説明

電子写真感光体およびその再生方法

【課題】簡易な構成で感光体ドラムからフランジを容易に取り外すことができる電子写真感光体を提供すること。
【解決手段】電子写真感光体は、円筒状の導電性基体の表面に感光層が形成された感光体ドラムと、少なくとも一部に導電性部分を有するフランジとを備え、前記フランジは前記導電性部分と通電剥離性接着剤とを介して感光体ドラムの端に接着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子写真感光体およびその再生方法に関し、詳しくは、電子写真方式の画像形成装置に用いられる電子写真感光体とその再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真感光体(以下、「感光体」とも称する)は、電子写真方式の複写機やプリンタ等の画像形成装置において、印刷すべき画像の静電潜像が形成される潜像保持体として広く用いられている。一般に、感光体は、アルミニウムなどの金属からなる円筒状基体の表面に感光層が形成された感光体ドラムと、感光体ドラムの両端に取り付けられた樹脂製のフランジとから構成される。
感光層としては、有機系の光導電性材料を用いたものと、無機系の光導電性材料を用いたものとがあるが、無機系の材料に比べて有機系の材料のほうが毒性、コスト、材料設計の自由度といった点で利点が多く、現在では有機系の材料が広く用いられている。
【0003】
有機系の光導電性材料を用いた感光層としては、電荷発生材料を含む電荷発生層と、発生した電荷を輸送する材料を含む電荷輸送層をこの順に積層した積層型のものが優れた増感性を示し、実用化されているものの大部分を占めている。
しかし、感光層は、帯電、露光、現像、転写、クリーニング、除電といった一連の画像形成プロセスが繰り返されるなかで、電気的ストレス、光学的ストレス、他の部材との接触による機械的ストレスなどの様々なストレスを常に受け続け、次第に劣化していく。
【0004】
このため、感光層が劣化した感光体は画像形成装置から取り外され、新しい感光体と交換される。
画像形成装置から取り外された感光体は、省資源の観点から回収され再生される。回収した感光体を再生する際には、まず、感光体ドラムの両端に取り付けられた樹脂製のフランジを損傷させることなく感光体ドラムから取り外さなければならない。そこで、感光体ドラムに対するフランジの容易な取り外しを実現するために次のような様々な手法が提案されている。
【0005】
(1)感光体ドラムからフランジを容易に取り外すことができるように、感光体ドラムとフランジとの嵌合部分の構造を工夫する(例えば、特許文献1および2参照)。
(2)フランジや感光体全体を極度に冷却してフランジを感光体ドラムよりも大きく収縮させ、両部材の嵌合状態を解除する(例えば、特許文献3〜6参照)。
(3)フランジに感光体ドラムとの接着部分に到達する貫通孔を形成しておき、該貫通孔を介して水系溶液や潤滑性粉体を前記接着部分に注入し、水溶系接着剤の接着力を低下させる(例えば、特許文献7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−114323号公報
【特許文献2】特開2001−166628号公報
【特許文献3】特開平9−187820号公報
【特許文献4】特開平10−115938号公報
【特許文献5】特開平10−143011号公報
【特許文献6】特開2007−286267号公報
【特許文献7】特開2004−101825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記(1)の方法では感光体ドラムとフランジとの嵌合部分の構造が複雑になる。
上記(2)の方法では、フランジの収縮を利用するため、場合によってはフランジの再利用が困難となる。また、フランジや感光体全体を冷却する冷媒として液体窒素等を用いる必要があり、冷媒の保管や取り扱いに注意を要する。
上記(3)の方法では、フランジに複雑な形状の貫通孔を形成する必要があり、また、感光体ドラムとフランジとの接着部分に貫通孔を介して水系溶液や潤滑性粉体を均一に行き渡らせることが難しい。
【0008】
この発明は以上のような事情を考慮してなされたものであり、簡易な構成で感光体ドラムからフランジを容易に取り外すことができる電子写真感光体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、円筒状の導電性基体の表面に感光層が形成された感光体ドラムと、少なくとも一部に導電性部分を有するフランジとを備え、前記フランジは前記導電性部分と通電剥離性接着剤とを介して感光体ドラムの端に接着されることを特徴とする電子写真感光体を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、フランジの少なくとも一部が導電性を有し、該導電性部分が通電剥離性接着剤によって感光体ドラムの端に接着されるので、電子写真感光体を再生する際に、感光体ドラムとフランジを介して通電剥離性接着剤に通電するだけで該接着剤の接着力を低下させることができ、感光体ドラムからフランジを損傷させることなく容易に取り外すことができる。これにより取り外したフランジを原料としてではなく電子写真感光体の部品としてそのまま再利用できる。また、感光体ドラムに対するフランジの取り外しが容易になることから、電子写真感光体の再生に係る手間とコストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施形態に係る電子写真感光体を備えた画像形成装置の全体構成を示す説明図である。
