説明

電子部品の実装装置及び実装方法

【課題】基板の側辺部に実装される電子部品の間隔が変わった場合の対応を、容易かつ迅速に行うことができるようにした電子部品の実装装置及び実装方法を提供する。
【解決手段】基板の側辺部の上方に位置して基板の長手方向に沿うよう水平に配置されるベース部材16と、ベース部材の長手方向に沿って移動可能に設けられた複数の水平可動体18と、各水平可動体に垂直方向に沿って駆動可能に設けられ垂直方向下方に駆動されることで基板に仮圧着されたTCP12を本圧着する実装ツール20と、各水平可動体に設けられた駆動部材29と、ベース部材に水平方向に沿って駆動可能及び各水平可動体の駆動部材に係脱可能に設けられ駆動部材と係合して水平方向に駆動されることで水平可動体に設けられた実装ツールを基板の側辺部に仮圧着された複数のTCPのピッチ間隔に対応する間隔に位置決めする位置決め部材38を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は基板の側辺部に基板のサイズに応じたピッチ間隔で仮圧着された複数の電子部品を本圧着する電子部品の実装装置及び実装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、液晶表示装置を製造する場合、ガラス製の基板の側辺部に電子部品としての複数のTCP(Tape Carrier Package)を所定間隔で実装する工程がある。上記基板の側辺部に対して上記TCPを実装するには、上記TCPを上記基板の側辺部に熱硬化性の異方性導電部材からなる粘着テープによって1つずつ仮圧着した後、複数の上記TCPを一括して実装するということが行われている。
【0003】
基板の側辺部に仮圧着された複数のTCPを一括して本圧着する場合、上記基板の側辺部に対応する長さ寸法を有する本圧着ツールによって、複数のTCPを一度に加圧加熱し、上記粘着テープを溶融硬化させて本圧着するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−182825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本圧着ツールによって複数のTCPを一度に加圧加熱して本圧着する場合、上記本圧着ツールは上記基板の側辺部と同等、或いはそれ以上の長さ寸法にしなければならない。
【0006】
しかしながら、1台の実装装置によって複数種のサイズの基板に対して仮圧着されたTCPを本圧着する場合、基板のサイズである、側辺部の長さが本圧着ツールの長さよりも長くなるときには、上記本圧着ツールを基板のサイズに応じた長さの異なるものに交換しなければならない。
【0007】
そのため、上記本圧着ツールの交換作業に多くの手間が掛かり、生産性の低下を招くということがある。
【0008】
上記本圧着ツールとして、予め最大サイズの基板の側辺部と同じ長さのものにしておくことで、基板のサイズが変更になっても、本圧着ツールを交換せずにすむようにするということが考えられる。
【0009】
しかしながら、本圧着ツールの長さ寸法を、最大サイズの基板の側辺部と同じ長さ寸法にすると、その本圧着ツールの高重量化を招くことになるから、最大サイズ以外の基板に対してTCPを本圧着する場合には、上記本圧着ツールを駆動するのに要するタクトタイムが長くなったり、必要な動力が増大するなどして、生産性の低下やコストの上昇を招くということになる。
【0010】
この発明は、基板の側辺部に実装される電子部品の間隔が変わった場合の対応を、容易かつ迅速に行うことができるようにした電子部品の実装装置及び実装方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、位置決めされた基板の側辺部に上記基板のサイズに応じたピッチ間隔で仮圧着された複数の電子部品を本圧着する実装装置であって、
上記基板の側辺部の上方に位置して上記基板の長手方向に沿うよう水平に配置されるベース部材と、
このベース部材の長手方向に沿って移動可能に設けられた複数の水平可動体と、
各水平可動体に垂直方向に沿って駆動可能に設けられ垂直方向下方に駆動されることで上記基板に仮圧着された上記電子部品を本圧着する実装ツールと、
上記各水平可動体に設けられた駆動部材と、
上記ベース部材に上記水平方向に沿って駆動可能及び上記各水平可動体の上記駆動部材に係脱可能に設けられ上記駆動部材と係合して水平方向に駆動されることで上記水平可動体に設けられた上記実装ツールを上記基板の側辺部に仮圧着された複数の電子部品のピッチ間隔に対応する間隔に位置決めする位置決め部材と
を具備したことを特徴とする電子部品の実装装置にある。
【0012】
