説明

電子写真感光体及びその製造方法、プロセスカートリッジ、並びに画像形成装置

【課題】繰り返し使用によっても環境依存による画質の変化が抑制される電子写真感光体を提供する。
【解決手段】導電性基体と、電荷輸送能を有する反応性モノマーと電荷輸送能を有さない反応性モノマーとの共重合体(a)、及び、前記共重合体(a)の構成単位となる前記電荷輸送能を有さない反応性モノマーの溶解度パラメータ(SP値)との差が2(cal/cm1/2 以下である溶解度パラメータ(SP値)を有する反応性モノマー(b)を前記共重合体(a)の存在下で重合させた重合体を含み、前記導電性基体上に最外表面層として配置されている感光層と、を備えた電子写真感光体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体及びその製造方法、プロセスカートリッジ、並びに画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真感光体は、高速、かつ高印字品質が得られるという利点を有するため、複写機及びレーザービームプリンター等の分野において著しく利用されている。これら画像形成装置において用いられる電子写真感光体として、従来からのセレン、セレン−テルル合金、セレン−ヒ素合金、硫化カドミウム等無機光導電材料を用いた電子写真感光体に比べ、安価で製造性及び廃棄性の点で優れた利点を有する有機光導電材料を用いた有機感光体が主流を占める様になってきている。
【0003】
従来、帯電方式として、コロナ放電器を使用したコロナ帯電方式が用いられてきたが、近年では、低オゾンおよび低電力などの利点を有する接触帯電方式が実用化され、盛んに用いられるようになってきている。接触帯電方式は、帯電用部材として導電性部材を感光体表面に接触、あるいは極近傍に近接させ、該帯電部材に電圧を印加することにより、感光体表面を帯電させるものである。また、帯電部材に印加する方式としては、直流電圧のみを印加する直流方式と、直流電圧に交流電圧を重畳して印加する交流重畳方式とがある。この接触帯電方式では、装置の小型化が図れ、かつ、オゾンなどの有害なガスの発生が少ないという利点を有する一方で、感光体表面で直接放電させることにより、感光体の劣化や磨耗を招きやすい。
【0004】
また、転写方式としては直接紙に転写する方式が主流であったが、転写される紙の自由度が広がることから、近年では中間転写体を用いて転写する方式が盛んに用いられている。
電子写真感光体の表面に保護層を設け、強度を向上させた感光体が提案されている。例えば、保護層を形成する材料系として、特許文献1には導電粉をフェノール樹脂に分散したものが、特許文献2には有機−無機ハイブリッド材料によるものが、特許文献3にはアルコール可溶性電荷輸送材料とフェノール樹脂によるものが、それぞれ開示されている。
特許文献4にはアルキルエーテル化ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド樹脂と、電子受容性カルボン酸あるいは、電子受容性ポリカルボン酸無水物の硬化膜が、特許文献5にはベンゾグアナミン樹脂にヨウ素、有機スルホン酸化合物、あるいは、塩化第二鉄などをドーピングした硬化膜が、特許文献6には特定の添加剤とフェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、シロキサン樹脂、あるいは、ウレタン樹脂との硬化膜が開示されている。
【0005】
また、近年ではアクリル系材料による保護層が注目されている。例えば、特許文献7には光硬化型アクリル系モノマーを含有する液を塗布し硬化した膜が、特許文献8には炭素−炭素二重結合を有するモノマー、炭素−炭素二重結合を有する電荷移動材及びバインダー樹脂の混合物を熱、あるいは光のエネルギーによって前記モノマーの炭素−炭素二重結合と前記電荷移動材の炭素−炭素二重結合とを反応させることにより形成された膜が開示されている。
特許文献9には同一分子内に二つ以上の連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物を重合した化合物からなる膜が開示されている。
【0006】
これらアクリル系材料は、硬化条件、硬化雰囲気等の影響を強く受ける。例えば、特許文献10には真空中、あるいは不活性ガス中で放射線照射後に加熱されることによって形成された膜が、特許文献11には不活性ガス中で加熱硬化された膜がそれぞれ開示されている。
また、電荷輸送材料自身をアクリル変性し、架橋可能とするとともに、電荷輸送性を有さない反応性モノマーを添加し、膜強度を向上させることも開示されている(例えば、特許文献8、12参照)。
【0007】
特許文献13、14には、アクリル系単量体と電荷輸送性骨格を有するアクリル系単量体との特定構造からなる共重合体が開示されている。これを、現像剤材料、又は、感光体材料として用いる技術が開示されている。特許文献15には、電荷輸送性骨格を有するアクリル系単量体を重合した特定構造の重合体が開示されており、これを、感光層材料として用いる技術が開示されている。特許文献16には、分子鎖中にトリアリールアミン基を有するとともに、反応性炭素−炭素二重結合基を有する特定構造の高分子化合物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3287678号公報
【特許文献2】特開平12−019749号公報
【特許文献3】特開2002−82469号公報
【特許文献4】特開昭62−251757号公報
【特許文献5】特開平7−146564号公報
【特許文献6】特開平2006−84711号公報
【特許文献7】特開平5−216249号公報
【特許文献8】特開2000−206715号公報
【特許文献9】特開2004−12986号公報
【特許文献10】特開平7−72640号公報
【特許文献11】特開2004−302450号公報
【特許文献12】特開2000−206717号公報
【特許文献13】特開平5−256428号公報
【特許文献14】特開平5−331238号公報
【特許文献15】特開平9−12630号公報
【特許文献16】特開2005−2291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、最外表面層として配置されている感光層が後述する共重合体(a)と該共重合体(a)の存在下で反応性モノマー(b)を重合させた重合体を含まない場合に比べ、繰り返し使用によっても環境依存による画質の変化が抑制される電子写真感光体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、以下の発明が提供される。
請求項1の発明は、導電性基体と、電荷輸送能を有する反応性モノマーと電荷輸送能を有さない反応性モノマーとの共重合体(a)、及び、前記共重合体(a)の構成単位となる前記電荷輸送能を有さない反応性モノマーの溶解度パラメータ(SP値)との差が2(cal/cm1/2以下である溶解度パラメータ(SP値)を有する反応性モノマー(b)を前記共重合体(a)の存在下で重合させた重合体を含み、前記導電性基体上に最外表面層として配置されている感光層と、を備えた電子写真感光体。
請求項2の発明は、前記共重合体(a)が、前記電荷輸送能を有する反応性モノマーに由来する下記一般式(1)で表される構成単位と、前記電荷輸送能を有さない反応性モノマーに由来する下記一般式(2)で表される構成単位とを含む請求項1に記載の電子写真感光体。
【化1】


〔式(1)及び(2)において、Rは電荷輸送能を有さない有機基を表し、R及びRはそれぞれ独立して水素又は炭素数が1以上4以下のアルキル基を表し、Xは炭素数が1以上10以下である2価の有機基を表し、aは0又は1を示し、CTは電荷輸送性骨格を持つ有機基を示す。〕
請求項3の発明は、前記共重合体(a)を構成する電荷輸送能を有さない反応性モノマーと前記反応性モノマー(b)が同じ構造である請求項1又は請求項2に記載の電子写真感光体。
請求項4の発明は、前記共重合体(a)を構成する電荷輸送能を有さない反応性モノマーと前記反応性モノマー(b)が、ともにアルキレンオキサイド基を有する請求項1又は請求項2に記載の電子写真感光体。
請求項5の発明は、前記共重合体(a)を構成する電荷輸送能を有さない反応性モノマーと前記反応性モノマー(b)が、ともにビスフェノール骨格を有する請求項1又は請求項2に記載の電子写真感光体。
請求項6の発明は、前記共重合体(a)を構成する電荷輸送能を有さない反応性モノマーと前記反応性モノマー(b)が、ともに炭素数6以上のアルキル基を有する請求項1又は請求項2に記載の電子写真感光体。
請求項7の発明は、前記共重合体(a)を構成する電荷輸送性能を有する反応性モノマーが、下記一般式(A)で表される化合物である請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
【化2】


[式(A)中、Ar乃至Arは、同一でも異なっていてもよくそれぞれ独立に、置換若しくは未置換のアリール基を示し、Arは置換若しくは未置換のアリール基又は置換若しくは未置換のアリーレン基を示し、Dは反応性基を含む側鎖を示し、c1乃至c5は、それぞれ独立に0以上2以下の整数を示し、kは0または1を示し、Dの総数は1以上6以下である。〕
請求項8の発明は、前記反応性モノマー(b)が連鎖重合性基を2個以上有する請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
請求項9の発明は、前記反応性モノマー(b)が、下記一般式(A)で表される化合物である請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
【化3】