【図2】この発明の実施形態に係る電子写真感光体の全体構成を示す説明図である。
【図3】図2の部分拡大断面図である。
【図4】この発明の実施形態に係る電子写真感光体に装着されるフランジの斜視図である。
【図5】図4に示されるフランジの円盤状部分の外周に導電性シートが貼付された状態を示す説明図である。
【図6】この発明の変形例に係るフランジが装着された電子写真感光体の図3対応図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この発明による電子写真感光体は、円筒状の導電性基体の表面に感光層が形成された感光体ドラムと、少なくとも一部に導電性部分を有するフランジとを備え、前記フランジは前記導電性部分と通電剥離性接着剤とを介して感光体ドラムの端に接着されることを特徴とする。
【0013】
この発明による電子写真感光体において、円筒状の導電性基体とは、導電性を有する円筒体を意味し、特に限定されるものではないが、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス、真鍮、あるいはこれらの合金等により形成された円筒体を用いることができる。
感光層とは、特に限定されるものではないが、導電性基体の表面に形成され、光の照射により電荷を失い、形成すべき画像を静電潜像として記録する光導電性の層を意味する。ここで、感光層は無機系または有機系のいずれであってもよいが、上述のとおり、毒性、コスト、材料設計の自由度といった観点から有機系のものが好適に用いられる。
有機系の感光層としては、例えば、導電性基体の表面に下引き層、電荷発生層、電荷輸送層が順に積層されたものを用いることができる。
なお、感光層は必ずしも導電性基体の全表面に形成されていなくともよく、例えば、感光体ドラムの端部には感光層が形成されず導電性基体が露出した露出部が設けられていてもよい。
【0014】
フランジとは、感光体ドラムの端に装着される部材を意味し、その形状や材料は特に限定されるものではない。
フランジには、例えば、画像形成装置側から駆動力が伝達されるギアや、電子写真感光体を軸支するシャフトの貫通孔が形成されていてもよい。
【0015】
この発明においてフランジは少なくとも一部に導電性部分を有し、該導電性部分と通電剥離性接着剤とを介して感光体ドラムの端に接着される。
ここで、フランジの少なくとも一部とは、フランジのうち感光体ドラムの端に通電剥離性接着剤を介して接着される部位を意味する。
【0016】
通電剥離性接着剤とは、電気化学的に結合解除可能な組成物を含み、電流を流すことによって結合解除反応が起こり、接着対象物と接する接合面(界面)で接着力が低下する接着剤を意味する。
電気化学的に結合解除可能な組成物としては、例えば、マトリックス機能および電解機能を有する電気化学的に結合解除可能な組成物であって、該マトリックス機能が、被接着物に対する接着ボンドを実現し、該電解機能が該組成物に十分なイオン伝導性を与え、該組成物と接触する導電性表面との界面でファラデー反応を補助し、界面を横切る電位を加えたときに該接着ボンドが該界面で弱められる組成物を挙げることができる(例えば、特表2003−504504号公報参照)。
【0017】
なお、ここで「マトリックス機能」とは、物質または物質の混合物を、機械的結合または化学的結合によって被接着物に接合し、この結合の特徴によって被接着物に付着する能力のこととされている。また、「電解機能」とは、物質が、イオン、すなわち陰イオン、陽イオンまたはその両方を伝導する能力のこととされている。さらに、「ファラデー反応」とは、物質が酸化または還元される電気化学反応のこととされている。
【0018】
この発明による電子写真感光体において、フランジは樹脂からなり感光体ドラムに嵌入される円盤状部分を有し、前記導電性部分は円盤状部分の外周に貼付された導電性シートからなっていてもよい。
このような構成によれば、感光体ドラムに嵌入される円盤状部分の外周に導電性シートが貼付されるという簡易な構成で導電性部分を形成でき、円盤状部分に導電性を付与する上で必要となるコストを抑えることができる。
【0019】
円盤状部分の外周に導電性シートが貼付される上記構成において、フランジは外部からの通電用端子の挿入を許容し挿入された通電用端子を導電性シートと接触させるための貫通孔が形成されていてもよい。
