電子機器
【課題】部品点数の削減を図ることができる電子機器を提供する。
【解決手段】電子機器1は、本体部2と、表示画面18aを有する表示部3と、ブレーキ機能を備える第1のヒンジ4、および摩擦部51が設けられた第2のヒンジ5を有して表示部3と本体部2とを連結し、表示部3の表示画面18aが本体部2に覆われる第1の角度α1と表示部3の表示画面18aが露出する第2の角度α2とに亘って回動する連結部6と、連結部6が第2の角度α2に回動したときに、摩擦部51が当接されることで連結部6にトルクを作用させる当接部52とを具備した。
【解決手段】電子機器1は、本体部2と、表示画面18aを有する表示部3と、ブレーキ機能を備える第1のヒンジ4、および摩擦部51が設けられた第2のヒンジ5を有して表示部3と本体部2とを連結し、表示部3の表示画面18aが本体部2に覆われる第1の角度α1と表示部3の表示画面18aが露出する第2の角度α2とに亘って回動する連結部6と、連結部6が第2の角度α2に回動したときに、摩擦部51が当接されることで連結部6にトルクを作用させる当接部52とを具備した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒンジを備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ノートPCのような電子機器は、表示部を本体部に回動可能に連結する一対のヒンジを備えている。これらヒンジは、任意の開き角度で表示部を保持するため、ブレーキ機能を有する。つまりヒンジには、皿ばね等を含むブレーキ部が設けられており、一定のトルク(ブレーキトルク)が常に作用するようになっている。
【0003】
特許文献1は、第1および第2のヒンジを有した電子機器を開示している。第1のヒンジは、トルクが常に一様である。第2のヒンジは、一定方向のみにトルクを作用させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−66571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、皿ばね等を含むブレーキ機能を備えたヒンジは、部品点数が多く、高価になる。そこで、左右に設けられる一対のヒンジのうち、一方にブレーキ機能を有するヒンジを採用するとともに、他方にブレーキ機能を省略したヒンジを採用し、これにより部品点数を削減することが考えられる。
【0006】
しかしながら、片方にブレーキ機能を有しないヒンジを採用すると、表示部を起こした時に、ブレーキ機能を有しない側の表示部端部が不安定になる場合もある。そのため、ブレーキ機能を備えたヒンジを単純に減らすことは難しい。
【0007】
本発明の目的は、部品点数の削減を図ることができる電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一つの形態に係る電子機器は、本体部と、表示画面を有する表示部と、ブレーキ機能を備える第1のヒンジ、および摩擦部が設けられた第2のヒンジを有して前記表示部と前記本体部とを連結し、前記表示部の表示画面が前記本体部に覆われる第1の角度と前記表示部の表示画面が露出する第2の角度とに亘って回動する連結部と、前記連結部が前記第2の角度に回動したときに、前記摩擦部が当接されることで前記連結部にトルクを作用させる当接部とを具備した。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、部品点数の削減が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一つの実施形態に係る電子機器の斜視図。
【図2】図1中に示された電子機器の平面図。
【図3】図1中に示された電子機器の側面図。
【図4】図2中に示された電子機器のF4−F4線に沿う断面図。
【図5】図4中に示されたブレーキ機構を分解して示す斜視図。
【図6】図2中に示された電子機器のF6−F6線に沿う断面図。
【図7】図6中に示された電子機器のF7−F7線に沿う断面図。
【図8】図7中に示された第1の摩擦部の動きを模式的に示す側面図。
【図9】図1中に示された電子機器の断面図。
【図10】図1中に示された電子機器の断面図。
【図11】図1中に示された電子機器のトルク曲線を示す図。
【図12】図1中に示された電子機器の第1の変形例の断面図。
【図13】図1中に示された電子機器の第2の変形例の断面図。
【図14】図1中に示された電子機器の第3の変形例の断面図。
【図15】図1中に示された電子機器の第4の変形例の断面図。
【図16】図1中に示された電子機器の第5の変形例のトルク曲線を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施の形態を、ノートPCに適用した図面に基づいて説明する。
図1乃至図11は、本発明の一つの実施形態に係る電子機器1を開示している。電子機器1は、例えばノートPCである。なお本発明が適用可能な電子機器は、上記に限定されるものではない。本発明は、例えばPDA(Personal digital Assistant)やゲーム機などを含む種々の電子機器に広く適用可能である。
【0012】
図1乃至図3に示すように、電子機器1は、本体部2と、表示部3と、第1および第2のヒンジ4,5とを備えている。本体部2は、メイン回路基板を搭載した電子機器本体である。本体部2は、第1の筐体7を有する。第1の筐体7は、本発明でいう「筐体」の一例である。第1の筐体7は、上壁8、下壁9、および周壁10を有し、扁平な箱状に形成されている。
【0013】
下壁9は、電子機器1を机上に置いた時に、その机上面に向かい合う。下壁9は、机上面に対して略平行になる。上壁8は、下壁9との間に空間を空けて、下壁9と略平行(すなわち略水平)に広がる。上壁8には、キーボード11が設けられている。周壁10は、下壁9に対して起立し、下壁9の周縁部と上壁8の周縁部との間を繋いでいる。
【0014】
図7に示すように、第1の筐体7は、ベース部材12(筐体ベース)と、カバー部材13(筐体カバー)とを有する。ベース部材12は、下壁9と、周壁10の一部とを含む。カバー部材13は、上壁8と、周壁10の一部とを含む。カバー部材13がベース部材12に組み合わされることで、第1の筐体7が形成されている。
【0015】
図1に示すように、本体部2は、第1の端部である後端部14と、第2の端部である前端部15とを有している。後端部14には、例えば第1および第2のヒンジ4,5により、表示部3が回動可能(開閉可能)に連結されている。前端部15は、本体部2において後端部14とは反対側となる端部である。なお本明細書では、ユーザーから見て近い方を前、遠い方を後と定義する。また、ユーザーから見た状態を基準に左右を定義する。
【0016】
図1に示すように、表示部3は、第2の筐体17と、この第2の筐体17に収容された表示装置18とを備えている。第2の筐体17は、前壁19、背壁20、および周壁21し、扁平な箱状に形成されている。なお本明細書では、表示部3に関しては立て起こされた姿勢を基準にして前後を定義している。第2の筐体17は、第1および第2のヒンジ4,5が取り付けられる一対の突出部22a,22bを有する。
【0017】
前壁19は、表示部3が倒されたとき(閉じられたとき)に本体部2の上壁8に対向する。前壁19は、表示部3が立て起こされたときにユーザーに向かい合う。前壁19は、表示装置18の表示画面18aを外部に露出させる比較的大きな開口部19aを有する。
【0018】
背壁20は、第2の筐体17において前壁19とは反対側に位置する。背壁20は、前壁19との間に空間を空けるとともに、前壁19と略平行に広がる。周壁21は、背壁20に対して起立し、前壁19の周縁部と背壁20の周縁部との間を繋いでいる。
【0019】
図2および図3に示すように、第1および第2のヒンジ4,5は、それぞれ表示部3を、本体部2の後端部14に回動可能に連結している。これにより表示部3は、本体部2を上方から覆うように倒される閉じ位置と、本体部2に対して起こされる開き位置との間で回動可能である。
【0020】
具体的には図3に示すように、表示部3は、当該表示部3が本体部2に重なる第1の角度α1(例えば、開角度0度)、この第1の角度α1から表示部3が起された第2の角度α2(例えば、開角度15度)、および第2の角度α2から表示部3がさらに起された第3の角度α3(例えば、開角度135度)の間に亘り回動する。なお「開角度」とは、電子機器1が置かれた机上面と表示画面18aとの間の角度のことである。第3の角度α3は、例えば表示部3の開き限界角度(それ以上回らない角度)である。なお、第2および第3の角度α2,α3は、上記具体例に限定されるものではなく、それぞれ任意に設定可能である。
