説明

電子部品供給装置

【課題】テープリール交換作業時におけるテープリールの不用意な脱落を防止することができる電子部品供給装置を提供する。
【解決手段】リールホルダ1を水平移動可能に構成し、第1の引き出し状態ではリール保持部材7を動作せず、手前のテープリール10Lのみを交換可能とする。そして、第1の引き出し状態から第2の引き出し状態への移行に伴ってリール保持部材7を回動し、第2の引き出し状態では、手前のテープリール10Lをリールサポート軸3Lから抜脱不可に保持して奥のテープリール10Rのみを交換可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品実装装置に取り付けられ、当該電子部品実装装置に電子部品を供給する電子部品供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品実装装置に電子部品を供給する電子部品供給装置(テープフィーダ)は、近年、外部からのエアシリンダを駆動源とするメカニカル構造のものから、テープフィーダ本体内に電動モータを内蔵した電動テープフィーダへ変わりつつある。
電動テープフィーダとしては、1台の電動テープフィーダ内に8mmの電子部品収容テープが2本セットできるもの(ダブルテープフィーダ)があり、その最も小型のもので本体幅が17mm以下のものがある。
【0003】
ダブルテープフィーダをフィーダバンクにセットする場合、ダブルテープフィーダの本体幅が2本のテープリールの幅より狭いと、2本のテープリールをテープフィーダの幅方向に並列に並べることができない。
これを解決するために、例えば、特許文献1に記載の技術がある。この技術は、ダブルテープフィーダの本体幅方向内に2本のテープリールが収まるように、2本のテープリールを縦列方向に並べるものである。ここでは、テープリールを支持する方法として、テープリール保持部にリールの直径より狭い間隔で離間した2箇所に支持部材を設け、その2箇所の支持部材の上にテープリール外周部を載置する方法を採用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−21693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来装置にあっては、2本のテープリールを縦列方向に並べることでコンパクトに収納できるメリットはあるものの、テープリールを支持部材の上に載置する構成であり、テープリールの上方への規制がないため、テープリールに巻かれた電子部品収容テープが終端部に達したときに、テープリールが電子部品収容テープにより引っ張られ、空のテープリールが2箇所の支持部材から離れ、最悪の場合、フィーダバンクの外に転がってしまうという問題がある。
【0006】
この空のテープリールが抜け落ちてしまう問題点を解決する方法として、テープリール保持部にテープリールの中心に嵌る支持軸を設けることが考えられる。ところが、例えば17mm幅の電動ダブルフィーダのように、狭ピッチで電動テープフィーダが並ぶ場合、フィーダバンク内でテープリール保持部を固定したまま、通常11mm前後の幅を持つテープリールをテープリール保持部に設けた支持軸から抜き差しすることは不可能である。そのため、テープリール保持部をフィーダバンク外に取り外して、テープリールのセットアップもしくは交換作業をする必要がある。
【0007】
しかしながら、テープリール保持部をフィーダバンク外に取り外した際、縦列配置された2本のテープリールが同時に交換可能な状態となる。そのため、一方のテープリールの交換作業中に作業者が他方のテープリールに触れると、当該他方のテープリールがテープリール保持部から脱落するおそれがある。
そこで、本発明は、テープリール交換作業時におけるテープリールの不用意な脱落を防止することができる電子部品供給装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に係る電子部品供給装置は、電子部品が収容された電子部品収容テープをテープリールから順次繰り出して、前記電子部品を電子部品実装装置の吸着ノズルによる部品取出し位置へ順次供給する電子部品供給装置であって、前記電子部品実装装置の取付け台に並列配置して連結されると共に、水平移動することで前記取付け台に対して連結・分離可能に構成され、分離方向側と連結方向側とに縦列配置された第1のテープリールと第2のテープリールとを保持する複数のテープリールホルダを備え、前記テープリールホルダは、前記第1のテープリール及び第2のテープリールを保持するリール保持面を有するリールブラケットと、前記リール保持面に突設され、前記第1のテープリール及び前記第2のテープリールの巻芯内にそれぞれ挿入することで、前記第1のテープリール及び前記第2のテープリールをそれぞれ回転自在に支持する