[式(A)中、Ar乃至Arは、同一でも異なっていてもよくそれぞれ独立に、置換若しくは未置換のアリール基を示し、Arは置換若しくは未置換のアリール基又は置換若しくは未置換のアリーレン基を示し、Dは反応性基を含む側鎖を示し、c1乃至c5は、それぞれ独立に0以上2以下の整数を示し、kは0または1を示し、Dの総数は1以上6以下である。〕
請求項10の発明は、前記共重合体(a)を構成する電荷輸送能を有さない反応性モノマーが2個以上のアクリレート基又はメタクリレート基を有し、前記共重合体(a)中における前記電荷輸送能を有さない反応性モノマーに由来する構成単位の比率が10質量%以下である請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
請求項11の発明は、前記最外表面層である感光層がフッ素系粒子を含む請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
請求項12の発明は、請求項1〜請求項11のいずれか一項に記載の電子写真感光体の最外表面層となる感光層を形成するための塗布液であって、電荷輸送能を有する反応性モノマーと電荷輸送能を有さない反応性モノマーとの共重合体(a)、及び、前記共重合体(a)の構成単位となる前記電荷輸送能を有さない反応性モノマーの溶解度パラメータ(SP値)との差が2(cal/cm1/2以下である溶解度パラメータ(SP値)を有する反応性モノマー(b)を含む塗布液を導電性基体上に最外表面層として塗布する工程と、前記導電性基体上に塗布した前記塗布液の塗膜を、酸素濃度1000ppm以下、かつ、温度130℃以上の条件下で加熱する工程を含む、電子写真感光体の製造方法。
請求項13の発明は、前記塗布液が重合開始剤を含む請求項12に記載の電子写真感光体の製造方法。
請求項14の発明は、前記重合開始剤が熱重合開始剤である請求項13に記載の電子写真感光体の製造方法。
請求項15の発明は、前記熱重合開始剤の分子量が250以上である請求項14に記載の電子写真感光体の製造方法。
請求項16の発明は、請求項1〜請求項11のいずれか一項に記載の電子写真感光体を少なくとも備え、画像形成装置に着脱自在であるプロセスカートリッジ。
請求項17の発明は、請求項1〜請求項11のいずれか一項に記載の電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電する帯電装置と、帯電した前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する潜像形成装置と、前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置と、前記電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写装置と、を備えた画像形成装置。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、最外表面層として配置されている感光層が前記共重合体(a)と該共重合体(a)の存在下で反応性モノマー(b)を重合させた重合体を含まない場合に比べ、繰り返し使用によっても環境依存による画質の変化が抑制される電子写真感光体が提供される。
請求項2の発明によれば、前記共重合体(a)が上記構成単位を含まない場合に比べ、繰り返し使用によっても環境依存による画質の変化が抑制される電子写真感光体が提供される。
請求項3の発明によれば、前記共重合体(a)を構成する電荷輸送能を有さない反応性モノマーと前記反応性モノマー(b)が異なる構造である場合に比べ、機械的強度と電気特性が両立された電子写真感光体が提供される。
請求項4の発明によれば、前記共重合体(a)を構成する電荷輸送能を有さない反応性モノマーと前記反応性モノマー(b)の両方又は一方がアルキレンオキサイド基を有さない場合に比べ、繰り返し使用によっても環境依存による画質の変化が抑制される電子写真感光体が提供される。
請求項5の発明によれば、前記共重合体(a)を構成する電荷輸送能を有さない反応性モノマーと前記反応性モノマー(b)の両方又は一方がビスフェノール骨格を有さない場合に比べ、繰り返し使用によっても環境依存による画質の変化が抑制される電子写真感光体が提供される。
請求項6の発明によれば、前記共重合体(a)を構成する電荷輸送能を有さない反応性モノマーと前記反応性モノマー(b)の両方又は一方が炭素数6以上のアルキル基を有さない場合に比べ、繰り返し使用によっても環境依存による画質の変化が抑制される電子写真感光体が提供される。
請求項7の発明によれば、前記電荷輸送能を有する反応性モノマーが、前記一般式(A)で表される化合物でない場合に比べ、摩耗が抑制される電子写真感光体が提供される。
請求項8の発明によれば、前記反応性モノマー(b)の連鎖重合性基が1個以下である場合に比べ、繰り返し使用によっても環境依存による画質の変化が抑制される電子写真感光体が提供される。
請求項9の発明によれば、前記反応性モノマー(b)が、前記一般式(A)で表される化合物でない場合に比べ、摩耗が抑制される電子写真感光体が提供される。
請求項10の発明によれば、前記共重合体(a)を構成する電荷輸送能を有さない反応性モノマーと前記電荷輸送能を有さない反応性モノマーに由来する構成単位が前記条件を満たさない場合に比べ、繰り返し使用による画質の変化が抑制される電子写真感光体が提供される。
請求項11の発明によれば、最外表面層である感光層がフッ素系粒子を含まない場合に比べ、繰り返し使用による摩耗が抑制される電子写真感光体が提供される。
請求項12の発明によれば、前記条件を満たす加熱工程を行わない場合に比べ、繰り返し使用によっても環境依存による画質の変化が抑制される電子写真感光体の製造方法が提供される。
請求項13の発明によれば、前記塗布膜が重合開始剤を含まない場合に比べ、繰り返し使用による画質の変化が抑制される電子写真感光体の製造方法が提供される。
請求項14の発明によれば、前記重合開始剤が熱重合開始剤でない場合に比べ、電気特性と機械的強度に優れた電子写真感光体の製造方法が提供される。
請求項15の発明によれば、前記熱重合開始剤の分子量が250未満である場合に比べ、電気特性と機械的強度に優れた電子写真感光体の製造方法が提供される。
請求項16の発明によれば、電子写真感光体の最外表面層として配置されている感光層が前記共重合体(a)と該共重合体(a)の存在下で反応性モノマー(b)を重合させた重合体を含まない場合に比べ、繰り返し使用によっても環境依存による画質の変化が抑制されるプロセスカートリッジが提供される。
請求項17の発明によれば、電子写真感光体の最外表面層として配置されている感光層が前記共重合体(a)と該共重合体(a)の存在下で反応性モノマー(b)を重合させた重合体を含まない場合に比べ、繰り返し使用によっても環境依存による画質の変化が抑制される画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態に係る電子写真感光体の層構成の一例を示す概略部分断面図である。
【図2】本実施形態に係る電子写真感光体の層構成の他の一例を示す概略部分断面図である。
【図3】本実施形態に係る画像形成装置(プロセスカートリッジ)の構成の一例を示す概略図である。
【図4】本実施形態に係るタンデム型画像形成装置の構成の一例を示す概略図である。
【図5】像流れ及び白抜け評価の基準を示す説明図である。
【図6】実施例で合成した化合物(I−14)のIRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本実施形態の施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付することとし、重複する説明は省略する。
【0014】
反応性を有する(低分子)電荷輸送材料と電荷輸送能を有さない(メタ)アクリレートなどを基材上で重合させて感光層を形成する感光体の場合、架橋型の感光層は、架橋点を多く有し、3次元ネットワークを形成していると推測されており、このような感光体では、機械的強度に優れるが、電気特性に劣る傾向がある。この電気特性の悪化のメカニズムについては明らかでないが、電荷のホッピングサイト部位も架橋により位置が固定化さることにより、電荷輸送能が低下することなどがその一因として挙げられる。また、基材上で重合させた感光体では、一般的に、重合反応は溶剤を除去した状態で行うため、反応性基と電荷輸送骨格との距離が短くなり、反応性基上に発生したラジカルが電子輸送骨格と反応する副反応も生じていると推測される。その結果、電荷輸送能が低下し、電気特性の悪化の一因にもなっていると推測される。
【0015】
一方、電荷輸送材料を予め高分子化しておき、機械的強度を高める技術もあるが、一般的に高分子輸送材料を用いた場合、一次元のポリマーとなるため、架橋点という観点では上述した反応性を有する電荷輸送材料と(メタ)アクリレートなどの硬化物には及ばない。そのため、高分子電荷輸送材料を用いた場合、反応性を有する電荷輸送材料と(メタ)アクリレートなどの硬化物に比べて、機械的強度の観点では劣るが、一方で、電気特性面では優れる傾向にある。この電気特性に関しては、電荷のホッピングサイト部位が拘束されにくいことに起因していると推測される。
【0016】
このように、高分子電荷輸送材料の特性のみでは、充分な機械的強度を確保することは困難であることから、機械的強度を改善させることを目的に、高分子電荷輸送材料と反応性を有するアクリレートとを硬化させる方法が考えられる。しかし、この両材料の相溶性が低いため、均一に溶解せず、感光体を作製することは困難である。更には、この相溶性の悪さに伴い、電気特性も悪化してしまう。
【0017】
以上のような状況に鑑み、本発明者らは研究を重ねたところ、高分子電荷輸送材料の存在下で反応性を有するアクリレートを重合させた重合体を含む電子写真感光体(適宜、「感光体」と称する。)を用いれば、機械的強度に優れ、繰り返し使用によっても環境依存が抑制され、安定した画像が得られることを見出した。さらに研究を重ねたところ、最外表面層として配置される感光層を、電荷輸送能を有する反応性モノマーと電荷輸送能を有さない反応性モノマーとの共重合体(a)(適宜、単に「共重合体(a)」と称する。)、及び、前記共重合体(a)の構成単位となる前記電荷輸送能を有さない反応性モノマーの溶解度パラメータ(SP値)との差が2(cal/cm1/2 以下である溶解度パラメータ(SP値)を有する反応性モノマー(b)を前記共重合体(a)の存在下で重合させた重合体を含むように構成すれば、上記のように安定した画像が得られることを見出した。
なお、本実施形態における反応性モノマーの溶解度パラメータ(SP値)は、化学構造の原子または原子団の蒸発エネルギー(Δei)とモル体積(Δvi)より求めるFedorsの下記計算式により算出される値である。
式:[SP値=(ΣΔei/ΣΔvi)1/2
【0018】
このメカニズムについては必ずしも明確ではないが、以下のように推測される。
共重合体(a)の構成単位である電荷輸送能を有さない反応性モノマーの溶解度パラメータ(SP値)と反応性モノマー(b)の溶解度パラメータ(SP値)の差を2(cal/cm1/2以下とすることで、共重合体(a)と反応性モノマー(b)との相溶性が向上し、両者の分離が抑制された感光層が形成される。結果として、電荷輸送材料を高分子化することによる機械的強度が充分に発揮されるとともに、電荷輸送材料が感光層中に充分に分散することから、電気的特性にも優れる効果が得られると推測される。
一方、予め高分子電荷輸送材料を作製しておき、基材上で高分子電荷輸送材料と反応性モノマーに重合反応を施す場合、基材上での重合時に重合に関わる反応性基量が少なくなるため、上述した反応性基上のラジカルと電子輸送骨格との副反応を抑制する効果もあると考えられ、電気特性的に有利となっていることも考えられる。
【0019】
まず、本実施形態で使用される電子写真感光体の層構成について説明する。
図1、図2は、それぞれ本実施形態の電子写真用感光体の層構成の例を示す模式断面図である。図1においては導電性基体4上に下引層1が設けられ、その上に電荷発生層2、そして、2層からなる電荷輸送層3A,3Bが設けられている。このような構造の電子写真感光体において、最外表面層とは電荷輸送層3Aのことを指す。
図2においては導電性基体4上に下引層1が設けられ、その上に電荷発生層2、そして、1層からなる電荷輸送層3Aが設けられている。このような構造の電子写真感光体において、最外表面層とは電荷輸送層3Aのことを指す。
尚、図1、図2の構成例において、下引層1は必要に応じて設ければ良い。
以下、図1に示す構造の電子写真感光体を代表例として各層について説明する。
【0020】
<電荷輸送層3A>
まず、最外表面層である電荷輸送層3Aについて説明する。本実施形態における電子写真感光体の最外表面層となる電荷輸送層3Aは、電荷輸送能を有する反応性モノマーと電荷輸送能を有さない反応性モノマーとの共重合体(a)、及び、前記共重合体(a)の構成単位となる前記電荷輸送能を有さない反応性モノマーの溶解度パラメータ(SP値)との差が2(cal/cm1/2 以下である溶解度パラメータ(SP値)を有する反応性モノマー(b)を前記共重合体(a)の存在下で重合させた重合体を含んで構成されるが、他の材料を含んでもよい。
【0021】
本実施形態においては、特に、反応性モノマー(b)として、連鎖重合性基を2つ以上有するモノマーを用いることが望ましい。連鎖重合性基としては、化合物の合成の容易さ、反応性の高さの観点からアクリル基、メタクリル基、スチリル基、並びに、それらの誘導体のいずれかからなる官能基が好ましい、多官能モノマーを用いた場合、共重合体(a)と反応性モノマー(b)の相溶性も高いことから、反応性モノマー(b)の架橋構造体の中に共重合体(a)が存在する構造を取るものと推測される。そのため、共重合体(a)を用いたことによる強度改善効果と多官能反応性モノマー(b)の架橋構造体による強度改善効果の相乗効果により、より一層の機械的強度が改善されものと推測される。
【0022】
一方、通常の架橋型感光体では、電気特性が悪化しやすい傾向にあるが、反応性モノマー(b)が架橋した架橋構造体の中で共重合体(a)は自由に分子運動することで、ホッピングサイトの自由度が確保される。更に、共重合体(a)が反応性モノマー(b)の架橋構造体中に分散されることで、充分な電気特性も確保されると推測される。
【0023】
共重合体(a)と反応性モノマー(b)の相溶性の観点から、共重合体(a)を構成する電荷輸送能を有さない反応性モノマーと反応性モノマー(b)が同じ構造であることが特に望ましい。同じ構造のモノマーを用いることで、機械的強度と電気特性両立の改善効果がより大きく発揮される。
【0024】
一方、共重合体(a)を構成する電荷輸送能を有さない反応性モノマーと反応性モノマー(b)が同種でない場合、共重合体(a)を構成する電荷輸送能を有さない反応性モノマーと反応性モノマー(b)がともに、アルキレンオキサイド基を有する、ビスフェノール骨格を有する、又は、炭素数6以上のアルキル基を有することなどでも、充分に機械的強度と電気特性が両立される効果が得られる。
特に、両者が共にアルキレンオキサイド基を有することで、両者の相溶性が高まるだけでなく、ポリマー間の絡み合いの観点でも有利に働くと考えられ、機械的強度、及び、電気特性が改善されるが、特に機械的強度の観点で有利となる。
一方、両者が共にビスフェノール骨格を有することで、両者の相溶性が高まると考えられ、機械的強度、及び、電気特性が改善される。
また、両者が共に炭素数6以上のアルキル基を有することで、両者の相溶性が高まるだけでなく、ポリマー間の絡み合いの観点でも有利に働くと考えられ、特に、電気特性が改善される。
【0025】
本実施形態においては、共重合体(a)の構成単位である電荷輸送能を有さない反応性モノマーが多官能(メタ)アクリレートであり、電荷輸送能を有さない反応性モノマーの比率が10質量%以下であることが望ましい。このような構成とすることで、特に機械的強度が改善される。これは、多官能(メタ)アクリレートを用いることで、架橋点が増え、機械的強度が改善される一方、共重合体(a)において電荷輸送能を有さない反応性モノマーの比率を10質量%以下とすることで、十分な溶解(分散)が保たれ、電気特性の悪化が抑制される。
【0026】
本実施形態において、反応性基としては、アクリル基、メタクリル基、スチリル基、並びに、それらの誘導体からなる群の中から選ばれることが望ましい。
【0027】
(電荷輸送能を有する反応性モノマー)
共重合体(a)の構成単位の一つである電荷輸送能を有する反応性モノマーについて具体的に説明する。なお、本実施形態における「電荷輸送能を有する反応性モノマー」とは、タイムオブフライト(TOF)法で測定したときに、電界強度10V/μmにおける電荷移動度が1×10−10cm/V・s以上であり、「電荷輸送能を有さない反応性モノマー」とは、上記条件における電荷移動度が1×10−10cm/V・s未満であるものを意味する。
【0028】
共重合体(a)を構成する反応性モノマーとしては、分子内に電荷輸送性骨格を有する有機基と反応性基を併せ持つ化合物であれば何れの材料を使用してもよい。
【0029】
本実施形態において使用される電荷輸送能を有する反応性モノマーの具体例としては、例えば、下記一般式(1−2)で表されるモノマーが挙げられる。
【0030】
【化4】

