説明

電子時計

【課題】デモ運針において指針の位置がずれた場合、利用者が指針の位置ずれを修正する際の操作負担を軽減すること。
【解決手段】外部からの操作に応じた操作信号に基づき第1の方向に回転する指針と、前記第1の方向と逆の第2の方向および前記第1の方向に前記指針を回転させるデモ運針において、予め決められている基準位置から前記第1の方向への回転角度が前記基準位置から前記第2の方向への回転角度よりも小さくなる位置に前記指針を位置させるように前記デモ運針を行う制御部とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指針を試験的に動かすデモ運針を行う電子時計に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、利用者がりゅうずを引き上げた状態で回転させることで、時計の指針を動かし、時刻の調整や指針の位置ずれを修正することのできる電子時計がある(例えば、特許文献1参照)。
この電子時計は、例えば、引き上げられた状態のりゅうずを押し込むことで、指針を修正するための修正状態から時計機能を発揮する通常状態に戻された場合、指針を一定量だけ回転させた後に元の位置まで逆回転させるデモ運針を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−196754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、デモ運針において、指針の回転量を制御する制御部に従って指針が回転しない場合、デモ運針後において指針が元の位置に戻らない場合がある。このように、指針が元の位置に戻らない場合、利用者が操作ボタンを押下して、位置のずれた指針を元の位置に戻さなければならない。ここで、操作ボタンとして指針を時計回り方向に正転運針させるものしかなく反時計回り方向に逆転運針させる操作ボタンがない場合、デモ運針において指針が1メモリ分だけ時計回り方向にずれてしまった場合、正転運針のみにより指針を元の位置に戻すことは、利用者の操作において多大な負担となる問題があった。
【0005】
例えば、図15Aおよび図15Bに示すように、指針に動力を与えるモータの回転軸として、円柱の半分がN極で他の半分がS極で構成される円柱形状の回転軸Mを電磁誘導により運針させる電子時計を例に、以下詳細に説明する。
デモ運針において逆転運針の後に正転運針をそれぞれ30運針(ここで1運針とは、1メモリ運針するように回転軸を回転させることをいう、以下同じ)させる場合、回転軸Mの停止状態(つまり、回転軸Mの極性と電磁誘導によって発生する極性との関係を示すモータ駆動極性)を予め認識していないと、逆転運針における最初の1運針目で、このモータ駆動極性が吸引状態となってしまう。このため、逆転運針によって29メモリだけ反時計回りに回転し、正転運針によって30メモリだけ時計回りに回転することによって、指針が元の位置に戻らない問題がある。
【0006】
より具体的に説明すると、図15Aおよび図15Bに示す通り、回転軸Mを回転自在に支持する回転軸支持部材KにコイルCが巻きつけられており、コイルCに電流が供給されると、回転軸支持部材Kに磁界が発生する。この回転軸支持部材Kに発生した磁界の極性と回転軸Mの極性が反発することで、回転軸Mが回転し、指針に動力を与える仕組みとなっている。
図15Aに示すように回転軸MのS極の磁石がL側、回転軸MのN極の磁石がR側にある状態で、Pの方向に流れる電流IをコイルCに供給すると、モータ駆動極性が反発極性となり、回転軸Mが回転する。
一方、図15Bに示すように回転軸MのN極の磁石がL側、回転軸MのS極の磁石がR側にある状態で、Pの方向に流れる電流IをコイルCに供給すると、モータ駆動極性が吸引極性となり、回転軸Mが回転しない。この場合、Qの方向に流れる電流IをコイルCに供給すると、モータ駆動極性が反発極性となり、回転軸Mが回転する。
【0007】
例えば電池交換後にデモ運針を行う場合、コイルCに電流Iを供給する制御部は、回転軸Mを構成する磁石の極性の状態を認識していない。このため、モータ駆動極性が吸引極性となり、1運針目においてモータの回転軸Mが回転せず、逆転運針により29メモリ分だけ反時計回りに回転し、正転運針により30メモリだけ時計回りに回転する。よって、デモ運針において指針が1メモリ分だけ時計回り方向にずれてしまう。
【0008】
よって、1周が60メモリである秒針を元の位置に戻す場合、ボタンを59回押下して秒針を元の位置に戻す必要がある。
また、この秒針に歯車の輪列で連結されている分針がある場合、秒針を時計回りに1周させることで、分針が1メモリ進んでしまう。このため、秒針と分針の両方の位置ずれを修正する場合、ボタンを3599回も押下しなければならない。
このため、デモ運針による指針の位置ずれを修正するために、利用者が行う操作負担が多大なものとなる問題があった。
【0009】
このような課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、デモ運針において指針の位置がずれた場合、利用者による指針の位置ずれを修正する際の操作負担を軽減するための電子時計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明の一実施形態に係る電子時計は、外部からの操作に応じた操作信号に基づき第1の方向に回転する指針と、前記第1の方向と逆の第2の方向および前記第1の方向に前記指針を回転させるデモ運針において、予め決められている基準位置から前記第1の方向への回転角度が前記基準位置から前記第2の方向への回転角度よりも小さくなる位置に前記指針を位置させるように前記デモ運針を行う制御部とを備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一実施形態に係る電子時計において、前記制御部は、前記デモ運針において、前記基準の位置から前記第2に方向に前記指針を回転させた後に、前記第1の方向に前記指針を回転させる回転角度を、前記第2の方向に前記指針を回転させる回転角度未満にすることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の一実施形態に係る電子時計において、前記制御部は、前記デモ運針において、前記基準の位置から前記第2に方向に前記指針を回転させた後に、前記第1の方向に前記指針を運針させる回数を、前記第2の方向に前記指針を運針させる回数未満にすることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の一実施形態に係る電子時計において、前記制御部は、前記デモ運針において、前記基準の位置から前記第1の方向に前記指針を回転させた後に、前記第2の方向に前記指針を回転させる回転角度を、前記第1の方向に前記指針を回転させる回転角度以上にすることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の一実施形態に係る電子時計において、前記制御部は、前記デモ運針において、前記基準の位置から前記第1の方向に前記指針を回転させた後に、前記第2の方向に前記指針を運針させる回数を、前記第1の方向に前記指針を運針させる回数以上にすることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の一実施形態に係る電子時計において、前記制御部は、前記指針を前記第1の方向に回転させる回数を、前記指針を前記第2の方向に回転させる回数よりも少なくすることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の一実施形態に係る電子時計において、前記制御部は、前記第1の方向への回転と前記第2の方向への回転を組み合わせることにより、前記指針の回転方向を2回以上逆転させるようなデモ運動を行うことを特徴とする。
【0017】
また、本発明の一実施形態に係る電子時計において、前記制御部は、前記デモ運針において、前記第1の方向に指針を回転させた回数である第1カウント回数と前記第2の方向に指針を回転させた回数である第2カウント回数をカウントし、前記第2カウント回数から前記第1カウント回数を減算した解が1以上である場合に、前記デモ運針を終了することを特徴とする。
【0018】
また、本発明の一実施形態に係る電子時計において、前記制御部は、前記デモ運針において、前記第1の操作信号と異なる第2の操作信号が外部から入力された場合に、前記指針の回転方向を逆転させることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の一実施形態に係る電子時計において、前記制御部は、前記デモ運針において、前記第1の操作信号と異なる第2の操作信号が入力されると、回転している状態の前記指針を停止させることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の一実施形態に係る電子時計において、前記制御部は、電池から電力の供給が遮断されている状態において電池から電力の供給が開始されたか否かを判断し当該電池から電力の供給が開始されたと判断した場合に、前記デモ運針を開始することを特徴とする。
【0021】
また、本発明の一実施形態に係る電子時計において、前記指針は、前記電子時計に搭載されたストップウォッチ機能が実行される際に、経過時間を計測する指針であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