第1のリールサポート軸及び第2のリールサポート軸と、前記リール保持面に対向配置して、前記リールブラケットに回転自在に支持されるリール保持部材と、をそれぞれ備え、前記リール保持部材は、前記第1のテープリールを隣接配置されたテープリールホルダと干渉せずに前記第1のリールサポート軸から抜脱可能な位置まで自テープリールホルダを前記分離方向に引き出した第1の引き出し状態から、前記第2のテープリールを隣接配置されたテープリールホルダと干渉せずに前記第2のリールサポート軸から抜脱可能な位置まで自テープリールホルダを前記分離方向に引き出した第2の引き出し状態への移行に伴って回動することで、前記第1のテープリールを前記第1のリールサポート軸から抜脱可能な状態から抜脱不可な状態へ保持することを特徴としている。
【0009】
このように、縦列配置された2本のテープリールを保持するテープリールホルダを水平移動可能に構成し、取付け台に対して連結・分離可能とする。したがって、テープリールの交換作業を容易に行うことができる。また、第1の引き出し位置では第1のテープリールのみを交換可能とし、第2の引き出し位置では、リール保持部材によって第1のテープリールをリールサポート軸から抜脱不可に保持することで、第2のテープリールのみを交換可能とすることができる。これにより、奥に配置されたテープリール(第2のテープリール)を交換しているときに、作業者が誤って手前に配置されたテープリール(第1のテープリール)に触れてしまったとしても、当該テープリールがリールサポート軸から抜けテープリールホルダから脱落してしまうのを防止することができる。
【0010】
また、請求項2に係る電子部品供給装置は、請求項1に係る発明において、前記リール保持部材は、前記リール保持面に対向する面とは反対側の面の前記連結方向側端部に突設され、所定のカム溝に係合する係合部材を備え、前記カム溝は、前記テープリールホルダの前記第1の引き出し状態から前記第2の引き出し状態への移行に伴って、前記係合部材が当該カム溝を摺動することで、前記リール保持部材が回動するよう円弧状に形成されていることを特徴としている。
このように、リール保持部材の動作をカム溝とコロ(係合部材)とで実現するので、比較的簡易な構成でリール保持部材を回動させることができる。
【0011】
さらに、請求項3に係る電子部品供給装置は、請求項2に係る発明において、前記カム溝は、前記リールブラケットの前記リール保持面とは反対側の面に形成され、前記係合部材は、隣接配置された前記テープリールホルダが有する前記リールブラケットに形成された前記カム溝に係合するように構成されていることを特徴としている。
このように、リールブラケットにカム溝を形成するので、別途カム溝を形成した部材を設置する必要がなく、その分の部品点数を削減することができ、省スペース化を実現することができる。
【0012】
また、請求項4に係る電子部品供給装置は、請求項2又は3に係る発明において、前記リール保持部材を、前記テープリールホルダの前記第1の引き出し状態から前記第2の引き出し状態への移行に伴って回動する方向とは反対方向に付勢する付勢部材と、前記第2の引き出し状態で、前記リール保持部材の動作を規制する規制手段と、を備えることを特徴としている。
【0013】
これにより、円弧状に形成されたカム溝に係合部材が係合している第1の引き出し状態から第2の引き出し状態への移行中に、作業者がテープリールホルダから手を離して、テープリールホルダに付加している分離方向への引き出し力を解除すると、付勢部材の付勢力によりテープリールホルダを第1の引き出し状態へ戻すことができる。したがって、テープリールホルダを第2の引き出し状態で固定するためには、作業者は意識的に第2の引き出し状態まで引き出す動作を行う必要がある。そのため、作業者は第1及び第2のテープリールのうちどちらの交換作業を行っているのかを認識しながら確実に作業を行うことができ、人為的なセットミスを抑制することができる。
【0014】
さらにまた、請求項5に係る電子部品供給装置は、請求項4に係る発明において、前記規制手段は、前記カム溝に一体形成され、前記第2の引き出し状態で前記付勢部材の付勢方向に沿って前記係合部材が嵌合することで、当該係合部材の摺動を規制する嵌合溝であることを特徴としている。
これにより、比較的簡易な構成で規制手段を実現することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、テープリールホルダを水平移動可能に構成し、第1の引き出し位置では手前のテープリールのみを交換可能とし、第2の引き出し位置では、手前のテープリールの脱落を防止しつつ、奥のテープリールのみを交換可能とすることができる。したがって、奥のテープリールの交換作業中に、作業者が手前のテープリールに誤って触れてしまったとしても、手前のテープリールがテープリールホルダから脱落することはない。このように、テープリール交換作業時におけるテープリールの不用意な脱落を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明における電子部品供給装置の概略構成を示す側面図である。
