説明

電子機器

【課題】陸上/水中を問わず良好な操作感を得ることができ、水深が増しても誤動作の発生を抑制可能で、操作部材を電子機器上でレイアウトする際の自由度を高めることの可能な技術を提供する。
【解決手段】水中においてスイッチ操作可能な電子機器としての電子カメラ100は、操作者が押圧操作をするための操作部114と、操作部114に作用する力量である操作部力量の大きさを検出する操作部力量検出部300と、電子カメラ100を取り巻く気体または液体が電子カメラ100に作用する圧力を検出する圧力検出部200とを備える。制御部116は、圧力検出部200で検出された圧力に基づいて閾値を決定する。制御部116はまた、操作部力量検出部300で検出された操作部力量と上記閾値との比較結果に基づき、操作者による操作が行われたか否かを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に関し、特に陸上、水中を問わずにスイッチ操作が可能な電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
水中で使用可能な電子機器、例えば水中カメラ等の電子機器は、様々な操作スイッチを備えている。このような操作スイッチは、電子機器の仕様として設定される耐圧水深のもとにおいて、水密性やスイッチとしての機能が維持されるように設計することが望ましい。
【0003】
耐圧水深は、製品の仕様、使用目的、許容される大きさ、価格等に基づいて設定される。水中においては、機器の表面に水圧が作用する。当然、操作スイッチにも水圧が作用する。操作スイッチが押しボタンタイプ(電子機器の外側から内側に向かって操作部材を押し込むタイプ)のものである場合、水圧が作用して操作スイッチに押圧力が生じ、ユーザ操作とは無関係にオン/オフしてしまい、誤動作することがある。
【0004】
誤動作を防ぐためには、操作スイッチに対する押圧力に逆らう方向に作用するバネ部材等を電子機器内部に配設し、多少の水圧では操作スイッチが勝手に動作しないようにすることも可能である。しかし、陸上で操作する際の操作力(操作スイッチを動作させるのに必要な押圧力)と、水中で操作する際の操作力とは異なるものとなり、操作性の低下を招くことがある。つまり、陸上では比較的大きな操作力で操作する必要がある一方、水中、特に水深が深めの場合には、わずかな操作力で操作スイッチが動作してしまうことがある。
【0005】
このような点を改良しうる技術として、特許文献1には以下のような構成を備えるスイッチ機構が開示されている。すなわち、外装部材には第1および第2の押圧操作部材がペアで設けられていて、これらの押圧操作部材に対して外部から押圧力が作用して押し込まれると内部のスイッチが動作する。これだけの構成では、水圧が作用すると第1、第2の押圧操作部材が勝手に動作してしまう。それを防ぐために、第1および第2の押圧操作部材間にはシーソー式に作動するレバー部材が配設され、レバー部材の一端(以下、第1端と称する)に第1の押圧操作部材が配置され、他端(以下、第2端と称する)に第2の押圧操作部材が配置される。
【0006】
レバー部材の第1端が押し下げられると、第1の押圧操作部材がレバー部材によって押されて動作する。このとき、第2端は浮き上がる。レバー部材の両端と第1、第2の押圧操作部材とはそれぞれ係合しており、ユーザがレバー部材を揺動させるのに伴って、浮き上がる方の端部は押圧操作部材を引き上げるように構成されている。つまり、水圧が第1、第2の押圧操作部材の双方に作用して、これら第1、第2の押圧操作部材が下がろうとすると、第1、第2の押圧操作部材は共にレバー部材と係合しているため、両方が同時に下がることができない。このようにして、第1第2の押圧操作部材に水圧が作用して生じる押圧力を、シーソー式に揺動するレバー部材によって相殺することが可能となる。
【0007】
上述したのとは別に、操作部材をレバー式、スライド式の構成として、水圧により生じる力が操作部材の操作方向に直接作用しないようにし、陸上および水中で操作力量が大きく変化しないようにした構成も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−156114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
最近の電子機器、例えば電子カメラは小型化やモニタ表示部の大型化が進み、操作部材の配設に割り当て可能なスペースが減少しつつある。その一方で、操作性を低下させることは望ましいことではなく、操作部材のレイアウトに工夫が必要となる。特許文献1に開示される技術によれば、押圧操作部材に作用する水圧の影響を相殺して、水中でユーザの意図しない動作が行われるのを抑止可能であるが、操作部材をペアで設けるとともにレバー部材も設ける必要がある。また、水圧により作用する力のバランスを保つために一対の操作部材の大きさを揃えたりする必要もあり、操作部材をレイアウトする上の障害となることがある。特許文献1には、単独で配置される押圧操作部材に作用する水圧をキャンセルないしは減じることの可能な別の構成も開示されるが、そのための機構を必要とし、押圧操作部材単体の占める面積よりも大きなレイアウトスペースを必要とする。また、操作部材をレバー式、スライド式の構成とする場合も同様である。
【0010】
本発明は上記の課題に鑑み、なされたもので、陸上/水中を問わずに良好な操作感を得ることができ、水深が増しても誤動作の発生を抑制可能で、操作部材を電子機器上でレイアウトする際の自由度を高めることの可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の代表的な一例を示せば以下の通りである。すなわち、
水中においてスイッチ操作可能な電子機器が、
操作者が押圧操作をするための操作部と、
前記操作部に作用する力量である操作部力量の大きさを検出する操作部力量検出部と、
前記電子機器を取り巻く気体または液体が前記電子機器に作用する圧力を検出する圧力検出部と、
前記圧力検出部で検出された圧力に基づいて閾値を決定する閾値決定部と、
前記操作部力量検出部で検出された前記操作部力量と前記閾値との比較結果に基づき、前記操作者による操作が行われたか否かを判定する操作判定部と
を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、水深が増しても誤動作の発生を抑制可能で、なおかつ操作部材を電子機器上でレイアウトする際の自由度を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】電子カメラの背面側外観を示す斜視図である。
