説明

電動機

【課題】
固定子から絶縁不良となった巻線を容易に取り除き、高占積率で品質を向上した電動機を提供する。
【解決手段】
固定子の積層方向の両端部には樹脂絶縁端板が装着され、前記樹脂絶縁端板を介して固定子歯部に直接巻線を巻き付けられた巻線胴部と、前記巻線胴部の固定子外径から固定子端面側とは反対の固定子積層方向に伸びた外径樹脂壁と、前記巻線胴部の固定子内径から固定子端面側とは反対の固定子積層方向に伸びた内径樹脂壁とを有し、前記内径樹脂壁は、固定子内径方向に沿って周方向に伸びる内径鍔部があり前記内径鍔部には、固定子端面側を固定子周方向に切り欠いた切り欠け部が設けられ、前記切り欠け部は、固定子端面側に面する端面部と、前記固定子端面から遠ざかるに従い順次固定子周方向からの切り欠け部深さを浅くした側面部とで構成した電動機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は固定子歯部に樹脂絶縁端板を介して直接巻線を巻き付けられた集中巻き方式で巻き付けられた電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このような電動機は特許文献1(特開2008−42959号公報)に示すような電動機の固定子がある。特許文献1には前記固定子の積層方向の両端部には樹脂絶縁端板が装着され、前記樹脂絶縁端板を介して前記固定子歯部に直接巻線を巻き付けられた巻線胴部と、前記巻線胴部の固定子外径から固定子端面側とは反対の固定子積層方向に伸びた外径樹脂壁と、前記巻線胴部の固定子内径から固定子端面側とは反対の固定子積層方向に伸びた内径樹脂壁とを有し、
前記内径樹脂壁は、固定子内径方向に沿って周方向に伸びる内径鍔部があり
前記内径鍔部には、固定子端面側を固定子周方向に切り欠いた切り欠け部を設けた電動機が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−42959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、空調機や冷蔵庫の圧縮機に用いる電動機において高性能な電動機とする場合、電動機の固定子のスロットには巻線を高占積率(スロットに占める巻線の割合)に巻き付けている。特に電動機の固定子として、固定子の歯部に直接巻線を巻き付ける集中巻き方式の電動機においては、いかに固定子の歯部に多くの巻線を巻き付け、隙間なくスロットに詰め込み高占積率とするかが重要となっている。
【0005】
そこで、固定子の歯部に巻線を隙間なく巻き付けるために巻線機内のテンション装置により巻線を強く引っ張り隙間なく巻線を巻き付けている。ここで問題になるのは巻線を強く引っ張ることにより巻線の被覆を傷付け絶縁不良を起こしてしまう場合がある。このような電動機の固定子は製品とすることができないためスクラップとするか、固定子の歯部から絶縁不良を起こした巻線を外し、再度、巻線を巻き直すしかない。この場合、電動機の製作費、材料費、環境問題等を考慮すると、後者の固定子の歯部から絶縁不良を起こした巻線のみを外し、再度、固定子の歯部に巻線を巻き直す方法が取られる場合が多い。
【0006】
一方、特許文献1に示した電動機の固定子、或いは、本願図9に示した電動機の固定子10の歯部から絶縁不良を起こした巻線30を取り外す際、樹脂絶縁端板80の内径樹脂壁82の固定子内径方向に沿って周方向に伸びる内径鍔部83の固定子端面側を固定子周方向に切り欠いた切り欠け部88のコーナ部87に、巻線30が引っ掛かり固定子10の歯部から巻線30を取り去る作業に時間が掛かり著しく作業を悪化させている。尚、図9においては説明を容易にするために便宜上スロット内の巻線30は省略して図示していない。
【0007】
本願は、このように高占積率を要求される高性能の電動機において、固定子10の歯部に多くの巻線30を巻き付け、巻線機等により巻線30の被覆に傷を付けたとしても、速やかに固定子10の歯部から絶縁不良となった巻線30を取り除き、新たな巻線30を施すことができ、高占積率で、絶縁不良を低減し、品質を向上した樹脂絶縁構造とした電動機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
