説明

電子部品実装装置及び電子部品実装方法

【課題】効率良く高精度な部品認識・部品搭載を行うことができる電子部品実装装置及び電子部品実装方法を提供する。
【解決手段】電子部品を回路基板5への搭載角度が大きい順にソートし、電子部品の吸着順を決定すると共に、各電子部品を吸着した後に回転させる量をそれぞれ決定する。この回転量は、全ての電子部品を順次吸着・回転した結果、全ての電子部品の吸着姿勢がそれぞれの搭載姿勢となるように決定する。そして、全ての電子部品を吸着した後、吸着ノズルに吸着された搭載姿勢の電子部品を順次ビジョン認識し、その認識結果に基づいて、回路基板5上の所定の搭載位置に電子部品を順次搭載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品供給装置から供給された部品を、基板上に装着する電子部品実装装置及び電子部品実装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子部品実装装置として、X,Y,Z,θ軸方向の動作が可能な複数の吸着ノズルを備えた搭載ヘッドを用いて、一度に複数の電子部品を吸着保持し、各電子部品を基板上に順次搭載するものがある。
このような電子部品実装装置として、複数の吸着ノズルのθ方向の回転軸を、1つのモータで同時に回転制御するものがある(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この場合、1つのθ回転軸を回転させると他のθ回転軸も同時に回転するため、電子部品の実装動作時に無駄なθ回転が発生する。
【0003】
そこで、電子部品の吸着ノズルによる吸着角度及び基板への搭載角度に基づいて、電子部品の吸着順及び搭載順を決定することで、電子部品を吸着・搭載する際の余分な回転動作を減らすようにするものがある(例えば、特許文献2参照)。この技術は、電子部品を吸着角度が大きい順又は小さい順にソートして各電子部品の吸着順を決定し、決定された吸着順が最後の電子部品の吸着角度と同一又は最も近い搭載角度から搭載角度が近い順に電子部品をソートして各電子部品の搭載順を決定するものである。ここでは、各電子部品を上記吸着順で吸着した後、レーザセンサを用いた360°の同時回転による部品認識を行い、その後上記搭載順で電子部品を順次搭載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−259250号公報
【特許文献2】特開2009−188028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電子部品実装装置においては、電子部品を吸着ノズルによって吸着した後に部品認識を行うことで電子部品の吸着位置ずれを検出し、その後に吸着位置ずれ分の補正を行って基板上に電子部品を搭載する必要があるが、このとき、より精度良く部品を搭載するためには、部品認識時の姿勢から、なるべくθ方向を移動しないまま搭載動作を行うことが望ましい。
【0006】
しかしながら、上記特許文献2に記載の従来装置にあっては、電子部品を認識した後、部品を搭載する前に部品を搭載姿勢とするためのθ回転が必要となる。そのため、より精度良く部品を搭載することができない。
そこで、本発明は、効率良く高精度な部品認識・部品搭載を行うことができる電子部品実装装置及び電子部品実装方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に係る電子部品実装装置は、同一モータにより同方向に同時回転される複数のノズルシャフトにそれぞれ装着された吸着ノズルにより電子部品を順次吸着し、基板上の所定の搭載位置に当該電子部品を順次搭載する電子部品実装装置であって、前記電子部品を部品供給装置から前記吸着ノズルによって吸着した初期吸着姿勢から、前記基板への搭載姿勢とするために最低限必要な必要回転角度が大きい順に、電子部品の吸着順を決定する吸着順決定手段と、前記吸着順決定手段で決定した吸着順に従って電子部品を順次吸着する部品吸着手段と、前記吸着順決定手段で決定した吸着順に従って吸着すべき全ての電子部品を順次吸着した結果、全ての電子部品の吸着姿勢がそれぞれ前記搭載姿勢となるように、前記部品吸着手段で電子部品を吸着する度に前記ノズルシャフトを回転する部品回転手段と、前記部品吸着手段で吸着すべき電子部品を全て吸着した後、前記吸着ノズルに吸着された前記搭載姿勢の電子部品を順次認識する部品認識手段と、前記部品認識手段による認識結果に基づいて、前記搭載位置に電子部品を順次搭載する部品搭載手段と、を備えることを特徴としている。
