説明

電子機器

【課題】内蔵された基板のメンテナンス性が高く、基板に搭載された電子部品の不具合を極力抑制することが可能な電子機器を提供する。
【解決手段】プリンターは、オートカッター,サーマルヘッド,プラテンローラーと、これらを制御するための電子部品42を搭載した回路基板41とを共通のケース本体4内に備え、使用状態ではオートカッター等に対し回路基板41が下部に位置する姿勢となるように配置され、回路基板41が電子部品42を搭載した搭載面41aを下に向けて配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品が搭載された基板を有するプリンターなどの電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
POS(Point−Of−Sale)システムなどでは、ロール状の記録紙に印刷を施すレシートプリンター等のプリンターが用いられている。
この種のプリンターとしては、サーマルヘッドによって記録紙に印刷し、プラテンローラーとサーマルヘッドとで記録紙を表裏から挟んで繰り出し、本体開口に設けられたオートカッターにてカットするものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−229983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなプリンターには、オートカッター、サーマルヘッド及び記録紙の繰出機構などを制御する各種の電子部品が搭載された回路基板が内蔵されている。
この回路基板の電子部品をメンテナンスする際には、プリンターの周囲を覆うカバーを取り外し、さらに、フレームなどにねじ止め固定されている回路基板を取り外し、搭載されている電子部品を露出させなければならなかった。
また、クーポン券などの発行用にプリンターを用いて、ファーストフードなどの店舗のレジカウンター等に設置した場合、このプリンターに誤って飲み物や水がかかってしまい、内蔵されている回路基板の電子部品に水が付着することがある。さらに、記録紙をカットした際に発生する紙粉が落下し、空気の流れなどで基板の電子部品に付着することもある。この場合、付着した紙粉などが湿気を吸って、電子部品の端子間を導通させることもある。電子部品に水や紙粉などの塵埃が付着すると、電子部品に不具合が生じるおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、内蔵された基板のメンテナンス性が良好で、基板に搭載された電子部品の不具合を極力抑制することが可能な電子機器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決することのできる本発明の電子機器は、可動部を含む被制御部と、前記被制御部の制御のための電子部品を搭載した基板とを共通の筺体内に備えている電子機器であって、
前記電子機器の使用状態では、前記被制御部に対し前記基板が下部に位置する姿勢となるように前記被制御部と前記基板が配置され、前記基板が、前記電子部品を搭載した面を前記被制御部の反対側に向けて配置されていることを特徴とする。
【0007】
この構成の電子機器によれば、電子機器の下部を上に向けると容易に基板にアクセス可能である。そのため、基板のメンテナンス性が良好である。
また、使用状態では被制御部に対し下部になる位置に基板が配置され、基板の電子部品を搭載した面(いわゆる部品面、電子部品が半田付けされるため半田漕に浸される面の反対側の面、あるいは電子部品の搭載数が多い側の面)が下に向けられているので、電子機器に誤って水がかかっても基板の電子部品まで水が浸入せず、電子部品への水の付着を防止することができる。また、上方側の可動部で生じて機器内で落下する塵埃が空気の流れ等により電子部品に付着することも防止することができる。付着した紙粉などが湿気を吸って、電子部品の端子間を導通させることも防止できる。これにより、電子部品に水や塵埃が付着することによる電子部品の不具合を防止し、常に良好な性能を確保することができる。
【0008】
また、本発明の電子機器において、前記基板における前記電子部品を搭載した面の外側には、取り外し可能な蓋が設けられていることが好ましい。
この構成の電子機器によれば、基板のメンテナンスを行いたい場合には、電子機器下部の蓋を取り外すだけで、基板の電子部品の搭載面を容易に露出させることができ、メンテナンス性が良好である。
【0009】
また、本発明の電子機器において、前記基板における前記電子部品を搭載した面と反対の面の側には、保護シートまたは保護板が設けられていることが好ましい。
この構成の電子機器によれば、基板における上側の面であるいわゆる半田面(電子部品が半田付けされるため半田漕に浸される側の面、あるいは電子部品の搭載数が少ない側の面)が、保護シートまたは保護板によって上から落下してくる水や塵埃から保護される。これにより、電子部品の不具合を防止することができる。
【0010】
また、本発明の電子機器において、前記基板の前記電子部品を搭載した面には、コネクターが前記被制御部の反対側に向けて設けられ、前記コネクターから延びたケーブルによって前記基板と前記被制御部が電気的に接続されていることが好ましい。
この構成の電子機器によれば、基板の電子部品を搭載した面に設けられたコネクターにおける接続状態のチェックなどのメンテナンスを容易に行うことができ、また、このコネクターの挿抜も容易に行うことができる。また、コネクターとケーブルの接続部である導通部分に、水や塵埃が付着することによる不具合を防止することができる。付着した紙粉などが湿気を吸って、コネクターの端子間を導通させることも防止できる。
【0011】
また、本発明の電子機器は、記録紙に対して印刷するプリンターであり、
前記可動部は、印刷後の前記記録紙を切断するオートカッターであることが好ましい。
