説明

電子機器の支持脚取付構造および支持脚

【課題】 新たな部品や加工を追加することなく、支持脚の回転やネジの緩みを防止する支持脚取付構造を提供すること。
【解決手段】 支持脚10、略円柱状に形成された本体11と、ネジ30を締める前の状態でシャーシ20と接する外周部12と、外周部12よりも高さが低いことにより、ネジ30を締める前の状態ではシャーシ20と接しない内周部13とを含む。ネジ30を締めることによって、シャーシ20の内周部13の内周上面13aに対向する部分が、内周部側へと引っ張られるように変形し、内周上面13aに接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の支持脚取付構造およびそれに適用される支持脚に関する。
【背景技術】
【0002】
オーディオ機器等の電子機器においては、筐体の底面(シャーシ)の四隅に支持脚をネジによって取付け、支持脚を介して設置面に設置するようになっている。支持脚をシャーシに取付けた状態において、支持脚にユーザが触れることにより、支持脚が外れる方向に回転してしまい、ネジが緩んでしまうという問題がある。
【0003】
この問題を解決するために、以下の対策が採用されている。
1つ目は、支持脚の外周付近に回転防止用のボスを形成し、シャーシ側にボスを挿入するための孔を形成し、孔にボスを挿入することによって回転を防止する。または、支持脚の外周付近にボスを挿入するための孔を形成し、シャーシ側にボスを形成する。
2つ目は、ネジを中心の一本ではなく、中心を外した2本以上使用することによって回転を防止する。
3つ目は、支持脚とシャーシとをネジだけでなく、接着剤を用いて接着する。
4つ目は、ネジの回転防止用にスプリングワッシャーや、歯付きワッシャーをネジと支持脚との間に介在させる。
しかし、これらいずれの方法であっても、部品や加工を追加する必要があり、コストアップ、製品工数が増大する等の問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−32246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、新たな部品や加工を追加することなく、支持脚の回転やネジの緩みを防止する支持脚取付構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の好ましい実施形態による支持脚取付構造は、ネジを締めることによってシャーシに支持脚を取付ける支持脚取付構造であって、前記支持脚が、略円柱状に形成された本体と、前記ネジを締める前の状態で前記シャーシと接する外周部と、前記外周部よりも高さが低いことにより、前記ネジを締める前の状態では前記シャーシと接しない内周部とを含み、前記ネジを締めることによって、前記シャーシの前記内周部の上面に対向する部分が、前記内周部側へと変形し、前記内周部の上面に接する。
【0007】
好ましい実施形態においては、前記外周部の高さと前記内周部の高さとの差が、0.01mm〜0.5mmである。
【0008】
本発明の好ましい実施形態による支持脚は、上記の支持脚取付構造に適用される前記支持脚であって、略円柱状に形成された前記本体と、前記外周部と、前記外周部よりも高さが低い前記内周部とを備える。
【発明の効果】
【0009】
支持脚をシャーシに配置し、ネジを締める前の状態では、外周部がシャーシに接しているが、内周部はシャーシに接していない。そして、支持脚をシャーシに取付けるようにネジを締めることによって、シャーシの内周部に対向する部分が下側に引っ張られるように変形し、内周部に接するようになる。従って、シャーシは支持脚側に引っ張られた(力が加えられた)状態で支持脚にネジで取付けられている。その結果、支持脚はシャーシに強固に固定される。
従って、新たな部品や加工を追加することなく、支持脚の回転やネジの緩みを防止する支持脚取付構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の好ましい実施形態による支持脚取付構造の取付前の側面図である。
【図2】本発明の好ましい実施形態による支持脚取付構造の取付前の斜視図である。
【図3】本発明の好ましい実施形態による支持脚取付構造の取付前の断面図である。
【図4】本発明の好ましい実施形態による支持脚取付構造の取付前の断面斜視図である。
【図5】本発明の好ましい実施形態による支持脚取付構造の取付後の側面図である。
【図6】本発明の好ましい実施形態による支持脚取付構造の取付後の斜視図である。
【図7】本発明の好ましい実施形態による支持脚取付構造の取付後の断面図である。
【図7B】本発明の好ましい実施形態による支持脚取付構造の取付後の断面図である。
【図8】本発明の好ましい実施形態による支持脚取付構造の取付後の断面斜視図である。
【図9】本発明の別の好ましい実施形態による支持脚の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照して具体的に説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。本実施形態による電子機器の支持脚取付構造は、支持脚10と、シャーシ20と、ネジ30とを備える。
【0012】
図1は、支持脚取付構造の取付前の側面図である。
図2は、支持脚取付構造の取付前の斜視図である。
図3は、支持脚取付構造の取付前の断面図である。
図4は、支持脚取付構造の取付前の断面斜視図である。
図5は、支持脚取付構造の取付後の側面図である。
図6は、支持脚取付構造の取付後の斜視図である。
図7は、支持脚取付構造の取付後の断面図である。
図7Bは、支持脚取付構造の取付後の断面図である。
図8は、支持脚取付構造の取付後の断面斜視図である。
【0013】
シャーシ20は、例えばオーディオ機器等の電子機器の筐体の底面であり、特に限定されないが、鉄、アルミニウム等の薄い金属で形成されている。シャーシ20の厚みは、代表的には、0.7mm〜2.0mmが採用され得る。後述するように、シャーシ20は、支持脚10がネジ30によって取付けられる際に、ネジ30を締める際の力によって、支持脚10側(鉛直下側)へと変形する必要がある。従って、シャーシ20の材質や厚みは、支持脚10側へと変形可能なよう選択されるとよい。
【0014】
