説明

電子機器筐体の取付構造

【課題】 小型の筐体の電子機器の盗難防止を図り、かつ、取り付ける電子機器筐体のサイズに応じて別部品を用意せずに済み、取り付け作業が容易な電子機器筐体の取付構造を提供する。
【解決手段】 電子機器筐体の取付構造は、取付部材が、第1の電子機器の筐体の外面を係止する複数の係止片を有する第1ブラケットと、第1ブラケットに連結するカバーブラケットと、第1の電子機器の筐体を第1ブラケットに固定する第1固定ネジと、第2の電子機器の筐体の外面に第1ブラケットを固定する第2固定ネジと、第1ブラケットにカバーブラケットを固定する第3固定ネジと、を少なくとも含み、カバーブラケットが、取り付け時に第1固定ネジのネジ頭に近接して対向してネジ頭を覆う第1保護面部と、取り付け時に第2固定ネジのネジ頭に近接して対向してネジ頭を覆う第2保護面部と、を少なくとも有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像音響機器、または、パーソナルコンピューター等の電子計算機を構成する小型の電子機器筐体を、液晶表示装置に代表される映像表示装置などの大型の他の電子機器筐体に取り付ける場合に、小型の電子機器筐体の盗難防止を図る取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
セットトップボックス等の映像音響機器、または、パーソナルコンピューター等の電子計算機を構成する小型の電子機器筐体を、液晶表示装置に代表される映像表示装置などの大型の他の電子機器筐体に取り付ける場合がある。特に、ディスプレイ装置には、その筐体の背面側などに周辺機器又はスタンド等を取り付けるのに、VESA(Video Electoronics Standard Association)規格が用いられている場合がある。VESA規格により、ディスプレイ装置に設けるネジ穴の大きさ、ネジ穴の数、あるいは、ネジ穴の位置を統一することにより、異なるメーカーが供給する製品同士であっても、取り付け可能になるという利点がある。
【0003】
従来には、液晶ディスプレイ装置の背面側に、小型の筐体を有するパーソナルコンピューターを、VESAマウントキットという取付部材を使用して取り付けて一体化し、さらなる省スペース化を図ろうとするものがある。このVESAマウントキットは、VESA規格75×75mm、および100×100mmに準拠している。例えば、ディスプレイ装置が少なくともその一方であるVESA規格100×100mmに準拠していれば、ユーザーは、このパーソナルコンピューターをディスプレイ装置に取り付けることが出来る(非特許文献1)。もちろん、ユーザーは、このパーソナルコンピューターをディスプレイ装置から取り外すことが出来る。
【0004】
ただし、上記のような小型の筐体を有するパーソナルコンピューターを、ディスプレイ装置の背面に取り付けた状態で、ホテルの客室等の不特定なユーザーが使用し得る環境にホテル事業者等が設置する場合には、不正の意図を有するユーザーが、このパーソナルコンピューターをディスプレイ装置から取り外して持ち去ってしまうという盗難事件が発生する可能性がある。従来には、パーソナルコンピューターにチェーンロックなどの盗難防止器具を取り付けて、ディスプレイ装置、もしくは、他の家具等に固定して、盗難事件を防止しようとする場合がある。しかし、盗難防止のために専用のチェーンロックなどを用意する場合には、コストが掛かる上に見栄えが悪くなる、という問題がある。また、VESA規格とは異なる特別な取付方法を採用すると、盗難防止のためのコストが掛かる上に、取り付けの作業性が悪くなるという問題がある。
【0005】