上記ベース部材は垂直部を有し、上記水平可動体は上記ベース部材の垂直部の一側面側に設けられ、上記駆動部材は上記垂直部の他側面側にこの他側面に対して接離する方向に移動可能であるとともに付勢部材によって接近方向に付勢されて設けられていて、
上記垂直部の他側面には凹凸部を有する第1の係合体が上記ベース部材の長手方向に沿って設けられ、上記駆動部材が上記付勢部材によって上記接近方向に付勢されているときに上記第1の係合体に係脱する第2の係合体が上記駆動部材と一体的に設けられ、
上記第1の係合体に上記第2の係合体が上記付勢部材の付勢力によって係合することで、上記水平可動体が上記ベース部材に対して位置決め固定されることが好ましい。
【0013】
上記位置決め部材は、上記ベース部材の長手方向に沿って無端走行するベルトに取付けられ、このベルトは駆動源によって駆動されるようになっていて、
上記駆動源には上記ベルトによる上記位置決め部材の駆動位置を検出するエンコーダが設けられ、このエンコーダの検出に基いて上記駆動部材を介して上記位置決め部材によって駆動される上記水平可動体の駆動が制御されることが好ましい。
【0014】
上記第1の係合体の凸部を検出するセンサが上記水平可動体と一体的に設けられ、上記水平可動体が上記駆動部材を介して上記位置決め部材によって駆動されたときに上記センサによって上記位置決め部材の駆動位置を検出し、このセンサの検出に基いて上記水平可動体の駆動が制御されることが好ましい。
【0015】
この発明は、位置決めされた基板の側辺部に上記基板のサイズに応じたピッチ間隔で仮圧着された複数の電子部品を本圧着する実装方法であって、
基板の側辺部に仮圧着された複数の電子部品を複数の実装ツールによって本圧着するとともに、上記基板のサイズが変更になったとき、この基板の側辺部に仮圧着された上記電子部品のピッチ間隔に応じて複数の実装ツールの間隔を設定することを特徴とする電子部品の実装方法にある。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、複数の実装ツールが間隔の調整可能に設けられているから、基板のサイズが変更になって、その側辺部に実装される電子部品のピッチ間隔が変更になった場合、電子部品のピッチ間隔に対応して複数の実装ツールの間隔を設定することができる。
【0017】
そのため、基板のサイズが変更になった場合、複数の実装ツールの間隔を設定することで対応できるから、基板のサイズ変更時の対応を容易かつ迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の第1の実施の形態を示す実装装置の正面図。
【図2】上記実装装置を構成する本圧着部の拡大縦断面図。
【図3】水平可動体をベース部材に対して位置決め固定するためのラックとピニオンを示す平面図。
【図4】上記ベース部材の長手方向一端と他端に設けられる駆動プーリと従動プーリを示す図。
【図5】(a)と(b)はサイズの異なる基板に仮圧着されたTCPのピッチを説明するための基板の平面図。
【図6】実装装置の制御系統を示すブロック図。
【図7】この発明の第2の実施の形態であって、位置決めされた水平可動体をベース部材に固定する手段を示す図。
【図8】この発明の第3の実施の形態であって、位置決めされた水平可動体をベース部材に固定する手段を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1乃至図6はこの発明の第1の実施の形態を示し、図1に示す実装装置は基板Wの搬送装置1を備えている。この搬送装置1は上記基板Wが載置される載置テーブル2を有する。この載置テーブル2はベース3上に設けられたXテーブル4、Yテーブル5及びθテーブル6を介して設けられている。
【0021】
上記ベース3の一端には上記Xテーブル4をX方向に駆動するX駆動源8が設けられ、上記Xテーブル4には上記Yテーブル5を上記X方向と交差するY方向に沿って駆動するY駆動源9が設けられている。
【0022】
上記Yテーブル5には上記θテーブル6を上記X方向とY方向とがなす平面に対して垂直な軸線を中心にする回転方向である、θ方向に駆動するθ駆動源11が設けられている。したがって、上記載置テーブル2はX、Y及びθ方向に駆動位置決め可能となっている。
【0023】
上記載置テーブル2に供給載置される基板Wの少なくとも一側部には図5(a)に示すように電子部品としての複数のTCP12が所定のピッチ間隔Pで仮圧着されている。上記TCP12は、上記基板Wに粘着性の熱硬化性樹脂に導電性の金属粒子が混入された異方性導電部材である、粘着テープ13によって貼着されている。なお、粘着テープ13は基板Wの側辺部の全長にわる長さであってもよいが、この実施の形態ではTCP12の幅寸法と対応する長さとなっている。
【0024】