【図2】電子カメラの正面側を、カバー部材を取り外した状態で示す斜視図である。
【図3】電子カメラの内部構成を概略的に示すブロック図である。
【図4】圧力センサに作用する水圧と圧力センサから得られる出力信号との関係を水深と出力信号との関係として示す図である。
【図5】圧力センサで検出された圧力と、操作部で操作が行われたことを判定する際の判定基準との関係の一例を概念的に示す図であり、水深の変化に伴って判定基準が変化する様子を示す図である。
【図6】圧力センサで検出された圧力と、操作部で操作が行われたことを判定する際の判定基準との関係の別例を概念的に示す図であり、圧力センサによる圧力検出結果から、操作部に圧力が作用して生じることが想定される力量である想定力量を求め、その想定力量にバイアス力量を付加した力量に基づいて閾値が設定される例を示す図である。
【図7】圧力センサで検出された圧力と、操作部で操作が行われたことを判定する際の判定基準との関係のさらなる別例を概念的に示す図であり、圧力センサによる圧力検出結果から、操作部に圧力が作用して生じることが想定される力量である想定力量を求め、その想定力量に第1、第2のバイアス力量を付加した力量に基づいて第1、第2の閾値が設定される例を示す図である。
【図8】電子カメラで撮影動作が行われる際の制御手順の一例を説明するフローチャートであり、操作部に作用する力量が第1、第2の閾値と比較された結果に基づいて撮影動作が制御される例を示す図である。
【図9】水中に没した電子カメラで図8に例示される制御手順によって撮影動作が行われる際に、画像表示部上でなされる画像表示の例を説明する図であり、(a)はレリーズ釦が操作される前の表示例を、(b)はレリーズ釦の操作力量が閾値1を超すと判定された直後の画像表示の例を、(c)はレリーズ釦の操作力量が閾値2を超すと判定された直後の画像表示の例を、それぞれ示す図である。
【図10】電子カメラで撮影動作が行われる際の制御手順の別例を説明するフローチャートであり、操作部に作用する力量が一つの閾値と比較された結果に基づいて撮影動作が制御される例を示す図である。
【図11】水中に没した電子カメラで図10に例示される制御手順によって撮影動作が行われる際に、画像表示部上でなされる画像表示の例を説明する図であり、(a)はレリーズ釦が操作される前の表示例を、(b)はレリーズ釦の操作は行われているものの、操作力量が閾値以下であるときの画像表示の例を、(c)はレリーズ釦の操作力量が閾値を超しているとの判定がなされた直後の画像表示の例を、それぞれ示す図である。
【図12】操作部でのユーザ操作の有無を判定する際に、判定のための閾値が段階的に設定される例を概念的に説明する図であり、各段階で二つの閾値が設定される例を示す図である。
【図13】図12に示す例に対応して電子カメラ内に記憶される閾値データテーブルの例を概念的に説明する図である。
【図14】操作部でのユーザ操作の有無を判定する際に、判定のための閾値が段階的に設定される例を概念的に説明する図であり、各ステップで一つの閾値が設定される例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1、図2は、本発明の実施の形態に係る電子カメラ100の外観を概略的に説明する図であり、図1はその背面側を、図2は正面側を示す。図2においては、電子カメラ100の最前面に設けられる外装部材を取り去った状態の図が示されている。図3は、電子カメラ100の内部構成を概略的に説明するブロック図である。電子カメラ100は、静止画像、動画像のいずれか、または両方を撮影可能に構成されていてもよいが、本実施の形態においては静止画像を撮影可能に構成されるものとする。電子カメラ100はまた、それ自体が防水機能を有していて、陸上および水中での使用が可能に構成されるものとする。
【0015】
電子カメラ100は、画像表示部110と、撮影レンズ112と、圧力センサ108とを備える。電子カメラ100はさらに、レリーズ釦102、電源釦104とともに他の操作釦106を備える。操作釦106としては、例えば撮影レンズ112の変倍操作をするための変倍操作釦、動画撮影の開始/停止操作をするための動画撮影釦、撮影モード/画像再生モードの切替操作をするための動作モード釦、メニュー画面の呼び出しやメニュー選択操作をするための釦等がある。以下ではこれらレリーズ釦102、電源釦104、操作釦106を個別に区別する必要のないときには、図3に示すように操作部114と称する。電子カメラ100はさらに、撮像素子130と、画像処理部132と、アンプ136、140と、制御部116と、画像表示部110と、画像表示処理部142と、センサ特性記憶部144とを備える。
【0016】
操作部114は、操作部材、すなわち電子カメラ100のユーザが押圧操作をするための釦部分と、この釦部分に作用する押圧力の大きさに応じて異なるレベルの電気信号が得られるように構成されるセンサ部114sとを備えて構成される。図1、図2では各操作部114の操作部材の外観部分が図示されている。センサ部114sとしては、押圧力によって生じる弾性変形によって抵抗値が変化する導電性エラストマ等を利用可能である。あるいは、押圧力によって弾性変形を生じる部分に歪みゲージが設けられていて、その歪みゲージの抵抗値変化をもとに押圧力を検出可能に構成されるものや、MEMS技術を用いて構成されたピエゾ抵抗式の半導体センサ等を用いることも可能である。以下では、操作部114に作用する力の大きさに応じてセンサ部114sの抵抗値が変化するものとして説明する。
【0017】
なお、操作部114の全てが押圧力を検出可能に構成される必要はなく、操作部114のうちの一部はユーザの操作に応じてオン/オフする、単純なスイッチとして機能するものとなっていてもよい。電子カメラ100が水中に没したときに、これらの操作部114には圧力が作用する。この圧力によって、操作部114のそれぞれには押圧力が作用する。具体的には、操作部114それぞれにおいて、電子カメラ100内部の気圧(大気圧に等しいものとする)と電子カメラ100の外部から作用する圧力との差圧(水圧)が作用する部分の面積(水圧の作用する方向に沿って見たときの投影面積。以下、受圧部面積と称する。)と、水圧との積に相当する力を生じる。
【0018】