デモ運針において指針の位置がずれた場合、利用者が指針の位置ずれを修正する際の操作負担を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電子時計の一例について示す概略図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る電子時計の機能の一例について説明するための図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る電子時計の制御系の一例を説明するためのブロック図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る電子時計のデモ運針の一例を示す図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る電子時計の自動デモ運針における動作フローの一例を説明するためのフローチャートである。
【図6】本発明の第1実施形態に係る電子時計のりゅうず0段処理における動作フローの一例を説明するためのフローチャートである。
【図7】本発明の第1実施形態に係る電子時計のりゅうず1段処理における動作フローの一例を説明するためのフローチャートである。
【図8】本発明の第2実施形態に係る電子時計の機能の一例について説明するための図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る電子時計の制御系の一例を説明するためのブロック図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係る電子時計の自動デモ運針における動作フローの一例を説明するためのフローチャートである。
【図11】本発明の第2実施形態に係る電子時計のりゅうず0段処理における動作フローの一例を説明するためのフローチャートである。
【図12】本発明の第2実施形態に係る電子時計のりゅうず1段処理における動作フローの一例を説明するためのフローチャートである。
【図13】本発明の第3実施形態に係る電子時計の制御系の一例を説明するためのブロック図である。
【図14】本発明の第3実施形態に係る電子時計の自動デモ運針における動作フローの一例を説明するためのフローチャートである。
【図15A】モータのモータ駆動極性について説明するための図である。
【図15B】モータのモータ駆動極性について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[第1実施形態]
以下、本発明による一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る電子時計10の一例について示す概略図である。
図1に示す通り、本実施形態に係る電子時計10は、中心軸C1を中心に回転可能に設けられる時針11、分針12および秒針13を備える。この電子時計10は、この中心軸C1と異なる中心軸C2を中心に回転可能に設けられるクロノグラフ1/10秒針14と、この中心軸C1と異なる中心軸C3を中心に回転可能に設けられるクロノグラフ秒針15と、この中心軸C1と異なる中心軸C4を中心に回転可能に設けられるクロノグラフ分針16とを備える。
この時針11、分針12および秒針13は、時刻を測る時計機能を実現する指針である。クロノグラフ1/10秒針14、クロノグラフ秒針15およびクロノグラフ分針16は、経過時間を計測するストップウォッチ機能を実現する指針である。
【0025】
この時針11、分針12および秒針13は、例えば歯車の輪列によってそれぞれ連結されており、同一のモータ(図3において符号29が付される)によって動力が与えられることでそれぞれが連動して回転する。つまり、当該モータによって60秒に相当する動力(言い換えると、秒針13が1秒を刻む1メモリを60メモリ分回転させる回転量)が秒針13に与えられた場合、秒針13は1周して元の場所に戻り、秒針13に従動する分針12が1分に相当する1メモリを進む。また、当該モータによって3600秒に相当する動力が秒針13に与えられた場合、秒針13は60周して元の場所に戻り、分針12は1周して元の場所に戻り、秒針13に従動する時針11が1時間に相当する5メモリを進む。
なお、このようにして、モータから与えられた動力により、秒針13の回転に伴って分針12および時針11が従動するように時針11、分針12および秒針13を回転させる構造体を“時刻針部”(図3において符号32が付される)と、以下呼称する。
【0026】
また、クロノグラフ1/10秒針14は、一のモータ(図3において符号30が付される)によって動力が与えられることによって回転する。1/10秒に相当する回転力が与えられるとクロノグラフ1/10秒針14は1メモリ進む。なお、指針が1メモリ進むことを、指針を1メモリ分回転させるともいう。また、指針が進むメモリ数を、以下回転数ともいう。クロノグラフ1/10秒針14は、10メモリ進むと1周して元の場所に戻る。
なお、このようにして、モータから与えられた動力により、クロノグラフ1/10秒針14を回転させる構造体を“クロノグラフ1/10秒針部”(図3において符号33が付される)と、以下呼称する。
【0027】
さらに、クロノグラフ秒針15とクロノグラフ分針16は、例えば歯車の輪列によってそれぞれ連結されており、同一のモータ(図3において符号31が付される)によって動力が与えられることでそれぞれが連動して回転する。つまり、当該モータによって60秒に相当する回転力がクロノグラフ秒針15に与えられた場合、クロノグラフ秒針15は60メモリ進んで1周し元の場所に戻り、クロノグラフ秒針15に従動するクロノグラフ分針16が1分に相当する1メモリ進む。
なお、このようにして、モータから与えられた動力により、クロノグラフ秒針15の回転に伴ってクロノグラフ分針16が従動するようにクロノグラフ秒針15およびクロノグラフ分針16を回転させる構造体を“クロノグラフ秒針部”(図3において符号34が付される)と、以下呼称する。
【0028】
この電子時計10は、ユーザによって操作可能な位置に、りゅうず17と、スイッチAと、スイッチBを備える。なお、図2を参照して、りゅうず17、スイッチAおよびスイッチBを介して与えられる操作に応じた機能についてもあわせて説明する。
このりゅうず17は、Fの方向に引き出すことができ、Fの方向に引き出された状態をりゅうず位置1段状態といい、Fの方向と逆方向に押し込まれた状態をりゅうず位置0段状態という。
【0029】
図2に示す通り、電子時計10は、りゅうず位置0段状態において、スイッチAがGの方向に押下されることで、クロノグラフ1/10秒針14、クロノグラフ秒針15およびクロノグラフ分針16によるストップウォッチ機能を開始させ(クロノスタート)、あるいは、停止させる(クロノストップ)。
例えば、電子時計10は、りゅうず位置0段状態であって、クロノグラフ1/10秒針14、クロノグラフ秒針15およびクロノグラフ分針16が停止している状態において、スイッチAがGの方向に押下された場合、クロノグラフ1/10秒針14、クロノグラフ秒針15およびクロノグラフ分針16の動作を開始させる。また、電子時計10は、りゅうず位置0段状態であって、クロノグラフ1/10秒針14、クロノグラフ秒針15およびクロノグラフ分針16が動作している状態において、スイッチAがGの方向に押下された場合、クロノグラフ1/10秒針14、クロノグラフ秒針15およびクロノグラフ分針16を停止させる。
【0030】
また、電子時計10は、りゅうず位置0段状態において、スイッチBがHの方向に押下されることで、クロノグラフ1/10秒針14、クロノグラフ秒針15およびクロノグラフ分針16の動作のリセット、すなわち、初期状態に復帰(帰零)させる。
この「動作のリセット」とは、クロノグラフ1/10秒針14、クロノグラフ秒針15およびクロノグラフ分針16を、予め決められている基準位置に強制的に復帰(帰零)させるとともに、クロノグラフ1/10秒針14、クロノグラフ秒針15およびクロノグラフ分針16の運針の停止および電気的な位置情報のリセットを行うことをいう。
このクロノグラフ1/10秒針14、クロノグラフ秒針15およびクロノグラフ分針16の基準位置とは、図示の通り、それぞれがメモリ「0」の位置にあることをいう。
【0031】
なお、電子時計10は、りゅうず位置0段状態において、スイッチAとスイッチBとが同時に押された場合、および、りゅうず17が回転された場合であっても、なんら機能を発揮しない。
【0032】
一方、電子時計10は、りゅうず位置1段状態において、スイッチAがGの方向に1回押下されることで、クロノグラフ1/10秒針14を1メモリだけ時計回りの方向に回転させる。つまり、電子時計10は、操作信号に基づき、クロノグラフ1/10秒針14を、時計回り方向に1回、回転させる。これにより、利用者がクロノグラフ1/10秒針14の位置ずれを修正することができる。
また、電子時計10は、りゅうず位置1段状態において、スイッチBがHの方向に1回押下されることで、クロノグラフ秒針15を1メモリだけ時計回りの方向に回転させる。つまり、電子時計10は、操作信号に基づき、クロノグラフ秒針15を、時計回り方向に1回、回転させる。これにより、利用者がクロノグラフ秒針15およびクロノグラフ分針16の位置ずれを修正することができる。つまり、クロノグラフ分針16がクロノグラフ秒針15に従動しているため、電子時計10は、りゅうず位置1段状態において、スイッチBがHの方向に60回押下されることで、クロノグラフ分針16を1メモリだけ時計回りの方向に回転させることができる。