複数の薄板電磁鋼板を積層して一体固着した固定子と、この固定子の内径側において回転駆動する回転子を備えた電動機において、
この固定子の積層方向の両端部には樹脂絶縁端板が装着され、この樹脂絶縁端板を介して固定子歯部に直接巻線を巻き付けられた巻線胴部と、前記巻線胴部の固定子外径から固定子端面側とは反対の固定子積層方向に伸びた外径樹脂壁と、前記巻線胴部の固定子内径から固定子端面側とは反対の固定子積層方向に伸びた内径樹脂壁とを有した樹脂絶縁端板であって、
この内径樹脂壁は固定子内径方向に沿って周方向に伸びる内径鍔部があり、前記内径鍔部には、固定子端面側を固定子周方向に切り欠いた切り欠け部が設けられ、前記切り欠け部は、固定子端面側に面する端面部と、前記固定子端面から遠ざかるに従い順次固定子周方向からの切り欠け部の深さを浅くした側面部とで構成した電動機とする。
【0009】
また、前記固定子のスロット内をフィルム状のスロット絶縁紙で覆うことにより、高占積率の巻線を可能とした電動機とすることができる。
【0010】
更に、固定子の各々歯部に巻線を集中巻きし高占積率化した電動機の巻線間を絶縁するために、巻線相互間に介挿する相間絶縁を設けている。この相間絶縁の巻線相互間に介挿した後の固定子積層方向から見た断面形状は略V字に形成した絶縁部材であり、この相間絶縁の断面形状が略V字に形成した開口側を固定子の各スロット開口部に面するように配置させ、この相間絶縁の開口側の端部はスロット開口部とは反対方向に固定子周方向に折り曲げた折り曲げ部が設けられ、この折り曲げ部を固定子の鉄心歯部と巻線との間に介挿することにより、ずれることなく確実に相間絶縁を固定子のスロット内の巻線間に配置することができる。
【0011】
尚、固定子の歯部に巻き付けられた巻線間の相間を絶縁する相間絶縁の固定方法は、樹脂絶縁端板の内径樹脂壁の固定子内径方向に沿って周方向に伸びる内径鍔部の固定子端面側から固定子周方向に切り欠いた切り欠け部の固定子端面側に面する端面部により、断面形状が略V字に形成した前記相間絶縁のスロット開口部とは反対方向の固定子周方向に折り曲げた折り曲げ部分が係り止され、電動機の振動などによりずれて脱落することなく確実に固定することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電動機を用いることにより、固定子のスロットに占める巻線の割合が多い高占積率で高性能な電動機において、巻線機等により固定子の歯部に直接巻き付けた巻線の被覆を傷付けた場合でも、速やかに固定子の歯部から絶縁不良となった巻線を容易に取り除き新たに巻線を巻くことができ、高占積率で、絶縁不良を低減し、品質を向上した樹脂絶縁構造の電動機とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態の電動機の図。
【図2】実施形態の内径鍔部拡大図。
【図3】実施形態の巻線を取り外す状況を説明する図。
【図4】実施形態の巻線を取り外す状況を説明する図。
【図5】実施形態の巻線を取り外す状況を説明する図。
【図6】実施形態の相間絶縁を介挿途中の図。
【図7】実施形態の相間絶縁を介挿後の図。
【図8】実施形態の内径鍔部と歯部先端部の拡大図。
【図9】従来の実施形態の図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態を図面を用いて説明する。
図1に示した電動機の固定子10は、複数の電磁鋼板を積層し、隣同士の薄板電磁鋼板に設けた凸凹をかしめた、周知のオートクランプ装置(自動かしめ装置)により一体に固着した固定子10である。尚、複数の薄板電磁鋼板を積層し、固定子外周側の複数個所を溶接して一体固着した固定子でもよい。
【0015】
