説明

電子内視鏡装置及び内視鏡画像の生成方法、並びに電子内視鏡システム

【課題】内視鏡挿入部の先端温度が許容温度を超えて高温になることを防止しつつ、観察に適した良好な内視鏡画像を得る。
【解決手段】電子内視鏡(12)の挿入部の先端部に撮像手段(58)が内蔵され、当該先端部の温度を検出する温度検出手段(100)が設けられる。温度検出手段(100)により検出された温度が閾値を超える場合に、撮像手段(58)による撮像のフレームレートを下げるとともに、照明光の照射量を低下させる制御を行う。例えば、先端温度が閾値を超えた場合にフレームレートを60pから30pに変更し、照明光を常時発光から間欠発光に切り換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子内視鏡装置及び内視鏡画像の生成方法、並びに電子内視鏡システムに係り、特に、内視鏡挿入部の先端部分に固体撮像素子を有する撮像装置が内蔵された電子内視鏡による撮像の制御技術並びに信号処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野などで利用される電子内視鏡システムは、被検体内に挿入される挿入部の先端部に、固体撮像素子を含む撮像装置を備えた電子内視鏡(スコープ)と、撮像装置の動作を制御するとともに、撮像装置から出力される撮像信号に各種信号処理を施してモニタ(表示装置)に内視鏡画像を表示させるプロセッサ装置とから構成される。
【0003】
内視鏡挿入部の先端内部は、固体撮像素子(CCDセンサやCMOSセンサなど)の発熱、ライトガイドの光量ロスによる発熱などが原因で温度が上昇しやすい。内視鏡挿入部分の内部温度が上昇すると、画像信号のノイズが増加し、画質が低下する。また、内視鏡挿入部先端の温度が高温になると、人体組織に熱損傷を引き起こす可能性もある。このため、内視鏡挿入部の温度を検知して、温度をコントロールしたり、温度上昇時に内視鏡操作者に警告を出したりするなどの予防措置を講じることが望まれる。
【0004】
特許文献1には、内視鏡挿入部の先端部に位置する固体撮像素子が高温になるほど観察像のノイズが増加するという問題に対処するために、内視鏡挿入部の先端部に温度検知手段を設け、検知された先端部の温度に基づき、最大露光時間を自動的に変化させる構成が開示されている。具体的には、先端温度が高温になるほど、最大露光時間が短くなるように設定されている。
【0005】
特許文献2には、内視鏡挿入部の先端部に温度センサを配置し、先端部の温度が所定の温度以上となった場合に、術者に注意を喚起する構成が開示されている。また、この特許文献2には、先端部の温度が所定温度以上となった場合に、CCDの駆動周波数を下げる、または観察光の光量を下げる、などの処理を行い、自動的に先端部の温度を下げる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−323884号公報
【特許文献2】特開2011−36585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、十分な露光時間(電荷蓄積時間)を確保できず、画像が暗くなる場合がある。また、露光量を確保するために観察光の光量を増加させると、却って温度上昇を助長してしまうという問題がある。
【0008】
一方、特許文献2では、高温時の対処として、CCDの駆動周波数を下げる制御、または観察光の光量を下げる制御を行うことが記載されているが、このような選択的な制御では、温度低減の効果が十分でなかったり、暗い画像になってしまったりするなどという問題がある。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、内視鏡挿入部の先端部の温度が規定温度を超えて上昇してしまうことを防止し、かつ、観察に適した良好な内視鏡画像の生成を可能とする電子内視鏡装置及び内視鏡画像の生成方法、並びに電子内視鏡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明に係る電子内視鏡装置は、被観察部位に照射する照明光を発生させる照明用光源と、前記内視鏡挿入部の先端部に内蔵され、前記被観察部位を撮像する撮像手段と、前記撮像手段から出力される撮像信号を処理して内視鏡画像を生成する信号処理手段と、前記内視鏡挿入部の先端の温度を検出する温度検出手段と、前記温度検出手段により検出された温度が閾値を超える場合に、前記撮像手段による撮像のフレームレート及び前記照明光の照射量を共に低下させる制御を行う制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、温度検出手段によって先端温度を検出し、その検出した先端温度が閾値(予め定められた判定基準値)を超えた場合に、フレームレートの変更と照明光の変更を同期させ、両者を共に低下させる制御を行う。
【0012】
照射量を低下させる一方でフレームレートを低下させたことにより露光時間を長くすることができる、必要な露光量を確保することができる。また、照射量低減及びフレームレート低減によって、発熱量を抑えることができ、温度上昇を抑制できる。これらの作用が相まって、良好な画像信号を得ることができるとともに、先端部の温度を規定範囲内に抑えることができる。
【0013】
本発明の一態様として、前記温度検出手段により検出された温度が前記閾値未満の場合に第1のフレームレートに設定され、前記温度検出手段により検出された温度が前記閾値を超える場合に前記第1のフレームレートよりも低い第2のフレームレートに設定されることを特徴とする電子内視鏡装置を提供する。
【0014】
なお、検出された温度が閾値と等しい場合の処理については、第1のフレームレートに設定する態様も可能であるし、第2のフレームレートに設定する態様も可能である。いずれの設定を採用するかは、閾値の定め方との関係で設計可能である。
【0015】
また、閾値は多段階に設定してもよい。温度が高いほど、フレームレートをより下げる方向に制御することが好ましい。
【0016】
本発明の他の態様として、前記第1のフレームレートは、プログレッシブ方式で毎秒60フレーム以上を得るフレームレートであり、前記第2のフレームレートは、プログレッシブ方式で毎秒30フレーム以下を得るフレームレートであることを特徴とする電子内視鏡装置を提供する。
【0017】
フレームレートを変更する構成の一例として、プログレッシブで毎秒60フレーム(60p)以上と毎秒30フレーム(30p)以下とを切り換える態様を採用し得る。
【0018】
本発明の他の態様として、前記温度検出手段により検出された温度が前記閾値未満の場合に前記照明光は第1の照射量に制御され、前記温度検出手段により検出された温度が前記閾値を超える場合に前記照明光は前記第1の照射量よりも低光量の第2の照射量に制御されることを特徴とする電子内視鏡装置を提供する。
【0019】