【0021】
第2の角度α2は、例えばユーザーが電子機器1の使用を意図しているか否かを判定する境界値である。つまり、表示部3が第2の角度α2よりも倒された状態(すなわち第1および第2の角度α1,α2の間)は、ユーザーが電子機器1を使用していない不使用範囲であり、表示部3を起す動作中または倒す動作中であると見做す。この不使用範囲では、第1および第2のヒンジ4,5は、表示部3を強固に保持する必要が無く、むしろ表示部3の回動を容易にするためにブレーキトルクが小さいことが望まれる。
【0022】
一方で、第2の角度α2よりも表示部3が起こされた状態(すなわち第2および第3の角度α2,α3の間)は、ユーザーが電子機器1を使用する使用範囲であると見做す。この使用範囲では、第1および第2のヒンジ4,5は、表示部3がガタつかないように、表示部3を強固に保持することが望ましい。
【0023】
換言すれば、電子機器1は、第1および第2のヒンジ4,5を有して表示部3と本体部2とを連結し、表示部3の表示画面18aが本体部2に覆われる第1の角度α1と表示部3の表示画面18aが露出する第2の角度α2とに亘って回動する連結部6を有している。
【0024】
また、詳しくは後述するが、第1のヒンジ4は、第2および第3の角度α2,α3の間で、一定のブレーキトルク(第1のブレーキトルク)を作用させるとともに、第1および第2の角度α1,α2の間で、第1のブレーキトルクよりも小さな第2のブレーキトルクを作用させる。換言すれば、第1のヒンジ4が上記第1および第2のブレーキトルクを切り替える境界を第2の角度α2と定義することができる。
【0025】
また第1のヒンジ4の一例は、表示部3を倒す時に、第1および第2の角度α1,α2の間で表示部3を本体部2に向かって引き込む引き込み動作を行う。この引き込み動作が開始される角度を、第2の角度α2と定義することもできる。
【0026】
次に、第1のヒンジ4,5について詳しく説明する。
第1のヒンジ4は、ブレーキ機能を内蔵したヒンジである。図2に示すように、第1のヒンジ4は、例えば電子機器1の左端部に設けられている。図4に示すように、第1のヒンジ4は、シャフト31、ヒンジ板金32、およびブレーキ機構33を有する。
【0027】
シャフト31は、水平に延びている。シャフト31は、第1および第2の筐体7,17に設けられた貫通孔7a,17aに挿通され、第1の筐体7内から第2の筐体17内まで延びている。シャフト31は、第1の筐体7内に位置する第1の部分34と、第2の筐体17内に位置する第2の部分35とを有する。
【0028】
シャフト31の第1の部分34は、基部34aと、取付部34bとを有する。取付部34bは、その周面の一部に平坦部が設けられている(図7のシャフト41を参考)。ヒンジ板金32およびブレーキ機構33は、取付部34bに挿通されている。基部34aと取付部34bとの間には、段差部34cが形成されている。ヒンジ板金32は、取付部34bに取り付けられ、段差部34cに隣接している。ヒンジ板金32は、段差部34cによって軸方向の移動が規制され、第2の部分35に向いてシャフト31から抜けないようになっている。ヒンジ板金32は、ブレーキ機構33に対向し、一方からブレーキ機構33を支持している。
【0029】
図4および図5に示すように、ブレーキ機構33は、第1のブレーキ部材36、第2のブレーキ部材37、皿ばね38、およびワッシャ39を有する。第1のブレーキ部材36は、ヒンジ固定部であり、第1の筐体7に固定されている。第1のブレーキ部材36が第1の筐体7に固定されることで、第1のヒンジ4の全体が支持されている。第1のブレーキ部材36は、シャフト31に固定されておらず、シャフト31の動きに伴って動かない。シャフト31は、第1のブレーキ部材36のなかで回動自在になっている。
【0030】
第2のブレーキ部材37は、第1のブレーキ部材36に対向している。第2のブレーキ部材37は、シャフト31に固定されており、シャフト31の回動に伴って回動する。皿ばね38は、第2のブレーキ部材37に対して第1のブレーキ部材36とは反対側に位置する。皿ばね38は、ワッシャ39に支持されている。ワッシャ39は、かしめられたシャフト31の先端部31aに支持され、シャフト31から抜けないようになっている。
【0031】
皿ばね38は、第2のブレーキ部材37とワッシャ39との間で圧縮され、第2のブレーキ部材37を第1のブレーキ部材36に向いて付勢している。これにより、第1および第2のブレーキ部材36,37の間で摩擦力が生じる。この摩擦力によって、第1のヒンジ4は、トルク(ブレーキトルク)を作用させる。
【0032】
図5に示すように、第1のブレーキ部材36は、第1の部分36aと、第2の部分36bとを有する。第2の部分36bは、第1の部分36aに対して第1のブレーキ部材36の周方向に離れて位置するとともに、第1の部分36aに対して第2のブレーキ部材37に向いて盛り上がっている。第1および第2の部分36a,36bは、それぞれ平坦状をしている。第1および第2の部分36a,36bの間には、第1および第2の部分36a,36bを滑らかに繋げる傾斜部36cが設けられている。第1のブレーキ部材36は、軸方向に突出した突出部(第2の部分36b)を有したカムである。
【0033】
第2のブレーキ部材37は、第1のブレーキ部材36の凹凸に係合する凹凸を有する。第2のブレーキ部材37は、第3の部分37aと、第42の部分37bとを有する。第3の部分37aは、第4の部分37bに対して第2のブレーキ部材37の周方向に離れて位置するとともに、第4の部分37bに対して第1のブレーキ部材36に向いて盛り上がっている。第3および第4の部分37a,37bは、それぞれ平坦状をしている。第3および第4の部分37a,37bの間には、第3および第4の部分37a,37bを滑らかに繋げる傾斜部37cが設けられている。
【0034】
第1の角度α1では、第3の部分37aが第1の部分36aに対向し、第4の部分37bが第2の部分36bに対向する。このとき、皿ばね38が最も伸びた状態になり、ブレーキトルクが最小になる。この状態からシャフト31の回動に伴い第2のブレーキ部材37が回動すると、第3の部分37aの端部が傾斜部36cを登る。これにより、第2のブレーキ部材37が第1のブレーキ部材36から軸方向に離れるように移動し、皿ばね38が圧縮される。そのため、この第2のブレーキ部材37の回動に伴いブレーキトルクが増していく(図11参照)。表示部3の回動が前記第2の角度α2に達する時、第3の部分37aは傾斜部36cを登りきり、第2の部分36bに乗り上げる。第2および第3の角度α2,α3の間では、第3の部分37aは、平坦な第2の部分36bの表面上を移動することになり、この間は一定のブレーキトルク(第1のブレーキトルク)が作用する。
【0035】
一方で、表示部3を倒す時、第2の角度α2で、第3の部分37aの端部が第2の部分36bから傾斜部36cに戻ると、皿ばね38の付勢力により第3の部分37aが傾斜部36cに向けて押される。傾斜部36cに押さえ付けられた第3の部分37aは、傾斜部36cの傾斜に沿って第1の部分36aに向けて移動しようとする。この力により、第1および第2の角度α1,α2の間では、第2のブレーキ部材37を回転させる強制的なトルク、つまり表示部3を本体部2に向けて引き込む引き込み力(引き込み機能)が作用する。ブレーキ機構33は、本発明でいう「引込部」の一例である。
【0036】
一方で、図4に示すように、シャフト31の第2の部分35には、ブラケット40が固定されている。このブラケット40は、第2の筐体17内に延び、第2の筐体17に固定されている。つまり、ブラケット40は、第2の筐体17を支持している。
【0037】
次に、第2のヒンジ5について詳しく説明する。
第2のヒンジ5は、ブレーキ機能を内蔵しないヒンジである。図2に示すように、第2のヒンジ5は、例えば電子機器1の右端部に設けられている。なお、第1および第2のヒンジ4,5は、左右反対に設けられてもよい。図6に示すように、第2のヒンジ5は、シャフト41、ヒンジ板金42、固定部43、およびワッシャ44を有する。
【0038】
シャフト41は、水平に延びている。シャフト41は、第1および第2の筐体7,17に設けられた貫通孔7b,17bに挿通され、第1の筐体7内から第2の筐体17内まで延びている。シャフト41は、第1の筐体7内に位置する第1の部分45と、第2の筐体17内に位置する第2の部分46を有する。
【0039】
