説明

電子機器及びそのセキュリティ強化方法

【課題】操作可能部位の外部への露出を排除し、高いセキュリティを確保することができる電子機器を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る電子機器は、本体と、本体に開閉自在に取り付けられるとともに本体に設けられる操作部を覆うカバーと、本体に対して前記カバーを閉じた状態において本体とカバーとを固定するロック機構と、本体に対して前記カバーを閉じた状態において生体情報を入力する入力手段と、入力手段から入力された生体情報に基づいて認証を行う認証手段と、認証手段による認証が成功した場合にロック機構による本体とカバーとの固定を解除する制御手段とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器及びそのセキュリティ強化方法に係り、特に、機構的手段を用いることによってセキュリティが強化される電子機器及びそのセキュリティ強化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報処理装置に代表される電子機器の多くは、その内部に各種情報を記憶する記憶装置を備えている。これらの記憶装置には、個人のプライバシーに関する情報や企業の営業秘密に関する情報が記憶されている場合も多い。
【0003】
一方、各種電子デバイスや記憶デバイスの小型・軽量化技術の進展に伴い、大容量の記憶装置を備えた電子機器であっても、個人が容易に携帯可能な機器が多く出現してきており、いつでも、どこでも、だれでもが、必要な情報にアクセス可能なユビキタス情報社会が到来してきている。
【0004】
このような情報社会において、個人のプライバシーに関する情報や企業の営業秘密に関する情報等を他人の不正な使用から守るためのセキュリティ技術の重要性は言をまたない。
【0005】
セキュリティ技術の一分野として、電子機器の使用者が正当な使用者で有ることが認証された場合に限ってその電子機器を使用することを可能とする認証技術がある。
【0006】
従来から、パスワードによる認証技術は、情報処理装置だけに限らず多くの電子機器で広く用いられている。
【0007】
また、近年では、指紋照合等に代表されるバイオメトリクス認証技術も実用段階に入ってきている。
【0008】
例えば、特許文献1には、指紋照合機能を具備した指紋照合装置(PCカード型)や携帯型情報処理装置の接続性、操作性、および携帯性の向上に関する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2000−293688号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この他、情報処理装置に代表される電子機器に関して、従来から多数の認証技術が開発されてきている。これらの認証技術の多くは、認証に失敗した場合に、特定のソフトウェアの処理を停止させたり、特定のソフトウェアの起動を禁止する他、電子機器の電源をオフにする等によって、認証に失敗した第三者に対して情報の開示或いは情報の持ち出し等を不能とするものである。
【0010】
しかしながら、従来の認証技術の問題点は、セキュリティホール(セキュリティ上の弱点)を攻撃される余地を完全には除去しきれていない点にある。
【0011】
セキュリティホールが完全に除去しきれていない大きな理由のひとつは、電子機器の操作部位が外部に露出している点にある。電子機器の操作部位が外部に露出していることによって、不正の第三者は電子機器の操作部位を操作することが可能となる。
【0012】
認証に失敗した場合には、通常、一般ユーザが電子機器の操作部位を無作為に操作しても正常動作に復帰することはない。
【0013】
しかしながら、操作部位を所定の手順に従って操作した場合、例えば内部のソフトウェアにアクセス可能となり、その電子機器単独で、或いはその電子機器に特定の外部機材を接続することによって、ソフトウェアを変更することができる場合がある。
【0014】
通常、ソフトウェアへのアクセス手順や変更方法は、特定の知識や技術を要するため、一般ユーザはソフトウェアを変更することは困難である。しかしながら、操作部位の操作や外部機器の接続等によるソフトウェアへのアクセス手順や変更方法が存在する場合においては、電子機器の操作部位が外部に露出しているかぎり、ソフトウェアの変更の可能性を完全に排除することはできない。