また、本実施形態の高占積率の電動機は、空調機の室外機や冷蔵庫の圧縮機を駆動する電動機や車両搭載用電動機に用いることができる。また、図示していないが本実施形態の電動機の回転子は、固定子10の内径側で回転駆動する内転型の回転子を用いている。
【0016】
また、この固定子10の歯部50には直接巻線30が巻き付けられた集中巻き方式により巻線30が施されている。固定子10のスロット数は6スロットであり、固定子10の薄板電磁鋼板が積層された固定子積層方向の両端部に樹脂絶縁端板60が装着されている。
【0017】
図1に示した固定子10の積層方向の両端部に装着した樹脂絶縁端板60は、上側樹脂絶縁端板60aと下側樹脂絶縁端板60bにより構成されている。固定子10のスロット内は電動機の巻線30を多く巻き付けることができるようにフィルム状のスロット絶縁紙40を用いて構成されている。前記スロット絶縁紙40は、固定子10のスロット形状に沿うように配置され、固定子10の固定子内径側の固定子歯部周方向に伸びた歯部先端部51のスロット内側までも覆うように配置されている。
【0018】
図1に示された固定子10の両端部に装着される樹脂絶縁端板60の上側樹脂絶縁端板60aと下側樹脂絶縁端板60bは、固定子歯部50に直接巻線30を巻き付けた巻線胴部69(図6〜図8参照)と、巻線胴部69の固定子外径から固定子端面側とは反対の固定子積層方向に伸びた外径樹脂壁61と、巻線胴部69の固定子内径から固定子端面側とは反対の固定子積層方向に伸びた内径樹脂壁62とを有している。尚、本実施形態では樹脂絶縁端板60として上側樹脂絶縁端板60aと下側樹脂絶縁端板60bを用いているが、本実施形態では、説明を容易にするため上側樹脂絶縁端板60a(以降、樹脂絶縁端板60とする。)のみで説明する。尚、基本的な上側樹脂絶縁端板60aと下側樹脂絶縁端板60bとの構造上の違いはない。また、図2〜図8での説明を容易にするために便宜上スロット内の巻線30を省略して図示していない。
【0019】
樹脂絶縁端板60を固定子両端部に固定する方法は、樹脂絶縁端板60の固定子端面側に面する側に凸部(図示せず。)の突起を設け、固定子両端部の固定子端面側には凹部(図示せず。)の溝を設け、樹脂絶縁60の凸部と固定子端面側の凹部を若干の締め代を持たせて嵌め合わせることにより樹脂絶縁端板60と固定子10を一体に固着している。これにより確実に樹脂絶縁端板60を固定子端部に固定することができる。
【0020】
尚、樹脂絶縁端板60の材質としては、ポリアミド樹脂(PA)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、フッ素樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等が用いられている。
【0021】
図1に示しているように樹脂絶縁端板60の巻線胴部69(図6〜図8参照)の固定子内径から固定子端面側とは反対の固定子積層方向に伸びた内径樹脂壁62には、固定子内径方向に沿って周方向に伸びる内径鍔部63がある。この内径鍔部63には内側鍔部拡大図の図2に示しているように、固定子端面側に固定子周方向に切り欠いた切り欠け部64が設けられている。切り欠け部64は、固定子端面側に面する端面部65と、固定子端面から遠ざかるに従い順次固定子周方向からの切り欠け部64の深さを浅くした側面部66とで構成されている。切り欠け部64の固定子端面側に面する端面部65は、固定子端面と略平行に設けられ、この固定子端面に略平行に設けられた端面部65のスロット開口部52側から、固定子積厚方向で固定子端面側とは逆に離れるに従い固定子周方向から切り欠いた切り欠け部64の深さを徐々に浅くした側面部66が設けられている。
【0022】
一方、従来の高占積率の電動機においては固定子10の歯部50に多くの巻線30を隙間なく巻き付けるために、巻線30を巻き付ける際の巻き付け力(テンション)が非常に強く、巻線30の被覆を傷付けてしまい絶縁不良を起こしてしまう場合がある。この場合、図9に示したような樹脂絶縁端板80の形状では、絶縁不良となった巻線30を固定子10の歯部50から取り外す際、内径鍔部83のコーナ部87に引っ掛かり巻線30を取り除く作業が著しく悪化してしまい、時間が掛ってしまう。