シャフト41の第1の部分45は、基部45aと、取付部45bとを有する。取付部45bは、その周面の一部に平坦部が設けられている(図7参照)。ヒンジ板金42、固定部43、およびワッシャ44は、取付部45bに挿通されている。基部45aと取付部45bとの間には、段差部45cが形成されている。ヒンジ板金42は、取付部45bに取り付けられ、段差部45cに隣接している。ヒンジ板金42は、段差部45cによって軸方向の移動が規制され、第2の部分46に向けてシャフト41から抜けないようになっている。ヒンジ板金42は、固定部43に対向し、一方から固定部43を支持している。
【0040】
固定部43は、第1の筐体7に固定されている。固定部43が第1の筐体7に固定されることで、第2のヒンジ5の全体が支持されている。固定部43は、シャフト41に固定されておらず、シャフト41の動きに伴って動かない。シャフト41は固定部43のなかで回動自在になっている。
【0041】
ワッシャ44は、固定部43に対してヒンジ板金42とは反対側に位置する。ワッシャ44は、かしめられたシャフト41の先端部41aに支持され、シャフト41から抜けないようになっている。
【0042】
図6に示すように、ヒンジ板金42およびワッシャ44は、シャフト41に固定され、シャフト41の回動に伴って回動する。シャフト41、ヒンジ板金42、およびワッシャ44は、それぞれ本発明でいう「回転体」の一例である。シャフト41、ヒンジ板金42、およびワッシャ44は、上記第1の角度α1、第2の角度α2、および第3の角度α3に亘り回動する。ヒンジ板金42は、金属製であり、例えば円形状をしている(図7参照)。
【0043】
一方で、図6に示すように、シャフト41の第2の部分46には、ブラケット47が固定されている。このブラケット47は、第2の筐体17内に延び、第2の筐体17に固定されている。つまり、ブラケット47は、第2の筐体17を支持している。
【0044】
図7に示すように、第2のヒンジ5には、第1および第2の摩擦部51,52(外部ブレーキ構造)が設けられている。なお、第1の摩擦部51は、本発明でいう「摩擦部」の一例である。第2の摩擦部52は、本発明でいう「当接部」の一例であり、連結部6が第2の角度α2に回動したときに、第1の摩擦部51が当接されることで連結部6にトルクを作用させる。
【0045】
詳しく述べると、第1の摩擦部51は、例えばヒンジ板金42(回転体)の周面42aに設けられている。ヒンジ板金42は、その周面42aの一部に凹部42bを有する。第1の摩擦部51の一例は、ヒンジ板金42の凹部42bに取り付けられた摩擦増加部材である。第1の摩擦部51は、ヒンジ板金42の周面42aよりも外側に飛び出しており、ヒンジ板金42に凸部を形成している。
【0046】
第1の摩擦部51は、例えばフェルトやクッション(スポンジゴム)のような弾性変形物である。第1の摩擦部51は、金属よりも摩擦抵抗が大きな材料で形成されている。なお第1の摩擦部51は、ヒンジ板金42に設けられたものに限定されず、上記「回転体」に設けられていればよい。つまり、第1の摩擦部51は、シャフト41やワッシャ44に設けられてもよい。
【0047】
第1の摩擦部51は、ヒンジ板金42の回動に伴って(つまり表示部3の回動に伴って)位置が移動する。具体的には、図8に示すように、第1の摩擦部51は、第1の角度α1に対応した第1の位置P1から、第2の角度α2に対応した第2の位置P2、第3の角度α3に対応した第3の位置P3に亘って移動する。
【0048】
図7に示すように、第2の摩擦部52は、例えば第1の筐体7に取り付けられている。第2の摩擦部52は、例えばベース部材12に取り付けられている。なお第2の摩擦部52は、カバー部材13や第1の筐体7内のその他の部位に取り付けられてもよい。
【0049】
第2の摩擦部52の一例は、摩擦増加部材である。第2の摩擦部52は、例えばフェルトやクッション(スポンジゴム)のような弾性変形物である。第2の摩擦部52は、金属よりも摩擦抵抗が大きな材料で形成されている。第2の摩擦部52は、例えば細長い形状をしている。
【0050】
第1の筐体7は、ヒンジ板金42の周面42aに沿う円弧状の台座59を有している。第2の摩擦部52は、例えば台座59に取り付けられ、台座59の形状に沿うことで、ヒンジ板金42の周面42aに沿った(つまり、第1の摩擦部51の移動経路に沿った)円弧状に形成されている。なお第2の摩擦部52は、それ自体が円弧状に形成されていてもよい。第2の摩擦部52は、ヒンジ板金42の周面42aに接触するものであってもよいし、接触しないものであってもよい。
【0051】
図8および図9に示すように、第2の摩擦部52は、第1および第2の角度α1,α2の間(第1および第2の位置P1,P2の間)で第1の摩擦部51に対向する領域には設けられていない。第2の摩擦部52は、第1および第2の角度α1,α2の間で、第1の摩擦部51を外れたヒンジ板金42の周面42aに対向する。このため、第2の摩擦部52は、第1および第2の角度α1,α2の間では、第1の摩擦部51に接触しない。
【0052】
つまり、第1および第2の角度α1,α2の間では、第2のヒンジ5にトルクが発生しない。なお、ヒンジ板金42の金属の周面42aが第2の摩擦部52に接触するとしても、金属製のヒンジ板金42と第2の摩擦部52との摩擦抵抗は非常に小さく、実質的なトルクはゼロとなる。
【0053】
一方で、図8および図10に示すように、第2の摩擦部52は、第2の位置P2に達した第1の摩擦部51が接するように設けられている。さらに第2の摩擦部52は、第2および第3の角度α2,α3の間(第2および第3の位置P2,P3の間)に亘り第1の摩擦部51に対向する領域に設けられている。
【0054】
このため、第2の摩擦部52は、第2および第3の角度α2,α3の間で第1の摩擦部51に対向して接触する。第2の摩擦部52が第1の摩擦部51に接触すると、例えばフェルトとフェルトとの接圧により摩擦力がアップし、第1および第2の摩擦部51,52の間で接触に基づく摩擦力が生じる。これにより、第2のヒンジ5にトルク(ブレーキトルク)が作用する。
【0055】
つまり、第2のヒンジ5では、ヒンジ外部からブレーキ機能が追加されている。図11に示すように、第2のヒンジ5のブレーキトルクは、第1のヒンジ4の第1のブレーキトルクと略同じ大きさである。つまり、左右のヒンジ4,5に略同じ大きさのトルクが作用する。
【0056】
一方で、表示部3を倒す時、第1および第2の摩擦部51,52の接触は、第2の角度α2で無くなる。つまり、第2の摩擦部52は、第1のヒンジ4の引込部が表示部3を引き込む動作を開始する前に、第1の摩擦部51から外れてトルク(摩擦力)が抜ける。
【0057】
次に、電子機器1の機能について説明する。
図11に示すように、第1のヒンジ4は、第1の角度α1で最小のブレーキトルクを作用させる。第1の角度α1から表示部3を起こす時、第2のブレーキ部材37の第3の部分37aが第1のブレーキ部材36の傾斜部36cに乗り上げることで、第2の角度α2までブレーキトルクが徐々に増加する。第2および第3の角度α2,α3の間では、第2のブレーキ部材37の第3の部分37aが第1のブレーキ部材36の第2の部分36bの平坦な表面上を移動するため、一定のブレーキトルク(第1のブレーキトルク)が作用する。
【0058】
一方で、第2のヒンジ5は、第1および第2の角度α1,α2の間では、第1および第2の摩擦部51,52が接触しないので、ブレーキトルクがゼロである。第2の角度α2において、第1および第2の摩擦部51,52の接触が開始され、ブレーキトルクが徐々に増加する。そして、第2の角度α2に対してオフセットした所定角度(オフセット角度、例えば開角度17度)において、ブレーキトルクが最大となる。そして、残りの第2および第3の角度α2,α3の間は、この最大のブレーキトルクで一定となる。このとき、第1および第2のヒンジ4,5のブレーキトルクは、互いに略同じ大きさになる。
【0059】
表示部3を倒す時、第1のヒンジ4は、第2および第3の角度α2,α3の間では、一定の第1のブレーキトルクが作用する。そして、第2の角度α2に達すると、第2のブレーキ部材37の第3の部分37aが第1のブレーキ部材36の傾斜部36cに入り、ブレーキトルクが徐々に低下する。つまり、第1および第2の角度α1,α2の間では、上記第1のブレーキトルクよりも小さな第2のブレーキトルクが作用するとともに、上記引き込み動作により表示部3が本体部2に向けて引き込まれる。
【0060】