照射量(照明光の照射エネルギー)を低減する方法としては、例えば、発光時間を短くする、パルス発光の周波数を下げる、発光強度を小さくする、波長帯域を狭める、若しくは、これらの適宜の組み合わせなどがある。
【0020】
本発明の他の態様として、前記フレームレート及び前記照明光の照射量を共に低下させる制御が行われた後に、前記温度検出手段により検出された温度が前記閾値未満に戻った場合に、前記低下させる前の元のフレームレート及び照射量の設定に戻す制御が行われることを特徴とする電子内視鏡装置を提供する。
【0021】
撮像中に先端温度を監視し、温度に応じて自動的にフレームレートと照明光の照射量を制御する態様が好ましい。
【0022】
本発明の他の態様として、前記制御手段は、前記温度検出手段により検出された温度が前記閾値を超える場合に、前記照明光を常時照射から間欠照射へ切り換えることを特徴とする電子内視鏡装置を提供する。
【0023】
先端部の温度が閾値未満の温度であるときに常時照射を行い、閾値を超えた場合に間欠照射に切り換えることで、温度上昇を抑制することができる。
【0024】
本発明の他の態様として、前記制御手段は、前記温度検出手段により検出された温度が前記閾値を超える場合に、前記照明光の発光強度を低下させることを特徴とする電子内視鏡装置を提供する。
【0025】
照明用光源が発生する光の強度(発光源の光強度)を下げる態様の他、絞り機構やフィルタなどによって光量を絞る態様、若しくはこれらの組み合わせによる態様もあり得る。
【0026】
本発明の他の態様として、前記照明用光源は、波長帯域の異なる複数種類の照明光を発生させる手段を含み、前記制御手段は、前記温度検出手段により検出された温度が前記閾値を超える場合に、前記照明光の波長帯域を切り換えることを特徴とする電子内視鏡装置を提供する。
【0027】
波長帯域が狭いと、暗くなる傾向にあるため、必要な明るさを確保するために、発光強度を増加させることがある。発光強度を大きくすると、発熱を助長することにつながるため、発光量を抑えつつ、露光時間を長くすることで必要な露光量を確保する。
【0028】
例えば、特定波長領域の光(狭帯域光)を用いる特殊光観察について、フレームレートを低下させる制御を組み合わせる。
【0029】
本発明の他の態様として、前記撮像手段は、波長領域が互いに異なる第1波長領域、第2波長領域、第3波長領域の光に分光して受光可能な受光部を備え、前記照明用光源は、第1波長領域と第2波長領域を含む帯域の光である第1照明光を発生させる第1照明光生成手段と、前記第1波長領域内の一部の帯域と前記第2波長領域内の一部の帯域とにまたがる帯域の光であり、前記第1照明光よりも狭い帯域の第2照明光を発生させる第2照明光発生手段と、を備え、前記制御手段は、前記第1照明光又は前記第2照明光のいずれか一方を選択的に前記被観察部位に照射させる制御を行うことを特徴とする電子内視鏡装置を提供する。
【0030】
第1照明光は第2照明光に比べて相対的に波長帯域が広い広帯域光である。第2照明光は、相対的に狭帯域光である。これら波長帯域の異なる複数種類の照明光を用いて観察を行うことにより、目的にあった内視鏡画像を得ることが可能である。
【0031】
本発明の他の態様として、前記第1照明光の照射期間と前記第2照明光の照射期間が時分割で切り替わり、前記第1照明光と前記第2照明光とが連続して前記被観察部位に照射されることを特徴とする電子内視鏡装置を提供する。
【0032】
かかる態様によれば、第1照明光の照射時の撮像によって得られる広帯域画像と第2照明光の照射時の撮像によって得られる狭帯域画像を並行して取得することができ、これら種類の異なる画像情報を連続的に得ることができる。
【0033】
本発明の他の態様として、前記撮像手段にCMOS型固体撮像素子が用いられていることを特徴とする電子内視鏡装置を提供する。
【0034】
CMOS型固体撮像素子は、CCDセンサと比較して、フレームレート(駆動モード)の変更が容易であり、また、駆動回路その他の周辺回路をセンサモジュールの製造も容易である。
【0035】
本発明の他の態様として、前記制御手段により前記フレームレートを低下させる制御が行われる場合に、警告を提示する警告報知手段を備えることを特徴とする電子内視鏡装置を提供する。
【0036】
検知された温度が閾値よりも高い場合に、フレームレートの変更及び照明光の低減制御に加え、オペレータに対して注意を促す警告を提示する構成が好ましい。
【0037】
本発明の他の態様として、前記照明用光源からの光を内視鏡挿入部の先端に導いて前記被観察部位に向けて照射させる光伝送手段を備えることを特徴とする電子内視鏡装置を提供する。
【0038】
照明用光源は、内視鏡挿入部の先端部に配置する構成も可能であるが、光源を外部に設置する場合には、光ファイバその他のライトガイドを使用して内視鏡挿入部先端に照明光を導く構成が採用される。
【0039】
また、前記目的を達成するために、本発明に係る内視鏡画像の生成方法は、照明用光源で発生させた光を被観察部位に向けて照射する照明光照射工程と、前記内視鏡挿入部の先端部に内蔵された撮像手段によって前記被観察部位を撮像する撮像工程と、前記撮像手段から出力される撮像信号を処理して内視鏡画像を生成する信号処理工程と、前記信号処理工程によって生成された内視鏡画像を表示装置に表示させる表示処理工程と、前記内視鏡挿入部の先端の温度を検出する温度検出工程と、前記検出された温度に基づいて前記撮像手段による撮像のフレームレート及び前記照明光の照射量を制御する工程であって、前記検出された温度が閾値を超える場合に、前記撮像手段による撮像のフレームレート及び前記照明光の照射量を共に低下させる制御を行う制御工程と、を含むことを特徴とする。
【0040】
また、本発明に係る電子内視鏡システムは、被検体内に挿入される内視鏡挿入部の先端部に撮像装置が内蔵された電子内視鏡と、前記電子内視鏡の前記撮像装置から出力される撮像信号に信号処理を施すプロセッサ装置と、前記電子内視鏡の挿入部の先端面に設けられた照明窓から被観察部位に照射する照明光を発生させる照明用光源と、を備えた電子内視鏡システムであって、前記電子内視鏡は、前記先端部の温度を検出する温度検出手段を有し、前記プロセッサ装置は、前記温度検出手段から得られる情報に基づいて前記撮像手段による撮像のフレームレート及び前記照明光の照射量を制御する制御手段であって、前記温度検出手段により検出された温度が閾値を超える場合に、前記撮像手段による撮像のフレームレート及び前記照明光の照射量を共に低下させる制御を行う制御手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、内視鏡挿入部の先端温度が許容温度を超えて高温になることを防止することができるとともに、観察に適した良好な内視鏡画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施形態に係る電子内視鏡システムの概略構成を示した全体構成図
【図2】電子内視鏡における挿入部の先端部を示した正面図