【0015】
ソフトウェアの変更が可能とすると、例えば、入力した指紋と予め登録してある指紋とが必ず一致するようにソフトウェアを変更することができるため、認証技術を無効化することが可能となってしまう。
【0016】
このように、電子機器の操作可能部位が外部に露出していること自体がセキュリティホールのひとつとなりうる。
【0017】
特許文献1が開示する発明のひとつは、指紋入力面が情報処理装置の蓋部に設けられ、指紋が一致したときに蓋と本体間に設けられたロックの解除を行うとするものである。この発明は、特許文献1の明細書の段落「0074」の記載にあるように、指紋照合装置をPCカードに実装するのではなく、情報処理装置の蓋部に実装することでPCカードの携行を不要とする発明であり、蓋と本体のロックによって操作可能部位が外部に露出することを排除する技術を開示するものではない。
【0018】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、操作可能部位の外部への露出を排除し、高いセキュリティを確保することができる電子機器およびそのセキュリティ強化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するため、本発明に係る電子機器は、請求項1に記載したように、本体と、本体に開閉自在に取り付けられるとともに前記本体に設けられる操作部を覆うカバーと、本体に対して前記カバーを閉じた状態において前記本体と前記カバーとを固定するロック機構と、本体に対して前記カバーを閉じた状態において生体情報を入力する入力手段と、入力手段から入力された生体情報に基づいて認証を行う認証手段と、認証手段による認証が成功した場合にロック機構による本体とカバーとの固定を解除する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0020】
また、上記課題を解決するため、本発明に係る電子機器のセキュリティ強化法は、請求項6に記載したように、本体と、本体に開閉自在に取り付けられるとともに本体に設けられる操作部を覆うカバーとを備えた電子機器のセキュリティ強化方法において、本体に対してカバーを閉じたときにカバーと本体とをロック機構で固定する第1ステップと、本体に対してカバーを閉じた状態において生体情報を入力する第2ステップと、入力された生体情報に基づいて認証を行う第3ステップと、認証が成功した場合にロック機構を解除する第4ステップとを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る電子機器およびそのセキュリティ強化方法によれば、操作可能部位の外部への露出を排除し、高いセキュリティを確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明に係る電子機器、およびそのセキュリティ強化方法の一実施形態について添付図面を参照して説明する。
【0023】
(1)電子機器1の構成
図1は、本発明に係る電子機器1の第1の実施形態の外観例を示す斜視図である。電子機器1の種類は特に限定するものではないが、例えば、PDA(Personal Digital Assistance)と呼ばれる小型携帯情報端末であり、電子機器本体2とカバー3とを備えて構成される。
【0024】
図1(a)は、カバー3を開いた状態を示したものであり、図1(b)は、カバー3を閉じた状態を示している。
【0025】
図1(a)に示すように、電子機器1のカバー3はヒンジ構造(図示せず)を介して電子機器本体2と開閉自在に連結されている。
【0026】
電子機器本体2は、箱状の筐体4に後述するCPU20等の構成品を収容して構成される。また、筐体4の上面には、各種情報を表示する液晶表示器5、電子機器1に対して各種の操作を行う複数の操作キー6(操作部)、および電子機器1の電源をオン・オフする電源スイッチ7が配設されている。
【0027】
筐体4の前端には、カバー3の前端に設けられたラッチ片9が挿入される挿入口8が設けられている。
【0028】
カバー3は、方形状をなす天板3a、左側板3bおよび右側板3cとから一体的に形成され、左側板3bには、認証スイッチ10(スイッチ)と指紋センサ(生体情報の入力手段)11とが配設されている。
【0029】
