説明

電子部品用スペーサ

【課題】種々の径のリードを確実に保持して回路基板に取り付けることができる電子部品用スペーサを提供する。
【解決手段】耐熱性及び絶縁性を有する樹脂から成り、電子部品に装着可能に成型されたスペーサ本体12と、スペーサ本体12に貫通して設けられ電子部品12の各リード4を挿通可能に設けられた挿通孔14を備える。挿通孔14の内周面の一部に形成されリード4の太さよりも小さい内径の挟持部である開口縁14cを備える。挿通孔14に沿ってスペーサ本体12の一側面がリード挿通方向に分割され、挿通孔12に連通してスペーサ本体12の側面に開口したスリット16を備える。挿通孔14の周囲の部分には、スリット16を開く方向へたわみ変形しやすくするために、スペーサ本体12の肉厚を薄くしたぬすみ部20,22が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子部品に装着して、回路基板に取り付ける電子部品用スペーサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器の回路基板に実装される電子部品の中には、パワートランジスタ等のように、リードが回路基板の取付穴に差し込まれてハンダ付けされているものがある。さらに、電子部品の発熱を吸収し動作を安定させるために、ファンにより外気を吹き付けて強制空冷している電子機器もあり、これらの構造の場合、蓋部から導入された空気に含まれる塵埃などが、基板やその表面に取り付けられた電子部品、及び基板ハンダ付け面に付着し、リード間に堆積することがある。そして、その塵埃などが湿気を帯びたりすると、導電部であるリード間で短絡を起こし故障の原因となる恐れがあった。また、金属くずなどの導電性の埃が飛来して短絡を起こすこともあった。そのため、電子部品のリードにスペーサを設けて、短絡を防止した構造があった。
【0003】
例えば、図10に示す電子部品用スペーサ1のように、絶縁性を有し柔軟性のある樹脂により直方体に形成されたスペーサ本体2に、電子部品3のリード4が挿通され反対側へ突出する挿通孔5が設けられたものがある。挿通孔5は、電子部品3に近い部分、つまり回路基板6と反対の部分は、リード4よりも内径が太い大径部5aであり、回路基板6に近い部分は徐々に内径が小さくなるテーパ部5bが連続して設けられた構造になっている。テーパ部5bの先はスペーサ本体2の回路基板6側の面に連通する開口縁5cであり、開口縁5cはリード4より僅かに小さい内径に形成されている。
【0004】
この電子部品用スペーサ1の使用方法は、電子部品用スペーサ1の挿通孔5にリード4を挿通すると、開口縁5cがリード4に押し広げられて圧縮変形され、リード4は挿通孔5の開口縁5cに圧迫されて係止される。そしてリード4を取り付けた状態で、回路基板6に取り付けられ、リード4がハンダ付けされて、電子部品3が回路基板6に装着される。
【0005】
また、電子部品用スペーサ1には開口縁5cが電子部品3のリード4よりも大きくゆとりを有して形成されたものもある。このような電子部品用スペーサ1は、接着剤等で電子部品3に取り付けられていた。
【0006】
その他、特許文献1、2には、電子部品やリードと回路基板との間に一定の距離を持たせるために、電子部品と回路基板の間にスペーサを取り付けた構造が開示されている。
【特許文献1】特開平6−69624号公報
【特許文献2】特開平6−334296号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の技術の場合、電子部品用スペーサ1の挿通孔5の開口縁5cは、電子部品3のリード4より僅かに小さい内径に形成しなければならず、高い精度が必要であった。しかも、電子部品3は、メーカ、品番によってリード径が異なり、リード4の太さが変わると開口縁5cを変えなければならず、多種のリード径に対応する樹脂素材、挿通孔5の内径、特に開口縁5cの内径を選定する必要があり、製造や部品管理が面倒であり、コストもかかるものであった。電子部品用スペーサ1は開口縁5cがリード4に押されて圧縮変形することで係止されるため、スペーサ本体2を適度に柔軟性を有する樹脂で作る必要があるが、柔軟性を有する樹脂は耐熱性が低く、リード4を回路基板6にハンダ付けする際の熱の影響を受けることがあった。従って、自動ハンダ付け装置に対応させるため耐熱性の高い樹脂を使用すると、樹脂の柔軟性、伸縮性が無く、このような挿通孔5を設定することが難しかった。また、接着剤で電子部品3と電子部品用スペーサ1を固定する方法は、組立作業時の工数が増加し、また接着剤を硬化させる等の接着工程が必要であり、時間がかかるため生産効率が良くなく、コストも掛かっていた。
【0008】