【図2】リールホルダ1の具体的構成を示す分解斜視図である。
【図3】カムガイドベース8の表面を示す斜視図である。
【図4】カムガイドベース8の裏面を示す斜視図である。
【図5】テープリール10L交換時の状態を示す図である。
【図6】テープリール10R交換時の状態を示す図である。
【図7】リール保持部材7の動作を説明する図(通常状態)である。
【図8】リール保持部材7の動作を説明する図(第1の引き出し状態)である。
【図9】リール保持部材7の動作を説明する図(押戻し状態)ある。
【図10】リール保持部材7の動作を説明する図(第2の引き出し状態)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(第1の実施形態)
(構成)
図1は、本発明における電子部品供給装置の概略構成を示す側面図である。
図中、符号20は電子部品供給装置である。この電子部品供給装置20は、一括交換台車31を用いて、図示しない電子部品実装装置にテープフィーダ32を装着するものである。一括交換台車31は、キャスター31aによって床面上を自在に水平移動することができるようになっており、この一括交換台車31には、複数のテープフィーダ32を着脱可能に保持するフィーダバンク(取付け台)33が固定されている。これら複数のテープフィーダ32は、フィーダバンク33に図1の紙面垂直方向に並列状態で装着される。
【0018】
本実施形態では、テープフィーダ32として、1台のテープフィーダ内に、例えば8mmの電子部品収容テープを2本セット可能なダブルテープフィーダを用いる。
また、電子部品供給装置20は、ダブルテープフィーダ用のテープリールホルダ1(以下、単にリールホルダ1と称す)を複数(テープフィーダ32に対応した数だけ)備える。これら複数のリールホルダ1は、フィーダバンク33に図1の紙面垂直方向に並列状態で装着される。なお、図1において、括弧内の符号は、ある1つのリールホルダ1に対して左側(図1の紙面手前方向)若しくは右側(図1の紙面奥方向)に隣接配置されるリールホルダを意味し、符号101は左隣のリールホルダ、符号201は右隣のリールホルダを意味している。
【0019】
また、リールホルダ1は、テープ本体とカバーテープとからなって一定間隔おきに多数の部品を収容した電子部品収容テープTを、筒状の巻芯に巻回した状態で保持する2本のテープリール(第1のテープリール10L及び第2のテープリール10R)を保持する。さらに、このリールホルダ1は、ローラ5によって前後方向(図1の左右方向)に水平移動可能となっており、フィーダバンク33に固定されたマグネットキャッチに被吸着部11が吸着されることで、フィーダバンク33に連結固定される。
【0020】
すなわち、リールホルダ1は、水平移動することでフィーダバンク33に対して連結・分離可能に構成され、分離方向側(後側)と連結方向側(前側)とに縦列配置されたテープリール10Lとテープリール10Rとを保持するようになっている。
この電子部品収容テープTがテープリール10L,10Rから導出されてテープフィーダ32前方のピックアップ位置(部品取出し位置)Pに導かれると、ピックアップ位置Pにおいて、カバーテープがテープ本体から剥がされて部品の取り出しが可能な状態となる。すると、電子部品実装装置の部品吸着ノズル(不図示)によって部品の吸着が行われる。
【0021】
部品が吸着された後は、所定の繰り出し機構により、電子部品収容テープTが一定量ずつ繰り出される。ここでは、特に図示しないが、繰り出し機構としてスプロケット等の回転体を用いる。具体的には、テープフィーダ32におけるピックアップ位置Pの下方に、テープに係合するスプロケットを配置し、電動モータによりスプロケットを回転させて、電子部品収容テープTを一定量ずつ繰り出す。
なお、本明細書実施例中においては、図1の左右方向をリールホルダ1の前後方向とし、図1の左方向を前方向、右方向を後方向とする。また、図1の紙面垂直方向をリールホルダ1の左右方向とし、図1の紙面手前方向を左方向とし、紙面奥方向を右方向とする。
【0022】
次に、リールホルダ1の構成について詳細に説明する。
図2は、リールホルダ1の具体的構成を示す分解斜視図である。なお、図2において、括弧内の符号は、リールホルダ101の構成部品若しくはリールホルダ201の構成部品を意味している。すなわち、リールホルダ101の構成部品については、リールホルダ1の構成部品に対応させて100番台の符号を付し、リールホルダ201の構成部品については、リールホルダ1の構成部品に対応させて200番台の符号を付している。