このような構成によれば、本発明の電子写真感光体を回収して感光体ドラムからフランジを取り外す際に、電源から延びる通電用端子をフランジに形成された貫通孔を介して外部から挿入することにより該通電用端子を導電性シートと導通させることができる。これにより、感光体ドラムからフランジを取り外す工程において、作業性よく感光体ドラムとフランジを介して通電剥離性接着剤に通電できるようになる。
【0020】
この発明による電子写真感光体において、フランジは導電性樹脂材料からなっていてもよい。
このような構成によれば、フランジ全体に導電性を付与することができ、本発明の電子写真感光体を回収して感光体ドラムからフランジを取り外す際に、電源から延びる通電用端子をフランジに当接させるだけで該通電用端子とフランジとを導通させることができる。これにより、感光体ドラムからフランジを取り外す工程において、より一層作業性よく感光体ドラムとフランジを介して通電剥離性接着剤に通電できるようになる。
【0021】
なお、導電性樹脂材料としては、例えば、カーボンや酸化亜鉛などの導電材を、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、PS(ポリスチレン)樹脂、PP(ポリプロピレン)樹脂、PC(ポリカーボネート)樹脂等に分散混合したものを用いることができる。導電材と樹脂との混合比率は成形後の強度が低下しない範囲で十分な導電性が得られるように適宜調整できる。
【0022】
この発明は別の観点からみると、上述のこの発明による電子写真感光体を備えた画像形成装置を提供するものでもある。
【0023】
なお、ここで画像形成装置とは、特に限定されるものではないが、例えば、複写機、プリンタ、ファクシミリなどの電子写真方式で画像を形成する装置全般を意味する。
この発明による上記画像形成装置によれば、上述の電子写真感光体の項で述べたように、感光体ドラムとフランジを介して通電剥離性接着剤に通電するだけで感光体ドラムからフランジを容易に取り外すことができるので、電子写真感光体の再生に係る手間とコストが抑えられ、結果、画像形成装置のランニングコストを低く抑えることができる。
【0024】
この発明は更に別の観点からみると、この発明による上述の電子写真感光体を再生するための方法であって、感光体ドラムとフランジを介して通電剥離性接着剤に通電することにより通電剥離性接着剤の接着力を弱め、感光体ドラムからフランジを取り外す工程を含むことを特徴とする電子写真感光体の再生方法を提供するものでもある。
【0025】
この発明による上記再生方法によれば、感光体ドラムとフランジを介して通電剥離性接着剤に通電するだけで通電剥離性接着剤の接着力を弱め、感光体ドラムからフランジを損傷させることなく容易に取り外すことができる。これにより取り外したフランジを原料としてではなく電子写真感光体の部品としてそのまま再利用できる。また、感光体ドラムに対するフランジの取り外しが容易になることから、電子写真感光体の再生に係る手間とコストを抑えることができる。
【0026】
この発明による上記再生方法において、通電剥離性接着剤への通電は、通電剥離性接着剤に3〜10A/cm2の交流電流または直流電流を通電することにより行われてもよい。
【0027】
この発明による上記再生方法は、取り外したフランジを再生された感光体ドラムの端に通電剥離性接着剤で接着する工程をさらに含んでいてもよい。
【0028】
以下、この発明の実施形態に係る電子写真感光体を備えた画像形成装置について図面に基づいて詳細に説明する。
【0029】
図1は本発明の実施形態に係る電子写真感光体を備えた画像形成装置の全体構成を示す説明図である。
図1に示されるように、本発明の実施形態に係る画像形成装置100は、電子写真方式のプリンタであり、外部から伝達される画像データに応じて所定のシート(記録用紙,記録媒体)に多色または単色の画像を形成するものである。なお、画像形成装置100は上方にスキャナ等を備えていてもよい。
【0030】
画像形成装置100においては、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)およびイエロー(Y)の色成分毎の画像データが取り扱われ、ブラック画像、シアン画像、マゼンタ画像、イエロー画像が形成され、各々の色成分の画像を重畳することによってカラー画像が形成される。したがって、図1に示すように、画像形成装置100においては、各色成分の画像が形成されるように、現像装置2a,2b,2c,2d、電子写真感光体3a,3b,3c,3d、帯電器5a,5b,5c,5d、クリーナユニット4a,4b,4c,4dがそれぞれ4個ずつ設けられている。
【0031】
