説明

電子部品の実装構造

【課題】電子部品に過剰な負荷がかかるのを防止しながら、電子部品を回路基板から所定の距離だけ確実に離間させることができる電子部品の実装構造を提供する。
【解決手段】部品本体21と該部品本体21から突出した複数のリード線22とからなる電子部品2を、リード線22を挿入するための複数のスルーホールが形成された回路基板4の実装面4aに実装した電子部品の実装構造1であって、部品本体21と実装面4aとの間に、部品本体21を実装面4aから所定の距離だけ離間させるスペーサ31が設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の実装構造に関する。特に、リード線を備えた電子部品において、リード線を回路基板に形成されたスルーホールに挿入して半田付けした電子部品の実装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子部品の実装構造として、電子部品の基板への組付け作業を容易にするために、キンク加工が施された電子部品のリード線を、回路基板に形成されたスルーホールに挿入することで、電子部品の部品本体を回路基板の実装面(表面)から所定の距離だけ離間させた構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。この電子部品の実装構造では、半田を貯留した半田槽に回路基板の非実装面(裏面)を浸漬させて電子部品を半田付けする際に、回路基板の非実装面に供給された半田が、リード線とスルーホールの内壁面との間を伝って実装面に上がっていくので、電子部品の非実装面側だけでなく実装面側にも半田フィレットが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−79933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の電子部品の実装構造では、良好な半田上がりを実現することができる反面、キンク加工時に電子部品に過剰な応力がかかることがあり、その場合、電子部品が破損するおそれがあるという問題があった。また、上記特許文献1に記載の電子部品の実装構造では、キンク加工を施すことによって、電子部品の価格が上昇してしまうという問題もあった。さらに、リード線径によってはキンク加工を施すことが困難な場合もあり、このような場合、電子部品を回路基板から確実に離間させることができなかった。
【0005】
本発明は上記事情を鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、電子部品に過剰な負荷がかかるのを防止しながら、電子部品を回路基板から所定の距離だけ確実に離間させることができる電子部品の実装構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る電子部品の実装構造は、部品本体と該部品本体から突出した複数のリード線とからなる電子部品を、リード線を挿入するための複数のスルーホールが形成された回路基板の実装面に実装した電子部品の実装構造であって、部品本体と実装面との間に、部品本体を実装面から所定の距離だけ離間させるスペーサが設けられていることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、電子部品の部品本体と回路基板の実装面との間にスペーサが設けられているので、部品本体を該スペーサ上に搭載するだけで、電子部品に過剰な負荷がかかるのを防止しながら、部品本体を実装面から所定の距離だけ確実に離間させることができる。その結果、電子部品の非実装面側だけでなく、回路基板の実装面側にも十分な半田フィレットを形成することができる。
【0008】
また、本発明に係る電子部品の実装構造では、実装面に電子部品の周囲を取り囲む枠体が設けられ、上記スペーサが枠体と一体形成されていることが好ましい。
【0009】
この構成によれば、スペーサが枠体と一体形成されているので、スペーサを個別に設ける必要がなく、製造コストを低減することができる。
【0010】
上記枠体は、実装面から立設された壁部を有し、壁部から実装面に沿って突出した突出部がリード線間に延設されスペーサとして機能することが好ましい。この構成によれば、リード線間の領域を有効に活用して、電子部品の実装密度を向上させることができる。
【0011】
上記突出部に、電子部品が突出部の突出方向に転倒するのを規制する規制手段を設けてもよく、さらに、規制手段を突出方向において部品本体を挟み込むように部品本体の両側に設けることができる。この構成によれば、スペーサに規制手段が設けられているので、リード線を回路基板に半田付けする際に電子部品が倒れるのを確実に防ぐことができる。
【0012】
