説明

電子写真用感光体の劣化加速試験方法と劣化加速試験装置

【課題】電子写真用感光体の寿命を短時間で判断することができる劣化加速試験方法とその評価に用いる劣化加速試験装置を提供する。
【解決手段】筐体が絶縁性部材から形成され、少なくとも感光体に対面する前面側に開口部を有し、背面側には前記露光装置からの照射光を透過する透明絶縁性部材で形成された露光部を備えると共に、筐体内に感光体面と平行しかつ同一方向のみに張架された複数の放電ワイヤが配設された構成の帯電器と、露光装置とを備えた劣化加速試験装置とし、この装置を用いて、実際のプリンターにおける通過電荷量と同じ量の通過電荷を電子写真用感光体に付与し寿命枚数での特性値を短時間で予測する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザープリンタ、複写機等の画像形成装置に使用される電子写真用感光体の劣化加速試験方法および劣化加速試験を実施する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、感光体の使用寿命を迅速に決定するシステムが求められている。このような要請に応えるため、例えば、(1)導電性層と少なくとも1つの光導電性層を含み、既知数の像形成サイクルのサイクル寿命を有する第1の電子写真像形成部材を用意し、(2)
電圧を適用して光導電性層を横切る電場を形成し、(3)その電圧の適用を終了し、(4)光導電性層を活性化放射に露光して電子写真像形成部材を放電し、(5)電圧提供終了時と光導電性層を露光する前の所定時間との間、または電圧提供終了時と光導電性層を露光する時との間に、暗減衰を測定し、(6)光導電性層の測定した暗減衰を記録し、(7)上記の適用、終了、露光、測定および記録の工程を暗減衰量が実質的に一定のままの最高値に達するまで繰り返し、(8)既知数の像形成サイクルと異なるサイクル寿命を有する第2の電子写真像形成部材で前述の工程を繰り返して、上記第1と第2の電子写真像形成部材の暗減衰対像形成サイクルから参照データを確立し、(9)新鮮な電子写真像形成部材の暗減衰最高値と上記参照データを比較して新鮮な電子写真像形成部材の推定サイクル寿命を確認する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかしながら、上記寿命評価方法の場合、電子写真像形成部材サンプルに透明ガラスを圧着させてバイアス印加し、光を照射しているため、電子写真プロセスにおけるコロナ帯電、ローラ帯電による帯電条件とは異なり、実機条件を反映した劣化加速試験法とは云えない。また、寿命に到ったサンプルの暗減衰特性が予め既知でなければならず、このためには少なくとも一度は感光体を実機に搭載して長時間の通紙試験を行い像形成サイクルのサイクル寿命を評価しておくことが必要である。このため、多大な手間と時間を要するという問題があった。
【0004】
その他の従来技術として、通紙試験を行わないで寿命を予測する方法がある。すなわち、この方法は、高速、例えば1,000〜2,000r.p.mで回転させた状態の電子写真用感光体(以下、感光体と略す)に対して、感光体の周囲に配置された帯電器、露光装置により帯電、露光を繰り返して寿命を予測するものである。この方法は、さらに二つの試験方法に分けることができる。
【0005】
一方の方法は、帯電器の出力と露光装置の光量を予め設定された条件に固定し、決められた時間だけ試験を行った後に感光体の特性を測定し、劣化状態を判定するものである。他の方法は、試験中の感光体露光後における電位Vと感光体を通して流れる通過電流Iを計測し、この2つが常に決められたレベルにあるように帯電器の出力と露光装置の光量を調整して試験を行い、感光体の特性を測定して劣化状態を判定するものである。
【0006】
上記いずれの方法においても重要な点は、試験中に感光体に流れた通過電流を計測することにより、この通過電流から電荷量(単位面積当りの値)Qが求められ、一方、A4サイズ用紙1枚を実機でプリントアウトする際に感光体を流れる通過電流は、感光体の静電容量をC(単位面積当りの値)、帯電電位VとするとC×Vで求められ、これらの値から総プリントアウト枚数は、Q/(C×V)となり、寿命試験時間を実機のプリント枚数に対応させることができる点にある。なお、感光体のサイズはA4紙1枚が感光体上をダブリなく印字されるサイズとする。
【0007】
もう1つ重要な点は上記試験が加速寿命試験になっていることである。