また、従来には、車載用表示装置の脱落を防止するために、保持部からの脱落防止機構を備えた表示装置であって、前記保持部は、設置箇所に固定されるベース部と、一方の端部が前記ベース部に取り付けられ、他方の端部に前記脱落防止機構との嵌合部が設けられたアーム部とを有し、前記脱落防止機構は、前記表示装置に設けられた、下端が開放され、該下端から挿入された前記嵌合部が前記表示装置の上下方向に移動可能に嵌合する溝部と、前記溝部と嵌合している前記嵌合部が前記下端から外れることを防止する防止部材と、前記溝部の下端に設けられた、前記防止部材を取り付けるための取付部と、を有することを特徴とする表示装置がある(特許文献1)。好ましくは、前記防止部材は、ネジ或いはボルトであり、盗難防止を図る防止部材が螺着されるネジ穴或いはボルト穴である場合がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】オンキヨー株式会社、”PRESS RELEASE”、[online]、平成21年10月19日、インターネット<URL:http://www.jp.onkyo.com/news/newproducts/pc/20091019_dt/20091019_dt.pdf>
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−148347号公報 (第1図〜第5図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の従来技術が有する問題を解決するためになされたものであり、その目的は、電子機器筐体の取付構造に関し、小型の筐体の電子機器の盗難防止を図り、かつ、取り付ける電子機器筐体のサイズに応じて別部品を用意せずに済み、取り付け作業が容易な電子機器筐体の取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電子機器筐体の取付構造は、第1の電子機器を、他の第2の電子機器に取付部材を介して取り付ける電子機器筐体の取付構造であって、取付部材が、第1の電子機器の筐体の外面を係止する複数の係止片を有する第1ブラケットと、第1ブラケットに連結するカバーブラケットと、第1の電子機器の筐体を第1ブラケットに固定する第1固定ネジと、第2の電子機器の筐体の外面に取付部材を固定する第2固定ネジと、第1ブラケットにカバーブラケットを固定する第3固定ネジと、を少なくとも含み、カバーブラケットが、取り付け時に第1固定ネジのネジ頭に近接して対向してネジ頭を覆う第1保護面部と、取り付け時に第2固定ネジのネジ頭に近接して対向してネジ頭を覆う第2保護面部と、を少なくとも有する。
【0010】
また、本発明の電子機器筐体の取付構造は、第2の電子機器の筐体の外面に連結する第2ブラケットと、第1ブラケットと第2ブラケットとを連結する第4固定ネジと、をさらに含む。
【0011】
好ましくは、本発明の電子機器筐体の取付構造は、第4固定ネジが、第1の電子機器の筐体の取り付け時に、筐体によりネジ頭が覆われる。
【0012】
好ましくは、本発明の電子機器筐体の取付構造は、第4固定ネジが、カバーブラケットの取り付け時に、カバーブラケットによりネジ頭が覆われる。
【0013】
好ましくは、本発明の電子機器筐体の取付構造は、第1固定ネジまたは第2固定ネジが、複数のネジの組で構成され、カバーブラケットの第1保護面部が、取り付け時に少なくとも一つの第1固定ネジのネジ頭に近接して対向してネジ頭を覆い、カバーブラケットの第2保護面部が、取り付け時に少なくとも一つの第2固定ネジのネジ頭に近接して対向してネジ頭を覆う。
【0014】
また、本発明の電子機器筐体の取付構造は、第3固定ネジが、盗難防止を図る三角形、四角形、あるいは、六角形等の多角形状の穴部、または、ツーホールタイプの穴部、または、ピン・TRXタイプの穴部、または、トライウィングタイプの穴部、または、星形の穴部、のいずれかを含むネジ頭を有する。
【0015】
また、本発明の電子機器筐体の取付構造は、カバーブラケットが、第1の電子機器の筐体の外面を係止して固定する固定係止片をさらに有する。
【0016】
以下、本発明の作用について説明する。
【0017】