【0023】
リールホルダ1は、2本のテープリール10L,10Rを保持可能なリールブラケット2を備える。リールブラケット2の左側面はリール保持面2fとなっており、このリール保持面2fに2つのリールサポート軸(第1のリールサポート軸3L及び第2のリールサポート軸3R)が突設されている。そして、リールサポート軸3L,3Rがテープリール10L,10Rの中心に設けられた巻芯巻芯10La,10Raに挿入されることで、リールブラケット2がテープリール10L,10Rを回動自在に保持するようになっている。
【0024】
また、リールブラケット2には、カムガイドベース8が取り付けられる貫通穴2aと、リール保持部材7に設けられた回動軸7aが挿通される貫通穴2bとが形成されている。さらに、リールブラケット2は、その下方に、左方向に折り曲げ形成された下面部2cを備え、その前方に、左方向に折り曲げ形成された前面部2dを備える。前面部2dの下方には切り欠き部2eが形成されている。
【0025】
リールブラケット2の下面部2cの下面には、下方が開口したコの字状のローラブラケット4の上面が固定される。ローラブラケット4は、リールホルダ1を前後方向に水平移動可能とするための複数のローラ5を保持する。また、前面部2dの前面側には、フィーダバンク33に固定されたマグネットキャッチに吸着する被吸着部11が設けられている。
リールブラケット2の右側面下方には、フィーダバンク33への装着時において右隣に配置されるリールホルダ1の浮き上がりを防止するためのガイドバー6が固定される。ガイドバー6は、断面が四角形状の棒状材であり、当該断面の大きさは切り欠き部2eより小さく形成されている。
【0026】
これにより、リールホルダ1を前後方向に移動してフィーダバンク33へ装着する際には、ガイドバー6が右隣に配置されたリールホルダ201のリールブラケット202に形成された切り欠き部202eに嵌合することで装着がガイドされる。また、リールホルダ1をフィーダバンク33へ装着し固定した状態では、ガイドバー6の下面が右隣に配置されたリールホルダ201のリールブラケット202に形成された下面部202cの上面と当接することで、右隣に配置されたリールホルダ1の浮き上がりが防止される。
【0027】
また、リールホルダ1は、リール保持面2fに対向配置されてリールブラケット2に回転自在に支持されるリール保持部材7と、右隣に配置されるリールホルダ201のリール保持部材207の動作を規制するカムガイドベース8と、リール保持部材7を左側面視において時計回り方向に付勢するねじりばね(付勢部材)9とをさらに備える。
リール保持部材7は、くの字状に形成されており、一方の面(ここでは右側面)の屈曲部分には回動軸7aが固定されている。リール保持部材7は、その一端がリール保持部7bとなっており、回動軸7aを中心に回動することで、テープリール10Lをリールサポート軸3Lから抜脱不可に保持することができるようになっている。また、リール保持部材7の他方の面(ここでは左側面)において、リール保持部7bとは反対側の端部に円筒コロ(係合部材)7cが固定されている。さらに、リール保持部材7には、回動軸8aの近傍に、ねじりばね9の端部9aを固定するためのばね掛け部7dが形成されている。
【0028】
図3及び図4は、カムガイドベース8の構成を示す斜視図である。ここで、図3はカムガイドベース8の表面(左側面)を示す斜視図であり、図4はカムガイドベース8の裏面(右側面)を示す斜視図である。なお、図3及び図4において、括弧内の符号は、リールホルダ101の構成部品を意味しており、リールホルダ1の構成部品に対応させて100番台の符号を付している。
【0029】
カムガイドベース8は、前方側に形成された水平部分と後方側に形成された円弧部分とを含んで構成されている。
カムガイドベース8には、図3に示すように、水平部分の後端上部(円弧部分の前端上部)に嵌合穴8aが形成されている。この嵌合穴8aには、リール保持部材7に固定された回動軸7aが回動自在に嵌合する。また、カムガイドベース8の表面において、嵌合穴8aの外周部には、リール保持部材7を左側面視において時計回り方向に付勢するためのねじりばね9の収納溝8bが形成されている。さらに、水平部分の前端上部にはリール保持部材7の回転止めストッパ8cが設けてあり、その下部には、リール保持部材7の円筒コロ7cが回動軸7aを中心に後述するように左側に隣接するリールホルダ101と自リールホルダ1との間で円弧運動するときに、円筒コロ7cが自リールホルダ1側に倒れるのを防止するための倒れ防止用の摺動面8dが延在している。
【0030】