【図3】電子内視鏡における挿入部の先端部を示した側面断面図
【図4】本例の内視鏡システムにおける電子内視鏡及びプロセッサ装置の構成を示したブロック図
【図5】光源装置の構成を示したブロック図
【図6】照明光のスペクトルの一例を示す図
【図7】CMOS撮像装置の受光特性の一例を示す図
【図8】図5における第1発光部とフィルタ部により生成される照明光のスペクトルの一例を示す図
【図9】本例の内視鏡システムにおける制御例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0044】
図1は本発明の実施形態に係る電子内視鏡システムの概略構成を示した全体構成図である。図1に示すように、本実施形態の内視鏡システム10は、電子内視鏡12、プロセッサ装置14、光源装置16などから構成される。電子内視鏡12は、患者(被検体)の体腔内に挿入される可撓性の挿入部20と、挿入部20の基端部分に連設された操作部22と、プロセッサ装置14及び光源装置16に接続されるユニバーサルコード24とを備えている。
【0045】
挿入部20の先端には、体腔内撮影用のCMOS撮像装置(撮像チップ)54(図3参照)などが内蔵された先端部26が連設されている。先端部26の後方には、複数の湾曲駒を連結した湾曲部28が設けられている。湾曲部28は、操作部22に設けられたアングルノブ30が操作されて、挿入部20内に挿設されたワイヤが押し引きされることにより、上下左右方向に湾曲動作する。これにより、先端部26が体腔内の所望の方向に向けられる。
【0046】
ユニバーサルコード24の基端は、コネクタ36に連結されている。コネクタ36は、複合タイプのものであり、コネクタ36にはプロセッサ装置14が接続される他、光源装置16が接続される。
【0047】
プロセッサ装置14は、ユニバーサルコード24内に挿通されたケーブル68(図3参照)を介して電子内視鏡12に給電を行い、CMOS撮像装置54の駆動を制御するとともに、CMOS撮像装置54からケーブル68を介して伝送された撮像信号を受信し、受信した撮像信号に各種信号処理を施して画像データに変換する。プロセッサ装置14で変換された画像データは、プロセッサ装置14にケーブル接続されたモニタ38(「表示装置」に相当)に内視鏡画像として表示される。また、プロセッサ装置14は、コネクタ36を介して光源装置16と電気的に接続され、内視鏡システム10の動作を統括的に制御する。
【0048】
図2は電子内視鏡12の先端部26を示した正面図である。図2に示すように、先端部26の先端面26aには、観察窓40、照明窓42、鉗子出口44、及び送気・送水用ノズル46が設けられている。観察窓40は、先端部26の片側中央に配置されている。照明窓42は、観察窓40に関して対称な位置に2個配され、体腔内の被観察部位に光源装置16からの照明光を照射する。鉗子出口44は、挿入部20内に配設された鉗子チャンネル70(図3参照)に接続され、操作部22に設けられた鉗子口34(図1参照)に連通している。鉗子口34には、注射針や高周波メスなどが先端に配された各種処置具が挿通され、各種処置具の先端が鉗子出口44から露呈される。送気・送水用ノズル46は、操作部22に設けられた送気・送水ボタン32(図1参照)の操作に応じて、光源装置16に内蔵された送気・送水装置から供給される洗浄水や空気を、観察窓40や体腔内に向けて噴射する。
【0049】
図3は電子内視鏡12の先端部26を示した側面断面図である。図3に示すように、観察窓40の奥には、体腔内の被観察部位の像光を取り込むための対物光学系50を保持する鏡筒52が配設されている。鏡筒52は、挿入部20の中心軸に対物光学系50の光軸が平行となるように取り付けられている。鏡筒52の後端には、対物光学系50を経由した被観察部位の像光を、略直角に曲げてCMOS撮像装置54に向けて導光するプリズム56が接続されている。
【0050】
CMOS撮像装置(撮像チップ)54は、CMOS型の固体撮像素子(以下、「CMOSセンサ」という。)58と、CMOSセンサ58の駆動及び信号の入出力を行う周辺回路60とが一体形成されたモノリシック半導体(いわゆるCMOSセンサチップ)であり、支持基板62上に実装されている。CMOSセンサ58の撮像面58aは、プリズム56の出射面と対向するように配置されている。撮像面58a上には、矩形枠状のスペーサ63を介して矩形板状のカバーガラス64が取り付けられている。CMOS撮像装置54、スペーサ63、及びカバーガラス64は、接着剤を介して組み付けられている。これにより、塵埃などの侵入から撮像面58aが保護されている。
【0051】
挿入部20の後端に向けて延設された支持基板62の後端部には、複数の入出力端子62aが支持基板62の幅方向に並べて設けられている。入出力端子62aには、ユニバーサルコード24を介してプロセッサ装置14との各種信号の遣り取りを媒介するための信号線66が接合されており、入出力端子62aは、支持基板62に形成された配線やボンディングパッド等(図示せず)を介してCMOS撮像装置54内の周辺回路60と電気的に接続されている。信号線66は、可撓性の管状のケーブル68内にまとめて挿通されている。ケーブル68は、挿入部20、操作部22、及びユニバーサルコード24の各内部を挿通し、コネクタ36に接続されている。
【0052】
また、図2において図示は省略したが、照明窓42の奥には、照明部が設けられている。照明部には、光源装置16からの照明光を導くライトガイド(図4中の符号106)の出射端(図4中の符号106a)が配されている。ライトガイド106は、ケーブル68と同様に、挿入部20、操作部22、及びユニバーサルコード24の各内部を挿通し、コネクタ36に入射端が接続されている。
【0053】
図4は内視鏡システム10における電子内視鏡12及びプロセッサ装置14の構成を示したブロック図である。図4に示すように、電子内視鏡12(挿入部20)の先端部26には、CMOSセンサ58と周辺回路60(図3参照)とが同一チップに形成されたCMOS撮像装置(撮像チップ)54が内蔵されており、周辺回路60として、アナログ信号処理回路(AFE;アナログフロントエンド)72、パラレル/シリアル(P/S)変換部76、LVDS送信部78、レジスタ80、タイミングジェネレータ(TG)81等を備えている。また、CMOS撮像装置54は、CMOSセンサ58の駆動に必要なクロック信号生成用の水晶振動子82を備えている。
【0054】
CMOSセンサ58には、マトリクス状に配置される各画素ごとに形成されるフォトダイオードとフォトダイオードにより蓄積された信号電荷を電圧信号に変換する電圧変換回路と、電圧変換回路から電圧信号を読み出す画素のアドレス(位置)を指定する走査回路(垂直走査回路及び水平走査回路)と、走査回路によって読み出された画素の電圧信号を順に出力する出力回路とを備えている。
【0055】