一方で、第2のヒンジ5は、表示部3を倒す時、第2および第3の角度α2,α3の間では、一定のブレーキトルクを作用する。そして、第2のヒンジ5は、第2の角度α2に対して若干手前となる上記オフセット角度から、第1および第2の摩擦部51,52の接触が解かれ始め、ブレーキトルクが徐々に低下し、第2の角度α2でブレーキトルクがゼロになる。つまり第2のヒンジ5は、第1のヒンジ4が上記引き込み動作を開始する前に、先立ってブレーキトルクが抜けるようになっている。このため、第1のヒンジ4の引き込み動作がスムーズに行われる。
【0061】
このような構成の電子機器1によれば、一方に皿ばね等を含むブレーキ機能を内蔵したヒンジ4を採用するとともに、他方にブレーキ機能の内蔵を省略したヒンジを採用することができるので、部品点数の削減を図ることができる。すなわち、ブレーキ機能を内蔵しないヒンジに対して、ヒンジの回転体に設けられた第1の摩擦部51と、この第1の摩擦部51に接触し、ヒンジにブレーキトルクを作用させる第2の摩擦部52とを設けることで、表示部3のガタつき防止などのために必要なトルクを確保することができる。このため、皿ばね等を含み部品点数が多くて高価なブレーキ機能内蔵のヒンジに代えて、簡単な構造を有するヒンジを採用することができるので、部品点数を削減することができる。このような電子機器1は、コスト面でも非常に有利になる。
【0062】
第1および第2の角度α1,α2の間で第1および第2の摩擦部51,52が接触せずにトルクが発生しないと、表示部3を起す動作中や倒す動作中に、不要なトルクが作用しないので、表示部3の回動操作をスムーズに行うことができる。つまり、本実施形態では、必要とされている範囲でトルクが作用し、必要ない範囲でトルクが抜けるようになっているので、操作性が非常に高い。
【0063】
第2の摩擦部52をヒンジ内部に組み込む場合、第2の摩擦部52を支持する構造が必要になり、ヒンジが大型化する。一方で、本実施形態のように第2の摩擦部52が筐体7に取り付けられていると、第2の摩擦部52を支持する構造を省略可能になり、ヒンジを小型化することができる。このため、図6に示すように、第2のヒンジ5の側方に例えばバッテリー61を収容するスペースを大きく確保できるなど、高密度実装を行うことができる。
【0064】
表示部3を倒す時、第1のヒンジ4が表示部3を引き込む動作を開始する前に、第2の摩擦部52が第1の摩擦部51から外れてトルクが抜けると、第1のヒンジ4の引き込み動作時に第2のヒンジ5のトルクが邪魔にならず、引き込み動作がスムーズになる。すなわち、表示部3が閉まりやすくなり、ユーザーにとっての操作性も向上する。
【0065】
第1のヒンジ4が、第2および第3の角度α2,α3の間で第1のブレーキトルクを作用させ、第1および第2の角度α1,α2の間で第1のブレーキトルクよりも小さな第2のブレーキトルクを作用させると、上記引き込み動作がよりスムーズになる。
【0066】
第2の摩擦部52がヒンジの回転体の周面に沿う円弧状をしていると、簡単な構成で第2および第3の角度α2,α3の間だけ第1および第2の摩擦部51,52が互いに接触する構造を実現することができる。第1の摩擦部51がヒンジの回転体に取り付けられた摩擦増加部材であると、より簡単な構成で本願発明の機能を実現することができる。
【0067】
次に、上記実施形態に係るいくつかの変形例について説明する。
図12に示すように、第1の摩擦部51は、「回転体」に一体に設けられた突起でもよい。第1の摩擦部51は、例えばヒンジ板金42の一部によって形成されている。
【0068】
図13に示すように、第2の摩擦部52は、第1の摩擦部51を付勢する板ばねでもよい。この場合、第1の摩擦部51の一例は、例えば「回転体」に設けられた摩擦増加部材である。第1の摩擦部51は、第2および第3の角度α2,α3の間で第2の摩擦部52に接触するように「回転体」の周面に沿う円弧状に形成されている。
【0069】
図14に示すように、第2の摩擦部52は、第1の摩擦部51に向けて突出した凸部でもよい。この場合、第1の摩擦部51の一例は、第2および第3の角度α2,α3の間で第2の摩擦部52に接触するように「回転体」の周面に沿う円弧状に形成されている。
【0070】
図15に示すように、第2の摩擦部52は、ヒンジ機構の一部として設けられてもよい。つまり、第2の摩擦部52は、ヒンジアッシーの構成部品として設けられてもよい。
【0071】
図16に示すように、第2のヒンジ5は、第2の角度α2よりも少し大きな角度から、第1および第2の摩擦部51,52が接触し、トルクが作用するようにしてもよい。具体的には、例えば図7に示す構成において、第1の摩擦部51を反時計方向に少しずらして配置する。このような構成によれば次の効果が得られる。
【0072】
表示部3を倒そうとユーザーが表示部3に手をかけると、表示部3の筐体17がねじれる場合がある。このとき、第1のヒンジ4側が先行するように撓むと、第1のヒンジ4に対して第2のヒンジ5が遅れ、第1のヒンジ4が引き込み動作を開始するときになっても第2のヒンジ5にトルクが残っている可能性がある。
【0073】
一方で、図16に示すように、表示部3が倒されるとき、第2の角度α2に達するよりもある程度手前で第1および第2の摩擦部51,52が互いに離れ、トルクが抜けるようにすると、筐体17がねじれたときでも第1のヒンジ4が引き込み動作を開始するときに第2のヒンジ5のトルクが抜けている。これにより引き込み動作がよりスムーズになる。
【0074】
以上、本発明の一つの実施形態に係る電子機器1について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。この発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
【符号の説明】
【0075】
1…電子機器、2…本体部、3…表示部、4…第1のヒンジ、5…第2のヒンジ、7…第1の筐体、α1…第1の角度、α2…第2の角度、α3…第3の角度、33…ブレーキ機構(引込部)、42…ヒンジ板金(回転体)、51…第1の摩擦部、52…第2の摩擦部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒンジを備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ノートPCのような電子機器は、表示部を本体部に回動可能に連結する一対のヒンジを備えている。これらヒンジは、任意の開き角度で表示部を保持するため、ブレーキ機能を有する。つまりヒンジには、皿ばね等を含むブレーキ部が設けられており、一定のトルク(ブレーキトルク)が常に作用するようになっている。
【0003】
特許文献1は、第1および第2のヒンジを有した電子機器を開示している。第1のヒンジは、トルクが常に一様である。第2のヒンジは、一定方向のみにトルクを作用させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−66571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、皿ばね等を含むブレーキ機能を備えたヒンジは、部品点数が多く、高価になる。そこで、左右に設けられる一対のヒンジのうち、一方にブレーキ機能を有するヒンジを採用するとともに、他方にブレーキ機能を省略したヒンジを採用し、これにより部品点数を削減することが考えられる。
【0006】
しかしながら、片方にブレーキ機能を有しないヒンジを採用すると、表示部を起こした時に、ブレーキ機能を有しない側の表示部端部が不安定になる場合もある。そのため、ブレーキ機能を備えたヒンジを単純に減らすことは難しい。
【0007】
本発明の目的は、部品点数の削減を図ることができる電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一つの形態に係る電子機器は、本体部と、表示画面を有する表示部と、ブレーキ機能を備える第1のヒンジ、および摩擦部が設けられた第2のヒンジを有して前記表示部と前記本体部とを連結し、前記表示部の表示画面が前記本体部に覆われる第1の角度と前記表示部の表示画面が露出する第2の角度とに亘って回動する連結部と、前記連結部が前記第2の角度に回動したときに、前記摩擦部が当接されることで前記連結部にトルクを作用させる当接部とを具備した。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、部品点数の削減が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一つの実施形態に係る電子機器の斜視図。
【図2】図1中に示された電子機器の平面図。
【図3】図1中に示された電子機器の側面図。
【図4】図2中に示された電子機器のF4−F4線に沿う断面図。
【図5】図4中に示されたブレーキ機構を分解して示す斜視図。