この発明は、上記従来の技術の問題点に鑑みてなされたものであり、種々の径のリードを確実に保持して回路基板に取り付けることができる電子部品用スペーサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、耐熱性及び絶縁性を有する樹脂から成り、電子部品に装着可能に成型されたスペーサ本体と、前記スペーサ本体に貫通して設けられ前記電子部品の各リードを挿通可能に設けられた挿通孔と、前記挿通孔の内周面の一部に形成され前記リードの太さよりも小さい内径の挟持部と、前記挿通孔に沿って前記スペーサ本体の一側面がリード挿通方向に分割され、前記挿通孔に連通して前記スペーサ本体側面に開口したスリットが形成されている電子部品用スペーサである。
【0010】
前記挿通孔の周囲の部分には、前記スリットを開く方向へたわみ変形しやすくするために、前記スペーサ本体の肉厚を薄くしたぬすみ部が設けられている。さらに、前記ぬすみ部には、たわみ変形する部分に切欠部が設けられていると良い。
【0011】
前記スペーサ本体には、前記電子部品が実装される回路基板の隔壁用穴を介して回路基板の反対側に突出する板状の隔壁部が設けられている。
【0012】
前記スリットは、前記スペーサ本体の一側面から前記挿通孔に達し、さらに前記挿通孔を通過して前記一側面と対面する他方の側面近傍に達して形成されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電子部品用スペーサは、簡単な構造でいろいろな電子部品のリードを確実に保持して取り付け、回路基板に装着することができる。また、スペーサ本体は、耐熱性が高い樹脂で作ることができ、ハンダ付けの熱による影響を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1〜図3はこの発明の第一実施形態を示すもので、この実施形態の電子部品用スペーサ10は、図1に示すように、耐熱性が高く絶縁性を有するナイロン等の樹脂により直方体に形成されたスペーサ本体12が設けられている。スペーサ本体12は、スペーサ本体12の一方の側面12aには電子部品が取り付けられ、側面12aに対して平行な反対側の側面12bが図示しない回路基板に取り付けられるものである。側面12a,12bは互いに対称な形であり、一方向に長く形成された矩形であり、長手方向の辺には一対の側面12c,12dが連続し、長手方向に直行する側縁部には一対の側面12e,12fが連続して設けられている。
【0015】
スペーサ本体12には、電子部品のリードが挿通される挿通孔14が設けられている。挿通孔14は、スペーサ本体12の側面12aの、長手方向に並んで2個設けられ、側面12aと側面12bを貫通して設けられている。一対の挿通孔14は互いに平行に、側面12a,12bに対してほぼ直角に挿通して形成されている。
【0016】
挿通孔14の内周面の、スペーサ本体12の側面12a側の約半分は、電子部品のリードよりも内径が太い大径部14aであり、大径部14aの側面12b側は、徐々に内径が小さくなるテーパ部14bが連続して設けられている。テーパ部14bは、側面12bに開口して開口縁14cとなり、開口縁14cはリードより僅かに小さい内径に形成され、リードが嵌合して係止される挟持部となる。
【0017】
挿通孔14には、スペーサ本体12の側面12cに開口するスリット16が設けられている。スリット16は、側面12cに対して直角方向の深さが一定であり、挿通孔14の大径部14aを通過して、側面12cと挿通孔14の中心の距離をほぼ2倍した深さに形成されている。スリット16は、挿通孔14の中心に沿って形成され、スリット16の幅は開口縁14cの直径よりもわずかに短く形成されている。スリット16の一方の端部は側面12aに、他方の端部は側面12bに貫通している。一対の挿通孔14に、それぞれ同形のスリット16が設けられている。
【0018】
スペーサ本体12の側面12cには、一対の挿通孔14の中間に、第一ぬすみ部18が設けられている。第一ぬすみ部18は、側面12cに対して直角方向の深さが一定であり、挿通孔14の中心軸付近とほぼ同じ位置の深さに形成されている。第一ぬすみ部18は、挿通孔14に対して平行な矩形状に形成され、この矩形の幅は一対の挿通孔14の大径部14aの径と同程度である。第一ぬすみ部18の一方の端部は、側面12a挿通孔14の大径部14aの近傍付近から始まり、他方の端部は側面12bに貫通している。
【0019】
スペーサ本体12の側面12cには、図1において左に位置する挿通孔14の左側に、第2ぬすみ部20が設けられている。第2ぬすみ部20は、側面12cに対して直角方向の深さが一定であり、スリット16とほぼ同じ深さに形成されている。第2ぬすみ部20は、側面12eに開口され、挿通孔14側の壁部20aは、挿通孔14の大径部14aの同心円筒状に、側面12e側に膨出している。