カムガイドベース8の裏面には、図4に示すように、水平部分と円弧部分の形状に沿って、右側に隣接するリールホルダ201に支持されたリール保持部材207に設けられた円筒コロ207cが摺動するカム溝8eが形成されている。カム溝8eの後方側端部は、上方に膨らんでロック部(規制手段(嵌合溝))8fを形成している。このロック部8fには円筒コロ207cが嵌合可能となっており、円筒コロ207cがロック部8fに嵌合することでリール保持部材207の動きが規制されるようになっている。また、カム溝8eの前方側端部は開口しておりカム溝開放部8gを形成している。なお、符号8hは、カム溝8eにおける水平部分と円弧部分との境界を示している。
【0031】
リールホルダ1の組立時には、先ず、リールブラケット2の下面部2cにローラ5が取り付けられたローラブラケット4を固定し、リールブラケット2の右側面下方にガイドバー6を固定する。次に、リールブラケット2の左側面にカムガイドベース8を取り付ける。このとき、リールブラケット2の貫通穴2aとカムガイドベース8のカム溝8e、リールブラケット2の貫通穴2bとカムガイドベース8の嵌合穴8aとがそれぞれ一致するように配置する。
【0032】
次に、カムガイドベース8の収納溝8bに、左側面視において時計方向に付勢力を発生するようにねじりばね9を装着し、その左側からリール保持部材7を取り付ける。リール保持部材7は、回動軸7aをカムガイドベース8の嵌合穴8aを介してリールブラケット2の貫通穴2bに挿通した状態で取り付ける。このとき、ねじりばね9の端部9aをカムガイドベース8のばね掛け部7dに固定する。これにより、リール保持部材7は、ねじりばね9によって左側面視において時計回り方向に付勢される。このとき、リール保持部材7は、カムガイドベース8の回転止めストッパ8cに当接した状態で停止する。
【0033】
そして、この状態で、テープリール10L,10Rをリールブラケット2に装着する。すなわち、テープリール10Lの巻芯10Laにリールサポート軸3Lを挿入すると共に、テープリール10Rの巻芯10Raにリールサポート軸3Rを挿入する。これにより、テープリール10L,10Rは、上下及び前後の動きが規制された状態でリールブラケット2に支持される。このとき、リール保持部材7のリール保持部7bがテープリール10Lの外周部を僅かにオーバーラップした状態となるように、リール保持部材7の形状やリールサポート軸3Lの設置位置等が設定されているものとする。
【0034】
複数のリールホルダ1をフィーダバンク33に装着する際には、リールホルダ1を右端から順に装着していく。このとき、リールホルダ1をローラ5によって前方向(連結方向)にスライドさせ、フィーダバンク33に固定されたマグネットキャッチとリールホルダ1に設置された被吸着部11とを接続する。このように、リールホルダ1をフィーダバンク33に固定した状態(通常状態)では、右隣のリールホルダ201が有する円筒コロ207cが、自リールホルダ1が有するカム溝8eのカム溝開放部8gに係合した状態となる。そして、自リールホルダ1が有する円筒コロ7cは、左隣のリールホルダ101がフィーダバンク33に固定されたとき、当該左隣のリールホルダ101が有するカム溝108eのカム溝開放部108gに係合することになる。なお、フィーダバンク33の左端には、左端のリールホルダ1が有する円筒コロ7cと係合するためのカム溝8eのみが形成された部材を装着するものとする。
【0035】
(動作)
次に、本実施形態の動作について説明する。
電子部品供給装置20を電子部品実装装置に装着し、電子部品実装装置において電子部品の供給作動がなされると、テープフィーダ32は電動モータを駆動制御して電子部品収容テープTをテープリール10L,10Rからピックアップ位置Pへ向けて送り出す。このとき、ピックアップ位置Pの手前でカバーテープがテープ本体から引き剥がされ、ピックアップ位置Pで電子部品実装装置の部品吸着ノズルによって電子部品が吸着される。吸着された電子部品は、電子部品実装装置に設置された回路基板上の所定位置に装着される。このように、テープリール10L,10Rから電子部品収容テープTを順次繰り出して電子部品実装装置へ電子部品を供給し、部品搭載が行われる。
【0036】
その後、テープリール10L,10Rが空になると、作業者はテープリール10L,10Rの交換作業を行う。以下、テープリール10L,10Rの交換方法について、図5及び図6を参照しながら説明する。なお、図5及び図6において、符号101は、リールホルダ1の左隣に配置されるリールホルダであり、リールホルダ101の構成部品についてはリールホルダ1の構成部品に対応させて100番台の符号を付すものとする。リールホルダ101の形状及び機能は、リールホルダ1と同一である。
【0037】
