磁極がS極を呈するように一連の磁石が径方向に着磁されて、4極の電動機用回転子R4が構成されている。
【0011】
図4は本発明の第3の実施形態に係わる回転子の正面図で、この例では、磁石M1ないしM5,M11ないしM15,M21ないしM25及びM31ないしM35のそれぞれの外径側に向いた磁極がN極を呈し、他の磁石の外径側に向いた磁極がS極を呈するように一連の磁石が径方向に着磁されて、8極の電動機用回転子R8が構成されている。
【0012】
図5は本発明の第4の実施形態に係わる回転子の正面図で、この例では、磁石M1ないしM4,M9ないしM12,M17ないしM20,M25ないしM28及びM33ないしM36のそれぞれの外径側に向いた磁極がN極を呈し、他の磁石の外径側に向いた磁極がS極を呈するように一連の磁石が径方向に着磁されて、10極の電動機用回転子R10が構成されている。
【0013】
図6は本発明の第5の実施形態に係わる回転子の正面図で、この例では、磁石(M1,M2),(M5,M6),(M9,M10),(M13,M14),(M17,M18),(M21,M22),(M25,M26),(M29,M30),(M33,M34)及び(M37,M38)のそれぞれの外径側に向いた磁極がN極を呈し、他の磁石の外径側に向いた磁極がS極を呈するように一連の磁石が径方向に着磁されて、20極の電動機用回転子R20が構成されている。
【0014】
図7は本発明の第6の実施形態に係わる回転子の正面図で、この例では、磁石M1〜M40のうち、奇数番目の磁石M1,M3,…,M39のそれぞれの外径側に向いた磁極がN極を呈し、他の磁石の外径側に向いた磁極がS極を呈するように一連の磁石が径方向に着磁されて、40極の電動機用回転子R40が構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態に係わる2極の電動機用回転子の構成を示した正面図である。
【図2】本発明の実施形態で用いる回転子鉄心の正面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係わる4極の電動機用回転子の構成を示した正面図である。
【図4】本発明の第3の実施形態に係わる8極の電動機用回転子の構成を示した正面図である。
【図5】本発明の第4の実施形態に係わる10極の電動機用回転子の構成を示した正面図である。
【図6】本発明の第5の実施形態に係わる20極の電動機用回転子の構成を示した正面図である。
【図7】本発明の第6の実施形態に係わる40極の電動機用回転子の構成を示した正面図である。
【符号の説明】
【0016】
1 回転子鉄心
1b 隔壁
1c 溝
M1ないしM40 永久磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転子鉄心の外周に、該回転子鉄心の軸線方向に伸びる40個の同寸法の溝が等角度間隔で形成されて、前記40個の溝内にそれぞれ同形状の40個の永久磁石が、それぞれの一方の磁極面を前記回転子鉄心の外径方向に露呈させた状態で固定され、前記40個の永久磁石が、2極、4極、8極、10極、20極及び40極の中から選択された極数を有する磁石界磁を構成するように着磁されている電動機用回転子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−174790(P2007−174790A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−368042(P2005−368042)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【出願人】(000001340)国産電機株式会社 (191)
【Fターム(参考)】