【0033】
さらに、電子時計10は、りゅうず位置1段状態において、スイッチAとスイッチBの両方が同時に押下されることで、試験的にクロノグラフ1/10秒針14、クロノグラフ秒針15およびクロノグラフ分針16を動作させる手動デモ運針を行う。この手動デモ運針によって、利用者は、クロノグラフ秒針15およびクロノグラフ分針16が動くか否かを確認することができる。
また、電子時計10は、りゅうず位置1段状態において、ユーザによってりゅうず17が回されることにより、時針11、分針12および秒針13を時計回りあるいは反時計回りに回転させる。これにより、利用者が時刻を調整することができる。
【0034】
次に、図3を用いて、電子時計10の制御系を説明する。図3は、電子時計10の制御性を示すブロック図である。
図3に示す通り、電子時計10は、発振器21と、分周回路22と、制御部23と、時刻駆動タイミング発生部24と、クロノ駆動タイミング発生部25と、第1駆動回路26と、第2駆動回路27と、第3駆動回路28と、時刻表示モータ29と、クロノグラフ1/10秒表示モータ30と、クロノグラフ秒表示モータ31と、時刻針部32と、クロノ1/10秒針部33と、クロノ秒針部34と、制御ソフトウェア35と、記憶部36と、電池37と、デモ運針正転回数記憶部38と、デモ運針逆転回数記憶部39とを備える。
【0035】
発振器21は、一定の間隔で周期的に連続する基準クロック信号を出力する。
分周回路22は、発振器21から入力された基準クロック信号を分周して、制御部23に出力する。
制御部23は、分周回路22から入力された基準クロック信号を時刻駆動タイミング発生部24およびクロノ駆動タイミング発生部25に出力するとともに、時刻駆動タイミング発生部24およびクロノ駆動タイミング発生部25のそれぞれから入力される駆動タイミングに従って第1駆動回路26、第2駆動回路27および第3の駆動回路28を駆動させる。
また、制御部23は、制御ソフトウェア35に記憶されているプログラムを参照して、りゅうず17が押し込められている場合、りゅうず位置0段状態であることを検出し、りゅうず0段処理を実行する。また、りゅうず17が引き出されている場合、制御部23は、りゅうず位置1段状態であることを検出し、りゅうず1段処理を実行する。なお、このりゅうず0段処理は、時計機能を発揮する通常モードにおいて実行される処理であって、りゅうず1段処理は、指針を修正するための修正モードにおいて実行される処理である。
さらに、制御部23は、制御ソフトウェア35に記憶されているプログラムに従って動作し、予め決められたタイミングでデモ運針を行う。
【0036】
このデモ運針として、例えば電源が投入された直後に制御部23がデモ運針を行う自動デモ運針と、スイッチAやスイッチBから出力される操作信号に応じて制御部23がデモ運針を行う手動デモ運針とがある。
この自動デモ運針は、電源が投入された直後に、クロノグラフ1/10秒針14、クロノグラフ秒針15およびクロノグラフ分針16を動作させることで、交換された電池37から正常に電力が供給されていることや、クロノグラフ1/10秒針14、クロノグラフ秒針15およびクロノグラフ分針16が電力供給によって動作可能であることを、利用者に通知する機能を有する。
また、手動デモ運針は、制御部23によってモータ駆動極性が検出された後に、利用者によって、クロノグラフ1/10秒針14、クロノグラフ秒針15およびクロノグラフ分針16を試験的に動作させることのできる機能を有する。
この制御部23は、電池37から電力の供給が遮断されている状態において電池37から電力の供給が開始されたか否かを判断し、電池37から電力の供給が開始されたと判断した場合に、自動デモ運針を開始する。
【0037】
時刻駆動タイミング発生部24およびクロノ駆動タイミング発生部25は、入力する基準クロック信号をカウントするカウンタ240およびカウンタ250をそれぞれ備える。
時刻駆動タイミング発生部24は、入力される基準クロック信号を予め決められた数だけカウントすると駆動タイミング信号S1を出力する。カウンタ240は、時刻駆動タイミング発生部24が出力する駆動タイミング信号S1を出力した回数をカウントする。
一方、クロノ駆動タイミング発生部25は、入力される基準クロック信号を予め決められた数だけカウントすると駆動タイミング信号S2および駆動タイミング信号S3を出力する。カウンタ250は、時刻駆動タイミング発生部25が出力する駆動タイミング信号S2、S3を出力した回数をそれぞれカウントする。
これら時刻駆動タイミング発生部24あるいはクロノ駆動タイミング発生部25は、カウンタ240あるいはカウンタ250がカウントした駆動タイミング信号S1〜S3の回数に基づき、クロノグラフ1/10秒針14、クロノグラフ秒針15およびクロノグラフ分針16の現在位置を算出する。なお、カウンタ240あるいはカウンタ250がカウントした値は、時刻駆動タイミング発生部24およびクロノ駆動タイミング発生部25に内蔵されている記憶部にそれぞれ記憶される。
【0038】
この時刻駆動タイミング発生部24は、1秒に相当する長さを示す基準クロック信号の数がカウンタ240によってカウントされる度に、駆動タイミング信号S1を出力する。
また、クロノ駆動タイミング発生部25は、1/10秒に相当する長さを示す基準クロック信号の数がカウンタ250によってカウントされる度に、駆動タイミング信号S2を出力する。このクロノ駆動タイミング発生部25は、1秒に相当する長さを示す基準クロック信号の数がカウンタ250によってカウントされる度に、駆動タイミング信号S3を出力する。また、クロノ駆動タイミング発生部25は、例えば、1/10秒に相当する長さの10倍の長さを示す基準クロック信号をカウントすることで、駆動タイミング信号S3を出力するものであってもよい。
【0039】
第1駆動回路26は、制御部23を介して時刻駆動タイミング発生部24から駆動タイミング信号S1が入力されると、時刻表示モータ29を駆動させる。
第2駆動回路27は、制御部23を介してクロノ駆動タイミング発生部25から駆動タイミング信号S2が入力されると、クロノグラフ1/10秒表示モータ30を駆動させる。
第3駆動回路28は、制御部23を介してクロノ駆動タイミング発生部25から駆動タイミング信号S3が入力されると、クロノグラフ1秒表示モータ31を駆動させる。
これら第1〜3駆動回路26〜28は、それぞれに入力される前記各駆動タイミング信号により、それぞれの前記各モータを駆動する毎に、前回駆動時と反転極性となる駆動信号を出力するようコイルに電流を流す。
【0040】
時刻針部32は、時刻表示モータ29によって与えられる動力を時針11、分針12および秒針13に伝達する。
クロノ1/10秒針部33は、クロノグラフ1/10秒表示モータ30によって与えられる動力をクロノグラフ1/10秒針14に伝達する。
クロノ秒針部34は、クロノグラフ1秒表示モータ31によって与えられる動力をクロノグラフ秒針15およびクロノグラフ分針16に伝達する。
【0041】
制御ソフトウェア35は、制御部23の制御に基づくプログラム(制御ソフトウェアプログラムという)が記憶されている記憶領域である。この制御ソフトウェアプログラムには、例えば、電源が投入された直後に制御部23が自動デモ運針を行うことが予め決められている。具体的に説明すると、この制御ソフトウェアプログラムには、自動デモ運針において、デモ運針逆転回数記憶部39に記憶されているデモ運針逆転回数分、逆転運針を行った後に、デモ運針正転回数記憶部38に記憶されているデモ運針正転回数分、正転運針を行うことが予め決められている。なお、このデモ運針逆転回数およびデモ運針正転回数は、指針が進むメモリの数と等しい。
また、この制御ソフトウェアプログラムには、図2に示す通り、操作に応じた制御部23の制御を規定するプログラムが記憶されている。
【0042】
記憶部36は、制御部23による制御状態を一次的に記憶する。例えば、クロノグラフ1/10秒針14、クロノグラフ秒針15およびクロノグラフ分針16を用いたストップウォッチ機能が実行中(以下、クロノ作動中と記す)であるか否かを記憶する。
電池37は、制御部23を介して電子時計10の全体に電力を供給する。
【0043】
デモ運針正転回数記憶部38は、自動デモ運針の際に、制御部23によってクロノグラフ1/10秒針14、クロノグラフ秒針15およびクロノグラフ分針16を時計回りに回転させる回数(メモリ)であるデモ運針正転回数を記憶する。このデモ運針正転回数記憶部38は、クロノグラフ秒針15のデモ運針正転回数として、29メモリ(29運針)を記憶する。なお、クロノグラフ1/10秒針14のデモ運針正転回数として、例えば、4メモリ(4運針)を記憶する。
デモ運針逆転回数記憶部39は、自動デモ運針の際に、制御部23によってクロノグラフ1/10秒針14、クロノグラフ秒針15およびクロノグラフ分針16を反時計回りに回転させる回数(メモリ数)であるデモ運針逆転回数を記憶する。このデモ運針逆転回数記憶部39は、クロノグラフ秒針15のデモ運針逆転回数として、30メモリ(30運針)を記憶する。なお、クロノグラフ1/10秒針14のデモ運針正転回数として、例えば、5メモリ(5運針)を記憶する。