上述した受圧部面積についてレリーズ釦102を例に説明する。レリーズ釦102は、電子カメラ100に備えられる操作部の中で比較的大きな面積の操作部材を有する。このレリーズ釦102の部品形状が、いわば茸のような形状を有していて、茸の傘に相当する部分が釦、すなわち操作部材であり、軸に相当する部分が、電子カメラ100の水密構造を構成する筐体に穿設された貫通孔と水密嵌合しており、レリーズ釦102が押圧されると電子カメラ100の内部に設けられるセンサを上記軸に相当する部分が押圧するものとする。この場合、貫通孔の断面積が受圧部面積となり、この受圧部面積と水圧との積から、レリーズ釦102に作用する水圧によって生じる押圧力が決まる。
【0019】
操作部114に押圧力が作用し、センサ部114sで抵抗値変化を生じるのに応じて変化する信号がアンプ140に入力されて増幅され、制御部116に入力される。制御部116は、ASICで構成され、その内部にA/D変換部を備えるCPUであるものとする。センサ特性記憶部144には、センサ部114sおよび圧力センサ108の特性に関する情報であるセンサ特性情報が記憶される。制御部116は、アンプ140を介して入力したセンサ部114sからの信号の大きさと、センサ特性記憶部144から読み出されたセンサ特性情報とから、各操作部114に作用する押圧力の大きさを導出する。これらのセンサ部114sと、アンプ140と、制御部116とによって操作部力量検出部300が構成される。
【0020】
圧力センサ108は、電子カメラ100の周囲を取り巻く気体または液体の圧力(絶対圧)の大きさに応じた信号を得ることが可能に構成される。この圧力センサ108としては、ピエゾ抵抗型半導体圧力センサを用いることが可能である。制御部116は、アンプ136を介して入力した圧力センサ108からの信号の大きさと、センサ特性記憶部144から読み出されたセンサ特性情報とから、圧力センサ108の感圧部に作用する圧力の大きさを導出する。これらの圧力センサ108と、アンプ136と、制御部116とによって圧力検出部200が構成される。ここで、圧力センサ108が検出する圧力(絶対圧)をPa、大気圧をPo、水圧をPwとすると、

Pw=Pa−Po … 式(1)

で表すことができる。この水圧Pwは、水の密度をρ(=1,000 kg/m^3)、重力加速度をg(=9.8m/s^2)、水深をh(m)とすると、

Pw=ρ×g×h … 式(2)

で表すことができる。したがって、圧力センサ108で検出された圧力Paから、

h=(Pa−Po)/(ρ×g) … 式(3)

を用いて水深hを求めることができる。ただし、Pa≧Poとする。
【0021】
図4には、圧力検出部200の出力特性例を、水深hと圧力検出部200の出力電圧との関係として示している。制御部116は、アンプ136を介して圧力センサ108から入力した信号の電圧値をもとに、電子カメラ100を取り巻く気体または液体が電子カメラ100に作用する圧力(絶対圧)を導出することができる。この圧力をもとに、水圧や水深を導出することができる。以下では、電子カメラ100が水中に没しているときを主体に、圧力検出部が水深hを導出するものとして説明をする。
【0022】
撮像素子130は、撮影レンズ112によって形成される被写体像を光電変換して画像信号を生成し、画像処理部132へ出力する。画像処理部132は、撮像素子130から受け取った画像信号に様々な画像処理を施して画像データを生成する。画像表示処理部142は、画像処理部132で生成された画像データをもとに表示用画像データを生成し、画像表示部110に出力する。画像表示部110はカラーTFT液晶表示パネル、当該カラーTFT液晶表示パネルを駆動する液晶ドライバ、バックライト装置等を備え、カラー画像や文字等を表示可能に構成される。画像表示部110は、カラーTFT液晶表示パネルとバックライト装置との組み合わせに代えてカラー有機EL表示パネル等の自発光式のカラー表示パネルを備えていてもよい。画像表示部110には、撮影して得られた画像データに基づく画像の他、圧力センサ108で検出された圧力、そして当該圧力から導出される標高や水深等を文字やバーグラフ、アイコン等によって表示することも可能である。
【0023】
ここで、操作部力量検出部300で検出される操作部力量について説明する。電子カメラ100に水圧が作用しているとき、各操作部114にも水圧が作用し、操作部114のそれぞれが有する受圧部面積に対応した押圧力を生じる。つまり、ユーザが押圧操作をしていないにもかかわらず、各操作部114には水圧による押圧力が働く。操作部114の受圧部面積をAs(当然のことながら、受圧部面積Asは操作部114それぞれの構造等の違いに応じて異なったものとなる)とすると、圧力検出部200で検出された圧力をもとに各操作部114に作用する押圧力を推定することが可能となる。本明細書においてはこれを想定力量と称する。想定力量Faは、水圧Pwと受圧部面積Asとの積に相当するので、

Fa=As×Pw=As×ρ×g×h … 式(4)

で求めることができる。なお、操作部114のそれぞれには、電子カメラ100の水密構造を維持するためのOリング等が配置される場合があり、それらが摩擦力を生じる。その場合、想定力量Faは必ずしも上記の式(4)には従わないが、本明細書では発明の理解の容易化を目的として摩擦力等については無視する。
【0024】
制御部116は、操作部114それぞれに対応して想定力量を導出し、操作部力量検出部300で実際に検出された操作部114それぞれにおける操作部力量(押圧力)との比較結果に基づいて操作部114がユーザにより操作されたか否かを判定する。つまり、操作部力量検出部300で検出された操作部力量が想定力量Faを上回っていれば、それは操作部114をユーザが操作したと判定することが可能となる。
【0025】
図5、図6、および図7には、圧力検出部200で検出された圧力から導出される想定力量Faと、操作部力量検出部300で検出される操作部力量との比較結果に基づいて各操作部114でユーザ操作が行われたか否かを判定する様子が概念的に示されている。図5、図6、図7のいずれにおいても、横軸には水深hが、縦軸には力量Fがとられている。
【0026】
まず、図5を参照して説明すると、圧力検出部200で検出された圧力から導出される想定力量Faは、水深が増すにつれて上昇する。つまり、式(4)で示されるように、圧力検出部200で検出される圧力Pw(水深h)が増すにつれて想定力量Faは増加する。一方、操作部力量検出部300では操作部力量が検出される。操作部114でユーザ操作が行われていない場合、操作部力量検出部300で検出される操作部力量は、現状の水深hoに対応する想定力量Faと略一致する。操作部114でユーザ操作が行われると、水圧による力(想定力量Fa)とユーザ操作による操作力との和が操作部114に作用する。したがって、操作部力量検出部300で検出される操作部力量は想定力量Faを超す。制御部116は、操作部力量検出部300で検出された操作部力量が想定力量を上回ったときにユーザが操作部114を操作したと判定する。
