説明

電子部品実装装置

【課題】ポンプ内蔵による電力消費の増加を抑制する。
【解決手段】
電子部品を吸着する吸着ノズル105を備えたヘッド106と、ヘッドを電子部品の部品供給部と基板との間で移動させるヘッド移動手段107と、吸着ノズルの吸引圧力発生源2と、吸着ノズルと吸引圧力発生源との間に設けられた電磁弁7と、吸引圧力発生源と電磁弁とを制御する吸引制御部10とを備え、低圧状態を形成して電磁弁の開閉により吸着ノズルで電子部品を吸着解放する電子部品実装装置100において、吸引圧力発生源と電磁弁との間に圧力を検出する圧力検出手段6を設け、吸引制御部は、圧力検出手段が所定の吸引力を確保するために予め定めた圧力の上限値を検出した場合には、予め定めた圧力の下限値を検出するまで吸引圧力発生源を駆動する制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルで電子部品を吸着して実装を行う電子部品実装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品実装装置は、電子部品の吸着を行う吸着ノズルを搭載したヘッドが、電子部品の供給を行う部品保持テープを有する電子部品フィーダから電子部品を吸着し、基板の搭載位置までヘッドを移動させて吸着ノズルから電子部品を解放することにより実装動作が行われる。
そして、従前は、ヘッドに搭載された吸着ノズルは電子部品実装装置の外部の設備、例えば、工場に設けられた大型のポンプで発生する空圧を利用して真空を発生させて吸引力を得る構造となっていた。
しかしながら、空圧から真空を発生させるには多量のエアが必要となり、工場では空圧を多岐の用途に用いることから、電子部品実装装置によるエアの浪費が問題となっていた。
そこで、従来の電子部品実装装置は、装置に真空ポンプを搭載し、外部設備からのエアの供給を不要とする工夫が図られていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−353694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電子部品実装装置に真空ポンプを搭載する場合には、外部からのエアの供給を不要とすることはできるが、ポンプそのものの消費電力が大きく、これに伴って電子部品実装装置の消費電力の増大化を招くという問題があった。
【0005】
本発明は、電子部品実装装置における消費電力の低減を図ることをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、電子部品の実装が行われる基板を保持する基板保持部と、実装される電子部品を供給する部品供給部と、前記基板に搭載する電子部品を吸着する昇降可能な吸着ノズルを備えたヘッドと、前記ヘッドを少なくとも前記部品供給部と前記保持された基板との間で移動可能とするヘッド移動手段と、前記吸着ノズルに吸引力を発生させるために大気圧よりも低い圧力を発生する吸引圧力発生源と、前記吸着ノズルと前記吸引圧力発生源との間に設けられた電磁弁と、前記吸引圧力発生源と前記電磁弁とを制御する吸引制御部とを備え、予め前記吸引圧力発生源と前記電磁弁との間を大気圧よりも低い状態とし、前記電磁弁の開閉により前記吸着ノズルで電子部品を吸着解放する電子部品実装装置において、前記吸引圧力発生源と前記電磁弁との間に圧力を検出する圧力検出手段を設け、前記吸引制御部は、前記圧力検出手段が所定の吸引力を確保するために予め定めた圧力の上限値を検出した場合には、予め定めた圧力の下限値を検出するまで前記吸引圧力発生源を駆動する制御を行うことを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記吸引圧力発生源と前記電磁弁との間にサージタンクを設けたことを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記電子部品実装装置は、実装する電子部品のリスト及