シャーシ20には、支持脚10が取付けられる位置に、支持脚10をネジ30で取付けるためのネジ孔21が形成されている。一般的には、シャーシ20には、四隅に支持脚が取付けられるので、四隅にネジ孔21が形成されている。
【0015】
支持脚10は、シャーシ20にネジ30によって取付けられることによって、電子機器を支持するものである。支持脚10は、略円柱形状を有する。略円柱とは、支持脚のデザインや音質設計等の理由で若干形状が変形されていてもよいことを意味する。支持脚10は、本体部11と、外周部12と、内周部13と、環状溝部14と、貫通孔15とを含む。
【0016】
本体部11は、略円柱形状に形成された支持脚10の本体部分である。
【0017】
外周部12は、本体部11の上側かつ外周部分に形成された円環状(円筒状)の部分である。つまり、外周部12は、本体部11の上面からさらに上側に突出するように形成されており、断面では矩形になっている。外周上面12aは、外周部12の上側の平面であり、支持脚10がシャーシに取付けられる際に、シャーシ20と接する部分である。外周上面12aは、ネジ30を締める前の状態でも、シャーシ20に接する。
【0018】
内周部13は、本体部11の上側かつ内周部分に形成された円環状(円筒状)の部分である。つまり、内周部11は、本体部11の上面からさらに上側に突出するように形成されており、断面では矩形になっている。内周上面13aは、内周部13の上側の平面であり、支持脚10がシャーシに取付けられる際に、シャーシ20と接する部分である。内周上面13aは、ネジ30を締める前の状態では、シャーシ20に接しておらず、ネジ30を締めた際にシャーシ20と接する。
【0019】
環状溝部14は、外周部12と内周部13との間に形成された円環状の溝部分である。つまり、環状溝部14は、本体部11の上面であって、外周部12や内周部13が形成されなかった残りの部分である。
【0020】
貫通孔15は、内周部13(本体部11)の径方向の中心において、支持脚10の上面から底面にかけて貫通するように形成された孔であり、ネジ30が底面側から挿通される部分である。従って、貫通孔15は、その直径がネジの直径よりもやや大きく形成されており、底面近傍においては、ネジ頭が挿通可能なように、ネジ頭の直径よりもやや大きく形成されている。
【0021】
支持脚10の材質は、支持脚10をシャーシ20にネジ30によって締める際に、支持脚10が変形しないように硬質な材料(例えば金属)によって形成されている。特に限定されないが、支持脚10は、真鍮によって形成されている。
【0022】
外周部12と内周部13との関係について説明する。図3に示すように、外周部12の高さx(つまり、本体部11の底面から外周上面12aまでの長さ)は、内周部13の高さy(つまり、本体部11の底面から内周上面13aまでの長さ)よりも高く(長く)なっている。好ましくは、x−y=0.01mm〜0.5mmである。さらに好ましくは、x−y=0.03mm〜0.3mmである。例えば、x−y=0.05mmである。当該関係を有することによって、支持脚10をシャーシ20にネジ30で締める際に、シャーシ20の内周上面12に対向する部分が下側に引っ張られるように変形し、内周上面20と接する。従って、支持脚10がシャーシ20に強固に固定され、支持脚10がシャーシに対して回転し、ネジ30が緩まることを防止できる。
【0023】
次に、図5〜図8を参照し、支持脚10をシャーシ20にネジ30で取り付ける際の作用について説明する。シャーシ20のネジ孔21の位置と支持脚10の貫通孔15の位置とを対応させるように、シャーシ20に支持脚10を配置させる。この時点では、外周上面12aにシャーシ20が接しているが、内周上面13aにはシャーシ20が接していない。上記の通り、内周部13の高さが外周部12の高さよりも低いからである。
【0024】
貫通孔15に底面側からネジ30を挿通させ、ネジ30を締める方向に回転させる。ネジ30を締めるに従い、未だ支持脚10に接していなかったシャーシ20の内周上面13aに対向する部分(及び、環状溝部14に対向する部分)は、下側(支持脚10側)に向かって変形する。つまり、シャーシ20の内周上面13aに対向する部分(及び環状溝部14に対向する部分)は、ネジ30の締める力によって、下方向に引っ張られる。一方、シャーシ20の外周上面12aに対向する部分は元々外周上面12aに接しているので、下側に向かって変形しない。
【0025】
最終的には、図7、図8に示すように、シャーシ20の内周上面13aに対向する部分は、内周上面13aに接するまで下側へと引っ張られて変形する。つまり、シャーシ20の内周上面13aに対向する部分は、外周上面12aと内周上面13aの高さの差x−yだけ下方向に変位する。
【0026】
ネジ30を締めた後のシャーシ20の形状は、外周上面12aと対向する部分は、外周上面12aと略平行であり、かつ、外周上面12aと接しており、内周上面13aと対向する部分は、内周上面13aと略平行であり、かつ、内周上面13aと接しており、環状溝部14と対向する部分は、外周上面12aと対向する部分と内周上面13aと対向する部分とを断面視略直線で結ぶように傾斜した形状になっている。
【0027】
なお、図7Bに示すように、シャーシ20の外周上面12aと対向する部分は、外周上面12aと平行にならず、内周側のみが外周上面12aと接し、外周側は外周上面12aと接しない場合もある。同様に、シャーシ20の内周上面13aと対向する部分は、内周上面13aと平行にならず、内周側のみが内周上面13aと接し、外周側は内周上面13aと接しない場合もある。
【0028】
本実施形態の支持脚の取付構造によると、シャーシ20がネジ30の締める力によって支持脚10の方向に強い力で引っ張られた状態を維持したまま取付けられている。従って、支持脚10はシャーシ20に対して強固に取付けられる。従って、取付後に、支持脚10がシャーシ20に対して回転し、ネジ30が緩んでしまうことを防止できる。
【0029】
以下、本実施形態の支持脚の取付構造について、支持脚10がシャーシ20に強固に固定されることを示す解析結果を示す。
(実施例1)
本実施形態の支持脚の取付構造について、図7に示すように、シャーシ20のネジ30付近(A点)の応力と、シャーシ20の外周上面12a最内周部付近(B点)の応力とを測定した。
なお、測定条件は以下の通りである。