具体的に示すと、感光体に、例えば5μA/10cm2の試料通過電流を流し、20Hr試験すると(1日10時間の試験とすると2日間に相当)、(5/10)×10-6×20×60×60=0.036(C/cm2)の電荷が感光体を通過したことになる。なお、以下、「感光体を通過した電荷量」のことを、「通過電荷量」と呼ぶ。
そして、A4サイズ用紙縦送りで印字する場合を想定した場合、感光体の静電容量を100(pF/cm2)、帯電電位−700(V)、除電後も含めた露光後電位を0(V)とすると、100×10-12×700=7×10-8(C/cm2)がA4サイズ用紙1枚をプリントアウトする時の通過電荷量であるので、0.036/(7×10-8)≒514,000(枚)のプリントアウトをしたことになり、加速試験を行ったことに相当する。
【0008】
上記理由から、電位Vと感光体を通して流れる通過電流Iが常に決められたレベルにあるように調整する後者の方法により寿命試験が行われることが多い。この場合、前述の具体的な計算で分かるように、試験中に感光体を通過する電流が一定であれば、プリントアウト何枚相当の試験を行ったのか計算がしやすい。そのため、試験は通過電流を一定にするようにして実施する方法が一般的に採られる。本質的には、通過電荷量を知ることが重要な点である。また、感光体によっては帯電電位がどのレベルにあるかによって寿命試験の結果が異なることがあり、帯電電位も一定にして試験を行うことが要求される。このように、帯電電位および通過電流を一定にするため、帯電器の高圧電源出力調整、および露光装置の光量調整を行うシステムが必要となり、これに対応できるように従来の寿命試験装置は構築されている。
【0009】
上記従来の劣化加速試験として、図1の概略構成図に示すような感光体試料片の特性評価装置、例えば、(株)川口電気製作所製EPA8200が知られている。
この特性評価装置には、図1に示すようにターンテーブル1と感光体試料片を装着する開口部3が設けられており、開口部3の面積は19.36cm2(開口部:44mm×44mm)である。さらに、ターンテーブル1に付属して導電性金属板からなる試料片押え板2が設けられている。この装置では、約1,100r.p.mで感光体の周囲に配置された帯電器4と露光装置5で帯電・露光を繰り返し、実機と同程度のスピードで回転させることができる。また、高速で回転させて試料片をコロナ帯電器4に何度も通過させることができるようになっている。また、コロナ帯電器4から与えられ試料片を充電するパルス電流は、所定の検出間隔で電流計6に送られ電流計6中の平滑化回路で平滑化等がされた後、A/D変換器8で変換されコントローラ9に送られて演算処理される。また、試料片の表面電位は、コロナ帯電器4と別の位置に配置された表面電位計7のモニタ部である表面電位計電極5でモニタされ、モニタされた信号は所定の検出間隔で表面電位計7に送られ、表面電位計7中の増幅器で増幅等がされた後、A/D変換器8で変換され、コントローラ9に送られ演算処理される。なお、図中の符号5は露光装置と表面電位計電極の両方を一緒に示している。
この装置を用いることにより劣化加速試験や感光体の帯電能、電荷保持性能、感度等の特性評価を行うことできるように構成されている。
【0010】
しかし、上記従来システムにおける、2つの測定量、すなわち表面電位Xおよび通過電流Yと、2つの操作量、すなわち帯電器高圧電源の出力制御値Aおよび除電露光ランプ光量の出力制御値Bとはお互いに関係しており、複雑な制御が必要である。
すなわち、例えば、Aを増加するとX、Yは増加し、Aを減少させるとX、Yも減少し、また、Bを増加するとXは減少、Yは増加し、Bを減少するとXは増加し、Yは減少するという関係がある。そのため、仮にXが目標値からはずれた場合に、このXを目標範囲に入れるべくAまたはBを操作すると、もう1つの測定量Yが変化してしまい、Yにとっては外乱が作用することになる。一方、Yを目標範囲に維持するべくAまたはBを操作すると今度はXが変化するという状態になってしまい、非常に複雑な制御を行わなければならなかった。また、劣化加速試験中に感光体表面電位、通過電流の瞬間的なバラツキがあった場合でも、それらが瞬間的な誤差として通過電荷量算出に反映されないシステムとなっており、正確な劣化加速試験を行う上で改善の余地があった。
【0011】