本発明の電子機器筐体の取付構造は、第1の電子機器を、他の第2の電子機器に取付部材を介して取り付ける電子機器筐体の取付構造である。取付部材は、一つ又は複数のブラケットと、カバーブラケットと、第1の電子機器の筐体を第1ブラケットに固定する第1固定ネジと、第2の電子機器の筐体の外面に取付部材である第1ブラケット(または第2ブラケット)を固定する第2固定ネジと、第1ブラケットまたは第2ブラケットにカバーブラケットを固定する第3固定ネジと、を少なくとも含む。
【0018】
例えば、第1の電子機器と、他の第2の電子機器と、これらを取り付ける取付部材であるブラケットとは、好ましくは、VESA規格に準拠している。ブラケットおよびカバーブラケットは、剛性を有する鉄板を折り曲げ加工して形成した部材である。したがって、パーソナルコンピューター等の第1の電子機器を、VESA規格に準拠するディスプレイ装置等の他の第2の電子機器に取付部材を介して取り付けることができる。
【0019】
ここで、カバーブラケットは、取り付け時に第1固定ネジのネジ頭に近接して対向してネジ頭を覆う第1保護面部と、取り付け時に第2固定ネジのネジ頭に近接して対向してネジ頭を覆う第2保護面部と、を少なくとも有し、カバーブラケットを取り付けた状態では、第1固定ネジも第2固定ネジも、通常の工具では廻せないようにすることができる。第1固定ネジまたは第2固定ネジが、複数のネジの組で構成される場合にも、カバーブラケットの第1保護面部が、取り付け時に少なくとも一つの第1固定ネジのネジ頭に近接して対向してネジ頭を覆い、カバーブラケットの第2保護面部が、取り付け時に少なくとも一つの第2固定ネジのネジ頭に近接して対向してネジ頭を覆うようにすればよい。また、カバーブラケットは、第1ブラケットまたは第2ブラケットに、好ましくは、盗難防止を図るために通常の工具では廻せない三角形、四角形、あるいは、六角形等の多角形状の穴部、または、ツーホールタイプの穴部、または、ピン・TRXタイプの穴部、または、トライウィングタイプの穴部、または、星形の穴部、のいずれかを含むネジ頭を有する第3固定ネジにより固定される。
【0020】
したがって、不特定なユーザーが使用し得る環境においても、不正の意図を有するユーザーが第2の電子機器から第1の電子機器を取り外そうとしても、実質的に取り外すことが困難になり、盗難事件の発生を抑制することが出来る。カバーブラケットが、盗難防止用の専用工具を要する第3固定ネジにより第1ブラケットまたは第2ブラケットに固定されている限り、カバーブラケットを外さなければ、第1の電子機器に連結する第1固定ネジ、または、他の第2の電子機器に連結する第2固定ネジを、それぞれ緩めることが出来ず、取り外して盗み出すことが出来ないからである。さらに、これらの電子機器を設置しようとする事業者は、盗難防止用の専用工具を用意すれば、第3固定ネジを廻して取り付け、取り外しの作業を容易に行うことが出来る。
【0021】
また、カバーブラケットが、第1の電子機器の筐体の外面を係止して固定する固定係止片をさらに有していれば、より盗難事件を抑制することが出来る。仮に、不正の意図を有するユーザーが、第1の電子機器の筐体を第1ブラケットに固定する第1固定ネジを緩めて、これを外すことができたとしても、カバーブラケットをともに外してしまわない限り、これらの第1ブラケットの複数の係止片と、カバーブラケットの固定係止片と因って、第1の電子機器の筐体を取り外すことは出来ない。
【0022】
なお、取付部材は、上記のような第1ブラケットと、第2ブラケットと、から複数のブラケットで構成されるものであっても良く、その場合には、第1ブラケットと第2ブラケットとを連結する第4固定ネジと、を少なくとも含む。ここで、第4固定ネジは、カバーブラケットの取り付け時に、カバーブラケットによりネジ頭が覆われるものであってもよく、また、第1の電子機器の筐体の取り付け時に、この筐体によりネジ頭が覆われるものであってもよい。つまり、第4固定ネジは、ネジ頭が覆われるので取り付け状態では露出せず、盗難防止を図ることが出来る。
【0023】