上記搬送装置1は、図1に示すように上記基板WのTCP12が仮圧着された側辺部を実装装置の本圧着部14の下方に位置決めする。上記本圧着部14は上記基板Wの側辺部の長手方向に沿う断面形状が逆L字状のベース部材16が配置されている。このベース部材16は図2に示すように帯板状の垂直部16aと水平部16bを有し、上記垂直部16aの外面には上下方向に所定間隔で離間した一対の水平ガイド17が設けられている。
【0025】
上記水平ガイド17には、複数の水平可動体18がその背面に設けられた受け部18aを係合させて水平方向に移動可能に支持されている。水平可動体18の数は、上記基板Wの側辺部に仮圧着されるTCP12を本圧着することができる数となっている。
【0026】
すなわち、この実施の形態の実装装置では仮圧着されたTCP12を本圧着する基板Wのサイズが変更になることがあり、基板Wの側辺部に仮圧着されるTCP12の数やピッチは基板Wのサイズが変更になることによって異なり、通常は基板Wのサイズが大きくなる程、TCP12が数は多くなり、ピッチは大きくなる。
【0027】
なお、図5(b)は図5(a)に示す基板Wよりもサイズが大きくなった基板Wを示し、その場合は上記基板W1の側辺部に実装されるTCP12の間隔がPよりも大きなP1に設定される。
【0028】
したがって、上記ベース部材16に設けられる水平可動体18は、上記実装装置で取り扱われる最大サイズの基板Wに仮圧着されたTCP12の数に対応する数にすることが好ましい。なお、この実施の形態では水平可動体18が5つ設けられている場合を例に挙げて説明する。
【0029】
各水平可動体18の前面には、水平方向に所定間隔で離間した一対の垂直ガイド19が上下方向に沿って垂直に設けられている。各水平可動体18の前面には、上記基板Wの側辺部に仮圧着されたTCP12を本圧着するための実装ツール20が取付けられた逆L字状の取付け部材21が図2に示すように背面に上下方向に所定間隔で設けられた一対の受け部21aを係合させて移動可能に設けられている。上記実装ツール20の幅寸法は上記TCP12の幅寸法とほぼ同じ或いはわずかに長い長さ寸法に設定されている。
【0030】
上記水平可動体18の前面上部には第1の上下駆動手段としての加圧シリンダ22が設けられ、この加圧シリンダ22のロッド22aが上記取付け部材21の上端に連結されている。したがって、上記実装ツール20は上記加圧シリンダ22によって上下方向に駆動されるようになっている。
【0031】
なお、図示はしないが、各実装ツール20には内蔵されたヒータによって加熱されるようになっていて、上記加圧シリンダ22によって下降方向に駆動されて基板Wに仮圧着されたTCP12を加圧して本圧着するとき、上記TCP12を基板Wに貼着した粘着テープ13を加熱して溶融硬化させるようになっている。
【0032】
図2に示すように、各水平可動体18の下端部は上記ベース部材16の垂直部16aの下端よりも下方に突出し、その下端の内面には板状の水平部材24の一端が連結されている。この水平部材24の上面には上記ベース部材16の垂直部16aの内面に対して直交する方向である前後方向に沿って前後ガイド25が設けられている。この前後ガイド25には下部スライダ26が移動可能に係合支持されている。
【0033】
上記水平部材24の他端には軸部材27が立設され、この軸部材27と上記下部スライド26とにはそれぞれ凹状の受け26a,27aが対向するよう固着されていて、これら受け26a,27a間には上記下部スライダ26を図2に矢印Yで示す前進方向に付勢したばね28が設けられている。
【0034】
上記スライダ26の上面には軸状の駆動部材29が立設されている。この駆動部材29の中途部には図2と図3に示すように第2の係合体としての1つの凸部31aを有するピニオン31が設けられ、上記軸部材27の上端にはたとえば投光器と受光器とが前後方向に対向して設けられた光センサなどからなるU字状の位置検出センサ30が設けられている。
【0035】
上記位置検出センサ30は後述するように上記ベース部材16の内面側でこのベース部材16の長手方向に沿って走行駆動されるアクチュエータ46を検出するようになっている。
【0036】
上記ベース部材16の内面には、上記駆動部材29に設けられたピニオン31が係合する位置に第1の係合体としてのラック32が上記内面のほぼ全長にわたって水平に設けられている。このラック32には図3に示すように凹部32aと凸部32bが交互に形成されていて、その凹部32aに上記ピニオン31の凸部31aが係脱可能となっている。
【0037】
つまり、上記スライダ26がばね28の復元力によって図2に矢印Yで示す前進方向に付勢されると、上記ピニオン31の凸部31aが上記ラック32は凹部32aに係合する。
【0038】
上記ピニオン31の凸部31aが上記ラック32の凹部32aに係合すれば、そのピニオン31が設けられた水平可動体18、つまりその水平可動体18に設けられた実装ツール20が上記ベース部材16に対して水平方向に移動不能に固定されることになる。