そこで、本発明者は上記問題を解決するために、計測手段によって電子写真感光体の通過電位を計測し、その計測結果に基づいて感光体の電位を一定条件に保つように制御し、試験中計測された通過電流から通過電荷量を算出するシステムとすることにより、単純で精度の良い感光体の劣化加速試験装置を提案した(例えば、特許文献2参照。)。
【0012】
この劣化加速試験装置により単純で精度良く劣化加速試験が実施できるようになったが、最近の感光体はさらに一段と高寿命化されてきており、上記提案の劣化加速試験装置においても、寿命を判断することができるまで試験を行うには多大な時間が必要となってきている。そこで、さらに劣化を加速し、短時間で寿命を判断することができる劣化加速試験方法の開発が要望されるようになった。
【0013】
【特許文献1】特許第3204327号明細書(特開平5−1973号公報)
【特許文献2】特開2002−149005号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであり、電子写真用感光体の寿命を短時間で判断することができる劣化加速試験方法とその評価に用いる劣化加速試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは鋭意検討した結果、高電圧が印加される複数の放電ワイヤを同一方向のみに張架させ、かつ筐体が絶縁性部材で構成された帯電器を用い、コロナ放電によって生ずる感光体に流れる電流量を増加させ、感光体の単位面積当りの通過電荷量を増加させることにより、電子写真用感光体の寿命を短時間で判断することができ、上記課題が解決されることを見出し本発明に至った。以下、本発明について具体的に説明する。
【0016】
すなわち、本発明は、帯電器を用いた帯電工程と露光装置を用いた露光工程とを含む試験サイクルを繰り返し実行して劣化を加速させる電子写真用感光体の劣化加速試験方法において、
前記試験サイクルは、前記帯電器の筐体が絶縁性部材から形成され、少なくとも感光体に対面する前面側に開口部を有し、背面側には前記露光装置からの照射光を透過する透明絶縁性部材で形成された露光部を備えると共に、筐体内に感光体面と平行しかつ同一方向のみに張架された複数の放電ワイヤが配設された帯電器を用いて実行されることを特徴とする電子写真用感光体の劣化加速試験方法である。
ここで、前記帯電工程と露光工程を同時に行うことが望ましい。
【0017】
上記電子写真用感光体の劣化加速試験方法において、前記帯電器の放電ワイヤ間隔を2mm以上とすることが好ましい。
【0018】
上記いずれかの電子写真用感光体の劣化加速試験方法において、前記感光体面と帯電器の放電ワイヤとの距離を2mm以上とすることが好ましい。
【0019】
また、本発明は、画像形成プロセスにおける通紙枚数に伴って画像形成装置の感光体に流れる通過電荷量と同じ量の電荷を劣化加速試験方法により短時間に流して通紙後における感光体の静電特性を評価する電子写真用感光体の静電特性評価方法であって、
前記劣化加速試験方法は上記した劣化加速試験方法であることを特徴とする電子写真用感光体の静電特性評価方法に係るものである。
【0020】
さらに、本発明は、少なくとも帯電器と露光装置とを備えた電子写真用感光体の劣化加速試験装置において、
前記帯電器は、筐体が絶縁性部材から形成され、少なくとも感光体に対面する前面側に開口部を有し、背面側には前記露光装置からの照射光を透過する透明絶縁性部材で形成された露光部を備えると共に、筐体内に感光体面と平行しかつ同一方向のみに張架された複数の放電ワイヤが配設された構造を有することを特徴とする電子写真用感光体の劣化加速試験装置に係るものである。
【0021】
さらに、本発明は、上記いずれかに記載の電子写真用感光体の劣化加速試験装置を用いたことを特徴とする電子写真用感光体の劣化加速試験方法に係るものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明の劣化加速試験装置および劣化加速試験方法によれば、コロナ放電により感光体に流れる電流量を増加し、単位面積あたりの通過電荷量を増加させることができるため、短時間で寿命を判断することが可能となる。また、操作が簡便で精度が高く、さらに非接触あるいは非破壊で誘電体薄膜の劣化試験等に応用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