【0031】
一般式(1−2)中、Rは水素又は炭素数が1以上4以下のアルキル基、Xは炭素数が1以上10以下である2価の有機基であり、aは0又は1を示し、CTは電荷輸送性骨格を持つ有機基を示す。Xは、カルボニル基、エステル基、及び芳香環からなる群より選ばれる少なくとも1種の置換基を含んでも良く、側鎖にアルキル基、望ましくは1以上4以下のアルキル基を含んでも良い。
【0032】
更に、より望ましくは、下記一般式(A)で示される化合物が挙げられる。以下、下記一般式(A)で示される化合物を中心に反応性基を有する電荷輸送材料について説明する。
【0033】
【化5】

【0034】
一般式(A)中、Ar乃至Arは、同一でも異なっていてもよくそれぞれ独立に、置換若しくは未置換のアリール基を示し、Arは置換若しくは未置換のアリール基、又は置換若しくは未置換のアリーレン基を示し、Dは反応性基を含む側鎖を示し、c1乃至c5は、それぞれ独立に0以上2以下の整数を示し、kは0又は1を示し、Dの総数は1以上6以下である。
【0035】
本実施形態においては、Dの総数は1であることが望ましい。Dの総数が2以上の場合、高分子共重合体が3次元架橋体となり、反応性モノマー(b)との相溶性が低下する場合がある。Dの総数が2以上の反応性モノマーを用いる場合、共重合体中におけるDの総数が2以上の反応性モノマーの比率を低くすることが望ましい。
【0036】
一般式(A)中のAr乃至Arとしては、下記式(1)乃至(7)のうちのいずれかであることが望ましい。
【0037】
【化6】

【0038】
上記式(1)乃至(7)中、Rは、水素原子、炭素数が1以上4以下のアルキル基、炭素数が1以上4以下のアルキル基若しくは炭素数が1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、及び炭素数7以上10以下のアラルキル基からなる群より選ばれる1種を表し、R乃至Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数が1以上4以下のアルキル基、炭素数が1以上4以下のアルコキシ基、炭素数が1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表し、Arは置換又は未置換のアリーレン基を表し、Z’は2価の有機連結基を表し、Dは反応性基を含む側鎖を表し、cは0以上2以下の整数を表し、sは0又は1を表し、tは0以上3以下の整数を表す。
ここで、式(7)中のArとしては、下記構造式(8)又は(9)で表されるものが望ましい。
【0039】
【化7】

【0040】
上記式(8)及び(9)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数が1以上4以下のアルキル基、炭素数が1以上4以下のアルコキシ基、炭素数が1以上4以下のアルキル基若しくは炭素数が1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表し、t’はそれぞれ1以上3以下の整数を表す。
また、前記式(7)中、Z’は2価の有機連結基を示すが、下記式(10)乃至(17)のうちのいずれかで表されるものが望ましい。
【0041】
【化8】



【0042】
上記式(10)乃至(17)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数が1以上4以下のアルキル基、炭素数が1以上4以下のアルコキシ基、炭素数が1以上4以下のアルキル基若しくは炭素数が1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表し、Wは2価の基を表し、q及びrはそれぞれ独立に1以上10以下の整数を表し、t”はそれぞれ0以上3以下の整数を表す。
【0043】
前記式(16)乃至(17)中のWとしては、下記(18)乃至(26)で表される2価の基のうちのいずれかであることが望ましい。但し、式(25)中、uは0以上3以下の整数を表す。
【0044】
【化9】

【0045】
また、前記一般式(A)中、Arは、kが0の時は置換若しくは未置換のアリール基であり、このアリール基としては、Ar乃至Arの説明で例示されたアリール基がそのまま挙げられる。また、Arは、kが1の時は置換若しくは未置換のアリーレン基であり、このアリーレン基としては、Ar乃至Arの説明で例示されたアリール基から水素原子を1つ除いたアリーレン基が挙げられる。
【0046】
以下、(a)高分子共重合体を構成する反応性モノマーの具体例を示すが、これらの化合物に限定されるものではない。
まず反応性基を1個有する電荷輸送能を有する反応性モノマーとしては、例えば以下のような化合物が挙げられる。
【0047】
【化10】



【0048】
【化11】

【0049】
【化12】

【0050】
【化13】

【0051】
【化14】

【0052】
【化15】

【0053】
次いで、反応性基を2個有する電荷輸送能を有する反応性モノマーとしては、例えば以下のような化合物が挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0054】
【化16】

【0055】
【化17】

【0056】
【化18】

【0057】
【化19】

【0058】
【化20】

【0059】
【化21】

【0060】
【化22】

【0061】
【化23】

【0062】
【化24】

【0063】
【化25】

【0064】
【化26】

【0065】
【化27】

【0066】
【化28】

【0067】
また、反応性基を3個有する電荷輸送能を有する反応性モノマーとしては、例えば以下のような化合物が挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0068】
【化29】

【0069】
【化30】

【0070】
【化31】

【0071】
【化32】

【0072】
【化33】

【0073】
反応性基を4個以上有する電荷輸送能を有する反応性モノマーの具体例としては、例えば以下のような化合物が挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0074】
【化34】

【0075】
【化35】

【0076】
【化36】

【0077】
【化37】

【0078】
【化38】

【0079】
【化39】

【0080】
【化40】



【0081】
【化41】

【0082】
【化42】

【0083】
【化43】

【0084】
【化44】

【0085】
【化45】

【0086】
【化46】

【0087】
【化47】

【0088】
【化48】

【0089】
【化49】

【0090】
ここまで説明した電荷輸送能を有する反応性モノマーは、後述する反応性モノマー(b)として使用してもよい。
【0091】
電荷輸送性骨格と、アクリル基、あるいは、メタクリル基を有する化合物としては、前記特許文献8乃至15に記載の化合物、あるいは、前記化合物などが使用される。
電荷輸送性骨格と、アクリル、あるいは、メタクリル基を有する化合物は、塗工液中の固形分全量(質量比)に対して30%以上100%以下、望ましくは、40%以上100%以下、より望ましくは、50%以上100%以下で用いられる。アクリル、あるいは、メタクリル基は、1つの分子内に2つ以上もつものが高い強度を得るために望ましく、さらに、1つの分子内にトリフェニルアミン骨格と、4つ以上のメタクリル基を有する化合物を用いることがより望ましい。1つの分子内にトリフェニルアミン骨格と、4つ以上のメタクリル基を有する化合物は、1つの分子内にトリフェニルアミン骨格と、4つ以上のメタクリル基を有する化合物は、塗工液中の固形分全量(質量比)に対して強度の観点から、望ましくは5%以上、より望ましくは10%以上、特に望ましくは15%以上で使用される。
【0092】
(電荷輸送能を有さない反応性モノマー)
本実施形態において、共重合体(a)のもう一つの構成材料である電荷輸送能を有さない反応性モノマーとしては、例えば、電荷輸送性骨格を持たない(メタ)アクリレートモノマー、オリゴマー等の材料が使用される。なお、本実施形態において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートを意味し、例えば、「イソブチル(メタ)アクリレート」は、イソブチルアクリレートとイソブチルメタクリレートの両方を意味する。
【0093】
電荷輸送能を有さない反応性モノマーの反応性基としては、電荷輸送能を有する反応性モノマーとの共重合性の観点から、アクリル基、メタクリル基、スチリル基、及びそれらの誘導体から選択される少なくとも1種であることが望ましい。
本実施形態に係る共重合体(a)を構成する電荷輸送能を有さない反応性モノマーの具体例としては、例えば下記一般式(2−1)で示される化合物が挙げられる。
【0094】
【化50】

【0095】
〔一般式(2−1)中、Rは電荷輸送能を有さない有機基を表し、Rは水素又は炭素数が1以上4以下のアルキル基を表す。〕
【0096】
本実施形態で用いる電荷輸送能を有さない反応性モノマーの反応性基数については特に制約はないが、特に、反応性基数は1個であることが望ましい。反応性基を2個以上有する反応性モノマーを用いる場合、共重合体(a)における反応性基を2個以上有する反応性モノマーの比率を低くすることが望ましい。なお、以下の例示において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートを意味し、例えば、「イソブチル(メタ)アクリレート」は、イソブチルアクリレートとイソブチルメタクリレートの両方を意味する。
【0097】
まず、反応性基を1個有する反応性モノマーとしては、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートヒドロキシエチル−O−フェニルフェノール(メタ)アクリレート、O−フェニルフェノールグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、アルコキシ化アルキル(メタ)アクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキサントリアクリレート、などが挙げられる。
【0098】
2官能のモノマーとしては、例えば、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタジエングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、アルコキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0099】
3官能モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、脂肪族トリ(メタ)アクリレート、アルコキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等が挙げられ、4官能のモノマとしてはペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、脂肪族テトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、5官能以上のモノマーとしては、例えば、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が使用される。
【0100】
これらの電荷輸送能を有さない反応性モノマーは、単独で使用してもよいが、2種以上の反応性モノマーを使用してもよい。
上記電荷輸送能を有さない反応性モノマーの中でも、共重合体との相溶性の観点から、EO基を有する反応性モノマー、又は、ビスフェノール骨格を有する反応性モノマーが好ましく、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等がより好ましい。
電荷輸送能を有さない反応性モノマーは、機械的強度と電気特性の観点から、共重合体(a)中における該反応性モノマーに由来する構成単位として、質量比で100%未満、望ましくは50%以下、より望ましくは30%以下で用いられる。
【0101】
本実施形態に係る共重合体(a)は、前記電荷輸送能を有する反応性モノマーに由来する下記一般式(1)で表される構成単位と、前記電荷輸送能を有さない反応性モノマーに由来する下記一般式(2)で表される構成単位とを含むことが望ましい。
【0102】
【化51】

