説明

電動補助自転車

【課題】電動補助自転車の運転者がバッテリ残容量及びアシスト走行可能距離を直感的に把握できるような表示を行う電動補助自転車を提供する。
【解決手段】電動補助自転車1は、電動モータ61に対して電力を供給するバッテリ36と、バッテリ36の残容量を検出する電池制御部37とを備える。また、電動補助自転車1は、電池制御部37によって検出されたバッテリ36の残容量に基づいて、残りのアシスト走行可能距離を算出するアシスト可能距離計算部111bと、バッテリ36の残容量及び前記アシスト走行可能距離を同時に表示する表示装置100とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者のペダル踏力を電動モータの駆動力によってアシストする電動補助自転車に関する。詳しくは、電動補助自転車の表示機能に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電池の残容量に基づいて残りのアシスト走行可能距離を表示する電動補助自転車が知られている。このような電動補助自転車では、例えば特許文献1に開示されるように、電池の残容量と、電動補助自転車の速度情報と、経過時間情報とに基づいて、残りのアシスト走行可能距離を算出する。また、上述の電動補助自転車では、表示部に、残りのアシスト可能距離を表示する。
【0003】
また、電池の残容量を表示する電動補助自転車も知られている。このような電動補助自転車では、電池の残容量を検出して、その検出結果を表示部に表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−304502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、電動補助自転車の運転者がバッテリ残容量及びアシスト走行可能距離を直感的に把握できるような表示を行う電動補助自転車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0006】
上述のように、アシスト走行可能距離は、電池の残容量に基づいて算出される。そのため、アシスト走行可能距離及びバッテリの残容量は、バッテリの残容量に関する情報という点で共通している。したがって、バッテリに関する情報を得るためには、アシスト走行可能距離またはバッテリの残容量のうち、いずれか一方を表示すればよい。そのため、一般的には、アシスト走行可能距離またはバッテリの残容量のうち、いずれか一方の情報のみが表示される。
【0007】
ところで、電動補助自転車の走行の際には、バッテリの残容量及びアシスト走行可能距離がアシスト走行に大きく影響する。そのため、電動補助自転車の運転者は、常にバッテリの残容量及びアシスト走行可能距離の変化が気になる。しかしながら、上述のようにバッテリ残容量の情報だけでは、運転者は、残りのアシスト走行可能距離が直感的に分かりにくい。また、運転者は、アシスト走行可能距離の情報だけでは、バッテリの残容量が直感的に分かりにくい。
【0008】
そこで、本発明の一実施形態に係る電動補助自転車は、運転者のペダル踏力を電動モータの駆動力によってアシストする電動補助自転車である。電動補助自転車は、前記電動モータに対して電力を供給する電池と、前記電池の残容量を検出する電池制御部とを備える。また、電動補助自転車は、前記電池制御部によって検出された前記電池の残容量に基づいて、残りのアシスト走行可能距離を算出するアシスト可能距離計算部と、前記電池の残容量及び前記アシスト走行可能距離を同時に表示する表示装置とを備える。
【0009】
表示装置に電池の残容量及びアシスト走行可能距離を同時に表示することで、一方の情報だけではなく、電池の残容量及びアシスト走行可能距離をそれぞれ直感的に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の実施形態1に係る電動補助自転車の概略構成を示す右側面図である。
【図2】図2は、駆動ユニット及び従動スプロケットの概略構成を示す図である。
【図3】図3は、図2におけるIII−III線断面図である。
【図4】図4は、表示装置の正面図である。
【図5】図5は、表示装置をハンドルに取り付けた状態を示す図である。
【図6】図6は、実施形態1における制御部、電池制御部及び表示装置制御部の概略構成を示すブロック図である。
【図7】図7は、実施形態1におけるアシスト走行可能距離の算出方法を示すフローである。
【図8】図8は、表示装置制御部におけるアシスト走行可能距離の表示制御を示すフローである。
【図9】図9は、実施形態2におけるアシスト可能距離計算部の概略構成を示すブロック図である。
【図10】図10は、実施形態2におけるアシスト走行可能距離の算出方法を示すフローである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の各実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、各図中の構成部材の寸法は、実際の構成部材の寸法及び各構成部材の寸法比率等を忠実に表したものではない。
【0012】
以下の説明において、前方、後方、左方及び右方は、ハンドル23を握りつつ電動補助自転車1のシート24に着座した運転者から見た前方、後方、左方及び右方を意味する。
【0013】
[実施形態1]
(電動補助自転車の全体構成)
図1に、実施形態1に係る電動補助自転車1の概略構成を示す。図2に、電動補助自転車1の駆動ユニット40及び従動スプロケット45の概略構成を示す。この電動補助自転車1は、後述するように、運転者がペダル33,34を踏み込むことにより得られるペダル踏力を、電動モータ61から出力される駆動力によってアシストする。すなわち、電動補助自転車1は、一般的な自転車の構成に加えて、ペダル踏力をアシストするための駆動機構を有している。
【0014】
図1に示すように、電動補助自転車1は、前後方向に延びる車体フレーム11を有する。また、電動補助自転車1は、前輪21、後輪22、ハンドル23、シート24及び駆動ユニット40を有する。
【0015】
車体フレーム11は、ヘッドパイプ12、ダウンフレーム13、シートフレーム14、ブラケット15(図2参照)、一対のチェーンステイ16及び一対のシートステイ17を有する。図1に示すように、ヘッドパイプ12は、電動補助自転車1の前部に配置される。ヘッドパイプ12には、後方に延びるダウンフレーム13の前方側が接続されている。シートフレーム14は、ダウンフレーム13の後方側に接続されていて、該ダウンフレーム13の後端部から上方且つ斜め後方に向かって延びている。
【0016】
図2に示すように、ブラケット15は、ダウンフレーム13の後方側に取り付けられている。ブラケット15の後方側には、後輪22を左右から挟むように一対のチェーンステイ16が接続されている。図1に示すように、一対のシートステイ17は、それぞれ、一方の端部が各チェーンステイ16に接続されている。また、一対のシートステイ17は、それぞれ、他方の端部がシートフレーム14に接続されている。