支持脚10
材質: 真鍮
弾性係数: 1019716kgf/cm2
ポアソン比: 0.33
密度: 0.0085kg/cm3
引張強さ: 4878kgf/cm2
降伏強さ: 2444kgf/cm2
外周部12と内周部13の高さの差x−y=0.1mm

シャーシ20
材質: 亜鉛メッキスチール
弾性係数: 2039432.4kgf/cm2
ポアソン比: 0.29
密度: 0.00787kg/cm3
引張強さ: 3639.4kgf/cm2
降伏強さ: 2079.6kgf/cm2
材料厚み: 1mm

測定の結果、A点の応力は16298kgf/cm2、B点の応力は291kgf/cm2であった。
【0030】
(比較例1)
外周部12の高さと内周部13の高さとが等しいこと以外は実施例1と同じ条件の従来の支持脚の取付構造について、A点の応力と、B点の応力とを測定した。測定の結果、A点の応力は7850kgf/cm2、B点の応力は13.5kgf/cm2であった。
【0031】
実施例1と比較例1とを比較すると、実施例1が比較例1に対してかなり応力が大きくなっており、シャーシ20が支持脚30側に引っ張られる力が強いことが分かる。従って、本実施形態の支持脚の取付構造においては、支持脚10がシャーシ20に強固に固定され、支持脚10が回転すること、ネジ30が緩むことが防止できていることが分かる。
【0032】
次に、本発明の別の好ましい実施形態を説明する。図9は、本実施形態による支持脚の断面図である。この支持脚は、図1〜図8と比較し、環状溝部14が設けられておらず、外周上面12aと内周上面13aとを断面視略直線で結ぶように傾斜部16が形成されている。このような支持脚においても上記と同じ作用効果が得られる。
【0033】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、オーディオ機器等の電子機器の支持脚取付構造に好適に採用され得る。
【符号の説明】
【0035】
10 支持脚
11 本体部
12 外周部
12a 外周上面
13 内周部
13a 内周上面
14 環状溝部
15 貫通孔
20 シャーシ
21 ネジ孔
30 ネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネジを締めることによってシャーシに支持脚を取付ける支持脚取付構造であって、
前記支持脚が、略円柱状に形成された本体と、前記ネジを締める前の状態で前記シャーシと接する外周部と、前記外周部よりも高さが低いことにより、前記ネジを締める前の状態では前記シャーシと接しない内周部とを含み、
前記ネジを締めることによって、前記シャーシの前記内周部の上面に対向する部分が、前記内周部側へと変形し、前記内周部の上面に接する、支持脚取付構造。
【請求項2】
前記外周部の高さと前記内周部の高さとの差が、0.01mm〜0.5mmである、請求項1に記載の支持脚取付構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の支持脚取付構造に適用される前記支持脚であって、
略円柱状に形成された前記本体と、前記外周部と、前記外周部よりも高さが低い前記内周部とを備える、支持脚。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−43838(P2012−43838A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−181107(P2010−181107)
【出願日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(710014351)オンキヨー株式会社 (226)
【Fターム(参考)】