【0027】
図6は、ユーザが操作部114を操作したか否かを判定する際の判定基準として、想定力量Faにバイアス力量aを付加した閾値、すなわち

閾値TH=Fa+a=As×ρ×g×h+a … 式(5)

を用いる例を示す図である。このようにバイアス力量aを付加することにより、圧力検出部200での圧力検出結果に誤差を生じた場合や、水温が低いことにより電子カメラ100内の空気が収縮して圧力が低下した場合等に制御部116が誤判定するのを抑止可能となる。つまり、圧力検出部200での圧力検出結果が実際の圧力よりも小さかった場合や電子カメラ100内の圧力が低下した場合、ユーザが操作部114を操作していないのに、操作部力量が想定力量を上回る場合がある。そのような場合に備えてバイアス力量aを設定すれば、電子カメラ100の誤動作を抑止できる。また、陸上ではユーザが操作部114をある大きさの力、例えば200gfの力で押圧したときに操作オンとなるところ、水中では軽く触れただけで操作オンとなってしまうことも、上記バイアス力量aを陸上での操作力量と略等しくすることにより抑止可能となり、水陸を問わずに同様の操作感覚を維持することが可能となる。あるいは、水中ではユーザの体に水圧が作用していたり、手袋を装着していたりして微妙な操作をすることが難しい場合がある。そのような状況に対応してバイアス力量aを大きめに設定する、といったことも可能である。
【0028】
上述したバイアス力量aは、想定力量Faの大きさによらず、一定の値としてもよいし、水圧の変化に伴い、導出される想定力量Faの値が変化するのに応じて線形、非線形、あるいは段階的に変化させてもよい。また、このバイアス力量aは、ユーザの好みや電子カメラ100の使用形態に応じて設定変更可能に構成されていてもよい。このとき、陸上で電子カメラ100を操作する場合にも、操作部114の操作がなされたことを判定する閾値を可変に構成されていてもよい。そのようにすることにより、ユーザがウィンタースポーツ等をしていて手袋を装着している場合や、温暖な気候のもと、素手で操作している場合等に対応した操作力量を設定することが可能となる。
【0029】
図7は、ユーザが操作部114を操作したか否かを判定する際の判定基準として、想定力量Faに第1のバイアス力量a1、第2のバイアス力量a2を付加して得られた二つの閾値、すなわち

第1の閾値TH1=Fa+a1=As×ρ×g×h+a1 … 式(6)
第2の閾値TH2=Fa+a2=As×ρ×g×h+a2 … 式(7)

を用いる例を示す図である。このように、想定力量Faに第1のバイアス力量a1、第2のバイアス力量a2を付加して得られる二つの閾値TH1、TH2を用いることにより、一つの操作部114に対してユーザにより行われる二つの操作を区別することが可能となる。例えば、レリーズ釦102に対応してこのように第1の閾値TH1、第2の閾値TH2を設定することにより、ファーストレリーズ(半押し)、セカンドレリーズ(全押し)の操作が行われたことを判定することが可能となる。これら第1の閾値TH1、第2の閾値TH2を適宜の値に設定することにより、陸上/水中を問わずに同様の操作感覚をユーザに提供することが可能となる。このときさらに、第3の閾値TH3を設定し、操作部力量が第3の閾値を超したときに例えば連続撮影や動画像撮影の開始/停止といった動作を割り当てることも可能となる。
【0030】
図7を参照して説明した第1のバイアス力量a1、第2のバイアス力量a2は、想定力量Faの大きさによらず、一定の値としてもよいし、水圧の変化に伴い、導出される想定力量Faの値が変化するのに応じて線形、非線形、あるいは段階的に変化させてもよい。また、これら第1のバイアス力量a1、第2のバイアス力量a2は、ユーザの好みや電子カメラ100の使用形態に応じて設定変更可能に構成されていてもよい。このとき、陸上で電子カメラ100を操作する場合にも、操作部114の操作がなされたことを判定する閾値を可変に構成されていてもよい。そのようにすることにより、各操作部114での操作力をユーザの好みや使用形態等に応じて変化させることができる。また、ユーザがウィンタースポーツ等をしていて手袋を装着している場合や、夏に素手で操作している場合等に対応した操作力量を設定することが可能となる。
【0031】
一つの操作部114に対して閾値を複数設け、操作部力量の大きさに対応して異なる動作を割り当てる別の例としては、撮影レンズ112が変倍光学系を備えるものである場合に、変倍動作時の動作速度を多段に変化させることが可能である。また、メニュー選択操作時のカーソル移動速度や、再生画像を順次切り替えながら表示する際の表示切り替え速度等を変化させることも可能である。
【0032】
図7を参照して説明した、一つの操作部114で操作が行われたことを判定する際に複数の閾値が設定される例として、レリーズ釦102に対する操作力量の大きさに応じた動作が行われる例について図8、図9を参照して説明する。図8は、電子カメラ100の電源が投入されて、動作モードが静止画撮影モードに設定されたときに制御部116で実行される制御手順を概略的に説明するフローチャートである。図9は、図8に示される処理が行われる際に画像表示部110上においてなされる表示例を説明する図である。
【0033】
S800において制御部116は、ライブビュー画像の表示を開始する。これにより、所定のフレームレートで撮像素子130から読み出された画像信号が画像処理部132で処理されて表示用画像データが生成され、その表示用画像データが画像表示処理部142で処理されて画像表示部110にライブビュー画像として表示される。
【0034】
S802において制御部116は、圧力センサ108から出力され、アンプ136によって増幅された信号を入力して、電子カメラ100を取り巻く気体または液体の圧力を検出する。この圧力検出結果をもとに制御部116はS804において、電子カメラ100が所定の深さを超す水深に存在しているか否かを判定する。S804の判定が肯定されると処理はS806に進み、否定されるとS830に進む。このとき、所定の深さとしては、50cm、1mなどとすることが可能である。なお、電子カメラ100が水センサを備えるものである場合、S804の判定動作を水センサによる水の検出の有無を判定する動作とすることも可能である。
【0035】