【0020】
スペーサ本体12の側面12cには、図1において右に位置する挿通孔14の右側に、第2ぬすみ部20と対称形の第3ぬすみ部22が設けられている。第3ぬすみ部22は、側面12cに対して直角方向の深さが一定であり、スリット16とほぼ同じ深さに形成されている。第3ぬすみ部22は、側面12fに開口され、挿通孔14側の壁部22aは、挿通孔14の大径部14aの同心円筒状に、側面12f側に膨出している。
【0021】
次に、この実施形態の電子部品用スペーサ10の使用方法について説明する。電子部品の2本のリードを、電子部品用スペーサ10のスペーサ本体12に設けられた挿通孔14に、側面12aから差し込み先端を側面12bへ出す。このとき電子部品のリードは開口縁14cに隙間なく嵌合され、スリット16がリードに押し広げられて、スペーサ本体12が僅かにたわみ変形し、その弾性力でリードを挟持し、係止する。そして電子部品に係止された電子部品用スペーサ10を回路基板の所定位置にセットし、リードをハンダ付けして接続される。
【0022】
この実施形態の電子部品用スペーサ10によれば、簡単な構造で種々の径の電子部品のリードを確実に保持して固定し、回路基板に取り付けることができる。電子部品は、メーカ、品番によってリード径や断面形状が異なるが、リードの断面形状や太さが変わっても確実に保持することができるため、追加作業が不要であり、作業効率が良好である。多種のリード径に対応した樹脂素材、挿通孔14の内径、特に開口縁14cの内径を選定する必要がなく、多種の部品管理や高い精度も不要である。また自動ハンダ付け装置に対応可能な耐熱性の高い樹脂は硬いものが多いが、電子部品用スペーサ10によれば、耐熱性の高い樹脂を使用しても十分にたわんでリードに確実に係止される。従って、柔軟性、伸縮性の低い樹脂を使用した場合でも、電子部品のリードの保持が確実であり、ハンダ付けの熱による変形等の影響を抑えることができる。また、接着剤で電子部品と電子部品用スペーサを固定する必要がなく、生産効率がよく、コストも安価である。
【0023】
次にこの発明の第二実施形態について図4〜図6に基づいて説明する。なお、ここで、上記実施形態と同様の部材は同一の符号を付して説明を省略する。この実施形態の電子部品用スペーサ23は、スペーサ本体12の第2ぬすみ部20に、第1切欠部24が形成されている。第1切欠部24は、第2ぬすみ部20の壁部20aの、側面12b側の基端部に沿って形成され、側面12bに対して平行方向の深さが一定であり、挿通孔14とスリット16に達しない深さに形成されている。第1切欠部24は、壁部20aの側面12b側の基端部に沿って直線状に形成され、第1切欠部24の一方の端部は第2ぬすみ部20の中心付近から始まり、他方の端部は側面12bに貫通している。
【0024】
スペーサ本体12の第3ぬすみ部22には、第1切欠部24と対称形の第2切欠部26が設けられている。第2切欠部26は、第3ぬすみ部22の壁部22aの、側面12b側の基端部に沿って形成され、側面12bに対して平行方向の深さが一定であり、挿通孔14とスリット16に達しない深さに形成されている。第2切欠部26は、壁部22aの側面12b側の基端部に沿って直線状に形成され、第2切欠部26の一方の端部は第3ぬすみ部22の中心付近から始まり、他方の端部は側面12bに貫通している。
【0025】
この実施形態の電子部品用スペーサ23は、上記実施の形態と同様の使用方法で、同様の効果を有するものである。電子部品用スペーサ23は、第1切欠部24、第2切欠部26が設けられているため、壁部20a,22aが薄肉となり、スリット16が開くときに側方へ容易にたわみ変形する。このため硬い樹脂で作っても大きなたわみ変形が容易に得られ、電子部品のリードに確実に係止することができる。
【0026】
次にこの発明の第三実施形態について図7,8に基づいて説明する。なお、ここで、上記実施形態と同様の部材は同一の符号を付して説明を省略する。この実施形態の電子部品用スペーサ28は、スペーサ本体12の側面12bに、回路基板31に差し込まれる隔壁30が設けられている。隔壁30は、側面12bの、側面12dに連続する辺に沿って形成され、側面12bからほぼ直角に突出し、側面12bからの突出量は一定である。そして、隔壁30の長手方向の両端部は、挿通孔14cより外側で側面12e,12fより少し内側に位置している。
【0027】
この実施形態の電子部品用スペーサ28の使用方法は、電子部品3のリード4に取り付けて、回路基板31の所定位置にセットされ、装着される。回路基板31には予め隔壁用穴31aが設けられ、隔壁用穴31aに隔壁30を差し込んで、位置決めを行う。
【0028】