【0017】
ヘッドパイプ12には、ハンドルステム25が回転自在に挿入されている。ハンドルステム25の上端部には、ハンドル23が固定される。ハンドルステム25の下端部には、フロントフォーク26が固定される。フロントフォーク26の下端部には、前輪21が車軸27によって回転可能に支持されている。
【0018】
円筒状のシートフレーム14の内方には、シートパイプ28が挿入されている。シートパイプ28の上端部には、シート24が設けられている。
【0019】
図1及び図2に示すように、一対のチェーンステイ16の後端部には、後輪22が車軸29によって回転可能に支持されている。後輪22の右側には、車軸29と同軸に従動スプロケット45が設けられている。従動スプロケット45は、図示しない一方向クラッチを介して後輪22に連結される。
【0020】
図2に示すように、ブラケット15には、複数の締結金具30によって駆動ユニット40が固定される。駆動ユニット40の構成については後述する。図1及び図2に示すように、駆動ユニット40の後述する駆動スプロケット42と後輪22に設けられた従動スプロケット45とには、無端状のチェーン46が巻き掛けられている。駆動ユニット40及びチェーン46を覆うように、車体フレーム11にチェーンカバー47が取り付けられている(図1参照)。チェーンカバー47は、メインカバー48及びサブカバー49を有する。メインカバー48は、駆動スプロケット42の右方を覆いつつ前後方向に延びている。サブカバー49は、駆動ユニット40の後部の右方を覆う。
【0021】
図1に示すように、後述する駆動ユニット40のクランク軸41の両端部には、クランクアーム31,32が取り付けられている。クランクアーム31,32の先端部には、それぞれ、ペダル33,34が取り付けられている。
【0022】
図1に示すように、シートフレーム14の後方には、後述する駆動ユニット40の電動モータ61に電力を供給するためのバッテリユニット35が配置されている。バッテリユニット35は、バッテリ36(電池)及び電池制御部37を有する(図6参照)。バッテリ36は、充放電可能な充電池である。電池制御部37は、バッテリ36の充放電を制御するとともに、該バッテリ36の出力電流及び残容量等を監視する。電池制御部37の構成については後述する。
【0023】
図3は、駆動ユニット40の概略構成を示す断面図である。この図3は、図2におけるIII−III線断面図である。
【0024】
図3に示すように、駆動ユニット40は、本体部51、クランク軸41、駆動スプロケット42、駆動力発生部60、補助スプロケット43及びチェーンテンショナ86を有する。
【0025】
本体部51は、左右から互いに組み合わされる第1ケース部52及び第2ケース部53を有する。第1ケース部52と第2ケース部53とは、複数の締結金具54によって互いに固定されている(図2及び図3参照)。本体部51は、上述の締結金具30によって、ブラケット15に取り付けられている。
【0026】
図3に示すように、クランク軸41は、本体部51を左右方向に貫通するとともに、該本体部51の前端部に回転可能に支持されている。クランク軸41は、第1ケース部52及び第2ケース部53に対して、複数の軸受を介して回転可能に支持されている。クランク軸41の一方側には、該クランク軸41と一体で回転する略円筒状のインナー部材55aが設けられている。上述のようにクランク軸41の両端部にはクランクアーム31,32が接続されているため、運転者がペダル33,34を踏み込むことにより、クランク軸41が回転する。
【0027】
駆動スプロケット42は、インナー部材55aの外周面の右端部に取り付けられる。クランク軸41、インナー部材55a及び駆動スプロケット42は、互いに同軸に配置される。
【0028】
クランク軸41の軸方向中央部分には、該クランク軸41と同軸状に略円筒状の回転部材56が配置される。回転部材56の右端部は、円筒形状の滑り軸受71を介してクランク軸41に支持されている。回転部材56の左端部は、たとえばスプライン構造によってクランク軸41に接続されている。これにより、回転部材56は、クランク軸41と一体で回転する。
【0029】
回転部材56と同軸にトルク検出部57が配置されている。トルク検出部57は、たとえば磁歪式のトルクセンサを含む。トルク検出部57が磁歪式のトルクセンサの場合、トルク検出部57は、回転部材56の外周面に対向して配置されるコイルを有する。このような構成のトルク検出部57は、回転部材56の歪みをコイルの電圧変化として検出することにより、クランク軸41のトルクを検出する。トルク検出部57は、検出したトルクに応じた信号を後述する制御装置110に出力する。制御装置110は、トルク検出部57から出力された信号に基づいて後述の電動モータ61を制御する。なお、トルク検出部57は、ペダル踏力を検出可能な構成であれば、磁歪式のトルクセンサ以外の構成を有していてもよい。
【0030】
回転部材56とインナー部材55aとを連結するように、一方向クラッチ55の略円筒状のアウター部材55bがクランク軸41と同軸に配置されている。アウター部材55bの左端部と回転部材56の右端部とは、例えばスプライン構造によって接続される。これにより、アウター部材55bは、回転部材56と一体で回転する。
【0031】
アウター部材55bの右端部とインナー部材55aの左端部とは、アウター部材55bからインナー部材55aに一方向の回転力のみが伝達されるように、例えばラチェット構造によって接続される。これにより、アウター部材55bからインナー部材55aに、前転方向(右側から見て時計回りの方向)の回転力が伝達される。しかしながら、アウター部材55bからインナー部材55aに、後転方向(右側から見て反時計回りの方向)の回転力は伝達されない。
【0032】
この構成により、運転者が電動補助自転車1を前進させるようにペダル33,34を踏み込んでクランク軸41を回転させた場合には、運転者のペダル踏力がクランク軸41から回転部材56及びアウター部材55bを介してインナー部材55aに伝達される。したがって、インナー部材55a及び駆動スプロケット42が前転する。一方、運転者がクランク軸41を後転させた場合、その回転はアウター部材55bからインナー部材55aに伝達されない。したがって、インナー部材55a及びクランク軸41は後転しない。
【0033】
駆動力発生部60は、第1ケース部52及び第2ケース部53内に、クランク軸41よりも後方に配置されている。駆動力発生部60は、電動モータ61、出力軸81及びギア82を有する。
【0034】