S804での判定が肯定された場合の分岐先であるS806において制御部116は、第1の閾値および第2の閾値を設定する。第1の閾値、第2の閾値は、図7を参照して説明した第1の閾値TH1、第2の閾値TH2に相当する。すなわち、電子カメラ100を取り巻く水の水圧がレリーズ釦102の受圧部に作用して生じることが想定される想定力量Faに第1のバイアス力量a1、第2のバイアス力量a2を付加して第1の閾値TH1、第2の閾値TH2を設定する。
【0036】
S808において制御部116は、センサ部114sから出力されてアンプ140によって増幅された信号を入力する。そしてこの信号の大きさに基づき、レリーズ釦102に作用している操作部力量を導出(検出)する。
【0037】
制御部116はS810において、画像表示部110に表示されるライブビュー画像上にグラフを重畳表示する。その表示例が図9(a)に示されている。図9(a)に例示される表示状態は、レリーズ釦102をユーザが押下する前における表示状態を示している。このとき、操作部力量検出部300で検出される操作部力量は、想定力量Faと略等しい状態にある。図9(a)に示されるグラフGがライブビュー画像上に重畳表示された状態でレリーズ釦102を押下することなく、電子カメラ100を保持したユーザが潜行または浮上をすると、検出された操作部力量に対応する棒グラフDFが矢印Sまたは矢印Rに沿う方向に移動する。このとき、棒グラフDFは伸縮し、その先端部TEは想定力量Faの直線上を矢印Qまたは矢印Pに沿う方向に移動する。グラフG中にはまた、第1の閾値TH1、第2の閾値TH2に対応する直線が表示される。
【0038】
図9(a)に例示される表示を見たユーザは、棒グラフDFの表示される水平方向の位置に基づいて現状の水深hoがどの程度であるかを直観的に把握することが可能となる。また、棒グラフDFの伸縮によって水圧の変化を直感的に把握することも可能となる。このとき、水深hoが電子カメラ100にとっての限界水圧に近づいたときに棒グラフDF等の色を変えたり点滅表示をしたりすることにより、ユーザに警告の告知をしてもよい。
【0039】
ユーザがレリーズ釦102を押下すると、その操作力に応じて棒グラフDFが図面上方に伸びる。また、水深が変化すれば棒グラフDFの水平方向の表示位置が変化する。ユーザは図9に例示されるグラフG中でハッチングが施された領域に達する程の操作力でレリーズ釦102を押下するとレリーズ動作がなされることを視覚的に捉えることが可能となる。水中で手袋を装着している状態において、ユーザは明確な感触を得ることが難しく、また、水中ではレリーズ動作音がユーザの耳に届きにくい。この点、図9に示されるような表示を見ながら電子カメラ100を操作することにより、より正確なタイミングでレリーズ操作をすることが可能となるとともにレリーズ動作が行われたことを目視確認することが可能となる。なお、図9(a)においてライブビュー画像中の被写体像IMが破線で示されているが、これは撮影レンズ112の焦点調節が行われておらず、アウトフォーカス状態にあることを意味している。
【0040】
S812において制御部116は、S808で検出された操作部力量が第一の閾値TH1を超しているか否かを判定し、この判定が肯定されるとS814に進む。S812での判定が否定された場合にはS844に分岐する。
【0041】
S812での判定が肯定された場合の分岐先であるS814において、制御部116はAF駆動のための制御を行う。図9(b)は、操作部力量が増すのにつれて棒グラフDFが矢印Tに沿う方向に延伸し、操作部力量が第1の閾値を超した直後の表示状態が示されている。棒グラフDFの先端部TEが第1の閾値TH1よりも上の位置にある。このとき、S814におけるAF駆動のための制御が行われて被写体像IMが鮮鋭なものとなる。
【0042】
S816において制御部116は、S808で行われた処理と同様に、センサ部114sから出力されてアンプ140によって増幅された信号を入力し、レリーズ釦102に作用している操作部力量を導出する。
【0043】
S818において制御部116は、ライブビュー画像に重畳表示されるグラフGの表示を変更し、第1の閾値TH1に対応する直線を非表示にする。この表示は、図9(b)に例示される表示において第1の閾値TH1に対応する線を無くした状態に相当する。この表示を見たユーザは、半押し操作を完了していることを知ることができる。また、重畳表示される線が一本消去されるので、被写体像IMがより見やすいものとなる。このとき表示される棒グラフDFの長さ(先端部TEの位置)は、S816で検出された操作部力量に対応したものとなる。
【0044】
S820において制御部116は、S816において検出された操作部力量が第2の閾値TH2を上回るか否かを判定し、この判定が肯定されると処理はS840に進む。S820での判定が否定されると処理はS812に戻り、以上に説明したS812からS820までの処理が繰り返し行われる。S820での判定が肯定される直前から直後にかけてのタイミングにおいて、画像表示部110上には図9(c)に例示される表示がなされる。図9(c)において、棒グラフDFの先端部TEの位置は第2の閾値TH2を超す位置にある。S820での判定が肯定されてS840に処理が進む際に、ライブビュー画像上に重畳されたグラフGのみ消去される。
【0045】
S840では露光動作が行われる。すなわち、制御部116は撮影レンズ112内に備えられるシャッタを開閉駆動し、このとき撮像素子130に対して露光動作を行うよう制御信号を発する。露光動作を完了した撮像素子130からは画像信号が出力される。
【0046】
S842において制御部116は、画像処理部132に対して画像処理開始の制御信号を発する。この制御信号を受けた画像処理部132は、撮像素子130から読み出した画像信号を処理して画像データを生成する。この画像データは、電子カメラ100内に備えられる画像記録部、または電子カメラ100に装着されたメモリカードに記録される。
【0047】
S844において制御部116は、電源釦104が押下されて電源オフの操作がなされたか否かを判定する。このとき、電源釦104がレリーズ釦102と同様に操作力量を検出可能に構成される場合には、先に説明したのと同様の処理により、操作力量と想定力量Faとの比較結果に基づいてS844の判定処理を行うことが可能である。S844の判定が否定されると処理はS802に分岐する一方、肯定されると撮影動作に係る一連の処理を完了する。
【0048】
S804での判定が否定された場合、つまり、電子カメラ100が陸上にあるか、水中にあってもそれが比較的浅い深度であると判定された場合の処理について説明する。S804での判定が否定された場合の分岐先であるS830において制御部116は、S808で行われる処理と同様に、センサ部114sから出力されてアンプ140によって増幅された信号を入力し、レリーズ釦102に作用している操作部力量を導出する。