び実装の順番が定められた生産プログラムに従って複数種の電子部品の実装を行うと共に、前記複数種の電子部品のそれぞれについて必要となる吸引力の中で最大となる吸引力を確保するために必要な圧力を前記圧力の上限値とすることを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の発明と同様の構成を備えると共に、電子部品の実装動作を行う実装モードとメンテナンスのための動作を行うメンテナンスモードの各々の動作モードを選択して動作させる動作制御部を備え、前記吸引制御部は、前記圧力の上限値を前記各動作モードごとに定め、選択されている動作モードに応じて前記吸引圧力発生源を駆動する制御を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明は、予め吸引圧力発生源と電磁弁との間を大気圧よりも低い低圧の状態とし、電磁弁を開放すると吸着ノズル内も低圧となり、電子部品を吸着することが可能となる。そして、電子部品の吸着の際に電磁弁の開放を繰り返すことにより、吸引圧力発生源と電磁弁との間の圧力が徐々に上昇し、所定の吸引力を確保するために予め定めた圧力の上限値が検出されると、吸引制御部は、吸引圧力発生源を駆動して圧力を降下させ、予め定めた圧力の下限値が検出されると停止させる。
なお、電磁弁を開放しなくとも、外気の侵入により吸引圧力発生源と電磁弁との間の圧力は徐々に上昇する場合もあり得るが、その場合でも同様に、予め定めた圧力の上限値が検出されると、吸引圧力発生源の駆動制御が行われる。
これにより、吸着ノズルは、吸引時に常に必要な吸引力を確保しつつ、吸引圧力発生源は、吸引圧力発生源−電磁弁間圧力を上限値から下限値にする際にのみ駆動させることとなり、駆動頻度の低減から消費電力の低減を図ることが可能となる。
【0011】
請求項2記載の発明は、サージタンクを備えるので、吸引圧力発生源の停止以後、圧力の上限値に至るまでの期間をより長くすることができ、吸引圧力発生源の一回の駆動につき、長期且つ多数の吸着動作を行うことが可能となる。このため、吸引圧力発生源の駆動頻度をより低減し、消費電力のさらなる低減を図ることが可能となる。
【0012】
請求項3記載の発明は、生産プログラムに従って複数種の電子部品の実装が行われる場合に、最大の吸引力が必要な電子部品に合わせて圧力の上限値を設定するので、常に吸着ノズルには最大の吸引力が確保され、生産プログラムの全ての電子部品の吸引をより確実に行うことが可能となる。
【0013】
請求項4記載の発明は、動作モードに応じて必要な圧力の上限値が選択されるので、必要以上に吸引圧力発生源を駆動することが回避され、さらなる消費電力の低減を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】発明の実施形態たる電子部品実装装置の平面図である。
【図2】電子部品実装装置の制御系を示すブロック図である。
【図3】吸着ノズルにより電子部品の吸着を行う構成の空気の経路を示す接続図である。
【図4】吸着ノズルにより電子部品の吸着を行う構成の信号経路を示す接続図である。
【図5】コントローラによる圧力調節制御の処理を流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施形態の全体構成)
本発明の実施形態について、図1乃至図5に基づいて説明する。図1は発明の実施形態たる電子部品実装装置100の平面図、図2は制御系を示すブロック図である。