AFE72は、相関二重サンプリング(CDS)回路、自動ゲイン回路(AGC)、及びアナログ/デジタル(A/D)変換器により構成されている。CDS回路は、CMOSセンサ58の各画素から順次読み出された画素信号からなる撮像信号に対して相関二重サンプリング処理を施し、CMOSセンサ58で生じるリセット雑音及びアンプ雑音の除去を行う。AGCは、CDS回路によりノイズ除去が行われた撮像信号を、プロセッサ装置14から指定されたゲイン(増幅率)で増幅する。A/D変換器は、AGCにより増幅された撮像信号(アナログ撮像信号)を、所定のビット数のデジタル信号に変換して出力する。A/D変換器でデジタル化されて出力された撮像信号(デジタル撮像信号)はP/S変換部76に入力される。
【0056】
P/S変換部76は、AFE72のA/D変換器から入力される撮像信号をパラレル信号からシリアル信号に変換する。P/S変換部76により生成されたシリアル信号はLVDS送信部78に入力される。
【0057】
LVDS送信部78は、高速伝送が可能なLVDS(Low Voltage Differential Signal)伝送方式によりP/S変換部76から入力されるシリアル信号を差動信号として出力する。LVDS送信部78から出力された差動信号は2本の信号線からなるLVDS線96を通じてプロセッサ装置14のLVDS受信部84に入力される。
【0058】
レジスタ80は、CMOS撮像装置54における各部の処理内容を決定する各種制御データを記憶するメモリである。レジスタ80に記憶(格納)される制御データとしては、画素の走査方式(全画素走査/インターレース走査)、走査する画素領域(走査開始・終了する画素の位置)、シャッター速度(露光時間)等のCMOS撮像装置54の各種動作モード(静止画優先モード、動画優先モード、フレームレート等)を決定するための各種制御情報が含まれる。これらの制御データは、プロセッサ装置14からシリアル線98を通じてレジスタ80に入力されるようになっている。レジスタ80にはプロセッサ装置14から入力される制御データが記憶され、CMOS撮像装置54の各部はレジスタ80に記憶されているレジスタ値(つまり、プロセッサ装置14から入力された制御データ)に従って各種処理を実行する。
【0059】
TG81は、水晶振動子82から得られるクロックに基づき、CMOSセンサ58から画素信号を読み出すための駆動パルスやAFE72等の各部の同期パルスを生成し、CMOS撮像装置54の各部に供給する。そして、CMOS撮像装置54の各部は、TG81から供給されるパルスに従って各種処理を実行する。CMOSセンサ58は、AFE72などを集約して同一パッケージに集約して構成することができる。また、CMOSセンサ58と水晶振動子82は同一の半導体パッケージに収めることができる。本例ではCMOSセンサ58、AFE72及び水晶振動子82が同一の半導体パッケージに収められているセンサモジュールとなっている。なお、水晶振動子82は、CMOSセンサ58のパッケージとは別のパッケージとして構成することも可能である。この場合、水晶振動子82はCMOSセンサ58の近くに配置される。
【0060】
また、本例の内視鏡システム10では、挿入部20の先端部26(図1参照)の温度を検出する手段として、先端部26の内部に温度センサ100が配置されている(図4参照)。温度センサ100には、例えば、サーマル・ダイオードを用いることができる。温度センサ100から得られる信号はプロセッサ装置14のCPU83に伝送される。
【0061】
温度センサ100からの信号(検出信号)をCPU83に伝送するための信号伝達手段は特に限定されない。信号線101を介して電圧信号(アナログ信号)をプロセッサ装置14に伝送し、図示せぬA/D変換器を介してデジタル信号に変換してCPU83に入力させてもよいし、電子内視鏡12側でA/D変換し、シリアル信号伝送路を介してプロセッサ装置14に伝送してもよい。
【0062】
また、温度センサ100の検出信号をAFE72に送り、画像信号とともに温度センサ100の信号もAFE72にてA/D変換し、画像信号と温度センサ信号を組み合わせてLVDS線96を介してプロセッサ装置14に供給する態様も可能である。
【0063】
プロセッサ装置14は、CPU83、LVDS受信部84、クロックデータリカバリ(CDR)回路86、シリアル/パラレル(S/P)変換部88、画像処理回路(DSP)90、表示制御回路92等を備えている。
【0064】
CPU83は、プロセッサ装置14内の各部を制御する制御装置として機能するとともに、後述する温度検出に応じた駆動モードの切り換え制御に必要な各種の演算を行う演算装置として機能する。また、CPU83は、光源装置16の発光を制御する制御手段として機能する。
【0065】
LVDS受信部84は、LVDS伝送方式に基づく通信を行うものであり、LVDS送信部78から差動信号として伝送された撮像信号(シリアル信号)を受信する。LVDS線96を通じて伝送される撮像信号は、クロック信号と画像データが混在したシリアル信号になっている。LVDS受信部84で受信した撮像信号はCDR回路86を介してS/P変換部88に入力される。
【0066】
CDR回路86は、CMOS撮像装置54からシリアル伝送される撮像信号の位相を検出して、この撮像信号の周波数に同期した抽出クロック信号を発生する。この抽出クロック信号により撮像信号をサンプリングすることで、撮像信号を抽出クロック信号によりリタイミングしたデータ(リタイミングデータ)を生成する。
【0067】
データ格納部94には、CPU83による各種制御に必要なデータが格納されている。CPU83は必要に応じてデータ格納部94からデータを読み出して処理に利用する。
【0068】
S/P変換部88は、LVDS受信部84からCDR回路86を介して入力される撮像信号(リタイミングデータ)をシリアル信号からパラレル信号に変換して、CMOS撮像装置54のP/S変換部76における変換前の元の撮像信号に復元する。S/P変換部88でパラレル信号に変換された撮像信号はDSP90に入力される。
【0069】
DSP90は、S/P変換部88から入力された撮像信号に対し、色補間、色分離、色バランス調整、ガンマ補正、画像強調処理等を施し、画像データを生成する。DSP90で各種画像処理が施されて生成された画像データは表示制御回路92に入力される。
【0070】
表示制御回路92は、DSP90から入力された画像データを、モニタ38に対応した信号形式に応じた映像信号に変換してモニタ38に出力する。
【0071】
上記のように構成された内視鏡システム10で体腔内を観察する際には、電子内視鏡12、プロセッサ装置14、光源装置16、及びモニタ38の電源をオンにして、電子内視鏡12の挿入部20を体腔内に挿入し、光源装置16からの照明光で体腔内を照明しながら、CMOS撮像装置54により撮像される体腔内の画像をモニタ38で観察する。
【0072】