また、第2の電子機器の筐体に連結する第1ブラケットまたは第2ブラケットが、複数のブラケットから構成されていれば、第1ブラケットまたは第2ブラケットは、連結する第2の電子機器の筐体に応じて、VESA規格以外にも他の個別の規格に対応することができる。例えば、第1ブラケットが一部のVESA規格にのみ対応するVESAマウントキットであっても、これに第4固定ネジで連結する第2ブラケットが、他の規格にも対応可能な複数のネジ穴を有していれば、様々な規格に個別に対応する取付部材を用意せずに済み、コスト低減が可能になるという利点を有する。
【発明の効果】
【0024】
本発明の電子機器筐体の取付構造は、小型の筐体の電子機器の盗難防止を図り、かつ、取り付ける電子機器筐体のサイズに応じて別部品を用意せずに済み、取り付け作業が容易な電子機器筐体の取付構造を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の好ましい実施形態による電子機器筐体の取付構造を説明する展開斜視図である。(実施例1)
【図2】本発明の好ましい実施形態による電子機器筐体の取付構造を説明する一部を拡大した背面図である。(実施例1)
【図3】盗難防止固定ネジのネジ頭の穴部の形状を示す図である。(実施例1)
【図4】本発明の他の好ましい実施形態による電子機器筐体の取付構造を説明する一部を拡大した展開斜視図である。(実施例2)
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好ましい実施形態による電子機器筐体の取付構造について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【実施例1】
【0027】
図1は、本発明の好ましい実施形態による電子機器筐体の取付構造を説明する展開斜視図である。具体的には、図1および図2に図示される取付構造は、第1の電子機器としてのパーソナルコンピューター1を、他の第2の電子機器としての薄型のディスプレイ装置2に、複数の部材からなる取付部材3を介して取り付ける電子機器筐体の取付構造である。また、図2は、ディスプレイ装置2に取り付けられたパーソナルコンピューター1を、背面側から一部拡大して図示した背面図である。なお、図を分かりやすくするために、説明に不要な一部の構成の図示を省略している。
【0028】
図1および図2に図示するパーソナルコンピューター1およびディスプレイ装置2は、ホテルの客室等の不特定なユーザーが使用し得る環境にホテル事業者等が設置することが想定されている。したがって、不正の意図を有するユーザーが、このパーソナルコンピューター1をディスプレイ装置2から取り外して持ち去ってしまうことのないように、盗難防止を図る必要がある。
【0029】
本実施例のパーソナルコンピューター1は、図示するような底面側の一部で厚みが厚い略L字断面形状になる薄型小型の筐体10を有している。パーソナルコンピューター1の筐体10の底面側には、後述する固定ネジ6が螺合するネジ穴11が設けられている。また、ディスプレイ装置2は、(図示しない)表示部を含む筐体20の背面側に、パーソナルコンピューター1などの他の機器、あるいは、ディスプレイ装置2を固定するスタンド等を取り付けるための複数の後述する固定ネジ7が螺合するネジ穴21が設けられている。これらのネジ穴21の大きさ又は設置間隔は、VESA規格に準拠するものであってもよく、また、特定のメーカー・供給者が定める寸法に沿うものであってもよい。
【0030】
本実施例の複数の取付部材3は、金属を加工して成形されるブラケット4と、ブラケット4と同様に加工して成形されるカバーブラケット5と、1本の固定ネジ6と、4本の固定ネジ7と、1本の盗難防止固定ネジ8と、を含む。すなわち、パーソナルコンピューター1は、このブラケット4を介して、ディスプレイ装置2に固定される。具体的には、パーソナルコンピューター1とブラケット4とは、固定ネジ6により連結され、ディスプレイ装置2とブラケット4とは、固定ネジ7により連結される。そして、カバーブラケット5は、盗難防止固定ネジ8によりブラケット4に連結される。
【0031】