電子部品実装装置100は、基板に各種の電子部品の搭載を行うものであって、電子部品の搭載手段として、搭載される電子部品を供給する複数の電子部品フィーダ101と、電子部品フィーダ101を複数並べて保持する電子部品供給部としてのフィーダバンク102と、X軸方向に沿って基板を搬送する基板搬送手段103と、当該基板搬送手段103による基板搬送経路の途中に設けられた基板に対する電子部品搭載作業を行うための基板保持部104と、電子部品を吸着する吸着ノズル105を搭載して電子部品の保持を行う部品保持手段としてのヘッド106と、ヘッド106を所定範囲内の任意の位置に駆動搬送するヘッド移動手段としてのX−Yガントリ107と、ヘッド106に搭載され、電子部品フィーダ101及び基板の撮像を行う撮像手段としてのCCDカメラ108と、全体の構成を支持するベースフレーム114と、ベースフレーム114に固定装備され、吸着ノズル105に吸着された電子部品の保持状態を求めるために下方から撮像を行う固定カメラ115と、電子部品実装装置100の搭載動作の制御を行う動作制御部としての制御装置120と、吸着ノズル105により電子部品の吸着を行う構成を制御するコントローラ10とを備えている。
なお、本実施形態の説明において、水平面に沿って互いに直交する一の方向をX軸方向とし、他の方向をY軸方向とし、垂直上下方向をZ軸方向と称することとする。
【0016】
基板搬送手段103は、図示しない搬送ベルトを備えており、その搬送ベルトにより基板をX軸方向に沿って搬送する。
また、前述したように、基板搬送手段103による基板搬送経路の途中には、電子部品を基板へ搭載する基板保持部104が設けられている。基板搬送手段103は、基板保持部104まで基板を搬送すると共に停止して、図示しない保持機構により基板の保持を行う。つまり、基板は保持機構により保持された状態で安定した電子部品の搭載作業が行われる。
【0017】
ヘッド106は、その先端部で外気の吸引により電子部品を吸着保持する吸着ノズル105と、この吸着ノズル105をZ軸方向に駆動する駆動源であるZ軸モータ111(図2参照)と、吸着ノズル105を介して保持された電子部品をZ軸方向を中心として回転駆動させる回転駆動源である回転モータ112(図2参照)とが設けられている。
【0018】
吸着ノズル105は必要に応じてヘッド106に複数搭載することが可能である。また、各吸着ノズル105は、先端部に交換可能なノズルチップを備えており、吸着する予定の電子部品の大きさに応じて適切なサイズのノズルチップが取り付けられるようになっている。各吸着ノズル105により電子部品の吸着を行う構成については後述する。
搭載作業時には、吸着ノズル105の先端部で所定の電子部品フィーダ101の受け取り位置101aから電子部品を吸着し、所定位置で基板に向かって吸着ノズル105を下降させると共に吸着ノズル105を回転させて電子部品の向きの調整を行いつつ搭載作業が行われる。
【0019】
CCDカメラ108は、ヘッド106に搭載されており、電子部品の吸着時や基板搭載時において、撮像を行い、電子部品又は基板に対して吸着ノズル105を位置決めするための制御に利用される。
【0020】
X−Yガントリ107は、X軸方向にヘッド106の移動を案内するX軸ガイドレール107aと、このX軸ガイドレール107aと共にヘッド106をY軸方向に案内する二本のY軸ガイドレール107bと、X軸方向に沿ってヘッド106を移動させる駆動源であるX軸モータ109(図2参照)と、X軸ガイドレール107aを介してヘッド106をY軸方向に移動させる駆動源であるY軸モータ110(図2参照)とを備えている。そして、各モータ109,110の駆動により、ヘッド106を二本のY軸ガイドレール107bの間となる領域のほぼ全体に搬送することを可能としている。
なお、各モータ109,110は、ぞれぞれの回転量が制御装置120に認識され、所望の回転量となるように制御されることにより、ヘッド106を介して吸着ノズル105やCCDカメラ108の位置決めを行っている。
また、電子部品の必要上、前記したフィーダバンク102,基板保持部104とはいずれもX−Yガントリ107によるヘッド106の搬送可能領域内に配置されている。
【0021】