【0008】
このように、全ての電子部品を吸着し終わったとき、全ての電子部品の吸着姿勢が基板への搭載姿勢となるようにするので、余計なθ回転を必要とすることなく部品認識を行うことができる。また、部品認識を行った後も、余計なθ回転を必要とすることなくそのまま部品搭載を行うことができる。したがって、部品搭載時には部品認識結果に基づく搭載位置補正のみで部品搭載動作を行うことができる。
【0009】
また、請求項2に係る電子部品実装装置は、請求項1に係る発明において、前記必要回転角度は、吸着すべき全ての電子部品の部品供給装置からの供給角度が同一であるとき、前記電子部品の搭載角度であることを特徴としている。
このように、先に吸着した電子部品の回転量が多いことを考慮して、吸着順を搭載角度の大きい順にソートした順とするので、総合的な回転量を最小限にすることができる。
【0010】
さらに、請求項3に係る電子部品実装装置は、請求項1又は2に係る発明において、前記必要回転角度は、吸着すべき全ての電子部品の部品供給装置からの供給角度がそれぞれ異なるとき、前記電子部品の搭載角度から当該電子部品の供給角度を差し引いた角度であることを特徴としている。
これにより、部品供給角度が与えられている場合(0°以外の場合)には、その部品供給角度を考慮して、適切に吸着順を決定することができる。
【0011】
また、請求項4に係る電子部品実装装置は、請求項1〜3の何れかに係る発明において、前記吸着順決定手段は、前記電子部品の吸着可能角度が制限されている吸着ノズルで吸着する電子部品を最初に吸着するように、前記吸着順を決定することを特徴としている。
これにより、吸着可能角度が定められている吸着ノズルを併用する場合であっても、適切に吸着順を決定し、部品吸着を行うことができる。
【0012】
さらにまた、請求項5に係る電子部品実装装置は、請求項1〜4の何れかに係る発明において、前記部品回転手段は、前記吸着ノズルで吸着した電子部品の吸着後の前記ノズルシャフトの回転角度を、当該電子部品の必要回転角度から直後に吸着される電子部品の吸着から搭載までの総回転角度を差し引いた角度に設定することを特徴としている。
これにより、部品吸着から部品認識及び部品搭載に至るまでのθ回転量を最小とすることができ、全ての電子部品を吸着し終わったときの吸着姿勢を、効率良くそれぞれの搭載姿勢にすることができる。
【0013】
また、請求項6に係る電子部品実装方法は、同一モータにより同方向に同時回転される複数のノズルシャフトにそれぞれ装着された吸着ノズルにより電子部品を順次吸着し、基板上の所定の搭載位置に当該電子部品を順次搭載する電子部品実装方法であって、前記電子部品を部品供給装置から前記吸着ノズルによって吸着した初期吸着姿勢から、前記基板への搭載姿勢とするために最低限必要な必要回転角度が大きい順に、電子部品の吸着順を決定し、決定した吸着順に従って電子部品を順次吸着するに際し、前記吸着順に従って吸着すべき全ての電子部品を順次吸着した結果、全ての電子部品の吸着姿勢がそれぞれ前記搭載姿勢となるように、各電子部品を吸着する度に前記ノズルシャフトを回転し、吸着すべき電子部品を全て吸着した後、前記吸着ノズルに吸着された前記搭載姿勢の電子部品を順次認識し、その認識結果に基づいて、前記搭載位置に電子部品を順次搭載することを特徴としている。
これにより、余計なθ回転を必要とすることなく、精度良く部品認識動作及び部品搭載動作を行うことができる電子部品実装方法とすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、同時回転される複数の吸着ノズルによって順次電子部品を吸着した後、部品認識を行い、その後順次基板へ搭載する場合に、全ての電子部品を吸着し終わったとき、全ての電子部品の吸着姿勢が基板への搭載姿勢となるように吸着順及び吸着後の吸着ノズルの回転量を決定する。そのため、精度良く部品認識動作及び部品搭載動作を行うことができる。また、余分な回転動作を減らすことができるので、電子部品や回転駆動源であるモータの負荷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明における電子部品実装装置を示す平面図である。
【図2】搭載ヘッドの概要を示す平面図である。