【0039】
なお、ラック32に形成された凹部32aのピッチは、たとえば0.5mm程度になっている。それによって、上記ピニオン31とラック32によって上記実装ツール20を上記前後方向と交差する方向である、図1にXで示す水平方向に対して0.5mmの精度で位置決めできるようになっている。
【0040】
図2に示すように、上記ベース部材16の内面の上記ラック32よりも上方の位置には、左右ガイド33が上記ベース部材16の長手方向ほぼ全長にわたって水平に設けられている。この左右ガイド33には断面L字状の上部スライダ34が垂直片34aの外面に設けられた受け部35を移動可能に係合させて設けられている。
【0041】
上記上部スライダ34の水平片34bの下面には係脱シリンダ37が軸線を上記下部スライダ26の移動方向である前後方向に沿わせて設けられている。この係脱シリンダ37のロッド37aには位置決め部材38が設けられ、この位置決め部材38の先端には上記駆動部材29に係合可能なU字状の係合部38aが設けられている。
【0042】
上記ラック32に上記ピニオン31が上記ばね28の付勢力によって弾性的に係合した状態で、上記係合部38aが後述するように上記ピニオン31が設けられた駆動部材29に対向する位置に位置決めされた後、上記係脱シリンダ37が作動して上記位置決め部材38が後退方向に駆動されると、上記位置決め部材38の係合部38aが上記駆動部材29に係合し、この駆動部材29とともに下部スライダ26を上記ばね28の付勢力に抗して同方向である、後退方向に駆動する。
【0043】
それによって、上記ピニオン31の凸部31aが上記ラック32の凹部32aから外れて上記水平可動体18の拘束状態が開放されるから、この水平可動体18が水平方向である、X方向に対して移動可能な状態となる。
【0044】
上記上部スライダ34の垂直片34aの内面には、無端走行する歯付きのベルト41がチャック部材42によって連結固定されている。上記ベルト41は図1と図4に示すように駆動プーリ43と従動プーリ44との間に張設されていて、上記駆動プーリ43は上記ベース部材16の水平部16aの水平方向一端部の上面に設けられた駆動モータ45によって回転駆動されるようになっている。なお、上記従動プーリ44は上記ベース部材16の水平部16aの水平方向他端部の上面に設けられた軸受43aに回転可能に支持された支軸43bに取付けられている。
【0045】
上記駆動プーリ43が駆動モータ45によって回転駆動されて上記ベルト41が走行すると、その走行に上記上部スライダ34が連動する。この上部スライダ34には棒状の上記アクチュエータ46が先端部を下方に向けて垂設されている。
【0046】
上記アクチュエータ46が上記ベルト41とともに走行すると、その先端部(下端部)は上記水平部材24の後端に立設された軸部材27の上端に設けられた位置検出センサ30によって検出される。
【0047】
上記アクチュエータ46が上記位置検出センサ30によって検出されると、上記駆動モータ45によるベルト41の駆動が停止され、上記係脱シリンダ37が作動する。それによって、位置決め部材38の係合部38aによって上記駆動部材29を介して上記下部スライダ26がばね28の付勢力に抗して後退方向に駆動される。
【0048】
上記下部スライダ26が後退方向に駆動されると、上記ピニオン31が上記ラック32から外れて上記水平可動体18、つまり実装ツール20が水平方向に移動可能な状態となる。
【0049】
上記実装ツール20が水平方向に移動可能な状態となると、上記水平可動体18が上記上部スライダ34、上記位置決め部材38及び上記駆動部材29を介して上記ベルト41によって水平方向に駆動され、上記水平可動体18に設けられた上記実装ツール20が上記基板Wの側辺部に仮圧着されたTCP12と対応する位置に位置決めされる。
【0050】
上記実装ツール20の位置決めは、上記ピニオン31に設けられこのピニオン31が上記水平可動体18とともに水平方向に駆動されたときに、上記ラック32の凸部32bの数をカウントする図3に示すカウントセンサ47と、上記ベルト41を駆動する駆動プーリ44を駆動する駆動モータ45に設けられた図1に示すエンコーダ48との一方或いは両方によって行われる。この実施の形態では、上記実装ツール20位置決めは上記カウントセンサ47と上記エンコーダ48との両方によって行われるようになっている。
【0051】
上記実装装置は図6に示す制御装置51によって駆動が制御される。すなわち、制御装置51は上記X駆動源8、Y駆動源9、θ駆動源11、加圧シリンダ22、係脱シリンダ37、駆動モータ45の駆動を制御する。
【0052】