また、カバー3の前端には、ラッチ孔9aを有したラッチ片9が天板3aに連なって設けられており、カバー3を閉じる際にはラッチ片9が電子機器本体2の挿入口8に挿入される。
【0030】
図1(b)に示すように、ラッチ片9が挿入口8に挿入された後は、電子機器本体2が有するロック機構12がラッチ孔9aに係合されて、カバー3と電子機器本体2とがロックされた状態で固定される。
【0031】
カバー3を閉じた状態では、電子機器本体2の液晶表示器5、操作キー6および電源スイッチ7は、総てカバー3に覆われ、外部から操作キー6や電源スイッチ7にアクセスすることができなくなる。カバー3の材質は特に限定するものではないが、セキュリティ上の点から、堅牢かつ軽量な金属で形成することが好ましい。
【0032】
図2は、電子機器1のシステム構成を示す図である。
【0033】
筐体4に収容される電子機器本体2は、各種情報処理やシステム全体の制御を行うCPU20、CPU20で実行するOS(Operating System)21や各種アプリケーションソフトウェア22或いは各種データが記憶される不揮発性メモリ23、CPU20が処理する各種データを一時的に記憶する主メモリ24がバス25に相互に接続されている。
【0034】
また、バス25には、電子機器1に対して各種操作を行う操作キー6、各種情報を表示する液晶表示器5、主に電源系の制御を行う電源コントローラ26、カバー3と筐体4とをロックし或いはロックを解除するロック機構12の各構成品も接続されている。
【0035】
電源コントローラ26には、電子機器本体2に設けられている電源スイッチ7が接続される。この他、電子機器本体2は電源部27を備えており、電源部27からは電子機器本体2の各構成品へ電源を供給するほか、カバー3に設けられている指紋センサ11へも電源を供給する。
【0036】
カバー3は、認証スイッチ10および指紋センサ11を備えて構成される。認証スイッチ10の出力は電源コントローラ26へ接続されている。
【0037】
また、指紋センサ11の出力は電子機器本体2のCPU20へ接続されている。
【0038】
(2)電子機器1の動作
上記のように構成された電子機器1の動作について図1ないし図3を用いて説明する。
【0039】
図3は、電子機器1の状態遷移図を示したものである。電子機器1は、初期状態S1、認証状態S2、通常動作状態S3、およびカバー開・オフ状態S4の4つの状態を有している。
【0040】
初期状態S1は、カバー3が閉じられるとともにカバー3と筐体4とがロック機構12でロックされ、かつ電子機器本体2の電源および指紋センサ11の電源がオフの状態である。初期状態S1は、ユーザが電子機器1を操作していない非動作の状態に相当するものである。
【0041】
初期状態S1では、カバー3が閉じられかつ筐体4とロックされているため、ユーザがアクセス可能な部位は、カバー3に設けられた認証スイッチ10と指紋センサ11に限られる。
【0042】
ユーザが認証スイッチ10を押下すると認証状態S2へ移行する。認証状態S2は、電子機器本体2の電源および指紋センサ11の電源がオンとなるものの、カバー3が閉じられ筐体4とロック機構12でロックされたままの状態である。
【0043】
初期状態S1から認証状態S2への移行は次のように行われる。
【0044】
まず、ユーザが認証スイッチ10を押下すると押下信号が電子機器本体2の電源コントローラ26に伝えられる(図2参照)。電源コントローラ26の消費電力は微弱なものであり、電子機器1の電源がオフの状態であっても電源コントローラ26のみには電源が常に供給されている。この結果、電子機器1の電源がオフの状態であっても電源コントローラ26は認証スイッチ10からの押下信号を認識することができる。
【0045】
電源コントローラ26は、この押下信号を受信すると電子機器本体2の電源部27に対して制御信号を出力する。この制御信号に基づいて電源部27は電子機器本体2の各構成品およびカバー3の指紋センサ11に電源を供給する。
【0046】
この状態が、初期状態S1から認証状態S2へ移行した直後の状態である。カバー3と筐体4とは依然ロックされたままの状態である。
【0047】
認証状態S2へ移行すると電子機器1は次のように動作する。
【0048】
認証状態S2では、指紋センサ11に電源が供給されているため、指紋センサ11は指紋情報を読み取り可能な状態となっている。
【0049】