【図6】図2中に示された電子機器のF6−F6線に沿う断面図。
【図7】図6中に示された電子機器のF7−F7線に沿う断面図。
【図8】図7中に示された第1の摩擦部の動きを模式的に示す側面図。
【図9】図1中に示された電子機器の断面図。
【図10】図1中に示された電子機器の断面図。
【図11】図1中に示された電子機器のトルク曲線を示す図。
【図12】図1中に示された電子機器の第1の変形例の断面図。
【図13】図1中に示された電子機器の第2の変形例の断面図。
【図14】図1中に示された電子機器の第3の変形例の断面図。
【図15】図1中に示された電子機器の第4の変形例の断面図。
【図16】図1中に示された電子機器の第5の変形例のトルク曲線を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施の形態を、ノートPCに適用した図面に基づいて説明する。
図1乃至図11は、本発明の一つの実施形態に係る電子機器1を開示している。電子機器1は、例えばノートPCである。なお本発明が適用可能な電子機器は、上記に限定されるものではない。本発明は、例えばPDA(Personal digital Assistant)やゲーム機などを含む種々の電子機器に広く適用可能である。
【0012】
図1乃至図3に示すように、電子機器1は、本体部2と、表示部3と、第1および第2のヒンジ4,5とを備えている。本体部2は、メイン回路基板を搭載した電子機器本体である。本体部2は、第1の筐体7を有する。第1の筐体7は、本発明でいう「筐体」の一例である。第1の筐体7は、上壁8、下壁9、および周壁10を有し、扁平な箱状に形成されている。
【0013】
下壁9は、電子機器1を机上に置いた時に、その机上面に向かい合う。下壁9は、机上面に対して略平行になる。上壁8は、下壁9との間に空間を空けて、下壁9と略平行(すなわち略水平)に広がる。上壁8には、キーボード11が設けられている。周壁10は、下壁9に対して起立し、下壁9の周縁部と上壁8の周縁部との間を繋いでいる。
【0014】
図7に示すように、第1の筐体7は、ベース部材12(筐体ベース)と、カバー部材13(筐体カバー)とを有する。ベース部材12は、下壁9と、周壁10の一部とを含む。カバー部材13は、上壁8と、周壁10の一部とを含む。カバー部材13がベース部材12に組み合わされることで、第1の筐体7が形成されている。
【0015】
図1に示すように、本体部2は、第1の端部である後端部14と、第2の端部である前端部15とを有している。後端部14には、例えば第1および第2のヒンジ4,5により、表示部3が回動可能(開閉可能)に連結されている。前端部15は、本体部2において後端部14とは反対側となる端部である。なお本明細書では、ユーザーから見て近い方を前、遠い方を後と定義する。また、ユーザーから見た状態を基準に左右を定義する。
【0016】
図1に示すように、表示部3は、第2の筐体17と、この第2の筐体17に収容された表示装置18とを備えている。第2の筐体17は、前壁19、背壁20、および周壁21し、扁平な箱状に形成されている。なお本明細書では、表示部3に関しては立て起こされた姿勢を基準にして前後を定義している。第2の筐体17は、第1および第2のヒンジ4,5が取り付けられる一対の突出部22a,22bを有する。
【0017】
前壁19は、表示部3が倒されたとき(閉じられたとき)に本体部2の上壁8に対向する。前壁19は、表示部3が立て起こされたときにユーザーに向かい合う。前壁19は、表示装置18の表示画面18aを外部に露出させる比較的大きな開口部19aを有する。
【0018】
背壁20は、第2の筐体17において前壁19とは反対側に位置する。背壁20は、前壁19との間に空間を空けるとともに、前壁19と略平行に広がる。周壁21は、背壁20に対して起立し、前壁19の周縁部と背壁20の周縁部との間を繋いでいる。
【0019】
図2および図3に示すように、第1および第2のヒンジ4,5は、それぞれ表示部3を、本体部2の後端部14に回動可能に連結している。これにより表示部3は、本体部2を上方から覆うように倒される閉じ位置と、本体部2に対して起こされる開き位置との間で回動可能である。
【0020】
具体的には図3に示すように、表示部3は、当該表示部3が本体部2に重なる第1の角度α1(例えば、開角度0度)、この第1の角度α1から表示部3が起された第2の角度α2(例えば、開角度15度)、および第2の角度α2から表示部3がさらに起された第3の角度α3(例えば、開角度135度)の間に亘り回動する。なお「開角度」とは、電子機器1が置かれた机上面と表示画面18aとの間の角度のことである。第3の角度α3は、例えば表示部3の開き限界角度(それ以上回らない角度)である。なお、第2および第3の角度α2,α3は、上記具体例に限定されるものではなく、それぞれ任意に設定可能である。
【0021】
第2の角度α2は、例えばユーザーが電子機器1の使用を意図しているか否かを判定する境界値である。つまり、表示部3が第2の角度α2よりも倒された状態(すなわち第1および第2の角度α1,α2の間)は、ユーザーが電子機器1を使用していない不使用範囲であり、表示部3を起す動作中または倒す動作中であると見做す。この不使用範囲では、第1および第2のヒンジ4,5は、表示部3を強固に保持する必要が無く、むしろ表示部3の回動を容易にするためにブレーキトルクが小さいことが望まれる。
【0022】
一方で、第2の角度α2よりも表示部3が起こされた状態(すなわち第2および第3の角度α2,α3の間)は、ユーザーが電子機器1を使用する使用範囲であると見做す。この使用範囲では、第1および第2のヒンジ4,5は、表示部3がガタつかないように、表示部3を強固に保持することが望ましい。
【0023】
換言すれば、電子機器1は、第1および第2のヒンジ4,5を有して表示部3と本体部2とを連結し、表示部3の表示画面18aが本体部2に覆われる第1の角度α1と表示部3の表示画面18aが露出する第2の角度α2とに亘って回動する連結部6を有している。
【0024】
また、詳しくは後述するが、第1のヒンジ4は、第2および第3の角度α2,α3の間で、一定のブレーキトルク(第1のブレーキトルク)を作用させるとともに、第1および第2の角度α1,α2の間で、第1のブレーキトルクよりも小さな第2のブレーキトルクを作用させる。換言すれば、第1のヒンジ4が上記第1および第2のブレーキトルクを切り替える境界を第2の角度α2と定義することができる。
【0025】
また第1のヒンジ4の一例は、表示部3を倒す時に、第1および第2の角度α1,α2の間で表示部3を本体部2に向かって引き込む引き込み動作を行う。この引き込み動作が開始される角度を、第2の角度α2と定義することもできる。
【0026】
次に、第1のヒンジ4,5について詳しく説明する。
第1のヒンジ4は、ブレーキ機能を内蔵したヒンジである。図2に示すように、第1のヒンジ4は、例えば電子機器1の左端部に設けられている。図4に示すように、第1のヒンジ4は、シャフト31、ヒンジ板金32、およびブレーキ機構33を有する。
【0027】
シャフト31は、水平に延びている。シャフト31は、第1および第2の筐体7,17に設けられた貫通孔7a,17aに挿通され、第1の筐体7内から第2の筐体17内まで延びている。シャフト31は、第1の筐体7内に位置する第1の部分34と、第2の筐体17内に位置する第2の部分35とを有する。
【0028】
シャフト31の第1の部分34は、基部34aと、取付部34bとを有する。取付部34bは、その周面の一部に平坦部が設けられている(図7のシャフト41を参考)。ヒンジ板金32およびブレーキ機構33は、取付部34bに挿通されている。基部34aと取付部34bとの間には、段差部34cが形成されている。ヒンジ板金32は、取付部34bに取り付けられ、段差部34cに隣接している。ヒンジ板金32は、段差部34cによって軸方向の移動が規制され、第2の部分35に向いてシャフト31から抜けないようになっている。ヒンジ板金32は、ブレーキ機構33に対向し、一方からブレーキ機構33を支持している。
【0029】
図4および図5に示すように、ブレーキ機構33は、第1のブレーキ部材36、第2のブレーキ部材37、皿ばね38、およびワッシャ39を有する。第1のブレーキ部材36は、ヒンジ固定部であり、第1の筐体7に固定されている。第1のブレーキ部材36が第1の筐体7に固定されることで、第1のヒンジ4の全体が支持されている。第1のブレーキ部材36は、シャフト31に固定されておらず、シャフト31の動きに伴って動かない。シャフト31は、第1のブレーキ部材36のなかで回動自在になっている。
【0030】