固定カメラ115は、フィーダバンク102と基板保持部104との間において視線を垂直上方に向けて配置されている。吸着ノズル105が電子部品を吸着した状態でヘッド106が固定カメラ115の真上に移動し、固定カメラ115が撮像を行うことにより、画像処理装置140が撮像画像から吸着ノズル105に対する電子部品の位置ズレ及び向きを求め、基板に実装する際のヘッド106の位置決め補正及び部品角度補正の制御に反映させるようになっている。
【0022】
フィーダバンク102は、複数のX−Y平面に沿った平坦部を備え、当該平坦部に複数の電子部品フィーダ101がX軸方向に沿って羅列して載置装備される。
各電子部品フィーダ101は、後端部に電子部品を収納する部品テープのリールを保持している。部品テープは、その片面に長手方向に沿って均一間隔で凹状且つ矩形の部品収納穴Bが形成されている。そして、リールから繰り出された部品テープは電子部品フィーダ101の先端部まで搬送され、当該先端部で吸着ノズル105により部品収納穴B内の電子部品が吸着されるようになっている。
ここで、前述したCCDカメラ108は、吸着ノズル105による電子部品の吸着時に、予め電子部品フィーダ101の受け取り位置101aの撮像を行い、制御装置120が受け取り位置101aに吸着ノズル105が位置決めされるようにヘッド106の位置補正制御を行うようになっている。
【0023】
(制御装置)
図2は電子部品実装装置100の制御系を示すブロック図である。図2に示すように、制御装置120は、主に、X−Yガントリ107のX軸モータ109、Y軸モータ110、ヘッド106において吸着ノズル105の昇降を行うZ軸モータ111、吸着ノズル105の回転を行う回転モータ112の動作制御を行い、電子部品の実装動作に要する各種の処理及び制御を実行するCPU121と、各種の処理及び制御を実行するためのプログラムが格納されたシステムROM122と、各種のデータを格納することで各種の処理の作業領域となるRAM123と、CPU121と各種の機器との接続を図る図示しないI/F(インターフェース)と、各種の設定や操作に要するデータの入力を行うための操作パネル124と、各種の処理及び制御を実行するための設定データ、基板に搭載すべき電子部品のリスト、実装の順番及び各電子部品の受け取り位置と実装位置のデータ等が記録された生産プログラム127が格納されたEEPROM126と、各種設定の内容等を表示する表示モニタ125とを有している。また、前述した各モータ109〜112は、図示しないモータドライバを介して制御装置120に接続されている。
また、図2では、Z軸モータ111及び回転モータ112を一つのみ図示しているが、吸着ノズル105をヘッド106に複数搭載する場合には、Z軸モータ111及び回転モータ112も吸着ノズル105と同じ個体数だけ設けられるものとする。
【0024】
生産プログラム127は、基板Kに対する一連の電子部品実装動作に必要な制御情報が記録されている。即ち、この生産プログラム127には、実装すべき電子部品の種類、各電子部品の実装の順番、各電子部品の受け取り位置座標(当該電子部品を格納する電子部品フィーダ101の受け取り位置101aの位置座標)、各電子部品の基板Kに対する実装位置座標、各電子部品に使用されるノズルチップのサイズ、各電子部品の重量、各電子部品のサイズ等が記録されている。
【0025】
制御装置120は、基板Kに対する電子部品の実装作業を実行する実装モードと、メンテナンス作業を実行するメンテナンスモードと、いずれの動作も実行しない待機モードの三つの動作モードを操作パネル124のモード選択の入力により選択することができる。
実装モードでは、制御装置120のCPU121は、上記生産プログラム127の読み込みを行い、実装の順番が先頭となる電子部品について、X軸とY軸のモータ109,110を制御してヘッド106を当該電子部品の受け取り位置に位置決めし、Z軸モータ111により吸着ノズル105を下降し吸着する。そして、吸着ノズル105の上昇後、固定カメラ115の位置を通過して電子部品を撮像後、回転モータ112により角度補正しつつ、基板Kの実装位置にヘッド106を位置決めする。その際には、CCDカメラ108により基板Kの位置決めマークを撮像し、前述した固定カメラ115の撮像画像による位置補正を行いつつ電子部品を正確に実装位置に位置決めし、吸着ノズル105の下降移動により実装が行われる。そして、この実装動作を、生産プログラム127に設定された全ての電子部品について設定された順番に従って繰り返し実行することで、一連の実装作業が行われるようになっている。