すなわち、現像装置2a、電子写真感光体3a、帯電器5aおよびクリーナユニット4aによってブラック用の画像ステーションが構成され、現像装置2b、電子写真感光体3b、帯電器5bおよびクリーナユニット4bによってシアン用の画像ステーションが構成され、現像装置2c、電子写真感光体3c、帯電器5cおよびクリーナユニット4cによってマゼンタ用の画像ステーションが構成され、現像装置2d、電子写真感光体3d、帯電器5dおよびクリーナユニット4dによってイエロー用の画像ステーションが構成されている。
【0032】
帯電器5a,5b,5c,5dは、電子写真感光体3a,3b,3c,3dの表面を所定の電位にそれぞれ均一に帯電させるものである。帯電器5a,5b,5c,5dとしては、図1に示す接触ローラ型の帯電器の他、接触ブラシ型の帯電器、或いは非接触チャージャー型の帯電器などが使用されてもよい。
露光ユニット1は、図1に示すようにレーザ照射部及び反射ミラーを備えたレーザスキャニングユニット(LSU)である。但し、レーザスキャニングユニット以外にも、発光素子をアレイ状に並べたELやLED書込みヘッドが露光ユニット1として使用されてもよい。露光ユニット1は、帯電された電子写真感光体3a,3b,3c,3dを入力された画像データに応じてそれぞれ露光することにより、電子写真感光体3a,3b,3c,3dの表面に画像データに応じた静電潜像をそれぞれ形成する。
【0033】
現像装置2a,2b,2c,2dは、電子写真感光体3a,3b,3c,3dに形成された静電潜像をK,C,M,Yのいずれかのトナーによりそれぞれ顕像化する(現像する)ものである。現像装置2a,2b,2c,2dは、トナーホッパー101a,101b,101c,101d、トナー移送機構102a,102b,102c,102d、現像槽103a,103b,103c,103dを備えている。トナーホッパー101a,101b,101c,101dは、現像槽103a,103b,103c,103dの上方にそれぞれ配され、未使用の粉体状トナーを貯蔵している。トナーホッパー101a,101b,101c,101dに貯蔵された未使用の粉体状トナーは、トナー移送機構102a,102b,102c,102dを介して現像槽103a,103b,103c,103dへそれぞれ供給される。
【0034】
クリーナユニット4a,4b,4c,4dは、現像および画像転写工程後に電子写真感光体3a,3b,3c,3dの表面に残留しているトナーをそれぞれ除去し、回収するものである。
電子写真感光体3a,3b,3c,3dの上方には中間転写ベルトユニット8が配置されている。中間転写ベルトユニット8は、中間転写ローラ6a,6b,6c,6d、中間転写ベルト7、中間転写ベルト駆動ローラ71、中間転写ベルト従動ローラ72、中間転写ベルトテンション機構73および中間転写ベルトクリーニングユニット9を備えている。
【0035】
中間転写ローラ6a,6b,6c,6d、中間転写ベルト駆動ローラ71、中間転写ベルト従動ローラ72、中間転写ベルトテンション機構73は、中間転写ベルト7を張架し、図1の矢印B方向に中間転写ベルト7を回転駆動させるものである。
中間転写ローラ6a,6b,6c,6dは、中間転写ベルトユニット8の中間転写ベルトテンション機構73における中間転写ローラ取付部に回転可能に支持されている。中間転写ローラ6a,6b,6c,6dには感光体ドラム3a,3b,3c,3dのトナー像を中間転写ベルト7上に転写するための転写バイアスが印加されている。
【0036】
中間転写ベルト7は、電子写真感光体3a,3b,3c,3dの各々に接触するように設けられている。中間転写ベルト7上には、電子写真感光体3a,3b,3c,3dに形成された各色成分のトナー像が順次重ねて転写されることにより、カラーのトナー像(多色トナー像)が形成される。中間転写ベルト7は、厚さが例えば100〜150μm程度のフィルムを用いて無端状に形成されている。
【0037】
電子写真感光体3a,3b,3c,3dから中間転写ベルト7へのトナー像の転写は、中間転写ベルト7の裏側に接触している中間転写ローラ6a,6b,6c,6dによって行われる。中間転写ローラ6a,6b,6c,6dには、トナー像を転写するために高電圧の転写バイアス(トナーの帯電極性(−)とは逆極性(+)の高電圧)が印加されている。
【0038】
中間転写ローラ6a,6b,6c,6dは、直径が例えば8〜10mmの金属(例えばステンレス)軸をベースとして形成され、表面が導電性の弾性材(例えばEPDM,発泡ウレタン等)により覆われている。この導電性の弾性材により、中間転写ローラ6a,6b,6c,6dは中間転写ベルト7に対して均一に高電圧を印加することができる。本実施形態では、転写電極としてローラ状の中間転写ローラ6a,6b,6c,6dを使用しているが、これ以外にブラシ状のものなども用いることができる。
【0039】
