説明

電子部品の放熱構造

【目的】放熱板を大型化したりプリント配線板にベタに形成されるランドの面積を大きして放熱面積を確保することなく、電子部品の効果的な放熱を得ることを目的とする。
【構成】プリント配線板1のパワー・トランジスタ2の実装面1aに第1のベタランド3を形成するとともに、非実装面1bに第2のベタランド4を形成した。プリント配線板1に銅メッキ層6を有する複数個のスルーホール5を第1及び第2のベタランド3,4と接続して形成し、第1のベタランド3にパワー・トランジスタ2をリベット8によって載置固定した。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は半導体素子や抵抗等の電子部品から発生する熱を放散するための放熱構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、パワー・トランジスタ等の半導体素子や抵抗等の電子部品から発生する熱を放散するための放熱構造としては、電子部品にアルミニウム製等からなる放熱板を取付けた構造が広く用いられている。又、放熱板による放熱効果のみならず、図4,図5に示すように、電子部品を実装するプリント配線板を利用した放熱構造も提案されている。
【0003】
この図において、半導体素子(例えば、パワー・トランジスタ、FET等)20はアルミニウム製で一対の側壁21aを備えた略箱型の放熱板21に搭載されている。そして、半導体素子20は放熱板21がプリント配線板22にベタに形成されたランド(以下、ベタランドという)23に載置された状態でピン実装されている。このベタランド23はプリント配線板22の配線パターンと同じ銅箔で、放熱板21の接触部分の面積とほぼ同じ面積にベタに形成されている。なお、半導体素子20はプリント配線板22にリベット24によって固定されている。従って、上記のように構成された放熱構造おいては、半導体素子20から発生する熱が放熱板21の側壁21a及び放熱板21と接触しているベタランド23から放散される。
【0004】
【考案が解決しようとする課題】
ところが、上記した各電子部品の放熱構造においては、半導体素子が大きな電力を消費する場合には発生する熱量も多いので放熱板を大型化したり、ベタランド23の面積を大きくする必要がある。このため、半導体素子を実装する際に放熱板やベタランド23がプリント配線板に占める割合が多くなって、プリント配線板における他部品の実装面積が少なくなるという問題点がある。
【0005】
又、発生する熱量が少ない電子部品に対しても放熱板を設けているため、その放熱板の面積がプリント配線板の他部品の実装面積に影響するという問題点もある。
【0006】
本考案は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は放熱板を大型化したりプリント配線板にベタに形成されるランドの面積を大きして放熱面積を確保することなく、効果的な放熱を得ることができる電子部品の放熱構造を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため本考案は、プリント配線板に実装される電子部品の放熱構造であって、前記プリント配線板の電子部品の実装面にランドをベタに形成するとともに、プリント配線板に熱伝導性を有する複数個のスルーホールを前記ランドと接続して形成し、前記ランドに前記電子部品を載置した。又、前記ランドはプリント配線板の両面にベタに形成され、かつスルーホールを介して接続されていてもよい。
【0008】
【作用】
本考案によればプリント配線板の実装面にベタに形成されたランドに電子部品が載置された状態で熱が発生すると、その熱はランドから放散されるとともに、ランドを介して複数のスルーホールの内壁から放散される。従って、スルーホールの内壁全体の面積によって放熱(空気接触)面積が増して放熱量が増えるので、電子部品の発熱量が多くても放熱板を大型化したりランドの面積を大きくして放熱面積を確保することなく、効果的な放熱が得られる。この結果、電子部品とほぼ同じ狭い面積での放熱が可能となり、プリント配線板における他部品の実装面積が少なくなることがなくなる。又、発生する熱量が少ない電子部品に対して放熱板を設けなくても放熱効果が得られるので、放熱板の面積がプリント配線板の他部品の実装面積に影響することがなくなる。
【0009】
又、ランドをプリント配線板の両面にベタに形成し、かつスルーホールを介して接続したことによって、電子部品から発生した熱が一方のランド及びスルーホールを介して他方のランドから放散される。従って、放熱面積がさらに増して、より効果的な放熱が得られる。
【0010】
【実施例】
以下、本考案をパワー・トランジスタの放熱構造に具体化した一実施例を図1〜図3に従って説明する。
【0011】
図1〜図3に示すように、プリント配線板1の電子部品としてのパワー・トランジスタ2を実装する面1aには、第1のランド3がベタに形成されている。又、プリント配線板1の非実装面(半田面)1bの第1のランド(以下、第1のベタランドという)3と対向する位置には、第2のランド(以下、第2のベタランドという)4が同様にベタに形成されている。第1及び第2のベタランド3,4は銅箔よりなり、パワー・トランジスタ2の底面の面積よりも若干大きな面積を有する矩形状に形成されている。
【0012】