【0023】
従って、図1及び図2に示した本実施形態の樹脂絶縁端板60の内径鍔部63のような形状とすることにより容易に絶縁不良となった巻線30を取り外すことができる。次に図3〜図5において、絶縁不良となった巻線30を取り外す状況を説明する。
【0024】
図3に示すように樹脂絶縁端板60の内径鍔部63に、固定子端面側を固定子周方向に切り欠いた切り欠け部64が設けられ、この切り欠け部64の形状は固定子端面側に面する切り欠け端面が略平行となった端面部65と、この端面部65のスロット開口部52側から固定子端面から遠ざかるに従い順次固定子周方向からの切り欠け部64の深さを浅くした側面部66とで構成することにより、巻線30が内径鍔部63のコーナ部分に引っ掛かることもなく巻線30をスロット開口部52側の固定子端面側から遠ざかるに従い斜めに形成した樹脂絶縁60の側面部66にスムーズに持っていくことができる。
【0025】
次に、図4に示すように絶縁不良となった巻線30を、内径鍔部63の固定子端面側に面する固定子周方向に切り欠いて略平行とした端面部65から、スロット開口部52側の固定子端面側から遠ざかるに従い斜めに形成した樹脂絶縁60の側面部66により滑らかに巻線30を取り外すことができる。
【0026】
更に、図5に示すように絶縁不良となった巻線30が、スロット開口部52側の固定子端面側から遠ざかるに従い斜めに形成した樹脂絶縁60の側面部66から、スロット開口部52側の内径鍔部63に引っ掛かることなく取り外すことができる。
【0027】
よって、内径鍔部63に固定子端面側を固定子周方向に切り欠いた切り欠け部64が設けられ、この切り欠け部64の形状は固定子端面側に面する切り欠け端面部65が固定子端面側と略平行であり、この端面部65のスロット開口部52側から固定子端面から遠ざかるに従い順次固定子周方向からの切り欠け部64の深さを浅くした側面部66とで構成した内径鍔部63とすることにより、速やかに固定子10の歯部50から絶縁不良となった巻線30を取り除き、新たな巻線30を巻き直すことのできる樹脂絶縁構造としている。
【0028】
尚、図2に示したように内径鍔部63に、固定子端面側を固定子周方向に切り欠いた切り欠け部64の形状は、固定子端面側に面する切り欠け端面を略平行とした端面部65と、この端面部65のスロット開口部52側の周方向端部から固定子端面から遠ざかるに従い順次固定子周方向からの切り欠け部64の深さを浅くした側面部66とで構成され、側面部66の傾斜角は、スロット開口部52側で固定子端面側に略平行とした切り欠け端面部65の端部から傾斜角が0度〜90度の範囲としている。また、側面部66の形状は略平端面や、固定子端面側に若干ふくらませ曲率を持たせた略円孤形状でもよい。図9に示したような内径鍔部83のスロット開口部52側に巻線30が引っ掛かるようなコーナ部分87がなく、絶縁不良となった巻線30を取り去る作業が悪化しないような形状であればよい。
【0029】
また、高占積率の電動機とする場合、固定子10のスロット11内の絶縁は、フィルム状のスロット絶縁紙40で覆うことにより、多くの巻線30を固定子10の歯部50に巻き付けることができ高占積率の電動機とすることができる。
【0030】
また、固定子10の歯部50に直接巻線30を巻き付けた集中巻き方式の高占積率の電動機においては、隣同士の歯部50に巻き付けた巻線30が接触するほど、多くの巻線30を固定子10の歯部50に巻き付けている。これにより電動機の性能は向上するものの、隣り合う歯部50に巻き付けた巻線30同士が接触することにより絶縁不良が発生してしまう。本実施形態では固定子10の歯部50に多くの巻線30を巻き付けた高占積率の電動機において、図6〜図8に示したように隣り合う歯部50の巻線間に相間絶縁41を挿入して確実に絶縁している。
【0031】
図6〜図8の実施形態を図を用いて説明する。