第2のブレーキ部材37は、第1のブレーキ部材36に対向している。第2のブレーキ部材37は、シャフト31に固定されており、シャフト31の回動に伴って回動する。皿ばね38は、第2のブレーキ部材37に対して第1のブレーキ部材36とは反対側に位置する。皿ばね38は、ワッシャ39に支持されている。ワッシャ39は、かしめられたシャフト31の先端部31aに支持され、シャフト31から抜けないようになっている。
【0031】
皿ばね38は、第2のブレーキ部材37とワッシャ39との間で圧縮され、第2のブレーキ部材37を第1のブレーキ部材36に向いて付勢している。これにより、第1および第2のブレーキ部材36,37の間で摩擦力が生じる。この摩擦力によって、第1のヒンジ4は、トルク(ブレーキトルク)を作用させる。
【0032】
図5に示すように、第1のブレーキ部材36は、第1の部分36aと、第2の部分36bとを有する。第2の部分36bは、第1の部分36aに対して第1のブレーキ部材36の周方向に離れて位置するとともに、第1の部分36aに対して第2のブレーキ部材37に向いて盛り上がっている。第1および第2の部分36a,36bは、それぞれ平坦状をしている。第1および第2の部分36a,36bの間には、第1および第2の部分36a,36bを滑らかに繋げる傾斜部36cが設けられている。第1のブレーキ部材36は、軸方向に突出した突出部(第2の部分36b)を有したカムである。
【0033】
第2のブレーキ部材37は、第1のブレーキ部材36の凹凸に係合する凹凸を有する。第2のブレーキ部材37は、第3の部分37aと、第42の部分37bとを有する。第3の部分37aは、第4の部分37bに対して第2のブレーキ部材37の周方向に離れて位置するとともに、第4の部分37bに対して第1のブレーキ部材36に向いて盛り上がっている。第3および第4の部分37a,37bは、それぞれ平坦状をしている。第3および第4の部分37a,37bの間には、第3および第4の部分37a,37bを滑らかに繋げる傾斜部37cが設けられている。
【0034】
第1の角度α1では、第3の部分37aが第1の部分36aに対向し、第4の部分37bが第2の部分36bに対向する。このとき、皿ばね38が最も伸びた状態になり、ブレーキトルクが最小になる。この状態からシャフト31の回動に伴い第2のブレーキ部材37が回動すると、第3の部分37aの端部が傾斜部36cを登る。これにより、第2のブレーキ部材37が第1のブレーキ部材36から軸方向に離れるように移動し、皿ばね38が圧縮される。そのため、この第2のブレーキ部材37の回動に伴いブレーキトルクが増していく(図11参照)。表示部3の回動が前記第2の角度α2に達する時、第3の部分37aは傾斜部36cを登りきり、第2の部分36bに乗り上げる。第2および第3の角度α2,α3の間では、第3の部分37aは、平坦な第2の部分36bの表面上を移動することになり、この間は一定のブレーキトルク(第1のブレーキトルク)が作用する。
【0035】
一方で、表示部3を倒す時、第2の角度α2で、第3の部分37aの端部が第2の部分36bから傾斜部36cに戻ると、皿ばね38の付勢力により第3の部分37aが傾斜部36cに向けて押される。傾斜部36cに押さえ付けられた第3の部分37aは、傾斜部36cの傾斜に沿って第1の部分36aに向けて移動しようとする。この力により、第1および第2の角度α1,α2の間では、第2のブレーキ部材37を回転させる強制的なトルク、つまり表示部3を本体部2に向けて引き込む引き込み力(引き込み機能)が作用する。ブレーキ機構33は、本発明でいう「引込部」の一例である。
【0036】
一方で、図4に示すように、シャフト31の第2の部分35には、ブラケット40が固定されている。このブラケット40は、第2の筐体17内に延び、第2の筐体17に固定されている。つまり、ブラケット40は、第2の筐体17を支持している。
【0037】
次に、第2のヒンジ5について詳しく説明する。
第2のヒンジ5は、ブレーキ機能を内蔵しないヒンジである。図2に示すように、第2のヒンジ5は、例えば電子機器1の右端部に設けられている。なお、第1および第2のヒンジ4,5は、左右反対に設けられてもよい。図6に示すように、第2のヒンジ5は、シャフト41、ヒンジ板金42、固定部43、およびワッシャ44を有する。
【0038】
シャフト41は、水平に延びている。シャフト41は、第1および第2の筐体7,17に設けられた貫通孔7b,17bに挿通され、第1の筐体7内から第2の筐体17内まで延びている。シャフト41は、第1の筐体7内に位置する第1の部分45と、第2の筐体17内に位置する第2の部分46を有する。
【0039】
シャフト41の第1の部分45は、基部45aと、取付部45bとを有する。取付部45bは、その周面の一部に平坦部が設けられている(図7参照)。ヒンジ板金42、固定部43、およびワッシャ44は、取付部45bに挿通されている。基部45aと取付部45bとの間には、段差部45cが形成されている。ヒンジ板金42は、取付部45bに取り付けられ、段差部45cに隣接している。ヒンジ板金42は、段差部45cによって軸方向の移動が規制され、第2の部分46に向けてシャフト41から抜けないようになっている。ヒンジ板金42は、固定部43に対向し、一方から固定部43を支持している。
【0040】
固定部43は、第1の筐体7に固定されている。固定部43が第1の筐体7に固定されることで、第2のヒンジ5の全体が支持されている。固定部43は、シャフト41に固定されておらず、シャフト41の動きに伴って動かない。シャフト41は固定部43のなかで回動自在になっている。
【0041】
ワッシャ44は、固定部43に対してヒンジ板金42とは反対側に位置する。ワッシャ44は、かしめられたシャフト41の先端部41aに支持され、シャフト41から抜けないようになっている。
【0042】
図6に示すように、ヒンジ板金42およびワッシャ44は、シャフト41に固定され、シャフト41の回動に伴って回動する。シャフト41、ヒンジ板金42、およびワッシャ44は、それぞれ本発明でいう「回転体」の一例である。シャフト41、ヒンジ板金42、およびワッシャ44は、上記第1の角度α1、第2の角度α2、および第3の角度α3に亘り回動する。ヒンジ板金42は、金属製であり、例えば円形状をしている(図7参照)。
【0043】
一方で、図6に示すように、シャフト41の第2の部分46には、ブラケット47が固定されている。このブラケット47は、第2の筐体17内に延び、第2の筐体17に固定されている。つまり、ブラケット47は、第2の筐体17を支持している。
【0044】
図7に示すように、第2のヒンジ5には、第1および第2の摩擦部51,52(外部ブレーキ構造)が設けられている。なお、第1の摩擦部51は、本発明でいう「摩擦部」の一例である。第2の摩擦部52は、本発明でいう「当接部」の一例であり、連結部6が第2の角度α2に回動したときに、第1の摩擦部51が当接されることで連結部6にトルクを作用させる。
【0045】
詳しく述べると、第1の摩擦部51は、例えばヒンジ板金42(回転体)の周面42aに設けられている。ヒンジ板金42は、その周面42aの一部に凹部42bを有する。第1の摩擦部51の一例は、ヒンジ板金42の凹部42bに取り付けられた摩擦増加部材である。第1の摩擦部51は、ヒンジ板金42の周面42aよりも外側に飛び出しており、ヒンジ板金42に凸部を形成している。
【0046】
第1の摩擦部51は、例えばフェルトやクッション(スポンジゴム)のような弾性変形物である。第1の摩擦部51は、金属よりも摩擦抵抗が大きな材料で形成されている。なお第1の摩擦部51は、ヒンジ板金42に設けられたものに限定されず、上記「回転体」に設けられていればよい。つまり、第1の摩擦部51は、シャフト41やワッシャ44に設けられてもよい。
【0047】
第1の摩擦部51は、ヒンジ板金42の回動に伴って(つまり表示部3の回動に伴って)位置が移動する。具体的には、図8に示すように、第1の摩擦部51は、第1の角度α1に対応した第1の位置P1から、第2の角度α2に対応した第2の位置P2、第3の角度α3に対応した第3の位置P3に亘って移動する。
【0048】
図7に示すように、第2の摩擦部52は、例えば第1の筐体7に取り付けられている。第2の摩擦部52は、例えばベース部材12に取り付けられている。なお第2の摩擦部52は、カバー部材13や第1の筐体7内のその他の部位に取り付けられてもよい。
【0049】
第2の摩擦部52の一例は、摩擦増加部材である。第2の摩擦部52は、例えばフェルトやクッション(スポンジゴム)のような弾性変形物である。第2の摩擦部52は、金属よりも摩擦抵抗が大きな材料で形成されている。第2の摩擦部52は、例えば細長い形状をしている。