その際、プロセッサ装置14のCPU83では、CMOS撮像装置54の各部を制御するための制御データが生成される。当該生成された制御データはシリアル線98を通じて電子内視鏡12に送信され、CMOS撮像装置54のレジスタ80に格納される。CMOS撮像装置54の各部は、レジスタ80に格納されたレジスト値(制御データ)にしたがって各種処理を行う。
【0073】
CMOSセンサ58で生成された撮像信号は、AFE72で各種処理が施された後、P/S変換部76でパラレル信号からシリアル信号に変換され、LVDS送信部78からLVDS伝送方式により差動信号としてプロセッサ装置14に送信される。
【0074】
プロセッサ装置14では、LVDS受信部84で受信した撮像信号がS/P変換部88で元のパラレル信号に変換される。DSP90では、入力された撮像信号に対して各種信号処理が施され、画像データが生成される。DSP90で生成された画像データは、表示制御回路92に入力される。表示制御回路92では、入力された画像データをモニタ38の表示形式に対応した変換処理が施され、映像信号が生成される。表示制御回路92で生成された映像信号はモニタ38へ出力される。これにより、画像データがモニタ38に内視鏡画像として表示される。
【0075】
<特殊光観察と白色光観察の組み合わせについて>
図5は、光源装置16の構成を示すブロック図である。光源装置16は、波長帯域が異なる複数種類の照明光を発生させるために、第1発光部162、第2発光部164、フィルタ部166及び発光制御部168を備える。ただし、白色光などの広帯域光を発光する第1発光部162とフィルタ部166の組み合わせによって、第2発光部164の発光波長帯域と同等の特定波長領域の狭帯域光を生成できるため、光源装置16としては第2発光部164又はフィルタ部166の少なくとも一方を備えていればよい。
【0076】
第1発光部162は、第1波長領域としてのB波長領域(例えば、420nm〜490nm)と第2波長領域としてのG波長領域(例えば、490nm〜600nm)を含む帯域の光である広帯域光(「第1照明光」に相当)を発光する。この第1発光部162は、第3波長領域としてのR波長領域(例えば、600nm〜750nm)をさらに含む帯域の広帯域光を発生してもよい。例えば、第1発光部162は、白色光を発光する発光源を用いることができる(図6の符号201参照)。
【0077】
第2発光部164は、B波長領域内の一部の帯域とG波長領域内の一部の帯域とにまたがる帯域の光である狭帯域光(「第2照明光」に相当)を発光する(図6の符号202参照)。
【0078】
図5のフィルタ部166は、B波長領域内の一部の帯域とG波長領域内の一部の帯域とにまたがる帯域の光である狭帯域光を通過させ、それ以外の帯域の光を遮断する光学フィルタを備える。このフィルタ部166を第1発光部162と組み合わせることにより、第2発光部164と同等の狭帯域光を得ることが可能である。
【0079】
発光制御部168は、図4で説明したプロセッサ装置14のCPU83の指令に従い、第1発光部162、第2発光部164の発光の制御、フィルタ部166の制御を行う。
【0080】
図6は、第1発光部162および第2発光部164が発光する光のスペクトルの一例を示す。図6において符号201で示すスペクトルは、第1発光部162が発する光のスペクトルを示す。符号202で示すスペクトルは、第2発光部164が発する光のスペクトルを示す。
【0081】
図示のスペクトル201に示したように、第1発光部162は、400nm〜750nmの波長領域を含む広帯域を発光する。また、スペクトル202に示すように、第2発光部164は、450nm〜550nmの波長領域を主に有する狭帯域光を発光する。発光制御部168は、第1発光部162および第2発光部164を制御することにより、上記広帯域光と上記狭帯域光とを交互に切り換えながら連続して発光させる。また、発光制御部168は、第1発光部162を連続発光させた状態でフィルタ部166を制御することにより、上記広帯域光と上記狭帯域光とを交互に切り換えながら連続照射させてもよい。
すなわち、図5に記載した第2発光部164を省略し、第1発光部162とフィルタ部166を制御することによって、広帯域光(スペクトル201)の照射と、狭帯域光(スペクトル202)の照射とを切り換える構成も可能である。
【0082】
図7は、内視鏡挿入部の先端部に内蔵されるCMOSセンサ58の受光特性の一例を示す図である。図7において、横軸は波長を表し、縦軸は光強度を表す。このような分光特性は、CMOSセンサ58の受光部に配置されている各受光素子(感光画素)に対応するカラーフィルタの性能を反映している。
【0083】
CMOSセンサ58の受光部は、Bフィルタを通して受光する第1受光部(B受光部)と、Gフィルタを通して受光する第2受光部(G受光部)と、Rフィルタを通して受光する第3受光部(R受光部)と、備える。なお、RGBの色分解フィルタに限らず、イエローその他の波長領域に対応したカラーフィルタを含んでもよい。また、RGB系フィルタに代えて、CMY系フィルタを用いることも可能である。
【0084】
図7において、符号301は、Bフィルタに対応した第1受光部(B受光部)の受光特性を示す。例えば、第1受光部は、B波長領域(400nm〜490nm)の波長領域を主に有する第1波長領域の光を受光する。
【0085】
符号302は、Gフィルタに対応した第2受光部(G受光部)の受光特性を示す。例えば、第2受光部は、G波長領域(490nm〜600nm)の波長領域を主に有する第2波長領域の光を受光する。
【0086】
符号303は、Rフィルタに対応した第3受光部(R受光部)の受光特性を示す。例えば、第3受光部は、R波長領域(600nm〜750nm)の波長領域を主に有する第3波長領域の光を受光する。
【0087】
CPU83は、発光制御部168の制御による複数の発光部の発光タイミングに合わせて、撮像タイミングを制御してもよい。
【0088】
以下の説明では、広帯域光が照射された場合に第1受光部で受光した光の像を「第1広帯域像」という。広帯域光が発光された場合に第2受光部が受光した光の像を「第2広帯域像」といい、広帯域光が発光された場合に第3受光部が受光した光の像を「第3広帯域像」という。
【0089】
また、狭帯域光の照射により第1受光部で受光した光の像を「第1狭帯域像」といい、狭帯域光の照射により第2受光部で受光した光の像を「第2狭帯域像」という。
【0090】
さらに、図4で説明したDSP90は、CMOSセンサ58から得られる撮像信号に基づいて、第1波長領域内の第2発光部164が発光した狭帯域光以外の光の像(以下、これを「第3狭帯域像」という。)を生成する。また、DSP90は、CMOSセンサ58から得られる撮像信号に基づいて、第2波長領域内の第2発光部164が発光した狭帯域光以外の光の像(以下、これを「第4狭帯域像」という。)を生成する。
【0091】