この構成の電子機器によれば、オートカッターによって記録紙を切断する際に生じる紙粉などの塵埃が落下して基板の電子部品に付着するような不具合を防止することができ、常に良好な印刷性能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る電子機器の一実施形態であるプリンターを示す斜視図である。
【図2】図1のプリンターのカバーを開いた状態の斜視図である。
【図3】図1のプリンター機構の構造を示す断面図である。
【図4】図1のプリンターの底部側の構造を示す分解斜視図である。
【図5】図1のプリンターの底部側の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る電子機器の実施形態の例について図面を参照して説明する。
図1は本発明に係る電子機器の実施形態の例であるプリンターの斜視図、図2はプリンターのカバーを開いた状態の斜視図、図3はプリンター機構の構造を示す断面図、図4はプリンターの底部側の構造を示す分解斜視図、図5はプリンターの底部側の構造を示す断面図である。
図1から図3に示すように、本発明に係る電子機器の一実施形態であるプリンター(電子機器)1は、例えば、記録媒体の一例であるロール状の記録紙Sに対して感熱方式のサーマルヘッド2により印刷を行うものであり、例えば、POSシステム等に用いられるレシートプリンターである。
【0014】
プリンター1は、そのプリンター機構3が、樹脂からなるケース本体(筺体)4によって覆われており、プリンター機構3に設けられたロール紙収容部5に記録紙Sが収容可能とされている。
ケース本体4の上部は、上部カバー6及び前方カバー7によって覆われており、上部カバー6は、プリンター機構3を構成するカバーフレーム22に取り付けられ、プリンター1の後方側における水平軸線を中心として回動可能とされている。そして、この上部カバー6を回動させることにより、ロール紙収容部5が開閉される。
上部カバー6及び前方カバー7の間には、排紙口8が設けられており、この排紙口8から、印刷された記録紙Sが排出される。
【0015】
プリンター1の上部における一側部側には、オープンボタン11が設けられており、このオープンボタン11を押下すると、上部カバー6が取り付けられたカバーフレーム22をロックしているロック機構(図示省略)によるロックが解除され、上部カバー6を開いてロール紙収容部5を露出させることができるようになっている。また、プリンター1の上部における一側部側には、動作状況などを表示するLED等の表示ランプを有するインジケータ部12が設けられている。
【0016】
プリンター機構3は、本体フレーム21を備えており、この本体フレーム21に、カバーフレーム22が回動可能に連結されている。この本体フレーム21の前方側には、記録紙Sを切断するオートカッター(可動部)23が設けられており、前方カバー7によって覆われている。
【0017】
カバーフレーム22を開いた内部には、ロール紙収容部5の下方側を形成する樹脂製のロール紙ホルダー24が設けられている。
カバーフレーム22の先端には、上部カバー6を閉じた状態でサーマルヘッド2と対向するプラテンローラー31が設けられており、このプラテンローラー31は、駆動機構(図示省略)によって回転する。そして、このプラテンローラー31が回転すると、記録紙Sは、プラテンローラー31とサーマルヘッド2とに挟持されて紙送りされ、排紙口8から排出される。
【0018】
オートカッター23は、カバーフレーム22の先端に設けられた固定刃33と、本体フレーム21側に設けられた可動刃34とを備えており、これらの固定刃33及び可動刃34は、その刃筋方向がプリンター1の幅方向に沿うように配置されている。可動刃34は、駆動機構35によって、固定刃33との間に所定の隙間をあけた待機位置と、固定刃33に重なる切断終了位置との間で移動される。
そして、サーマルヘッド2による印刷処理位置を通過した記録紙Sは、待機位置から切断終了位置へ可動刃34が移動されることにより、可動刃32と固定刃33とによって切断される。
【0019】
図4及び図5に示すように、プリンター1には、使用状態における本体フレーム21の下部に、回路基板(基板)41が内蔵されており、この回路基板41には、オートカッター23、サーマルヘッド2及びプラテンローラー31などの被制御部を制御する各種の電子部品42が搭載されている。
【0020】
回路基板41は、主に電子部品42が搭載される搭載面41a(部品面)と、主に搭載された電子部品42間を接続する回路パターンが形成された回路面41b(半田面)とを有している。また、この回路基板41には、複数の取付孔41cが形成されている。
そして、この回路基板41は、取付孔41cに通されたネジ43を、本体フレーム21の下面に設けられたステー44のネジ孔へねじ込むことにより、搭載面41aを下に向けて取り付けられている。
また、搭載面41aと反対の面である回路面41bには、絶縁性を有する樹脂フィルムからなる保護シート45が設けられている。保護シート45は、樹脂の保護板でもよい。
【0021】
また、この回路基板41の搭載面41aには、雌型コネクター(コネクター)46が搭載されており、この雌型コネクター46には、プリンター機構3側から引き回されているケーブル47に設けられた雄型コネクター(コネクター)48が接合され、雌型コネクター46及び雄型コネクター48の端子同士が電気的に接続される。
【0022】
上記のような回路基板41が取り付けられた本体フレーム21の下方側には、着脱可能な底部カバー(蓋)49が取り付けられている。この底部カバー49は、ケース本体4の下方部分を構成するものであり、この底部カバー49によって回路基板41が覆われている。つまり、この底部カバー49を含む共通のケース本体4内に、オートカッター23を含むプリンター機構3と回路基板41とが配置されている。