【図3】電子部品実装装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【図4】コントローラで実行する部品実装処理手順を示すフローチャートである。
【図5】吸着順決定処理手順を示すフローチャートである。
【図6】回転量決定処理手順を示すフローチャートである。
【図7】部品の回転動作のイメージを示す図である。
【図8】部品の供給角度を考慮した実装動作による部品の回転動作のイメージを示す図である。
【図9】角度つきノズルを示す図である。
【図10】角度つきノズルを使用した実装動作による部品の回転動作のイメージを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(第1の実施形態)
(構成)
図1は、本発明における電子部品実装装置を示す平面図である。
図中、符号1は電子部品実装装置である。この電子部品実装装置1は、基台10の上面にX方向に延在する一対の搬送レール11を備える。この搬送レール11は、回路基板5の両側辺部を支持し、搬送用モータ(図示せず)により駆動されることで回路基板5をX方向に搬送する。
【0017】
また、電子部品実装装置1は搭載ヘッド12を備える。この搭載ヘッド12は、下部に電子部品を吸着する複数の吸着ノズルを備え、X軸ガントリ13及びY軸ガントリ14により、基台10上をXY方向に水平移動可能に構成されている。
この電子部品実装装置1には、搬送レール11のY方向両側に、テープフィーダ等により電子部品を供給する電子部品供給装置15が装着される。そして、電子部品供給装置15から供給された電子部品は、搭載ヘッド12の吸着ノズルによって真空吸着され、回路基板5上に実装搭載される。
【0018】
また、部品供給装置15と回路基板5との間には、CCDカメラからなる認識カメラ21を配置する。この認識カメラ21は、電子部品の吸着位置ずれ(吸着ノズルの中心位置と吸着した部品の中心位置とのずれ)や、吸着角度ずれ(傾き)を検出するために、吸着ノズルで吸着した電子部品を撮像するものである。
また、搭載ヘッド12には、距離センサ22が取り付けられている。この距離センサ22は、センサ光により吸着ノズルと回路基板5とのZ方向の距離(高さ)を測定する。
さらに、電子部品実装装置1には、吸着する部品のサイズや形状に応じて、吸着ノズルを交換するためのノズル交換機16が設けられている。このノズル交換機16内には複数種のノズルが保管、管理されている。
【0019】
図2は、搭載ヘッド12の概要を示す平面図である。この図2に示すように、搭載ヘッド12は、ベース部分が支持部材12bに固定された複数(ここでは2つ)のモータ12aを備える。各モータ12aを駆動すると、モータ12a毎に回転されるプーリ12cによりタイミングベルト12dを介して2つの回転軸(ノズルシャフト)12fが同時回転されると共に、中央の回転軸12fに固定されている同軸プーリにより回転されるタイミングベルト12eを介して、3つの目の回転軸12fも同時回転されるようになっている。
すなわち、3つの回転軸12fを1組とし、同一組に属する3つの回転軸12fが、それぞれ1つのモータ12aにより同方向に同時回転可能となっている。各回転軸12fの下端部にはそれぞれ図示しない吸着ノズルが装着されており、電子部品を吸着可能となっている。
【0020】
本実施形態では、同時回転可能な1組3つの回転軸12fにそれぞれ装着されている吸着ノズルにより、3種類の電子部品A,B,Cを所定の吸着順で順次吸着する。このとき、電子部品A〜Cを全て吸着し終えた時点で、電子部品A〜Cの吸着姿勢がそれぞれの回路基板5への搭載姿勢となっているように、各電子部品を吸着する度に所定の回転量だけ回転軸12fを同時回転させる。そして、それぞれの搭載姿勢となっている電子部品A〜Cに対して、認識カメラ21によるビジョン認識を順次行なった後、認識結果に基づく搭載位置補正を行うのみで電子部品A〜Cを順次搭載する。
【0021】
図3は、電子部品実装装置1の制御系の構成を示すブロック図である。
電子部品実装装置1は、装置全体を制御するCPU、RAM及びROMなどを備えるマイクロコンピュータからなるコントローラ30を備える。コントローラ30は、以下に示す各構成31〜35をそれぞれ制御する。
バキューム機構31は真空を発生し、不図示のバキュームスイッチを介して各吸着ノズルに真空の負圧を発生させるものである。
【0022】