例えば、DSP90は、第1広帯域像、第2広帯域像、第1狭帯域像、および第2狭帯域像に基づいて、第3狭帯域像および第4狭帯域像を生成する。具体的な生成方法として、DSP90は、第1広帯域像の画素の輝度情報から、第1狭帯域像の対応する画素の輝度情報を減算することにより、第3狭帯域像の対応する画素の輝度情報を算出できる。また、第2広帯域像の画素の輝度情報から、第2狭帯域像の対応する画素の輝度情報を減算することにより、第4狭帯域像の対応する画素の輝度情報を算出できる。
【0092】
図5の発光制御部168は、第1発光部162及び第2発光部164の発光タイミングを制御する。例えば、第1発光部162と第2発光部164を交互に発光させる。第1発光部162を発光させたタイミングで第1広帯域像、第2広帯域像、第3広帯域像を撮像する。第2発光部164を発光させたタイミングで第1狭帯域像及び第2狭帯域像を撮像する。
【0093】
そして、DSP90は、狭帯域光の照射タイミング(第2発光部164の発光タイミング)で、第3狭帯域像および第4狭帯域像を生成する。例えば、DSP90は、一つ前のタイミングで撮像された第1広帯域画像および第2広帯域画像と、これに続いて同じタイミングで撮像された第1狭帯域画像および第2狭帯域画像とに基づいて、第3狭帯域像および第4狭帯域像を生成する。
【0094】
第1広帯域像、第2広帯域像及び第3広帯域像から、これらを含む広帯域画像のフレームが生成される。第1狭帯域像、第2狭帯域像、第3狭帯域像及び第4狭帯域像から、これらを含む狭帯域画像のフレームが生成される。
【0095】
照明光の切り換えタイミングに合わせて、広帯域画像と狭帯域画像とが交互に取得される。広帯域画像群における画像間を補間する広帯域補間画像を生成してもよい。また、狭帯域画像群における画像間を補間する狭帯域補間画像を生成してもよい。
【0096】
このようにして生成される広帯域画像(さらに広帯域補間画像を含む場合もある)は、設定されたフレームレートにしたがい、表示フレームが更新され、広帯域動画としてモニタ38に表示される。また、上記のようにして生成された狭帯域画像(さらには狭帯域補間画像を含む場合もある)も同様に、設定されたフレームレートにしたがい、表示フレームが更新され、狭帯域動画としてモニタ38に表示される。
【0097】
広帯域動画と狭帯域動画は、同じモニタ38の画面上において表示領域を分けて、これら2種類の動画を同時に表示させてもよいし、オペレータの選択により、又は自動的に、広帯域動画の表示と狭帯域動画の表示とを切り換え、いずれか一方をモニタ38上に選択的に表示させることも可能である。
【0098】
また、複数の広帯域画像を含む広帯域動画と、複数の狭帯域画像を含む狭帯域動画との合成動画を生成し、複数種類の動画を重畳して1つの動画として表示させてもよい。
【0099】
このように、本実施形態の内視鏡システム10によれば、同じタイミングで波長帯域が異なる複数の狭帯域画像を同じタイミングで得ることができる。例えば、内視鏡によって血管の画像を撮像する場合、深さが異なる複数の血管の画像又は特定成分の濃度が異なる複数の血管の画像を同時に得ることができる。また、本実施形態の内視鏡システム10によれば、広帯域補間画像および狭帯域補間画像を生成することができるので、同じタイミングにおける狭帯域画像と広帯域画像とを得ることができる。
【0100】
なお、広帯域光と狭帯域光とを一定の時間間隔で交互に連続的に照射し、広帯域画像と狭帯域画像を並行して取得する方法に代えて、オペレータの選択操作により、又はプログラムによる自動選択により、広帯域光を用いる観察方法と、狭帯域光を用いる観察方法を切り換える構成も可能である。
【0101】
<フィルタ部166を利用する形態>
図4に示した第2発光部164を省略し、フィルタ部166と第1発光部162によって複数種類の照明光を生成する態様も可能である。この場合、第1発光部162が「第1照明光生成手段」に相当し、第1発光部162とフィルタ部166の組み合わせが「第2照明光生成手段」に相当する。
【0102】
図8は、第1発光部162およびフィルタ部166により発光される光のスペクトルの一例を示す。スペクトル901は、第1発光部162が発する光のスペクトルを示す。例えば、第1発光部162は、400nm〜750nmの波長領域を含む広帯域を発光する。
【0103】
スペクトル902は、第1発光部162が発した光であって、フィルタ部166によりフィルタされた(除去された)光のスペクトルを示す。フィルタ部166は、第1波長領域内の一部の帯域と第2波長領域内の一部の帯域とにまたがる帯域の光である狭帯域光をフィルタする(通過させる)。例えば、フィルタ部166は、450nm〜550nmの波長領域を主に有する狭帯域光をフィルタする(通過させる)。
【0104】
かかる構成によれば、フィルタ部166によるフィルタタイミングを制御することにより、広帯域光の照射と、狭帯域光の照射を交互に切り換えながら、照明光を連続的に照射することができる。
【0105】
<光源装置16の発光源について>
光源装置16の発光源は、レーザー光源を採用してもよいし、キセノン管などのランプ光源を採用してもよく、発光ダイオート(LED)を採用してもよい。レーザー光源やLED光源は、発光量の調整やパルス発光の制御が比較的容易である。一方、キセノン光源などは、光源自体の発光量の調整は難しいため、絞り機構などを利用して照射光量の調整を行う。
【0106】
<制御フローの例>
図9は、本例の内視鏡システムにおける制御例を示すフローチャートである。図9に示したように、プロセッサ装置14はまず、電子内視鏡12の挿入部20における先端部26の温度情報を取得する(ステップS112)。本例の場合、先端部26に設けた温度センサ100からのセンサ信号を取得することにより、温度情報を得る。
【0107】
次に、検出された先端温度と予め定められている閾値とを比較し、先端温度が閾値以上であるか否かを判定する(ステップS114)。先端温度が閾値未満である場合(No判定時)は、ステップS116に進み、CMOS撮像装置54による撮像のフレームレートを60p(プログレッシブ方式による毎秒60フレーム)に設定する。また、この60pのフレームレートに合わせて、当該フレームレートに対応する電荷蓄積時間によって適切な露光量が得られる照明光量となるように、発光量の制御が行われる(ステップS118)。例えば、所定の発光強度による連続発光(常時照射)が行われる。
【0108】
また、この60pの駆動モードに設定される状況では、先端温度に関して閾値未満の許容範囲にあり、通常の撮影動作が行われるため、先端温度に関する警告の提示は行われない(警告はOFFされる)(ステップS120)。
【0109】
その一方、ステップS114の判定において、先端温度が閾値以上であると判定された場合(Yes判定時)は、ステップS126に進み、CMOS撮像装置54による撮像のフレームレートを30p(プログレッシブ方式による毎秒30フレーム)に設定する。また、この30pのフレームレートに合わせて、当該フレームレートに対応する露光時間(電荷蓄積時間)によって適切な露光量が得られる照明光量となるように、発光量の制御が行われる(ステップS128)。フレームレートを60pから30pに変更すると、CMOSセンサ58の露光時間(電荷蓄積時間)は長くなるため、その分、照明光の光量は低減される。例えば、ある発光強度の連続発光(常時照射)から間欠発光(間欠照射)に変更される。