【0044】
このデモ運針正転規定数とデモ運針逆転規定数について、図4に示す。図4に示す通り、クロノグラフ1/10秒針14およびクロノグラフ秒針15を反時計回りの方向に回転(逆転)させるメモリ数を、クロノグラフ1/10秒針14、クロノグラフ秒針15およびクロノグラフ分針16を時計回りに回転(正転)させるメモリ数よりも少なくとも1メモリ分だけ少なくするようにしている。
言い換えると、制御部23は、クロノグラフ1/10秒針14およびクロノグラフ秒針15を時計回りの方向に回転させる角度を、クロノグラフ1/10秒針14およびクロノグラフ秒針15を反時計回りの方向に回転させる角度よりも小さくするようにしている。なお、自動デモ運針において、最初に反時計回りの方向に回転させる場合に限る。
【0045】
つまり、デモ運針において、制御部23は、基準位置から時計回りの方向への回転角度が、基準位置から反時計回りの方向への回転角度よりも小さくなる位置に指針を位置させるようにデモ運針を行う。
なお、上述の通り、クロノグラフ1/10秒針14、クロノグラフ秒針15およびクロノグラフ分針16は、ユーザがスイッチA,Bあるいはりゅうず等を操作したことにより制御部23から入力する操作信号に基づき、時計回りの方向にのみ回転するものである。
【0046】
本実施形態においては、デモ運針における指針の動きは、最初に反時計回りに回転した後、時計回りに回転する動きであることが予め決められている。なお、最初の回転方向とは、基準位置に指針が存在している状態からでも運針が開始する際に回転する方向をいう。
このように、最初に反時計回りに指針(例えばクロノグラフ秒針15)を回転させる場合、制御部23は、時計回りに指針(クロノグラフ秒針15)を回転させる回転角度(29メモリ分=174°)を、反時計回りに指針(クロノグラフ秒針15)を回転させる回転角度(30メモリ分=180°)未満にするようにデモ運針を行う。
なお、デモ運針として、最初に指針を時計回りに回転(正転)させることが予め決められている実施形態においては、本実施形態と異なり、正転および逆転の回転角度が同一であってもよい。つまり、制御部23が、反時計回りに指針を回転させる回転角度を、時計回りに指針を回転させる回転角度以上にするようにデモ運針を行う。
上述の例は、全て、デモ運針により回転する指針のクロノグラフ1/10秒針14、クロノグラフ秒針15およびクロノグラフ分針16が、外部からの操作に応じた操作信号に基づき時計回りに回転するという前提においての設定である。
【0047】
つまり、これらクロノグラフ1/10秒針14、クロノグラフ秒針15およびクロノグラフ分針16が、外部からの操作に応じた操作信号に基づき反時計回りに回転するという電子時計においては、これらの設定が全て逆転する。
例えば、デモ運針における指針の動きとして、最初に反時計回りに指針を回転(逆転)させる場合、制御部23は、反時計回りに指針を回転させる回転角度を、時計回りに指針を回転させる回転角度以下にするようにデモ運針を行う。
また、デモ運針として、最初に指針を時計回りに回転(正転)させる場合、制御部23が、時計回りに指針を回転させる回転角度を、反時計回りに指針を回転させる回転角度未満にするようにデモ運針を行う。
【0048】
次に、図5〜7を用いて、電子時計10の動作について説明する。ここでは、デモ運針において、クロノグラフ秒針15を運針する例を用いて以下説明する。クロノグラフ1/10秒針14のデモ運針の説明については省略する。
図5は、電子時計10の自動デモ運針のフローについて説明ためのフローチャートである。
図5に示す通り、例えば、利用者によって電池交換が行われると、交換された電池37の電力が制御部23に供給される。これにより、制御部23は、制御ソフトウェア35を参照して、電源が投入されたことを判断し、自動デモ運針を開始する。また、制御部23は、電池37からの電力を発振器21に供給して、発振器21からの基準クロック信号を得る。
この制御部23は、デモ運針逆転回数記憶部39を参照して、クロノグラフ秒針15を、それぞれ反時計回りに30運針させる(ステップST1)。次いで、制御部23は、デモ運針正転回数記憶部38を参照して、クロノグラフ秒針15を、それぞれ時計回り方向に29運針させる(ステップST2)。
この自動デモ運針において、第3駆動回路28が、クロノグラフ秒表示モータ31のモータ駆動極性を検出し、内蔵する記憶部に記憶しておく。また同様にして、第2駆動回路27が、クロノグラフ1/10秒表示モータ30のモータ駆動極性を検出し、内蔵する記憶部に記憶しておく。
【0049】
次いで、制御部23は、りゅうず17がりゅうず位置1段状態であるか、あるいは、りゅうず位置0段状態であるかを判断する(ステップST3)。
制御部23は、りゅうず位置0段状態であると判断した場合(ステップST3−YES)、りゅうず0段処理に進む(ステップST4)。一方、制御部23は、りゅうず位置1段状態であると判断した場合(ステップST3−NO)、りゅうず1段処理に進む(ステップST5)。
【0050】
次に、図6を参照して、りゅうず0段処理の一例について説明する。図6は、りゅうず0段処理の一例について説明するためのフローチャートである。
図6に示す通り、りゅうず位置0段状態に移行すると、制御部23は、スイッチAが押下されたか否かを判断する(ステップST11)。そして、スイッチAが押下された場合、制御部23は、記憶部36を参照して、クロノ作動中であるか否かを判断する(ステップST12)。
【0051】
ここで、クロノ作動中でない場合(ステップST12−NO)、制御部23は、ストップウォッチ機能の動作開始を示すスイッチ信号をクロノ駆動タイミング発生部25に出力し、クロノグラフによるストップウォッチ機能の実行を開始させる(ステップST13)。また、制御部23は、記憶部36にクロノ作動中であることを示す情報を記憶させる。
【0052】
一方、クロノ作動中である場合(ステップST12−YES)、制御部23は、ストップウォッチ機能の停止を示すスイッチ信号をクロノ駆動タイミング発生部25に出力する(ステップST14)。そして、制御部23は、記憶部36に記憶されているクロノ作動中であることを示す情報を削除する。なお、制御部23は、クロノ作動中でないことを示す情報をさらに記憶させるものであってもよい。
【0053】
また、ステップST11においてスイッチAが押下されなかった場合(ステップST11−NO)、制御部23は、スイッチBが押下されたか否かを判断する(ステップST15)。そして、スイッチBが押下された場合、制御部23は、記憶部36を参照して、クロノ作動中であるか否かを判断する(ステップST16)。
ここで、クロノ作動中でない場合(ステップST16−NO)、制御部23は、クロノ駆動タイミング発生部25に対して、クロノグラフ1/10秒針14、クロノグラフ秒針15およびクロノグラフ分針16を初期状態に復帰させる(以下、クロノ帰零という)(ステップST17)。例えば、制御部23は、カウンタ250によってカウントされた駆動タイミング信号S2、S3に基づき、クロノグラフ1/10秒針14、クロノグラフ秒針15およびクロノグラフ分針16の現在位置を算出し、各指針の基準位置であるメモリ「0」の位置と現在位置との差分に対応するメモリだけ運針させてクロノ帰零する。
【0054】
次いで、制御部23は、クロノ駆動タイミング発生部25に内蔵される記憶部に記憶されている駆動タイミング信号S2、S3のカウント数や、基準クロック数に基づくカウント数を消去して、初期化を行う(ステップST18)。
【0055】
一方、ステップST16においてクロノ作動中である場合(ステップST16−YES)、ステップST19に移行する。
【0056】
次いで、制御部23は、時刻駆動タイミング発生部24から駆動タイミング信号S1が入力されたか否かを判断する(ステップST19)。
ここで、時刻駆動タイミング発生部24は、基準クロック信号に基づきカウンタ240によりカウントされる時間が1秒を経過した場合、駆動タイミング信号S1を制御部23に出力する。この制御部23は、駆動タイミング信号S1が入力されると、時刻駆動タイミング発生であると判断して(ステップST19−YES)、第1駆動回路26を駆動させ、秒針13を1運針させる(ステップST20)。
【0057】
そして、制御部23は、クロノ駆動タイミング発生部25から駆動タイミング信号S2あるいは駆動タイミング信号S3が入力されたか否かを判断する(ステップST21)。
ここで、クロノ駆動タイミング発生部25は、ステップST13において、動作開始を示すスイッチ信号が入力されてからクロノグラフ1/10秒針14を1運針させるための時間が、基準クロック信号に基づきカウンタ250によりカウントされた場合、駆動タイミング信号S2を制御部23に出力する。この制御部23は、駆動タイミング信号S2が入力されると、クロノ駆動タイミング発生であると判断して(ステップST21−YES)、第2駆動回路27を駆動させ、クロノグラフ1/10秒針14を1運針させる(ステップST22)。
また、クロノ駆動タイミング発生部25は、スイッチ信号が入力されてからクロノグラフ秒新15を1運針させるための時間が、基準クロック信号に基づきカウンタ250によりカウントされた場合、駆動タイミング信号S3を制御部23に出力する。これにより、クロノグラフ秒針15が1運針される。
そして、図5に示したステップAに戻る。
【0058】