上記制御装置51には、上記位置検出センサ30が検出する上記アクチュエータ46の検出信号、上記カウントセンサ47によりカウントされる上記ラック32の凸部32bの数の検出信号、上記エンコーダ48により検出される上記駆動モータ45の回転角度の検出信号が入力されるようになっている。
【0053】
さらに、上記制御装置51には図6に示す設定部52が設けられ、この設定部52によってTCP12が仮圧着され上記載置テーブル2に供給載置される基板Wのサイズを設定すると、その基板Wのサイズに応じて側辺部に実装されるTCP12の数及びピッチ間隔が記憶され、その記憶に基いて複数の水平可動体18の間隔である、各水平可動体18に設けられた実装ツール20の間隔が設定されるようになっている。
【0054】
つぎに、上記構成の実装装置によって基板Wの側辺部に仮圧着された複数のTCP12を本圧着する動作を説明する。
まず、載置テーブル2に供給載置された基板Wのサイズを設定部52によって制御装置51に設定し、その基板Wが供給載置された載置テーブル2を搬送装置1によって本圧着部14の下方に位置決めする。なお、上記基板Wは図5(a)に示すように側辺部にTCP12がピッチPで仮圧着されているものとする。
【0055】
このとき、上記基板Wの側辺部に仮圧着された複数のTCP12のうちの、長手方向一端に位置するTCP12が上記本圧着部14の基準位置a(図1に示す)に一致するよう、上記基板Wは位置決めされる。この基準位置aは上記制御装置51に予め設定されている。
【0056】
それによって、制御装置51は複数の実装ツール20のうち、ベース部材16の長手方向一端に位置する1番目の実装ツール20を上記基準位置aに一致させたとき、2番目〜5番目の実装ツール20を上記TCP12のピッチ間隔Pに対応する間隔で位置決めしたときの、これら2番目〜5番目の実装ツール20の上記ベース部材16の長手方向である、水平方向に沿うX座標が設定される。
【0057】
なお、この実施の形態では、長手方向一端に位置するTCP12を本圧着部14の基準位置aに位置決めしたとき、1番目の実装ツール20、つまり水平可動体18は基準位置aよりも図1に矢印で示すX方向の+、−で示す+側、つまり上流側に位置しているものとする。
【0058】
基板Wのサイズを設定部52によって設定した後、実装装置を動作させて駆動モータ45を作動させると、ベルト41が上部スライダ34とともに走行し、この上部スライダ34に設けられたアクチュエータ46がベース部材16の長手方向一端に位置する1つ目の水平可動体18の水平部材24に設けられた位置検出センサ30によって検出される。
【0059】
アクチュエータ46が位置検出センサ30によって検出されると、その検出信号によって上記駆動モータ45によるベルト41の駆動が停止される。このとき、上部スライダ34に係脱シリンダ37を介して設けられた位置決め部材38の係合部38aが駆動部材29に対向位置する。このとき、上記駆動部材29に設けられたピニオン31の凸部31aは図3に鎖線で示すようにラック32の凹部32aに係合している。
【0060】
ついで、上記上部スライダ34に設けられた係脱シリンダ37が作動して上記位置決め部材38を後退方向に駆動する。図2は上記位置決め部材38が後退方向に駆動されている状態を示している。
【0061】
上記位置決め部材38が後退方向に駆動されると、その位置決め部材38の係合部38aが駆動部材29に係合し、この駆動部材29を介して下部スライダ26をばね28の復元力に抗して後退方向へ駆動する。
【0062】
それによって、上記駆動部材29に設けられたピニオン31の凸部31aがラック32の凹部32bから外れ、水平可動体18が水平方向に対して移動可能な状態となる。つまり、水平可動体18のロック状態が解除される。
【0063】
上記水平可動体18のロック状態が解除され、この水平可動体18が移動可能な状態になると、上記係合部38aが駆動部材29に係合した状態で、上記駆動モータ45が作動してベルト41を走行させ、1番目の上記水平可動体18を基準位置aよりも上流側の位置から下流側に移動させる。このときの上記水平可動体18の移動量は駆動モータ45の回転角度を検出するエンコーダ48とラック32の凸部32bをカウントするカウントセンサ47によって検出される。
【0064】
なお、1番目の水平可動体18が基準位置aよりも下流側にあり、そのことが位置検出センサ30によって検出されれば、1番目の水平可動体18は下流側から上流側へ駆動されることになる。
【0065】
そして、1番目の上記水平可動体18が予め設定された基準位置aまで駆動されたことが上記エンコーダ48による上記ベルト41の駆動長さ及び上記カウントセンサ47による上記ラック32の凸部32bのカウント数によって検出されると、上記駆動モータ45が停止させられ、上記係脱シリンダ37の駆動が解除されて位置決め部材38の係合部38aが駆動部材29から外れる。