【0049】
S832において制御部116は、S830で導出された操作部力量がデフォルト半押し閾値を超すか否かの判定を行う。このデフォルト半押し閾値は、電子カメラ100が陸上または比較的浅い水深(例えば50cm、1mよりも浅い水深)にあるときにレリーズ釦102の半押し操作が行われたか否かを判定する際に用いられる閾値として予め設定されている。S832の判定が肯定されると処理はS834に進む一方、否定されるとS844に分岐する。
【0050】
S832での判定が肯定された場合の分岐先であるS834において、制御部116はAF駆動のための制御を行う。続くS836において制御部116は、S830で導出された操作部力量がデフォルト全押し閾値を超すか否かの判定を行う。このデフォルト全押し閾値は、電子カメラ100が陸上または上述した比較的浅い水深にあるときにレリーズ釦102の全押し操作が行われたか否かを判定する際に用いられる閾値として予め設定されている。この全押し閾値としての力量はS832での判定用に設定されているデフォルト半押し閾値としての力量より大きい。S836の判定が肯定されると処理はS840に進んで露光動作が行われ、続くS842で画像記録処理が行われる。S836の判定が否定されると処理はS830に戻り、以上に説明したS830からS836までの処理が繰り返し行われる。
【0051】
以上に説明したように、S804において電子カメラ100が所定の水深よりも深い位置にあると判定されたときに、ライブビュー画像にグラフGが重畳表示される。つまり、電源がオンされて撮影モードに設定された状態の電子カメラ100を保持したユーザが潜行を開始し、電子カメラ100が所定の水深よりも深い位置に達するとグラフGの重畳表示が開始される。そしてユーザが浮上し、電子カメラ100が所定の深度または所定の深度よりも浅い水深に位置するとS804の判定が否定される。このとき、グラフGの重畳表示は停止されてライブビュー画像だけが画像表示部110上に表示されるものとする。
【0052】
以上では、電子カメラ100のレリーズ操作が2段階の操作となっていて、ファーストレリーズ(半押し)操作、セカンドレリーズ(全押し)操作が検出されるのに応じて電子カメラ100で焦点調節動作、露光動作が行われる例について説明した。続いて図10および図11を参照し、電子カメラ100のレリーズ操作が1段階の操作となっている例について説明する。
【0053】
図10は、電子カメラ100の電源が投入されて、動作モードが静止画撮影モードに設定されたときに制御部116で実行される制御手順を概略的に説明するフローチャートである。図11は、図10に示される処理が行われる際に画像表示部110上においてなされる表示例を説明する図である。
【0054】
S1000において制御部116は、ライブビュー画像の表示を開始する。これにより、所定のフレームレートで撮像素子130から読み出された画像信号が画像処理部132で処理されて表示用画像データが生成され、その表示用画像データが画像表示処理部142で処理されて画像表示部110にライブビュー画像として表示される。
【0055】
S1002において制御部116は、圧力センサ108から出力され、アンプ136によって増幅された信号を入力して、電子カメラ100を取り巻く気体または液体の圧力を検出する。この圧力検出結果をもとに制御部116はS1004において、電子カメラ100が所定の深さを超す水深に存在しているか否かを判定する。S1004の判定が肯定されると処理はS1006に進み、否定されるとS1030に進む。このとき、所定の深さとしては、先にも説明したように、50cm、1mなどとすることが可能である。また、電子カメラ100が水センサを備えるものである場合に、S1004の判定動作を水センサによる水の検出の有無を判定する動作とすることが可能なのも先に説明したものと同様である。
【0056】
S1004での判定が肯定された場合の分岐先であるS1006において制御部116は、水中レリーズ閾値を設定する。水中レリーズ閾値は、図6を参照して説明した閾値THに相当する。すなわち、電子カメラ100を取り巻く水の水圧がレリーズ釦102の受圧部に作用して生じることが想定される想定力量Faにバイアス力量aを付加して閾値THを設定する。
【0057】
S1008において制御部116は、センサ部114sから出力されてアンプ140で増幅された信号を入力する。そしてこの信号の大きさに基づき、レリーズ釦102に作用している操作部力量を導出する。
【0058】
制御部116はS1010において、画像表示部110に表示されるライブビュー画像上にグラフGを重畳表示する。その表示例が図11(a)に示されている。図11(a)に例示される表示状態は、図9(a)に示されるものと同様で、レリーズ釦102をユーザが押下する前における表示状態を示している。このとき、操作部力量検出部300で検出される操作部力量は、想定力量Faと略等しい状態にある。図11(a)に示されるグラフGがライブビュー画像上に重畳表示された状態でレリーズ釦102を押下することなく、電子カメラ100を保持したユーザが潜行または浮上をすると、検出された操作部力量に対応する棒グラフDFが矢印Sまたは矢印Rに沿う方向に移動する。この移動にともなって棒グラフDFは伸縮し、その先端部TEは想定力量Faの直線上を矢印Qまたは矢印Pに沿う方向に移動する。グラフG中にはまた、閾値THに対応する直線が表示される。
【0059】
図11(a)に例示される表示を見たユーザは、棒グラフDFの表示される水平方向の位置をもとに、現状の水深hoがどの程度であるかを直観的に把握することが可能となる。また、レリーズ釦102をユーザが押下すると、その操作力に応じて棒グラフDFが図面上方に伸びる。ユーザはグラフG中でハッチングが施された領域に達する程の操作力でレリーズ釦102を押下するとレリーズ動作がなされることを視覚的に捉えることが可能となる。したがって、図9を参照して先に説明したのと同様の効果を得ることが可能となる。図11(a)、図11(b)において、ライブビュー画像中の被写体像IMが破線で示されているが、これは図9(a)を参照して説明したのと同様、撮影レンズ112の焦点調節が行われておらず、アウトフォーカス状態にあることを意味している。
【0060】
S1012において制御部116は、S808で検出された操作部力量が水中レリーズ閾値THを超しているか否かを判定し、この判定が肯定されるとS1014に進む。S1012での判定が否定された場合にはS1020に分岐する。
【0061】
