電子顕微鏡観察用試料の作製方法
【課題】比較的簡易な作業にて、電子顕微鏡で容易に観察することができる電子顕微鏡観察用試料の作製方法を提供することにある。
【解決手段】基材に溶射皮膜を施した製品本体から当該溶射皮膜の一部を採取する工程(ステップS1)と、採取した溶射皮膜を溶融粒子に分離する工程(ステップS2)と、前記溶融粒子と溶液を容器に投入し当該溶液を攪拌する工程(ステップS3)と、前記溶液を攪拌して所定時間経過後に、複数の孔が設けられた試料支持体により当該溶液内に浮遊する溶融粒子を掬う工程(ステップS4)と、前記試料支持体に固定膜を形成する工程(ステップS5)を順番に行うことにより電子顕微鏡観察用試料を作製するようにした。
【解決手段】基材に溶射皮膜を施した製品本体から当該溶射皮膜の一部を採取する工程(ステップS1)と、採取した溶射皮膜を溶融粒子に分離する工程(ステップS2)と、前記溶融粒子と溶液を容器に投入し当該溶液を攪拌する工程(ステップS3)と、前記溶液を攪拌して所定時間経過後に、複数の孔が設けられた試料支持体により当該溶液内に浮遊する溶融粒子を掬う工程(ステップS4)と、前記試料支持体に固定膜を形成する工程(ステップS5)を順番に行うことにより電子顕微鏡観察用試料を作製するようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子顕微鏡観察用試料の作製方法に関し、詳細にはガスタービンや蒸気タービンなどのタービンの基材に形成した溶射皮膜を直接観察するための電子顕微鏡観察用試料を作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンや蒸気タービンなどのタービンでは、従来から、耐酸化性などの耐食性、耐磨耗性、耐高温性などを高めるために、各種の原料粉末(金属粉末)が溶融した溶融粒子からなる溶射皮膜を基材の表面に形成したものが用いられている。
【0003】
ところで、上述した各種の原料粉末による上述した各特性について研究が進められ、溶射皮膜などセラミックスの特性を明らかにしようとする観点から、種々の分析が行われている。例えば、特許文献1に記載のマイクログリット付メッシュを用いた透過型電子顕微鏡でのその場観察や、走査型電子顕微鏡観察などの電子顕微鏡観察などによる分析が行われている。
これら電子顕微鏡観察では、タービンの製品群から抜き取った試験体や、タービンの製品と一緒に作製されたダミーの試験体を破壊(壁開)したり粉砕したりして作製した電子顕微鏡観察用試料が用いられている。そして、この試料を電子顕微鏡で観察することにより、溶融皮膜そのものの分析や溶融皮膜を構成する溶融粒子の分析などが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−159731号公報(例えば、明細書の段落[0008]−[0011]、[図1]−[図3]など参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した電子顕微鏡観察用試料の作製方法では、電子顕微鏡観察用試料を作製することができるものの、この作製方法で得られた電子顕微鏡観察用試料には、様々な大きさの溶融粒子が含まれ、例えば電子顕微鏡観察に適さない大きさの溶融粒子も含まれる。そのため、この作製方法で得られた試料を電子顕微鏡で観察するときに、電子顕微鏡観察に適さない大きさの溶融粒子により電子顕微鏡の観察視野が狭くなりその分電子顕微鏡観察に多大な労力を要していた。
【0006】
したがって、本発明は上述したような課題を解決するために為されたものであって、比較的簡易な作業にて、電子顕微鏡で容易に観察することができる電子顕微鏡観察用試料を作製する方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決する第1の発明に係る電子顕微鏡観察用試料の作製方法は、
基材に溶射皮膜を施した製品本体から当該溶射皮膜の一部を採取する工程と、
採取した溶射皮膜を溶融粒子に分離する工程と、
前記溶融粒子と溶液を容器に投入し当該溶液を攪拌する工程と、
前記溶液を攪拌して所定時間経過後に、複数の孔が設けられた試料支持体により当該溶液内に浮遊する溶融粒子を掬う工程と、
前記試料支持体に固定膜を形成する工程を順番に行うことにより電子顕微鏡観察用試料を作製する
ことを特徴とする。
【0008】