【0026】
また、メンテナンスモードでは、制御装置120のCPU121は、メンテナンス作業用のノズルチップを装着した吸着ノズル105により、ダミーの電子部品の吸着動作が行われ、固定カメラ115,CCDカメラ108により撮像試験、ヘッド106の移動動作試験、各吸着ノズル105の回転、上下動などの動作試験等が実施される。
また、待機モードでは、必要最小限の構成(例えば制御装置120等)のみに電源供給が行われ、他の構成については全て電源がOFFされて動作停止状態とし、操作パネル124から実装モード或いはメンテナンスモードの選択が行われるまでは上記の状態が維持される。
【0027】
(吸着ノズルにより電子部品の吸着を行う構成)
吸着ノズル105により電子部品の吸着を行う構成について説明する。図3は吸着ノズル105により電子部品の吸着を行う構成の空気の経路を示す接続図であり、図4は吸着ノズル105により電子部品の吸着を行う構成の信号経路を示す接続図である。図3,4はいずれも吸着ノズル105を複数搭載した場合を例示している。
【0028】
吸着ノズル105により電子部品の吸着を行う構成は、空気の吸引を行う吸引圧力発生源としての真空ポンプ2と、真空ポンプ2によりその内部が大気圧より低い状態に減圧されるサージタンク3と、サージタンク3から引き出される空気経路である配管4と、配管4から各吸着ノズル105ごとに分岐されて延びる空気経路であるエアーチューブ5と、配管4の途中に設けられた圧力検出手段としての圧力センサ6と、各エアーチューブ5ごとにその途中に設けられた電磁弁7と、真空ポンプ2の電源8と、真空ポンプ2に対する電源8からの電源供給のON-OFFの切り換えを行うスイッチ9と、各電磁弁7の開閉と圧力センサ6により検出圧力に応じた真空ポンプ2のON-OFF制御とを行う吸引制御部としてのコントローラ10とを備えている。
なお、図4において細線は信号線、太線は電源線を示している。
【0029】
上記構成において、通常は各吸着ノズル105の電磁弁7は閉じられており、真空ポンプ2を駆動すると、各電磁弁7より上流側(真空ポンプ2側を上流側、吸着ノズル105側を下流側とする)の各構成は全て減圧され、大気圧よりも低圧状態とすることができる。そして、電子部品の吸着時には、吸着を行う吸着ノズル105の電磁弁7を開放すると、吸着ノズル105の先端から外気の吸引が行われ、電子部品を吸着することができる。
サージタンク3は、配管4,各エアーチューブ5,各吸着ノズル105の内部容積に比べて十分に大きな容積のタンクであり、十分に減圧されると、真空ポンプ2を駆動しなくとも長時間の吸着ノズル105における吸着が可能である。なお、各電磁弁7よりも上流側、特に、真空ポンプ2とサージタンク3との間には停止時の真空ポンプ2から下流側への大気の侵入を防止するための逆止弁を設けても良い。
また、圧力センサ6は、各電磁弁7よりも上流側の内部圧力を検出し、その検出信号をコントローラ10に出力する。
【0030】
コントローラ10は、制御装置120と通信を行っており、制御装置120が実装モードの動作制御を実行する際には、いずれかの吸着ノズル105に対する吸着動作の制御指令を受けると、対応する電磁弁7を所定時間開放する動作制御を実行する。
また、コントローラ10は、真空ポンプ2のON-OFFにより各電磁弁7よりも上流側の内圧を予め定められた圧力の下限値から上限値までの間に維持する圧力調節制御を実行する。なお、圧力の下限値と上限値のデータは、コントローラ10が備える図示しないメモリ内に登録され記憶されるようになっている。
【0031】
上記圧力調節制御について説明する。