前記第1及び第2のベタランド3,4の間のプリント配線板1には、複数個(この場合、40個)のスルーホール5が貫通して形成されており、両ベタランド3,4はスルーホール5の銅メッキ層6を介して電気的に接続されている。各スルーホールの内径は1mmφとなっており、その各スルーホール5の内壁5aの合計面積は、第1及び第2のベタランド3,4の一枚の面積とほぼ同じとなっている。
【0013】
前記パワー・トランジスタ2のリード2aは図2に示すプリント配線板1の部品実装孔7に挿入された状態で半田付けされている。又、パワー・トランジスタ2はリード2aが屈曲し、前記第1のベタランド3と接触した状態で載置されている。そして、パワー・トランジスタ2はプリント配線板1のリベット挿通孔(図示せず)に挿通されたリベット8によって、そのプリント配線板1にかしめ着されている。
【0014】
上記のように構成されたパワー・トランジスタ2の放熱構造では、トランジスタ2から熱が発生すると、その熱は第1のベタランド3から放散されるとともに、第1のベタランド3を介して複数のスルーホール5の内壁5aから放散される。更に、熱は第1のベタランド3及びスルーホール5の銅メッキ層6を介して第2のベタランド4から放散される。又、熱はリベット8を介して第2のベタランド4からも一部放散される。
【0015】
上記した各スルーホール5の内壁5a全体の面積によって放熱(空気接触)面積が第1のベタランド3のみの場合よりも増し、第2のベタランド4を設けたことによって、さらに放熱面積が増す。従って、放熱量が増してパワー・トランジスタ2の発熱量が多くても、放熱板を大型化したりベタランドの面積を大きくして放熱面積を確保することなく、効果的な放熱を得ることができる。この結果、パワー・トランジスタ2とほぼ同じ狭い面積での放熱が可能となり、プリント配線板1における他部品の実装面積が少なくなることがなくなる。又、発生する熱量が少ない電子部品に対して放熱板を設けなくても放熱効果が得られるので、放熱板の面積がプリント配線板の他部品の実装面積に影響することがなくなる。
【0016】
更に、第1及び第2のベタランド3,4がスルーホール5を介して電気的に接続されているので、両ベタランド3,4を導体回路として利用することができる。
【0017】
なお、本考案は上記実施例のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で例えば、以下のようにしてもよい。
(1)スルーホール5の数及び内径を第1及び第2のベタランド3,4の大きさに応じて変更してもよい。
【0018】
(2)第2のベタランド4を形成せずに、第1のベタランド3のみをプリント配線板1の実装面1aに形成してもよい。
(3)この放熱構造をパワー・トランジスタ2以外の他のFET等の半導体素子や抵抗等の電子部品に適用してもよい。
【0019】
(4)パワー・トランジスタ2に放熱板を設けてプリント配線板1に実装してもよい。このような構成にすれば、放熱効果を更に向上することができる。
(5)リベット8の代わりに金属製や樹脂製のネジによってパワー・トランジスタ2をプリント配線板1に固定してもよい。又、リベット8やネジによる固定でなく、エポキシ樹脂等からなる接着剤を第1のベタランド3に塗布して、パワー・トランジスタ2を接着するようにしてもよい。この場合、放熱効果を得るために、接着剤を薄く塗布するのが好ましい。
【0020】
(6)パワー・トランジスタ2を第1のベタランド3に載置する際に、両者の間に、熱伝導性の良いシリコングリスやシリコンゴム等の絶縁材を介在させてもよい。このようにすれば、放熱効果を維持しながらパワー・トランジスタ2と第1のベタランド3との絶縁を図る場合に好適となる。
【0021】
(7)スルーホール5の内壁5aに別のメッキ層を形成してもよい。なお、スルーホール5を半田等によって封止して放熱させるようにしてもよいが、内壁5aからの放熱効果が得られなくなるので、あまり好ましくない。
【0022】
【考案の効果】
以上詳述したように本考案によれば、放熱板を大型化したりプリント配線板にベタに形成されるランドの面積を大きして放熱面積を確保することなく、電子部品の効果的な放熱を得ることができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の実施例のパワー・トランジスタの放熱構造を示す概略側断面図である。
【図2】同じく、パワー・トランジスタの放熱構造を示す概略平面図である。
【図3】同じく、パワー・トランジスタの放熱構造を示す概略底面図である。
【図4】従来例の半導体素子の放熱構造を示す一部切欠き概略側断面図である。
【図5】同じく、半導体素子の放熱構造を示す概略平面図である。
【符号の説明】
1…プリント配線板、1a…実装面、2…電子部品としてのパワー・トランジスタ、3…第1のベタランド、4…第2のベタランド、5…スルーホール。

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 プリント配線板に実装される電子部品の放熱構造であって、前記プリント配線板の電子部品の実装面にランドをベタに形成するとともに、プリント配線板に熱伝導性を有する複数個のスルーホールを前記ランドと接続して形成し、前記ランドに前記電子部品を載置したことを特徴とする電子部品の放熱構造。
【請求項2】 前記ランドはプリント配線板の両面にベタに形成され、かつ前記スルーホールを介して接続されていることを特徴とする請求項1記載の電子部品の放熱構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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