上述のように電子写真感光体3a,3b,3c,3dに形成された静電潜像は各色成分に応じたトナーによりそれぞれ顕像化されてトナー像となり、これらトナー像は中間転写ベルト7上に重ね合わされ積層される。このように積層されたトナー像は、中間転写ベルト7の回転によって搬送されてきた用紙と中間転写ベルト7との接触位置(転写部)に移動し、この位置に配置されている転写ローラ11によって用紙上に転写される。この場合、中間転写ベルト7と転写ローラ11とは所定ニップで互いに圧接されるとともに、転写ローラ11にはトナー像を用紙に転写させるための電圧が印加される。この電圧は、トナーの帯電極性(−)とは逆極性(+)の高電圧である。
上記ニップを定常的に得るために、転写ローラ11もしくは中間転写ベルト駆動ローラ71の何れか一方は金属等の硬質材料から形成され、他方は弾性ローラ等の軟質材料(弾性ゴムローラまたは発泡性樹脂ローラ等)から形成される。
【0040】
中間転写ベルト7と電子写真感光体3a,3b,3c,3dとの接触により中間転写ベルト7に付着したトナー、および中間転写ベルト7から用紙へのトナー像の転写の際に転写されずに中間転写ベルト7上に残存したトナーは、次工程でトナーの混色を発生させる原因となるために、中間転写ベルトクリーニングユニット9によって除去され回収される。中間転写ベルトクリーニングユニット9には、中間転写ベルト7に接触するクリーニングブレード(クリーニング部材)が備えられている。中間転写ベルト7におけるクリーニングブレードに接触している部分は、裏側から中間転写ベルト従動ローラ72にて支持されている。
給紙トレイ10は、画像形成に使用するシート(例えば記録用紙)を蓄積しておくためのものであり、画像形成部および露光ユニット1の下側に設けられている。一方、画像形成装置100の上部に設けられている排紙トレイ15は、印刷済みのシートをフェイスダウンで載置するためのものである。
【0041】
また、画像形成装置100には、給紙トレイ10のシートおよび手差しトレイ20のシートを転写部や定着ユニット12を経由させて排紙トレイ15に案内するためのシート搬送路Sが設けられている。なお、転写部は中間転写ベルト駆動ローラ71と転写ローラ11との間に位置する。
さらに、シート搬送路Sには、ピックアップローラ16a,16b、レジストローラ14、転写部、定着ユニット12、搬送ローラ25a,25b,25c,25d,25e,25f,25g,25h等が配置されている。
【0042】
搬送ローラ25a,25b,25c,25d,25e,25f,25g,25hは、シートの搬送を促進・補助するための小型のローラであり、シート搬送路Sに沿って設けられている。ピックアップローラ16aは、給紙トレイ10の端部に設けられ、給紙トレイ10からシートを1枚ずつシート搬送路Sに供給する呼び込みローラである。ピックアップローラ16bは、手差しトレイ20の近傍に設けられ、手差しトレイ20からシートを1枚ずつシート搬送路Sに供給する呼び込みローラである。レジストローラ14は、搬送されてくるシートを一旦保持し、中間転写ベルト7上のトナー像の先端とシートの先端とを合わせるタイミングでシートを転写部に搬送するものである。
【0043】
定着ユニット12は、ヒートローラ81および加圧ローラ82を備え、これらヒートローラ81および加圧ローラ82はシートを挟んで回転する。ヒートローラ81は、所定の定着温度となるように制御部(図示せず)によって制御される。この制御部は温度検出器(図示せず)からの検出信号に基づいてヒートローラ81の温度を制御する。ヒートローラ81は、加圧ローラ82とともにシートを熱圧着することにより、シートに転写されている各色トナー像を溶融・混合・圧接させ、シートに対して熱定着させる。なお、多色トナー像(各色トナー像)が定着されたシートは、搬送ローラ25b,25cによってシート搬送路Sに沿って搬送され、多色トナー像を下側に向けた状態で排紙トレイ15上に排出される。
【0044】
つぎに、シート搬送路Sによるシート搬送動作について説明する。画像形成装置100には、上記のように、予めシートを収納する給紙トレイ10、および少数枚の印字を行う場合等に使用される手差しトレイ20が配置されている。
給紙トレイ10および手差しトレイ20にはピックアップローラ16a,16bがそれぞれ配置され、これらピックアップローラ16a,16bはシートを1枚ずつシート搬送路Sに供給する。
【0045】
片面印字の場合、給紙トレイ10からピックアップローラ16aによってシート搬送路Sに供給されたシートは、シート搬送路S中の搬送ローラ25aによってレジストローラ14まで搬送され、レジストローラ14によりシートの先端と中間転写ベルト7上に積層されたトナー像の先端とが整合するタイミングで転写部に搬送される。転写部ではシート上にトナー像が転写され、このトナー像は定着ユニット12にてシート上に定着される。その後、シートは、搬送ローラ25b,25cを経て排紙トレイ15上に排出される。
【0046】
一方、手差しトレイ20からピックアップローラ16bによってシート搬送路Sに供給されたシートは、搬送ローラ25f,25e,25dによってレジストローラ14まで搬送される。それ以降は給紙トレイ10から供給されるシートと同様の工程を経て排紙トレイ15に排出される。