次に、図7を参照して、りゅうず1段処理の一例について、図7を参照して説明する。図7は、りゅうず1段処理の一例について説明するためのフローチャートである。
図7に示す通り、りゅうず位置1段状態に移行すると、制御部23は、スイッチAが押下されたか否かを判断する(ステップST31)。そして、スイッチAが押下された場合、制御部23は、第2駆動回路27を駆動させる。これにより、クロノグラフ1/10秒表示モータ30は、クロノグラフ1/10秒針14を1運針させる(ステップST32)。
【0059】
そして、ステップST31においてスイッチAが押下されなかった場合(ステップST31−NO)、制御部23は、スイッチBが押下されたか否かを判断する(ステップST33)。
ここで、スイッチBが押下された場合(ステップST33−YES)、制御部23は、第3駆動回路28を駆動させる。これにより、クロノグラフ秒表示モータ30は、クロノグラフ秒針15を1運針させる(ステップST34)。
【0060】
次いで、ステップST33においてスイッチBが押下されない場合(ステップST33−NO)、制御部23は、スイッチAとスイッチBとが同時に押下されたか否かを判断する(ステップST35)。
ここで、スイッチAとスイッチBとが同時に押下された場合(ステップST35−YES)、制御部23は、手動デモ運針を行う。つまり、制御部23は、第2駆動回路27および第3駆動回路28を駆動させ、デモ運針逆転回数記憶部39を参照してクロノグラフ1/10秒針14を逆転方向に5運針させるとともに、デモ運針逆転回数記憶部39を参照してクロノグラフ秒針15を逆転方向に30運針させる(ステップST36)。
次いで、制御部23は、第2駆動回路27および第3駆動回路28を駆動させ、デモ運針正転回数記憶部38を参照してクロノグラフ1/10秒針14を正転方向に4運針させるとともに、デモ運針正転回数記憶部38を参照してクロノグラフ秒針15を正転方向に29運針させる(ステップST37)。
そして、図5に示したステップAに戻る。
【0061】
上述の通り、本実施形態に係る電子時計10は、修正モード(りゅうず1段処理)において、スイッチAあるいはスイッチBが押下されることで、クロノグラフ1/10秒針14あるいはクロノグラフ秒針15を、時計回りの方向である正転方向にしか運針できない操作部を有する。この構成において、クロノグラフ秒針15を回転させる自動デモ運針において、最初に運針する方向であって、かつ、スイッチAおよびスイッチBによって修正できない方向である反時計回りの逆転運針による指針の移動量(30運針)を、スイッチAあるいはスイッチBにより修正できる方向である時計回りの正転運針による指針の移動量29運針)に比べて多くする。
これにより、例えば、自動デモ運針の最初の1運針目で、第3駆動回路28のモータ駆動極性が吸引状態となった場合であっても、最初にメモリ「0」の基準位置にあったクロノグラフ秒針15は、反時計回りに29運針した後、時計回りに29運針する。このため、クロノグラフ秒針15は、最初のメモリ「0」の基準位置に戻ってくる。
一方、自動デモ運針の最初の1運針目で、第3駆動回路28のモータ駆動極性が吸引状態とならなかった場合であっても、最初にメモリ「0」の基準位置にあったクロノグラフ秒針15は、反時計回りに30運針した後、時計回りに29運針する。このため、クロノグラフ秒針15は、メモリ「0」の基準位置よりも1メモリだけ反時計回り方向のメモリ「59」の位置となる。よって、このように自動デモ運針の後で指針が元の位置に戻らない場合であっても、スイッチAを1回押下するだけで、クロノグラフ秒針15をメモリ「0」の基準位置に戻すことができる。従って、デモ運針によって指針が位置ずれした場合の修正において、利用の操作が容易であり、短い時間で修正することができる。
【0062】
一方、本発明によらず、自動デモ運針の正転運針および逆転運針の両方とも30運針を行う場合に、最初の1運針目で第3駆動回路28のモータ駆動極性が吸引状態となった場合、最初にメモリ「0」の基準位置にあったクロノグラフ秒針15は、反時計回りに29運針した後、時計回りに30運針する。このため、メモリ「0」の基準位置よりも1メモリだけ時計回り方向に進んだメモリ「1」の位置となる。
よって、このクロノグラフ1/10秒針14を、メモリ「0」の位置に戻す場合、例えば、スイッチAを10回押下し、クロノグラフ1/10秒針14を時計回りに一周させる必要がある。このため、利用者にとって修正のための操作が負担となる問題があった。
また、自動デモ運針によって、クロノグラフ秒針15がメモリ「1」の位置にずれてしまった場合、スイッチAを59回押下すればクロノグラフ秒針15が時計回りに1周して、元の位置であるメモリ「0」の位置に戻るが、クロノグラフ分針16が1メモリ進んでしまう。このため、クロノグラフ秒針15とクロノグラフ分針16の両方の位置ずれを修正する場合、スイッチBを3599回も押下しなければならず、利用者にとっての操作負担が増大する問題があった。
本発明は、このような問題点を解決し、利用者の操作性を向上させることができる。
【0063】
また、自動デモ運針による指針の位置ずれの修正を容易にするため、修正モードにおいて、正転運針だけでなく、逆転運針も可能とする操作を追加することが考えられる。
しかし、本実施形態に係る電子時計10のように、クロノグラフのストップウォッチ機能において、クロノグラフ1/10秒表示モータ30およびクロノグラフ秒表示モータ31の2つのモータでそれぞれ運針される指針を備える構成である場合、それぞれを修正するためのスイッチAとスイッチBとが必要になる。このため、修正モードにおいて、クロノグラフ1/10秒針14とクロノグラフ秒針15のそれぞれを逆転運針させるスイッチをさらに設ける必要があり、コストが増大するとともに、操作が複雑になるおそれがある。
また、りゅうず17の段階を増やしてスイッチAとBによる操作信号を切り替えることにより、修正モードにおいて、クロノグラフ1/10秒針14とクロノグラフ秒針15のそれぞれを逆転運針させる操作信号を出力することが考えられるが、システムが複雑化することでコストが増大するとともに、操作が複雑となるおそれがある。
従って、システムの簡略化やコスト削減の観点からしても、本発明のようにして、自動デモ運針による指針の位置ずれの修正することが有益である。
【0064】
[第2実施形態]
次に、本発明による第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態において説明した構成と同様の構成については、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
図8は、本実施形態に係る電子時計100の機能の一例を説明するための図である。
図8に示す通り、りゅうず位置0段階状態におけるスイッチA機能、スイッチB機能およびりゅうず機能と、りゅうず位置1段階状態におけるスイッチA機能、スイッチB機能およびりゅうず機能は、第1実施形態と同じである。
本実施形態に係る電子時計100は、これに加えて、以下の機能を有する。
つまり、電子時計100は、りゅうず位置0段状態であって、制御部23によってデモ運針が実行されている場合、スイッチAがGの方向に1回押下されることで、クロノグラフ1/10秒針14、クロノグラフ秒針15およびクロノグラフ分針16の回転を停止させ、デモ運針を中断させる。
さらに、電子時計100は、りゅうず位置1段状態であって、制御部23によってデモ運針が実行されている場合、スイッチBがHの方向に1回押下されることで、クロノグラフ1/10秒針14、クロノグラフ秒針15およびクロノグラフ分針16の回転を停止させ、デモ運針を中断させる。
【0065】
次に、図9を参照して、本実施形態に係る電子時計100の構成の一例について説明する。図9は、本実施形態に係る電子時計100の構成の一例を示す図である。
図9に示す通り、本実施形態に係る電子時計100は、図3に示した第1実施形態に係る電子時計10のデモ運針正転回数記憶部38とデモ運針正転回数記憶部39を有しない点において異なる。
また、本実施形態に係る制御ソフトウェア35に記憶されている制御ソフトウェアプログラムには、デモ運針において、予め決められているデモ運針逆転回数で逆転運針を行った後に、予め決められているデモ運針正転回数で正転運針を行うとともに、デモ運針中にスイッチAあるいはスイッチBが押下された場合にデモ運針を中断させることが予め決められている。本実施形態において、デモ運針正転回数とデモ運針正転回数は、ともに30メモリ(30運針)である。
さらに、本実施形態に係る記憶部36は、デモ運針の際に、制御部23によってクロノグラフ1/10秒針14およびクロノグラフ秒針15を正転運針させるデモ運針正転回数(メモリ値)と、クロノグラフ1/10秒針14およびクロノグラフ秒針15を逆転運針させるデモ運針逆転回数(メモリ値)を記憶する。
【0066】
つまり、デモ運針において、制御部23は、記憶部36を参照して、基準位置からクロノグラフ1/10秒針14およびクロノグラフ秒針15を、例えば反時計回りに回転させた後時計回りに逆転させている途中に、ユーザがスイッチAあるいはスイッチBを押下した場合にデモ運針を中断させる。これにより、基準位置から時計回りの方向への回転角度が、基準位置から反時計回りの方向への回転角度よりも小さくなる位置に指針を位置させるようにデモ運針を行うことができる。