X軸モータ32は、搭載ヘッド12をX軸ガントリ13に沿ってX軸方向に移動させるための駆動源であり、Y軸モータ33は、X軸ガントリ13をY軸ガントリ14に沿ってY軸方向に移動させるための駆動源である。コントローラ30がX軸モータ32及びY軸モータ33を駆動制御することで、搭載ヘッド12はXY方向に移動可能となる。
Z軸モータ34は、各吸着ノズルをZ方向に昇降させるための駆動源である。なお、ここではZ軸モータ34を1つしか図示していないが、実際は吸着ノズルの数だけ設けられる。θ軸モータ35は、上記1組の吸着ノズルを、各回転軸12fを中心にして同時回転させるための駆動源であり、上述したモータ12aに相当する。
【0023】
また、コントローラ30は、図4に示す部品実装処理を実行し、電子部品の吸着動作及び搭載動作を行う。この部品実装処理は、搭載ヘッド12の1組の吸着ノズルを用いて吸着・搭載する電子部品の組ごとに実行される。
先ず、ステップS1で、コントローラ30は、吸着ノズルによる電子部品の吸着順を決定する吸着順決定処理を実施する。
図5は、ステップS1で実施する吸着順決定処理手順を示すフローチャートである。
ステップS11で、コントローラ30は、実装処理対象となっている電子部品の回路基板5上への搭載角度をそれぞれ取得し、ステップS12に移行する。
ステップS12では、コントローラ30は、実装処理対象の電子部品数である対象部品数nを取得する。本実施形態では、吸着ノズル3つで1組としているため、対象部品数nは最大3となる。
【0024】
次にステップS13で、コントローラ30は、前記ステップS11で取得した各搭載角度を大きい順にソートし、p[1],p[2],…,p[n]として格納する。
そして、ステップS14で、コントローラ30は、前記ステップS13のソート結果に基づいて吸着順を決定し、吸着順決定処理を終了する。ここでは、吸着順を、搭載角度が大きい順に、搭載角度p[1]の電子部品→搭載角度p[2]の電子部品→…→搭載角度p[n]の電子部品の順とする。すなわち、電子部品を部品供給装置15から吸着ノズルによって吸着した初期吸着姿勢から、回路基板5への搭載姿勢とするために最低限必要な回転角度が大きい順に、電子部品の吸着順を決定する。
【0025】
図4に戻って、ステップS2では、コントローラ30は、部品吸着後の吸着ノズルの回転量を決定する回転量決定処理を実施する。
図6は、ステップS2で実施する回転量決定処理手順を示すフローチャートである。
ステップS21で、コントローラ30は、各種データの取得及び初期設定を行う。ここでは、前記ステップS1で決定した対象部品数nと、搭載角度p[1],p[2],…,p[n]とを取得すると共に、カウント値Nを初期値である対象部品数nに設定し、各電子部品の吸着後の回転量θ[1],θ[2],…,θ[n]及び電子部品の総回転量Sをそれぞれ初期値である0に設定する。ここで、回転量θ[m](m=1,2,…,n)は、搭載角度p[m]の電子部品の吸着後の回転量である。
【0026】
次にステップS22では、コントローラ30は、N>0であるか否かを判定し、N>0である場合にはステップS23に移行し、N≦0である場合には後述するステップS26に移行する。
ステップS23では、コントローラ30は、搭載角度p[N]とこの時点での総回転量Sとに基づいて、次式をもとに回転量θ[N]を算出し、ステップS24に移行する。
θ[N]=p[N]−S ………(1)
ステップS24では、コントローラ30は、次式をもとに総回転量Sを更新し、ステップS25に移行する。
S=S+θ[N] ………(2)
【0027】
ステップS25では、コントローラ30は、カウント値Nをデクリメントして前記ステップS22に移行する。
すなわち、搭載角度p[m]の電子部品の吸着後の回転量θ[m]は、当該電子部品の搭載角度p[m]から、当該電子部品の直後に吸着される電子部品の部品吸着から部品搭載までの総回転量Sを差し引いた値となる。
【0028】
そして、ステップS26では、コントローラ30は、前記ステップS23で決定された各部品の回転量θ[1],θ[2],…,θ[n]を格納し、回転量決定処理を終了する。
図4に戻って、ステップS3では、コントローラ30は、バキューム機構31、X軸モータ32、Y軸モータ33及びZ軸モータ34を駆動制御して、吸着指定されている電子部品を部品供給装置15の所定の部品供給位置から吸着し、ステップS4に移行する。なお、初期状態では、前記ステップS1で決定した吸着順の最も早い電子部品が吸着指定される。