【0110】
また、この30pの駆動モードに設定される状況は、先端温度が許容範囲を超えて高温になっているため、その旨をオペレータに知らせて注意を喚起するための警告が提示される(ステップS130)。警告の報知手段については、特に、限定されないが、例えば、モニタ38の画面上に警告メッセージ等を表示させる態様、警告音を発生させる態様、音声による警告メッセージの出力、警告ランプの点灯や点滅、若しくは、これらの適宜の組み合わせなどがあり得る。
【0111】
ステップS120、又はステップS130の後は、ステップS132に進み、電子内視鏡12による撮影を継続するか否かの判定が行われる(ステップS132)。オペレータによる電源オフ操作やプログラムによる自動停止、など撮影を終了させる指令の入力等がなければ、撮影は継続され、ステップS132の判定はYes判定となり、ステップS112に戻る。撮影が継続される間、ステップS112〜ステップS132の処理が繰り返される。すなわち、撮影中に先端温度が監視され、先端温度が閾値以上になるとフレームレートが30pに下げられ、照明光の光量も自動的に低下して、警告も提示される。フレームレートの低減、照明光量の低減によって、先端温度の上昇は抑制され、温度は低下していくことが期待される。その後、先端温度が閾値未満に戻ると、フレームレートは自動的に60pに復帰し、照明光量も通常の光量に戻り、警告もオフとなる。
【0112】
オペレータによる電源オフ操作やプログラムによる自動停止、など撮影を終了させる指令の入力があると、ステップS132の判定でNo判定となり、撮影を終了させる。
【0113】
図9のフローチャートによれば、検出された温度が閾値以上になると、自動的にフレームレートが低減され、これに合わせて照射光量も低減される制御が行われる。さらに、ユーザに対して警告が発せられる。その後、温度が閾値を下回り、許容範囲に戻ると、自動的にフレームレートが通常の駆動モード(60p)に戻り、照射光量も回復し、警告も取り消される。なお、ステップS114の判定に際して、検出した先端温度が閾値と等しい場合の処理は、ステップS116に進めてもよいし、ステップS126に進めてもよい。
【0114】
本実施形態によれば、先端部の温度が閾値以上に上昇した際に、発熱を抑えることができ、かつ、観察画像としても良好な内視鏡画像が得られる。
【0115】
特に、狭帯域光を利用する特殊光観察を行う場合には、照明光量の低下により、暗い画像となりやすいが、本実施形態によれば、フレームレートを下げて露光時間を長くすることで、十分な露光量を確保でき、良好な撮像画像を得ることができる。
【0116】
<変形例1>
図9では、ステップS114で閾値以上の高い温度が検出された場合に、フレームレートの低減と発光量の制御光量の低下制御と併せて、警告を行う例を説明したが、警告の報知を省略する態様も可能である。
【0117】
<変形例2>
また、本例では、60pと30pの2種類の駆動モードを用意し、閾値を基準にして、これらを切り換える例を説明したが、各駆動モードに対応するフレームレートの具体的ない値については、この例に限定されない。例えば、毎秒60フレーム以上の高フレームレートの範囲内で特定される第1のフレームレートと、毎秒30フレーム以下の低フレームレートの範囲内で特定される第2のフレームレートの2種類の駆動モードを用意し、閾値を基準にして、これらを切り換える構成とすることができる。また、3種類以上のフレームレートに対応する多種類の駆動モードを用意しておくとともに、判定基準となる閾値を複数段階に設定しておき、検出される先端温度に応じて、段階的にフレームレート及び光量を変更する制御を行う態様も可能である。この場合、温度が高いほど、フレームレート及び光量をより低い値にする。
【0118】
また、図9ではプログレッシブ方式のフレームレート(60p、30p)を説明したが、インターレース方式の駆動モードを採用することもできる。
【0119】
<変形例3>
駆動モードを変更する判定基準となる閾値と、警告を提示するための判定基準となる閾値とを別々に設定してもよい。また、警告用の判定基準となる閾値を複数段階に設定しておき、検知される温度に応じて、警告レベルを段階的に変化させる態様も可能である。
【0120】
<変形例4>
上記実施形態では、挿入部20の先端部26に温度センサ100を配置したが、先端部26に配置された水晶振動子82の周波数温度特性を利用して、先端部26の温度を検出することも可能である。この場合、温度センサ100を省略することができる。
【0121】
水晶振動子82は、温度によって発振周波数が変動する性質があるため、周波数から温度を推定することが可能である。具体的には、例えば、プロセッサ装置14において、CDR回路86で抽出したクロック信号を基に、画像信号のピクセルクロック(画素単位のクロック)をカウントする、或いは、画像信号からフレーム期間を計測する等により、内視鏡挿入部の水晶振動子82の発振周波数を把握する。そして、予めデータ格納部94に保存しておいた温度と発振周波数の関係を規定する相関データ(ルックアップテーブルなど)から、先端部26の温度を推定することができる。
【0122】
<変形例5>
CMOSセンサ58は、CCDセンサと比較して、駆動モードの変更が容易であり、また、温度センサ100を含んだセンサモジュールの製造も容易である。したがって、上記実施形態で説明したように、撮像装置としてCMOSセンサモジュールを採用することが好ましい。ただし、本発明の実施に際しては、CMOSセンサに限らず、CCDセンサを採用する構成も可能である。
【0123】
<変形例6>
白色光、特殊光の交互連続照射ではなく、いずれかの観察目的に応じて、選択的に発光波長を切り換えてもよい。
【0124】
以上、本発明の内視鏡システム及びその制御方法について詳細に説明したが、本発明は、上記説明した実施形態には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。本発明の技術的思想内で当該分野の通常の知識を有するものにより、多くの変形が可能である。
【符号の説明】
【0125】
10…内視鏡システム、12…電子内視鏡、14…プロセッサ装置、16…光源装置、20…挿入部、22…操作部、26…先端部、38…モニタ(「表示装置」に相当)、54…CMOS撮像装置(撮像チップ)、58…CMOSセンサ、76…LVDS送信部、83…CPU(「制御手段」に相当)、84…LVDS受信部、86…CDR回路、88…S/P変換部、90…操作部、94…データ格納部、96…LVDS線、98…シリアル線、100…温度センサ(「温度検出手段」に相当)、106…ライトガイド(「光伝送手段」に相当)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被観察部位に照射する照明光を発生させる照明用光源と、