一方、電子機器本体2にも電源が供給されている。電子機器本体2の各構成品に電源が供給されると、まず、不揮発性メモリ23に記憶されているOS21が起動される。OS21はシステム全体の基本ソフトウェアでありOS21の制御の下でCPU20が動作可能な状態となる。
【0050】
この段階で、指紋センサ11に指が押し付けられると、CPU20は、不揮発性メモリ23に記憶されているソフトウェアに基づいて指紋センサ11から指紋情報を入力する。その後CPU20は、予め不揮発性メモリ23に記憶(登録)されている指紋情報と指紋センサ11から入力された指紋情報とを比較判定する。
【0051】
比較判定の結果、両者が一致した場合は、認証成功となる。逆に両者が一致しなかった場合は、認証失敗となる。このように、指紋センサ11(入力手段)から入力された認証情報に基づいて認証を行う認証手段は、不揮発性メモリ23に記憶されているソフトウェアを実行するCPU20および不揮発性メモリ23に記憶(登録)されている指紋情報とによって構成される。ここまでの処理が認証状態S2で行われる。
【0052】
認証に成功した場合は、認証状態S2から通常動作状態S3へ移行する。
【0053】
通常動作状態S3は、カバー3と筐体4とのロックが開放された状態であり、かつ電子機器本体2の電源はオン、指紋センサ11の電源がオフの状態である。
【0054】
通常動作状態S3への移行は、CPU20がロック機構12に対してロック開放の指示を出すことによって行われる。ロック機構12は、CPU20からロック開放の指示を受けると、カバー3のラッチ片9と筐体4とを固定しているロックを開放する。この結果、ユーザはカバー3を開くことが可能となる。
【0055】
また、通常動作状態S3への移行に際しては、CPU20は電源コントローラ26に対して指紋センサ11へ供給している電源をオフするように指示する。電源コントローラ26は、電源部27に対して、指紋センサ11へ供給している電源のみをオフするように制御する。
【0056】
通常動作状態S3では、電子機器本体2に電源が供給されOS21も起動されている。またカバー3と筐体4とのロックも開放されているため、ユーザは通常の操作をすることが可能となる。指紋センサ11は、既に認証処理は終了しているため、指紋センサ11の電源をオフとすることで消費電力の節約が可能となる。
【0057】
一方、認証状態S2において、認証に失敗した場合には、認証状態S2から初期状態S1へ戻る。具体的には、CPU20がOS21の制御の下、所定の終了シーケンスを実行し、最終的には電源コントローラ26に対して指紋センサ11および電子機器本体2の各構成品への電源供給をオフするように指示する。また、所定時間以上、指紋情報が入力されなかった場合にも同様に認証状態S2から初期状態S1へ戻る。
【0058】
このように、認証成功時にロック機構12を開放したり、電子機器本体2や指紋センサ11(入力手段)の電源をオン・オフする制御手段は、主にCPU20および電源コントローラ26によって構成される。
【0059】
なお、ユーザは、カバー3を閉じる操作のみで通常の操作を終了させることができる。即ち、図3に示したようにカバー3閉操作で通常動作状態S3から初期状態S1へ戻る。
【0060】
PDAのような携帯情報端末に代表される電子機器1は、ユーザが所定期間操作を行わなかった場合には自動的に電源をオフする機能を備えたものが多い。この機能を有する電子機器1では、ユーザがカバー3を閉じるとカバー3と筐体4とがロックされた後、所定期間後自動的に電子機器本体2および指紋センサ11の電源がオフとなる。
【0061】
カバー3を開いた状態で、電源スイッチ7を押下した場合には、電源がオフとなり、カバー開・オフ状態S4へ移行する。この状態においてカバーを閉じると、初期状態S1に戻る。
【0062】
なお、カバー開・オフ状態S4で再度電源スイッチ7を押した場合には、電源がオンとなり通常動作モードS3に復帰する。
【0063】
本発明の第1の実施形態に係る電子機器1によれば、初期状態S1および認証に失敗した場合においては、操作キー6は総てカバー3に覆われており、かつカバー3と電子機器本体2の筐体4とが常にロックされた状態となっている。
【0064】