【0103】
式(1)及び(2)において、Rは電荷輸送能を有さない有機基を表し、R及びRはそれぞれ独立して水素又は炭素数が1以上4以下のアルキル基を表し、Xは炭素数が1以上10以下である2価の有機基を表し、aは0又は1を示し、CTは電荷輸送性骨格を持つ有機基を示す。なお、Xは、カルボニル基、エステル基、炭素数1以上4以下のアルキル基、及び芳香環から選ばれる少なくとも1種の置換基を含んでも良い。
【0104】
本実施形態において、共重合体(a)は、反応性基を有する電荷輸送材料及び電荷輸送能を有さない反応性モノマーを、例えば溶液中で重合開始剤を用いて重合することによって得られる。重合開始剤としては、熱重合開始剤、光重合開始剤の何れも使用される。
【0105】
熱重合開始剤としては、V−30、V−40、V−59、V−601、V−65、V−70、VE−073、VF−096、Vam−110、Vam−111(以上、和光純薬製)、OTazo−15、OTazo−30、AIBN、AMBN、ADVN、ACVA(以上、大塚化学)等のアゾ系開始剤。パーテトラA、パーヘキサHC、パーヘキサC、パーヘキサV、パーヘキサ22、パーヘキサMC、パーブチルH,パークミルH、パークミルP、パーメンタH、パーオクタH、パーブチルC、パーブチルD、パーヘキシルD、パーロイル IB、パーロイル355、パーロイルL、パーロイルSA、ナイパーBW、ナイパー BMT−K40/M、パーロイルIPP、パーロイル NPP、パーロイルTCP、パーロイルOPP、パーロイルSBP、パークミルND、パーオクタND、パーヘキシルND、パーブチルND、パーブチルNHP、パーヘキシルPV、パーブチルPV、パーヘキサ 250、パーオクタO、パーヘキシルO、パーブチルO、パーブチルL、パーブチル 355、パーヘキシル I、パーブチル I、パーブチル E、パーヘキサ 25Z、パーブチル A、パーへヘキシル Z、パーブチル ZT、パーブチル Z(以上、日油化学社製)、カヤケタール AM−C55、トリゴノックス 36−C75、ラウロックス、パーカドックス L−W75、パーカドックス CH−50L、トリゴノックス TMBH、カヤクメン H、カヤブチル H−70、ペルカドックス BC−FF、カヤヘキサ AD、パーカドックス 14、カヤブチル C、カヤブチル D、カヤヘキサ YD−E85、パーカドックス 12−XL25、パーカドックス 12−EB20、トリゴノックス 22−N70、トリゴノックス 22−70E、トリゴノックス D−T50、トリゴノックス 423−C70、カヤエステル CND−C70、カヤエステル CND−W50、トリゴノックス 23−C70、トリゴノックス 23−W50N、トリゴノックス 257−C70、カヤエステル P−70、カヤエステル TMPO−70、トリゴノックス 121、カヤエステル O、カヤエステル HTP−65W、カヤエステル AN、トリゴノックス 42、トリゴノックス F−C50、カヤブチル B、カヤカルボン EH−C70、カヤカルボン EH−W60、カヤカルボン I−20、カヤカルボン BIC−75、トリゴノックス 117、カヤレン 6−70(以上、化薬アクゾ社製)、ルペロックス610、ルペロックス188、ルペロックス844、ルペロックス259、ルペロックス10、ルペロックス701、ルペロックス11、ルペロックス26、ルペロックス80、ルペロックス7、ルペロックス270、ルペロックスP、ルペロックス546、ルペロックス554、ルペロックス575、ルペロックスTANPO、ルペロックス555、ルペロックス570、ルペロックスTAP、ルペロックスTBIC、ルペロックスTBEC、ルペロックスJW、ルペロックスTAIC、ルペロックスTAEC、ルペロックスDC、ルペロックス101、ルペロックスF、ルペロックスDI、ルペロックス130、ルペロックス220、ルペロックス230、ルペロックス233、ルペロックス531(以上、アルケマ吉富社製)等が挙げられる。
【0106】
光硬化開始剤としては、分子内開列型、水素引抜型などが挙げられる。分子内開列型としては、ベンジルケタール系、アルキルフェノン系、アミノアルキルフェノン系、ホスフィンオキサイド系、チタノセン系、オキシム系が挙げられる。具体的には、ベンジルケタール系としては、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンが挙げられる。アルキルフェノン系としては、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、アセトフェノン、2−フェニル−2−(p−トルエンスルホニルオキシ)アセトフェノンが挙げられる。アミノアルキルフェノン系としては、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノンなどが挙げられる。ホスフィンオキサイド系としては、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドなどが挙げられる。チタノセン系としては、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウムなどが挙げられる。オキシム系としては、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(0−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(0−アセチルオキシム)などが挙げられる。
【0107】
水素引抜型としては、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、ベンジル系、ミヒラーケトン系などが挙げられる。具体的には、ベンゾフェノン系としては、2−ベンゾイル安息香酸、2−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル4’−メチルジフェニルスルフィド、p,p’−ビスジエチルアミノベンゾフェノンなどが挙げられる。チオキサントン系としては、2,4−ジエチルチオキサンテン−9−オン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントンなどが挙げられる。ベンジル系としては、ベンジル、(±)−カンファーキノン、p−アニシルなどが挙げられる。
【0108】
これら重合開始剤は、共重合体作製時に、反応性モノマー全量(質量比)に対して0.2%以上10%以下、望ましくは0.5%以上8%以下、より望ましくは0.7%以上5%以下で添加される。
重合反応は、発生したラジカルが失活することなく連鎖反応を行えるよう、不活性ガス雰囲気下など酸素濃度10%以下、望ましくは5%以下、より望ましくは1%以下の低酸素濃度で行うことが望ましい。
【0109】
本実施形態における共重合体(a)の分子量としては、重量平均分子量で10000以上500000以下が望ましく、より望ましくは、10000以上250000以下、更に望ましくは、25000以上150000以下である。
また、共重合体(a)中における反応性を有する電荷輸送材料の比率は、モル比で20%から95%であることが電気特性の観点から望ましい。
【0110】
(反応性モノマー(b))
次に、反応性モノマー(b)について説明する。反応性モノマー(b)は上述した共重合体(a)で使用される反応性モノマー(電荷輸送能を有する反応性モノマー又は電荷輸送能を有さない反応性モノマー)が好適に使用される。
本実施形態における反応性モノマー(b)は、共重合体(a)を構成する電荷輸送能を有さない反応性モノマーと同じ構造の材料であっても、構造的に異なるものであっても構わないが、共重合体(a)を構成する電荷輸送能を有さない反応性モノマーの溶解度パラメータ(SP値)と電荷輸送能を有さない反応性モノマー(b)の溶解度パラメータ(SP値)の差は2(cal/cm1/2以下にする必要がある。電気特性、並びに機械的強度の観点から、望ましくは、1.6(cal/cm1/2以下であり、更に望ましくは、1(cal/cm1/2以下である。
【0111】
本実施形態において、最表面を形成する電荷輸送層は、共重合体(a)及び反応性モノマー(b)を硬化することで得られる。例えば、共重合体(a)及び反応性モノマー(b)を溶解した塗布液を用意し、ブレード塗布法、マイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法、インクジェット法等の塗布方法を用いて塗布した後、塗膜を硬化させればよい。
【0112】
本実施形態における最外表面層3Aは、光、電子線、あるいは熱によって硬化される。この際、重合開始剤は必ずしも必要としないが、均一性が高く、高硬度の最外表面層を得るためには、重合開始剤を添加することが特に望ましい。本実施形態において使用される重合開始剤としては、上述した重合開始剤が好適に使用される。また、重合開始剤が熱重合開始剤であることがより望ましく、熱重合開始剤の分子量が250以上であることが更に望ましい。
塗布液中に添加する重合開始剤の量としては、質量比で反応性モノマー全量に対して0.2%以上10%以下、望ましくは0.5%以上8%以下、より望ましくは0.7%以上5%以下で添加される。
また、硬化反応は、発生したラジカルが失活することなく連鎖反応を行えるよう、不活性ガス雰囲気下など、酸素濃度が10%以下、望ましくは5%以下、より望ましくは1%以下の低酸素濃度で行うことが望ましい。
【0113】
最表面を形成する電荷輸送層3Aの膜厚は、例えば、図1に示した層構成を有する感光体の場合、望ましくは1μm以上20μm以下、より望ましくは3μm以上15μm以下である。一方、図2に示した層構成を有する感光体の場合、望ましくは10μm以上60μm以下、より望ましくは20μm以上60μm以下である。
【0114】
なお、本実施形態に係る感光体の最外表面層である電荷輸送層3Aに必須成分として含まれる材料は、電荷輸送層3Bに含まれていても構わない。
【0115】
更に、本実施形態においては、電荷輸送層3A,3Bを構成する材料として、反応性を有さない電荷輸送性物質、電荷輸送性を有さない反応性材料、結着樹脂などが適宜用いられる。例えば、反応性を有さない電荷輸送性物質、及び、電荷輸送性を有さない反応性材料は、その種類、添加量を選択することで電荷輸送層の機械的強度、並びに、電荷輸送能が調整されるという観点で有効である。
【0116】
まず、反応性基を有さない電荷輸送材料について説明する。反応性基を有さない電荷輸送材料としては、p−ベンゾキノン、クロラニル、ブロマニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン等のフルオレノン化合物、キサントン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノビニル系化合物、エチレン系化合物等の電子輸送性化合物、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物など公知の正孔輸送性化合物があげられる。
【0117】
より望ましくは、電荷移動度の観点から、下記構造式で示されるトリアリールアミン誘導体、又は、ベンジジン誘導体が望ましい。
【0118】
【化52】