先ず、リールホルダ1をフィーダバンク33に対して押し込み、フィーダバンク33に固定されたマグネットキャッチからリールホルダ1を開放し、図5に示すように、リールホルダ1を手前(矢印方向)に引き出す。この第1の引き出し状態では、テープリール10Lは左隣のリールブラケット102やテープリール110Lより手前に出てくるので、テープリール10Lをリールサポート軸3Lから抜脱する際に左隣のリールホルダ101と干渉せず、交換が可能となる。また、このとき、リール保持部7bはテープリール10Lの外周部を僅かにオーバーラップしているだけなので、テープリール10Lを容易に交換することができる。
【0038】
テープリール10Rを交換する際には、図5に示す第1の引き出し状態から、さらに図6に示すようにリールホルダ1を手前(矢印方向)に引き出す。すると、前述と同様にテープリール10Rは左隣のリールブラケット102やテープリール110Lより手前に出てくるので、テープリール10Rをリールサポート軸3Rから抜脱する際に左隣のリールホルダ101と干渉せず、交換が可能となる。
【0039】
また、このとき、図5に示す第1の引き出し状態から図6に示す第2の引き出し状態への移行に伴って、リール保持部材7に形成されたリール保持部7bが回動し、テープリール10Lを、リールサポート軸3Lからの抜脱ができない程度(例えば、テープリール10Lの1/4程度)まで覆う。これにより、テープリール10Rの交換作業中に作業者がテープリール10Lに誤って触れてしまったとしても、テープリール10Lがリールサポート軸3Lから脱落することはない。
このように、リールホルダ1を前後方向に水平移動可能に構成し、第1の引き出し状態では手前のテープリール10Lのみを交換可能とし、第2の引き出し状態ではでは、手前のテープリール10Lの脱落を防止しつつ、奥のテープリール10Rのみを交換可能とする。
【0040】
次に、テープリール10Rの交換時におけるリール保持部材7の動作について、図7〜図10を参照しながら詳しく説明する。なお、図7〜図10では、リール保持部材7に固定された円筒コロ7cの動きを解り易くするために、リールホルダ101においては、リールブラケット102に取り付けられるリール保持部材107、カムガイドベース108、ねじりばね109を取り外した状態を示している。円筒コロ7cは、カムガイドベース108の裏面に形成されたカム溝108eに沿って摺動するものである。
【0041】
図7に示すように、電子部品を電子部品実装装置へ供給する通常状態では、リールホルダ1はフィーダバンク33に固定されており、側面視において左隣のリールホルダ101と重なった状態となっている。このとき、リール保持部材7に固定された円筒コロ7cは、カムガイドベース108の裏面に形成されたカム溝108e(図4)のカム溝開放部108g(図4)に位置している。
【0042】
この通常状態から図5に示す第1の引き出し状態となるまでリールホルダ1を引き出すと、図8に示すように、円筒コロ7cはカム溝108eに形成された水平部分と円弧部分との境界108h付近に移動する。すなわち、図7に示す通常状態から図8に示す第1の引き出し状態へ遷移する間、円筒コロ7cはカム溝108eの水平部分を摺動するため、リール保持部材7が回動することはない。したがって、リール保持部材7に形成されたリール保持部7bは、テープリール10Lの外周部を僅かにオーバーラップしたままの状態を維持する。
【0043】
その後、さらにリールホルダ1を手前に引き出すと、図9に示すように、円筒コロ7cはカム溝108eの円弧部分に差し掛かる。すると、リール保持部材7は左側面視において反時計回りに回動し、リール保持部7bとテープリール10Lとのオーバーラップ量が図7に示す通常状態と比較して増える。これにより、テープリール10Lがリールサポート軸3Lから脱落しないように、リール保持部7bがテープリール10Lを保持する。
【0044】
このとき、リール保持部材7はねじりばね9によって時計回り方向に常時付勢されている。そのため、円筒コロ7cがカム溝108eの円弧部分の途中に位置した状態で、作業者がリールホルダ1を手前に引くのを止めて手を離すと、ねじりばね9の付勢力によりリール保持部材7が時計回り方向へ回動し、これに伴ってリールホルダ1は図8(図5)に示す位置に自動的に戻る。
【0045】
一方、リールホルダ1を図9に示す状態からさらに手前に引くと、図10に示すように、円筒コロ7cはカムガイドベース108の裏面に形成されたロック部108f(図4)の位置に移動する。このとき、ねじりばね9の付勢力により、円筒コロ8cはロック部108fと嵌合する。そのため、この第2の引き出し状態では、作業者がリールホルダ1から手を離しても、図8(図5)に示す位置に戻ることはない。
【0046】
したがって、この図10に示す状態でテープリール10Rの交換作業が可能となる。このように、テープリール10Rの交換作業を行う場合には、リールホルダ1を図10に示す状態で固定するべく、作業者は意識的にリールホルダ1を引き出す動作を行う必要がある。そのため、作業者はテープリール10L,10Rのうちどちらの交換を行っているかを認識しながら作業を行うことができ、人為的なセットミスを抑制することができる。