なお、上述の通り、クロノグラフ1/10秒針14、クロノグラフ秒針15およびクロノグラフ分針16は、ユーザがスイッチA,Bあるいはりゅうず等を操作したことにより制御部23から入力する操作信号に基づき、時計回りの方向にのみ回転するものである。
【0067】
次に、図10を用いて、電子時計10の動作について説明する。
図10は、電子時計10のデモ運針のフローについて説明ためのフローチャートである。
図10に示す通り、例えば、利用者によって電池交換が行われると、交換された電池37の電力が制御部23に供給される。これにより、制御部23は、制御ソフトウェア35を参照して、電源が投入されたことを判断し、デモ運針を開始する。また、制御部23は、電池37からの電力を発振器21に供給して、発振器21からの基準クロック信号を得る。
この制御部23は、スイッチAあるいはスイッチBが押下されたか否かを判断する(ステップST41)。そして、制御部23は、スイッチAあるいはスイッチBが押下されたことを検出しない場合、第3駆動回路28を駆動させ、クロノグラフ秒針15を逆転方向に1運針させる(ステップST42)。ここで、制御部23は、内蔵するカウンタを利用して、この逆転方向の運針回数をカウントし、内蔵する記憶部に一次的に記憶する。
次いで、制御部23は、一次的に記憶されている逆転方向の運針回数が、このデモ運針逆転回数に到達したか否かを判断する(ステップST43)。デモ運針逆転回数に到達していない場合(ステップST43−NO)、制御部23は、ステップST41に戻る。
【0068】
一方、実際に反時計回り方向に回転させた逆転方向の運針回数が、デモ運針正転回数に到達したことを判断した場合(ステップST43−YES)、制御部23は、第3駆動回路28を駆動させ、クロノグラフ秒針15を正転方向に1運針させる(ステップST44)。ここで、制御部23は、内蔵するカウンタを利用して、正転方向の運針回数をカウントし、内蔵する記憶部に一次的に記憶する。
次いで、制御部23は、記憶部36に記憶されているデモ運転正転回数(30運針)を読み出し、一次的に記憶されている正転方向の運針回数が、このデモ運針正転回数に到達したか否かを判断する(ステップST45)。デモ運針正転回数に到達していない場合(ステップST45−NO)、制御部23は、ステップST41に戻る。
なお、このデモ運針において、第3駆動回路28は、デモ運針終了時の駆動極性を記憶部に記憶しておく。
【0069】
次いで、制御部23は、りゅうず17がりゅうず位置1段状態であるか、あるいは、りゅうず位置0段状態であるかを判断する(ステップST46)。
制御部23は、りゅうず位置0段状態であると判断した場合(ステップST46−YES)、りゅうず0段処理に進む(ステップST47)。一方、制御部23は、りゅうず位置1段状態であると判断した場合(ステップST46−NO)、りゅうず1段処理に進む(ステップST48)。
なお、上述において、図6、7を用いて説明した動作と同様の動作についても、電子時計10は実行可能である。なお、この動作については、図11、12に示すとともに、詳細の説明については省略する。
【0070】
上述の通り、本実施形態に係る電子時計100は、修正モード(りゅうず1段処理)において、スイッチAあるいはスイッチBが押下されることで、クロノグラフ1/10秒針14あるいはクロノグラフ秒針15を、時計回りの方向である正転方向にしか運針できない操作部(スイッチAあるいはスイッチB)を有する。この構成において、制御部23は、デモ運針中にスイッチAあるいはスイッチBが押下されることで、クロノグラフ1/10秒針14およびクロノグラフ秒針15の回転を停止させ、デモ運針を中断させるものである。
これにより、デモ運針中に利用者がスイッチAあるいはスイッチBを押下することで、デモ運針を開始する前の基準位置よりも反時計回りの方向にある半周の範囲内に反時計回りの方向にクロノグラフ1/10秒針14あるいはクロノグラフ秒針15を停止させることができる。
【0071】
例えば、上述の通り、一周が60運針のところを、デモ運針において、反時計回りに30運針した後に時計回りに30運針する場合、デモ運針の途中でスイッチAあるいはスイッチBが押下されると、クロノグラフ秒針15はメモリ「30」〜メモリ「60」の間で停止する。つまり、基準位置がメモリ「0」である場合、このメモリ「0」から反時計回りにメモリ「59、58、57、・・・、32、31、30」の範囲(メモリ「30〜59、0」)内に、クロノグラフ秒針15を停止させることができる。
【0072】
ここで、デモ運針の最初の1運針目で、第3駆動回路28のモータ駆動極性が吸引状態となった場合、クロノグラフ秒針15は、反時計回りに29運針した後に時計回りに30運針する。このため、デモ運針が利用者により中断されない場合、デモ運針を開始する前の状態においてメモリ「0」の基準位置にあったクロノグラフ秒針15がメモリ「1」のところで停止する。従って、クロノグラフ秒針15をメモリ「0」の基準息位置に戻すためには、例えばクロノグラフ分針16が60分まであった場合など、スイッチAを3599回も押下して、クロノクロノグラフ秒針15を時計回りに3599運針させなければならない。あるいはスイッチAを押し続けることでクロノグラフ秒針15を自動的に連続運針を行う方法もあるが、相当の時間を要すると考えられる。
【0073】
しかし、本発明に係る電子時計によれば、デモ運針中にクロノグラフ秒針15を停止することができるため、メモリ「30」〜メモリ「60」の間で停止する。従って、クロノグラフ秒針15をメモリ「0」のところに戻すためには、スイッチAを、多くとも30回押下することで、クロノグラフ秒針15を時計回りに運針させて、メモリ「0」のところに戻すことができる。従って、デモ運針によって指針の位置がずれるおそれがある場合、デモ運針中に利用者が中断を指示することによって、指針を元の位置に戻す際の操作負担が軽減され、より短い時間で修正することができる。
【0074】
また、デモ運針による指針の位置ずれの修正を容易にするため、修正モードにおいて、正転運針だけでなく、逆転運針も可能とする操作を追加することが考えられる。
しかし、本実施形態に係る電子時計10のように、クロノグラフのストップウォッチ機能において、クロノグラフ1/10秒表示モータ30およびクロノグラフ秒表示モータ31の2つのモータでそれぞれ運針される指針を備える構成である場合、それぞれを修正するためのスイッチAとスイッチBとが必要になる。このため、修正モードにおいて、クロノグラフ1/10秒針14とクロノグラフ秒針15のそれぞれを逆転運針させるスイッチをさらに設ける必要があり、コストが増大するとともに、操作が複雑になるおそれがある。
また、りゅうず17の段階を増やしてスイッチAとBによる操作信号を切り替えることにより、修正モードにおいて、クロノグラフ1/10秒針14とクロノグラフ秒針15のそれぞれを逆転運針させる操作信号を出力することが考えられるが、システムが複雑化することでコストが増大するとともに、操作が複雑となるおそれがある。
従って、システムの簡略化やコスト削減の観点からしても、本発明のようにして、児童デモ運針による指針の位置ずれの修正することが有益である。
【0075】
なお、本発明は上記実施形態に限られず、例えば、以下のようなものであってもよい。
例えば、制御部23は、電池37からの電流が供給されたことを検出した場合にデモ運針を行うと説明した。しかし、本発明はこれに限られず、例えばりゅうず17が押し込まれることによって、修正モードから通常モードに切り替えられた場合、制御部23がこれを検出して、デモ運針を行うものであってもよい。
【0076】
[第3実施形態]
次に、本発明による第3実施形態について説明する。なお、第1実施形態において説明した構成と同様の構成については、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
ここで、図13を参照して、本実施形態に係る電子時計200の構成の一例について説明する。図13は、本実施形態に係る電子時計200の構成の一例を示す図である。
図13に示す通り、本実施形態に係る電子時計200は、図3に示した第1実施形態による電子時計10のデモ運針正転回数記憶部38とデモ運針正転回数記憶部39に換えて、デモ運針カウント数数記憶部40とデモ運針規定数記憶部41を有する点において異なる。
【0077】
このデモ運針カウント数記憶部40は、デモ運針時において指針が運針した回数であって、制御部23がカウントしたデモ運針時の運針回数であるデモ運針カウント数を記憶する。このデモ運針カウント数は、初期状態において、「0」である。デモ運針カウント数の「1」は、クロノグラフ1/10秒針14あるいはクロノグラフ秒針15が、それぞれ1メモリ分だけ動いたことを示す。つまり、1運針分の移動量を意味する。なお、デモ運針カウント数記憶部40は、指針ごとにカウントしたデモ運針カウント数を記憶する。本実施形態においては、クロノグラフ1/10秒針14についての説明は省略し、以下、クロノグラフ秒針15のデモ運針を例に説明する。
【0078】
デモ運針規定数記憶部41は、デモ運針において指針の運針する回数として予め決められているデモ運針規定数を記憶する。本実施形態において、デモ運針は、指針が最初に反時計回りに回転した後に時計回りに回転するものである。よって、デモ運針規定数は、デモ運針の折り返し地点での回数であり、言い換えると、最初の回転方向である反時計回りに回転する回数である。ここでは、デモ運針規定数は「30」と予め決められている。なお、デモ運針規定数記憶部41は、指針ごとに予め決められているデモ運針規定数を記憶する。本実施形態においては、クロノグラフ1/10秒針14についての説明は省略し、以下、クロノグラフ秒針15のデモ運針を例に説明する。