この実施形態の電子部品用スペーサ28によれば、回路基板31にセットする際に、回路基板31の隔壁用穴31aに隔壁30を差し込むことで、確実に位置決めすることができ、装着の精度を高めることができる。また、回路基板31に取り付けられたその他の電子機器との短絡を防止することができる。
【0029】
次にこの発明の第四実施形態について図9に基づいて説明する。なお、ここで、上記実施形態と同様の部材は同様の符号を付して説明を省略する。この実施形態の電子部品用スペーサ32は、スペーサ本体12の側面12bに、開口縁14cに連通する切込線34が設けられている。切込線34は、開口縁14cを中心としてスリット16の深さ方向に対してほぼ直角に、つまり側面12cに対して平行に、開口縁14cの両側に突出して形成されている。切込線34の長さは、開口縁14cの半径程度の長さである。
【0030】
この実施形態の電子部品用スペーサ32によれば、上記実施の形態と同様の使用方法で、同様の効果を有するものである。また、開口縁14cに切込線34が設けられていることにより、開口縁14cが広がりやすくなる。このため硬い樹脂で作っても容易に広がり、より径が大きいリードにも使用することができる。
【0031】
なお、この発明の電子部品用スペーサは、上記各実施形態に限定されず、適宜変更可能である。挿通孔の形状や数、各ぬすみ部の形状は確実にたわみ変形して適度な弾性力で電子部品のリードに係止されるものであれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明の第一実施形態の電子部品用スペーサの正面図(a)、右側面図(b)、底面図(c)である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】図1のB−B線断面図である。
【図4】この発明の第二実施形態の電子部品用スペーサの正面図(a)、右側面図(b)、底面図(c)である。
【図5】図4のA−A線断面図である。
【図6】図4のB−B線断面図である。
【図7】この発明の第三実施形態の電子部品用スペーサの正面図(a)、右側面図(b)、底面図(c)である。
【図8】この実施形態の電子部品用スペーサの使用状態を示す右側面図である。
【図9】この発明の第四実施形態の電子部品用スペーサの底面図である。
【図10】従来の技術の電子部品用スペーサの正面図(a)と底面図(b)である。
【符号の説明】
【0033】
4 リード
10 電子部品用スペーサ
12 スペーサ本体
14 挿通孔
14c 開口縁
16 スリット
18 第1ぬすみ部
20 第2ぬすみ部
22 第3ぬすみ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱性及び絶縁性を有する樹脂から成り、電子部品に装着可能に成型されたスペーサ本体と、前記スペーサ本体に貫通して設けられ前記電子部品の各リードを挿通可能に設けられた挿通孔と、前記挿通孔の内周面の一部に形成され前記リードの太さよりも小さい内径の挟持部と、前記挿通孔に沿って前記スペーサ本体の一側面がリード挿通方向に分割され、前記挿通孔に連通して前記スペーサ本体側面に開口したスリットが形成されていることを特徴とする電子部品用スペーサ。
【請求項2】
前記挿通孔の周囲の部分には、前記スリットを開く方向へたわみ変形しやすくするために、前記スペーサ本体の肉厚を薄くしたぬすみ部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の電子部品用スペーサ。
【請求項3】
前記ぬすみ部には、たわみ変形する部分に切欠部が設けられていることを特徴とする請求項2記載の電子部品用スペーサ。
【請求項4】
前記スペーサ本体には、前記電子部品が実装される回路基板の隔壁用穴を介して回路基板の反対側に突出する板状の隔壁部が設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の電子部品用スペーサ。
【請求項5】
前記スリットは、前記スペーサ本体の一側面から前記挿通孔に達し、さらに前記挿通孔を通過して前記一側面と対面する他方の側面近傍に達して形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の電子部品用スペーサ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−130593(P2008−130593A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−310222(P2006−310222)
【出願日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(000103208)コーセル株式会社 (80)
【Fターム(参考)】