【0066】
それによって、下部スライダ26がばね28の復元力で前進方向へ移動し、ピニオン31の凸部31aがラック32の凹部32bに係合するから、水平可動体18とともに実装ツール20が上記基準位置aに位置決め固定されることになる。
【0067】
1番目の水平可動体18が基準位置aに位置決めされて上記係合部38aが駆動部材29から外れると、駆動モータ45が作動してベルト41が駆動され、上部スライダ34が2番目の水平可動体18の方向に向かって駆動される。
【0068】
そして、上記上部スライダ34に設けられたアクチュエータ46が2番目の水平可動体18に設けられた位置検出センサ30によって検出されると、その位置でベルト41の駆動が停止された後、係脱シリンダ37が駆動されて2番目の水平可動体18に設けられたピニオン31をラック32から外す。
【0069】
ついで、駆動モータ45が作動してベルト41が再び駆動され、2番目の水平可動体18が+X方向或いは−X方向に駆動され、この2番目の水平可動体18の駆動距離が上記エンコーダ48と上記カウントセンサ47によって検出される。
【0070】
そして、2番目の水平可動体18の駆動距離が上記基準位置aから基板Wの側辺部に実装されたTCP12のピッチPと同じ間隔になるよう駆動されたことが上記エンコーダ48と上記カウントセンサ47によって検出されると、上記係脱シリンダ37の駆動が解除されて上記水平可動体18に設けられたピニオン31がラック32係合し、2番目の水平可動体18及びこの2番目の水平可動体18に設けられた実装ツール20が位置決めされることになる。
【0071】
同様に、3番目、4番目及び5番目の水平可動体18が順次TCP12のピッチPと同じ間隔で順次位置決めされる。
【0072】
このようにして、5つの水平可動体18が基板Wの側辺部に仮圧着された5つのTCP12の上方に、これらTCP12のピッチPと同じピッチPで位置決めされると、各水平可動体18に設けられた加圧シリンダ22が同時に駆動される。それによって、基板Wの側辺部に仮圧着された5つのTCP12が同時に本圧着されることになる。
【0073】
すなわち、上記構成の実装装置によれば、基板Wの側辺部に仮圧着されたTCP12と対応する長さ寸法の複数の実装ツーツ20を、ベース部材16の長手方向に沿って移動可能に設けられた複数の水平移動体18にそれぞれ上下方向に駆動可能に設けるようにした。
【0074】
そして、各水平移動体18を上記ベース部材16の長手方向に対し、基板Wの側辺部に仮圧着されたTCP12と同じピッチPで位置決めして固定できるようにした。
【0075】
そのため、載置テーブル2に供給される基板Wのサイズが変更になり、その変更に応じて基板Wの側辺部に仮圧着されたTCP12のピッチがたとえばP1からPに変わった場合、そのピッチの変化に応じて複数の実装ツール20のピッチを変更することができる。
【0076】
そのため、基板Wの品種が変わったとき、その品種変更に伴う実装装置の実装ツール20の間隔設定を容易に、しかも迅速に行うことができる。
【0077】
つまり、基板Wの品種が変更になったとき、複数の実装ツール20の間隔を変更することができ、従来のように1本の長尺な実装ツールを基板Wの品種に応じた長さのものに交換するという交換作業をせずにすむから、基板Wの品種変更にともなう実装作業の段取りを上述したように容易かつ迅速に行うことができる。
【0078】
また、TCP12の間隔に対応する水平可動体18の位置決め制御を、カウントセンサ47によって検出されるラック32の凸部32bのカウント数と、エンコーダ48によって検出される駆動モータ45によるベルト41を駆動するときの回転角度、つまりベルト41の駆動距離に基いて行うようにした。
【0079】
そのため、上記水平可動体18の位置決め制御を、たとえば上記カウントセンサ47の検出信号と上記エンコーダ48の検出信号との平均値を求め、その平均値に基いて行うようにすれば、上記水平可動体18の位置決め制御を正確に行うことが可能となる。
【0080】
なお、上記カウントセンサ47と上記エンコーダ48のどちらか一方によって水平可動体18の移動距離を検出し、その検出に基いて位置決め制御するようにしてもよい。
【0081】
上記本圧着部14の実装ツール20が設けられた各水平可動体18には、それぞれ駆動部材29、ピニオン31、ばね28及び位置決めセンサ30を設けたから、複数の水平可動体18を1つの駆動モータ45によってX方向に駆動することができるとともに、X方向の所定の位置で位置決めすることができる。
【0082】
そのため、上記本圧着部14安価に、しかも比較的簡単な構造とすることが可能となる。
【0083】