電動モータ61は、後述する制御装置110から出力される制御信号に基づいて電動補助自転車1の走行をアシストするための補助駆動力を発生する。また、電動モータ61は、後述するアシストモードに応じて電動補助自転車1の走行をアシストする補助駆動力を変化させるように、駆動制御される。
【0035】
電動モータ61は、ステータ62、ロータ63及び回転軸64を有する。ステータ62は、第2ケース部53に固定されている。第2ケース部53には、電動モータ61の左側を覆うように、モータカバー65が取り付けられている。回転軸64は、ロータ63を貫通しているとともに該ロータ63に固定されている。回転軸64は、転がり軸受66,67を介して、第2ケース部53及びモータカバー65に回転可能に支持されている。回転軸64の右端部には、ギア溝64aが形成されている。
【0036】
なお、特に図示しないが、電動モータ61の近傍には、後述する制御装置110が配置されている。本実施形態では、電動モータ61の近傍に制御装置110を配置しているが、この限りではなく、制御装置110を他の場所に配置してもよい。
【0037】
出力軸81は、クランク軸41よりも後方の位置で、本体部51に回転可能に支持されている。具体的には、出力軸81は、転がり軸受83,84を介して第1ケース部52及び第2ケース部53に回転可能に支持されている。
【0038】
ギア82は、転がり軸受83と転がり軸受84との間に、出力軸81と同軸に配置されている。ギア82は、電動モータ61の回転軸64に形成されたギア溝64aと噛み合っている。これにより、電動モータ61で発生した補助駆動力が回転軸64からギア82に伝達されて、該ギア82が回転する。この実施形態では、回転軸64が前転するように、電動モータ61が配置される。したがって、ギア82は、回転軸64から伝達される補助駆動力によって後転する。
【0039】
ギア82と出力軸81との間には、一方向クラッチ85が設けられている。一方向クラッチ85は、ギア82から出力軸81に後転方向の回転力を伝達するが、前転方向の回転力を伝達しないように構成されている。
【0040】
補助スプロケット43は、出力軸81の右端部に、該出力軸81と同軸に配置されている。補助スプロケット43と出力軸81とは、例えばスプライン構造によって互いに接続される。これにより、駆動力発生部60で発生した補助駆動力が出力軸81から補助スプロケット43に伝達される。よって、補助スプロケット43が後転する。
【0041】
チェーンテンショナ86は、第1ケース部52の右側面の後端部に配置されている。チェーンテンショナ86は、図2に示すように、一端側が引張バネ87を介して第1ケース部52に接続されている。また、チェーンテンショナ86は、他端側が支持ボルト88によって第1ケース部52に対して回転可能に接続されている。チェーンテンショナ86には、支持ボルト89に対して回転可能なテンションスプロケット90が設けられている。このテンションスプロケット90には、該テンションスプロケット90を後方に押すようにチェーン46が巻き掛けられる。したがって、チェーン46は、チェーンテンショナ86によって、適度なテンションに調整される。
【0042】
(表示装置)
図1及び図5に示すように、電動補助自転車1は、ハンドル23に取り付けられる表示装置100を有する。表示装置100は、例えば、ハンドル23に対し、左グリップの近傍に取り付けられる。表示装置100は、電動補助自転車1の速度、バッテリ36の残容量、バッテリ36から出力される電流量及びその他の走行情報を含む情報を表示する。表示装置100は、後述する制御装置110に対して図示しない配線を介して信号の授受可能に接続されている。なお、表示装置100は、ハンドル23に対し、車幅方向の中央または右グリップの近傍に取り付けてもよい。その場合には、以下で説明する表示装置の構成を、左右逆にすればよい。
【0043】
図4に示すように、表示装置100は、横長の略矩形状に形成されたケーシング101、及び、該ケーシング101内に収納される表示装置制御部102を有する。ケーシング101には、表示部103、アシストモード操作部104(入力部)、表示モード切替ボタン105、ライト操作部106及び電源スイッチ107が設けられている。
【0044】
表示部103は、例えば液晶パネルを含む。表示部103は、表示装置制御部102によって、文字や図形等の表示が制御される。表示部103は、速度表示部103a、バッテリ残容量表示部103b(電池残容量表示部)、電流量表示部103c、アシストモード表示部103d及び選択情報表示部103eを有する。速度表示部103a、バッテリ残容量表示部103b、電流量表示部103c、アシストモード表示部103d及び選択情報表示部103eには、後述する制御装置110からメータ情報信号として出力される情報が表示される。バッテリ残容量表示部103bと選択情報表示部103eとは隣接して設けられている。
【0045】
速度表示部103aには、電動補助自転車1の速度が数字で表示される。電動補助自転車1の速度は、例えば図示しない速度センサによって検出される。速度表示部103aは、表示部103の中央部分の上側に設けられている。
【0046】
バッテリ残容量表示部103bには、バッテリユニット35の電池制御部37から制御装置110に出力される電池残容量の情報に基づいて、バッテリ36の残容量がセグメントによって表示される。これにより、バッテリ36の残容量を直感的に把握することができる。バッテリ残容量表示部103bは、表示装置100に電力が供給されている間は、常時バッテリ36の残容量を表示する。
【0047】
バッテリ残容量表示部103bは、図5に示すように、表示部103における車幅方向で車体中央側(運転者側、図中の右側)に設けられている。バッテリ残容量表示部103bは、選択情報表示部103eよりも車幅方向で車体中央側に設けられている。また、バッテリ残容量表示部103bは、選択情報表示部103eよりも上側に設けられている。これにより、運転者が表示部103を視認した際に、バッテリ残容量表示部103bを最も視認しやすい位置に配置することができる。表示部103では、運転者に近い車幅方向で車体中央側且つ運転時の視線の変更が少ない上側が、運転者にとって最も視認しやすい位置になる。その位置にバッテリ残容量表示部103bを設けることにより、該バッテリ残容量表示部103bを運転者が視認しやすくなる。
【0048】
電流量表示部103cには、バッテリユニット35の電池制御部37から制御装置110に出力される電流量の情報に基づいて、バッテリ36の出力電流量がセグメントによって表示される。電流量表示部103cは、表示部103において、速度表示部103aの下側に設けられている。
【0049】