ブラケット4は、厚み約1mmの鉄板をプレスおよび曲げ切り起こし加工して形成する基体40を有し、本実施例の場合には、全体を略「エ」の字状の形に加工されている。ブラケット4は、基体40の中央部分にパーソナルコンピューター1を横方向(図1に図示する左側方向)から挿入して取り付けることが可能なように、パーソナルコンピューター1の筐体10の外面を係止する複数の係止片41を有するように切り起こし加工されている。パーソナルコンピューター1の筐体10の底面を係止する係止片41には、固定ネジ6のネジ部が貫通する貫通孔43が設けられており、図2に図示するような取り付け状態では、固定ネジ6が下側からパーソナルコンピューター1の筐体10のネジ穴11に螺合して、パーソナルコンピューター1をブラケット4に対して固定することが出来る。
【0032】
また、ブラケット4は、様々な規格・寸法に対応するために、その基体40の四隅に複数の貫通孔からなる取付孔群42を有している。取付孔群42には、前記のVESA規格75×75mm、および100×100mmに準拠する取付孔を含んでも良い。図1および図2に図示する本実施例の場合には、ディスプレイ装置2の背面側の4つのネジ穴21aと、これらに対応する取付孔群42の中の4つの取付孔42aを利用する。もちろん、他の規格・寸法に取付構造に対応する場合には、取付孔群42の中から対応する他の取付孔を利用すればよい。4つの固定ネジ7が、それぞれブラケット4の取付孔42aを貫通して、ディスプレイ装置2のネジ穴21aと螺合すると、ブラケット4はディスプレイ装置2の背面側に取り付けられる。なお、取付孔群42は、基体40に対してパーソナルコンピューター1の筐体10が密着する面から段差を設けた位置に設けられているので、固定ネジ7のネジ頭は、パーソナルコンピューター1の筐体10に干渉しない。
【0033】
また、カバーブラケット5は、厚み約1mmの鉄板をプレスおよび曲げ切り起こし加工して形成する基体50を有し、本実施例の場合には、全体を略「L」の字状の形に加工されている。カバーブラケット5は、その基体50がブラケット4の基体40の左隅であって、パーソナルコンピューター1の筐体10が密着する面と同一の面に密着するように固定される。カバーブラケット5は、基体50の中央部分にパーソナルコンピューター1を横方向(図1に図示する左側方向)から係止して固定する固定係止片51を有するように切り起こし加工されている。さらに、カバーブラケット5は、基体50の底面側部分に取り付け時に下側から固定ネジ6のネジ頭に近接して対向してネジ頭を覆う保護切り起こし片52を有するように切り起こし加工されている。したがって、固定係止片51と、保護切り起こし片52とは、お互いに直交する位置関係になるように、基体50から形成されている。また、カバーブラケット5の基体50には、盗難防止固定ネジ8のネジ部が貫通する貫通孔53が設けられている。
【0034】
図3は、盗難防止固定ネジ8のネジ頭の穴部の形状を示す図である。本実施例の盗難防止固定ネジ8は、図3(a)に図示するように、ネジ頭に特殊な六角穴を有しており、専用の特殊な工具がない限り、ネジ頭を廻して取り付け・取り外しすることが困難なネジである。したがって、これらのパーソナルコンピューター1およびディスプレイ装置2を、ホテルの客室等の不特定なユーザーが使用し得る環境に設置する場合には、ホテル事業者(設置作業を請け負う工事者を含む)などの取付加工者は、盗難防止固定ネジ8のネジ頭に丁度嵌合して回転させることが出来る(図示しない)専用工具によって盗難防止固定ネジ8を回転させて、カバーブラケット5の取り付け・取り外しを行う。もちろん取付加工者は、取り付け・取り外しに際してこの専用工具を用意するので、盗難防止固定ネジ8を廻して、パーソナルコンピューター1およびディスプレイ装置2の取り付け、取り外しの作業を容易に行うことが出来る。
【0035】
なお、盗難防止固定ネジ8は、例えば、図3に例示するような、他の(b)三角形、(c)四角形、あるいは、五角形等の多角形状の穴部、または、(d)ツーホールタイプの穴部、または、(e)ピン・TRXタイプの穴部、または、(f)トライウィングタイプの穴部、または、(g)星形の穴部、のいずれかを含むネジ頭を有するものであればよく、他のネジ頭を有するものであってもよい。