上述した課題を解決する第2の発明に係る電子顕微鏡観察用試料の作製方法は、
第1の発明に係る電子顕微鏡観察用試料の作製方法であって、
前記溶液として揮発性溶液を用いる
ことを特徴とする。
前記揮発性溶液としては、エタノールやアセトンなどが挙げられる。
【0009】
上述した課題を解決する第3の発明に係る電子顕微鏡観察用試料の作製方法は、
第1の発明に係る電子顕微鏡観察用試料の作製方法であって、
前記溶液として揮発性溶液に水を添加した水溶液を用いる
ことを特徴とする。
【0010】
上述した課題を解決する第4の発明に係る電子顕微鏡観察用試料の作製方法は、
第1乃至第3の発明の何れか一つに係る電子顕微鏡観察用試料の作製方法であって、
前記製品本体がタービンである
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る電子顕微鏡観察用試料の作製方法によれば、試料支持体により溶液内に浮遊する溶融粒子を掬う作業を、溶液を攪拌して所定時間経過後に行うことにより、電子顕微鏡観察に適さない大きさの溶融粒子、すなわち大きな粒子径の溶融粒子が容器の底に沈殿する一方、電子顕微鏡観察に適した大きさの溶融粒子が溶液内に浮遊するため、電子顕微鏡観察に適した大きさの溶融粒子を試料支持体に付着させることができる。また、試料支持体に固定膜を形成することで、試料支持体に付着した溶融粒子を当該試料支持体に固定することができる。これにより、電子顕微鏡観察に適さない大きさの溶融粒子が試料支持体に無く電子顕微鏡の観察視野を狭くすることがないため、電子顕微鏡を用いて、溶融粒子を容易に観察することが可能となり、溶融粒子の大きさを測定することができる。その結果、製品本体の特性の試験を別途行っておくことで、製品本体の特性と溶融粒子の大きさとの関係を評価することができる。また、上述した各工程を比較的簡易な作業で行うことができる。
【0012】
本発明に係る電子顕微鏡観察用試料の作製方法によれば、前記溶液として揮発性溶液を用いることにより、試料支持体により溶液内に浮遊する溶融粒子を掬う作業を行った後に、当該試料支持体に付着する溶液が直ぐに揮発していく。そのため、電子顕微鏡観察用試料の作製に要する時間を短くすることができる。
【0013】
本発明に係る電子顕微鏡観察用試料の作製方法によれば、前記溶液として揮発性溶液に水を添加した水溶液を用いることにより、当該溶液の粘度を調整し、溶融粒子の試料支持体への付着力を高めることができる。これにより、揮発性溶液のみの場合と比べて、より小さい粒子径の溶融粒子を試料支持体へ付着させることができる。また、前記溶液の粘度の調整により、溶融粒子の沈殿速度を調整することができる。これにより、試料支持体に付着させる溶融粒子の大きさを調整することができる。
【0014】
本発明に係る電子顕微鏡観察用試料の作製方法によれば、前記製品本体がタービンであることにより、当該タービンの特性の試験を別途に行っておくことで、タービンの特性と溶融粒子との関係を評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第一番目の実施形態に係る電子顕微鏡観察用試料の作製方法の作業フローを示す図である。
【図2】電子顕微鏡観察用試料の作製方法で用いられる試料支持体の一例を模式的に示す図である。
【図3】攪拌後の放置時間と電子顕微鏡で観察可能な溶融粒子の試料支持体への付着割合との関係の一例を示す図である。
【図4】攪拌後の放置時間と電子顕微鏡で観察可能な溶融粒子の試料支持体への付着割合との関係の他例を示す図である。
【図5】電子顕微鏡観察用試料を透過型電子顕微鏡で観察した図である。
【図6】電子顕微鏡観察用試料の作製方法で用いられる試料の一例を説明するための図である。
【図7】本発明の第二番目の実施形態に係る電子顕微鏡観察用試料の作製方法における攪拌後の放置時間と電子顕微鏡で観察可能な溶融粒子の試料支持体への付着割合との関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る電子顕微鏡観察用試料の作製方法について、各実施形態にて説明する。
【0017】
[第一番目の実施形態]
本発明の第一番目の実施形態に係る電子顕微鏡観察用試料の作製方法について、図1〜図6を用いて具体的に説明する。