【0119】
式中、Rは、水素原子又はメチル基を示す。また、lは1又は2を意味する。Ar及びArは置換又は未置換のアリール基を表す。
【0120】
【化53】

【0121】
式中、R15、R15’は同一でも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数が1以上5以下のアルキル基、又は炭素数が1以上5以下のアルコキシ基を表わす。R16、R16’、R17、R17’は同一でも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数が1以上5以下のアルキル基、炭素数が1以上5以下のアルコキシ基、炭素数が1以上2以下のアルキル基で置換されたアミノ基、又は置換又は未置換のアリール基を表わす。m及びnは0乃至2の整数である。
【0122】
更には、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシランなどの反応性を有さない高分子電荷輸送性が使用される。公知の非架橋型高分子電荷輸送材料の中でも、特に、特開平8−176293号公報、特開平8−208820号公報等に開示されているポリエステル系高分子電荷輸送材料は、高い電荷輸送性を有しており、特に望ましいものである。高分子電荷輸送材料はそれだけでも成膜されるが、後述する結着樹脂と混合して成膜してもよい。これらの電荷輸送材料は1種を単独で又は2種以上を混合して用いられるがこれらに限定されるものではない。
電荷輸送性を有さない反応性材料としては、上述した材料が好適に使用される。
【0123】
(結着樹脂)
最外表面層の電荷輸送層に用いられる結着樹脂としては、具体的にはポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーンアルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン等が挙げられる。また、上述のように、特開平8−176293号公報、特開平8−208820号公報に開示されているポリエステル系高分子電荷輸送材料等の高分子電荷輸送材料を用いてもよい。これらの結着樹脂は1種を単独で又は2種以上を混合して用いる。電荷輸送材料と結着樹脂との配合比は質量比で10:1乃至1:5が望ましく、8:1乃至1:3がより望ましい。
【0124】
これらのうち、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂が電荷輸送性、電荷輸送材料との相溶性に優れるため望ましい。さらに、同一分子内にトリフェニルアミン骨格と、4つ以上のメタクリル基を有する化合物を含有する層を表面層として電荷輸送層上に形成する場合、電荷輸送層に用いる結着樹脂は、粘度平均分子量50000以上、より望ましくは、55000以上であることが、接着性、上層形成時の耐クラック性などに優れ、より望ましい。
【0125】
電荷輸送層形成用塗布液を電荷発生層の上に塗布する際の塗布方法としては、ブレード塗布法、マイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法、インクジェット法等の塗布方法が用いられる。
電荷輸送層としての全膜厚は、望ましくは10μm以上60μm以下、より望ましくは20μm以上60μm以下である。
【0126】
本実施形態における電荷輸送層においては、さらに放電ガス耐性、機械強度、耐傷性、粒子分散性、粘度コントロール、トルク低減、磨耗量コントロール、ポットライフの延長などの目的で電荷輸送性骨格と、アクリル基、あるいは、メタクリル基を有する化合物と反応する、あるいは、反応しないポリマーを混合してもよい。
上記反応するポリマーとしては、例えば、特開平5−216249号公報、特開平5−323630号公報、特開平11―52603号公報、特開2000−264961号公報などに開示されたものが挙げられる。また、上記反応しないポリマーとしては、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂など公知のものが挙げられる。これらポリマーは、電荷輸送性を持つ化合物の全量に対し100%以下、望ましくは50%以下、より望ましくは30%以下で用いられる。
【0127】
本実施形態の電荷輸送層には、さらに、膜の成膜性、可とう性、潤滑性、接着性を調整するなどの目的から、他のカップリング剤、フッ素化合物等を混合して用いても良い。このような化合物として、各種シランカップリング剤、および市販のシリコーン系ハードコート剤が用いられる。
【0128】
シランカップリング剤としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、等が用いられる。市販のハードコート剤としては、KP−85、X−40−9740、X−8239(以上、信越シリコーン社製)、AY42−440、AY42−441、AY49−208(以上、東レダウコーニング社製)等を用いられる。また、撥水性等の付与のために、(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、3−(ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルキルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリエトシキシラン、等の含フッ素化合物を加えても良い。シランカップリング剤は任意の量で使用されるが、含フッ素化合物の量は、フッ素を含まない化合物に対して質量で0.25倍以下とすることが望ましい。この使用量を超えると、架橋膜の成膜性に問題が生じる場合がある。さらに、特開2001−166510号公報などに開示されている反応性のフッ素化合物などを混合してもよい。
【0129】
また、第1層及び/又は第2層の放電ガス耐性、機械強度、耐傷性、粒子分散性、粘度コントロール、トルク低減、磨耗量コントロール、ポットライフの延長などの目的でアルコールに溶解する樹脂を加えてもよい。
【0130】
また、上記成分を反応させて塗布液を得るときには、単純に混合、溶解させるだけでもよいが、室温(20℃)以上100℃以下、望ましくは、30℃以上80℃以下で10分以上100時間以下、望ましくは1時間以上50時間以下加温しても良い。また、この際に超音波を照射することも望ましい。これにより、恐らく部分的な反応が進行し、塗布液の均一性が高まり、塗膜欠陥が抑制された膜が得られやすくなる。
【0131】
電荷輸送層には、帯電装置で発生するオゾン等の酸化性ガスによる劣化を防止する目的で、劣化防止剤を添加することが望ましい。感光体表面の機械的強度を高め、感光体が長寿命になると、感光体が酸化性ガスに長い時間接触することになるため、従来より強い酸化耐性が要求される。劣化防止剤としては、ヒンダードフェノール系あるいはヒンダードアミン系が望ましく、有機イオウ系酸化防止剤、フォスファイト系酸化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系酸化防止剤、チオウレア系酸化防止剤、ベンズイミダゾール系酸化防止剤、などの公知の酸化防止剤を用いてもよい。劣化防止剤の添加量としては20質量%以下が望ましく、10質量%以下がより望ましい。
【0132】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、「イルガノックス1076」、「イルガノックス1010」、「イルガノックス1098」、「イルガノックス245」、「イルガノックス1330」、「イルガノックス3114」、「イルガノックス1076」(以上、チバ・ジャパン製)、「3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシビフェニル」等が挙げられる。
ヒンダードアミン系酸化防止剤としては、「サノールLS2626」、「サノールLS765」、「サノールLS770」、「サノールLS744」(以上、三共ライフテック製)、「チヌビン144」、「チヌビン622LD」(以上、チバ・ジャパン製)、「マークLA57」、「マークLA67」、「マークLA62」、「マークLA68」、「マークLA63」(以上、アデカ社製)が挙げられ、チオエーテル系として「スミライザ−TPS」、「スミライザーTP−D」(以上、住友化学社製)が挙げられ、ホスファイト系として「マーク2112」、「マークPEP−8」、「マークPEP−24G」、「マークPEP−36」、「マーク329K」、「マークHP−10」(以上、アデカ社製)等が挙げられる。
【0133】
更に、電荷輸送層には残留電位を下げるため、あるいは機械的強度を上げるために導電性粒子や、有機又は無機粒子を添加してもよい。粒子の一例として、ケイ素含有粒子が挙げられる。ケイ素含有粒子とは、構成元素にケイ素を含む粒子であり、具体的には、コロイダルシリカ及びシリコーン粒子等が挙げられる。ケイ素含有粒子として用いられるコロイダルシリカは、平均粒径1μm以上100nm以下、望ましくは10nm以上30nm以下のシリカを、酸性もしくはアルカリ性の水分散液、あるいはアルコール、ケトン、エステル等の有機溶媒中に分散させたものから選ばれ、一般に市販されているものを使用してもよい。第1層中のコロイダルシリカの固形分含有量は、特に限定されるものではないが、製膜性、電気特性、強度の面から、全固形分全量を基準として、0.1質量%以上50質量%以下、望ましくは0.1質量%以上30質量%以下の範囲で用いられる。
【0134】
ケイ素含有粒子として用いられるシリコーン粒子は、シリコーン樹脂粒子、シリコーンゴム粒子、シリコーン表面処理シリカ粒子から選ばれ、一般に市販されているものが使用される。これらのシリコーン粒子は球状で、その平均粒径は望ましくは1nm以上500nm以下、より望ましくは10nm以上100nm以下である。シリコーン粒子は、化学的に不活性で、樹脂への分散性に優れる小径粒子であり、さらに十分な特性を得るために必要とされる含有量が低いため、架橋反応を阻害することなく、電子写真感光体の表面性状が改善される。すなわち、強固な架橋構造中に均一に取り込まれた状態で、電子写真感光体表面の潤滑性、撥水性を向上させ、長期間にわたって良好な耐磨耗性、耐汚染物付着性が維持される。
最外表面層におけるシリコーン粒子の含有量は、全固形分全量を基準として、望ましくは0.1質量%以上30質量%以下、より望ましくは0.5質量%以上10質量%以下である。
【0135】
また、その他の粒子としては、四フッ化エチレン、三フッ化エチレン、六フッ化プロピレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のフッ素系粒子や“第8回ポリマー材料フォーラム講演予稿集 p89”に示されるような、フッ素樹脂と水酸基を有するモノマーを共重合させた樹脂からなる粒子、ZnO−Al、SnO−Sb、In−SnO、ZnO−TiO、ZnO−TiO、MgO−Al、FeO−TiO、TiO、SnO、In、ZnO、MgO等の半導電性金属酸化物が挙げられる。
【0136】
また、同様な目的でシリコーンオイル等のオイルを添加してもよい。シリコーンオイルとしては、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、フェニルメチルシロキサン等のシリコーンオイル;アミノ変性ポリシロキサン、エポキシ変性ポリシロキサン、カルボキシル変性ポリシロキサン、カルビノール変性ポリシロキサン、メタクリル変性ポリシロキサン、メルカプト変性ポリシロキサン、フェノール変性ポリシロキサン等の反応性シリコーンオイル;ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状ジメチルシクロシロキサン類;1,3,5−トリメチル−1.3.5−トリフェニルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチル−1,3,5,7,9−ペンタフェニルシクロペンタシロキサン等の環状メチルフェニルシクロシロキサン類;ヘキサフェニルシクロトリシロキサン等の環状フェニルシクロシロキサン類;3−(3,3,3−トリフルオロプロピル)メチルシクロトリシロキサン等のフッ素含有シクロシロキサン類;メチルヒドロシロキサン混合物、ペンタメチルシクロペンタシロキサン、フェニルヒドロシクロシロキサン等のヒドロシリル基含有シクロシロキサン類;ペンタビニルペンタメチルシクロペンタシロキサン等のビニル基含有シクロシロキサン類等が挙げられる。
【0137】
また、金属、金属酸化物及びカーボンブラック等を添加しても良い。金属としては、アルミニウム、亜鉛、銅、クロム、ニッケル、銀及びステンレス等、またはこれらの金属をプラスチックの粒子の表面に蒸着したもの等が挙げられる。金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンやタンタルをドープした酸化スズおよびアンチモンをドープした酸化ジルコニウム等が挙げられる。これらは単独で用いることも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上を組み合わせて用いる場合は、単に混合しても、固溶体や融着の形にしてもよい。導電性粒子の平均粒径は透明性の点で0.3μm以下、特に0.1μm以下が望ましい。
【0138】
<導電性基体>
導電性基体4としては、例えば、アルミニウム、銅、亜鉛、ステンレス、クロム、ニッケル、モリブデン、バナジウム、インジウム、金、白金等の金属又は合金を用いて構成される金属板、金属ドラム、及び金属ベルト、あるいは、導電性ポリマー、酸化インジウム等の導電性化合物やアルミニウム、パラジウム、金等の金属又は合金を塗布、蒸着又はラミネートした紙、プラスチックフィルム、ベルト等が挙げられる。
【0139】
電子写真感光体がレーザープリンターに使用される場合、レーザー光を照射する際に生じる干渉縞を防止するために、導電性基体4の表面は、中心線平均粗さRaで0.04μm以上0.5μm以下に粗面化することが望ましい。Raが0.04μm未満であると、鏡面に近くなるので干渉防止効果が不十分となる傾向があり、Raが0.5μmを越えると、被膜を形成しても画質が粗くなる傾向がある。なお、非干渉光を光源に用いる場合には、干渉縞防止の粗面化は特に必要なく、導電性基体4表面の凹凸による欠陥の発生が防げるため、より長寿命化に適する。
【0140】
粗面化の方法としては、研磨剤を水に懸濁させて支持体に吹き付けることによって行う湿式ホーニング、又は回転する砥石に支持体を圧接し、連続的に研削加工を行うセンタレス研削、陽極酸化処理等が望ましい。
【0141】
また、他の粗面化の方法としては、導電性基体4表面を粗面化することなく、導電性又は半導電性粉体を樹脂中に分散させて、支持体表面上に層を形成し、その層中に分散させる粒子により粗面化する方法も望ましく用いられる。
【0142】
ここで、陽極酸化による粗面化処理は、アルミニウムを陽極とし電解質溶液中で陽極酸化することによりアルミニウム表面に酸化膜を形成するものである。電解質溶液としては、硫酸溶液、シュウ酸溶液等が挙げられる。しかし、陽極酸化により形成された多孔質陽極酸化膜は、そのままの状態では化学的に活性であり、汚染され易く、環境による抵抗変動も大きい。そこで、陽極酸化膜の微細孔を加圧水蒸気又は沸騰水中(ニッケル等の金属塩を加えてもよい)で水和反応による体積膨張でふさぎ、より安定な水和酸化物に変える封孔処理を行うことが望ましい。
【0143】
陽極酸化膜の膜厚については、0.3μm以上15μm以下が望ましい。この膜厚が0.3μm未満であると、注入に対するバリア性が乏しく効果が不十分となる傾向がある。他方、15μmを超えると、繰り返し使用による残留電位の上昇を招く傾向にある。
【0144】
また、導電性基体4には、酸性水溶液による処理又はベーマイト処理を施してもよい。リン酸、クロム酸及びフッ酸からなる酸性処理液による処理は以下のようにして実施される。先ず、酸性処理液を調整する。酸性処理液におけるリン酸、クロム酸及びフッ酸の配合割合は、リン酸が10質量%以上11質量%以下の範囲、クロム酸が3質量%以上5質量%以下の範囲、フッ酸が0.5質量%以上2質量%以下の範囲であって、これらの酸全体の濃度は13.5質量%以上18質量%以下の範囲が望ましい。処理温度は42℃以上48℃以下が望ましいが、処理温度を高く保つことにより、一層速く、かつ厚い被膜を形成してもよい。被膜の膜厚は、0.3μm以上15μm以下が望ましい。0.3μm未満であると、注入に対するバリア性が乏しく効果が不十分となる傾向がある。他方、15μmを超えると、繰り返し使用による残留電位の上昇を招く傾向がある。