【0036】
したがって、取付加工者が、専用工具によって盗難防止固定ネジ8を回転させて、カバーブラケット5をブラケット4に取り付けると、図2に図示するような取り付け状態になる。つまり、ディスプレイ装置2を背面側から見て、左下隅方向に位置する固定ネジ7は、カバーブラケット5の基体50に隠れて、図2には現れない。ブラケット4の基体40に対して取付孔群42がパーソナルコンピューター1の筐体10が密着する面から段差を設けた位置に設けられているので、カバーブラケット5の基体50は、カバーブラケット5の取り付け時に、4本の内の少なくとも1本の固定ネジ7のネジ頭に近接して対向し、この固定ネジ7のネジ頭を覆うことができる。
【0037】
また、固定ネジ6は、底面側からパーソナルコンピューター1の筐体10のネジ穴11に螺合して、パーソナルコンピューター1をブラケット4に対して固定する。ただし、取付加工者が、専用工具によって盗難防止固定ネジ8を回転させて、カバーブラケット5をブラケット4に取り付けると、カバーブラケット5の保護切り起こし片52が下側から切り起こし加工されているので、この保護切り起こし片52が固定ネジ6のネジ頭に近接して対向してネジ頭を覆うことができる。
【0038】
その結果、カバーブラケット5の基体50に覆われた固定ネジ7は、カバーブラケット5を専用工具によって盗難防止固定ネジ8を取り外さない限り、液晶ディスプレイ装置2からパーソナルコンピューター1を実質的に取り外せない。同時に、カバーブラケット5の保護切り起こし片52に覆われた固定ネジ6は、カバーブラケット5を専用工具によって盗難防止固定ネジ8を取り外さない限り、液晶ディスプレイ装置2からパーソナルコンピューター1を実質的に取り外せない。このように、盗難防止固定ネジ8で固定されるカバーブラケット5が、取り付け時に固定ネジ6のネジ頭に近接して対向してネジ頭を覆う保護切り起こし片52と、取り付け時に固定ネジ7のネジ頭に近接して対向してネジ頭を覆う基体50と、を有しているので、不正の意図を有するユーザーが、パーソナルコンピューター1をディスプレイ装置2から取り外して持ち去ってしまうことが無いようにすることができ、盗難事件の発生を抑制することが出来る。
【0039】
このように、この取付部材3を構成する固定ネジ6ないし7が、複数のネジの組で構成される場合には、カバーブラケット5が、その基体50が取り付け時にその4本の内の少なくとも一つの固定ネジ7のネジ頭に近接して対向してネジ頭を覆い、カバーブラケット5の他の部分である保護切り起こし片52が、取り付け時に他の固定ネジ6のネジ頭に近接して対向してネジ頭を覆うものであればよい。
【0040】
カバーブラケット5は、基体50の中央部分に前述のような固定係止片51を有している。固定係止片51は、ブラケット4に対してパーソナルコンピューター1を横方向(図1に図示する左側方向)から係止して固定する。したがって、不正の意図を有するユーザーが、パーソナルコンピューター1をディスプレイ装置2から取り外そうとして、仮に、下側から筐体10とブラケット4とを連結する固定ネジ6のネジ頭を回転させて、固定ネジ6を筐体10のネジ穴11から外してしまい、ブラケット4とパーソナルコンピューター1との連結を解除してしまっても、盗難防止固定ネジ8でブラケット4と連結するカバーブラケット5の固定係止片51が有るので、パーソナルコンピューター1を取り外すことが難しくなる。このように、カバーブラケット5が、固定するネジのネジ頭を覆うだけでなく、筐体10を固定する固定係止片を有していれば、盗難事件の発生の割合をより低く抑制することが出来る。
【実施例2】
【0041】