【0079】
次に、図14を参照して、本実施形態による電子時計200の自動デモ運針の処理フローの一例について説明する。図14は、電子時計200の自動デモ運針の処理フローについて説明するためのフローチャートである。
図14に示す通り、例えば、利用者によって電池交換が行われると、交換された電池37の電力が制御部23に供給される。これにより、制御部23は、制御ソフトウェア35を参照して、電源が投入されたことを判断し、デモ運針を開始する。また、制御部23は、電池37からの電力を発振器21に供給して、発振器21からの基準クロック信号を得る。
【0080】
この制御部23は、スイッチAあるいはスイッチBが押下されたか否かを判断する(ステップST51)。そして、制御部23は、スイッチAあるいはスイッチBが押下されたことを検出しない場合、第3駆動回路28を駆動させ、クロノグラフ秒針15を逆転方向に1運針させる(ステップST52)。ここで、制御部23は、内蔵するカウンタを利用して、この逆転方向の運針回数をカウントする。そして、制御部23は、カウントした運針回数を、デモ運針カウント数記憶部40が記憶するデモ運針カウント数に加算する(ステップST53)。
初期状態において、デモ運針カウント数記憶部40が記憶するデモ運針カウント数は「0」であり、制御部23は、ステップST52における1運針を示す運針回数「1」をこのデモ運針カウント数「0」に加算する。これにより、デモ運針カウント数記憶部40が記憶するデモ運針カウント数は、「1」となる。つまり、本実施形態において、クロノグラフ秒針15を修正モードにおいて修正できる回転方向は、時計回りの方向である。よって、制御部23は、修正できる回転方向と逆向きの反時計回りの方向に運針した運針回数には「+」の符号を付して、デモ運針カウント数記憶部40のデモ運針カウント数に記憶させる。
【0081】
次いで、制御部23は、デモ運針カウント数記憶部40に記憶されているデモ運針カウント数が、デモ運針規定数記憶部41に記憶されているデモ運針規定数に到達したか否かを判断する(ステップST54)。カウント数がデモ運針規定数に到達していない場合(ステップST54−NO)、制御部23は、ステップST51に戻る。
そして、ステップST51おいて、制御部23は、スイッチAあるいはスイッチBが押下されたことを検出しない場合、第3駆動回路28を駆動させ、クロノグラフ秒針15を反時計回り(逆転方向)に1運針させる。次いで、ステップST53において、制御部23は、カウントした運針回数を、デモ運針カウント数記憶部40が記憶するデモ運針カウント数に加算する。つまり、デモ運針カウント数記憶部40に記憶されているデモ運針カウント数は「1」であるため、制御部23は、このデモ運針カウント数「1」に、ステップST52における運針の回数「1」を加算する。これにより、デモ運針カウント数記憶部40が記憶するデモ運針カウント数は、「1」となる。
【0082】
制御部23は、ステップST51において、スイッチAあるいはスイッチBが押下されるまで、このステップST52とステップST53を繰り返す。デモ運針カウント数がデモ運針規定数に到達する前に、スイッチAあるいはスイッチBが押下された場合(ステップST51−YES)、制御部23はステップST55に移行する。つまり、クロノグラフ秒針15を反時計回りに回転させている途中でユーザによりスイッチAあるいはスイッチBが押下された場合、デモ運針規定数未満であっても、制御部23は、反時計回りの運針を終了して、ステップST55以降の時計回りの運針に切り換える。
あるいは、制御部23が、デモ運針カウント数がデモ運針規定数に到達したことを判断した場合(ステップST54−YES)、制御部23は、ステップST55に移行する。つまり、クロノグラフ秒針15を反時計回りに回転させている途中でユーザによりスイッチAあるいはスイッチBが押下されなかった場合であっても、デモ運針規定数に到達した段階で、制御部23は、反時計回りの運針を終了して、ステップST55以降の時計回りの運針に切り換える。
【0083】
そして、制御部23は、第3駆動回路28を駆動させ、クロノグラフ秒針15を正転方向に1運針させる(ステップST55)。次いで、制御部23は、デモ運針カウント数記憶部40に記憶されているデモ運針カウント数から「1」を減算する(ステップST56)。つまり、本実施形態において、クロノグラフ秒針15を修正モードにおいて修正できる回転方向は、時計回りの方向である。よって、制御部23は、修正できる回転方向と同一の時計回りの方向に運針した運針回数には「−」の符号を付して、デモ運針カウント数記憶部40のデモ運針カウント数に記憶させる。
次いで、制御部23は、デモ運針カウント数記憶部40に記憶されているデモ運針カウント数が「1」であるか否かを判断する(ステップST57)。デモ運針カウント数が「1」でない場合(ステップST57−NO)、制御部23は、ステップST55に戻る。そして、制御部23は、ステップST57において、デモ運針カウント数が「1」になるまで、ステップST55とステップST56の処理を繰り返す。そして、ステップST57において、デモ運針カウント数が「1」になった場合、制御部23は、クロノグラフ秒針15の時計回りの運針を終了させる(ステップST57−YES)。
なお、このデモ運針において、第3駆動回路28は、デモ運針終了時の駆動極性を記憶部に記憶しておく。
【0084】
上述のステップST51において、スイッチAあるいはスイッチBが押下されたことにより、ステップST55に移行した場合、デモ運針カウント数記憶部40に記憶されているデモ運針カウント数は、デモ運針規定数「30」よりも少ない数である。
例えば、デモ運針においてクロノグラフ秒針15を反時計回りに運針している途中でスイッチAあるいはスイッチBが押下されたとする。この押下された際にデモ運針カウント数が「15」であった場合、制御部23は、基準位置から15メモリ分だけ、クロノグラフ秒針15を反時計回りに回転させている。この制御部23は、デモ運針規定数の30メモリ分の指針を回転させることなく、スイッチAあるいはスイッチBが押下された位置、つまり、基準位置から反時計回りの方向に15メモリ分の位置から回転方向を逆転させ、クロノグラフ秒針15を時計回りに回転させる。ここで、制御部23は、上述のステップST57において説明したとおり、デモ運針カウント数よりも「1」だけ少ない数に到達したところで、時計回りに指針を回転させることを終了する。つまり、制御部23は、クロノグラフ秒針15を時計回りに14メモリ分だけ回転させる。
【0085】
よって、最初の回転時において指針が正常に回転した場合、実際の指針の回転数とデモ運針カウント数が等しいため、デモ運針終了後の指針は、基準位置よりも反時計回りの方向に1メモリだけ遡った位置に位置している。一方、最初の回転時において指針が正常に回転しなかった場合、実際の指針の回転数は、デモ運針カウント数よりも「1」だけ少ない。よって、デモ運針終了後の指針は、基準位置に位置している。
【0086】
上に説明した例の通り、デモ運針の途中でスイッチAあるいはスイッチBが押下された場合について具体的に説明する。
例えば、自動デモ運針の最初の1運針目で、第3駆動回路28のモータ駆動極性が吸引状態となった場合であっても、最初にメモリ「0」の基準位置にあったクロノグラフ秒針15は、反時計回りに14運針した後、時計回りに14運針する。このため、クロノグラフ秒針15は、最初のメモリ「0」の基準位置に戻ってくる。
一方、自動デモ運針の最初の1運針目で、第3駆動回路28のモータ駆動極性が吸引状態とならなかった場合であっても、最初にメモリ「0」の基準位置にあったクロノグラフ秒針15は、反時計回りに15運針した後、時計回りに14運針する。このため、クロノグラフ秒針15は、メモリ「0」の基準位置よりも1メモリだけ反時計回り方向のメモリ「59」の位置となる。よって、このように自動デモ運針の後で指針が元の位置に戻らない場合であっても、スイッチAを1回押下するだけで、クロノグラフ秒針15をメモリ「0」の基準位置に戻すことができる。従って、デモ運針によって指針が位置ずれした場合の修正において、利用の操作が容易であり、短い時間で修正することができる。
【0087】
つまり、デモ運針において、制御部23は、基準位置から時計回りの方向への回転角度が、基準位置から反時計回りの方向への回転角度よりも小さくなる位置に指針を位置させるようにデモ運針を行う。
なお、上述の通り、クロノグラフ1/10秒針14、クロノグラフ秒針15およびクロノグラフ分針16は、ユーザがスイッチA,Bあるいはりゅうず等を操作したことにより制御部23から入力する操作信号に基づき、時計回りの方向にのみ回転するものである。
【0088】
次いで、制御部23は、りゅうず17がりゅうず位置1段状態であるか、あるいは、りゅうず位置0段状態であるかを判断する(ステップST58)。
制御部23は、りゅうず位置0段状態であると判断した場合(ステップST58−YES)、りゅうず0段処理に進む(ステップST59)。一方、制御部23は、りゅうず位置1段状態であると判断した場合(ステップST58−NO)、りゅうず1段処理に進む(ステップST60)。