【0029】
ステップS4では、コントローラ30は、θ軸モータ35を駆動制御し、吸着ノズルを前記ステップS3で吸着した部品に対応する回転量θ[m]だけ回転させてステップS5に移行する。
ステップS5では、コントローラ30は、吸着ノズルで同時吸着すべき電子部品を全て吸着したか否かを判定し、全ての電子部品を吸着していない場合にはステップS6に移行して、吸着していない電子部品のうち最も吸着順の早い電子部品を、次に吸着する電子部品として指定してから前記ステップS3に移行する。
一方、前記ステップS5で全ての電子部品を吸着したと判定した場合には、ステップS7に移行して認識カメラ21によるビジョン認識を行う。ここでは、認識カメラ21で各電子部品を順次撮像し、各撮像画像を処理することで各電子部品の吸着位置ずれを検出する。そして、検出した吸着位置ずれに応じて部品搭載時の補正量を決定する。
【0030】
次にステップS8で、コントローラ30は、前記ステップS7のビジョン認識結果に基づいて各電子部品を回路基板5に順次搭載し、部品実装処理を終了する。このときの搭載順は、予め決定した一定の順序であっても、電子部品の吸着順であってもよい。
なお、図4のステップS1が吸着順決定手段に対応し、前記モータ12a(θ軸モータ35)とステップS2及びS4が部品回転手段に対応し、前記吸着ノズルとステップS3が部品吸着手段に対応し、前記認識カメラ21とステップS7が部品認識手段に対応し、ステップS8が部品搭載手段に対応している。
【0031】
(動作)
次に、本実施形態の動作について説明する。ここでは、3種類の電子部品A,B,Cを、それぞれ以下の搭載角度で搭載する場合について説明する。
部品A:搭載角度180°
部品B:搭載角度0°
部品C:搭載角度90°
先ず、コントローラ30は、各部品の吸着順を決定する(ステップS1)。ここでは、上記搭載角度を大きい順にソートし(ステップS13)、搭載角度の大きい順に吸着順を決定する(ステップS14)。つまり、上記の例では、吸着順はA→C→Bとなり、搭載角度p[1]=180、p[2]=90、p[3]=0となる。
【0032】
次に、コントローラ30は、回転量決定処理を実施し、各部品の吸着後の回転量を求める(ステップS2)。なお、吸着順はA→C→Bであるため、部品Aの吸着後の回転量はθ[1]、部品Bの吸着後の回転量はθ[3]、部品Cの吸着後の回転量はθ[2]である。
初期状態ではN=n=3であるため(ステップS21)、はじめに、吸着順の最も遅い部品Bの回転量θ[3]を求める。θ[3]は、部品Bの搭載角度p[3]=0と、総回転量S=0(初期値)とに基づいて、上記(1)式をもとに算出する(ステップS23)。すなわち、θ[3]=0となる。次に、N=2となって(ステップS25)、吸着順が2番目に遅い部品Cの回転量θ[2]を求める。θ[2]は、部品Cの搭載角度p[2]=90と、総回転量S=0(=θ[3])とに基づいて、上記(1)式をもとに算出する(ステップS23)。すなわち、θ[2]=90となる。最後に、N=1となって(ステップS25)、吸着順の最も早い部品Aの回転量θ[1]を求める。θ[1]は、部品Aの搭載角度p[1]=180と、総回転量S=90(=θ[3]+θ[2])とに基づいて、上記(1)式をもとに算出する(ステップS23)。すなわち、θ[1]=90となる。
【0033】
ビジョン認識直前における部品Aの総回転量はθ[1]+θ[2]+θ[3]であり、部品Cの総回転量はθ[2]+θ[3]、部品Bの総回転量はθ[3]である。したがって、部品A〜Cを吸着・回転した後、最終的に部品A〜Cがそれぞれの搭載角度になるためには、以下の式が成り立つ。
θ[1]+θ[2]+θ[3]=180 ………(3)
θ[2]+θ[3}=90 ………(4)
θ[3]=0 ………(5)
上記(3)〜(5)式により、θ[1]=90、θ[2]=90、θ[3]=0が求められる。このように、回転量決定処理は、上記(3)〜(5)式を満足する回転量θ[1]〜θ[3]を求める処理に相当する。
【0034】