コントローラ10は、電子部品の実装動作中或いは休止中に限らず、圧力センサ6の検出圧力を周期的に検出し、その検出圧力が圧力の上限値に達した場合には、スイッチ9をONに切り換えて真空ポンプ2の駆動を開始して圧力を降下する。そして、検出圧力が圧力の下限値に達したらスイッチ9をOFFに切り換えて真空ポンプ2の駆動を停止する。各吸着ノズル105は電磁弁7の開放により、或いは電磁弁7を閉じている状態でも少しずつ外気が通過して内部圧力は徐々に上昇するが、コントローラ10は、周期的に圧力センサ6の検出圧力の上限値を監視しているので、真空ポンプ2から各電磁弁7までの内部圧力は、常に、圧力の下限値から上限値の間に維持されることとなる。
【0032】
上記圧力調節制御における圧力の下限値(真空圧力が高い状態、即ち、より真空に近い状態で吸引力が高くなる状態)は、真空ポンプ2の真空引きの能力の限界値、或いは、減圧により外部からの圧力に対する各部の耐久強度を超える圧力が生じない値が設定される。
なお、前述した実装モード、メンテナンスモード、待機モードのいずれが選択されている場合も、圧力の下限値は同じ設定値が採用される。
【0033】
また、圧力調節制御における圧力の上限値(真空圧力が低い状態、即ち、より大気圧に近い状態で吸引力が低くなる状態)は、吸着ノズル105における電子部品の吸引に必要な最小限度の吸引力を確保可能な圧力に設定される。
なお、吸着ノズル105は生産プログラムの内容によっては複数の吸着ノズル105の搭載が必要であり、また、各吸着ノズル105のノズルチップのサイズ或いは吸引対象となる電子部品の重量などによって必要となる吸引力及び圧力値が変わることとなる。また、前述した三つの動作モードによっても、吸着ノズルに必要な吸引力は変わるので、圧力値の上限値も変わることとなる。
【0034】
まず、実装モードの圧力値の上限値について説明する。
圧力値の上限値は、個々の吸着ノズル105について、生産プログラムの複数の電子部品の実装動作において最も大きな吸引力が必要となる場合の当該吸引力を確保することが可能な圧力の値をそれぞれ求め、各吸着ノズルごとに比較した場合に最も低い圧力値(真空圧力が高い状態、より大気圧より低い圧力値)が、最終的な圧力の上限値に設定される。これにより、生産プログラムにより実装動作の実行時に、各吸着ノズル105の吸着対象とする全ての電子部品について吸着可能な吸引力を常に確保することができる。
【0035】
なお、吸着ノズル105に装着されるノズルチップのサイズと吸着の対象となる電子部品の重量とが予め分かっていれば、ノズルチップの内径からノズルの吸着面積を求めることができ、吸着ノズル105の吸引力と必要な圧力との関係は次式で求めることができる。
W=A×P×S
W:吸引力,A:定数,P:真空圧力(大気圧−内部圧力),S:ノズルの吸着面積
【0036】
従って、吸引力Wが最も重い電子部品を吸着可能な値として、真空圧力Pを逆算し、内部の圧力を求めることでその吸着ノズル105における圧力の上限値を求めることができる。そして、吸着ノズル105が複数ある場合には、各吸着ノズル105における圧力の上限値の中で最も低い圧力を総合的な圧力の上限値に設定する。
【0037】
このように演算により圧力の上限値を求める場合には、コントローラ10が生産プログラムを読み込んで、使用される吸着ノズル105の本数とノズルチップの内径と電子部品の重量を取得して、自動的に算出し設定することも可能である。
また、電子部品実装装置100の機種ごとに真空エアー経路の容量等の違いがあるため、予め算出することが困難な場合もあり、そのような場合には、実際の吸着試験により各吸着ノズル105で部品吸着評価を行い、部品吸着が正常に出来なくなり、実装不良を起す直前の圧力値を上限値とする。