【0047】
また、上述したように、図9に示す状態で作業者がリールホルダ1から手を離したとき、リールホルダ1は図8(図5)に示す位置に自動的に戻る。そのため、作業者にテープリール10Rの交換意思が無いにもかかわらず、テープリール10Rの交換作業が可能な状態となってしまうのを確実に防止することができる。したがって、テープリール10Rがリールホルダ1から誤って脱落する事態を回避することができる。
【0048】
さらに、図8(図5)に示す第1の引き出し状態では、上述したようにリール保持部7bがテープリール10Lの外周部を僅かにオーバーラップした状態とするので、テープリール10Lの交換作業の妨げとならない程度にテープリール10Lを保持することができる。したがって、仮に作業者がリールホルダ1を第1の引き出し状態としたまま、テープリール10Lの交換作業を行わずに別の作業を行ってしまった場合等でも、テープリール10Lの不用意な脱落を回避することができる。
なお、テープリール10Rの交換後は、上記手順とは逆に、ロック部108fに嵌っている円筒コロ7cを解除し、リールホルダ1を前方へ押し込み、フィーダバンク33のマグネットキャッチ11によってリールホルダ1を固定する。
また、リールホルダ1の右隣のリールホルダ201に取り付けられたリール保持部材207の円筒コロ207cは、図7に示す通常状態ではカム溝開放部8gに収納されており、図8に示すリールホルダ1の第1の引き出し状態では、カム溝開放部8gが後方へ移動することで、当該円筒コロ207cはカム溝開放部8gから外れることになる。
【0049】
(効果)
このように、上記実施形態では、テープリール中心の巻芯にリールサポート軸を挿通することでテープリールを保持するので、テープリールの左右方向以外の動きを規制することができる。そのため、部品搭載時に電子部品収容テープが終端部に達したとき、電子部品収容テープによって空のテープリールが引っ張られても、空のテープリールがリールホルダから脱落するのを防止することができる。
【0050】
また、リールホルダを前後方向に水平移動可能に構成し、第1の引き出し状態では手前のテープリールのみを交換可能とし、第2の引き出し状態では手前のテープリールの脱落を防止しつつ、奥のテープリールのみを交換可能とする。このように、リールホルダを引き出し可能とするので、テープリールの交換作業を容易に行うことができる。また、奥のテープリールの交換作業中に、作業者が誤って手前のテープリールに触れてしまったとしても、リールサポート軸からテープリールが脱落することがない。
【0051】
ここでは、第1の引き出し状態から第2の引き出し状態への移行に伴ってリール保持部材を回動させることにより、手前のテープリールをリールサポート軸から抜脱可能な状態から抜脱不可な状態へと保持するものとし、このリール保持部の動作を円弧状のカム溝と当該カム溝を摺動する円筒コロとで実現する。したがって、比較的簡易な構成で、上記抜脱可能状態と抜脱不可状態との切り替えを行うことができる。
【0052】
また、上記円筒コロは、隣接配置されたリールホルダに設けられたカム溝と係合するように構成する。したがって、別途カム溝が形成された固定部材を各リールホルダに設けられた円筒コロに対応させて設ける必要がない。そのため、その分の部品点数を削減することができると共に、省スペース化を実現することができる。
さらに、第1の引き出し状態から第2の引き出し状態への移行中に、作業者がリールホルダから手を離すと、リールホルダが第1の引き出し状態に戻る構成としている。そのため、奥のテープリールの交換作業を行う場合には、作業者は意識的に第2の引き出し状態となるまでリールホルダを引き出す必要がある。したがって、作業者は左右どちらのテープリールの交換作業を行っているかを適切に認識しながら作業を行うことができる。そのため、セットアップ時にダブルテープフィーダの右レーン、左レーンへの人為的なセットミスを抑制することができる。
【0053】
(変形例)