上記壁部によって囲まれた空間は、リード線およびスペーサが埋設されるように樹脂で充填されていることが好ましい。この構成によれば、振動や衝撃等により電子部品や半田フィレットに応力がかかっても、電子部品の周囲を取り囲む枠体で囲まれた空間が樹脂で充填されているので、その応力を緩和することができ、電子部品や半田フィレットが破損するのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電子部品に過剰な負荷がかかるのを防止しながら、電子部品を回路基板から所定の距離だけ確実に離間させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電子部品の実装構造を用いたモジュールを示す斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る電子部品の実装構造を用いたモジュールを示す平面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る電子部品の実装構造を示す正面から見た部分断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る電子部品の実装構造の製造工程を示す正面から見た部分断面図であって、(a)は枠体を実装する工程を示す図、(b)は電子部品を実装する工程を示す図、(c)は半田付けの工程を示す図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る電子部品の実装構造を示す正面から見た部分断面図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る電子部品の実装構造を示す部分断面図であって、(a)は正面から見た図、(b)は側面から見た図である。
【図7】図6(b)に示したスリットの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の好ましい実施形態について説明する。
【0016】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態に係る電子部品の実装構造1は、図1および図2に示すモジュール10で用いられている。このモジュール10は、電気自動車に搭載された充電器に含まれるパワーモジュールであって、バリスタ2やチョークコイル等の電子部品と、これらの電子部品の周囲を取り囲む枠体3と、複数のスルーホール41(図4参照)や回路パターンが形成された回路基板4とから構成されている。
【0017】
バリスタ2は、図3に示すように、エポキシ樹脂で被覆された部品本体21と、この部品本体21から突出した2本のリード線22とからなる。2本のリード線22は、スルーホール41に挿入され、回路基板4と半田(半田フィレット)6で接続されている。
【0018】
枠体3は、バリスタ2やチョークコイル等の電子部品の周囲を取り囲むように回路基板4の実装面(表面)4aに設けられている。枠体3の材料には、ポリフェニレンスルファイド(PPS)やポリブチレンテレフタレート(PBT)等のプラスチックが用いられる。
【0019】
また、枠体3は、実装面4aから立設された壁部30と壁部30から実装面4aに沿って突出した突出部31とを有し、突出部31が本発明の「スペーサ」として機能する。すなわち、スペーサ31は枠体3と一体形成されている。スペーサ31は、リード線22を回路基板4に半田付けする際、実装面4a側に十分な半田フィレット6が形成されるように、バリスタ2の部品本体21を回路基板4の実装面4aから所定の距離だけ離間させるためのものである。このスペーサ31は、断面視H形状を有し、2本のリード線22間に延設されており、スペーサ31の上面は、部品本体21の下面と2箇所で接し、スペーサ31の下面は、回路基板4の実装面4aと2箇所で接している。
【0020】
壁部30によって囲まれた空間は、スペーサ31、リード線22、および部品本体21の一部が埋設されるようにウレタン系の樹脂5で充填されている。この樹脂5は、電気自動車に搭載されたモジュール10が衝撃を受けた場合に、バリスタ2や半田フィレット6にかかる応力を緩和して、バリスタ2や半田フィレット6が破損するのを防ぐためのものである。また、この樹脂5は、スペーサ31にかかる応力を緩和することができ、スペーサ31が破損するのも防ぐことができる。
【0021】
上記のように、本実施形態に係る電子部品の実装構造1では、バリスタ2の部品本体21と回路基板4の実装面4aとの間にスペーサ31が設けられているので、部品本体21を該スペーサ31上に搭載するだけで、バリスタ2に過剰な負荷がかかるのを防止しながら、バリスタ2の部品本体21を実装面4aから所定の距離だけ確実に離間させることができる。その結果、電子部品の非実装面4b側だけでなく、回路基板4の実装面4a側にも十分な半田フィレット6を形成することができる。
【0022】
次に、図4を参照して、本実施形態に係る電子部品の実装構造1の製造工程について説明する。
【0023】
本実施形態に係る電子部品の実装構造1の製造工程では、まず、図4(a)に示すように、スペーサ31が一体形成された枠体3を、回路基板4の実装面4aに実装する。枠体3は、接着剤やねじ等により回路基板4に固定される。
【0024】
続いて、図4(b)に示すように、バリスタ2等の電子部品を、回路基板4の実装面4aのうち枠体3で囲まれた領域に実装する。バリスタ2のリード線22は、該リード線22間にスペーサ31が配置されるようにスルーホール41に挿入される。
【0025】
続いて、図4(c)に示すように、リード線22を回路基板4に半田付けすることにより、回路基板4の実装面4aおよび非実装面(裏面)4bに半田フィレット6を形成する。半田付けは、リード線22をスルーホール41に挿入させた状態で、回路基板4の非実装面4bを半田槽に浸漬することにより行う。回路基板4の非実装面4bに供給された半田槽の溶融半田は、毛細管現象によりリード線22とスルーホール41の内壁面との間を伝って実装面4aまで移動し、非実装面4bおよび実装面4aに半田フィレット6を形成する。
【0026】
その後、枠体3によって囲まれた空間に、スペーサ31、リード線22、および部品本体21の一部が埋設されるようにウレタン系の樹脂5を充填することで、図3に示す電子部品の実装構造1が完成する。