この場合には、総合的な圧力の上限値を作業前に作業者が数値入力により設定しても良いし、各電子部品とその部品吸着評価により得られた部品ごとの圧力値の上限値とをテーブル化してコントローラ10のメモリ内に登録し、生産プログラムが読み込まれると、テーブルから実装対象の電子部品の圧力値の上限値を特定し、その中から最も低い圧力値を総合的な圧力の上限値としてコントローラ10が自動的に算出し設定する構成としても良い。
【0038】
また、メンテナンスモードでは、使用される吸着ノズル105の本数、ノズルチップの種類、ダミーの電子部品の重量などが全て固定的なパラメータなので、かかる固定パラーメータに基づいて上記算出或いは部品吸着評価で求められた一定値が圧力の上限値に設定される。
また、待機モードでは、各吸着ノズル105により電子部品の吸着が一切行われないので、圧力の上限値が大気圧(真空圧力が0、即ち、吸引力0となる圧力)の値に選択され、真空ポンプの電源が常にOFFになるようになっている。
【0039】
このようにして、コントローラ10は、制御装置120における現在の動作モードの通知を受けて、その時の動作モードに適した圧力の上限値と下限値とを自動的に適宜選択するようになっている。
【0040】
(圧力調節制御の処理の流れ)
上記コントローラ10による圧力調節制御の処理の流れを図5のフローチャートにより説明する。
電子部品実装装置100の主電源がONされると(ステップS1)、コントローラ10は真空ポンプ2のスイッチ9をONに切り替えて駆動を開始して内部圧力を降下する(ステップS3)。
そして、圧力センサ6により前記内部圧力を検出し(ステップS5)、当該検出した圧力が現在の動作モードにおける圧力の下限値以下であるか判定する(ステップS7)。
そして、検出圧力が圧力の下限値に達していなければ真空ポンプ2の駆動を継続し、検出圧力が圧力の下限値に達していれば真空ポンプ2の駆動をスイッチ9のOFFにより停止させる(ステップS9)。
【0041】
真空ポンプ2の停止後、電子部品実装装置100は所定の部品実装プログラムを実行して実装作業が行われる。即ち、吸着ノズル105を電子部品実装装置100に配置された電子部品供給装置が供給する電子部品上に降下し、電磁弁7をオンして前記吸着ノズル105に真空圧を供給することで電子部品を吸着した後、前記吸着ノズル105を基板上の所定位置に移送して前記電磁弁7をオフして吸着ノズル105に外気を導入して大気圧にすることで前記吸着ノズル105から電子部品を開放することで基板に搭載する実装作業を繰り返し行うことで、真空ポンプと電磁弁との間の内部圧力が次第に上昇する。コントローラ10は、前記実装作業中周期的に圧力センサ6により前記内部圧力を監視し(ステップS11)、吸着ノズル105の使用又は外気の侵入により、当該検出圧力が現在の動作モードにおける設定圧力の上限値以上となったか否かを判定する(ステップS13)。
そして、検出圧力が設定圧力の上限値に達していなければ処理をステップS11に戻して、再び、圧力センサ6の検出圧力を取得する。
また、検出圧力が圧力の上限値に達していれば真空ポンプ2の駆動をスイッチ9のONにより開始させ圧力を降下する(ステップS15)。
その後は、処理をステップS5に戻して、圧力の下限値となるまで真空ポンプ2の駆動を行う。そして、コントローラ10は、電子部品実装装置100の主電源がOFFされるまで、ステップS5〜S15の処理を繰り返すことにより、真空ポンプ2から各電磁弁7までの内部圧力を下限値から上限値までの間に維持する制御が行われる。
【0042】
(実施形態の効果)
電子部品実装装置100では、コントローラ10が行う圧力調節制御により、真空ポンプ2の駆動が予め設定した圧力の上限値から下限値に移行させるまでの間のみに限られるので、各吸着ノズル105の必要な吸引力を確保しつつ、真空ポンプ2の駆動頻度の低減を図ることができ、装置全体の消費電力の低減を図ることが可能となる。
【0043】
また、実装モードにおける圧力の上限値は、生産プログラム127に予定された電子部品の中で最大の吸引力が必要な電子部品に合わせて設定するので、常に各吸着ノズル105には最大の吸引力が確保され、生産プログラムの全ての電子部品の吸引をより確実に行うことが可能となる。