【0050】
第1の筐体7は、ヒンジ板金42の周面42aに沿う円弧状の台座59を有している。第2の摩擦部52は、例えば台座59に取り付けられ、台座59の形状に沿うことで、ヒンジ板金42の周面42aに沿った(つまり、第1の摩擦部51の移動経路に沿った)円弧状に形成されている。なお第2の摩擦部52は、それ自体が円弧状に形成されていてもよい。第2の摩擦部52は、ヒンジ板金42の周面42aに接触するものであってもよいし、接触しないものであってもよい。
【0051】
図8および図9に示すように、第2の摩擦部52は、第1および第2の角度α1,α2の間(第1および第2の位置P1,P2の間)で第1の摩擦部51に対向する領域には設けられていない。第2の摩擦部52は、第1および第2の角度α1,α2の間で、第1の摩擦部51を外れたヒンジ板金42の周面42aに対向する。このため、第2の摩擦部52は、第1および第2の角度α1,α2の間では、第1の摩擦部51に接触しない。
【0052】
つまり、第1および第2の角度α1,α2の間では、第2のヒンジ5にトルクが発生しない。なお、ヒンジ板金42の金属の周面42aが第2の摩擦部52に接触するとしても、金属製のヒンジ板金42と第2の摩擦部52との摩擦抵抗は非常に小さく、実質的なトルクはゼロとなる。
【0053】
一方で、図8および図10に示すように、第2の摩擦部52は、第2の位置P2に達した第1の摩擦部51が接するように設けられている。さらに第2の摩擦部52は、第2および第3の角度α2,α3の間(第2および第3の位置P2,P3の間)に亘り第1の摩擦部51に対向する領域に設けられている。
【0054】
このため、第2の摩擦部52は、第2および第3の角度α2,α3の間で第1の摩擦部51に対向して接触する。第2の摩擦部52が第1の摩擦部51に接触すると、例えばフェルトとフェルトとの接圧により摩擦力がアップし、第1および第2の摩擦部51,52の間で接触に基づく摩擦力が生じる。これにより、第2のヒンジ5にトルク(ブレーキトルク)が作用する。
【0055】
つまり、第2のヒンジ5では、ヒンジ外部からブレーキ機能が追加されている。図11に示すように、第2のヒンジ5のブレーキトルクは、第1のヒンジ4の第1のブレーキトルクと略同じ大きさである。つまり、左右のヒンジ4,5に略同じ大きさのトルクが作用する。
【0056】
一方で、表示部3を倒す時、第1および第2の摩擦部51,52の接触は、第2の角度α2で無くなる。つまり、第2の摩擦部52は、第1のヒンジ4の引込部が表示部3を引き込む動作を開始する前に、第1の摩擦部51から外れてトルク(摩擦力)が抜ける。
【0057】
次に、電子機器1の機能について説明する。
図11に示すように、第1のヒンジ4は、第1の角度α1で最小のブレーキトルクを作用させる。第1の角度α1から表示部3を起こす時、第2のブレーキ部材37の第3の部分37aが第1のブレーキ部材36の傾斜部36cに乗り上げることで、第2の角度α2までブレーキトルクが徐々に増加する。第2および第3の角度α2,α3の間では、第2のブレーキ部材37の第3の部分37aが第1のブレーキ部材36の第2の部分36bの平坦な表面上を移動するため、一定のブレーキトルク(第1のブレーキトルク)が作用する。
【0058】
一方で、第2のヒンジ5は、第1および第2の角度α1,α2の間では、第1および第2の摩擦部51,52が接触しないので、ブレーキトルクがゼロである。第2の角度α2において、第1および第2の摩擦部51,52の接触が開始され、ブレーキトルクが徐々に増加する。そして、第2の角度α2に対してオフセットした所定角度(オフセット角度、例えば開角度17度)において、ブレーキトルクが最大となる。そして、残りの第2および第3の角度α2,α3の間は、この最大のブレーキトルクで一定となる。このとき、第1および第2のヒンジ4,5のブレーキトルクは、互いに略同じ大きさになる。
【0059】
表示部3を倒す時、第1のヒンジ4は、第2および第3の角度α2,α3の間では、一定の第1のブレーキトルクが作用する。そして、第2の角度α2に達すると、第2のブレーキ部材37の第3の部分37aが第1のブレーキ部材36の傾斜部36cに入り、ブレーキトルクが徐々に低下する。つまり、第1および第2の角度α1,α2の間では、上記第1のブレーキトルクよりも小さな第2のブレーキトルクが作用するとともに、上記引き込み動作により表示部3が本体部2に向けて引き込まれる。
【0060】
一方で、第2のヒンジ5は、表示部3を倒す時、第2および第3の角度α2,α3の間では、一定のブレーキトルクを作用する。そして、第2のヒンジ5は、第2の角度α2に対して若干手前となる上記オフセット角度から、第1および第2の摩擦部51,52の接触が解かれ始め、ブレーキトルクが徐々に低下し、第2の角度α2でブレーキトルクがゼロになる。つまり第2のヒンジ5は、第1のヒンジ4が上記引き込み動作を開始する前に、先立ってブレーキトルクが抜けるようになっている。このため、第1のヒンジ4の引き込み動作がスムーズに行われる。
【0061】
このような構成の電子機器1によれば、一方に皿ばね等を含むブレーキ機能を内蔵したヒンジ4を採用するとともに、他方にブレーキ機能の内蔵を省略したヒンジを採用することができるので、部品点数の削減を図ることができる。すなわち、ブレーキ機能を内蔵しないヒンジに対して、ヒンジの回転体に設けられた第1の摩擦部51と、この第1の摩擦部51に接触し、ヒンジにブレーキトルクを作用させる第2の摩擦部52とを設けることで、表示部3のガタつき防止などのために必要なトルクを確保することができる。このため、皿ばね等を含み部品点数が多くて高価なブレーキ機能内蔵のヒンジに代えて、簡単な構造を有するヒンジを採用することができるので、部品点数を削減することができる。このような電子機器1は、コスト面でも非常に有利になる。
【0062】
第1および第2の角度α1,α2の間で第1および第2の摩擦部51,52が接触せずにトルクが発生しないと、表示部3を起す動作中や倒す動作中に、不要なトルクが作用しないので、表示部3の回動操作をスムーズに行うことができる。つまり、本実施形態では、必要とされている範囲でトルクが作用し、必要ない範囲でトルクが抜けるようになっているので、操作性が非常に高い。
【0063】
第2の摩擦部52をヒンジ内部に組み込む場合、第2の摩擦部52を支持する構造が必要になり、ヒンジが大型化する。一方で、本実施形態のように第2の摩擦部52が筐体7に取り付けられていると、第2の摩擦部52を支持する構造を省略可能になり、ヒンジを小型化することができる。このため、図6に示すように、第2のヒンジ5の側方に例えばバッテリー61を収容するスペースを大きく確保できるなど、高密度実装を行うことができる。
【0064】
表示部3を倒す時、第1のヒンジ4が表示部3を引き込む動作を開始する前に、第2の摩擦部52が第1の摩擦部51から外れてトルクが抜けると、第1のヒンジ4の引き込み動作時に第2のヒンジ5のトルクが邪魔にならず、引き込み動作がスムーズになる。すなわち、表示部3が閉まりやすくなり、ユーザーにとっての操作性も向上する。
【0065】
第1のヒンジ4が、第2および第3の角度α2,α3の間で第1のブレーキトルクを作用させ、第1および第2の角度α1,α2の間で第1のブレーキトルクよりも小さな第2のブレーキトルクを作用させると、上記引き込み動作がよりスムーズになる。
【0066】
第2の摩擦部52がヒンジの回転体の周面に沿う円弧状をしていると、簡単な構成で第2および第3の角度α2,α3の間だけ第1および第2の摩擦部51,52が互いに接触する構造を実現することができる。第1の摩擦部51がヒンジの回転体に取り付けられた摩擦増加部材であると、より簡単な構成で本願発明の機能を実現することができる。
【0067】
次に、上記実施形態に係るいくつかの変形例について説明する。
図12に示すように、第1の摩擦部51は、「回転体」に一体に設けられた突起でもよい。第1の摩擦部51は、例えばヒンジ板金42の一部によって形成されている。
【0068】
図13に示すように、第2の摩擦部52は、第1の摩擦部51を付勢する板ばねでもよい。この場合、第1の摩擦部51の一例は、例えば「回転体」に設けられた摩擦増加部材である。第1の摩擦部51は、第2および第3の角度α2,α3の間で第2の摩擦部52に接触するように「回転体」の周面に沿う円弧状に形成されている。
【0069】
図14に示すように、第2の摩擦部52は、第1の摩擦部51に向けて突出した凸部でもよい。この場合、第1の摩擦部51の一例は、第2および第3の角度α2,α3の間で第2の摩擦部52に接触するように「回転体」の周面に沿う円弧状に形成されている。
【0070】