【0023】
上記プリンター1において、裏返して底部カバー49を取り外すと、本体フレーム21の下方に配置された回路基板41の搭載面41aが露出される。これにより、回路基板41の搭載面41aに搭載されている電子部品42が容易にメンテナンス可能となり、また、雌型コネクター46と雄型コネクター48との接合状態のチェックも可能となる。
【0024】
このように、上記実施形態の電子機器であるプリンター1によれば、下部から回路基板41へのアクセスが容易であり、メンテナンス性が良好である。例えば底部カバー49を取り外すだけで、回路基板41の電子部品42の搭載面41aを容易に露出させることができ、メンテナンス作業を容易に行うことができる。また、回路基板41に搭載されたプリンター1の初期設定を行うためのスイッチの操作も容易である。
【0025】
また、使用状態では下部になる位置に、回路基板41の電子部品42を搭載した搭載面41aが下に向けられて配置された構造であるので、プリンター1に誤って水がかかっても電子部品42まで水が浸入せず、電子部品42への水の付着を防止することができる。上部のオートカッター23、サーマルヘッド2及びプラテンローラー31で、ある程度水が溜まり、さらに保護シート45で水の侵入を防止することができ、さらに電子部品42が下向きで装着されているので、ほぼ完全に電子部品42に水が掛かることがなく、溜まることもない。また、上方側の可動部であるオートカッター23によって記録紙Sが切断されて生じた紙粉やその他の塵埃がプリンター1内に落下しても、同様に、それらが電子部品42に付着することを防止することができる。特に、紙粉やその他の塵埃が、空気の流れにより回り込んできたとしても、電子部品42が下向きで装着されているので、電子部品42に溜まることもない。回路基板41の搭載面41aの雌型コネクター46のケーブル47の接合部も同様に保護される。付着した紙粉などが湿気を吸って、電子部品42や雌型コネクター46の端子間を導通させることも防止できる。このように、プリンター1は電子部品42に水や塵埃が付着することによる電子部品42の不具合を防止し、常に良好な印刷性能を確保することができる。
【0026】
また、電子部品42間を接続する回路面41bに配置された保護シート45によって上部から落下してきた水や塵埃を遮断して、回路基板41の回路面41bへの水や塵埃の付着を防止することができる。なお、回路面41bには、保護シート45を設ける代わりに絶縁性を有する保護板を配置しても良い。その場合も、保護板によって回路基板41の回路面41bへの水や塵埃の付着を防止することができる。
【0027】
また、回路基板41の搭載面41aに設けられた雌型コネクター46に対する雄型コネクター48の接続状態のチェックなどのメンテナンスも容易に行うことができ、雌型コネクター46への雄型コネクター48の挿抜も容易に行うことができる。
【0028】
なお、上記実施形態では、記録紙Sに印刷を施して送り出し、オートカッター23で切断するプリンター1を例示して説明したが、本発明の電子機器はプリンターに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0029】
1:プリンター(電子機器)、2:サーマルヘッド(被制御部)、4:ケース本体(筺体)、23:オートカッター(可動部,被制御部)、31:プラテンローラー(被制御部)、41:回路基板(基板)、41a:搭載面(電子部品を搭載した面)、41b:回路面(電子部品間が接続された面)、42:電子部品、45:保護シート、46:雌型コネクター(コネクター)、48:雄型コネクター(コネクター)、49:底部カバー(蓋)、S:記録紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動部を含む被制御部と、前記被制御部の制御のための電子部品を搭載した基板とを共通の筺体内に備えている電子機器であって、
前記電子機器の使用状態では、前記被制御部に対し前記基板が下部に位置する姿勢となるように前記被制御部と前記基板が配置され、前記基板が、前記電子部品を搭載した面を前記被制御部の反対側に向けて配置されていることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器であって、
前記基板における前記電子部品を搭載した面の外側には、取り外し可能な蓋が設けられていることを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電子機器であって、
前記基板における前記電子部品を搭載した面と反対の面の側には、保護シートまたは保護板が設けられていることを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載の電子機器であって、
前記基板の前記電子部品を搭載した面には、コネクターが前記被制御部の反対側に向けて設けられ、前記コネクターから延びたケーブルによって前記基板と前記被制御部が電気的に接続されていることを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載の電子機器であって、
前記電子機器は、記録紙に対して印刷するプリンターであり、
前記可動部は、印刷後の前記記録紙を切断するオートカッターであることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−37181(P2011−37181A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−188002(P2009−188002)
【出願日】平成21年8月14日(2009.8.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】