アシストモード表示部103dには、後述するアシストモード操作部104の操作によって選択されたアシストモードが表示される。例えば、本実施形態の場合、アシストモードは、後述するように、“強”、“標準”、“オートエコ”、“切”の4つのモードがある。アシストモードが“強”、“標準”、“オートエコ”のうちいずれか一つの場合には、アシストモード表示部103dは、各モードに対応する表示部分を点灯表示する。一方、アシストモードが“切”の場合には、アシストモード表示部103dは、いずれの表示部分も点灯させない。後述するように、アシストモードは、電動モータ61のアシスト比率に対応している。よって、アシストモード表示部103dは、電動モータ61のアシスト比率に関する情報を表示する。アシストモード表示部103dは、表示部103における左グリップ側に設けられている。アシストモード表示部103dは、アシストモード操作部104の近傍に位置する。
【0050】
選択情報表示部103eには、後述する表示モード切替ボタン105の操作に応じて、平均車速、最大車速、積算走行距離、残りアシスト走行可能距離、消費カロリー及びバッテリ残容量が数字で表示される。これにより、平均車速、最大車速、積算走行距離、残りアシスト走行可能距離、消費カロリー及びバッテリ残容量を、数値で精度良く表示することができる。平均車速、最大車速、積算走行距離、残りアシスト走行可能距離、消費カロリー及びバッテリ残容量は、制御装置110から出力される情報に基づいて、選択情報表示部103eに表示される。選択情報表示部103eは、表示部103において、車幅方向で車体中央側に設けられているとともに、バッテリ残容量表示部103bと隣接して設けられている。これにより、運転者は、運転者により近い車体中央側に配置される選択情報表示部103eを、視認しやすい。しかも、選択情報表示部103eをバッテリ残容量表示部103bと隣接して配置することで、該選択情報表示部103eに選択的に表示されるアシスト走行可能距離とバッテリ36の残容量とを隣接した位置で表示させることができる。よって、運転者は、バッテリ36の残容量を把握しつつ、残りのアシスト走行可能距離を容易に認識することができる。
【0051】
アシストモード操作部104は、ケーシング101において、表示部103の左側に設けられている。これにより、電動補助自転車1の運転者は、左手の親指等によって、アシストモード操作部104を容易に操作することができる。しかも、表示部103はケーシング101における車幅方向で車体中央側(運転者側)に位置するため、運転者が表示部103を視認しやすい。
【0052】
アシストモード操作部104は、第1選択ボタン104a及び第2選択ボタン104bを有する。第1選択ボタン104aは、ケーシング101において、第2選択ボタン104bよりも上側に設けられている。
【0053】
運転者が第1選択ボタン104aを押すと、より補助駆動力の大きいアシストモードを選択することができる。例えば、現在のアシストモードが“標準”の場合、第1選択ボタン104aを押すことにより、アシストモードは“強”に変更される。
【0054】
運転者が第2選択ボタン104bを押すと、より補助駆動力の小さいアシストモードを選択することができる。例えば、現在のアシストモードが“標準”の場合、第2選択ボタン104bを押すことにより、アシストモードは“オートエコ”に変更される。なお、アシストモードが“オートエコ”の状態で、第2選択ボタン104bをもう一度押すと、アシストモードは“切”になる。
【0055】
以下で、アシストモードについて簡単に説明する。
【0056】
本実施形態の場合、電動補助自転車1のアシストモードは、“強”、“標準”、“オートエコ”、“切”の4モードがある。電動モータ61の補助駆動力は、同じペダル踏力に対して、“強”、“標準”、“オートエコ”の順に小さくなる。
【0057】
アシストモードが“標準”の場合、電動モータ61は、電動補助自転車1が発進、平坦路走行または上り坂走行の際に補助駆動力を発生させる。アシストモードが“強”の場合、電動モータ61は、“標準”の場合と同様、電動補助自転車1が発進、平坦路走行または上り坂走行の際に補助駆動力を発生させる。電動モータ61は、アシストモードが“強”の場合には、同じペダル踏力に対して“標準”の場合よりも大きな補助駆動力を発生させる。
【0058】
アシストモードが“オートエコ”の場合、電動モータ61は、電動補助自転車1が発進または上り坂走行の際に、同じペダル踏力に対して“標準”の場合よりも小さな補助駆動力を発生する。アシストモードが“切”の場合、電動モータ61は、補助駆動力を発生しない。
【0059】
したがって、上述のアシストモードに応じて、運転者のペダル踏力に対する電動モータ61のアシスト比率が変わる。アシスト比率とは、運転者のペダル踏力に対する電動モータ61の補助駆動力の比である。
【0060】
本実施形態では、アシストモードを4段階に切り替えている。しかしながら、アシストモードの切替は3段階以下であってもよいし、5段階以上であってもよい。
【0061】
表示モード切替ボタン105は、ケーシング101の下側且つ左側に設けられている。表示モード切替ボタン105を押すことにより、選択情報表示部103eに表示される情報が切り替わる。
【0062】
ライト操作部106は、ケーシング101の下側且つ右側に設けられている。すなわち、ライト操作部106は、ケーシング101の下側に、表示モード切替ボタン105と並んで設けられている。ライト操作部106を押すことにより、表示装置100の表示装置制御部102からライトON信号またはライトOFF信号が制御装置110に対して出力される。これにより、電動補助自転車1の図示しないライトを点灯または消灯させることができる。
【0063】
電源スイッチ107は、ケーシング101の上側且つ左側に設けられている。電源スイッチ107を押すことにより、表示装置100の表示装置制御部102からON信号またはOFF信号が制御装置110に対して出力される。これにより、電動補助自転車1のアシスト制御を行うシステム全体をONまたはOFFにすることができる。
【0064】
図6に示すように、表示装置制御部102は、表示制御部102a、操作制御部102b及び信号制御部102cを有する。表示制御部102aは、制御装置110から入力されるメータ情報信号に基づいて、表示部103に各種情報を表示するための表示制御を行う。すなわち、表示制御部102aは、速度表示部103a、バッテリ残容量表示部103b、電流量表示部103c、アシストモード表示部103d及び選択情報表示部103eに、それぞれ、メータ情報信号に応じた文字や図等の情報を表示する。
【0065】
操作制御部102bは、表示装置100に対する入力操作に応じて表示制御部102a及び制御装置110に信号出力を行う。すなわち、操作制御部102bは、アシストモード操作部104、表示モード切替ボタン105または電源スイッチ107の操作が行われると、表示制御部102aに信号を出力して表示部103の表示を変更する一方、制御装置110に対しても信号出力を行う。また、操作制御部102bは、ライト操作部106の操作が行われると、制御装置110に対して信号出力を行う。