前述のように本発明は、帯電器筐体が絶縁性部材から形成され、少なくとも感光体に対面する前面側に開口部を有し、背面側には前記露光装置からの照射光を透過する透明絶縁性部材で形成された露光部を備えると共に、筐体内に感光体面と平行しかつ同一方向のみに張架された複数の放電ワイヤが配設された帯電器を用いた帯電工程と露光装置を用いた露光工程とを含む試験サイクルを繰り返し実行して劣化を加速させ、短時間で電子写真用感光体の寿命を判断するものである。
以下、本発明の好適な実施の形態について図を参照して説明する。
【0024】
図2に、本発明における電子写真用感光体の劣化加速試験装置の概略構成図を示す。
図2において10は露光装置、11は帯電器、15は試験試料台、14は試験試料(ここでは感光体試料片)、12は試験試料押え、13は高圧電源を示す。なお図2には、被試験試料の表面を帯電処理するための帯電装置用電源回路の制御手段、あるいは被試験試料を光照射するための光源用電源回路の制御手段は示されてないが、これら手段は、従来公知のものをそのまま用いることができる。
【0025】
図3に帯電器の背面側(a)、側面側(b)、前面側(c)から見た概略模式図を示す。
帯電手段として用いられる帯電器11の筐体11aは、絶縁性部材から形成され、少なくとも感光体に対面する前面側に開口部を有し、背面側には前記露光装置からの照射光を透過する透明絶縁性部材で形成された露光部11bを備えた構成となっており、帯電器11の筐体11a内には、感光体面と平行しかつ同一方向のみに張架された複数の放電ワイヤ16が配設されている。なお、放電ワイヤーのテンションは、ワイヤ張架治具17によって、調整可能とされている。また、図4は帯電器を前面側から見た場合のワイヤ張架有効領域(A×B領域)を示す概略模式図である。
【0026】
上記のように本発明の劣化加速試験装置で使用する帯電器は、絶縁性部材で形成され、かつ帯電器の背面側、例えば中央部領域が背面から被試験試料の劣化領域に光を照射することが可能な光透過性の絶縁性部材で形成された露光部を備えている。光を透過しない部材では、帯電時に感光体面に光を照射することが難しくなり、帯電同時露光で試験中の感光体への電流量を増加することが困難となる。また、減光フィルター・バンドパスフィルター等を使用したい場合は、帯電器背面側に単純に配置すればよいが、帯電器の中央部領域が空洞、いわゆる感光体面に対して垂直方向が空洞となっている帯電器の場合には、保持治具を介してフィルターを感光体面に対して垂直に設置する必要がある。
【0027】
光を透過する絶縁性部材で形成された露光部の領域は、被試験試料である感光体の劣化領域より大きいことが望ましく、例えば帯電器全てが光を透過する絶縁性部材で構成されていても構わない。露光部の領域が被試験試料の劣化領域よりも小さい場合は、被試験試料に対して劣化が均一に行われない可能性が生じ、劣化領域での正確な単位面積あたりの通過電荷量が評価できなくなる。
本発明における帯電器筐体は絶縁性部材から形成されているが、絶縁性部材が原因による異常放電発生は無く、コロナ放電による感光体に流れる電流量を増加させることができる。従って、単位面積あたりの通過電荷量を増加させることができる。
【0028】
図2を参照しながら劣化加速試験の方法を説明する。
まず、試験試料14の感光体表面が上、すなわち帯電器11に対向するように試験試料台15に載せる。試験試料台15表面には、アースに接続された導電性の部材が取り付けられている。次に、試験試料14を試験試料台15に密着するように試験試料押え12で押える。図5は、試験試料14を試験試料押え12で押えて試験試料台15に装着した様子を模式的に示す上面図である。
劣化加速試験装置で使用する試験試料押え12は、絶縁性部材が望ましい。導電性部材では帯電時に試験試料押さえに放電され易くなることと、感光体の電荷が試験試料押え12に移動し易くなるため、試験試料への電流量を増加することが困難となる。
次いで、高圧電源13に接続された帯電器11でコロナ放電を行うと共に、所定の光量になるように設定された露光装置10によって感光体面に露光する。帯電工程と露光工程を同時に行う、いわゆる帯電同時露光によって劣化加速試験が可能となる。
【0029】
上記劣化加速試験において試験試料(感光体)に流れる電流値を変化させることにより、時間当りの通過電荷量を変えることができ、これによって劣化の加速度合いを制御することが可能になる。劣化加速試験を終了した後、帯電能や電荷保持性能、感光層中の蓄積電荷(残留電位)等の特性値を測定し、感光体の劣化状態等を評価することができる。あるいは、感光体の表面観察によって、感光体の劣化度合いを確認することもできる。