図4は、本発明の他の好ましい実施形態による電子機器筐体の取付構造を説明する展開斜視図である。具体的には、図4は、別の複数の部材からなる取付部材3aによりディスプレイ装置2に取り付けられたパーソナルコンピューター1を、背面側から一部拡大して図示した背面図である。図4に図示する取付部材3aは、実質的に、先の実施例における取付部材3を構成するブラケット4の構成が、複数のブラケット40a、40b、40cとからなるブラケット4aに変更されている点で相違するのみである。したがって、先の実施例と共通するところには共通する番号を付して、説明を省略する。
【0042】
本実施例の複数の取付部材3aは、金属を加工して成形されるブラケット40aと、40bと、40cとからなるブラケット4aと、カバーブラケット5と、1本の固定ネジ6と、4本の固定ネジ7と、1本の盗難防止固定ネジ8と、さらに、4本の固定ネジ9と、を含む。
【0043】
ブラケット40aと、40bと、40cとは、それぞれ厚み約1mmの鉄板をプレスおよび曲げ切り起こし加工して形成するブラケットであり、先の実施例における全体を略「エ」の字状の形の基体40を、上部分(40a)と、下部分(40b)と、中央部分(40c)と、に分けて構成したものである。ブラケット40cは、従来からのVESAマウントキットにおけるブラケットを流用するものであり、その基体の中央部分にパーソナルコンピューター1を横方向(図1に図示する左側方向)から挿入して取り付けることが可能なように、パーソナルコンピューター1の筐体10の外面を係止する複数の係止片41を有するように切り起こし加工されている。パーソナルコンピューター1の筐体10の底面を係止する係止片41には、固定ネジ6のネジ部が貫通する貫通孔43が設けられており、取り付け状態では、固定ネジ6が下側からパーソナルコンピューター1の筐体10のネジ穴11に螺合して、パーソナルコンピューター1をブラケット40cに対して固定することが出来る。
【0044】
また、ブラケット40aおよび40bは、様々な規格・寸法に対応するために、ブラケット4aを組み立てたときに基体の四隅なる部分に相当する位置に、複数の貫通孔からなる取付孔群42を有している。ブラケット40aおよび40bは、それぞれ中央に位置するブラケット40cに、固定ネジ9により連結する。本実施例では、4つの固定ネジ9は、パーソナルコンピューター1の筐体10をブラケット40cに対して取り付けるときに、筐体10によりネジ頭が覆われる位置にある。その結果、パーソナルコンピューター1は、このブラケット4aを介して、ディスプレイ装置2に固定される。
【0045】
また、ブラケット40aおよび40bは、様々な規格・寸法に対応するために、その基体40の四隅に複数の貫通孔からなる取付孔群42を有している。前記のVESA規格、あるいは、他の規格・寸法に取付構造に対応する場合には、取付孔群42の中から対応する他の取付孔を利用するだけでなく、ブラケット40aおよび40bと、ブラケット40cとの組立位置を変えて固定ネジ9で連結しても良い。このようにすれば、ブラケット40cが一部のVESA規格にのみ対応するVESAマウントキットであっても、これに固定ネジ9で連結するブラケット40aおよび40bが、他の規格にも対応可能な複数のネジ穴を有していれば、様々な規格に個別に対応する取付部材を用意せずに済み、共通部品化することによって構成部品が少なくなれば、さらにコスト低減が可能になる。
【0046】
なお、ブラケット40aおよび40bと、ブラケット40cとを連結する4つの固定ネジ9は、カバーブラケット5の取り付け時に、このカバーブラケットによりその一つのネジ頭が覆われるものであってもよい。その結果、パーソナルコンピューター1の筐体10により、あるいは、カバーブラケット5の基体50により覆われた固定ネジ7、ないし、9は、カバーブラケット5を専用工具によって盗難防止固定ネジ8を取り外さない限り、液晶ディスプレイ装置2からパーソナルコンピューター1を実質的に取り外せない。したがって、不正の意図を有するユーザーが、パーソナルコンピューター1をディスプレイ装置2から取り外して持ち去ってしまうことが無いようにすることができ、盗難事件の発生を抑制することが出来る。
【0047】