上記一実施の形態では基板Wの側辺部に実装されるTCP12のピッチがP1からPに変わる場合について説明したが、ピッチ間隔が広くなるPからP1に変わる逆の場合は1番目の実装ツール20の位置決めの後、1番目から最も遠い5番目の実装ツール20を位置決めした後、4番目、3番目、2番目の順に行なうようにすれば、ピッチP1の間隔が大きい場合であっても、隣り合う水平可動体18を干渉させることなく、5つの実装ツール20を位置決めすることができる。
【0084】
また、水平可動体18を駆動するためにベース部材16に設けられたラック32に、上記水平可動体18に設けられた1つのピニオン31を係合させたが、水平可動体18には上記ラック32に係合する複数、たとえば2つのピニオン31を設けるようにしてもよい。このようにすれば、上記水平可動体18の駆動及び位置決め固定、とくに位置決め固定を確実に行なうことが可能となる。
【0085】
また、上述したように水平可動体18にピニオン31を設け、このピニオン31をベース部材16に設けられたラック32に係合させて上記水平可動体18を駆動して位置決めするようにしたため、隣り合う一対の水平可動体18が干渉しない範囲であれば、各水平可動体18を、X方向に対して制限を受けることなく位置決めすることが可能となる。
【0086】
そのため、上記構成によれば、サイズの異なる多数の品種の基板W毎に異なるTCP12のピッチに対応して実装ツール20を位置決めすることができ、また側辺部に実装されるTCP12の数が少ない基板Wの場合には、使用しない水平可動体18を上記基板WのTCP12を本圧着する場所から退避させておくことで、そのような品種の基板Wに対応することができる。
【0087】
上記実施の形態では第1の係合体としてのラック32と、第2の係合体としてのピニオン31を使用してベース部材16に対して水平可動体18を駆動及び位置決め固定するようにしたが、図7に示す第2の実施の形態及び図8に示す第3の実施の形態に示す他の固定手段によっても行なうことができる。
【0088】
すなわち、図7に示す第2の実施の形態は、水平可動体18の内面の受け部18aが設けられた部分の上側と下側にそれぞれクランク状の取付け部材61の一端が取り付け固定されている。各取付け部材61の他端にはそれぞれロッド63aの先端に押え部材62が設けられた駆動体としてのシリンダ63が軸線を垂直にして取付けられている。
【0089】
上記シリンダ63のロッド63aの先端に設けられた押え部材62は上記受け部18aが係合した水平ガイド17の上下面に対向し、この水平ガイド17の上下面にはそれぞれ上記シリンダ63が作動したときに上記押え部材62が圧接する当接部としての当接部材64が設けられている。上記押え部材62と当接部材64は摩擦係数の高い材料で作ることが好ましい。
【0090】
なお、このような構成の場合、第1の実施の形態に示されたラック32とピニオン31は不要となり、さらに駆動部材29は水平可動体18の水平部材24に下部スライダ26によって移動可能に設けずに固定して設け、上記駆動部材29に対して上記位置決め部材38を係脱させることができるようにすればよい。
【0091】
上述した第2の実施の形態によれば、ベルト41によって位置決め部材38が駆動され、この位置決め部材38が駆動部材29を介して上記水平可動体18を位置決めしたとき、シリンダ63が駆動されて押え部材62が当接部材64に圧接する。それによって、水平可動体18がベース部材16のX方向の所定の位置で固定されることになる。
【0092】
つまり、このような構成によれば、ラック32とピニオン31とを用いた第1の実施の形態のように、水平可動体18の位置決め精度がラック32の凸部32bのピッチ間隔によって制限されるということがないから、上記水平可動体18の位置決め精度を向上させることが可能となる。
【0093】
なお、この第2の実施の形態では、水平可動体18のX方向の位置は位置検出センサ30によって検出されて位置決めされることになる。
【0094】
上記押え部材61を水平ガイド17の上下面に設けられた当接部としての当接部材64に圧接させて水平可動体18をベース部材16に固定したが、上記押え部材61を水平ガイド17の上下面に直接圧接させるようにしてもよい。この場合、上記水平ガイド17が当接部となる。
【0095】
図8に示す第3の実施の形態は、図7に示す第2の実施の形態の固定手段の変形例であって、シリンダ63は水平可動体18の内面に、軸線を上記内面に垂直して設けられている。そして、上記シリンダ63が作動したとき、このロッド63aの先端に設けられた押え部材62はベース部材16の垂直部16aの外面に設けられた当接部としての当接部材64に圧接するようになっている。なお、上記押え部材62を上記ベース部材16の垂直部16aの外面に直接圧接させるようにしてもよく、その場合は上記ベース部材16の垂直部16aが当接部となる。