【0030】
上記評価において用いる劣化加速試験装置における帯電器の放電ワイヤ間隔は、2mm以上であることが好ましい。放電ワイヤ間隔が2mmよりも小さいと放電開始と同時に火花放電が発生し、感光体面に対して均一なコロナ放電を付与することができず、劣化加速試験を行うことができなくなる。
また、感光体面と帯電器の放電ワイヤとの距離が2mm以上であることが好ましい。感光体と放電ワイヤ間の距離が2mmよりも小さいと放電開始と同時に火花放電が発生し、感光体面に対して均一にコロナ放電がされず、劣化加速試験を行うことができなくなる。
【0031】
また本発明の劣化加速試験方法に用いれば、画像形成装置により通紙した後の電子写真用感光体の静電特性を短時間で評価することができる。
すなわち、画像形成プロセスにおける通紙枚数に伴って画像形成装置の感光体に流れる通過電荷量と同じ量の電荷を本発明の劣化加速試験装置を用いて短時間に流した後、感光体の静電特性を評価することで、実機による通紙後の静電特性を予測することができる。
【0032】
前記本発明の実施に用いる電子写真用感光体は、導電性支持体の上に電荷発生層、電荷輸送層が形成されたもの、あるいはさらに電荷輸送層の上に保護層が形成されたもの等が使用される。導電性支持体および電荷発生層、電荷輸送層としては、公知のものならば如何なるものでも使用することができる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により、何等限定されるものではない。
【0034】
(実施例1)
前記図3(a)、(b)、(c)に示したのと同じ構成の帯電器を用いて下記条件によりアルミニウム板にコロナ放電させ、単位面積当りの電流量を測定した。用いた実験装置の概略構成を図6に示す。評価結果を図7に示す。
<帯電器構成と試験条件>
ワイヤ張架有効領域:前記図4の概略模式図におけるA×B領域に相当;50mm×50mm。
放電ワイヤ:枠内に10mm間隔で同一方向のみに張架(材質:金メッキタングステンワイヤ、ワイヤ径:60μm)。
帯電器筐体:絶縁性部材(材質:テフロン(登録商標))。
筐体背面側に設けられた露光部:帯電器背面側中央領域(40mm×40mm)に光を透過する絶縁性部材(材質:石英ガラス)で形成。
放電ワイヤと試験試料(アルミニウム板)の距離:5mm。
アルミニウム板の放電対象領域:40mm×40mm。
【0035】
(比較例1)
図8の模式図に示すような構成の帯電器を用いてアルミニウム板にコロナ放電させ、単位面積当りの電流量を測定した。用いた実験装置の概略構成図を図9に示す。結果を実施例1と併せて図7に示す。
<帯電器構成と試験条件>
帯電器の開口部:46mm×30mm。
放電ワイヤ:枠内に10mm間隔で同一方向のみにワイヤが2本張架(材質:金メッキタングステンワイヤ、ワイヤ径:60μm)。
帯電器筐体:導電性部材(材質:ステンレス)。
放電ワイヤと試験試料(アルミニウム板)の距離:10mm。
アルミニウム板の放電対象領域:40mm×40mm。
【0036】
上記実施例1と比較例1の電流量測定結果、すなわち印加電圧に対する電流密度の関係から、複数のワイヤが同一方向のみに張架され、かつ筐体の材質が絶縁性部材とされた本発明の帯電器を用いることにより、同じ放電ワイヤ印加電圧であっても比較例に比べて試験試料面への単位面積当りの電流量が大きくなることが分る。
【0037】
(比較例2)
前記図3(a)、(b)、(c)に示したのと同じ構成の帯電器を用いて下記条件によりアルミニウム板にコロナ放電させ、単位面積当りの電流量を測定した。用いた実験装置は実施例1と同じく図6に示す構成である。結果を図10に示す。なお、比較のため実施例1の結果を併記した。
<帯電器構成と試験条件>
ワイヤ張架有効領域:前記図4の概略模式図におけるA×B領域に相当;50mm×50mm。
放電ワイヤ:枠内に10mm間隔で同一方向のみに張架(材質:金メッキタングステンワイヤ、ワイヤ径:60μm)。
帯電器筐体:導電性部材(材質:アルミニウム)
筐体背面側に設けられた露光部:帯電器背面側中央領域(40mm×40mm)に光を透過する絶縁性部材(材質:石英ガラス)で形成。
放電ワイヤと試験試料(アルミニウム板)の距離:5mm。
アルミニウム板の放電対象領域:40mm×40mm。