【0066】
信号制御部102cは、表示装置100と制御装置110との間における信号の授受を制御する。表示装置100及び制御装置110は、電動補助自転車1の走行情報及び表示装置100に対する入力操作等に関する信号を授受している。信号制御部102cは、表示装置100側で信号の授受を制御している。
【0067】
上述の表示装置制御部102によって、表示装置100の表示部103に制御装置110から出力される各種情報を表示することができる。しかも、上述の表示装置制御部102によって、表示装置100に対する入力操作に応じて表示部103の表示を切り替えることができるとともに、制御装置110に対して信号出力を行うことができる。
【0068】
(制御装置及び電池制御装置)
制御装置110は、特に図示しないが、電動モータ61の近傍に設けられている。制御装置110は、電動補助自転車1のアシスト制御を行うとともに、表示装置100に各種情報を表示させる。制御装置110は、図6に示すように、制御部111、インバータ112及び記憶部113を有する。
【0069】
インバータ112は、バッテリ36から電動モータ61に供給する電力を制御することにより、該電動モータ61の駆動を制御する。インバータ112は、後述するように制御部111から出力される制御信号に応じて、電動モータ61の駆動を制御する。
【0070】
記憶部113は、データを記憶可能に構成されている。記憶部113は、例えば不揮発性メモリを含む。記憶部113には、電動補助自転車1の走行時の情報、表示装置100に対して入力操作された設定情報、及び、各アシストモードの電費(電力消費率:バッテリ36の単位容量(電気量)当たりの走行距離。以下、単に電費という。)などのデータを含む各種情報が記憶されている。また、記憶部113は、制御部111と信号の授受を行うことができる。これにより、制御部111は、記憶部113に記憶されている各種情報を読み込むことができる一方、制御部111に入力された情報を該記憶部113にデータとして記憶させることができる。
【0071】
なお、記憶部113には、特定のアシスト比率に対応する電費のみが記憶されていてもよい。この場合には、後述するアシスト可能距離計算部111bが、現在、選択されているアシストモードのアシスト比率と、記憶部113に記憶されている特定のアシスト比率との比(もしくは差)を考慮して、現在のアシスト比率における電費を算出する。
【0072】
また、本実施形態では、記憶部113は、制御部111から独立しているが、記憶部113が制御部111に内蔵されていてもよい。
【0073】
制御部111は、バッテリユニット35の電池制御部37と信号の授受を行うことにより、バッテリ36の出力電流を制御するとともに、該バッテリ36の残容量及び出力電流に関する情報(バッテリ情報)を取得する。また、制御部111は、表示装置100の表示装置制御部102と信号の授受を行うことにより、該表示装置100に各種情報を表示させるとともに、該表示装置100に対して入力操作された情報を取得する。
【0074】
制御部111は、モータ制御部111a及びアシスト可能距離計算部111bを有する。モータ制御部111aは、上述のトルク検出部57から入力されたトルクに関する信号に応じて、運転者のペダル踏力をアシストするように、インバータ112に制御信号を出力する。詳しくは、モータ制御部111aは、トルク検出部57から入力されるトルクとアシストモードに対応したアシスト比率に基づいて、電動モータ61に要求される補助駆動力を算出する。そして、モータ制御部111aは、電動モータ61の出力が要求された補助駆動力となるように電動モータ61の出力を調整する。すなわち、モータ制御部111aは、ペダル踏力に応じて、アシストに必要な駆動力を電動モータ61に発生させる。
【0075】
モータ制御部111aは、表示装置100のアシストモード操作部104におけるアシストモードの変更操作に応じて、電動モータ61による補助駆動力を変更する。
【0076】
例えば、モータ制御部111aは、アシストモードが“標準”の場合、トルク検出部57によって、発進時、平坦路走行時または上り坂走行時のいずれか一つに該当するトルクが検出されると、電動モータ61に補助駆動力を発生させる。アシストモードが“強”の場合、モータ制御部111aは、同じトルク(ペダル踏力)に対し、アシストモードが“標準”の場合に比べて大きな補助駆動力を電動モータ61に発生させる。アシストモードが“オートエコ”の場合、モータ制御部111aは、トルク検出部57によって、発進時または上り坂走行時に該当するトルクが検出されると、電動モータ61に補助駆動力を発生させる。アシストモードが“オートエコ”の場合、モータ制御部111aは、同じトルク(ペダル踏力)に対し、アシストモードが“標準”の場合に比べて小さな補助駆動力を電動モータ61に発生させる。アシストモードが“切”の場合には、モータ制御部111aは、電動モータ61を駆動させない。
【0077】
アシスト可能距離計算部111bは、電池制御部37から出力されるバッテリ36の残容量比率及びバッテリ容量(例えば公称容量)のデータを用いて、残りのアシスト走行可能距離を計算する。残容量比率とは、バッテリの満充電時の容量に対する残容量の比率を意味する。
【0078】
アシスト可能距離算出部111bは、電費選択部111c、残電気量算出部111d及び距離算出部111eを有する。電費選択部111cは、アシストモードに応じた電費のデータを記憶部113から読み込む。なお、この記憶部113には、例えば、バッテリ36を満充電した状態での各アシストモードにおける走行距離を、バッテリ36の公称容量で除算して得られる一定値が、電費として予め記憶されている。記憶部113に記憶されている電費のデータは、各アシストモードに対応したデータであれば、どのようなデータであってもよい。
【0079】
残電気量算出部111dは、バッテリユニット35の電池制御部37から取得した残容量比率及びバッテリ36のバッテリ容量のデータを用いて、バッテリ36内の残電気量を計算する。残電気量は、バッテリ36の容量と残容量比率とを乗算することにより求められる。この実施形態では、残電気量は、バッテリ36の公称容量と残容量比率とを乗算することにより求められる。
【0080】
距離算出部111eは、電費選択部111cによって選択された電費と、残電流量算出部111dによって算出された残電気量とを乗算することにより、残りのアシスト走行可能距離を算出する。
【0081】
電池制御部37は、バッテリ36の残容量比率を求める残容量計算部37a、及び、バッテリ36の出力電流等を監視する電池監視部37bを有する。電池監視部37bは、バッテリ36から放電時に流出する電流量だけでなく、バッテリ36の充電時に該バッテリ36に流れる電流量も検出する。電流監視部37bによって検出された放電時の電流量は、電池制御部37から制御部111に対し、バッテリ情報の一部として出力される。残量計算部37aは、電池監視部37bによって得られたバッテリ36の充放電時の電流量を積算することにより、バッテリ36内の総電流量に対して該バッテリ36内に残っている電流量の比率を求める。この比率は、上述の残容量比率である。算出された残容量比率は、電池制御部37から制御部111に対し、バッテリ情報の一部として出力される。