S1012での判定が否定された場合の分岐先であるS1020において制御部116は、電源釦104が押下されて電源オフの操作がなされたか否かを判定する。このとき、電源釦104がレリーズ釦102と同様に操作力量を検出可能に構成される場合には、先に説明したのと同様の処理により、操作力量と想定力量Faとの比較結果に基づいてS1020の判定処理を行うことが可能である。S1020の判定が否定されると処理はS1002に戻る一方、肯定されると撮影動作に係る一連の処理を完了する。
【0062】
電子カメラ100が所定の水深よりも深い位置にある状態(S1004の判定が肯定される状態)でS1002からS1012、そしてS1020の処理が繰り返し行われる間、画像表示部110の表示は図11(a)または図11(b)に例示される状態となる。すなわち、ユーザがレリーズ釦102を操作していない状態では図11(a)に例示される表示状態となる。一方、ユーザがレリーズ釦102を押下し始めているものの、S1010で検出された操作部力量が水中レリーズ閾値TH以下である場合には図11(b)に例示される表示状態となる。つまり、S1002で検出された圧力に対応する位置に棒グラフDFが表示され、S1008で検出された操作部力量の大きさに応じて棒グラフDFが矢印Tに沿って伸縮して表示される。このとき、水深が変化すれば棒グラフDFの水平方向の表示位置が変化する。
【0063】
S1012での判定が肯定された場合の分岐先であるS1014において、制御部116はAF駆動のための制御を行う。このとき、S1012での判定が肯定される直前から直後にかけて、図11(c)に例示される表示が画像表示部110上で行われる。つまり、操作部力量が水中レリーズ閾値THを超し、棒グラフDFの先端部TEが水中レリーズ閾値THよりも上の位置にある。そして、S1014の処理が行われて被写体像IMが鮮鋭なものとなる。S1014でのAF駆動処理を終えてS1016の露光処理に進む際に、ライブビュー画像上に重畳表示されるグラフGは消去される。
【0064】
S1016において制御部116は、撮影レンズ112内に備えられるシャッタを開閉駆動し、このとき撮像素子130に対して露光動作を行うように制御信号を発する。露光動作の後、撮像素子130からは画像信号が出力される。
【0065】
S1018において制御部116は、画像処理部132に対して画像処理開始の制御信号を発する。この制御信号を受信した画像処理部132は、撮像素子130から読み出した画像信号を処理して画像データを生成する。この画像データは、電子カメラ100内に備えられる画像記録部、または電子カメラ100に装着されたメモリカードに記録される。その後、先に説明したS1020での電源スイッチの状態判定が行われる。
【0066】
S1004での判定が否定された場合、つまり、電子カメラ100が陸上にあるか、水中にあってもそれが比較的浅い深度であると判定された場合の処理について説明する。S1004での判定が否定された場合の分岐先であるS1030において制御部116は、S1008で行われる処理と同様に、センサ部114sから出力されてアンプ140によって増幅された信号を入力し、レリーズ釦102に作用している操作部力量を導出する。
【0067】
S1032において制御部116は、S1030で導出された操作部力量がデフォルトレリーズ閾値を超すか否かの判定を行う。このデフォルトレリーズ閾値は、電子カメラ100が陸上または比較的浅い水深(例えば50cm、1mよりも浅い水深)にあるときにレリーズ釦102のレリーズ操作が行われたか否かを判定する際に用いられる閾値として予め設定されている。S1032の判定が肯定されると処理はS1014に進む一方、否定されるとS1020に分岐する。
【0068】
S1032での判定が肯定されると、S1014でAF駆動処理、S1016で露光処理、そしてS1018で画像記録処理が行われる。そして、S1020での電源スイッチオフの判定が否定される間は、上述した処理が繰り返し行われる。
【0069】
以上に説明したように、S1004において電子カメラ100が所定の水深よりも深い位置にあると判定されたときに、ライブビュー画像にグラフGが重畳表示される。つまり、電源がオンされて撮影モードに設定された状態の電子カメラ100を保持したユーザが潜行を開始し、電子カメラ100が所定の水深よりも深い位置に達するとグラフGの重畳表示が開始される。そしてユーザが浮上し、電子カメラ100が所定の深度またはその深度よりも浅い位置にあるとS1004の判定が否定される。このとき、グラフGの重畳表示は停止されてライブビュー画像だけが画像表示部110上に表示されるものとする。
【0070】
以上、図8から図11を参照し、圧力検出部200で検出された圧力をもとに、想定力量Faを導出し、この想定力量Faの変化に応じて閾値が連続的に変化する例について説明した。本発明は上述した例に限られるものではなく、閾値は圧力変化(水深変化)に応じて段階的に設定されるものであってもよい。
【0071】
図12は、レリーズ釦102で操作が行われたことを判定する際に閾値が段階的に設定される例を概念的に示す図であり、各段階に対応して複数の閾値が設定される例を示す図である。圧力検出部200で検出される圧力に基づいて導出される水深に対応して第1ステップ、第2ステップ、…、第nステップと区分される。そして、第1ステップにおいては、第1ステップ内での最も深い水深(図12の水深d1)に対応する想定力量Faよりも大きい第1の閾値a0が設定される。さらに、第1の閾値a0にオフセット値δ0を付加した第2の閾値b0が設定される。第2ステップ、第3ステップ、…、第nステップにおいても同様に第1の閾値および第2の閾値が設定される。これらの閾値は、操作部114のそれぞれに対応した閾値データテーブルとしてセンサ特性記憶部144内に記憶される。
【0072】
閾値データテーブルの構成例を概念的に示す図13を参照して説明する。閾値データテーブルDT内には、第1ステップ、第2ステップ、…、第nステップに対応する水深の範囲(1m以深〜2m未満、2m以深〜3m未満、…、X1m以深〜X2m未満、…)と、各ステップに対応する第1、第2の閾値(a0、b0、a1、b1、…、an−1、bn−1、…)が記憶される。制御部116は、圧力検出部200で検出された圧力をもとに導出された水深hoに対応する、第1の閾値および第2の閾値を閾値データテーブルDTから読み出す。そして、操作部力量検出部300で検出された操作部力量と第1および第2の閾値とを比較した結果に基づき、ユーザによる半押し操作、全押し操作が行われたか否かを判定し、当該判定結果に対応する動作を行う。