このため、不正の第三者が、操作キー6を操作することによってセキュリティホールを攻撃しようとしても操作キー6自体にアクセスすることができないため、攻撃不可能となる。例えば、不正の第三者が、ソフトウェアへのアクセス手順や認証手段を無効とするためのソフトウェア変更方法に関する知識を有していたとしても、操作キー6への物理的なアクセスができないため、認証手段を無効とすることはできない。
【0065】
このため、操作キーへのアクセスが可能な従来の電子機器にくらべると、高いセキュリティを確保することが可能となる。
【0066】
また、本発明の第1の実施形態に係る電子機器1によれば、指紋による認証手段としているため、パスワード等のように操作キーを必要とせず、操作キー6をカバー3で覆った状態であっても小型の指紋センサ11によって認証情報を入力することができる。このため、正規のユーザにとっては高い操作性を維持しつつ、カバー3によって操作キー6を覆うことが可能となるため高いセキュリティを確保できる。
【0067】
また、本発明の第1の実施形態に係る電子機器1によれば、外部からアクセス可能な位置に認証スイッチ10を設けることにより、起動時の認証動作時のみ指紋センサ11の電源をオンとすることができる。このため、常時指紋センサ11の電源をオンにしておく必要がなく、省電力が可能となる。
【0068】
図4は、本発明に係る電子機器1のセキュリティ強化法の一実施形態の処理の流れを示したものである。
【0069】
まず、最初の段階(第1ステップ)では、カバー3と電子機器本体2の筐体4とはロックされており、電子機器本体2および指紋センサ11の電源はオフの状態となっている。これは、図3における初期状態S1に相当する。
【0070】
次の第2ステップは、認証情報を入力するまでのステップである。具体的には、ステップST1でまず認証スイッチ10を押下する。この認証スイッチ10の押下によって電子機器1の電源がオンされる(ステップST2)。また、OS21が起動される(ステップST3)。
【0071】
さらに、OS21の制御の下、指紋センサ11に対して電源が供給される(ステップST4)。この後、指紋センサ11から指紋情報が入力されたか否かを判断する(ステップST5)。指紋センサ11から指紋情報が入力されるとその指紋情報を読みこむ(ステップST6)。
【0072】
次の第3ステップでは、読み込んだ指紋情報と予め登録されている指紋情報とを照合する(ステップST7)。そして読み込んだ指紋情報と予め登録されている指紋情報とが一致するか否かを判定する(ステップST8)。
【0073】
第4ステップでは、読み込んだ指紋情報と予め登録されている指紋情報とが一致した場合には、カバー3と筐体4とを固定しているロック機構12を開放する(ステップST9)。その後指紋センサ11の電源をオフし(ステップST10)、図3における通常動作状態S3へ移行する。なお、図4におけるステップST4ないしステップST10の各ステップが図3における認証状態S2に相当する。
【0074】
一方、指紋情報が入力されずに所定時間経過した場合(ステップST11のYes)や、読み込んだ指紋情報と予め登録されている指紋情報とが一致しなかった場合(ステップST8のNo)には、OS21は指紋センサ11の電源をオフした後(ステップST12)、さらに電子機器本体2の各構成品の電源もオフし(ステップST13)、初期状態S1へ戻る。
【0075】
(3)電子機器1の他の実施形態
図5は、第2の実施形態に係る電子機器1aの外観例を示す斜視図である。
【0076】
第2の実施形態に係る電子機器1aは、第1の実施形態に係る電子機器1の認証スイッチ10と電源スイッチ7とを共通化し、1つの電源/認証スイッチ7aとして設けた形態である。その他の形態については第1の実施形態と同じである。
【0077】
共通化された電源/認証スイッチ7aは、カバー3を閉じた状態に置いても外部から操作可能な位置、例えば図5に示したように筐体4の前側板4aに設けられる。
【0078】
電源/認証スイッチ7aは、例えば接点信号の形態で電源スイッチ7aが押下されたことを電源コントローラ26へ伝達するものであり、操作キー6とは異なりソフトウェアへのアクセスや変更とは無関係のものである。このため、電源/認証スイッチ7aがカバー3に覆われていなくともセキュリティ上の影響はない。
【0079】
図6は、第2の実施形態に係る電子機器1aの状態遷移図を示したものである。第1の実施形態に係る状態遷移図との相違点は、認証スイッチ10の代わりに電源/認証スイッチ7aを押下することによって初期状態S1から認証状態S2へ移行させることができる点である。