【0089】
上述の通り、本実施形態に係る電子時計200は、つまり、デモ運針において、運針した回数をカウントしておき、そのカウント数が1未満にならないように指針を回転させることができる。例えば、電子時計200は、時計回りの運針回数と反時計回りに運針回数をカウントし、修正モードにおいて指針を修正できる時計回りの運針回数を、反時計回りの運針回数から減算した解であるデモ運針カウント数が「1」となった段階で、デモ運針を終了する。
これにより、デモ運針において、制御部23は、基準位置から時計回りの方向への回転角度が、基準位置から反時計回りの方向への回転角度よりも小さくなる位置に指針を位置させるようにデモ運針を行うことができる。
従って、本実施形態に係る電子時計200は、上述の第1、2の実施形態同様の効果を奏することができる。
【0090】
なお、上述において、デモ運針は、反時計回りに回転した後に時計回りに回転する運動、あるいは、反時計回りに回転した後に時計回りに回転する運動であると説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、以下に説明するとおり、反時計回りの運針と時計回りの運針を組み合わせることにより、回転方向を2回以上逆転させるようなデモ運動であってもよい。
例えば、制御部23は、デモ運針において、最初に基準位置に位置する指針を時計回りに1運針させ、回転方向を逆転し、反時計回りに1運針させる。続けて、制御部23は、さらに回転方向を逆転し、時計回りに30運針させ、回転方向を逆転し、反時計回りに30運針させる。
これにより、例えば、自動デモ運針の最初の1運針目で、第3駆動回路28のモータ駆動極性が吸引状態となった場合であっても、最初にメモリ「0」の基準位置にあったクロノグラフ秒針15は、反時計回りに1運針した後、時計回りに30運針し、続けて、反時計回りに30運針する。このため、クロノグラフ秒針15は、メモリ「0」の基準位置よりも1メモリだけ反時計回り方向のメモリ「59」の位置となる。
一方、自動デモ運針の最初の1運針目で、第3駆動回路28のモータ駆動極性が吸引状態とならなかった場合であっても、最初にメモリ「0」の基準位置にあったクロノグラフ秒針15は、時計回りに1運針し、反時計回りに1運針した後、時計回りに30運針し、続けて、反時計回りに30運針する。このため、クロノグラフ秒針15は、最初のメモリ「0」の基準位置に戻ってくる。
よって、このように自動デモ運針の後で指針が元の位置に戻らない場合であっても、スイッチAを1回押下するだけで、クロノグラフ秒針15をメモリ「0」の基準位置に戻すことができる。従って、デモ運針によって指針が位置ずれした場合の修正において、利用の操作が容易であり、短い時間で修正することができる。
【0091】
また、例えば、制御部23は、デモ運針において、最初に基準位置に位置する指針を反時計回りに30運針させ、回転方向を逆転し、時計回りに30運針させる。続けて、制御部23は、さらに回転方向を逆転し、反時計回りに1運針させる。
これにより、例えば、自動デモ運針の最初の1運針目で、第3駆動回路28のモータ駆動極性が吸引状態となった場合であっても、最初にメモリ「0」の基準位置にあったクロノグラフ秒針15は、反時計回りに29運針した後、時計回りに30運針し、続けて、反時計回りに1運針する。このため、クロノグラフ秒針15は、最初のメモリ「0」の基準位置に戻ってくる。
一方、自動デモ運針の最初の1運針目で、第3駆動回路28のモータ駆動極性が吸引状態とならなかった場合であっても、最初にメモリ「0」の基準位置にあったクロノグラフ秒針15は、反時計回りに30運針した後、時計回りに30運針し、続けて、反時計回りに1運針する。このため、クロノグラフ秒針15は、メモリ「0」の基準位置よりも1メモリだけ反時計回り方向のメモリ「59」の位置となる。
よって、このように自動デモ運針の後で指針が元の位置に戻らない場合であっても、スイッチAを1回押下するだけで、クロノグラフ秒針15をメモリ「0」の基準位置に戻すことができる。従って、デモ運針によって指針が位置ずれした場合の修正において、利用の操作が容易であり、短い時間で修正することができる。
【0092】
また、電子時計10、100、200の動作の過程は、コンピュータに実行させるためのプログラムや、このプログラムとしてコンピュータ読み取り可能な記録媒体として利用可能であり、コンピュータシステムが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、CPU及び各種メモリやOS、周辺機器等のハードウェアを含むものである。
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0093】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に記憶したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムに既に記録されているプログラムとの組み合せで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0094】
10 電子時計
21 発振器
22 分周回路
23 制御部
24 時刻駆動タイミング発生部
25 クロノ駆動タイミング発生部
26 第1駆動回路
27 第2駆動回路
28 第3駆動回路
29 時刻表示モータ
30 クロノグラフ1/10秒表示モータ
31 クロノグラフ秒表示モータ
32 時刻針部
33 クロノ1/10秒針部
34 クロノ秒針部
35 制御ソフトウェア
36 記憶部
37 電池
38 デモ運針正転回数記憶部
39 デモ運針逆転回数記憶部
40 デモ運針カウント数記憶部
41 デモ運針規定数記憶部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部からの操作に応じた操作信号に基づき第1の方向に回転する指針と、
前記第1の方向と逆の第2の方向および前記第1の方向に前記指針を回転させるデモ運針において、予め決められている基準位置から前記第1の方向への回転角度が前記基準位置から前記第2の方向への回転角度よりも小さくなる位置に前記指針を位置させるように前記デモ運針を行う制御部と
を備えることを特徴とする電子時計。
【請求項2】
前記制御部は、
前記デモ運針において、前記基準の位置から前記第2に方向に前記指針を回転させた後に、前記第1の方向に前記指針を回転させる回転角度を、前記第2の方向に前記指針を回転させる回転角度未満にすることを特徴とする請求項1に記載の電子時計。
【請求項3】
前記制御部は、
前記デモ運針において、前記基準の位置から前記第2に方向に前記指針を回転させた後に、前記第1の方向に前記指針を運針させる回数を、前記第2の方向に前記指針を運針させる回数未満にすることを特徴とする請求項2に記載の電子時計。
【請求項4】
前記制御部は、
前記デモ運針において、前記基準の位置から前記第1の方向に前記指針を回転させた後に、前記第2の方向に前記指針を回転させる回転角度を、前記第1の方向に前記指針を回転させる回転角度以上にすることを特徴とする請求項3に記載の電子時計。
【請求項5】
前記制御部は、
前記デモ運針において、前記基準の位置から前記第1の方向に前記指針を回転させた後に、前記第2の方向に前記指針を運針させる回数を、前記第1の方向に前記指針を運針させる回数以上にすることを特徴とする請求項4に記載の電子時計。
【請求項6】
前記制御部は、
前記指針を前記第1の方向に回転させる回数を、前記指針を前記第2の方向に回転させる回数よりも少なくすることを特徴とする請求項5に記載の電子時計。
【請求項7】
前記制御部は、
前記第1の方向への回転と前記第2の方向への回転を組み合わせることにより、前記指針の回転方向を2回以上逆転させるようなデモ運動を行うことを特徴とする請求項6に記載の電子時計。
【請求項8】
前記制御部は、
前記デモ運針において、前記第1の方向に指針を回転させた回数である第1カウント回数と前記第2の方向に指針を回転させた回数である第2カウント回数をカウントし、前記第2カウント回数から前記第1カウント回数を減算した解が1以上である場合に、前記デモ運針を終了することを特徴とする請求項7に記載の電子時計。
【請求項9】
前記制御部は、
前記デモ運針において、前記第1の操作信号と異なる第2の操作信号が外部から入力された場合に、前記指針の回転方向を逆転させることを特徴とする請求項8に記載の電子時計。
【請求項10】
前記制御部は、
前記デモ運針において、前記第1の操作信号と異なる第2の操作信号が入力されると、回転している状態の前記指針を停止させることを特徴とする請求項1に記載の電子時計。
【請求項11】
前記制御部は、
電池から電力の供給が遮断されている状態において電池から電力の供給が開始されたか否かを判断し当該電池から電力の供給が開始されたと判断した場合に、前記デモ運針を開始することを特徴とする請求項1に記載の電子時計。
【請求項12】
前記指針は、
前記電子時計に搭載されたストップウォッチ機能が実行される際に、経過時間を計測する指針であることを特徴とする請求項1に記載の電子時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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