【0082】
(アシスト走行可能距離の計算方法)
以下で、制御部111のアシスト可能距離計算部111bによるアシスト走行可能距離の計算方法を、図7を用いて説明する。
【0083】
図7に示すフローがスタートすると、まず、制御部111が電池制御部37から出力されたバッテリ情報を正常に取得しているかどうかの判定を行う(ステップSA1)。制御部111がバッテリ情報を正常に取得していると判定された場合(YESの場合)には、ステップSA2に進む。ステップSA2以降では、アシスト可能距離計算部111bによって、アシスト走行可能距離の計算を行う。一方、制御部111がバッテリ情報を正常に取得していないと判定された場合(NOの場合)には、ステップSA7に進む。ステップSA7では、アシスト可能距離計算部111bがアシスト走行可能距離に関する信号を値不定にセットする。制御装置110は、アシスト走行可能距離が値不定にセットされた信号を、メータ情報信号の一部として表示装置100に対して出力する。
【0084】
前記ステップSA2では、アシスト可能距離計算部111bの電費選択部111cが、現在のアシストモードに対応する電費を記憶部113から読み込む。
【0085】
次に、アシスト可能距離計算部111bは、電池制御部37から出力されたバッテリ情報に基づいて、バッテリ36の残容量比率及びバッテリ容量のデータを取得する(ステップSA3)。そして、残電気量算出部111dによって、バッテリ36の残容量比率及びバッテリ容量から、バッテリ36内の残電気量を算出する(ステップSA4)。続くステップSA5では、ステップSA2で選択された電費とステップSA4で算出された残電気量とを用いて、距離算出部111eによって、残りのアシスト走行可能距離を算出する。算出されたアシスト走行可能距離は、制御装置110によって、表示装置100に対して信号出力される。
【0086】
制御装置110は、ステップSA6,SA7において、アシスト走行可能距離に関する信号をメータ情報信号の一部として、表示装置100に対して出力した後、図7のフローを終了する(エンド)。
【0087】
次に、アシスト走行可能距離に関する信号を受信した表示装置100において、アシスト走行可能距離を表示する場合の表示制御部102aの動作を、図8を用いて説明する。なお、以下の説明において、表示装置100の選択情報表示部103eに表示される情報としては、アシスト走行可能距離が選択されている。
【0088】
図8に示すフローは、制御装置110から表示装置100に対してアシスト走行可能距離に関する信号が入力されることにより、スタートする。まずステップSB1では、表示装置制御部102が、制御装置110から出力された信号において、アシスト走行可能距離が値不定であるかどうかの判定を行う。アシスト走行可能距離が値不定である場合(YESの場合)には、ステップSB2に進む。ステップSB2では、表示制御部102aが、選択情報表示部103eにアシスト走行可能距離を値不定として表示(例えば横線のみを表示)する。一方、アシスト走行可能距離が値不定ではない場合(NOの場合)には、ステップSB3に進む。ステップSB3では、表示制御部102aが、選択情報表示部103eにアシスト走行可能距離を表示する。
【0089】
ステップSB2,SB3の後、このフローは終了する(エンド)。
【0090】
本実施形態では、表示装置100の表示部103において、バッテリ残容量表示部103bにバッテリ36の残容量が表示されるとともに、選択情報表示部103eにアシスト走行可能距離が表示される。これにより、バッテリ36の残容量及びアシスト走行可能距離の両方の情報を把握することができる。よって、運転者は、バッテリ36に関するより正確な情報を取得することができる。
【0091】
しかも、バッテリ36の残容量及びアシスト走行可能距離の両方の情報を表示部103に表示することで、バッテリ36の残容量とアシスト走行可能距離との関係を把握することができる。これにより、バッテリ36の残容量を確認しながら、アシスト走行が可能な具体的な距離を把握することができる。そうすると、目的地までの行程の計画を容易に行うことができる。さらに、目的地まで往復する場合には、帰りの分の電気量が確保されていることをバッテリ残容量及びアシスト走行可能距離によって確認できるので、安心してアシスト走行を行うことができる。
【0092】
本実施形態では、表示部103において、バッテリ残容量表示部103bは、選択情報表示部103eよりも上側に設けられている。これにより、運転者が視線を運転時の視線位置から大きく変更することなくバッテリ36の残容量を確認することができる。よって、運転者がバッテリ36の残容量を容易に視認することができる。
【0093】
本実施形態では、表示部103において、選択情報表示部103eは、バッテリ残容量表示部103bと隣接して設けられている。これにより、選択情報表示部103eに表示されるアシスト走行可能距離とバッテリ残容量表示部103bに表示されるバッテリ36の残容量とを一緒に視認することが可能となる。よって、アシスト走行可能距離及びバッテリ残容量の両方の情報を同時に取得することが可能になる。
【0094】
本実施形態では、表示装置100は、ハンドル23に取り付けられている。これにより、運転者は、運転の際に、前を向きながら表示装置100の表示部103を視認することができる。よって、運転者は、運転中でも表示部103に表示された情報を取得することができる。
【0095】
本実施形態では、バッテリ残容量表示部103b及び選択情報表示部103eは、表示部103における車幅方向で車体中央側に設けられている。これにより、表示部103において、バッテリ残容量表示部103b及び選択情報表示部103eは、車幅方向で車体中央側に位置する運転者に近いため、バッテリ36の残容量及びアシスト走行可能距離が運転者に視認されやすくなる。しかも、本実施形態では、バッテリ残容量表示103bは、選択情報表示部103eよりも車幅方向で車体中央側に設けられている。これにより、運転者は、アシスト走行可能距離よりもバッテリ36の残容量を視認しやすくなる。
【0096】
本実施形態では、バッテリ残容量表示部103bはバッテリ36の残容量をセグメントによって表示する一方、選択情報表示部103eはアシスト走行可能距離を数字によって表示する。これにより、バッテリ36の残容量を直感的に把握することができる一方、アシスト走行可能距離をより精度良く把握することができる。
【0097】