【0073】
図12、図13を参照して説明した例において、分割するステップの数は電子カメラ100の仕様に応じて決定することが可能である。また、第1の閾値と第2の閾値との差(δ0、δ1、…)は、全て同じ値としてもよいし、ステップごとに異なる値としてもよい。水深に応じて複数のステップに区分する際のゾーン幅は、等幅であってもよいし不等幅であってもよい。ゾーン幅や閾値をユーザが変更可能に構成されていてもよい。
【0074】
以上では、図12および図13を参照し、各ステップに対応して第1の閾値および第2の閾値が設定される例について説明したが、各ステップで3以上の閾値が設定されていてもよい。逆に、図14に例示されるように、各ステップに対応して一つの閾値だけが設定されてもよい。
【0075】
図14は、レリーズ釦102で操作が行われたことを判定する際に閾値が段階的に設定される例を概念的に示す図であり、各段階に対応して一つの閾値が設定される例を示す図である。圧力検出部200で検出された圧力に基づいて導出される水深に対応して第1ステップ、第2ステップ、…、第nステップと区分される。そして、第1ステップにおいては、第1ステップ内での最も深い水深に対応する想定力量Faよりも大きい閾値a0が設定される。第2ステップ、第3ステップ、…、第nステップにおいても同様にして閾値a1、a2、…、an−1が設定される。これらの閾値は、操作部114のそれぞれに対応した閾値データテーブルとしてセンサ特性記憶部144内に記憶される。
【0076】
このように設定される閾値に基づき、図10、図11を参照して説明したのと同様の撮影動作の制御を行うことが可能となる。図14に示される例においても、分割するステップの数は電子カメラ100の仕様に応じて決定することが可能である。また、水深に応じて複数のステップに区分する際のゾーン幅は、等幅であってもよいし不等幅であってもよい。
【0077】
以上では、操作部114としてレリーズ釦102の操作部力量が検出されて撮影に係る一連の動作が行われる例について説明したが、他の操作部において検出された操作部力量に対応して様々な動作を行うように電子カメラ100を構成可能である。
【0078】
本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施に際しては本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して様々に具体化できる。また、以上では陸上、水中を問わずにスイッチ操作が可能な電子機器として電子カメラに本発明を適用する例について説明したが、録音装置や計測装置等、他の電子機器にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0079】
100 … 電子カメラ
102 … レリーズ釦
104 … 電源釦
106 … 操作釦
108 … 圧力センサ
110 … 画像表示部
112 … 撮影レンズ
114 … 操作部
114s … センサ部
116 … 制御部
130 … 撮像素子
132 … 画像処理部
136、140 … アンプ
142 … 画像表示処理部
144 … センサ特性記憶部
200 … 圧力検出部
300 … 操作力量検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中においてスイッチ操作可能な電子機器であって、
操作者が押圧操作をするための操作部と、
前記操作部に作用する力量である操作部力量の大きさを検出する操作部力量検出部と、
前記電子機器を取り巻く気体または液体が前記電子機器に作用する圧力を検出する圧力検出部と、
前記圧力検出部で検出された圧力に基づいて閾値を決定する閾値決定部と、
前記操作部力量検出部で検出された前記操作部力量と前記閾値との比較結果に基づき、前記操作者による操作が行われたか否かを判定する操作判定部と
を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記閾値決定部は、前記圧力が前記操作部に作用することによって前記操作部に生じることが想定される力の大きさである想定力量を前記圧力検出部で検出された圧力に基づいて導出し、当該想定力量に基づいて前記閾値を決定することを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記閾値決定部は、前記想定力量に第1のバイアス力量値を付加した力量に基づいて第1の閾値を決定し、
前記操作判定部は、前記操作部力量が前記第1の閾値よりも大きいときに、前記操作者による第1の操作が行われたと判定する
ことを特徴とする請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記第1のバイアス力量値として、前記閾値決定部で導出された前記想定力量の大きさによらずに一定の値が付加されて前記第1の閾値が設定されることを特徴とする請求項3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記第1のバイアス力量値が、前記操作者によって設定変更可能に構成されることを特徴とする請求項3または4に記載の電子機器。
【請求項6】
前記閾値決定部はさらに、前記第1のバイアス力量値よりも大きい第2のバイアス力量値を前記想定力量に付加した力量に基づいて第2の閾値を決定し、
前記操作判定部はさらに、前記操作部力量が前記第2の閾値よりも大きいときに、前記操作者による第2の操作が行われたと判定する
ことを特徴とする請求項3から5のいずれか一つに記載の電子機器。
【請求項7】
前記第2のバイアス力量値として、前記閾値決定部で導出された前記想定力量の大きさによらずに一定の値が付加されて前記第2の閾値が設定されることを特徴とする請求項6に記載の電子機器。
【請求項8】
前記第2のバイアス力量値が、前記操作者によって設定変更可能に構成されることを特徴とする請求項6または7に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図9】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−7914(P2013−7914A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140967(P2011−140967)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(504371974)オリンパスイメージング株式会社 (2,647)
【Fターム(参考)】