前記内視鏡挿入部の先端部に内蔵され、前記被観察部位を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段から出力される撮像信号を処理して内視鏡画像を生成する信号処理手段と、
前記内視鏡挿入部の先端の温度を検出する温度検出手段と、
前記温度検出手段により検出された温度が閾値を超える場合に、前記撮像手段による撮像のフレームレート及び前記照明光の照射量を共に低下させる制御を行う制御手段と、
を備えたことを特徴とする電子内視鏡装置。
【請求項2】
前記温度検出手段により検出された温度が前記閾値未満の場合に第1のフレームレートに設定され、前記温度検出手段により検出された温度が前記閾値を超える場合に前記第1のフレームレートよりも低い第2のフレームレートに設定されることを特徴とする請求項1に記載の電子内視鏡装置。
【請求項3】
前記第1のフレームレートは、プログレッシブ方式で毎秒60フレーム以上を得るフレームレートであり、前記第2のフレームレートは、プログレッシブ方式で毎秒30フレーム以下を得るフレームレートであることを特徴とする請求項2に記載の電子内視鏡装置。
【請求項4】
前記温度検出手段により検出された温度が前記閾値未満の場合に前記照明光は第1の照射量に制御され、前記温度検出手段により検出された温度が前記閾値を超える場合に前記照明光は前記第1の照射量よりも低光量の第2の照射量に制御されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電子内視鏡装置。
【請求項5】
前記フレームレート及び前記照明光の照射量を共に低下させる制御が行われた後に、前記温度検出手段により検出された温度が前記閾値未満に戻った場合に、前記低下させる前の元のフレームレート及び照射量の設定に戻す制御が行われることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の電子内視鏡装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記温度検出手段により検出された温度が前記閾値を超える場合に、前記照明光を常時照射から間欠照射へ切り換えることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の電子内視鏡装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記温度検出手段により検出された温度が前記閾値を超える場合に、前記照明光の発光強度を低下させることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の電子内視鏡装置。
【請求項8】
前記照明用光源は、波長帯域の異なる複数種類の照明光を発生させる手段を含み、
前記制御手段は、前記温度検出手段により検出された温度が前記閾値を超える場合に、前記照明光の波長帯域を切り換えることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の電子内視鏡装置。
【請求項9】
前記撮像手段は、波長領域が互いに異なる第1波長領域、第2波長領域、第3波長領域の光に分光して受光可能な受光部を備え、
前記照明用光源は、
第1波長領域と第2波長領域を含む帯域の光である第1照明光を発生させる第1照明光生成手段と、
前記第1波長領域内の一部の帯域と前記第2波長領域内の一部の帯域とにまたがる帯域の光であり、前記第1照明光よりも狭い帯域の第2照明光を発生させる第2照明光発生手段と、を備え、
前記制御手段は、前記第1照明光又は前記第2照明光のいずれか一方を選択的に前記被観察部位に照射させる制御を行うことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の電子内視鏡装置。
【請求項10】
前記第1照明光の照射期間と前記第2照明光の照射期間が時分割で切り替わり、前記第1照明光と前記第2照明光とが連続して前記被観察部位に照射されることを特徴とする請求項9に記載の電子内視鏡装置。
【請求項11】
前記撮像手段にCMOS型固体撮像素子が用いられていることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の電子内視鏡装置。
【請求項12】
前記制御手段により前記フレームレートを低下させる制御が行われる場合に、警告を提示する警告報知手段を備えることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の電子内視鏡装置。
【請求項13】
前記照明用光源からの光を内視鏡挿入部の先端に導いて前記被観察部位に向けて照射させる光伝送手段を備えることを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の電子内視鏡装置。
【請求項14】
照明用光源で発生させた光を被観察部位に向けて照射する照明光照射工程と、
前記内視鏡挿入部の先端部に内蔵された撮像手段によって前記被観察部位を撮像する撮像工程と、
前記撮像手段から出力される撮像信号を処理して内視鏡画像を生成する信号処理工程と、
前記信号処理工程によって生成された内視鏡画像を表示装置に表示させる表示処理工程と、
前記内視鏡挿入部の先端の温度を検出する温度検出工程と、
前記検出された温度に基づいて前記撮像手段による撮像のフレームレート及び前記照明光の照射量を制御する工程であって、前記検出された温度が閾値を超える場合に、前記撮像手段による撮像のフレームレート及び前記照明光の照射量を共に低下させる制御を行う制御工程と、
を含むことを特徴とする内視鏡画像の生成方法。
【請求項15】
被検体内に挿入される内視鏡挿入部の先端部に撮像装置が内蔵された電子内視鏡と、
前記電子内視鏡の前記撮像装置から出力される撮像信号に信号処理を施すプロセッサ装置と、
前記電子内視鏡の挿入部の先端面に設けられた照明窓から被観察部位に照射する照明光を発生させる照明用光源と、を備えた電子内視鏡システムにおいて、
前記電子内視鏡は、前記先端部の温度を検出する温度検出手段を有し、
前記プロセッサ装置は、前記温度検出手段から得られる情報に基づいて前記撮像手段による撮像のフレームレート及び前記照明光の照射量を制御する制御手段であって、前記温度検出手段により検出された温度が閾値を超える場合に、前記撮像手段による撮像のフレームレート及び前記照明光の照射量を共に低下させる制御を行う制御手段を備えることを特徴とする電子内視鏡システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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