【0080】
また、通常動作状態S3とカバー開・オフ状態S4との相互の移行も電源/認証スイッチ7aの押下によって行われる。
【0081】
図7は、第2の実施形態に係る電子機器1aの処理の流れを示した図である。
【0082】
第1および第2の実施形態にかかる電子機器1、1aは、いずれも電源および指紋センサがオフである状態を2つ有している。即ち、初期状態S1とカバー開・オフ状態S4である。
【0083】
第1の実施形態では、認証スイッチ10の押下によって初期状態S1から認証状態S2に移行させることができる。
【0084】
しかしながら、第2の実施形態では、認証スイッチ10と電源スイッチ7とを区別せずに共通化した電源/認証スイッチ7aとしている。このため、電源/認証スイッチ7aの押下による状態の遷移は、カバー3の開閉状態をモニタし、初期状態S1からの移行であるのか或いはカバー開・オフ状態S4からの移行なのかを区別する必要がある。
【0085】
このため、第2の実施形態においては、図7に示したように、カバー3の開閉を判断するステップST100を追加している。
【0086】
電源/認証スイッチ7aが押下された際に、カバー3が閉じていれば初期状態S1からの移行であると判断し認証状態S2へ移行させる。一方、カバー3が開いている場合にはカバー開・オフ状態S4からの移行であると判断し、通常動作状態S3に移行させる。
【0087】
その他の動作については第1の実施形態と基本的に異なるところはない。 第2の実施形態に係る電子機器1aによれば、認証スイッチ10と電源スイッチ7とを共通化し電源スイッチ7aとすることで、部品点数を削減することができ、コストの低減や軽量化が可能となる。また、スイッチの共通化によってもセキュリティ効果は異なることはない。
【0088】
図6は、第3の実施形態に係る電子機器1bの外観例を示す斜視図である。
【0089】
第3の実施形態に係る電子機器1bは、筐体4が、上面に開口部を有する箱状の筐体本体40と開口を覆う蓋板41とから構成されるものである。
【0090】
電子機器1bの組み立て工程では、筐体本体40の開口から電子機器本体2の各構成品を収容した後に蓋板41を開口部に覆い、蓋板41の上からその周囲を複数の取付ネジ30(固定手段)で固定する。
【0091】
筐体本体40自体は一体的に形成されており、収容された電子機器本体2の各構成品に物理的にアクセスするためには取付ネジ30を取り外して蓋板41を開ける以外に方法がないように構成されている。
【0092】
このため、蓋板41の上側にあるカバー3が閉じられている状態では、取付ネジ30に物理的にアクセスすることができなくなり、その結果筐体4に収容される電子機器本体2の各構成品を取り出すことも又アクセスすることもできない。
【0093】
第3の実施形態に係る電子機器1bによれば、カバー3と筐体4とがロックされている状態では、筐体4に収容される電子機器本体2の各構成品を取り出すこともアクセスすることもできないため、例えば、電子機器本体2の構成品である不揮発性メモリ23に外部器材を接続して、記憶されている情報を読み出す等の行為を排除することができる。
【0094】
このように、第3の実施形態に係る電子機器1bによれば、第1の実施形態におけるセキュリティ効果に加えて、より高いセキュリティを実現できる。
【0095】
なお、本発明は上記の各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせても良い。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明に係る電子機器の第1の実施形態の外観の一例を示す図。
【図2】本発明に係る電子機器の第1の実施形態のシステム構成例を示す図。
【図3】本発明に係る電子機器の第1の実施形態の状態遷移図。
【図4】本発明に係る電子機器の第1の実施形態におけるセキュリティ強化方法のフローチャート。
【図5】本発明に係る電子機器の第2の実施形態の外観の一例を示す図。
【図6】本発明に係る電子機器の第2の実施形態の状態遷移図。
【図7】本発明に係る電子機器の第2の実施形態におけるセキュリティ強化方法のフローチャート
【図8】本発明に係る電子機器の第3の実施形態の外観の一例を示す図。
【符号の説明】
【0097】