【0145】
ベーマイト処理は、90℃以上100℃以下の純水中に5分間以上60分間以下浸漬すること、又は90℃以上120℃以下の加熱水蒸気に5分間以上60分間以下接触させることにより行われる。被膜の膜厚は、0.1μm以上5μm以下が望ましい。これをさらにアジピン酸、硼酸、硼酸塩、燐酸塩、フタル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等の被膜溶解性の低い電解質溶液を用いて陽極酸化処理してもよい。
【0146】
<下引層>
下引層1は、結着樹脂のみで形成されても良いし、結着樹脂に無機粒子を含有して形成されてもよい。
無機粒子としては、粉体抵抗(体積抵抗率)10Ω・cm以上1011Ω・cm以下のものが望ましく用いられる。これは下引層1はリーク耐性、キャリアブロック性獲得のために適切な抵抗を得ることが必要でるためである。なお、上記範囲の下限よりも無機粒子の抵抗値が低いと十分なリーク耐性が得られず、この範囲の上限よりも高いと残留電位上昇を引き起こしてしまう懸念がある。
【0147】
中でも上記抵抗値を有する無機粒子としては、酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム等の無機粒子を用いるのが望ましく、特に酸化亜鉛は望ましく用いられる。
また、無機粒子は表面処理を行ったものでもよく、表面処理の異なるもの、あるいは、粒子径の異なるものなど2種以上混合して用いてもよい。
また、無機粒子としては、BET法による比表面積が10m/g以上のものが望ましく用いられる。比表面積値が10m/g以下のものは帯電性低下を招きやすく、良好な電子写真特性を得にくい傾向がある。
【0148】
さらに無機粒子とアクセプター性化合物を含有させることで電気特性の長期安定性、キャリアブロック性に優れたものが得られる。アクセプター性化合物としては所望の特性が得られるものならばいかなるものでも使用されるが、クロラニル、ブロモアニル等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールや2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)1,3,4オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3’,5,5’テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物等の電子輸送性物質などが望ましく、特にアントラキノン構造を有する化合物が望ましい。さらに、ヒドロキシアントラキノン系化合物、アミノアントラキノン系化合物、アミノヒドロキシアントラキノン系化合物等、アントラキノン構造を有するアクセプター性化合物が望ましく用いられ、具体的にはアントラキノン、アリザリン、キニザリン、アントラルフィン、プルプリン等が挙げられる。
【0149】
これらのアクセプター性化合物の含有量は所望の特性が得られる範囲であれば任意に設定されるが、望ましくは無機粒子に対して0.01質量%以上20質量%以下含有される。さらに電荷蓄積防止と無機粒子の凝集を防止する観点から0.05質量%以上10質量%以下が望ましい。無機粒子の凝集は、導電路形成が不均一となり、繰り返し使用時に残留電位の上昇など維持性の悪化を招きやすくなるだけでなく、黒点などの画質欠陥も引き起こしやすくなる。
アクセプター化合物は、下引層の塗布時に添加するだけでも良いし、無機粒子表面にあらかじめ付着させておいてもよい。無機粒子表面にアクセプター化合物を付与させる方法としては、乾式法、あるいは、湿式法が挙げられる。
【0150】
乾式法にて表面処理を施す場合には無機粒子をせん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら、直接あるいは有機溶媒まに溶解させたアクセプター化合物を滴下し、乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させることによって均一に処理される。添加あるいは噴霧する際には溶剤の沸点以下の温度で行われることが望ましい。溶剤の沸点以上の温度で噴霧すると、均一に攪拌される前に溶剤が蒸発し、アクセプター化合物が局部的にかたまってしまい均一な処理がされにくい欠点があり、望ましくない。添加あるいは噴霧した後、さらに100℃以上で焼き付けを行ってもよい。焼き付けは所望の電子写真特性が得られる温度、時間であれば任意の範囲で実施される。
【0151】
湿式法としては、無機粒子を溶剤中で攪拌、超音波、サンドミルやアトライター、ボールミル等を用いて分散し、アクセプター化合物を添加し攪拌あるいは分散したのち、溶剤除去することで均一に処理される。溶剤除去方法はろ過あるいは蒸留により留去される。溶剤除去後にはさらに100℃以上で焼き付けが行われる。焼き付けは所望の電子写真特性が得られる温度、時間であれば任意の範囲で実施される。湿式法においては表面処理剤を添加する前に無機粒子含有水分が除去され、その例として表面処理に用いる溶剤中で攪拌加熱しながら除去する方法、溶剤と共沸させて除去する方法を用いてもよい。
【0152】
また、無機粒子はアクセプター化合物を付与する前に表面処理を施してもよい。表面処理剤としては所望の特性が得られるものであればよく、公知の材料から選択される。例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、界面活性材等が挙げられる。特に、シランカップリング剤は良好な電子写真特性を与えるため望ましく用いられる。さらにアミノ基を有するシランカップリング剤は下引層1に良好なブロッキング性を与えるため望ましく用いられる。
アミノ基を有するシランカップリング剤としては所望の電子写真感光体特性を得られるものであればいかなる物でも用いられるが、具体的例としてはγ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0153】
また、シランカップリング剤は2種以上混合して使用してもよい。前記アミノ基を有するシランカップリング剤と併用して用いられるシランカップリング剤の例としてはビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
表面処理方法は公知の方法であればいかなる方法でも使用されるが、乾式法あるいは湿式法が用いられる。また、アクセプター付与とカップリング剤等による表面処理を同時に行っても良い。
【0154】
下引層1中の無機粒子に対するシランカップリング剤の量は所望の電子写真特性が得られる量であれば任意に設定されるが分散性向上の観点から、無機粒子に対して0.5質量%以上10質量%以下が望ましい。
【0155】
下引層1に含有される結着樹脂としては、良好な膜が形成されるもので、かつ所望の特性が得られるものであれば公知のいかなるものでも使用されるが、例えばポリビニルブチラール等のアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂等の公知の高分子樹脂化合物、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料が用いられる。また電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂やポリアニリン等の導電性樹脂等が用いられる。中でも上層の塗布溶剤に不溶な樹脂が望ましく用いられ、特にフェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が望ましく用いられる。これらを2種以上組み合わせて使用する場合には、その混合割合は、必要に応じて適宜設定される。
下引層形成用塗布液中のアクセプター性を付与した金属酸化物とバインダー樹脂、または無機粒子とバインダー樹脂との比率は所望する電子写真感光体特性を得られる範囲で任意に設定される。
【0156】
下引層1中には電気特性向上、環境安定性向上、画質向上のために種々の添加物を用いてもよい。添加物としては、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料が用いられる。シランカップリング剤は金属酸化物の表面処理に用いられるが、添加剤としてさらに塗布液に添加して用いられる。ここで用いられるシランカップリング剤の具体例としてはビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N, N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシラン等である。ジルコニウムキレート化合物の例として、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシド等が挙げられる。
【0157】
チタニウムキレート化合物の例としてはテトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
【0158】
アルミニウムキレート化合物の例としてはアルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
これらの化合物は単独にあるいは複数の化合物の混合物あるいは重縮合物として用いてもよい。
【0159】
下引層形成用塗布液を調整するための溶媒としては公知の有機溶剤、例えばアルコール系、芳香族系、ハロゲン化炭化水素系、ケトン系、ケトンアルコール系、エーテル系、エステル系等から任意で選択される。例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤が用いられる。
また、これらの分散に用いる溶剤は単独あるいは2種以上混合して用いられる。混合する際、使用される溶剤としては、混合溶剤としてバインダー樹脂を溶かす溶剤であれば、いかなるものでも使用してよい。
分散方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカーなどの公知の方法が用いられる。さらにこの下引層1を設けるときに用いる塗布方法としては、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が用いられる。
このようにして得られた下引層形成用塗布液を用い、導電性基体上に下引層1が成膜される。
【0160】
下引層1は、ビッカース強度が35以上とされていることが望ましい。
さらに、下引層1は、所望の特性が得られるのであれば、いかなる厚さに設定してもよいが、厚さが15μm以上が望ましく、さらに望ましくは15μm以上50μm以下とされていることが望ましい。
下引層1の厚さが15μm未満であるときには、充分な耐リーク性能が得られ、また50μm以上であるときには長期使用時に残留電位が残りやすくなるため画像濃度異常を招きやすい欠点がある。
【0161】
下引層1の表面粗さ(十点平均粗さ)はモアレ像防止のために、使用される露光用レーザー波長λの1/4n(nは上層の屈折率)から1/2λまでに調整される。表面粗さ調整のために下引層中に樹脂などの粒子を添加してもよい。樹脂粒子としてはシリコーン樹脂粒子、架橋型PMMA樹脂粒子等が用いられる。
【0162】
また、表面粗さ調整のために下引層を研磨してもよい。研磨方法としては、バフ研磨、サンドブラスト処理、湿式ホーニング、研削処理等が用いられる。
塗布したものを乾燥させて下引層を得るが、通常、乾燥は溶剤を蒸発させ、膜が形成される温度で行われる。
【0163】
<電荷発生層>
電荷発生層2は電荷発生材料及び結着樹脂を含有する層である。
電荷発生材料としては、ビスアゾ、トリスアゾ等のアゾ顔料、ジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料、ペリレン顔料、ピロロピロール顔料、フタロシアニン顔料、酸化亜鉛、三方晶系セレン等が挙げられる。これらの中でも、近赤外域の露光に対しては、金属及又は無金属フタロシアニン顔料が望ましく、特に、特開平5−263007号公報、特開平5−279591号公報等に開示されたヒドロキシガリウムフタロシアニン、特開平5−98181号公報等に開示されたクロロガリウムフタロシアニン、特開平5−11172号公報、特開平5−11173号公報等に開示されたジクロロスズフタロシアニン、特開平4−189873号公報、特開平5−43823号公報等に開示されたチタニルフタロシアニンがより望ましい。また、近紫外域のレーザー露光に対してはジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料、チオインジゴ系顔料、ポルフィラジン化合物、酸化亜鉛、三方晶系セレン、特開2004−78147号公報、特開2005−181992号公報に開示されたビスアゾ顔料、等がより望ましい。
【0164】
電荷発生層2に使用される結着樹脂としては、広範な絶縁性樹脂から選択される。また、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシラン等の有機光導電性ポリマーから選択してもよい。望ましい結着樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノール類と芳香族2価カルボン酸の重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等が挙げられる。これらの結着樹脂は1種を単独で又は2種以上を混合して用いられる。電荷発生材料と結着樹脂の配合比は質量比で10:1から1:10までの範囲内であることが望ましい。
電荷発生層2は、上記電荷発生材料及び結着樹脂を溶剤中に分散した塗布液を用いて形成される。
【0165】
分散に用いる溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を混合して用いられる。
また、電荷発生材料及び結着樹脂を溶剤中に分散させる方法としては、ボールミル分散法、アトライター分散法、サンドミル分散法等の通常の方法が用いられる。これらの分散方法により、分散による電荷発生材料の結晶型の変化が抑制される。さらにこの分散の際、電荷発生材料の平均粒径を0.5μm以下、望ましくは0.3μm以下、さらに望ましくは0.15μm以下にすることが有効である。
また、電荷発生層2を形成する際には、ブレード塗布法、マイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が用いられる。
このようにして得られる電荷発生層2の膜厚は、望ましくは0.1μm以上5.0μm以下、さらに望ましくは0.2μm以上2.0μm以下である。
【0166】
<電子写真感光体の製造方法>
本実施形態に係る電子写真感光体の製造方法は、導電性基体4上に、必要に応じて下引層1、電荷発生層2、電荷輸送層3Bを順次形成し、電荷輸送能を有する反応性モノマーと電荷輸送能を有さない反応性モノマーとの共重合体(a)、及び、前記共重合体(a)の構成単位となる前記電荷輸送能を有さない反応性モノマーの溶解度パラメータ(SP値)との差が2(cal/cm1/2 以下である溶解度パラメータ(SP値)を有する反応性モノマー(b)を含む塗布液を導電性基体上に最外表面層として塗布する工程と、前記導電性基体上に塗布した前記塗布液の塗膜を、酸素濃度1000ppm以下、かつ、温度130℃以上の条件下で加熱する工程を含む。なお、機械的強度の観点から、加熱工程における酸素濃度は200ppm以下であることが望ましく、機械的強度と電気特性の観点から、加熱温度は130℃以上175℃以下であることがより望ましい。
上記条件下で加熱工程を行うことにより、機械的強度と電気特性に優れた電荷輸送層3Aが形成される。
【0167】
<プロセスカートリッジ及び画像形成装置>
次に、本実施形態の電子写真感光体を用いたプロセスカートリッジ及び画像形成装置について説明する。