図6〜図8に示した固定子10のスロット11には、先に説明したフィルム状のスロット絶縁紙40がスロット内を覆うように配置している。このフィルム状のスロット絶縁紙40は固定子10のスロット形状に沿うように配置され、固定子10の固定子内径側の固定子10の歯部50の周方向に伸びた歯部先端部51のスロット内側までも覆うように配置している。このスロット11には隣り合う歯部50に直接巻線30を巻き付けた巻線間に相間絶縁41が介挿されている。
【0032】
この相間絶縁41は固定子積層方向から見た場合、相間絶縁41の断面形状が略V字に形成されている。この場合、固定子10の歯部50に多くの巻線30を直接巻き付けた巻線間に介挿した場合、図6に示した相間絶縁41の介挿途中のものや、図7に示した相間絶縁41の介挿後のものにおいて固定子積層方向の上から見た相間絶縁41の見た目の断面形状は略T字形状に見える場合がある。
【0033】
この相間絶縁41の断面形状が略V字に形成されたV字の開口側を、固定子10の各スロット開口部52に面するように配置させ、相間絶縁41のV字の開口側の端部をスロット開口部52側とは反対方向の固定子周方向に折り曲げた折り曲げ部42を設けている。このV字の開口側の端部を折り曲げた折り曲げ部42は、内径樹脂壁62の固定子10の周方向に伸びる内径鍔部63が挿入のガイド壁となり固定子10の鉄心の歯部先端部51と巻線30との間に介挿固定することができる。
【0034】
また、図6〜図8に示しているように内径鍔部63を挿入のガイド壁として相間絶縁41のV字開口部の端部折り曲げ部42を挿入し易いように内径樹脂壁62の固定子内径方向に沿って周方向に伸びる内径鍔部63の固定子内径側から切り欠いた切り欠け部90が設けられている。この切り欠け部90は相間絶縁41のV字開口部の端部の折り曲げ部42が挿入し易いように、固定子軸方向端面に対して略直角か、もしくは固定子積層方向の固定子軸方向端面の離れた側(内径鍔部63の上側)から固定子軸方向端面側(内径鍔部63の下側)にかけて、固定子内径側から見て内径鍔部63の内径側が広がる様に傾斜(固定子端面側に対して逆テーパ)した形状となっている。
【0035】
また、図8に示しているように内径鍔部63と歯部先端部51との位置関係は、固定子積層方向の上からみた場合、固定子10の歯部先端部51の略中央部から固定子11のスロット内側に飛び出ている。この歯部先端部51と内径鍔部63との間から、相間絶縁41のV字開口部が矢印方向に折りたたまれた状態で相間絶縁41のV字開口部の端部の折り曲げ部42が固定子10の鉄心の歯部先端部51と巻線30との間に介挿固定している。この場合、歯部先端部51の略中央部より歯部根本側から内径鍔部63が固定子10のスロット内側に飛び出る場合は、この内径鍔部63が邪魔になりスロット11に巻線30を多く巻くことができない。また逆に、歯部先端部51の略中央部よりスロット開口部52側から内径鍔部63が固定子10のスロット内側に飛び出る場合は、相間絶縁41のV字開口部の端部の折り曲げ部42を挿入することができない。尚、相間絶縁41のV字開口部の端部の折り曲げ部42は、スロット内挿入後は、弾性力によりもとに戻り矢印方向とは逆に開き、内径鍔部63の端面部65によりスロット11内でずれない様に固定される。
【0036】
この相間絶縁41のV字開口側の端部を折り曲げた折り曲げ部42は、固定子10の鉄心の歯部先端部51とフィルム状のスロット絶縁40との間に介挿してもよいが、好ましくは、固定子10の鉄心の歯部先端部51のスロット内を覆うフィルム状のスロット絶縁40と固定子10の歯部50に巻き付けた巻線間に挟み込むように介挿するとよい。これにより相間絶縁41の折れ曲げ部分42が固定子10の積層された積層鉄心の隙間に引っ掛かり挿入しづらくなることもなく、フィルム状のスロット絶縁40と固定子10の歯部50に巻き付けた巻線間に容易に介挿することができる。
【0037】