本実施形態では、ガスタービンや蒸気タービンなどのタービンの基材の表面に形成された溶射皮膜から電子顕微鏡観察用試料を作製する方法に適用した場合について説明する。
【0018】
タービンの基材17の表面17aには、図6に示すように、溶射皮膜18が形成される。この溶射皮膜18は、プラズマ溶射トーチ10を用いて形成される。プラズマ溶射トーチ10は、陰極11と陽極12とを具備する装置である。陽極12には、プラズマ溶射トーチ10内へプラズマ作動ガスである高圧高温ガス13を供給するガス供給穴12aと、当該ガス供給穴12aに連通し、各種の原料粉末(金属粉末)15を供給する原料供給穴12bとが形成されている。ガス供給穴12aには陰極11が配置される。
【0019】
高圧高温ガス13をガス供給穴12aに供給し、陰極11と陽極12との間に電源(図示せず)によりアーク放電を発生することでプラズマジェット14が生成する。各種の原料粉末15を、原料供給穴12bを介してプラズマジェット14中へ供給する。各種の原料粉末15はプラズマジェット15により酸化・溶融して当該各種の原料粉末15と異なった大きさの溶融粒子16となり、基材17の表面17aに付着して溶融皮膜18を形成する。
【0020】
本実施形態では、図1に示すように、まず、電子顕微鏡観察用試料である試験片を採取する(ステップS1)。この試験片としては、ガスタービンや蒸気タービンなどタービンの基材の表面に形成した溶射皮膜の皮膜厚さを調整するために研削や研磨など成形処理したときに得られる溶射皮膜が挙げられる。すなわち、タービンの製品本体から溶射皮膜の一部を採取する。
【0021】
続いて、得られた試験片(溶射皮膜)を溶融粒子に分離する(ステップS2)。この分離作業方法としては、試験片を乳鉢に入れ乳棒で磨り潰したり、2枚のガラスプレパラートの間に試験片を挟み擦り合わせたりする方法が挙げられる。また、これら作業で細かくなったものをエタノール液で満たされた超音波洗浄器に入れ当該超音波洗浄器により振動を付与する方法も挙げられる。これにより、溶融粒子を確実に分離することができる。ステップS1にて得られた試験片である溶射皮膜は、溶融粒子がそれぞれ付着した塊状となっているので、本ステップS2の作業を行うことにより、各溶融粒子に分離する。なお、磨り潰す作業や擦り合わせる作業などの作業時間や超音波洗浄器により振動を付与する時間は適宜に調整される。
【0022】
ステップS2で得られた溶融粒子と溶液を容器に投入し、溶液および溶融粒子を攪拌する(ステップS3)。これにより、溶融粒子が溶液内にて浮遊する。溶液としては、エタノール液やアセトン液などの揮発性溶液が挙げられる。
【0023】
攪拌作業を行い所定時間経過した後に、試料支持体により溶液内に浮遊する溶融粒子を掬う(ステップS4)。試料支持体としては、図2に示すように、外形が板状の略円形状物であり、所定の大きさの孔1aが複数設けられた試料支持体(メッシュ)1であって、例えば、50メッシュ〜200メッシュの試料支持体が挙げられる。溶融粒子を掬う作業方法としては、溶液における上澄み部分に試料支持体を通過させて溶液内に浮遊する溶融粒子を試料支持体に付着させる方法などが挙げられる。
【0024】
これにより、電子顕微鏡に適さない大きさの溶融粒子、すなわち大きな粒子径の溶融粒子が容器の底に沈殿する一方、電子顕微鏡観察に適した大きさ、すなわち所定の粒子径の溶融粒子が溶液内に浮遊するため、当該所定の粒子径の溶融粒子を試料支持体に付着させることができる。攪拌後の放置時間が短すぎると、電子顕微鏡観察に適さない大きさの溶融粒子が容器の底に沈殿せず、溶液内で浮遊してしまう。他方、攪拌後の放置時間が長すぎると、電子顕微鏡観察に適した大きさの溶融粒子も容器の底に沈殿するため、この溶融粒子を試料支持体に付着させることができない。すなわち、攪拌後の放置時間は、電子顕微鏡観察に適さない大きさの溶融粒子が容器の底に沈殿してから、電子顕微鏡観察に適した大きさであって、目的とする大きさの溶融粒子が容器の底に沈殿する前の長さで適宜に調整される。
【0025】