部品A〜Cの吸着順と、部品吸着後の各回転量とが決定すると、コントローラ30は電子部品の吸着・回転動作を行う。吸着順はA→C→Bであるため、図7に示すように、先ずフェーズ1で部品Aを吸着し、その後、θ軸モータ35を駆動制御して吸着ノズル(ヘッド1〜3)を回転量θ[1]=90°回転する。次に、フェーズ2として部品Cを吸着し、その後、θ軸モータ35を駆動制御して吸着ノズルを回転量θ[2]=90°回転する。次に、フェーズ3として部品Bを吸着する。ここで、回転量θ[3]=0°であるので、部品Bを吸着した後の吸着ノズルの回転動作は行われない。上記の動作を行うことで、全ての部品A〜Cがそれぞれの搭載角度を成した状態で吸着ノズルに吸着された状態となる。
【0035】
このように、決定した吸着順に従って吸着すべき全ての電子部品を順次吸着した結果、全ての電子部品の吸着姿勢がそれぞれの搭載姿勢となるように、各電子部品を吸着する度に搭載ヘッド12の回転軸12fを回転する。これにより、コントローラ30は、フェーズ4として、この吸着状態のまま余計な回転動作をすることなく各部品のビジョン認識を行い、最後にフェーズ5として、部品認識結果に基づく補正のみで各部品の搭載動作を行うことができる。
【0036】
ところで、一般に、電子部品実装装置では、電子部品を吸着ノズルで吸着した後にビジョン認識によって吸着姿勢のセンタリングを行い、その後にセンタリング結果分の補正を行って電子部品を基板上に搭載する。このとき、より精度良く部品搭載を行うためには、ビジョン認識時の姿勢から、余計なθ回転移動をしないで部品搭載動作を行うことが望ましい。ところが、θ軸を同時回転する複数のノズルシャフトを有する搭載ヘッドを用いて電子部品を順次吸着し、各電子部品をビジョン認識した後に各電子部品を搭載する場合、各電子部品の搭載角度がそれぞれ異なると、各電子部品をそれぞれの搭載角度で搭載するためには、どうしてもビジョン認識後に電子部品のθ回転が必要となる。
【0037】
例えば、2種類の部品A,Bをビジョン認識し搭載する動作は、部品A,Bを順次吸着→ノズルシャフトを部品Aの搭載角度に回転→部品Aをビジョン認識→部品Bの搭載角度に回転→部品Bをビジョン認識→部品Aの搭載角度に回転→部品Aを搭載→部品Bの搭載角度に回転→部品Bを搭載、となる。このように、部品を認識した後に余計なθ回転が生じる。仮に搭載順をA,B逆にしたとしても、部品Aを搭載するためにはθ軸を回転させなければならず、余計なθ回転を排除することはできない。
【0038】
そこで、部品搭載時の余計なθ回転を排除する方法として、各部品で認識・搭載動作を一連で行うことが考えられる。しかしながら、この場合、ビジョン認識を行う認識位置と部品搭載位置との間の往復移動動作が増えるため、効率が悪い。
これに対して本実施形態では、最終的に全部品がそれぞれの搭載姿勢となるように各部品を吸着する度に所定のθ回転を行うので、全部品を吸着した後は余計なθ回転を行わずに部品認識及び部品搭載を行うことができる。したがって、高精度な部品認識及び部品搭載を行うことができる。また、所定の認識位置で各部品のビジョン認識を順次行った後、部品搭載位置に移動して各部品の搭載を行うので、認識位置と部品搭載位置との間の無駄な往復移動動作を排除することができ、効率が良い。
【0039】
(効果)
このように、上記実施形態では、全ての電子部品を順次吸着・回転した結果、全ての電子部品の吸着姿勢がそれぞれの搭載姿勢となるように吸着順及び吸着後の回転量を決定する。そのため、全ての電子部品を吸着した後、余計なθ回転を必要とすることなく部品認識動作を行うことができる。また、部品認識を行った後も、余計なθ回転を必要とすることなく、部品認識結果に基づく搭載位置補正のみで部品搭載動作を行うことができる。
したがって、より精度良く部品認識動作及び部品搭載動作を行うことができる。さらに、余分な回転動作を減らすことができるので、電子部品や回転駆動源であるモータの負荷を軽減することができる。
【0040】
また、このとき、先に吸着した電子部品ほど吸着から搭載までの総回転量が多いことを考慮して、吸着順を搭載角度の大きい順にソートした順とするので、総合的な回転量を最小限にすることができる。
さらに、吸着ノズルで吸着した電子部品の吸着後の回転量を、当該電子部品の搭載角度から直後に吸着される電子部品の吸着から搭載までの総回転角度を差し引いた値に設定するので、全ての電子部品を吸着し終わったときの吸着姿勢を、効率良くそれぞれの搭載姿勢にすることができる。
【0041】
(応用例)