【0027】
[第2実施形態]
図5は、本発明の第2実施形態に係る電子部品の実装構造1Aを示す図である。本実施形態に係る電子部品の実装構造1Aは、スペーサ31Aの形状が異なること以外の点において、第1実施形態に係る電子部品の実装構造1と共通している。
【0028】
同図に示すように、スペーサ31Aの上面は、バリスタ2の部品本体21の下面に適合するように湾曲した形状になっている。このため、本実施形態に係る電子部品の実装構造1Aでは、バリスタ2がスペーサ31Aによって安定的に支持されるので、リード線22を回路基板4に半田付けする際に、バリスタ2が傾いたり、倒れたりするのを防ぐことができる。
【0029】
[第3実施形態]
図6は、本発明の第3実施形態に係る電子部品の実装構造1Bを示す図である。本実施形態に係る電子部品の実装構造1Bは、スペーサ31Bの形状が異なること以外の点において、第1実施形態に係る電子部品の実装構造1と共通している。
【0030】
同図に示すように、スペーサ31Bの上面には、バリスタ2が倒れるのを規制手段としてスリット32B(凹部)が形成されている。具体的には、図7に示すように、スペーサ31Bが壁部30Bから突出した突出方向(図6(b)および図7の左右方向)にバリスタ2が転倒するのを規制面311、312(本発明の「規制手段」に相当)が設けられている。規制面311、312は、突出方向において部品本体21を挟み込むように部品本体21の両側に設けられている。そして、規制面311と規制面312とによりスリット32Bが形成されている。このスリット32Bには、バリスタ2の部品本体21の一部が挿入されている。このため、本実施形態に係る電子部品の実装構造1Bでは、リード線22を回路基板4に半田付けする際に、バリスタ2が倒れるのをより確実に防ぐことができる。
【0031】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明してきたが、本発明はこれらの構成に限定されるものではない。
【0032】
例えば、上記各実施形態では、電子部品としてバリスタ2を用いたが、コンデンサやトランジスタ等、リード線をスルーホールに挿入することにより実装される電子部品であれば電子部品の種類は問わない。
【0033】
また、上記各実施形態では、リード線22間にスペーサ31、31A、31Bを設けたが、スペーサ31、31A、31Bの位置は任意に変更することができる。
【0034】
また、上記各実施形態では、スペーサ31、31A、31Bが、枠体3、3A、3Bと一体形成されているが、スペーサと枠体を、それぞれ個別に設けてもよい。
【0035】
さらに、上記第3実施形態では、規制手段としてスリット32Bを形成しているが、スリット32Bに替えて、バリスタ2の部品本体21を挟むように複数の突起を形成してもよい。
【符号の説明】
【0036】
1、1A、1B 電子部品の実装構造
2 バリスタ
21 部品本体
22 リード線
3、3A、3B 枠体
30、30A、30B 壁部
31、31A、31B スペーサ
311、312 規制面
32B スリット
4 回路基板
4a 実装面
4b 非実装面
41 スルーホール
5 樹脂
6 半田フィレット
10 モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品本体と該部品本体から突出した複数のリード線とからなる電子部品を、前記リード線を挿入するための複数のスルーホールが形成された回路基板の実装面に実装した電子部品の実装構造であって、
前記部品本体と前記実装面との間に、前記部品本体を前記実装面から所定の距離だけ離間させるスペーサが設けられていることを特徴とする電子部品の実装構造。
【請求項2】
前記実装面に、前記電子部品の周囲を取り囲む枠体が設けられ、
前記スペーサは、前記枠体と一体形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電子部品の実装構造。
【請求項3】
前記枠体は、前記実装面から立設された壁部を有し、
前記壁部から前記実装面に沿って突出した突出部が前記リード線間に延設され前記スペーサとして機能することを特徴とする請求項2に記載の電子部品の実装構造。
【請求項4】
前記突出部には、前記電子部品が前記突出部の突出方向に転倒するのを規制する規制手段が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の電子部品の実装構造。
【請求項5】
前記規制手段は、前記突出方向において前記部品本体を挟み込むように前記部品本体の両側に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の電子部品の実装構造。
【請求項6】
前記壁部によって囲まれた空間は、前記リード線および前記スペーサが埋設されるように樹脂で充填されていることを特徴とする請求項3ないし5のいずれかに記載の電子部品の実装構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−89666(P2012−89666A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234753(P2010−234753)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(000004606)ニチコン株式会社 (656)
【Fターム(参考)】