なお、本発明は上記実施例に限定されない。取付部材3ないし3aの構成・形状、または、使用する材料、部材等は、パーソナルコンピューター1およびディスプレイ装置2の組み合わせにより、適宜変更可能である。また、カバーブラケット5の形状は、上記の略L字状に限定されず、取り付け時に1つの固定ネジのネジ頭に近接して対向してそのネジ頭を覆う部分と、取り付け時に他の固定ネジのネジ頭に近接して対向してそのネジ頭を覆う部分と、を少なくとも有しており、六角形等の多角形状の穴部を有する盗難防止用のネジを用いて固定するものであれば、その形状を問わない。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の電子機器筐体の取付構造は、映像音響機器又は電子計算機のみならず、盗難防止の要請がある機器の取付構造にも適用が可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 パーソナルコンピューター
2 ディスプレイ装置
3、3a 取付部材
4、4a、4b、4c ブラケット
5 カバーブラケット
6、7、9 固定ネジ
8 盗難防止固定ネジ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電子機器を、他の第2の電子機器に取付部材を介して取り付ける電子機器筐体の取付構造であって、
該取付部材が、該第1の電子機器の筐体の外面を係止する複数の係止片を有する第1ブラケットと、
該第1ブラケットに連結するカバーブラケットと、
該第1の電子機器の筐体を該第1ブラケットに固定する第1固定ネジと、
該第2の電子機器の筐体の外面に該取付部材を固定する第2固定ネジと、
該第1ブラケットに該カバーブラケットを固定する第3固定ネジと、
を少なくとも含み、
該カバーブラケットが、取り付け時に該第1固定ネジのネジ頭に近接して対向して該ネジ頭を覆う第1保護面部と、取り付け時に該第2固定ネジのネジ頭に近接して対向して該ネジ頭を覆う第2保護面部と、を少なくとも有する、
電子機器筐体の取付構造。
【請求項2】
前記第2の電子機器の筐体の外面に連結する第2ブラケットと、
前記第1ブラケットと該第2ブラケットとを連結する第4固定ネジと、
をさらに含む、
請求項1に記載の電子機器筐体の取付構造。
【請求項3】
前記第4固定ネジが、前記第1の電子機器の筐体の取り付け時に、該筐体によりネジ頭が覆われる、
請求項2に記載の電子機器筐体の取付構造。
【請求項4】
前記第4固定ネジが、前記カバーブラケットの取り付け時に、該カバーブラケットによりネジ頭が覆われる、
請求項2に記載の電子機器筐体の取付構造。
【請求項5】
前記第1固定ネジまたは前記第2固定ネジが、複数のネジの組で構成され、前記カバーブラケットの前記第1保護面部が、取り付け時に少なくとも一つの該第1固定ネジのネジ頭に近接して対向して該ネジ頭を覆い、該カバーブラケットの前記第2保護面部が、取り付け時に少なくとも一つの該第2固定ネジのネジ頭に近接して対向して該ネジ頭を覆う、
請求項1から4のいずれかに記載の電子機器筐体の取付構造。
【請求項6】
前記第3固定ネジが、三角形、四角形、あるいは、六角形等の多角形状の穴部、または、ツーホールタイプの穴部、または、ピン・TRXタイプの穴部、または、トライウィングタイプの穴部、または、星形の穴部のいずれかを含むネジ頭を有する、
請求項1から5のいずれかに記載の電子機器筐体の取付構造。
【請求項7】
前記カバーブラケットが、前記第1の電子機器の筐体の外面を係止して固定する固定係止片をさらに有する、
請求項1から6のいずれかに記載の電子機器筐体の取付構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−228514(P2011−228514A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97612(P2010−97612)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(710014351)オンキヨー株式会社 (226)
【Fターム(参考)】