本実施形態のプロセスカートリッジは、前述の本実施形態に係る電子写真感光体を少なくとも備え、該感光体の表面の静電潜像を現像して得られたトナー像を記録媒体に転写して、該記録媒体上に画像を形成する画像形成装置に対して着脱自在に構成されている。
【0168】
また、本実施形態の画像形成装置は、前述の本実施形態に係る電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電する帯電装置と、帯電した前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する潜像形成装置と、前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置と、前記電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写装置と、を備えた構成である。なお、本実施形態の画像形成装置は、各色のトナーに対応した感光体を複数有するいわゆるタンデム機であってもよく、この場合、全ての感光体が本実施形態の電子写真感光体であることが望ましい。また、トナー像の転写は、中間転写体を利用した中間転写方式であってもよい。
【0169】
図3は、本実施形態に係る画像形成装置(プロセスカートリッジ)の一例を示す概略構成図である。画像形成装置100は、図3に示すように、電子写真感光体7を備えるプロセスカートリッジ300と、露光装置9と、転写装置40と、中間転写体50とを備える。露光装置9はプロセスカートリッジ300の開口部から電子写真感光体7に露光し得る位置に配置されており、転写装置40は中間転写体50を介して電子写真感光体7に対向する位置に配置されており、中間転写体50はその一部が電子写真感光体7に接触して配置されている。
【0170】
図3におけるプロセスカートリッジ300は、ハウジング内に、電子写真感光体7、帯電装置8、現像装置11及びクリーニング装置13を一体に支持している。クリーニング装置13は、クリーニングブレード(クリーニング部材)を有しており、クリーニングブレード131は、電子写真感光体7の表面に接触するように配置されている。
【0171】
また、潤滑材14を感光体7の表面に供給する繊維状部材132(ロール状)、クリーニングを補助する繊維状部材133(平ブラシ状)を用いた例を示してあるが、これらは使用しても、使用しなくてもよい。
【0172】
帯電装置8としては、例えば、導電性又は半導電性の帯電ローラ、帯電ブラシ、帯電フィルム、帯電ゴムブレード、帯電チューブ等を用いた接触型帯電器が使用される。また、非接触方式のローラ帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器等のそれ自体公知の帯電器等も使用される。
【0173】
図示しないが、電子写真感光体7の周囲には、電子写真感光体7の温度を上昇させ、相対温度を低減させるための感光体加熱部材を設けてもよい。
【0174】
露光装置9としては、例えば、感光体7表面に、半導体レーザー光、LED光、液晶シャッタ光等の光を、定められた像様に露光する光学系機器等が挙げられる。光源の波長は感光体の分光感度領域にあるものが使用される。半導体レーザーの波長としては、780nm付近に発振波長を有する近赤外が主流である。しかし、この波長に限定されず、600nm台の発振波長レーザーや青色レーザーとして400nm以上450nm以下近傍に発振波長を有するレーザーも利用してもよい。また、カラー画像形成のためにはマルチビームを出力し得るタイプの面発光型のレーザー光源も有効である。
【0175】
現像装置11としては、例えば、磁性若しくは非磁性の一成分系現像剤又は二成分系現像剤等を接触又は非接触させて現像する一般的な現像装置を用いて行ってもよい。その現像装置としては、上述の機能を有している限り特に制限はなく、目的に応じて選択される。例えば、上記一成分系現像剤又は二成分系現像剤をブラシ、ローラ等を用いて感光体7に付着させる機能を有する公知の現像器等が挙げられる。中でも現像剤を表面に保持した現像ローラを用いるものが望ましい。
【0176】
以下、現像装置11に使用されるトナーについて説明する。
本実施形態の画像形成装置に用いられるトナーは、平均形状係数((ML/A)×(π/4)×100、ここでMLは粒子の最大長を表し、Aは粒子の投影面積を表す)が100以上150以下であることが望ましく、105以上145以下であることがより望ましく、110以上140以下であることがさらに望ましい。さらに、トナーとしては、体積平均粒子径が3μm以上12μm以下であることが望ましく、3.5μm以上9μm以下であることがさらに望ましい。
【0177】
トナーは、特に製造方法により限定されるものではないが、例えば、結着樹脂、着色剤及び離型剤、その他更に帯電制御剤等を加えて混練、粉砕、分級する混練粉砕法;混練粉砕法にて得られた粒子を機械的衝撃力又は熱エネルギーにて形状を変化させる方法;結着樹脂の重合性単量体を乳化重合させ、形成された分散液と、着色剤及び離型剤、その他更に帯電制御剤等の分散液とを混合し、凝集、加熱融着させ、トナー粒子を得る乳化重合凝集法;結着樹脂を得るための重合性単量体と、着色剤及び離型剤、その他更に帯電制御剤等の溶液を水系溶媒に懸濁させて重合する懸濁重合法;結着樹脂と、着色剤及び離型剤、その他更に帯電制御剤等の溶液とを水系溶媒に懸濁させて造粒する溶解懸濁法等により製造されるトナーが使用される。
【0178】
また上記方法で得られたトナーをコアにして、さらに凝集粒子を付着、加熱融合してコアシェル構造をもたせる製造方法等、公知の方法が使用される。なお、トナーの製造方法としては、形状制御、粒度分布制御の観点から水系溶媒にて製造する懸濁重合法、乳化重合凝集法、溶解懸濁法が望ましく、乳化重合凝集法が特に望ましい。
【0179】
トナー母粒子は、結着樹脂、着色剤及び離型剤を含有することが望ましく、更にシリカや帯電制御剤を含有してもよい。
【0180】
トナー母粒子に使用される結着樹脂としては、スチレン、クロロスチレン等のスチレン類、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン等のモノオレフィン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類等の単独重合体及び共重合体、ジカルボン酸類とジオール類との共重合によるポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0181】
特に代表的な結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル樹脂等が挙げられる。さらに、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、変性ロジン、パラフィンワックス等が挙げられる。
【0182】
また、着色剤としては、マグネタイト、フェライト等の磁性粉、カーボンブラック、アニリンブルー、カルイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3等を代表的なものとして例示される。
【0183】
離型剤としては、低分子ポリエチレン、低分子ポリプロピレン、フィッシャートロピィシュワックス、モンタンワックス、カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等を代表的なものとして例示される。
【0184】
また、帯電制御剤としては、公知のものが使用されるが、アゾ系金属錯化合物、サリチル酸の金属錯化合物、極性基を含有するレジンタイプの帯電制御剤が用いられる。湿式製法でトナーを製造する場合、水に溶解しにくい素材を使用することが望ましい。また、トナーとしては、磁性材料を内包する磁性トナー及び磁性材料を含有しない非磁性トナーのいずれであってもよい。
【0185】
現像装置11に用いるトナーとしては、上記トナー母粒子及び上記外添剤をヘンシェルミキサー又はVブレンダー等で混合することによって製造される。また、トナー母粒子を湿式にて製造する場合は、湿式にて外添してもよい。
【0186】
現像装置11に用いるトナーには滑性粒子を添加してもよい。滑性粒子としては、グラファイト、二硫化モリブデン、滑石、脂肪酸、脂肪酸金属塩等の固体潤滑剤や、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類、加熱により軟化点を有するシリコーン類、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等の脂肪族アミド類やカルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等の植物系ワックス、ミツロウの動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の鉱物、石油系ワックス、及びそれらの変性物が使用される。これらは、1種を単独で、又は2種以上を併用して使用される。但し、平均粒径としては0.1μm以上10μm以下の範囲が望ましく、上記化学構造のものを粉砕して、粒径をそろえてもよい。トナーへの添加量は望ましくは0.05質量%以上2.0質量%以下、より望ましくは0.1質量%以上1.5質量%以下の範囲である。
【0187】
現像装置11に用いるトナーには、無機粒子、有機粒子、該有機粒子に無機粒子を付着させた複合粒子等を加えてもよい。
【0188】
無機粒子としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、チタン酸バリウム、チタン酸アルミニウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化クロム、酸化セリウム、酸化アンチモン、酸化タングステン、酸化スズ、酸化テルル、酸化マンガン、酸化ホウ素、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の各種無機酸化物、窒化物、ホウ化物等が好適に使用される。
【0189】
また、上記無機粒子を、テトラブチルチタネート、テトラオクチルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルフォニルチタネート、ビス(ジオクチルパイロフォスフェート)オキシアセテートチタネート等のチタンカップリング剤、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、ヘキサメチルジシラザン、メチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトエリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、o−メチルフェニルトリメトキシシラン、p−メチルフェニルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤等で処理を行ってもよい。また、シリコーンオイル、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸金属塩によって疎水化処理したものも望ましく使用される。
【0190】
有機粒子としては、スチレン樹脂粒子、スチレンアクリル樹脂粒子、ポリエステル樹脂粒子、ウレタン樹脂粒子等が挙げられる。
【0191】
粒子径としては、個数平均粒子径で望ましくは5nm以上1000nm以下、より望ましくは5nm以上800nm以下、さらに望ましくは5nm以上700nm以下でのものが使用される。また、上述した粒子と滑性粒子との添加量の和が0.6質量%以上であることが望ましい。
【0192】
トナーに添加されるその他の無機酸化物としては、1次粒径が40nm以下の小径無機酸化物を用い、更にそれより大径の無機酸化物を添加することが望ましい。これらの無機酸化物粒子は公知のものが使用されるが、シリカと酸化チタンを併用することが望ましい。
【0193】
また、小径無機粒子については表面処理してもよい。さらに、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩や、ハイドロタルサイト等の無機鉱物を添加することも望ましい。
【0194】
また、電子写真用カラートナーはキャリアと混合して使用されるが、キャリアとしては、鉄粉、ガラスビーズ、フェライト粉、ニッケル粉又はそれ等の表面に樹脂を被覆したものが使用される。また、キャリアとの混合割合は、必要に応じて設定される。
【0195】
転写装置40としては、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等のそれ自体公知の転写帯電器が挙げられる。
【0196】
中間転写体50としては、半導電性を付与したポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ゴム等のベルト状のもの(中間転写ベルト)が使用される。また、中間転写体50の形態としては、ベルト状以外にドラム状のものが用いられる。
【0197】
画像形成装置100は、上述した各装置の他に、例えば、感光体7に対して光除電を行う光除電装置を備えていてもよい。
【0198】
図4は、他の実施形態に係る画像形成装置の構成例を示す概略図である。画像形成装置120は、図4に示すように、プロセスカートリッジ300を4つ搭載したタンデム方式の多色画像形成装置である。画像形成装置120では、中間転写体50上に4つのプロセスカートリッジ300がそれぞれ並列に配置されており、1色に付き1つの電子写真感光体が使用される構成となっている。なお、画像形成装置120は、タンデム方式であること以外は、画像形成装置100と同様の構成を有している。
【0199】
タンデム型の画像形成装置に本実施形態の電子写真感光体を用いた場合、4本の感光体の電気特性が安定することから、より長期に渡ってカラーバランスの優れた画質が得られる。
【0200】
また、本実施形態に係る画像形成装置及びプロセスカートリッジにおいて、現像装置は、電子写真感光体の移動方向(回転方向)に対して逆方向に移動(回転)する現像剤保持体である現像ローラを有してもよい。ここで、現像ローラは表面に現像剤を保持する円筒状の現像スリーブを有しており、また、現像装置はこの現像スリーブに供給する現像剤の量を規制する規制部材を有する構成のものが挙げられる。現像装置の現像ローラを電子写真感光体の回転方向に対して逆方向に移動(回転)させることで、現像ローラと電子写真感光体との間に留まるトナーで電子写真感光体表面が摺擦される。
【0201】
本実施形態の画像形成装置においては、現像スリーブと感光体との間隔を200μm以上600μm以下とすることが望ましく、300μm以上500μm以下がより望ましい。また、現像スリーブと上述の現像剤量を規制する規制部材である規制ブレードとの間隔を300μm以上1000μm以下とすることが望ましく、400μm以上750μm以下とすることがより望ましい。
【0202】
更に、現像ロール表面の移動速度の絶対値を、感光体表面の移動速度の絶対値(プロセススピード)の1.5倍以上2.5倍以下とすることが望ましく、1.7倍以上2.0倍以下とすることがより望ましい。
【0203】
また、本実施形態に係る画像形成装置(プロセスカートリッジ)において、現像装置(現像手段)は、磁性体を有する現像剤保持体を備え、磁性キャリア及びトナーを含む2成分系現像剤で静電潜像を現像するものであることが望ましい。
【0204】
以上のように、本実施形態によれば、上記電子写真感光体を備えることで、繰り返し使用によっても環境依存なく安定した画像が得られる。また、更に、本実施形態に係る電子写真感光体は、機械的強度にも優れ、電気特性が長期に渡って安定して得られるという効果も有している。
【実施例】
【0205】
以下実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが,本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、以下において「部」は、特に断りのない限り質量基準である。
【0206】
(合成例1:化合物I−14の合成)
【化54】