両面印字の場合、上記のようにして片面印字が終了し定着ユニット12を通過したシートは、その後端が排紙ローラとしての搬送ローラ25cにてチャックされる。次に、シートは、搬送ローラ25cが逆回転することによって反転搬送路へ導かれ搬送ローラ25g,25hによって反転搬送路中を搬送され、表裏が反転した状態でシート搬送路Sに合流し再びレジストローラ14に至る。その後は上述の片面印字と同様の工程を経て裏面への印字が行われ、排紙トレイ15上に排出される。
【0047】
本発明の実施形態に係る電子写真感光体3a,3b,3c,3dは、上述のように、画像形成のための帯電、露光、現像、転写、クリーニング、除電といった一連の画像形成プロセスが繰り返されるなかで、電気的ストレス、光学的ストレス、他の部材との接触による機械的ストレスなどの様々なストレスを常に受け続け、次第に劣化していく。
使用限度を過ぎ劣化した電子写真感光体3a,3b,3c,3dは、濃度不良や印字画像のかすれ等の原因となり画像品位に悪影響を与えるため、画像形成装置100から取り外され、新しい電子写真感光体3a,3b,3c,3dと交換される。
【0048】
交換された電子写真感光体3a,3b,3c,3dは省資源の観点から回収され、新しい電子写真感光体3a,3b,3c,3dとして再生される。
以下、電子写真感光体3a,3b,3c,3dの具体的な構成と、回収された電子写真感光体3a,3b,3c,3dの再生方法について具体的に説明する。
【0049】
電子写真感光体とその再生方法
図2は、本発明の実施形態に係る電子写真感光体の全体構成を示す説明図、図3は図2の要部拡大断面図である。
【0050】
図2および図3に示されるように、電子写真感光体3a,3b,3c,3dは、円筒状の導電性支持基体301の表面に感光層309が形成された感光体ドラム302と、感光体ドラム302の両端に通電剥離性接着剤311(図3参照)を介して接着された樹脂性のフランジ303とから主に構成されている。
導電性支持基体301は外径D1が30mm、内径D2が28.4±0.03mm、長手方向の長さL1が340mmのアルミニウム製円筒体である。
感光層309は導電性支持基体301の両端部を除くように形成され、感光体ドラム302のうち、感光層309が形成されていない両端部は導電性支持基体301が露出した導通部302aとなっている。感光層309は導電性支持基体301の表面に下引き層、電荷発生層、電荷輸送層が順に積層されることにより形成されている。
【0051】
図4はフランジの斜視図、図5はフランジの円盤状部分の外周に導電性シートが貼り付けられた状態を示す斜視図である。
図4に示されるように、フランジ303は感光体ドラム302の端に嵌入されるように外径が小さく設定された円盤状部分303aを有している。
フランジ303は、例えば、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、PS(ポリスチレン)樹脂、PP(ポリプロピレン)樹脂、PC(ポリカーボネート)樹脂などによって成形される。
【0052】
図5に示されるように、円盤状部分303aの外周にはアルミニウム、銅、白金などの金属からなる導電性シート315が接着剤によって接着され、フランジ303の導電性部分とされる。
また、フランジ303には外部から導電性シート315に至る貫通孔303bが形成されている。このため、図3に示されるように、外部の交流電源400から延びる通電用端子401を貫通孔303bを介して挿入することにより、通電用端子401と導電性シート315とを導通させることができるようになっている。
【0053】
図5に示されるように、導電性シート315は、貫通孔303bが形成された円盤状部分303a(図4参照)の表面に接着剤を塗布した後で該表面に貼付される。このため、貫通孔303bに露出する導電性シート315の表面(導電性シート315の裏面)には接着剤が存在せず、上述の通電用端子401と導電性シート315とを問題なく導通させることができる。
そして図3に示されるように、フランジ303は、円盤状部分303aの外周に貼付された導電性部分としての導電性シート315と通電剥離性接着剤311とを介して感光体ドラム302の両端に接着されている。
【0054】
図3に示されるように、円盤状部分303aは外径D3が28.2±0.03mmであり、感光体ドラム302内に嵌入する部分の長さL2が8mmである。
導電性シート315は厚さが0.1±0.03mmであり、円盤状部分303aの外周に接着剤を介して導電性シート315が貼付された状態において、円盤状部分303aの外径D4は28.3±0.03mmとなる。
このため、感光体ドラム302の内周と導電性シート315が貼付された円盤状部分303aの外周との間には0.1±0.03mm程度の隙間が形成され、この隙間が通電剥離性接着剤311で埋められる。
【0055】