尚、図7に示しているように断面形状が略V字に形成されV字の開口側の端部をスロット開口部52とは反対方向の固定子周方向に折り曲げた折り曲げ部分42を、固定子10の両端部に装着した樹脂絶縁端板60の内径樹脂壁62の固定子内径方向に沿って周方向に伸びる内径鍔部63の固定子端面側から固定子周方向に切り欠いた切り欠け部64の固定子端面側に面する端面部65により、固定子軸方向に抜けないように係り止めされている。また、この内径鍔部63の固定子内径側から切り欠いた切り欠け部90は、好ましくは、固定子両端部に装着した樹脂絶縁端板60の上側樹脂絶縁端板60aと下側樹脂絶縁端板60bのどちらか一方の相間絶縁41が挿入される側のみに設けることが好ましい。内側鍔部63の切り欠き部90が設けられていない側では、相間絶縁41がずれることなく確実に固定することができる。
【0038】
これにより巻線間に介挿した断面形状が略V字の相間のV字開口側の端部の折れ曲げ部42を、固定子端面側から固定子周方向に切り欠いた切り欠け部64の端面部65により固定子10の両側で係り止でき、電動機が振動しても固定子10の巻線間から脱落することなく確実に絶縁することができ品質を向上することができる。
【符号の説明】
【0039】
10・・・固定子
11・・・スロット
30・・・巻線
40・・・スロット絶縁
41・・・相間絶縁
42・・・折り曲げ部分
50・・・歯部
51・・・歯部先端部
52・・・スロット開口部
60・・・樹脂絶縁端板
60a・・・上側樹脂端板
60b・・・下側樹脂端板
61・・・外径樹脂壁
62・・・内径樹脂壁
63・・・内径鍔部
64・・・切り欠き部
65・・・端面部
66・・・側面部
69・・・巻線胴部
80・・・樹脂絶縁端板
81・・・外径樹脂壁
82・・・内径樹脂壁
83・・・内径鍔部
87・・・コーナ部
88・・・切り欠き部
90・・・切り欠き部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の薄板電磁鋼板を積層して一体固着した固定子と、前記固定子の内径側において回転駆動する回転子を備えた電動機において、
前記固定子の積層方向の両端部には樹脂絶縁端板が装着され、前記樹脂絶縁端板を介して前記固定子歯部に直接巻線を巻き付けられた巻線胴部と、前記巻線胴部の固定子外径から固定子端面側とは反対の固定子積層方向に伸びた外径樹脂壁と、前記巻線胴部の固定子内径から固定子端面側とは反対の固定子積層方向に伸びた内径樹脂壁とを有し、
前記内径樹脂壁は、固定子内径方向に沿って周方向に伸びる内径鍔部があり
前記内径鍔部には、固定子端面側を固定子周方向に切り欠いた切り欠け部が設けられ、前記切り欠け部は、固定子端面側に面する端面部と、前記固定子端面から遠ざかるに従い順次固定子周方向からの切り欠け部の深さを浅くした側面部とで構成したことを特徴とする電動機。
【請求項2】
前記固定子のスロット内は、フィルム状のスロット絶縁紙で覆われていることを特徴とする請求項1項記載の電動機。
【請求項3】
前記固定子のスロット内には、固定子の歯部に直接巻き付けた巻線の相互間に介挿される相間絶縁を有し、前記相間絶縁は固定子積層方向から見た断面形状が略V字に形成させた絶縁部材であり、前記相間絶縁の断面形状が略V字に形成された開口側を、前記固定子の各スロット開口部に面するように配置させ、前記絶縁部材の開口側の端部はスロット開口部とは反対方向の固定子周方向に折り曲げた折り曲げ部が設けられ、前記折り曲げ部を固定子の鉄心歯部と巻線との間に介挿したことを特徴とする請求項1項また請求項2項記載の電動機。
【請求項4】
前記樹脂絶縁端板の内径樹脂壁の固定子内径方向に沿って周方向に伸びる内径鍔部の固定子端面側から固定子周方向に切り欠いた切り欠け部の固定子端面側に面する端面部により、断面形状が略V字に形成した前記相間絶縁のスロット開口部とは反対方向の固定子周方向に折り曲げた折り曲げ部を固定したことを特徴とする請求項1項及至請求項3項いずれかに記載の電動機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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