さらに、圧力調節制御における圧力の上限値は、各種の動作モードに応じて必要な値が選択されるので、必要以上に真空ポンプ2を駆動することが回避され、さらなる消費電力の低減を図ることが可能となる。
【0044】
(その他)
なお、実装モードの圧力の上限値は、所定の吸引力を確保するための限度値と一致させなくとも良い。例えば、圧力の上限値は限度値よりも幾分余裕を持たせて低めとし、吸着ノズル105の吸引力が限度に達する手前の状態で真空ポンプ2が駆動を開始するようにしても良い。これにより、吸引力低下による吸着エラーがより堅実に回避されることとなる。
【0045】
また、上述した圧力調節制御は、実装動作に非同期で真空ポンプ2の駆動を行っているが、例えば、実装モードのように、吸着動作により圧力の上昇が生じやすい場合には、各電磁弁7の開放と同期して圧力センサ6の検出圧力の読み込みを行い、圧力の上限値の到達を監視する処理を行っても良い。
【符号の説明】
【0046】
2 真空ポンプ(吸引圧力発生源)
3 サージタンク
6 圧力センサ(圧力検出手段)
7 電磁弁
10 コントローラ(吸引制御部)
100 電子部品実装装置
101 電子部品フィーダ(部品供給部)
102 フィーダバンク(部品供給部)
104 基板保持部
105 吸着ノズル
106 ヘッド
107 X−Yガントリ(ヘッド移動手段)
109 X軸モータ(ヘッド移動手段)
110 Y軸モータ(ヘッド移動手段)
120 制御装置(動作制御部)
127 生産プログラム
K 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品の実装が行われる基板を保持する基板保持部と、
実装される電子部品を供給する部品供給部と、
前記基板に搭載する電子部品を吸着する昇降可能な吸着ノズルを備えたヘッドと、
前記ヘッドを少なくとも前記部品供給部と前記保持された基板との間で移動可能とするヘッド移動手段と、
前記吸着ノズルに吸引力を発生させるために大気圧よりも低い圧力を発生する吸引圧力発生源と、
前記吸着ノズルと前記吸引圧力発生源との間に設けられた電磁弁と、
前記吸引圧力発生源と前記電磁弁とを制御する吸引制御部とを備え、
予め前記吸引圧力発生源と前記電磁弁との間を大気圧よりも低い状態とし、前記電磁弁の開閉により前記吸着ノズルで電子部品を吸着解放する電子部品実装装置において、
前記吸引圧力発生源と前記電磁弁との間に圧力を検出する圧力検出手段を設け、
前記吸引制御部は、前記圧力検出手段が所定の吸引力を確保するために予め定めた圧力の上限値を検出した場合には、予め定めた圧力の下限値を検出するまで前記吸引圧力発生源を駆動する制御を行うことを特徴とする電子部品実装装置。
【請求項2】
前記吸引圧力発生源と前記電磁弁との間にサージタンクを設けたことを特徴とする請求項1記載の電子部品実装装置。
【請求項3】
前記電子部品実装装置は、実装する電子部品のリスト及び実装の順番が定められた生産プログラムに従って複数種の電子部品の実装を行うと共に、
前記複数種の電子部品のそれぞれについて必要となる吸引力の中で最大となる吸引力を確保するために必要な圧力を前記圧力の上限値とすることを特徴とする請求項1又は2記載の電子部品実装装置。
【請求項4】
電子部品の実装動作を行う実装モードとメンテナンスのための動作を行うメンテナンスモードの各々の動作モードを選択して動作させる動作制御部を備え、
前記吸引制御部は、前記圧力の上限値を前記各動作モードごとに定め、選択されている動作モードに応じて前記吸引圧力発生源を駆動する制御を行うことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電子部品実装装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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