【0096】
このような構成であって、上記第2の実施の形態と同様、水平可動体18をベース部材16のX方向の所定の位置で固定することができる。
【符号の説明】
【0097】
1…搬送装置、12…TCP、14…本圧着部、17…水平ガイド、18…水平可動体、20…実装ツール、22…加圧シリンダ、30…位置検出センサ、31…ピニオン(第2の係合体)、32…ラック(第1の係合体)、38…位置決め部材、43…駆動プーリ、44…従動プーリ、45…駆動モータ、46…アクチュエータ、47…カウントセンサ、48…エンコーダ、51…制御装置、52…設定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置決めされた基板の側辺部に上記基板のサイズに応じたピッチ間隔で仮圧着された複数の電子部品を本圧着する実装装置であって、
上記基板の側辺部の上方に位置して上記基板の長手方向に沿うよう水平に配置されるベース部材と、
このベース部材の長手方向に沿って移動可能に設けられた複数の水平可動体と、
各水平可動体に垂直方向に沿って駆動可能に設けられ垂直方向下方に駆動されることで上記基板に仮圧着された上記電子部品を本圧着する実装ツールと、
上記各水平可動体に設けられた駆動部材と、
上記ベース部材に上記水平方向に沿って駆動可能及び上記各水平可動体の上記駆動部材に係脱可能に設けられ上記駆動部材と係合して水平方向に駆動されることで上記水平可動体に設けられた上記実装ツールを上記基板の側辺部に仮圧着された複数の電子部品のピッチ間隔に対応する間隔に位置決めする位置決め部材と
を具備したことを特徴とする電子部品の実装装置。
【請求項2】
上記ベース部材は垂直部を有し、上記水平可動体は上記ベース部材の垂直部の一側面側に設けられ、上記駆動部材は上記垂直部の他側面側にこの他側面に対して接離する方向に移動可能であるとともに付勢部材によって接近方向に付勢されて設けられていて、
上記垂直部の他側面には凹凸部を有する第1の係合体が上記ベース部材の長手方向に沿って設けられ、上記駆動部材が上記付勢部材によって上記接近方向に付勢されているときに上記第1の係合体に係脱する第2の係合体が上記駆動部材と一体的に設けられ、
上記第1の係合体に上記第2の係合体が上記付勢部材の付勢力によって係合することで、上記水平可動体が上記ベース部材に対して位置決め固定されることを特徴とする請求項1記載の電子部品の実装装置。
【請求項3】
上記駆動部材を介して上記位置決め部材によって上記水平可動部材に設けられた上記実装ツールが位置決めされたとき、上記水平可動部材を上記ベース部材に移動不能に固定する固定手段を有し、
この固定手段は上記水平可動部材に設けられた駆動源によって駆動される押え部材と、上記ベース部材に設けられ上記駆動源が作動したときに圧接して上記水平可動体を上記ベース部材に固定する当接部とによって構成されていることを特徴とする請求項1記載の電子部品の実装装置。
【請求項4】
上記位置決め部材は、上記ベース部材の長手方向に沿って無端走行するベルトに取付けられ、このベルトは駆動源によって駆動されるようになっていて、
上記駆動源には上記ベルトによる上記位置決め部材の駆動位置を検出するエンコーダが設けられ、このエンコーダの検出に基いて上記駆動部材を介して上記位置決め部材によって駆動される上記水平可動体の駆動が制御されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の電子部品の実装装置。
【請求項5】
上記第1の係合体の凸部を検出するセンサが上記水平可動体と一体的に設けられ、上記水平可動体が上記駆動部材を介して上記位置決め部材によって駆動されたときに上記センサによって上記位置決め部材の駆動位置を検出し、このセンサの検出に基いて上記水平可動体の駆動が制御されることを特徴とする請求項2又は請求項4記載の電子部品の実装装置。
【請求項6】
位置決めされた基板の側辺部に上記基板のサイズに応じたピッチ間隔で仮圧着された複数の電子部品を本圧着する実装方法であって、
基板の側辺部に仮圧着された複数の電子部品を複数の実装ツールによって本圧着するとともに、上記基板のサイズが変更になったとき、この基板の側辺部に仮圧着された上記電子部品のピッチ間隔に応じて複数の実装ツールの間隔を設定することを特徴とする電子部品の実装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−256751(P2012−256751A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129363(P2011−129363)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】