本実施形態では、バッテリ36の残容量及びアシスト走行可能距離に加えて、アシストモードも表示部103で表示される。これにより、運転者は、アシストモードに応じたアシスト走行可能距離を把握することができる。したがって、運転者は、バッテリ36の残容量を確認しつつ、必要な走行距離を満たすようなアシストモードを容易に選択することができる。
【0098】
[実施形態2]
図9に、実施形態2に係る電動補助自転車の制御装置におけるアシスト可能距離計算部151の概略構成を示す。この実施形態2の構成は、アシスト可能距離計算部151が一定の走行距離毎に算出された電費を用いてアシスト走行可能距離を求める点で、上述の第1の実施形態の構成とは異なる。以下の説明では、実施形態1と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0099】
図9に示すように、アシスト可能距離計算部151は、電費算出部151a、残電気量算出部111d、距離算出部151b及び距離調整部151cを有する。
【0100】
電費算出部151aは、電動モータ61によってペダル踏力をアシストする際の電費を、一定の距離毎に算出する。すなわち、電費算出部151aは、電動補助自転車が一定の走行距離を進んだ間のバッテリ残容量の変化を用いて、電費を算出する。電動補助自転車の走行距離は、例えば、図示しない速度センサによって検出される。バッテリ残容量の情報は、電池制御部37から制御装置110に入力されるバッテリ情報から得られる。
【0101】
電費算出部151aは、アシストモードが変更された場合には、元のモードにおける電費と変更後のモードにおける電費との比を考慮して、上述のように算出した電費を補正する。ここで、元のアシストモードのときの電費(以下、変更前電費という)及び変更後のアシストモードのときの電費(以下、変更後電費という)は、予め定められた値であり、記憶部113に記憶されている。電費算出部151aは、変更前電費及び変更後電費を、それぞれ、記憶部113から読み出す。そして、電費算出部15は、変更前電費と変更後電費との比を、上述のように一定の走行距離毎に算出した電費に乗算することにより、アシストモード変更後の電費を求める。これにより、アシストモードを変更した直後でも、変更後のアシストモードに対応した電費を求めることができる。
【0102】
距離算出部151bは、電費算出部151aで求めた電費と、実施形態1と同じ構成を有する残電気量算出部111dで求めた残電気量とを用いて、アシスト走行可能距離を算出する。
【0103】
距離調整部151cは、電動補助自転車の走行パターンが変動した場合に、アシスト走行可能距離を調整する。距離調整部151cは、前回計算したアシスト走行可能距離に対し、今回計算したアシスト走行可能距離が大きい場合には、アシスト走行可能距離を計算結果よりも大きくする。例えば、距離算出部151bが250m毎にアシスト走行可能距離を計算する場合、前回計算したアシスト走行可能距離に比べて今回計算したアシスト走行可能距離が大きければ、距離算出部151bによる計算結果に100mを加算する。距離調整部151cは、前回計算したアシスト走行可能距離に対し、今回計算したアシスト走行可能距離が小さい場合には、アシスト走行可能距離を計算結果よりも小さくする。例えば、距離算出部151bが250m毎にアシスト走行可能距離を計算する場合、前回計算したアシスト走行可能距離に比べて今回計算したアシスト走行可能距離が小さければ、距離算出部151bによる計算結果から100mを減算する。これにより、走行パターンの変化に対して、アシスト走行可能距離をより実際の値に近づけることができる。なお、アシスト走行可能距離の調整の際に、計算結果に加減する値は100m以外であってもよい。
【0104】
アシスト可能距離計算部151によるアシスト走行可能距離の計算方法を、図10のフローを用いて説明する。
【0105】
図10に示すフローがスタートすると、まず、制御部111が電池制御部37から出力されたバッテリ情報を正常に取得しているかどうかの判定を行う(ステップSC1)。制御部111がバッテリ情報を正常に取得していると判定された場合(YESの場合)には、ステップSC2に進む。ステップSC2以降では、アシスト可能距離計算部151によってアシスト走行可能距離の計算を行う。一方、制御部111がバッテリ情報を正常に取得していないと判定された場合(NOの場合)には、ステップSC10に進む。ステップSC10では、アシスト可能距離計算部151によって、アシスト走行可能距離に関する信号を値不定にセットする。図示しない制御装置は、アシスト走行可能距離が値不定にセットされた信号を、メータ情報信号の一部として表示装置100に対して出力する。
【0106】
前記ステップSC2では、電動補助自転車の現在の電費を、電費算出部151aによって算出する。上述のように、電費算出部151aは、一定距離毎に、走行距離とバッテリ36の残容量とに基づいて電費を算出する。
【0107】
次に、ステップSC3において、制御装置は、前回のアシスト走行可能距離の計算後にアシストモードを切り替えたかどうかの判定を行う。アシストモードを切り替えたと判定された場合(YESの場合)には、ステップSC4に進む。ステップSC4では、電費算出部151aによって、モード切替による電費の補正を行う。すなわち、このステップSC4では、電費算出部151aは、記憶部113に記憶されている変更前電費と変更後電費との比を用いて、アシストモード変更前に算出した電費を、アシストモード変更後の電費に換算する。その後、ステップSC5に進む。
【0108】
アシストモードを切り替えていないと判定された場合(NOの場合)にも、ステップSC5に進む。ステップSC5では、アシスト可能距離計算部151が、電池制御部37から出力されたバッテリ情報からバッテリ36の残容量比率及びバッテリ容量のデータを取得する。そして、残電気量算出部111dによって、バッテリ36の残容量比率及びバッテリ容量を用いて、バッテリ36内の残電気量を算出する(ステップSC6)。続くステップSC7では、ステップSC2で算出された電費(ステップSC4で補正された場合には補正された電費)とステップSC6で算出された残電気量とを用いて、距離算出部151bによって、残りのアシスト走行可能距離を算出する。
【0109】
その後、ステップSC8では、距離調整部151cによって、電動補助自転車の走行パターンの変動に伴うアシスト走行可能距離の補正を行う。
【0110】
上述のように算出されたアシスト走行可能距離は、制御装置によって、表示装置100に対してメータ情報信号の一部として出力される。
【0111】
制御装置は、ステップSC9,SC10において、アシスト走行可能距離に関する信号をメータ情報信号の一部として、表示装置100に対して出力した後、図10のフローを終了する(エンド)。
【0112】