【0207】
1000mlフラスコに、上記化合物(1)を100g、メタクリル酸107g、トルエン300ml、p−トルエンスルホン酸2gを加え、10時間加熱還流した。反応後、冷却し、水2000mlにあけ、洗浄を行い、さらに水で洗浄を行った。トルエン層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、シリカゲルカラムクロマトにより精製して、上記化合物(I−14)を35g得た。得られた化合物(I−14)のIRスペクトルを図6に示す。
【0208】
(合成例2:共重合体の合成)
【化55】

【0209】
500mlフラスコに、上記化合物(I−14)20g、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート5g、トルエン150g、重合開始剤(V601)0.5gを加え、フラスコ内を窒素置換した後、90℃で3時間加熱還流した。冷却し、室温まで戻した後、テトラヒドロフラン25mlを加えた。この液をメタノール1000ml中に滴下し、固形分を得た。更に再沈殿を2回繰り返し、上記化合物(2)を20g得た。
【0210】
<実施例1>
(下引層の形成)
酸化亜鉛:(平均粒子径70nm:テイカ社製:比表面積値15m/g)100部をトルエン500部と攪拌混合し、シランカップリング剤(KBM503:信越化学社製)1.3部を添加し、2時間攪拌した。その後トルエンを減圧蒸留にて留去し、120℃で3時間焼き付けを行い、シランカップリング剤で表面処理した酸化亜鉛を得た。
【0211】
前記シランカップリング剤表面処理酸化亜鉛110部を500部のテトラヒドロフランと攪拌混合し、アリザリン0.6部を50部のテトラヒドロフランに溶解させた溶液を添加し、50℃にて5時間攪拌した。その後、減圧ろ過にてアリザリンを付与させた酸化亜鉛をろ別し、さらに60℃で減圧乾燥することでアリザリン付与酸化亜鉛を得た。
【0212】
このアリザリン付与酸化亜鉛60部と、硬化剤(ブロック化イソシアネート、スミジュール3175、住友バイエルンウレタン社製)13.5部と、ブチラール樹脂(エスレックBM−1、積水化学社製)15部と、をメチルエチルケトン85部に溶解した溶液38部と、メチルエチルケトン25部と、を混合し、直径1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて2時間分散した。
【0213】
得られた分散液に触媒としてジオクチルスズジラウレート0.005部、シリコーン樹脂粒子(トスパール145、GE東芝シリコーン社製)40部を添加し、下引層形成用塗布液を得た。この下引層形成用塗布液を浸漬塗布法にて直径30mm、長さ340mm、肉厚1mmのアルミニウム基材上に塗布し、170℃、40分の乾燥硬化を行い厚さ18μmの下引層を得た。
【0214】
(電荷発生層2の形成)
電荷発生物質としてのCukα特性X線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.3゜,16.0゜,24.9゜,28.0゜の位置に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン15部、結着樹脂としての塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂(VMCH、日本ユニカー社製)10部、n−酢酸ブチル200部からなる混合物を、直径1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間分散した。得られた分散液にn−酢酸ブチル175部、メチルエチルケトン180部を添加し、攪拌して電荷発生層形成用塗布液を得た。この電荷発生層形成用塗布液を下引層上に浸漬塗布し、常温(23℃)で乾燥して、膜厚が0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0215】
(電荷輸送層3Bの形成)
N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’]ビフェニル−4,4’−ジアミン 3.5質量部、N,N’−ビス(3,4−ジメチルフェニル)−ビフェニル−4−アミン 1.5質量部、ビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量:約4万)5.0質量部をクロルベンゼン 40質量部に加えて溶解し、塗布液を調液した。この塗布液を電荷発生層上に浸漬塗布法により塗布し、130℃で45分間乾燥させた。電荷輸送層3Bの膜厚は約20μmであった。
【0216】
(電荷輸送層3Aの形成)
上記合成例により合成した化合物(2) 16質量部、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート 4質量部、重合開始剤(OT−azo15(大塚化学社製))0.08質量部、シクロペンタノン30質量部、シクロペンチルメチルエーテル40質量部、トルエン30質量部、並びに3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT)1質量部、フッ素含有アクリルポリマー(KL−600:共栄社化学社製)0.5質量部を加えて塗布液を調製した。この塗布液を電荷輸送層3Bの上に浸漬塗布法により塗布し、室温で5分間風乾した。
次いで、この感光体を窒素雰囲気下にて160℃で60分加熱して、重合させ、所望の感光体を得た。電荷輸送層3Aの膜厚は5μmであった。
【0217】
<実施例2乃至4,7,8,11乃至16及び比較例1,2>
感光体の構成材料及び配合量をそれぞれ表1から表4に示すように変更した以外は実施例1と同様にして感光体を作製した。
【0218】
<実施例5>
実施例1と同様にして下引層1及び電荷発生層2を形成した。
【0219】
(電荷輸送層(最外表面層)3Aの形成)
上記合成例により合成した化合物(2) 32質量部、表5に示す反応性モノマー(b) 8質量部、重合開始剤(OT−azo15(大塚化学社製))0.08質量部、テトラヒドロフラン30質量部、トルエン30質量部、並びに3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT)1質量部、フッ素含有アクリルポリマー(KL−600:共栄社化学社製)0.5質量部を加えて塗布液を調製した。この塗布液を電荷発生層2の上に浸漬塗布法により塗布し、室温で5分間風乾した。
【0220】
次いで、この感光体を窒素雰囲気下にて160℃で60分間加熱して、重合させ、所望の感光体を得た。得られた感光体における電荷輸送層の膜厚は40μmであった。
【0221】
<実施例6,9,10及び比較例3,4>
感光体の構成材料及び配合量をそれぞれ表2、3、4、6に示すように変更した以外は実施例5と同様にして感光体を作製した。
【0222】
実施例及び比較例において最外表面層の形成に用いたモノマー、溶解度パラメータ(SP値)等を下記表1から表6に記す。
【0223】
【表1】

【0224】
【表2】

【0225】
【表3】

【0226】
【表4】

【0227】
【表5】

【0228】
【表6】

【0229】
(感光体評価方法)
−感光体を用いた印字評価−
上記実施例及び比較例にて作製した電子写真感光体を、DocuCentre Color 400CP(富士ゼロックス社製)に装着して印字評価を実施した。
【0230】
まず、低温低湿(20℃、25%RH)において図5に示す画像評価パターンを出力し、評価画像1とした。引き続き、連続して10000枚の黒ベタパターンを出力した後、画像評価パターンを出力し、評価画像2とした。低温低湿(20℃、25%RH)環境下のまま24時間放置した後、画像評価パターンを出力し、評価画像3とした。次いで、高湿(28℃、65%RH)環境下にて10000枚の黒ベタパターンを出力した後、画像評価パターンを出力し、評価画像4とした。高湿(28℃、65%RH)環境下のまま24時間放置した後、画像評価パターンを出力し、評価画像5とした。再度、低温低湿(20℃、25%RH)環境下に戻し、更に、30000枚の黒ベタパターンを出力し、画像評価パターンを出力し、評価画像6とした。
【0231】
<長期画像安定性>
長期画像安定性評価は、評価画像6を評価画像2と比較し、画質の劣化度合いを目視にて評価した。
A+:非常に良好
A :良好 (目視では変化は確認されないが、拡大画像では変化を確認)
B :画質劣化は確認されるが、許容レベル
C :画質劣化が生じており、問題となるレベル
【0232】
<像流れ及び白抜け評価>
像流れ及び白抜け評価は、評価画像3、及び5をそれぞれ評価画像2、及び4と比較し、画質上の劣化度合いを目視にて評価した。
A+:良好な状態
A :良好であるが、僅かに発生している状態
B :若干目立つ程度の状態
C :はっきり確認される状態
【0233】
<電気特性>
電気特性評価は低温低湿(10℃、15%RH)環境下、グリッド印加電圧 700Vのスコロトロン帯電器で感光体をマイナス帯電させ、次いで、帯電させた感光体に780nmの半導体レーザーを用いて、10mJ/mの光量にてフラッシュ露光をした。露光後、10秒後の感光体表面の電位(V)を測定し、この値を残留電位の値とした。
A++:−50V以上
A+:−100V以上−50V未満
A :−200V以上−100V未満
B :−300V以上−200V未満
C :−300V未満
【0234】
<機械的強度>
ランニング後の感光体表面のキズ発生度合いを目視にて判断した。
A+:画像6出力後に確認しても目視でキズが確認されない。
A :画像4出力時にはキズは確認されないが、画像6出力後ではキズが確認
B :画像4出力時に全面キズ発生
C :画像2出力時に全面にキズ発生。
【0235】
このようにして得られた結果を表7にまとめた。
【0236】
【表7】



【符号の説明】
【0237】
1…下引層、2…電荷発生層、3A…電荷輸送層(最外表面層)、3B…電荷輸送層、4…基体、7…電子写真感光体、8…帯電装置、9…露光装置、11…現像装置、13…クリーニング装置、14…潤滑剤、40…転写装置、50…中間転写体、100,120…画像形成装置、131…クリーニングブレード、132,133…繊維状部材、300…プロセスカートリッジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基体と、
電荷輸送能を有する反応性モノマーと電荷輸送能を有さない反応性モノマーとの共重合体(a)、及び、前記共重合体(a)の構成単位となる前記電荷輸送能を有さない反応性モノマーの溶解度パラメータ(SP値)との差が2(cal/cm1/2 以下である溶解度パラメータ(SP値)を有する反応性モノマー(b)を前記共重合体(a)の存在下で重合させた重合体を含み、前記導電性基体上に最外表面層として配置されている感光層と、
を備えた電子写真感光体。
【請求項2】
前記共重合体(a)が、前記電荷輸送能を有する反応性モノマーに由来する下記一般式(1)で表される構成単位と、前記電荷輸送能を有さない反応性モノマーに由来する下記一般式(2)で表される構成単位とを含む請求項1に記載の電子写真感光体。
【化1】


〔式(1)及び(2)において、Rは電荷輸送能を有さない有機基を表し、R及びRはそれぞれ独立して水素又は炭素数が1以上4以下のアルキル基を表し、Xは炭素数が1以上10以下である2価の有機基を表し、aは0又は1を示し、CTは電荷輸送性骨格を持つ有機基を示す。〕
【請求項3】
前記共重合体(a)を構成する電荷輸送能を有さない反応性モノマーと前記反応性モノマー(b)が同じ構造である請求項1又は請求項2に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
前記共重合体(a)を構成する電荷輸送能を有さない反応性モノマーと前記反応性モノマー(b)が、ともにアルキレンオキサイド基を有する請求項1又は請求項2に記載の電子写真感光体。
【請求項5】
前記共重合体(a)を構成する電荷輸送能を有さない反応性モノマーと前記反応性モノマー(b)が、ともにビスフェノール骨格を有する請求項1又は請求項2に記載の電子写真感光体。
【請求項6】
前記共重合体(a)を構成する電荷輸送能を有さない反応性モノマーと前記反応性モノマー(b)が、ともに炭素数6以上のアルキル基を有する請求項1又は請求項2に記載の電子写真感光体。
【請求項7】
前記共重合体(a)を構成する電荷輸送性能を有する反応性モノマーが、下記一般式(A)で表される化合物である請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
【化2】


[式(A)中、Ar乃至Arは、同一でも異なっていてもよくそれぞれ独立に、置換若しくは未置換のアリール基を示し、Arは置換若しくは未置換のアリール基又は置換若しくは未置換のアリーレン基を示し、Dは反応性基を含む側鎖を示し、c1乃至c5は、それぞれ独立に0以上2以下の整数を示し、kは0または1を示し、Dの総数は1以上6以下である。〕
【請求項8】
前記反応性モノマー(b)が連鎖重合性基を2個以上有する請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
【請求項9】
前記反応性モノマー(b)が、下記一般式(A)で表される化合物である請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
【化3】


[式(A)中、Ar乃至Arは、同一でも異なっていてもよくそれぞれ独立に、置換若しくは未置換のアリール基を示し、Arは置換若しくは未置換のアリール基又は置換若しくは未置換のアリーレン基を示し、Dは反応性基を含む側鎖を示し、c1乃至c5は、それぞれ独立に0以上2以下の整数を示し、kは0または1を示し、Dの総数は1以上6以下である。〕
【請求項10】
前記共重合体(a)を構成する電荷輸送能を有さない反応性モノマーが2個以上のアクリレート基又はメタクリレート基を有し、前記共重合体(a)中における前記電荷輸送能を有さない反応性モノマーに由来する構成単位の比率が10質量%以下である請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
【請求項11】
前記最外表面層である感光層がフッ素系粒子を含む請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
【請求項12】
請求項1〜請求項11のいずれか一項に記載の電子写真感光体の最外表面層となる感光層を形成するための塗布液であって、電荷輸送能を有する反応性モノマーと電荷輸送能を有さない反応性モノマーとの共重合体(a)、及び、前記共重合体(a)の構成単位となる前記電荷輸送能を有さない反応性モノマーの溶解度パラメータ(SP値)との差が2(cal/cm1/2 以下である溶解度パラメータ(SP値)を有する反応性モノマー(b)を含む塗布液を導電性基体上に最外表面層として塗布する工程と、
前記導電性基体上に塗布した前記塗布液の塗膜を、酸素濃度1000ppm以下、かつ、温度130℃以上の条件下で加熱する工程を含む、
電子写真感光体の製造方法。
【請求項13】
前記塗布液が重合開始剤を含む請求項12に記載の電子写真感光体の製造方法。
【請求項14】
前記重合開始剤が熱重合開始剤である請求項13に記載の電子写真感光体の製造方法。
【請求項15】
前記熱重合開始剤の分子量が250以上である請求項14に記載の電子写真感光体の製造方法。
【請求項16】
請求項1〜請求項11のいずれか一項に記載の電子写真感光体を少なくとも備え、
画像形成装置に着脱自在であるプロセスカートリッジ。
【請求項17】
請求項1〜請求項11のいずれか一項に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体を帯電する帯電装置と、
帯電した前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する潜像形成装置と、
前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置と、
前記電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写装置と、
を備えた画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−8505(P2012−8505A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−146982(P2010−146982)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】