感光体ドラム302の内周と導電性シート315が貼付された円盤状部分303aの外周との間に形成される隙間が上記の値よりも大きいと通電剥離性接着剤311の層厚が大きくなり過ぎ、感光体ドラム302に対するフランジ303の取付精度が悪化する。これは感光体ドラム302の偏芯の原因ともなり、画像品位の観点からも好ましくない。
一方、感光体ドラム302の内周と導電性シート315が貼付された円盤状部分303aの外周との間に形成される隙間が上記の値よりも小さいと、通電剥離性接着剤311の層厚が不十分となるばかりでなく、感光体ドラム302に対するフランジ303の嵌合状態がきつくなり過ぎる。このため、通電により通電剥離性接着剤311の接着力を弱めても、感光体ドラム302からフランジ303を容易に取り外すことができなくなる。
【0056】
上述のとおり、感光体ドラム302の両端部は感光層309が形成されていない導通部302aとなっているので、図3に示されるように、交流電源400から延びる一方の通電用端子402を感光体ドラム302の導通部302aに接触させ、他方の通電用端子401をフランジ303に形成された貫通孔303bを介して導電性シート315に接触させることにより、感光体ドラム302とフランジ303とを介して通電剥離性接着剤311に交流電流を通電させることができる。
【0057】
本実施形態では、通電剥離性接着剤としてEIC社(EIC Laboratories,Inc.)製の商品名「エレクトリリース(エポキシ系接着剤)」が挙げられる。この通電剥離性接着剤は通電時に陽極と電気的に接続されている被接着物との界面で結合解除が生じる特性を有するので、上述のように感光体ドラム302とフランジ303とを介して通電剥離性接着剤311に交流電流を通電させると、通電剥離性接着剤311と感光体ドラム302の内周面との界面、および、通電剥離性接着剤311とフランジ303の円盤状部分303aに貼付された導電性シート315との界面の双方で結合解除が生じる。
具体的には、交流電流の通電により通電剥離性接着剤311が両界面から剥がれて収縮したような状態となる。
これにより、感光体ドラム302に対するフランジ303の接着力が弱められ、フランジ303を損傷させることなく感光体ドラム302からフランジ303を容易に取り外すことができる。
【0058】
なお、通電剥離性接着剤311に結合解除反応を生じさせるのに必要な電流は1平方センチメートルあたり3〜10アンペア程度であり、それに必要な電圧は数ボルトから数十ボルトである。本実施形態では100Vの電圧を1分間印加し、通電剥離性接着剤311に3〜10A/cm2程度の交流電流を通電する。
【0059】
また、本実施形態では電源として交流電源400を用いたが、電源として直流電源が用いられても構わない。その場合、直流電源の陽極から延びる通電用端子を感光体ドラム302の導通部302aと接触させ、直流電源の陰極から延びる通電用端子をフランジ303の導電性シート315と接触させることにより感光体ドラムとフランジを介して通電剥離性接着剤に直流電流を通電することが好ましい。というのは、直流電源の陽極側を感光体ドラム302と導通させることにより、感光体ドラム302の内周面と通電剥離性接着剤311との界面で結合解除が生じ、感光体ドラム302の内周面に通電剥離性接着剤311が残留することを防止できるからである。
【0060】
感光体ドラム302からフランジ303を取り外した後、感光体ドラム302は劣化した感光層309が剥離・除去され、導電性基体301の表面に新たな感光層309が形成され、新しい感光体ドラム302として再生される。
一方、感光体ドラム302から取り外されたフランジ303は、接着力の低下した通電剥離性接着剤311が除去された後、再生された感光体ドラム302の両端に新しい通電剥離性接着剤311によって再び接着される。
これにより回収された電子写真感光体3a,3b,3c,3dの再生が完了する。
【0061】
本実施形態では、円盤状部分303aに導電性を付与するために導電性シート315を貼付する構成としたが、例えば、アルミニウム、銅などの金属からなる導電性リングを円盤状部分303aの外周に嵌める構成としてもよい。導電性リングの装着方法としては、接着の他、導電性リングを熱して膨張させておき、円盤状部分303aの外周に嵌めてから冷ますといった方法を用いることができる。
このような構成によれば、導電性シート315が機械的強度の強い導電性リングに置換されるので、電子写真感光体3a,3b,3c,3dの再生工程において、導電性シート315が損傷することを防止でき、また通電時の電気抵抗も下げることができる。
【0062】
フランジの変形例
図6は変形例に係るフランジが装着された電子写真感光体の図3対応図である。
上述の実施形態では、フランジ303の円盤状部分303aに導電性を付与するにあたり、円盤状部分303aの外周に導電性シート315を貼付したが、変形例に係るフランジ403は導電性樹脂材料で成形され、フランジ403全体が導電性を有している。