なお、上記本実施形態においては、1台のテープフィーダ内に2本の電子部品収容テープをセットするダブルテープフィーダを適用し、リールホルダ1をダブルテープフィーダ用リールホルダとする場合について説明したが、1台のテープフィーダ内に1本の電子部品収容テープをセットするシングルテープフィーダを適用し、リールホルダ1が保持するテープリール10L,10Rの電子部品収容テープを2台のテープフィーダにそれぞれセットするようにしてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1(101,201)…リールホルダ(テープリールホルダ)、2(102,202)…リールブラケット、2a…貫通穴、2b…貫通穴、2c(202c)…下面部、2d…前面部、2e(202e)…切り欠き部、3L,3R…リールサポート軸、4…ローラブラケット、5…ローラ、6…ガイドバー、7(107,207)…リール保持部材、7a…回動軸、7b…リール保持部、7c(207c)…円筒コロ(係合部材)、7d…ばね掛け部、8(108)…カムガイドベース、8a…嵌合穴、8b…収納溝、8c…回転止めストッパ、8d…摺動面、8e(108e)…カム溝、8f(108f)…ロック部、8g(108g)…カム溝開放部、8h(108h)…境界、9…ねじりばね(付勢部材)、10L(110L),10R(110R)…テープリール、10La,10Ra…巻芯、11(111)…マグネットキャッチ、20…電子部品供給装置、31…一括交換台車、31a…キャスター、32…テープフィーダ、33…フィーダバンク、P…ピックアップ位置、T…電子部品収容テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品が収容された電子部品収容テープをテープリールから順次繰り出して、前記電子部品を電子部品実装装置の吸着ノズルによる部品取出し位置へ順次供給する電子部品供給装置であって、
前記電子部品実装装置の取付け台に並列配置して連結されると共に、水平移動することで前記取付け台に対して連結・分離可能に構成され、分離方向側と連結方向側とに縦列配置された第1のテープリールと第2のテープリールとを保持する複数のテープリールホルダを備え、
前記テープリールホルダは、
前記第1のテープリール及び第2のテープリールを保持するリール保持面を有するリールブラケットと、
前記リール保持面に突設され、前記第1のテープリール及び前記第2のテープリールの巻芯内にそれぞれ挿入することで、前記第1のテープリール及び前記第2のテープリールをそれぞれ回転自在に支持する第1のリールサポート軸及び第2のリールサポート軸と、
前記リール保持面に対向配置して、前記リールブラケットに回転自在に支持されるリール保持部材と、をそれぞれ備え、
前記リール保持部材は、
前記第1のテープリールを隣接配置されたテープリールホルダと干渉せずに前記第1のリールサポート軸から抜脱可能な位置まで自テープリールホルダを前記分離方向に引き出した第1の引き出し状態から、前記第2のテープリールを隣接配置されたテープリールホルダと干渉せずに前記第2のリールサポート軸から抜脱可能な位置まで自テープリールホルダを前記分離方向に引き出した第2の引き出し状態への移行に伴って回動することで、前記第1のテープリールを前記第1のリールサポート軸から抜脱可能な状態から抜脱不可な状態へ保持することを特徴とする電子部品供給装置。
【請求項2】
前記リール保持部材は、前記リール保持面に対向する面とは反対側の面の前記連結方向側端部に突設され、所定のカム溝に係合する係合部材を備え、
前記カム溝は、前記テープリールホルダの前記第1の引き出し状態から前記第2の引き出し状態への移行に伴って、前記係合部材が当該カム溝を摺動することで、前記リール保持部材が回動するよう円弧状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電子部品供給装置。
【請求項3】
前記カム溝は、前記リールブラケットの前記リール保持面とは反対側の面に形成され、
前記係合部材は、隣接配置された前記テープリールホルダが有する前記リールブラケットに形成された前記カム溝に係合するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の電子部品供給装置。
【請求項4】
前記リール保持部材を、前記テープリールホルダの前記第1の引き出し状態から前記第2の引き出し状態への移行に伴って回動する方向とは反対方向に付勢する付勢部材と、
前記第2の引き出し状態で、前記リール保持部材の動作を規制する規制手段と、を備えることを特徴とする請求項2又は3に記載の電子部品供給装置。
【請求項5】
前記規制手段は、前記カム溝に一体形成され、前記第2の引き出し状態で前記付勢部材の付勢方向に沿って前記係合部材が嵌合することで、当該係合部材の摺動を規制する嵌合溝であることを特徴とする請求項4に記載の電子部品供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−79842(P2012−79842A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222243(P2010−222243)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000003399)JUKI株式会社 (1,557)
【Fターム(参考)】