なお、表示装置100において、アシスト走行可能距離を表示する場合の表示制御部102aの動作は、実施形態1の図8と同様なので、説明を省略する。
【0113】
本実施形態では、一定距離毎に電費を計算するアシスト可能距離計算部151は、アシストモードが切り替わった際に、電費をアシストモード切替後の電費に換算する。これにより、アシストモードが切り替わった場合でも、切替後のアシストモードに対応したアシスト走行可能距離を迅速に表示装置100に表示できる。
【0114】
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0115】
前記各実施形態では、アシストモードを4つのモードから選択する。すなわち、電動モータ61によるアシスト比率は、段階的に切り替えられる。しかしながら、電動モータ61によるアシスト比率を、無段階に変更してもよい。
【0116】
前記各実施形態では、バッテリ36の残容量を、バッテリ36の充電時の総電流量と放電時の電流量との比較によって求めている。しかしながら、バッテリの残容量を求める方法は、バッテリの電圧を計測することによって残容量を求める方法や、バッテリ内のインピーダンスを計測することによって残容量を求める方法など、どのような方法を用いてもよい。
【0117】
前記各実施形態では、バッテリ36の残電気量を、バッテリ36の残容量比率及び公称容量から求めている。しかしながら、バッテリ36の残電気量は、バッテリ36の残容量比率及びバッテリ36の実際の容量から求めてもよい。
【0118】
前記各実施形態では、電動モータ61が電動補助自転車1の中央部分に配置されている。しかしながら、電動モータを前輪または後輪のハブ内に配置してもよい。この場合には、電動モータは、前輪または後輪の車軸を直接、駆動させる。
【0119】
前記各実施形態では、表示部103に、アシストモード表示部103d及び選択情報表示部103eを設けている。しかしながら、表示部103に選択情報表示部103eを設ける一方、該表示部103と隣接して配置される別の表示部にアシストモード表示部103dを設けてもよい。この場合、別の表示部では、例えば、LED等のランプによってアシストモード(アシスト比率に関する情報)を表示してもよい。
【0120】
前記各実施形態では、表示部103に、図4に示すように、速度表示部103a、バッテリ残容量表示部103b、電流量表示部103c、アシストモード表示部103d及び選択情報表示部103eを配置している。しかしながら、図4以外の配置で、速度表示部103a、バッテリ残容量表示部103b、電流量表示部103c、アシストモード表示部103d及び選択情報表示部103eを配置してもよい。また、表示部103に、速度表示部103a及び電流量表示部103cを設けなくてもよい。さらに、選択情報表示部103eは、アシストモード走行可能距離のみを表示する表示部であってもよい。
【0121】
前記各実施形態では、表示部103に、バッテリ残容量表示部103b及び選択情報表示部103eを設けている。しかしながら、バッテリ残容量表示部103b及び選択情報表示部103eをそれぞれ別の表示部に設けてもよい。
【0122】
前記実施形態1では、アシスト走行可能距離を算出する際に用いる電費は、各アシストモードに対応した固定値である。また、前記実施形態2では、アシスト走行可能距離を算出する際に用いる電費は、電動補助自転車の一定の走行距離に応じて求めた値である。各アシストモードに対応する電費を求めることができれば、電費の求め方は他の方法であってもよい。
【符号の説明】
【0123】
1 電動補助自転車
36 バッテリ(電池)
37 電池制御部
61 電動モータ
100 表示装置
103 表示部
103b バッテリ残容量表示部(電池残容量表示部)
103e 選択情報表示部
104 アシストモード操作部(入力部)
111a モータ制御部
111b、151 アシスト可能距離計算部
113 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者のペダル踏力を電動モータの駆動力によってアシストする電動補助自転車であって、
前記電動モータに対して電力を供給する電池と、
前記電池の残容量を検出する電池制御部と、
前記電池制御部によって検出された前記電池の残容量に基づいて、残りのアシスト走行可能距離を算出するアシスト可能距離計算部と、
前記電池の残容量及び前記アシスト走行可能距離を同時に表示する表示装置とを備える、電動補助自転車。
【請求項2】
請求項1に記載の電動補助自転車において、
前記表示装置は、前記電池の残容量及び前記アシスト走行可能距離を同時に表示する1つの表示部を有する、電動補助自転車。
【請求項3】
請求項1に記載の電動補助自転車において、
前記表示装置は、
前記表示装置に電力が供給されている間、前記電池の残容量を常時表示する電池残容量表示部と、
前記アシスト走行可能距離及び他の情報から少なくとも一つの情報を選択して表示する選択情報表示部とを有する、電動補助自転車。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載の電動補助自転車において、
前記表示装置は、前記電池の残容量を、前記アシスト走行可能距離よりも上側の位置に表示する、電動補助自転車。
【請求項5】
請求項4に記載の電動補助自転車において、
前記表示装置は、前記アシスト走行可能距離を前記電池の残容量と隣接して表示する、電動補助自転車。
【請求項6】
請求項1に記載の電動補助自転車において、
前記表示装置は、ハンドルに取り付けられている、電動補助自転車。
【請求項7】
請求項6に記載の電動補助自転車において、
前記表示装置は、前記電池の残容量及び前記アシスト走行可能距離を、前記表示装置における車幅方向で車体中央側の位置に表示するとともに、前記電池の残容量を、前記アシスト走行可能距離よりも車幅方向で車体中央側の位置に表示する、電動補助自転車。
【請求項8】
請求項1から3のいずれか一つに記載の電動補助自転車において、
前記表示装置は、前記電池の残容量をセグメントによって表示するとともに、前記アシスト走行可能距離を数字によって表示する、電動補助自転車。
【請求項9】
請求項1から3のいずれか一つに記載の電動補助自転車において、
前記ペダル踏力に対する前記電動モータのアシスト比率を変更するモータ制御部をさらに備え、
前記表示装置は、前記電池の残容量及び前記アシスト走行可能距離に加えて、前記アシスト比率に関する表示も同時に行う、電動補助自転車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−43487(P2013−43487A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180961(P2011−180961)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)