なお、上記実施形態においては、各部品の供給角度が全て0°である場合について説明したが、部品の供給角度が与えられている場合(0°以外の場合)には、その供給角度を考慮して吸着順を決定する。すなわち、供給角度が与えられている部品において、仮の搭載角度=(実際の搭載角度−供給角度)を設定し、仮搭載角度を用いて吸着順を決定する。この仮搭載角度は、電子部品を部品供給装置15から吸着ノズルによって吸着した初期吸着姿勢から、回路基板5への搭載姿勢とするために最低限必要な必要回転角度である。以下、具体例を用いて説明する。
【0042】
ここでは、3種類の電子部品A,B,Cを、以下の供給角度及び搭載角度で順次搭載する場合について説明する。
部品A:供給角度0°、搭載角度180°
部品B:供給角度90°、搭載角度0°
部品C:供給角度0°、搭載角度90°
【0043】
この場合、部品Bの仮搭載角度は0°−90°=−90°=270°となる。そのため、吸着順はB→A→Cとなる。また、部品A〜Cを吸着・回転した後、最終的に部品A〜Cがそれぞれの搭載角度になるためには、以下の式が成り立つことになる。
θ[1]+θ[2]+θ[3]=270 ………(6)
θ[2]+θ[3}=180 ………(7)
θ[3]=90 ………(8)
上記(6)〜(8)式により、θ[1]=90、θ[2]=90、θ[3]=90となる。
【0044】
したがって、この場合、図8に示すように、フェーズ1では供給角度が90°である部品Bを吸着し、その後、各吸着ノズルを回転量θ[1]=90°回転する。次に、フェーズ2として部品Aを吸着し、その後、各吸着ノズルを回転量θ[2]=90°回転する。次に、フェーズ3として部品Cを吸着し、その後、各吸着ノズルを回転量θ[3]=90°回転する。これにより、部品A〜Cはそれぞれ搭載角度を成した状態となる。
【0045】
このように、供給角度が与えられている場合(0°以外の場合)には、その供給角度を考慮して吸着順を決定するので、上述した供給角度が与えられていない場合(0°の場合)と同様に、余計なθ回転を必要とすることなく、精度良く部品認識動作及び部品搭載動作を行うことができる。
また、上記実施形態においては、吸着ノズルとして、電子部品を何れの角度でも吸着可能なノズルを用いる場合について説明したが、図9に示すように、吸着可能な角度が決まっている角度つきノズル(掃除機ノズル、グリッパノズル、T型ノズル等)を用いる場合には、これを考慮して吸着順を決定する。すなわち、角度つきノズルを用いて吸着する部品を最初に吸着するように吸着順を決定する。以下、具体例を用いて説明する。
【0046】
ここでは、3種類の電子部品A,B,Cを、以下の搭載角度で順次搭載する場合について説明する。なお、部品Bを、角度つきノズルを用いて吸着する部品とし、供給角度は何れも0°とする。
部品A:搭載角度180°
部品B:搭載角度0°(角度つきノズル)
部品C:搭載角度90°
【0047】
この場合、部品Bを最初に吸着する部品とし、残りの部品A,Cの吸着順は搭載角度の大きい順となる。すなわち、吸着順はB→A→Cとなる。また、部品A〜Cを吸着・回転した後、最終的に部品A〜Cがそれぞれの搭載角度になるためには、以下の式が成り立つことになる。
θ[1]+θ[2]+θ[3]=0 ………(9)
θ[2]+θ[3}=180 ………(10)
θ[3]=90 ………(11)
上記(9)〜(11)式により、θ[1]=180、θ[2]=90、θ[3]=90となる。
【0048】
したがって、この場合、図10に示すように、フェーズ1では部品Bを吸着し、その後、各吸着ノズルを回転量θ[1]=180°回転する。次に、フェーズ2として部品Aを吸着し、その後、各吸着ノズルを回転量θ[2]=90°回転する。次に、フェーズ3として部品Cを吸着し、その後、各吸着ノズルを回転量θ[3]=90°回転する。これにより、部品A〜Cはそれぞれ搭載角度を成した状態となる。
【0049】
このように、電子部品の吸着可能角度が制限されている吸着ノズルを使用する場合には、これを考慮して吸着順を決定するので、上述した吸着可能角度の制限がない吸着ノズルを使用する場合と同様に、余計なθ回転を必要とすることなく、精度良く部品認識動作及び部品搭載動作を行うことができる。
さらに、上記実施形態においては、電子部品の吸着後の回転速度の違いに応じて吸着順を決定するようにしてもよい。比較的サイズの大きい部品や重たい部品は、吸着時の回転動作によって部品が吸着ノズルから落下するのを防止するために、回転速度を遅く設定する場合がある。このように、部品毎に回転速度が異なる場合には、例えば、回転速度が同一又は最も近い部品の組を作成し、その組毎に吸着・回転動作を行うようにする。これにより、部品実装処理工程のタクト時間を短縮することができる。