図15に示すように、第2の摩擦部52は、ヒンジ機構の一部として設けられてもよい。つまり、第2の摩擦部52は、ヒンジアッシーの構成部品として設けられてもよい。
【0071】
図16に示すように、第2のヒンジ5は、第2の角度α2よりも少し大きな角度から、第1および第2の摩擦部51,52が接触し、トルクが作用するようにしてもよい。具体的には、例えば図7に示す構成において、第1の摩擦部51を反時計方向に少しずらして配置する。このような構成によれば次の効果が得られる。
【0072】
表示部3を倒そうとユーザーが表示部3に手をかけると、表示部3の筐体17がねじれる場合がある。このとき、第1のヒンジ4側が先行するように撓むと、第1のヒンジ4に対して第2のヒンジ5が遅れ、第1のヒンジ4が引き込み動作を開始するときになっても第2のヒンジ5にトルクが残っている可能性がある。
【0073】
一方で、図16に示すように、表示部3が倒されるとき、第2の角度α2に達するよりもある程度手前で第1および第2の摩擦部51,52が互いに離れ、トルクが抜けるようにすると、筐体17がねじれたときでも第1のヒンジ4が引き込み動作を開始するときに第2のヒンジ5のトルクが抜けている。これにより引き込み動作がよりスムーズになる。
【0074】
以上、本発明の一つの実施形態に係る電子機器1について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。この発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
【符号の説明】
【0075】
1…電子機器、2…本体部、3…表示部、4…第1のヒンジ、5…第2のヒンジ、7…第1の筐体、α1…第1の角度、α2…第2の角度、α3…第3の角度、33…ブレーキ機構(引込部)、42…ヒンジ板金(回転体)、51…第1の摩擦部、52…第2の摩擦部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、
表示部と、
前記表示部を前記本体部に回動可能に連結し、ブレーキ機能を有した第1のヒンジと、
前記表示部を前記本体部に回動可能に連結し、前記表示部が前記本体部に重なる第1の角度、前記第1の角度から前記表示部が起された第2の角度、および前記第2の角度から前記表示部がさらに起された第3の角度に亘り回動するとともに、第1の摩擦部が設けられた回転体を有した第2のヒンジと、
前記第1の角度と前記第2の角度との間で、前記第1の摩擦部を外れた前記回転体の周面に対向するとともに、前記第2の角度と前記第3の角度との間で、前記第1の摩擦部に対向し、前記第1の摩擦部との間に接触に基づく摩擦力が作用する第2の摩擦部と、
を具備したことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1の記載において、
前記本体部は、筐体を有し、
前記第2の摩擦部は、前記筐体に取り付けられたことを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項1または請求項2の記載において、
前記第1のヒンジは、前記表示部を倒す時に、前記第1の角度と前記第2の角度との間で前記表示部を前記本体部に向けて引き込む引込部を有し、
前記第2の摩擦部は、前記引込部が前記表示部を引き込む動作を開始する前に、前記第1の摩擦部から外れて前記摩擦力が抜けることを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項1または請求項3の記載において、
前記第1のヒンジは、前記第2の角度と前記第3の角度との間で第1のブレーキトルクを作用させ、前記第1の角度と前記第2の角度との間で前記第1のブレーキトルクよりも小さな第2のブレーキトルクを作用させることを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項1または請求項4の記載において、
前記第2の摩擦部は、前記回転体の周面に沿う円弧状をしていることを特徴とする電子機器。
【請求項6】
請求項1または請求項5の記載において、
前記第1の摩擦部は、前記回転体に取り付けられた摩擦増加部材であることを特徴とする電子機器。
【請求項7】
請求項1または請求項5の記載において、
前記第1の摩擦部は、前記回転体の一部に設けられた突起であることを特徴とする電子機器。
【請求項8】
請求項1または請求項4の記載において、
前記第2の摩擦部は、前記第1の摩擦部を付勢する板ばねであることを特徴とする電子機器。
【請求項9】
本体部と、
表示画面を有する表示部と、
ブレーキ機能を備える第1のヒンジと、摩擦部が設けられた第2のヒンジとを有して前記表示部と前記本体部とを連結し、前記表示部の表示画面が前記本体部に覆われる第1の角度と前記表示部の表示画面が露出する第2の角度とに亘って回動する連結部と、
前記連結部が前記第2の角度に回動したときに、前記摩擦部が当接されることで前記連結部にトルクを作用させる当接部と、
を具備したことを特徴とする電子機器。
【請求項1】
本体部と、
表示部と、
前記表示部を前記本体部に回動可能に連結し、ブレーキ機能を有した第1のヒンジと、
前記表示部を前記本体部に回動可能に連結し、前記表示部が前記本体部に重なる第1の角度、前記第1の角度から前記表示部が起された第2の角度、および前記第2の角度から前記表示部がさらに起された第3の角度に亘り回動するとともに、第1の摩擦部が設けられた回転体を有した第2のヒンジと、
前記第1の角度と前記第2の角度との間で、前記第1の摩擦部を外れた前記回転体の周面に対向するとともに、前記第2の角度と前記第3の角度との間で、前記第1の摩擦部に対向し、前記第1の摩擦部との間に接触に基づく摩擦力が作用する第2の摩擦部と、
を具備したことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1の記載において、
前記本体部は、筐体を有し、
前記第2の摩擦部は、前記筐体に取り付けられたことを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項1または請求項2の記載において、
前記第1のヒンジは、前記表示部を倒す時に、前記第1の角度と前記第2の角度との間で前記表示部を前記本体部に向けて引き込む引込部を有し、
前記第2の摩擦部は、前記引込部が前記表示部を引き込む動作を開始する前に、前記第1の摩擦部から外れて前記摩擦力が抜けることを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項1または請求項3の記載において、
前記第1のヒンジは、前記第2の角度と前記第3の角度との間で第1のブレーキトルクを作用させ、前記第1の角度と前記第2の角度との間で前記第1のブレーキトルクよりも小さな第2のブレーキトルクを作用させることを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項1または請求項4の記載において、
前記第2の摩擦部は、前記回転体の周面に沿う円弧状をしていることを特徴とする電子機器。
【請求項6】
請求項1または請求項5の記載において、
前記第1の摩擦部は、前記回転体に取り付けられた摩擦増加部材であることを特徴とする電子機器。
【請求項7】
請求項1または請求項5の記載において、
前記第1の摩擦部は、前記回転体の一部に設けられた突起であることを特徴とする電子機器。
【請求項8】
請求項1または請求項4の記載において、
前記第2の摩擦部は、前記第1の摩擦部を付勢する板ばねであることを特徴とする電子機器。
【請求項9】
本体部と、
表示画面を有する表示部と、
ブレーキ機能を備える第1のヒンジと、摩擦部が設けられた第2のヒンジとを有して前記表示部と前記本体部とを連結し、前記表示部の表示画面が前記本体部に覆われる第1の角度と前記表示部の表示画面が露出する第2の角度とに亘って回動する連結部と、
前記連結部が前記第2の角度に回動したときに、前記摩擦部が当接されることで前記連結部にトルクを作用させる当接部と、
を具備したことを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−96118(P2011−96118A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−251172(P2009−251172)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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