1、1a、1b 電子機器
2 電子機器本体
3 カバー
4 筐体
5 液晶表示器
6 操作キー
7 電源スイッチ
7a 電源/認証スイッチ
8 挿入口
9 ラッチ片
10 認証スイッチ
11 指紋センサ(入力手段)
12 ロック機構
20 CPU
21 OS
23 不揮発性メモリ
24 主メモリ
25 バス
26 電源コントローラ
27 電源部
30 取付ネジ
40 筐体本体
41 蓋板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
前記本体に開閉自在に取り付けられるとともに前記本体に設けられる操作部を覆うカバーと、
前記本体に対して前記カバーを閉じた状態において前記本体と前記カバーとを固定するロック機構と、
前記本体に対して前記カバーを閉じた状態において生体情報を入力する入力手段と、
前記入力手段から入力された生体情報に基づいて認証を行う認証手段と、
前記認証手段による認証が成功した場合に前記ロック機構による前記本体と前記カバーとの固定を解除する制御手段と、
を備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記生体情報は指紋情報であることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記本体に対して前記カバーを閉じた状態において操作可能なスイッチを備え、
前記制御手段は、
前記本体に対して前記カバーを閉じた状態において前記スイッチが押下されると前記電子機器の電源をオンにし、前記認証が成功した場合には前記ロック機構を解除した後に前記入力手段の電源をオフとし、前記認証が失敗した場合には前記カバーを閉じた状態で前記電子機器の電源をオフとする、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項4】
前記本体は、
一面に開口を有する箱状の筐体と、
前記開口を覆う蓋板と、
前記蓋板を前記本体に固定する固定手段とを備えて形成され、
前記カバーは、前記固定手段を覆うことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項5】
前記スイッチは、本電子機器が備える電源スイッチを含むことを特徴とする請求項3記載の電子機器。
【請求項6】
本体と、前記本体に開閉自在に取り付けられるとともに前記本体に設けられる操作部を覆うカバーとを備えた電子機器のセキュリティ強化方法において、
前記本体に対して前記カバーを閉じたときに前記カバーと前記本体とをロック機構で固定する第1ステップと、
前記本体に対して前記カバーを閉じた状態において生体情報を入力する第2ステップと、
入力された前記生体情報に基づいて認証を行う第3ステップと、
前記認証が成功した場合に前記ロック機構を解除する第4ステップと、
を備えたことを特徴とするセキュリティ強化方法。
【請求項7】
前記生体情報は、指紋情報であることを特徴とする請求項6に記載のセキュリティ強化方法。
【請求項8】
前記電子機器は、前記本体に対して前記カバーを閉じた状態において操作可能なスイッチを備え、
前記第1ステップの後、前記スイッチが押下されると前記電子機器の電源をオンにし、
前記第3ステップの後、前記認証が成功した場合には前記ロック機構を解除した後に前記生体情報を入力する入力手段の電源をオフとし、前記認証が失敗した場合には前記カバーを閉じた状態で前記電子機器の電源をオフとする、
ことを特徴とする請求項6に記載のセキュリティ強化方法。
【請求項9】
前記本体は、
一面に開口を有する箱状の筐体と、
前記開口を覆う蓋板と、
前記蓋板を前記本体に固定する固定手段とを備えて形成され、
前記カバーは、前記固定手段を覆うことを特徴とする請求項6に記載のセキュリティ強化方法。
【請求項10】
前記スイッチは、本電子機器が備える電源スイッチを含むことを特徴とする請求項8に記載のセキュリティ強化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−155348(P2006−155348A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−346797(P2004−346797)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】