【0038】
図10に示した印加電圧に対する電流密度の関係から、帯電器筐体の材質を本発明における絶縁性部材とすることにより、同じワイヤ印加電圧であっても比較例の導電性部材の場合に比べて試験試料へ流れる電流量が増加することが分る。
【0039】
(実施例2〜4および比較例3)
放電ワイヤ間隔の水準を振ったほかは実施例1と同様に前記図3(a)、(b)、(c)に示した構成の帯電器を用い、実施例1と同じ帯電器構成と試験条件でアルミニウム板にコロナ放電させ、その際の放電開始電圧を測定した。なお、実験装置は実施例1と同様図6に示す装置を使用した。測定結果を下記表1に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
表1の結果から放電ワイヤ間隔が2mmよりも小さい場合、−7.3kVで火花放電が発生している。この結果から、放電ワイヤ間隔が2mm以上でなければ試験試料面に均一にコロナ放電がされず、正確な劣化加速試験を行うことができないことが分かる。
【0042】
(実施例5〜9および比較例4)
試験試料(アルミニウム板)と放電ワイヤとの距離の水準を振ったほかは実施例1と同様に前記図3(a)、(b)、(c)に示した構成の帯電器を用い、実施例1と同じ帯電器構成と試験条件でアルミニウム板にコロナ放電させ、その際の放電開始電圧を測定した。用いた実験装置は実施例1と同様の装置である。測定結果を下記表2に示す。
【0043】
【表2】

【0044】
表2の結果から、試験試料と放電ワイヤとの距離が2mmよりも小さい場合には火花放電が発生することが分る。この結果から、試験試料と放電ワイヤとの距離が2mm以上でなければ試験試料面に対して均一にコロナ放電がされず、正確な劣化加速試験を行うことができないことが分かる。
【0045】
(実施例10および比較参照実験(比較例5))
前記図2に示した構成の本発明の劣化加速試験装置を使用し、前記図3(a)、(b)、(c)に示したのと同じ構成の帯電器を用いて下記条件で劣化加速試験を実施すると共に、実機プリンター(リコーIPSIO Color6500)を用いて比較参照実験を実施した。
<劣化加速試験の条件>
ワイヤ張架有効領域:前記図4の概略模式図におけるA×B領域に相当;50mm×50mm。
放電ワイヤ:枠内に10mm間隔で同一方向のみに張架(材質:金メッキタングステンワイヤ、ワイヤ径:60μm)。
帯電器筐体:絶縁性部材(材質:テフロン(登録商標))。
筐体背面側に設けられた露光部:帯電器背面側中央領域(40mm×40mm)に光を透過する絶縁性部材(材質:石英ガラス)で形成。
放電ワイヤと試験試料(感光体)の距離:5mm。
試料の設置:試験試料台の上に感光体試料片を置き、試験試料押えによって、開口部のサイズが40mm×40mmとなるようにし、かつサンプル台に密着するようにした。試験試料押えは絶縁性部材(材質:テフロン(登録商標)、厚み:0.09mm)を使用した。
試験試料(感光体):感光体試料片は、リコーIPSIO Color6500用感光体と同じ材料、処方構成のものを使用し、劣化加速試験中の感光体試料面の通過電流を92.6μA(感光体の劣化面積:40mm×40mm)、照度を130luxに設定。
上記条件で劣化加速試験を実施した。
【0046】
<比較参照実験(比較例5)の条件>
プリンター:リコーIPSIO Color6500
感光体:リコーIPSIO Color6500用感光体。
感光体の径:φ168mm。
感光体の静電容量:110pF/cm2
プリンターの現像条件:帯電電位;700V、露光後電位;100V、紙間;A4横の1.5、通紙条件;A4横、QL;有り、原稿のべた密度;7%で通紙。
上記条件で実機プリンターにより実際に通紙して感光体を劣化させる試験を実施した。
【0047】
上記条件により実機プリンターによる通紙枚数125、000枚(125k枚)毎の通過電荷量と、その通過電荷量に到達するまでの試験時間、および相当する通過電荷量に到達するまでの劣化加速試験による試験時間を下記表3に示す。また、各試験時間における感光体の残留電位(所定の電位から十分露光させた後の電位)の測定結果を下記表4に示す。
【0048】
【表3】

【0049】
【表4】

【0050】