このため、図6に示されるように、変形例では、交流電源400から延びる一方の通電用端子401をフランジ403の外部に露出した部分に接触させ、他方の通電用端子402を感光体ドラム302の導通部302a接触させるだけで、感光体ドラム302とフランジ403とを介して交流電流を通電剥離性接着剤311に通電させることができ、通電作業の作業性が向上する。
【0063】
フランジ403を形成する導電性樹脂材料としては、例えば、カーボンや酸化亜鉛などの導電材を、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、PS(ポリスチレン)樹脂、PP(ポリプロピレン)樹脂、PC(ポリカーボネート)樹脂等に分散混合したものを用いることができ、導電材と樹脂との混合比率は成形後の強度が低下しない範囲で十分な導電性が得られるように適宜調整できる。
【0064】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲において種々の変更が可能である。すなわち、本発明の技術思想の範囲内でなされた設計変更や改良についても当然に本発明の権利範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0065】
1 露光ユニット
2a,2b,2c,2d 現像装置
3a,3b,3c,3d 電子写真感光体
4a,4b,4c,4d クリーナユニット
5a,5b,5c,5d 帯電器
6a,6b,6c,6d 中間転写ローラ
7 中間転写ベルト
8 中間転写ベルトユニット
9 中間転写ベルトクリーニングユニット
10 給紙トレイ
11 転写ローラ
12 定着ユニット
14 レジストローラ
15 排紙トレイ
16a,16b ピックアップローラ
20 手差しトレイ
25a,25b,25c,25d,25e,25f,25g,25h 搬送 ローラ
71 中間転写ベルト駆動ローラ
72 中間転写ベルト従動ローラ
73 中間転写ベルトテンション機構
81 ヒートローラ
82 加圧ローラ
100 画像形成装置
301 導電性支持基体
302 感光体ドラム
302a 導通部
303,403 フランジ
303a 円盤状部分
303b 貫通孔
309 感光層
311 通電剥離性接着剤
315 導電性シート
400 交流電源
401,402 通電用端子
S シート搬送路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の導電性基体の表面に感光層が形成された感光体ドラムと、少なくとも一部に導電性部分を有するフランジとを備え、前記フランジは前記導電性部分と通電剥離性接着剤とを介して感光体ドラムの端に接着されることを特徴とする電子写真感光体。
【請求項2】
前記フランジは樹脂からなり感光体ドラムに嵌入される円盤状部分を有し、前記導電性部分は円盤状部分の外周に貼付された導電性シートからなる請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記フランジは外部からの通電用端子の挿入を許容し挿入された通電用端子を導電性シートと接触させるための貫通孔が形成されてなる請求項2に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
前記フランジは導電性樹脂材料からなる請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項5】
前記フランジは非導電性材料からなり、かつ、感光体ドラムに嵌入される円盤状部分を有し、前記導電性部分は円盤状部分に装着された導電性リングからなる請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の電子写真感光体を備えた画像形成装置。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の電子写真感光体を再生するための方法であって、感光体ドラムとフランジを介して通電剥離性接着剤に通電することにより通電剥離性接着剤の接着力を弱め、感光体ドラムからフランジを取り外す工程を含むことを特徴とする電子写真感光体の再生方法。
【請求項8】
通電剥離性接着剤への通電は、通電剥離性接着剤に3〜10A/cm2の交流電流または直流電流を通電することにより行われる請求項7に記載の電子写真感光体の再生方法。
【請求項9】
取り外したフランジを再生された感光体ドラムの端に通電剥離性接着剤で接着する工程をさらに含む請求項7又は8に記載の電子写真感光体の再生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−231029(P2010−231029A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−79131(P2009−79131)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】