【符号の説明】
【0050】
1…部品実装装置、5…回路基板、11…搬送レール、12…搭載ヘッド、12a…モータ、12f…回転軸(ノズルシャフト)13…X軸ガントリ、14…Y軸ガントリ、15…部品供給装置、16…ノズル交換機、21…認識カメラ、30…コントローラ、31…バキューム機構、32…X軸モータ、33…Y軸モータ、34…Z軸モータ、35…θ軸モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一モータにより同方向に同時回転される複数のノズルシャフトにそれぞれ装着された吸着ノズルにより電子部品を順次吸着し、基板上の所定の搭載位置に当該電子部品を順次搭載する電子部品実装装置であって、
前記電子部品を部品供給装置から前記吸着ノズルによって吸着した初期吸着姿勢から、前記基板への搭載姿勢とするために最低限必要な必要回転角度が大きい順に、電子部品の吸着順を決定する吸着順決定手段と、
前記吸着順決定手段で決定した吸着順に従って電子部品を順次吸着する部品吸着手段と、
前記吸着順決定手段で決定した吸着順に従って吸着すべき全ての電子部品を順次吸着した結果、全ての電子部品の吸着姿勢がそれぞれ前記搭載姿勢となるように、前記部品吸着手段で電子部品を吸着する度に前記ノズルシャフトを回転する部品回転手段と、
前記部品吸着手段で吸着すべき電子部品を全て吸着した後、前記吸着ノズルに吸着された前記搭載姿勢の電子部品を順次認識する部品認識手段と、
前記部品認識手段による認識結果に基づいて、前記搭載位置に電子部品を順次搭載する部品搭載手段と、を備えることを特徴とする電子部品実装装置。
【請求項2】
前記必要回転角度は、吸着すべき全ての電子部品の部品供給装置からの供給角度が同一であるとき、前記電子部品の搭載角度であることを特徴とする請求項1に記載の電子部品実装装置。
【請求項3】
前記必要回転角度は、吸着すべき全ての電子部品の部品供給装置からの供給角度がそれぞれ異なるとき、前記電子部品の搭載角度から当該電子部品の供給角度を差し引いた角度であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子部品実装装置。
【請求項4】
前記吸着順決定手段は、前記電子部品の吸着可能角度が制限されている吸着ノズルで吸着する電子部品を最初に吸着するように、前記吸着順を決定することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の電子部品実装装置。
【請求項5】
前記部品回転手段は、前記吸着ノズルで吸着した電子部品の吸着後の前記ノズルシャフトの回転角度を、当該電子部品の必要回転角度から直後に吸着される電子部品の吸着から搭載までの総回転角度を差し引いた角度に設定することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の電子部品実装装置。
【請求項6】
同一モータにより同方向に同時回転される複数のノズルシャフトにそれぞれ装着された吸着ノズルにより電子部品を順次吸着し、基板上の所定の搭載位置に当該電子部品を順次搭載する電子部品実装方法であって、
前記電子部品を部品供給装置から前記吸着ノズルによって吸着した初期吸着姿勢から、前記基板への搭載姿勢とするために最低限必要な必要回転角度が大きい順に、電子部品の吸着順を決定し、
決定した吸着順に従って電子部品を順次吸着するに際し、前記吸着順に従って吸着すべき全ての電子部品を順次吸着した結果、全ての電子部品の吸着姿勢がそれぞれ前記搭載姿勢となるように、各電子部品を吸着する度に前記ノズルシャフトを回転し、
吸着すべき電子部品を全て吸着した後、前記吸着ノズルに吸着された前記搭載姿勢の電子部品を順次認識し、その認識結果に基づいて、前記搭載位置に電子部品を順次搭載することを特徴とする電子部品実装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−178393(P2012−178393A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39344(P2011−39344)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000003399)JUKI株式会社 (1,557)
【Fターム(参考)】