表3の結果から、試験に供される感光体の特性(径、静電容量)と、その感光体を使用するプリンターの現像条件(帯電電位、露光後電位、紙間、通紙条件、QL、原稿のべた密度)から算出される任意の通紙枚数における実機プリンターの通過電荷量と同じ量の通過電荷を本発明の劣化加速試験装置を用いて付与することにより、実機を用いて通紙試験するよりも大幅に時間を短縮できることが分る。
また、表4に示す結果から、通過電荷量が同じであれば劣化後の残留電位もほぼ同じであり、本発明の劣化加速試験装置を用いて感光体を劣化すれば、実際に通紙した任意の枚数における特性値の予測が可能であることが分る。すなわち、実際のプリンターにおける寿命枚数での特性値を短時間で予測することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】従来の感光体試料片の劣化加速試験に用いられている特性評価装置を説明するための概略構成図である。
【図2】本発明における電子写真用感光体の劣化加速試験装置を示す概略構成図である。
【図3】本発明における劣化加速試験装置に配備される帯電器の背面側(a)、側面側(b)、前面側(c)から見た概略模式図である。
【図4】本発明における帯電器を前面側から見た場合のワイヤ張架有効領域(A×B領域)を示す概略模式図である。
【図5】本発明の劣化加速試験において試験試料を試験試料台に装着する様子を模式的に示した上面図である。
【図6】実施例1〜9、比較例1〜4において用いた実験装置の概略構成図である。
【図7】実施例1および比較例1において測定された印加電圧と電流密度との関係を示すグラフである。
【図8】比較例1において用いた帯電器の模式図である。
【図9】比較例1において用いた実験装置の概略構成図である。
【図10】比較例2において測定された印加電圧と電流密度との関係を実施例1と比較したグラフである。
【符号の説明】
【0052】
1 ターンテーブル
2 試料片押え板
3 開口部
4 帯電器
5 露光装置、表面電位計電極部
6 電流計
7 表面電位計
8 A/D変換器
9 コントローラ
10 露光装置
11 帯電器
11a 筐体
11b 露光部
12 試験試料押え
13 高圧電源
14 試験試料
15 試験試料台
16 放電ワイヤ
17 ワイヤ張架治具


【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯電器を用いた帯電工程と露光装置を用いた露光工程とを含む試験サイクルを繰り返し実行して劣化を加速させる電子写真用感光体の劣化加速試験方法において、
前記試験サイクルは、前記帯電器の筐体が絶縁性部材から形成され、少なくとも感光体に対面する前面側に開口部を有し、背面側には前記露光装置からの照射光を透過する透明絶縁性部材で形成された露光部を備えると共に、筐体内に感光体面と平行しかつ同一方向のみに張架された複数の放電ワイヤが配設された帯電器を用いて実行されることを特徴とする電子写真用感光体の劣化加速試験方法。
【請求項2】
前記帯電工程と露光工程を同時に行うことを特徴とする請求項1に記載の電子写真用感光体の劣化加速試験方法。
【請求項3】
前記帯電器の放電ワイヤ間隔を2mm以上とすることを特徴とする請求項1に記載の電子写真用感光体の劣化加速試験方法。
【請求項4】
前記感光体面と帯電器の放電ワイヤとの距離を2mm以上とすることを特徴とする請求項1に記載の電子写真用感光体の劣化加速試験方法。
【請求項5】
画像形成プロセスにおける通紙枚数に伴って画像形成装置の感光体に流れる通過電荷量と同じ量の電荷を劣化加速試験方法により短時間に流して通紙後における感光体の静電特性を評価する電子写真用感光体の静電特性評価方法であって、
前記劣化加速試験方法は請求項1〜4のいずれかに記載の劣化加速試験方法であることを特徴とする電子写真用感光体の静電特性評価方法。
【請求項6】
少なくとも帯電器と露光装置とを備えた電子写真用感光体の劣化加速試験装置において、
前記帯電器は、筐体が絶縁性部材から形成され、少なくとも感光体に対面する前面側に開口部を有し、背面側には前記露光装置からの照射光を透過する透明絶縁性部材で形成された露光部を備えると共に、筐体内に感光体面と平行しかつ同一方向のみに張架された複数の放電ワイヤが配設された構造を有することを特徴とする電子写真用感光体の劣化加速試験装置。
【請求項7】
請求項6に記載の電子写真用感光体の劣化加速試験装置を用いたことを特徴とする電子写真用感光体の劣化加速試験方法。





【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate