説明

電子機器

【課題】レーザ光を用いて相手装置と情報を送受している途中で相手装置との相対位置が変化した場合の安全性を確保する。
【解決手段】可搬性を有する電子カセッテ12と画像読出装置84がレーザ光による通信を行っている間、電子カセッテ12及び画像読出装置84のレーザ光受光領域の周囲に設けた周囲光センサ130,132によってレーザ光の検出を行い、周囲光センサ130,132によるレーザ光の受光量の検出値P2が、通信開始時の検出値である基準値P2 refよりも所定値γ以上大きくなったか否かを監視する。P2≧P2ref+γとなった場合は、電子カセッテ12と画像読出装置84との相対位置が比較的大きく変化したと判断できるので、電子カセッテ12及び画像読出装置84からのレーザ光の射出を停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子機器に係り、特に、送信対象情報に応じて変調したレーザ光によって相手装置との情報の送受を行う電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、赤外の波長域のレーザ光を用いて非常に高い伝送速度(例えば1Gb/s)での無線通信を実現する技術が提案されている(非特許文献1参照)。この技術を適用すれば、任意の電子機器の間でのデータの送受において、少なくとも一方の電子機器が可搬性を有し、かつ大量のデータを送受する場合にも、データの送受を行う電子機器同士を通信ケーブル等を介して接続したりすることなく、大量のデータの送受を短時間で完了させることが可能となるので、既存の機器同士の無線通信における通信時間の大幅な短縮を実現できたり、従来は無線通信でのデータの送受を想定していなかった機器間の大量データの送受が無線通信で実現できたり等、様々な用途への適用が期待される。
【0003】
例えば特許文献1には、放射検出器及び画像メモリを内蔵し、放射検出器によって検出された放射線画像を画像データとして画像メモリに格納しておき、画像メモリから読み出した画像データを無線信号に変換して外部の信号処理回路へ出力する構成の放射線検出器用カセッテ(電子カセッテともいう)が開示されている。医療現場には、電波が放射される環境に設置することが望ましくない機器が多数存在していることから、上記のカセッテに好適な無線通信としては、従来、IrDA(Infrared Data Association)の規格に準拠した赤外線通信等に限られていたが、IrDAの規格に準拠した赤外線通信は通信速度が115kb/s〜6Mb/s程度であるのに対し、この種の医療用機器では、読影に悪影響を及ぼすことを回避するために画像データを圧縮する場合も圧縮率の低い可逆圧縮が選択されるので、画像データの転送に非常に長い時間を要することになる。これに対し、上記のカセッテにおける無線通信として前述のレーザ光による通信を適用すれば、画像データ転送時間の大幅な短縮を実現することができる。
【0004】
なお、上記に関連して特許文献2には、リードフレームに設けられるレーザーダイオードと、レーザーダイオードの光出力分布拡大及び出力調整を行う調整手段としての透明樹脂部を備えた構成の光通信モジュールにおいて、透明樹脂部を、レーザーダイオードを封止する透明樹脂と、該透明樹脂に添加されて透明樹脂の全部に略均一に分布し、光の透過及び拡散機能を発揮するガラスフィラーを含んで構成する技術が開示されている。
【特許文献1】特許第3494683号公報
【特許文献2】特開2007−81134号公報
【非特許文献1】株式会社KDDI研究所、”携帯電話を用いた伝送速度1Gbit/s 赤外線ワイヤレス通信の実現”、[online]、[平成20年1月21日検索]、インターネット<URL:http://www.kddilabs.jp/press/img/83_1.pdf>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電子機器同士がレーザ光を用いた無線通信を行う形態において、少なくとも一方の電子機器が可搬性を有している場合、双方の電子機器をレーザ光による無線通信が可能な位置関係に配置した状態で無線通信を行うことになるが、少なくとも一方の電子機器が可搬性を有していることで、レーザ光による通信の最中に電子機器の筐体に押圧力や振動等が加わった等の場合に双方の電子機器の相対位置が変化し、この相対位置の変化が、双方の電子機器で挟まれた空間からのレーザ光の漏出に繋がる可能性がある。
【0006】
これに対して特許文献2に記載の技術は、ガラスフィラーによってレーザーダイオードからの光の屈折を繰り返させることで、光通信モジュールの光出力分布の拡大及び光通信モジュールの光出力量の低下を実現する技術であり、レーザ光による通信中の電子機器の相対位置が変化した場合のレーザ光の漏出については何ら考慮されていない。
【0007】
本発明は上記事実を考慮して成されたもので、レーザ光を用いて相手装置と情報を送受している途中で相手装置との相対位置が変化した場合の安全性を確保することが可能な電子機器を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明に係る電子機器は、レーザ光を射出する第1射出手段及び該第1射出手段から射出されるレーザ光を送信対象情報に応じて変調する第1変調手段を備えた相手装置の筐体と自装置の筐体との相対位置が、前記相手装置の前記第1射出手段から射出されたレーザ光が自装置の筐体の外面上に設けられた受光領域内に入射される通信可能位置に調整された状態で、前記受光領域内に入射されたレーザ光を検出し、レーザ光の検出結果から前記送信対象情報を復調することで、前記相手装置から前記送信対象情報を受信する受信手段と、自装置の筐体の外面上のうち少なくとも前記受光領域の周囲に相当する領域に照射されたレーザ光を検出するレーザ光検出手段と、前記レーザ光検出手段によってレーザ光が検出された場合に警報を発するか、又は、前記相手装置からのレーザ光の射出を停止させる制御手段と、を含んで構成されている。
【0009】
請求項1記載の発明では、送信対象情報に応じて変調したレーザ光を射出する機能を相手装置が備えており、受信手段は、相手装置の筐体と自装置の筐体との相対位置が、相手装置から射出されたレーザ光が自装置の筐体の外面上に設けられた受光領域内に入射される通信可能位置に調整された状態で、受光領域内に入射されたレーザ光を検出し、レーザ光の検出結果から送信対象情報を復調することで、相手装置から送信対象情報を受信する。ここで、相手装置の筐体と自装置の筐体との相対位置を通信可能位置に調整した状態でレーザ光による情報の送受 (少なくとも相手装置からのレーザ光による送信対象情報の送信)を行っている最中に自装置及び相手装置の少なくとも一方の筐体に押圧力や振動等が加わると、自装置と相手装置との相対位置の変化が生じ、この相対位置の変化量が大きければ、自装置と相手装置とで挟まれた空間からレーザ光が漏出する可能性があるが、自装置と相手装置との相対位置が変化すると、相手装置から射出されたレーザ光の照射位置が自装置の筐体の外面上に設けられた受光領域から逸脱することで、相手装置から射出されたレーザ光が受光領域の周囲に相当する領域に照射される状態が生ずる。
【0010】
上記に基づき請求項1記載の発明は、自装置の筐体の外面上のうち少なくとも前記受光領域の周囲に相当する領域に照射されたレーザ光を検出するレーザ光検出手段が設けられており、制御手段は、レーザ光検出手段によってレーザ光が検出された場合に警報を発するか、又は、相手装置からのレーザ光の射出を停止させる。これにより、レーザ光検出手段によってレーザ光が検出された場合に警報を発するように制御手段が構成されている場合は、自装置と相手装置との相対位置が比較的大きく変化し、自装置と相手装置とで挟まれた空間からレーザ光が漏出する可能性が生ずると、これに伴いレーザ光の照射位置が受光領域が逸脱することでレーザ光検出手段によってレーザ光が検出され、警報が発せられることで、自装置と相手装置とで挟まれた空間からレーザ光が漏出する可能性がある状態となったことを利用者に認識させることができ、安全性確保のための対策を利用者に講じさせることができる。
【0011】
また、レーザ光検出手段によってレーザ光が検出された場合に、相手装置からのレーザ光の射出を停止させるように制御手段が構成されている場合は、自装置と相手装置との相対位置が比較的大きく変化し、自装置と相手装置とで挟まれた空間からレーザ光が漏出する可能性が生ずると、これに伴いレーザ光の照射位置が受光領域が逸脱することでレーザ光検出手段によってレーザ光が検出され、相手装置からのレーザ光の射出が停止されることで、自装置と相手装置とで挟まれた空間からレーザ光が漏出することを未然に防止することができる。従って、請求項1記載の発明によれば、レーザ光を用いて相手装置と情報を送受している途中で相手装置との相対位置が変化した場合の安全性を確保することが可能となる。
【0012】
なお、請求項1記載の発明において、例えば請求項2に記載したように、レーザ光検出手段はレーザ光の照射光量を検出し、制御手段は、レーザ検出手段によって検出されたレーザ光の照射光量が閾値以上となった場合に警報を発するか、又は、相手装置からのレーザ光の射出を停止させるように構成することが好ましい。これにより、レーザ光の照射光量の大小に拘わらずレーザ光検出手段によってレーザ光が検出されると警報を発するか、又は、相手装置からのレーザ光の射出を停止させる場合と比較して、レーザ光の同一波長域の光がレーザ検出手段に偶然に入射された場合に、これが自装置と相手装置との相対位置の変化と誤判断されることを防止することができ、自装置と相手装置との相対位置の変化を確実に検知することができる。
【0013】
また、請求項2記載の発明において、制御手段は、例えば請求項3に記載したように、相手装置の筐体と自装置の筐体との相対位置が通信可能位置に調整され、かつ、受光領域内にレーザ光が入射されている状態で、レーザ光検出手段によって検出されたレーザ光の照射光量に基づいて基準値を設定し、設定した基準値よりも所定値大きい値を閾値として用いるように構成することが好ましい。これにより、相手装置の筐体と自装置の筐体との相対位置が通信可能位置に調整されている状態を基準として、レーザ光の照射光量の変化が判断されるので、自装置と相手装置との相対位置の変化をより正確に検知することができる。
【0014】
また、請求項3記載の発明において、制御手段は、例えば請求項4に記載したように、受信手段が相手装置からの送信対象情報の受信を開始した時点でレーザ光検出手段によって検出されたレーザ光の照射光量、又は、受信手段が相手装置からの送信対象情報の受信を開始してから所定時間が経過する迄の期間にレーザ光検出手段によって検出されたレーザ光の照射光量を代表する値を基準値として設定するように構成することができる。
【0015】
また、請求項1又は請求項2記載の発明において、相手装置へ情報を送信可能な第1送信手段(この第1送信手段はレーザ光によって情報を送信する構成であってもよいし、レーザ光以外の電磁波によって情報を送信する構成であってもよい)が設けられている場合は、制御手段は、例えば請求項5に記載したように、レーザ光の射出停止を指示する指示情報を第1送信手段によって相手装置へ送信させることで、相手装置からのレーザ光の射出を停止させるように構成することができる。
【0016】
また、請求項1又は請求項2記載の発明において、受信手段が相手装置から送信対象情報を正常に受信している間、相手装置へ所定の情報を定期的に送信する第2送信手段(この第2送信手段についても、レーザ光によって情報を送信する構成であってもよいし、レーザ光以外の電磁波によって情報を送信する構成であってもよい)が設けられており、相手装置が、所定の情報を定期的に受信している間、送信対象情報に応じて変調したレーザ光を第1射出手段から射出する構成である場合、制御手段は、例えば請求項6に記載したように、第2送信手段による相手装置への所定の情報の送信を停止させることで、相手装置からのレーザ光の射出を停止させるように構成することも可能である。
【0017】
また、請求項1又は請求項2記載の発明において、請求項1又は請求項2記載の発明に係る電子機器が、レーザ光を射出する第2射出手段と、第2射出手段から射出されるレーザ光を送信対象情報に応じて変調する第2変調手段が設けられており、相手装置とレーザ光によって双方向の通信を行う構成である場合、制御手段は、例えば請求項7に記載したように、相手装置からのレーザ光の射出を停止させる場合に、第2射出手段からのレーザ光の射出も停止させるように構成することが望ましい。
してもよい。
【0018】
また、請求項1〜請求項7の何れかに記載の発明において、レーザ光としては任意の波長のレーザ光を適用可能であるが、本発明に好適なレーザ光は、請求項8に記載したように、目視で確認できない可視域外の波長の非可視レーザ光であり、特に、高速通信を実現できる点から、請求項9に記載したように、非可視レーザ光は赤外域の波長のレーザ光であることが好ましい。
【0019】
また、請求項1〜請求項9の何れかに記載の発明に係る電子機器としては、レーザ光による情報の送受を行うことが可能な任意の装置を適用可能であり、例えば請求項10に記載したように、撮像装置、携帯可能な情報機器、可搬型放射線画像変換装置、当該可搬型放射線画像変換装置から画像情報を読み出す画像読出装置、の何れかを適用することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように本発明は、相手装置の筐体と自装置の筐体との相対位置が通信可能位置に調整された状態で、相手装置から射出されたレーザ光が入射される受光領域の周囲に相当する領域に照射されたレーザ光を検出するレーザ光検出手段を設け、レーザ光検出手段によってレーザ光が検出された場合に警報を発するか、相手装置からのレーザ光の射出を停止させるようにしたので、レーザ光を用いて相手装置と情報を送受している途中で相手装置との相対位置が変化した場合の安全性を確保することが可能となる、という優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。
【0022】
〔第1実施形態〕
図1には、本実施形態に係る放射線画像取扱システム10が示されている。放射線画像取扱システム10は、可搬性を有し、画像情報を担持した放射線が照射される毎に前記画像情報を画像データに変換して蓄積記憶可能な電子カセッテ12と、電子カセッテ12に蓄積記憶された画像データを読み出し可能な画像読出装置84から構成されている。なお、電子カセッテ12及び画像読出装置84は本発明に係る電子機器に各々対応している。また、電子カセッテ12は請求項10に記載の可搬型放射線画像変換装置にも対応しており、画像読出装置84は請求項10に記載の画像読出装置にも対応している。
【0023】
図2(A)に示すように、電子カセッテ12は、放射線画像の撮影時に、エックス線(X線)等の放射線を発生する放射線発生部14と間隔を空けて配置される。このときの放射線発生部14と電子カセッテ12との間は被写体16が位置するための撮影位置とされており、放射線画像の撮影が指示されると、放射線発生部14は予め与えられた撮影条件等に応じた放射線量の放射線を射出する。放射線発生部14から射出された放射線は、撮影位置に位置している被写体16を透過することで画像情報を担持した後に電子カセッテ12に照射される。
【0024】
図2(B)に示すように、電子カセッテ12は、放射線Xを透過させる材料から成り厚みを有する平板状のケーシング(筐体)20によって覆われており、ケーシング20の内部には、ケーシング20のうち放射線Xが照射される照射面22側から順に、被写体16を透過することに伴って生ずる放射線Xの散乱線を除去するグリッド24、放射線Xを検出する放射線検出器(放射線検出パネル)26、及び、放射線Xのバック散乱線を吸収する鉛板28が配設されている。なお、ケーシング20の照射面22をグリッド24で構成してもよい。また、ケーシング20の内部の一端側には、マイクロコンピュータを含む各種回路(後述)を収容するケース30が配置されている。ケース30内部に収容された各種回路が放射線Xの照射に伴って損傷することを回避するため、ケース30の照射面22側には鉛板等を配設しておくことが望ましい。
【0025】
電子カセッテ12の放射線検出器26は、図1に示すTFTアクティブマトリクス基板32上に、放射線を吸収して電荷に変換する光電変換層が積層されて構成されている。光電変換層は例えばセレンを主成分(例えば含有率50%以上)とする非晶質のa−Se(アモルファスセレン)から成り、放射線が照射されると、照射された放射線量に応じた電荷量の電荷(電子−正孔の対)を内部で発生することで、照射された放射線を電荷へ変換する。また、TFTアクティブマトリクス基板32上には、光電変換層で発生された電荷を蓄積する蓄積容量34と、蓄積容量34に蓄積された電荷を読み出すためのTFT36を備えた画素部40(図1では個々の画素部48に対応する光電変換層を光電変換部38として模式的に示している)がマトリクス状に多数個配置されており、電子カセッテ12への放射線の照射に伴って光電変換層で発生された電荷は、個々の画素部40の蓄積容量34に蓄積される。これにより、電子カセッテ12に照射された放射線に担持されていた画像情報は電荷情報へ変換されて放射線検出器26に保持される。
【0026】
また、TFTアクティブマトリクス基板32には、一定方向(行方向)に延設され個々の画素部40のTFT36をオンオフさせるための複数本のゲート配線42と、ゲート配線42と直交する方向(列方向)に延設されオンされたTFT36を介して蓄積容量34から蓄積電荷を読み出すための複数本のデータ配線44が設けられている。個々のゲート配線42はゲート線ドライバ46に接続されており、個々のデータ配線44は信号処理部48に接続されている。個々の画素部40の蓄積容量34に電荷が蓄積されると、個々の画素部40のTFT36は、ゲート線ドライバ46からゲート配線42を介して供給される信号により行単位で順にオンされ、TFT36がオンされた画素部40の蓄積容量34に蓄積されている電荷は、電荷信号としてデータ配線44を伝送されて信号処理部48に入力される。従って、個々の画素部40の蓄積容量34に蓄積されている電荷は行単位で順に読み出される。
【0027】
図示は省略するが、信号処理部48は、個々のデータ配線44毎に設けられた増幅器及びサンプルホールド回路を備えており、個々のデータ配線44を伝送された電荷信号は増幅器で増幅された後にサンプルホールド回路に保持される。また、サンプルホールド回路の出力側にはマルチプレクサ、A/D変換器が順に接続されており、個々のサンプルホールド回路に保持された電荷信号はマルチプレクサに順に(シリアルに)入力され、A/D変換器によってデジタルの画像データへ変換される。信号処理部48には画像メモリ50が接続されており、信号処理部48のA/D変換器から出力された画像データは画像メモリ50に順に記憶される。画像メモリ50は複数フレーム分の画像データを記憶可能な記憶容量を有しており、放射線画像の撮影が行われる毎に、撮影によって得られた画像データが画像メモリ50に順次記憶される。
【0028】
また、電子カセッテ12は画像読出装置84との間でレーザ光による無線通信を行う機能を有しており、レーザ光源としてのLD(レーザダイオード)52と、外部から入射されたレーザ光を検出するPD(フォトダイオード)56を備えている。なお、電子カセッテ12と画像読出装置84との間の通信の高速化のために、LD52は赤外域の波長のレーザ光を射出するLD、PD56は赤外域の波長に感度を有するPDであることが好ましい。本実施形態では、図3(A)に示すように、電子カセッテ12のケーシング20のうちの特定の側面60(この側面は、画像読出装置84との通信時に画像読出装置84のケーシングと対向するように配置されるので、以下では「対向面60」と称する)に、LD52から射出されたレーザ光が通過するための射出孔62と、外部(例えば画像読出装置84)からのレーザ光が通過するための受光孔64が各々設けられている。なお図3(A)では、射出孔62及び受光孔64が設けられる対向面60として、照射面22の短辺と接する側面を適用しているが、これに限られるものではなく、照射面22の長辺と接する側面であってもよいし、底面(照射面22と反対側の面)等であってもよい。
【0029】
LD52から射出されたレーザ光は、LD52のレーザ光射出側に配置されたレンズ54(図1参照) を透過し、射出孔62を通過してケーシング20外へ射出され、外部からのレーザ光は受光孔64を通過し、PD56の光入射側に配置されたレンズ58(図1参照) を透過してPD56で受光される。また図3(A)に示すように、受光孔64の周囲の円環状の領域は、周囲光センサ130の検出領域130Aとされている。周囲光センサ130は、検出領域130A内におよそ均等に分布されたPD等から成る複数個の光電変換素子を備えている。なお、周囲光センサ130を構成する光電変換素子としては、画像読出装置84のLD86から射出されるレーザ光に感度を有する分光感度特性の光電変換素子が用いられている。周囲光センサ130は位置変化監視部78(後述)に接続されており、例えば複数個の光電変換素子による総受光量、或いは個々の光電変換素子による受光量の最大値に相当する信号を位置変化監視部78へ出力する。周囲光センサ130は本発明に係るレーザ光検出手段(詳しくは請求項2に記載のレーザ光検出手段)に対応している。
【0030】
更に、電子カセッテ12のケーシング20の対向面60のうち、受光孔64(及び射出孔62)の周囲で、かつ検出領域130Aを除いた一部領域は、照射されたレーザ光を互いに異なる複数の方向へ各々反射することで、照射されたレーザ光の反射光を拡散させることが可能な拡散部材66で覆われている。拡散部材66としては、例えば画像読出装置84から射出されるレーザ光(後述)が照射された際の照射領域以下の面積の微小領域内に、照射された光に対する反射方向が互いに異なる複数の部分が各々存在するように表面が整形された部材を適用することができる。これにより、照射されたレーザ光の反射光を確実に拡散させることができる。また拡散部材66としては、照射されるレーザ光の波長のおよそ1/10以下の大きさで、半球形状の凸部が表面に一様に分布するように表面が整形された部材が最も望ましい。上記のように、個々の凸部を半球形状とすることで入射角度依存性を低減することができ、個々の凸部の大きさをレーザ光の波長のおよそ1/10以下とすることで、レイリー散乱の領域となり照射されたレーザ光をより顕著に散乱させることができる。
【0031】
LD52は変調部68を介して通信制御部72に接続されている。通信制御部72はマイクロコンピュータによって実現され、画像読出装置84への情報の送信時に、送信対象の情報を変調部68へ出力すると共に、LD52から射出するレーザ光の強度を変調部68へ指示する。変調部68は、LD52から射出されるレーザ光を入力された送信対象情報に応じて所定の変調方式で変調すると共に、LD52から射出されるレーザ光の強度が指示された強度に一致するようにLD52の駆動を制御する。これにより、LD52からは、送信対象情報に応じて変調されたレーザ光が、通信制御部72から指示された強度で射出される。
【0032】
またPD56は復調部70を介して通信制御部72に接続されている。復調部70は、外部からのレーザ光がPD56で受光され、レーザ光の受光量に応じた受光量信号がPD56から入力されると、入力された受光量信号に基づいて、受光されたレーザ光が担持している情報(通信相手の装置から送信された情報)を所定の復調方式で復調し、復調した情報を通信制御部72へ出力すると共に、PD56によるレーザ光の受光量も同時に検知し、レーザ光の受光量の検知結果も通信制御部72へ出力する。通信制御部72は後述するデータ転送処理(図5)を行う。
【0033】
また、電子カセッテ12には距離センサ74が設けられている。本実施形態では、距離センサ74として、発光素子及び受光素子を備え、発光素子で光が射出されてから、射出された光が対象物で反射されて受光素子で受光される迄の時間を計測し、計測した時間に基づいて対象物との距離を検出する構成を適用している。図3(A)に示すように、電子カセッテ12のケーシング20の対向面60には検出孔76が設けられており、距離センサ74の発光素子から射出された光は検出孔76を通過して対向面60の前方に存在する対象物へ照射され、対象物で反射された光は検出孔76を通過して受光素子で受光される。
【0034】
通信制御部72及び距離センサ74は前述の周囲光センサ130と共に位置変化監視部78に接続されている。位置変化監視部78もマイクロコンピュータによって実現される。詳細は後述するが、位置変化監視部78は、自装置(電子カセッテ12)と画像読出装置84との通信時に、周囲光センサ130によるレーザ光の受光量や、距離センサ74によって検出された距離の変化等を監視することで、自装置(電子カセッテ12)と画像読出装置84との相対位置の変化を監視する位置変化監視処理(図6)を行う。
【0035】
また、電子カセッテ12には電源部80が設けられており、上述した各種回路や各素子(ゲート線ドライバ46、信号処理部48、画像メモリ50、通信制御部72や位置変化監視部78として機能するマイクロコンピュータ、変調部68、LD52、PD56、復調部70、距離センサ74等)は、電源部80から供給された電力によって作動する。電源部80としては、電子カセッテ12の可搬性を損なわないように、バッテリ(充電可能な二次電池)を内蔵し、充電されたバッテリから各種回路・素子へ電力を供給する構成が好適であるが、バッテリとして一次電池を用いてもよいし、商用電源に常時接続され商用電源から供給された電力を整流、変圧して各種回路・素子へ電力を供給する構成であってもよい。
【0036】
一方、画像読出装置84も電子カセッテ12との間でレーザ光による無線通信を行う機能を有し、レーザ光源としてのLD86と、外部から入射されたレーザ光を検出するPD90を備えている。なお、電子カセッテ12と画像読出装置84との間の通信の高速化のために、電子カセッテ12と同様、LD86は赤外域の波長のレーザ光を射出するLD、PD90は赤外域の波長に感度を有するPDであることが好ましい。本実施形態では、図3(B)に示すように、画像読出装置84の外部を覆うケーシング94のうちの特定の側面96(この側面は、電子カセッテ12との通信時に電子カセッテ12のケーシングと対向するように配置され、以下「対向面96」と称する)に、LD86から射出されたレーザ光が通過するための射出孔98と、外部(例えば電子カセッテ12)からのレーザ光が通過するための受光孔100が各々設けられている。
【0037】
なお、対向面96に設けられた射出孔98及び受光孔100は、間隔及びケーシング94の底面からの高さが、電子カセッテ12のケーシング20の対向面60に設けられた射出孔62及び受光孔64の間隔及びケーシング20の底面からの高さとそれぞれ等しくされており、電子カセッテ12の対向面60と画像読出装置84の対向面94を向かい合わせた状態(図3(C)に示す状態)で、受光孔100が射出孔62と対向し、射出孔98が受光孔64と対向するように配置されている。LD86から射出されたレーザ光は、LD86のレーザ光射出側に配置されたレンズ88(図1参照) を透過し、射出孔98を通過してケーシング94外へ射出され、外部からのレーザ光は、受光孔100を通過し、PD90の光入射側に配置されたレンズ92(図1参照) を透過してPD90で受光される。
【0038】
また図3(B)に示すように、受光孔100の周囲の円環状の領域は、周囲光センサ132の検出領域132Aとされている。周囲光センサ132も周囲光センサ130と同様に、検出領域132A内におよそ均等に分布されたPD等から成る複数個の光電変換素子を備えている。なお、周囲光センサ132を構成する光電変換素子としては、電子カセッテ12のLD52から射出されるレーザ光に感度を有する分光感度特性の光電変換素子が用いられている。周囲光センサ132は位置変化監視部114(後述)に接続されており、例えば複数個の光電変換素子による総受光量、或いは個々の光電変換素子による受光量の最大値に相当する信号を位置変化監視部114へ出力する。周囲光センサ132も本発明に係るレーザ光検出手段(詳しくは請求項2に記載のレーザ光検出手段)に対応している。また、画像読出装置84のケーシング94の対向面96のうち、受光孔100(及び射出孔98)の周囲で、かつ検出領域132Aを除いた一部領域は、電子カセッテ12と同様に拡散部材102で覆われている。
【0039】
LD86は変調部104を介して通信制御部108に接続されている。通信制御部108はマイクロコンピュータによって実現され、電子カセッテ12への情報の送信時に、送信対象の情報を変調部104へ出力すると共に、LD86から射出するレーザ光の強度を変調部104へ指示する。変調部104は、LD86から射出されるレーザ光を入力された送信対象情報に応じて所定の変調方式で変調すると共に、LD86から射出されるレーザ光の強度が指示された強度に一致するようにLD86の駆動を制御する。これにより、LD86からは、送信対象情報に応じて変調されたレーザ光が、通信制御部108から指示された強度で射出される。
【0040】
また PD90は復調部106を介して通信制御部108に接続されている。復調部106は、外部からのレーザ光がPD90で受光され、レーザ光の受光量に応じた受光量信号がPD90から入力されると、入力された受光量信号に基づいて、受光されたレーザ光が担持している情報(通信相手の装置から送信された情報)を所定の復調方式で復調し、復調した情報を通信制御部108へ出力すると共に、PD90によるレーザ光の受光量も同時に検知し、レーザ光の受光量の検知結果も通信制御部108へ出力する。通信制御部108は後述するデータ読出処理(図4)を行う。
【0041】
また、画像読出装置84にも距離センサ110が設けられている。本実施形態では、距離センサ110として、前述した距離センサ74と同様に、発光素子から射出された光が対象物で反射されて受光素子で受光される迄の時間に基づいて対象物との距離を検出する構成を適用している。図3(B)に示すように、画像読出装置84のケーシング94の対向面96にも検出孔112が設けられており、距離センサ110の発光素子から射出された光は検出孔112を通過して対向面96の前方に存在する対象物へ照射され、対象物で反射された光は検出孔112を通過して受光素子で受光される。通信制御部108及び距離センサ110は位置変化監視部114に接続されている。位置変化監視部114もマイクロコンピュータによって実現される。詳細は後述するが、位置変化監視部114は、電子カセッテ12の位置変化監視部78と同じく位置変化監視処理(図6)を行う。
【0042】
通信制御部108には操作部116が接続されている。操作部116は、図2(B)に示すように、ケーシング94に設けられ各種のメッセージを含む任意の情報を表示可能なディスプレイ118と、同じくケーシング94に設けられ複数のキーを備えたキーボード120を含んで構成されている。利用者がキーボード120を操作することで入力された各種の指示や情報は通信制御部108に入力され、ディスプレイ118への情報表示は通信制御部108によって制御される。
【0043】
また、通信制御部108には画像処理部122を介して画像メモリ124が接続されている。電子カセッテ12と画像読出装置84との通信では、後述のように、電子カセッテ12の画像メモリ50に蓄積記憶されている画像データが画像読出装置84へ転送されるが、画像処理部122は電子カセッテ12から受信されて通信制御部108から順次出力される画像データに対して各種の画像処理(例えば画像データに重畳されたノイズを除去したり、放射線検出器26の各画素部40の特性のばらつきに起因する画像データの画素毎のばらつきを補正する各種の補正処理等)を行い、各種の画像処理を行った画像データを画像メモリ124に記憶させる。
【0044】
画像メモリ124には出力制御部126が接続されている。出力制御部126は、画像メモリ124に記憶された画像データを外部機器へ出力する際に、画像メモリ124からの画像データの読み出し及び外部機器への画像データの出力を制御する。図1には外部機器の典型例としてのディスプレイ128が示されており、外部機器がディスプレイ128である場合、画像メモリ124に記憶されている画像データが表す画像(放射線画像)が、出力制御部126によってディスプレイ128に表示される。なお、外部機器としては、ディスプレイ128以外に、例えば画像データが表す画像をシート状の印刷媒体に印刷する印刷装置や、画像データをCD−Rや公知の他の情報記録媒体に記録する情報記録装置、通信ネットワークを介して接続された情報処理機器へ画像データを送信する通信装置等が挙げられる。
【0045】
図1では画像読出装置84の電源部の図示を省略しているが、当該電源部は商用電源に常時接続され、商用電源から供給された電力を整流、変圧して画像読出装置84内の各種回路・素子へ電力を供給する構成とされている。
【0046】
次に本第1実施形態の作用として、電子カセッテ12と画像読出装置84との通信について説明する。放射線画像の撮影が行われることで電子カセッテ12の画像メモリ50に記憶されている画像データをディスプレイ128に画像として表示する等の利用を所望している場合、利用者は、前記画像データを画像読出装置84によって電子カセッテ12から読み出させるために、電子カセッテ12を、対向面60が画像読出装置84の対向面94と向かい合うように(図3(C)に示す状態となるように)配置し、それぞれの端面を揃える等の配置位置の微調整を行った後に、画像読出装置84のキーボード120を操作して電子カセッテ12からの画像データの読み出しを指示する。
【0047】
画像読出装置84の通信制御部108では、利用者によって上記の操作が行われて、電子カセッテ12からの画像データの読み出しが指示されると、図4に示すデータ読出処理を行う。このデータ読出処理では、まずステップ150において、変調部104を介してLD86から微小出力のレーザ光を射出させる。次のステップ152では、PD90でレーザ光が受光されたか否か判定する。判定が否定された場合はステップ154へ移行し、LD86からのレーザ光の射出を開始させてから所定時間が経過したか否か判定する。この判定も否定された場合はステップ152に戻り、何れかの判定が肯定される迄ステップ152,154を繰り返す。
【0048】
LD86から射出された微小出力のレーザ光は、射出孔98を通過して画像読出装置84のケーシング94の外へ射出されるが、このレーザ光が受光孔64を通過して電子カセッテ12のケーシング20内へ入射され、PD56によって検出(検知)された場合には、後述するように電子カセッテ12のLD52からも微小出力のレーザ光が射出され、このレーザ光がPD90によって受光されるので、LD86からのレーザ光の射出を開始させてから所定時間が経過してもPD90でレーザ光が受光されずにステップ154の判定が肯定された場合、電子カセッテ12と画像読出装置84の相対位置が通信可能な位置関係(電子カセッテ12及び画像読出装置84が、相手装置から射出されたレーザ光を各々受光できる位置)から外れており、相対位置の調整が必要と判断できる。
【0049】
このため、ステップ154の判定が肯定された場合はステップ190でLD86からのレーザ光の射出を停止させ、次のステップ192において、相対位置の調整を要請するエラーメッセージをディスプレイ118に表示させる等により、相対位置の調整作業の実行を利用者に促した後にデータ読出処理(図4)を終了する。なお、電子カセッテ12と画像読出装置84の相対位置が通信可能な位置関係から大きく外れている場合、画像読出装置84から射出されたレーザ光は、電子カセッテ12の対向面60と画像読出装置84の対向面96に挟まれた空間から漏出する可能性があるが、このとき画像読出装置84のLD86から射出されているレーザ光は光量(光強度)が微小であるので問題は生じない。
【0050】
一方、電子カセッテ12と画像読出装置84の相対位置が通信可能な位置関係にあり、画像読出装置84から射出された微小出力のレーザ光が電子カセッテ12のPD56で受光(検知)された場合は、PD56によるレーザ光の検知をトリガとして、電子カセッテ12の通信制御部では図5に示すデータ転送処理を行う。このデータ転送処理では、まずステップ200において、変調部68を介してLD52から微小出力のレーザ光を射出させる。LD52から射出された微小出力のレーザ光は、射出孔62を通過して電子カセッテ12のケーシング20の外へ射出されるが、このレーザ光が受光孔100を通過して画像読出装置84のケーシング94内へ入射され、PD90によって検出(検知)された場合には、データ読出処理(図4)のステップ152の判定が肯定され、ステップ156へ移行する。
【0051】
このステップ152の判定が肯定された場合、画像読出装置84のLD86から射出された微小出力のレーザ光が電子カセッテ12のPD56で検出(検知)され、かつ、電子カセッテ12のLD52から射出された微小出力のレーザ光が画像読出装置84のPD90で検出(検知)されているので、電子カセッテ12と画像読出装置84の相対位置は、LD86から射出されたレーザ光がPD56の受光面の中央又はその付近に入射され、LD52から射出されたレーザ光もPD90の受光面の中央又はその付近に入射される、通信可能な最適な位置関係にあると判断できる。
【0052】
続いてデータ読出処理(図4)のステップ156及びデータ転送処理(図5)のステップ202では、自装置からレーザ光によって所定の情報を送信する(自装置のLDから射出されるレーザ光を所定の情報に応じて変調させる)と共に、相手装置からレーザ光によって受信した情報(相手装置のLDから射出されて自装置のPDで受光されたレーザ光を復調することで得られた情報)の内容を確認することで、相手装置が正規の装置か否かを確認する相手装置確認処理を行う。なお、相手装置確認処理で電子カセッテ12が画像読出装置84へ送信する情報としては、個々の電子カセッテ12を識別するためのカセッテID等の情報が挙げられ、画像読出装置84が電子カセッテ12へ送信する情報としては、自装置が画像読出装置であることを表す情報等が挙げられる。
【0053】
データ読出処理(図4)では、次のステップ158で相手装置が正規の装置か否かを判定しており、この判定が否定された場合は、ステップ190でLD86からのレーザ光の射出を停止させ、次のステップ192において、相手装置が正規の装置でないことを通知するエラーメッセージをディスプレイ118に表示させる等のエラー処理を行い、データ読出処理(図4)を終了する。また、データ転送処理(図5)においても、次のステップ204で相手装置が正規の装置か否かを判定し、この判定が否定された場合は、ステップ236でLD52からのレーザ光の射出を停止させてデータ転送処理(図5)を終了する。
【0054】
また、データ読出処理(図4)において、相手装置が正規の装置(電子カセッテ12)であると判断した場合には、ステップ158の判定が肯定されてステップ160へ移行し、LD86からのレーザ光出力を通常の通信時の値に設定する。次のステップ162では、相手装置に対してデータ転送を要求する情報をレーザ光によって相手装置へ送信する。またステップ164では、位置変化監視部114に対して位置変化監視処理(図6)の実行開始を指示する。なお、この位置変化監視処理については後述する。ステップ166では相手装置から転送されたデータを受信したか否か判定する。判定が否定された場合はステップ168へ移行し、データ転送の完了が相手装置から通知されたか否か判定する。この判定も否定された場合はステップ170へ移行し、相手装置との通信の中止が位置変化監視部114から指示されたか否か判定する。この判定も否定された場合はステップ166に戻り、何れかの判定が肯定される迄ステップ166〜ステップ170を繰り返す。
【0055】
一方、データ転送処理(図5)において、相手装置が正規の装置(画像読出装置84)であると判断した場合には、ステップ204の判定が肯定されてステップ206へ移行し、相手装置からデータ転送を要求する情報を受信したか否か判定し、判定が肯定される迄ステップ206を繰り返す。画像読出装置84で図4のステップ162の処理が行われることでデータ転送を要求する情報を受信すると、ステップ206の判定が肯定されてステップ208へ移行し、LD52からのレーザ光出力を通常の通信時の値に設定する。またステップ210では、位置変化監視部78に対して位置変化監視処理(図6)の実行開始を指示する。次のステップ212では、画像読出装置84へ転送すべき転送対象の画像データの画像メモリ50からの読み出しを試行する。
【0056】
次のステップ214では、転送対象の画像データ(画像読出装置84へ未転送の画像データ)が画像メモリ50に記憶されているか否か判定する。判定が肯定された場合はステップ216へ移行し、画像メモリ50からの読み出しに成功した転送対象の画像データをレーザ光によって相手装置(画像読出装置84)へ送信する。ステップ218では画像読出装置84から応答を受信したか否か判定する。この判定が否定された場合はステップ220へ移行し、相手装置との通信の中止が位置変化監視部78から指示されたか否か判定する。この判定も否定された場合はステップ218に戻り、何れかの判定が肯定される迄ステップ218,220を繰り返す。
【0057】
上記のように電子カセッテ12からレーザ光によって画像データが送信され、この画像データが画像読出装置84によって受信されると、データ読出処理(図4)のステップ166の判定が肯定されてステップ172へ移行し、相手装置(電子カセッテ12)から受信した画像データを後段(本実施形態では画像処理部122)へ出力する。これにより、画像読出装置84で受信された画像データは、画像処理部122によって各種の画像処理が行われた後に画像メモリ124に記憶される。次のステップ174では、相手装置(電子カセッテ12)のデータ送信に対する応答をレーザ光によって送信し、ステップ166へ戻る。この応答が相手装置(電子カセッテ12)で受信されることで、データ転送処理(図5)のステップ218の判定が肯定され、ステップ212に戻る。このように、電子カセッテ12の画像メモリ50に転送対象の画像データが記憶されている間は、データ読出処理(図4)ではステップ166〜ステップ174が繰り返され、データ転送処理(図5)ではステップ212〜ステップ220が繰り返されることで、画像読出装置84への画像データの転送が継続される。
【0058】
また、画像メモリ50に記憶されている画像データを全て画像読出装置84へ送信すると、データ転送処理(図5)のステップ214の判定が否定されてステップ230へ移行し、データ転送の完了をレーザ光によって相手装置(画像読出装置84)へ通知する。またステップ232ではLD52からのレーザ光の射出を停止させる。そしてステップ234では、位置変化監視部78に対して位置変化監視処理(図6)の終了を指示し、データ転送処理(図5)を終了する。また、電子カセッテ12からデータ転送の完了が通知されると、データ読出処理(図4)では、ステップ168の判定が肯定されてステップ176へ移行し、LD86からのレーザ光の射出を停止させる。そしてステップ178では、位置変化監視部114に対して位置変化監視処理(図6)の終了を指示し、データ読出処理(図4)を終了する。
【0059】
続いて、電子カセッテ12の位置変化監視部78及び画像読出装置84の位置変化監視部114によって各々実行される位置変化監視処理について説明する。なお、以下で説明する位置変化監視処理は、本発明に係る制御手段(詳しくは請求項2〜5,7に記載の制御手段)に対応している。
【0060】
先にも説明したように、電子カセッテ12と画像読出装置84との通信は、電子カセッテ12と画像読出装置84との相対位置が通信可能な位置関係に調整された状態(図3(A)に示す状態)で開始されるが、例えば電子カセッテ12のケーシング20及び画像読出装置84のケーシング94の少なくとも一方に押圧力や振動等が加わった等の場合、通信の途中で前記相対位置が通信可能な位置関係から外れる可能性がある。そしてこの場合、電子カセッテ12や画像読出装置84から射出されたレーザ光が、電子カセッテ12の対向面60と画像読出装置84の対向面96に挟まれた空間から漏出する可能性があるので望ましくない。このため、位置変化監視部78、84は、電子カセッテ12と画像読出装置84との通信が開始されると、自装置の通信制御部からの指示により位置変化監視処理の実行を開始し、電子カセッテ12と画像読出装置84との通信が行われている間位置変化監視処理の実行を継続することで、電子カセッテ12と画像読出装置84との相対位置の変化を監視する。
【0061】
すなわち図6に示すように、位置変化監視処理では、まずステップ250において、自装置に設けられた距離センサによって検出された相手装置との現在の距離(距離検出値L)を距離センサから取得する。このときは電子カセッテ12と画像読出装置84との相対位置が通信可能な位置関係に調整された直後のタイミングであるので、ステップ250で取得した距離検出値Lは、電子カセッテ12と画像読出装置84との相対位置が通信可能な位置関係に調整された状態での、距離センサの配設位置における相手装置のケーシングとの距離を表している。次のステップ252では、ステップ250で取得した距離検出値Lを相手装置との距離の基準値Lrefとして内蔵メモリ等に記憶させる(図7(A)も参照)。
【0062】
またステップ254では、データ転送開始直後かつPDがレーザ光を受光しているタイミングで、自装置に設けられた周囲光センサによって検出されたレーザ受光量(レーザ受光量検出値P2)を周囲光センサから取得する。このときは電子カセッテ12と画像読出装置84との相対位置が通信可能な位置関係に調整された直後のタイミングであるので、ステップ254で取得したレーザ受光量検出値P2は、電子カセッテ12と画像読出装置84との相対位置が通信可能な位置関係に調整された状態での、周囲光センサによるレーザ光の受光量を表している。
【0063】
なお、レーザ受光量検出値P2としては、PDがレーザ光を受光している期間における周囲光センサによるレーザ受光量の最大値、平均値、レーザ受光量のヒストグラム上で最大値又は最小値からの累積頻度が所定値に達するときの受光量値の何れを適用してもよく、電子カセッテ12と画像読出装置84との相対位置が通信可能な位置関係に調整された状態での周囲光センサによるレーザ光の受光量を代表する値であれば他の値を用いることも可能である。次のステップ256では、ステップ254で取得した受光量検出値P2を周囲光センサのレーザ受光量の基準値P2refとして内蔵メモリ等に記憶させる(図8(A)も参照)。
【0064】
次のステップ258では、自装置の距離センサによって検出された相手装置との現在の距離(距離検出値L)を距離センサから再度取得し、次のステップ260では、ステップ258で取得した距離検出値Lが、相手装置との距離の基準値Lrefに所定値αを加算した値以上(L≧Lref+α)か否か判定する。なお、ステップ260において、ステップ258で取得した距離検出値Lが、相手装置との距離の基準値Lrefから所定値αを減算した値以下(L≦Lref−α)か否かも併せて判定するようにしてもよい。この判定が否定された場合、距離センサに配設位置における相手装置との距離の変化は許容範囲内と判断できるので、ステップ262へ移行し、自装置の周囲光センサにおける最新のレーザ受光量(レーザ受光量検出値P2)を再度取得する。
次のステップ264では、ステップ262で取得したレーザ受光量検出値P2が、レーザ受光量の基準値P2refに所定値γを加算した値以上(P2≧P2ref+γ)か否か判定する。なお、所定値γの大きさについても、レーザ受光量検出値P2として先に列挙した各値(最大値や最小値等)の何れを用いるかに応じて切り替えることができる。ステップ264の判定が否定された場合は、周囲光センサによるレーザ受光量が増大していたとしても、その増大量が許容範囲内と判断できるので、ステップ266へ移行し、自装置の通信制御部から位置監視処理の終了が指示されたか否か判定する。この判定も否定された場合はステップ258へ戻る。
【0065】
これにより、ステップ260,264,266の何れかの判定が肯定される迄、ステップ258〜ステップ266が繰り返され、距離検出値Lの変化及びレーザ受光量検出値P2の変化が監視される。電子カセッテ12と画像読出装置84との通信が行われている間、電子カセッテ12と画像読出装置84との相対位置が変化しないか、又は、相対位置の変化量が微小であった場合には、ステップ260,264の判定が肯定されることなく自装置の通信制御部から位置監視処理の終了が指示されることで、ステップ266の判定が肯定され、位置変化監視処理を終了する。
【0066】
一方、電子カセッテ12のケーシング20及び画像読出装置84のケーシング94の少なくとも一方に押圧力や振動等が加わった等により、電子カセッテ12と画像読出装置84との通信が行われている間に、電子カセッテ12と画像読出装置84との相対位置が、図7(A)に示す状態から図7(B)に示す状態へ変化した場合(比較的大きな相対位置の変化が生じた場合)には、図7(B)に示すように、電子カセッテ12や画像読出装置84から射出されたレーザ光が相手装置のPDの受光面の中央から大きく外れることで、電子カセッテ12の対向面60と画像読出装置84の対向面96に挟まれた空間からレーザ光が漏出する可能性が生ずる。
【0067】
これに対し、電子カセッテ12と画像読出装置84との相対位置が比較的大きく変化すると、それに伴い距離センサ配設位置における相手装置のケーシングとの距離(図7(B)に示す実線の矢印の長さ)も変化し、図7(B)の例では2本の実線矢印のうち図上で上方に位置している側の実線矢印に対応する距離検出値Lが大幅に増大することで、先のステップ260の判定が肯定される。従って、距離検出値Lを監視することで、レーザ光の漏出に繋がる可能性がある電子カセッテ12と画像読出装置84との相対位置の変化を検知することができる。
【0068】
一方、周囲光センサによるレーザ受光量は、PDに入射されるレーザ光の光軸位置が変化した場合、図8(C)に示すように、PDの受光領域の中央位置に対するレーザ光の光軸位置の偏倚量が大きくなるに従って、一旦は増大して極大値を示し、前記偏倚量が更に大きくなると減少していく変化を示す。電子カセッテ12のケーシング20及び画像読出装置84のケーシング94の少なくとも一方に押圧力や振動等が加わった等により、電子カセッテ12と画像読出装置84との通信が行われている間に、電子カセッテ12と画像読出装置84との相対位置が、図8(A)に示す状態から図8(B)に示す状態へ変化すると(比較的大きな相対位置の変化が生じると)、図8(B)に示すように、電子カセッテ12及び画像読出装置84のPDへのレーザ光の入射位置が受光領域の中心から大きく外れ、レーザ受光量検出値P2が大幅に増大することで先のステップ264の判定が肯定される。
【0069】
なお、電子カセッテ12と画像読出装置84との相対位置が更に大きく変化すると、図8(C)からも明らかなように、レーザ受光量検出値P2の変化は極大値まで増大した後減少に転ずることになるが、位置変化監視処理が開始されるときには電子カセッテ12と画像読出装置84との相対位置が図8(A)に示す位置関係に調整されており、位置変化監視処理の実行中はレーザ受光量検出値P2の変化が常に監視されているので、レーザ光の光軸位置の偏倚に伴ってレーザ受光量検出値P2が極大値まで増大するまでの期間に、レーザ受光量検出値P2の増大が検知されてステップ264の判定が肯定されることになる。従って、レーザ受光量検出値P2を監視することによっても、レーザ光の漏出に繋がる可能性がある電子カセッテ12と画像読出装置84との相対位置の変化を検知することができる。そしてステップ260又はステップ264の判定が肯定された場合はステップ268へ移行し、自装置の通信制御部へ通信中止を指示した後に位置変化監視処理を終了する。
【0070】
ここで、画像読出装置84の位置変化監視部114が通信制御部108へ通信中止を指示した場合、データ読出処理(図4)のステップ170の判定が肯定されてステップ180へ移行し、通信中止が相手装置からの指示か否か判定する。この例では通信中止の指示元が自装置の位置変化監視部114であるので、判定が否定されてステップ182へ移行し、レーザ光によって相手装置(電子カセッテ12)へ通信中止を指示する。またステップ186では、LD86からのレーザ光の射出を停止させ、次のステップ188において、通信中止をその理由(ケーシングが大きく動いたこと)と共に通知するエラーメッセージをディスプレイ118に表示させる等のエラー処理を行い、データ読出処理(図4)を終了する。また、画像読出装置84から通信中止が指示された電子カセッテ12では、データ転送処理(図5)のステップ220の判定が肯定されてステップ222へ移行し、通信中止が相手装置からの指示か否か判定する。この例では判定が肯定されてステップ226へ移行し、位置変化監視部78に対して位置変化監視処理(図6)の終了を指示する。そしてステップ228でLD52からのレーザ光の射出を停止させ、データ転送処理(図5)を終了する。
【0071】
また、電子カセッテ12の位置変化監視部78が通信制御部72へ通信中止を指示した場合には、データ転送処理(図5)のステップ220の判定が肯定されると共に、ステップ222の判定が否定されてステップ224へ移行し、レーザ光によって相手装置(画像読出装置84)へ通信中止を指示する。そしてステップ228でLD52からのレーザ光の射出を停止させ、データ転送処理(図5)を終了する。また、電子カセッテ12から通信中止が指示された画像読出装置84では、ステップ184で位置変化監視部114に対して位置変化監視処理(図6)の終了を指示する。そして、ステップ186でLD86からのレーザ光の射出を停止させ、ステップ188で前述のエラー処理を行ってデータ読出処理(図4)を終了する。
【0072】
上記処理により、レーザ光の漏出に繋がる可能性がある電子カセッテ12と画像読出装置84との相対位置の変化を、電子カセッテ12の位置変化監視部78及び画像読出装置84の位置変化監視部114の何れが検知した場合にも、電子カセッテ12からのレーザ光の射出及び画像読出装置84からのレーザ光の射出が各々停止されることになる。
【0073】
また本第1実施形態では、電子カセッテ12のケーシング20の対向面60のうち受光孔64(及び射出孔62)の周囲を含む一部領域が拡散部材66で覆われていると共に、画像読出装置84のケーシング94の対向面96のうち受光孔100(及び射出孔98)の周囲を含む一部領域も拡散部材102で覆われているので、電子カセッテ12と画像読出装置84との通信中に比較的大きな相対位置の変化が生じ、上述した処理によってレーザ光の射出が停止される迄の間に、電子カセッテ12や画像読出装置84から射出されるレーザ光が相手装置の対向面のうち受光孔から逸脱し、更に周囲光センサの検出領域からも逸脱した位置に照射される状態が一時的に生じたとしても、相手装置の対向面に照射されたレーザ光は、当該レーザ光の照射位置に配設された拡散部材によって互いに異なる複数の方向へ各々反射されることで反射光が拡散されるので、反射されたレーザ光が電子カセッテ12の対向面60と画像読出装置84の対向面96に挟まれた空間から漏出した場合にも、空間外の特定の部位に照射されるレーザ光の光量を非常に微弱にすることができる。
【0074】
〔第2実施形態〕
次に本発明の第2実施形態を説明する。なお、第1実施形態と同一の部分には同一の符号を付し、説明を省略する。本第2実施形態は、図9に示すように距離センサ74,110が省略されている点で第1実施形態と相違している。
【0075】
次に、本第2実施形態に係る位置変化監視部78,114によって行われる位置変化監視処理について、図10を参照して第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。本第2実施形態に係る位置変化監視処理では、距離検出値Lに基づいて電子カセッテ12と画像読出装置84との相対位置の変化を検知することに代えて、PDのレーザ受光量に基づいて電子カセッテ12と画像読出装置84との相対位置の変化を検知している。
【0076】
すなわち、本第2実施形態に係る位置変化監視処理では、ステップ251において、データ転送開始直後かつPDがレーザ光を受光しているタイミングで自装置の復調部によって検出されたPDのレーザ受光量(レーザ受光量検出値P1)を自装置の通信制御部経由で取得する。このレーザ受光量検出値P1についても、電子カセッテ12と画像読出装置84との相対位置が通信可能な位置関係に調整された状態でのPDのレーザ光受光量を表している。なお、レーザ受光量検出値P1としては、PDがレーザ光を受光している期間におけるレーザ受光量の最大値、平均値、レーザ受光量のヒストグラム上で最大値又は最小値からの累積頻度が所定値に達するときの受光量値の何れを適用してもよく、電子カセッテ12と画像読出装置84との相対位置が通信可能な位置関係に調整された状態でのPDのレーザ受光量を代表する値であれば他の値を用いることも可能である。
【0077】
次のステップ253では、ステップ251で取得した受光量検出値P1をPDのレーザ受光量の基準値P1refとして内蔵メモリ等に記憶させる(図11(A)も参照)。なお、続いて自装置の周囲光センサから受光量検出値P2を取得し(ステップ254)、取得した受光量検出値P2を周囲光センサにおける受光量の基準値P2 refとして記憶させる(ステップ256)点は、第1実施形態で説明した位置変化監視処理(図6)と同じである。
【0078】
また、本第2実施形態に係る位置変化監視処理では、次のステップ259において、自装置の復調部によって検出されたPDの最新のレーザ受光量(レーザ受光量検出値P1)を自装置の通信制御部経由で再度取得する。次のステップ261では、ステップ259で取得したレーザ受光量検出値P1が、レーザ受光量の基準値P1refから所定値βを減算した値以下(P1≦P1ref−β)か否か判定する。なお、所定値βの大きさは、レーザ受光量検出値P1として先に列挙した各値(最大値や最小値等)の何れを用いるかに応じて切り替えることができる。ステップ261の判定が否定された場合は、PDのレーザ受光量の低下は許容範囲内と判断できるので、ステップ262へ移行し、第1実施形態と同様に、レーザ受光量検出値P2を周囲光センサから再度取得し(ステップ262)、取得したレーザ受光量検出値P2が「P2≧P2ref+γ」を満足するか否かが判定される(ステップ264)。そしてステップ264の判定も否定された場合はステップ266へ移行する。
【0079】
このように、電子カセッテ12と画像読出装置84との通信が行われている間はステップ259〜ステップ266が繰り返され、レーザ受光量検出値P1の変化及びレーザ受光量検出値P2の変化が監視されるが、この間、電子カセッテ12と画像読出装置84との相対位置が変化しないか、又は、相対位置の変化量が微小であった場合には、レーザ受光量検出値P1及びレーザ受光量検出値P2も変化しないか、又は、変化量が微小であるので、ステップ261(及びステップ264)の判定が肯定されることなく自装置の通信制御部から位置監視処理の終了が指示されることで、位置変化監視処理を終了する。
【0080】
一方、PDのレーザ受光量は、PDに入射されるレーザ光の光軸位置の変化に対して図11(C)に示すように変化し、受光領域の中央位置に対するレーザ光の光軸位置の偏倚量が大きくなるに従って、PDのレーザ受光量は大きく減衰する。電子カセッテ12と画像読出装置84との相対位置が比較的大きく変化すると、図11(B)に示すように、電子カセッテ12及び画像読出装置84のPDへのレーザ光の入射位置が受光領域の中心から大きく外れ、レーザ受光量検出値P1が大幅に減少することで先のステップ261の判定が肯定される。従って、レーザ受光量検出値P1を監視することによっても、レーザ光の漏出に繋がる可能性がある電子カセッテ12と画像読出装置84との相対位置の変化を検知することができる。
【0081】
なお、上記では電子カセッテ12のケーシング20の対向面60のうち受光孔64(及び射出孔62)の周囲を含む一部領域、及び、画像読出装置84のケーシング94の対向面96のうち受光孔100(及び射出孔98)の周囲を含む一部領域を拡散部材66、102で覆った態様を説明したが、これに限定されるものではなく、拡散部材に代えて、照射されたレーザ光の大半を吸収する吸収部材(例えば波長選択性を有する光学フィルタ(詳しくは照射されるレーザ光の波長域に対して光吸収性を有する光吸収フィルタ)、或いは、植毛部材や多孔質材、表面が黒色の部材等)で覆うようにしてもよい。例えば、光吸収物質を硝材中に分散させた構成により、電子カセッテ12と画像読出装置84との通信に好適なレーザ光の波長である1300nmの光に対する透過率が20%(光路長1mm当りの光減衰率が80%)程度の光吸収フィルタは市販されており、このような光吸収フィルタを用いたり、表面反射光を抑制するため前記光吸収フィルタの表面にARコート等を施すことで、反射光を入射光の数%程度に抑制できる吸収材は実現可能である。
【0082】
拡散部材に代えて上記のような吸収部材を設けた場合にも、電子カセッテ12と画像読出装置84との通信中に比較的大きな相対位置の変化が生じ、相対位置の変化が検出されてレーザ光の射出が停止される迄の間、電子カセッテ12や画像読出装置84から射出されるレーザ光が相手装置の対向面のうち受光孔から逸脱した位置に照射される状態が一時的に生じたときに、照射位置が受光孔から逸脱したレーザ光が吸収部材に照射され、吸収部材によりその大半が吸収されることで、電子カセッテ12の対向面60と画像読出装置84の対向面96に挟まれた空間から漏出するレーザ光の光量を非常に微弱にすることができる。
【0083】
また、電子カセッテ12と画像読出装置84との間の通信に可視域外の波長の非可視レーザ光を用いる場合には、拡散部材66、102に代えて、上記の一部領域を、非可視レーザ光の照射に伴い、照射された部分が可視域の光を発する発光(蛍光)部材で覆うようにしてもよい。例えばレーザ光の波長が赤外域である場合、上記の発光(蛍光)部材としてはEdmund Optics社製の近赤外用の光路確認蛍光シート(LASER DETECTION CARD IR)等を用いることができる。
【0084】
拡散部材に代えて上記のような発光(蛍光)部材を設けた場合、拡散部材や吸収部材のようなレーザ光量の低減効果は得られないものの、電子カセッテ12と画像読出装置84との通信中に比較的大きな相対位置の変化が生じ、相対位置の変化が検出されてレーザ光の射出が停止される迄の間、電子カセッテ12や画像読出装置84から射出される非可視レーザ光が相手装置の対向面のうち受光孔から逸脱した位置に照射される状態が一時的に生じたときに、照射位置が受光孔から逸脱した非可視レーザ光が発光(蛍光)部材に照射され、非可視レーザ光が照射された発光(蛍光)部材が発光する(可視光を発する)ことで、非可視レーザ光の照射位置が受光孔から逸脱したこと、及び、電子カセッテ12の対向面60と画像読出装置84の対向面96に挟まれた空間から非可視レーザ光が漏出している可能性があることを利用者に認識させることができ、空間外の特定の部位(レーザ光が照射されることが望ましくない部位)に漏出した非可視のレーザ光が照射されることを回避するための対策を利用者に講じさせることが可能となる。
【0085】
また、上記では周囲光センサ130,132の検出領域を円環状としていたが、これに限定されるものではなく、他の任意の形状を採用することも可能である。また、周囲光センサ130,132の検出領域を受光孔64,100の周囲の全周に設けることに限定されるものでもない。例えば電子カセッテ12と画像読出装置84が図3(C)に示すような位置関係にあるときにレーザ光による通信が行われる場合、電子カセッテ12と画像読出装置84は同一平面上に載置されることが一般的であり、電子カセッテ12と画像読出装置84との相対位置が変化したときのレーザ光の光軸の移動方向も水平方向に限られることが殆どであるので、このような場合、周囲光センサ130,132の検出領域を受光孔64,100の周囲のうち受光孔64,100と同高さの範囲のみとし、残りの範囲には拡散部材や吸収部材、発光(蛍光)部材を配設するようにしてもよい。
【0086】
更に、上記で説明した周囲光センサ130,132は、複数個の光電変換素子を検出領域内におよそ均等に分布した構成であるので、検出領域内に入射されたレーザ光の光量のみならず、検出領域内におけるレーザ光の照射位置も検出可能であり、検出領域内におけるレーザ光の照射位置の検出結果を、例えば利用者が電子カセッテ12と画像読出装置84の相対位置を通信可能位置に位置合わせする際に、利用者に対し、通信可能位置に位置合わせするための一方の機器の移動方向を教示することに利用することも可能である。
【0087】
また、電子カセッテ12と画像読出装置84との相対位置の変化の検出に際し、第1実施形態では周囲光センサによるレーザ受光量検出値P2に距離検出値Lを併用し、第2実施形態では周囲光センサによるレーザ受光量検出値P2にPDのレーザ受光量検出値P1を併用していたが、本発明はこれに限定されるものではなく、距離検出値L、PDのレーザ受光量検出値P1及び周囲光センサによるレーザ受光量検出値P2を全て用いて相対位置の変化を検出するようにしてもよいし、周囲光センサによるレーザ受光量検出値P2のみを用いて相対位置の変化を検出するようにしてもよい。
【0088】
また、上記では自装置の位置変化監視部による位置変化監視処理により、レーザ光の漏出に繋がる可能性がある電子カセッテ12と画像読出装置84との相対位置の比較的大きな変化が検知された場合に、相手装置に対して通信中止を指示することで、相手装置からレーザ光の射出を停止させる態様を説明したが、これに限定されるものではなく、特に異常が無い間、自装置は定期的に所定の情報(この情報は、相手装置から送信された情報に対する正常応答で代用可能である)を相手装置へ送信し、所定の情報を受信している間はレーザ光による情報送信を行うように相手装置を構成しておき、相対位置の比較的大きな変化が検知された場合に、相手装置への所定の情報の送信を停止させることで、相手装置からのレーザ光の射出を停止させるように構成することも可能である。この場合、相対位置の比較的大きな変化が検知されてから相手装置のレーザ光の射出が停止される迄の時間は所定の情報の送信時間間隔に依存するので、所定の情報はなるべく短い時間間隔で送信するように構成することが望ましい。上記態様は請求項6記載の発明に対応している。
【0089】
更に、第1実施形態及び第2実施形態では、位置変化監視部による位置変化監視処理により、レーザ光の漏出に繋がる可能性がある電子カセッテ12と画像読出装置84との相対位置の比較的大きな変化が検知された場合に、電子カセッテ12及び画像読出装置84からのレーザ光の射出を各々停止させる態様を説明したが、これに限定されるものではなく、例えばランプを点灯させる、ブザーを鳴らす、ディスプレイ118に警報メッセージを表示させる、の少なくとも1つを行うことで利用者に警報を発し、利用者の注意を促すようにしてもよいし、レーザ光の射出停止と警報出力を各々行うようにしてもよい。この態様も本発明に係る制御手段に対応している。
【0090】
また、上記では本発明に係る電子機器としての電子カセッテ12及び画像読出装置84が、各々レーザ光を射出して通信を行う態様を説明したが、通信を行う装置のうちの一方はレーザ光を射出して情報の送信を行い、他方は別の通信手段(例えば赤外線等)で情報送信を行うように構成してもよい。この場合、赤外レーザ光を用いた無線通信では非常に高い伝送速度が実現されていることを考慮すると、レーザ光を射出して情報の送信を行う装置としては、より多量の情報を送信する装置(例えば電子カセッテと画像読出装置であれば、画像データの送信を行う電子カセッテ)を選択することが望ましい。また、この場合、周囲光センサ(本発明に係るレーザ光検出手段)は、レーザ光を受光する側の装置にのみ設ければよい。
【0091】
また、上記では本発明に係る電子機器の好例として電子カセッテ12(可搬型放射線画像変換装置)及び画像読出装置84を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明は他の装置と無線通信を行う任意の電子機器に適用可能である。特に、赤外レーザ光を用いた無線通信では非常に高い伝送速度が実現されていることを考慮すると、少なくとも一方が可搬性を有し、かつ、無線通信によって大量のデータを送受するか、又は、大量データの送受に対するニーズの高い電子機器が好適であり、例えば本発明に係る電子機器として、デジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラ等の撮像装置と、これらの撮像装置から静止画像データや動画像データを受け取るPCやプリンタ等の機器を適用し、これらの間の無線通信をレーザ光によって行うようにしてもよいし、本発明に係る電子機器として、可搬性を有するスキャナと、スキャナから静止画像データを受け取るPCやプリンタ等の機器を適用し、これらの間の無線通信をレーザ光によって行うようにしてもよいし、本発明に係る電子機器として、静止画像や動画像の撮影機能及び音楽再生機能の少なくとも一方を備えた携帯機器(例えば携帯電話機やPDA等)を適用に、これらの携帯機器同士の画像データや音楽データの交換のための無線通信をレーザ光によって行うようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】第1実施形態に係る電子カセッテ及び画像読出装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】(A)は放射線画像撮影時の電子カセッテの配置を示す概略図、(B)は電子カセッテの内部構造を示す斜視図である。
【図3】(A)は電子カセッテの外観、(B)は画像読取装置の外観、(C)は電子カセッテからの画像読出時の電子カセッテ及び画像読出装置の配置を各々示す斜視図である。
【図4】データ読出処理の内容を示すフローチャートである。
【図5】データ転送処理の内容を示すフローチャートである。
【図6】第1実施形態に係る位置変化監視処理の内容を示すフローチャートである。
【図7】距離検出値に基づく位置変化の検知を説明するための概念図である。
【図8】周囲光センサの受光量に基づく位置変化の検知を説明するための概念図である。
【図9】第2実施形態に係る電子カセッテ及び画像読出装置の概略構成を示すブロック図である。
【図10】第2実施形態に係る位置変化監視処理の内容を示すフローチャートである。
【図11】レーザ光の受光量に基づく位置変化の検知を説明するための概念図である。
【符号の説明】
【0093】
10 放射線画像取扱システム
12 電子カセッテ
20 ケーシング
26 放射線検出器
52 LD
56 PD
60 対向面
62 射出孔
64 受光孔
66 拡散部材
72 通信制御部
78 位置変化監視部
84 画像読出装置
86 LD
90 PD
94 ケーシング
94 対向面
96 対向面
98 射出孔
100 受光孔
102 拡散部材
108 通信制御部
114 位置変化監視部
130 周囲光センサ
132 周囲光センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を射出する第1射出手段及び該第1射出手段から射出されるレーザ光を送信対象情報に応じて変調する第1変調手段を備えた相手装置の筐体と自装置の筐体との相対位置が、前記相手装置の前記第1射出手段から射出されたレーザ光が自装置の筐体の外面上に設けられた受光領域内に入射される通信可能位置に調整された状態で、前記受光領域内に入射されたレーザ光を検出し、レーザ光の検出結果から前記送信対象情報を復調することで、前記相手装置から前記送信対象情報を受信する受信手段と、
自装置の筐体の外面上のうち前記受光領域の周囲に相当する領域に照射されたレーザ光を検出するレーザ光検出手段と、
前記レーザ光検出手段によってレーザ光が検出された場合に警報を発するか、又は、前記相手装置からのレーザ光の射出を停止させる制御手段と、
を含む電子機器。
【請求項2】
前記レーザ光検出手段はレーザ光の照射光量を検出し、
前記制御手段は、前記レーザ検出手段によって検出されたレーザ光の照射光量が閾値以上となった場合に警報を発するか、又は、前記相手装置からのレーザ光の射出を停止させることを特徴とする請求項1記載の電子機器。
【請求項3】
前記制御手段は、前記相手装置の筐体と自装置の筐体との相対位置が前記通信可能位置に調整され、かつ、前記受光領域内にレーザ光が入射されている状態で、前記レーザ光検出手段によって検出されたレーザ光の照射光量に基づいて基準値を設定し、設定した前記基準値よりも所定値大きい値を前記閾値として用いることを特徴とする請求項2記載の電子機器。
【請求項4】
前記制御手段は、前記受信手段が前記相手装置からの前記送信対象情報の受信を開始した時点で前記レーザ光検出手段によって検出されたレーザ光の照射光量、又は、前記受信手段が前記相手装置からの前記送信対象情報の受信を開始してから所定時間が経過する迄の期間に前記レーザ光検出手段によって検出されたレーザ光の照射光量を代表する値を前記基準値として設定することを特徴とする請求項3記載の電子機器。
【請求項5】
前記相手装置へ情報を送信可能な第1送信手段を備え、
前記制御手段は、レーザ光の射出停止を指示する指示情報を前記第1送信手段によって前記相手装置へ送信させることで、前記相手装置からのレーザ光の射出を停止させることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の電子機器。
【請求項6】
前記受信手段が前記相手装置から前記送信対象情報を正常に受信している間、前記相手装置へ所定の情報を定期的に送信する第2送信手段を備え、
前記相手装置は、前記所定の情報を定期的に受信している間、前記送信対象情報に応じて変調したレーザ光を前記第1射出手段から射出する構成であり、
前記制御手段は、前記第2送信手段による前記相手装置への前記所定の情報の送信を停止させることで、前記相手装置からのレーザ光の射出を停止させることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の電子機器。
【請求項7】
前記電子機器は、レーザ光を射出する第2射出手段と、前記第2射出手段から射出されるレーザ光を送信対象情報に応じて変調する第2変調手段と、を更に備え、前記相手装置とレーザ光によって双方向の通信を行う構成であり、
前記制御手段は、前記相手装置からのレーザ光の射出を停止させる場合に、前記第2射出手段からのレーザ光の射出も停止させることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の電子機器。
【請求項8】
前記レーザ光は可視域外の波長の非可視レーザ光であることを特徴とする請求項1〜請求項7の何れか1項記載の電子機器。
【請求項9】
前記非可視レーザ光は赤外域の波長のレーザ光であることを特徴とする請求項8記載の電子機器。
【請求項10】
前記電子機器は、撮像装置、携帯可能な情報機器、可搬型放射線画像変換装置、当該可搬型放射線画像変換装置から画像情報を読み出す画像読出装置、の何れかであることを特徴とする請求項1〜請求項9の何れか1項記載の電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2009−180929(P2009−180929A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−19759(P2008−19759)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】