ここで、攪拌後の放置時間(秒)と電子顕微鏡で観察可能な溶融粒子の試料支持体への付着割合(%)(観察可能な粒子の面積/サンプルの視野面積)との関係について図3および図4を用いて説明する。図3では、150メッシュの試料支持体を用いた場合を示し、図4では、200メッシュの試料支持体を用いた場合を示す。図3から分かるように、攪拌後の放置時間を約30秒〜約65秒の範囲にすることで、溶融粒子の試料支持体への付着割合を約40%以上とすることができる。また、図4から分かるように、攪拌後の放置時間を約90秒〜約120秒の範囲にすることで、溶融粒子の試料支持体への付着割合を約30%以上とすることができる。よって、試料支持体のメッシュ数に応じて攪拌後の放置時間を調整することにより、試料支持体への溶融粒子の付着割合を適切に調整できる。その結果、電子顕微鏡での観察が容易になる。
【0026】
続いて、試料支持体に炭素や金などを蒸着させて固定膜を形成する(ステップS5)。これにより、試料支持体に溶融粒子が固定される。なお、前記固定膜は、電子顕微鏡観察に影響が無く、試料支持体に溶融粒子を固定できる厚さで形成される。
【0027】
上述した手順で作業を行うことで、所定の大きさの粒子径の溶融粒子を試料支持体に固定した電子顕微鏡観察用試料を得ることができる。
【0028】
ここで、得られた電子顕微鏡観察用試料を透過型電子顕微鏡で観察したところ、図5に示すような観察写真を得ることができた。この図に示すように、溶融粒子が完全に分離できていないが、溶融粒子が囲み線Vで囲まれる領域に存在することを観察でき、溶融粒子の粒子径を測定することができた。
【0029】
したがって、本実施形態に係る電子顕微鏡観察用試料の作製方法によれば、試料支持体により溶液内に浮遊する溶融粒子を掬う作業を、溶液を攪拌して所定時間経過後に行うことにより、電子顕微鏡観察に適さない大きさの溶融粒子、すなわち大きな粒子径の溶融粒子が容器の底に沈殿する一方、電子顕微鏡観察に適した大きさの溶融粒子が溶液内に浮遊するため、電子顕微鏡観察に適した大きさの溶融粒子を試料支持体に付着させることができる。また、試料支持体に固定膜を形成することで、試料支持体に付着した溶融粒子を当該試料支持体に固定することができる。これにより、電子顕微鏡観察に適さない大きさの溶融粒子が試料支持体に無く電子顕微鏡の観察視野を狭くすることがないため、電子顕微鏡を用いて、溶融粒子を容易に観察することが可能となり、溶融粒子の大きさを測定することができる。その結果、製品本体であるタービンの特性の試験を別途行っておくことで、タービンの特性と溶融粒子の大きさとの関係について分析することができる。また、上述した各工程を比較的簡易な作業で行うことができる。
【0030】
前記溶液として揮発性溶液を用いることにより、試料支持体により溶液内に浮遊する溶融粒子を掬う作業を行った後に、当該試料支持体に付着する溶液が直ぐに揮発していく。そのため、電子顕微鏡観察用試料の作製に要する時間を短くすることができる。
【0031】
[第二番目の実施形態]
本発明の第二番目の実施形態に係る電子顕微鏡観察用試料の作製方法について、図7を用いて具体的に説明する。
本実施形態では、試料支持体に溶融粒子を付着させるときに使用する溶液のみを変更し、それ以外は上述した第一番目の実施形態に係る電子顕微鏡観察用試料の作製方法と同一の方法で、電子顕微鏡観察用試料を作製する。
【0032】
本実施形態では、ステップS2にて容器に投入する溶液として、エタノール液やアセトン液などの揮発性溶液に純水を加えた水溶液が用いられる。これにより、純エタノール液や純アセトン液と比べ粘度が高くなり、電子顕微鏡観察に適した大きさの溶融粒子の沈殿速度が遅くなる。また、溶融粒子の試料支持体への付着力も高められる。
【0033】
揮発性溶液への純水の添加量は0.1%〜2%である。この添加量の上限値は、粘度が高くなって溶融粒子の沈殿速度が遅くなりすぎない範囲で、且つ、試料支持体により溶液内に浮遊する溶融粒子を掬った後に、試料支持体および溶融粒子に付着する溶液の揮発速度を低下させない程度の範囲で調整される。
【0034】
攪拌後の放置時間(秒)と電子顕微鏡で観察可能な溶融粒子の試料支持体への付着割合(%)(観察可能な粒子の面積/サンプルの視野面積)との関係について図7を用いて説明する。図7では、揮発性溶液に水を添加した水溶液を用いた場合を示す。図7から分かるように、攪拌後の放置時間を約50秒〜約110秒の範囲にすることで、溶融粒子の試料支持体への付着割合を約40%以上とすることができる。また、図3の場合と比較して、試料支持体へ付着させる溶融粒子の溶液内での浮遊時間が長くなることが分かる。よって、電子顕微鏡で観察可能な大きさであって、比較的早くに容器の底に沈殿する大きさの溶融粒子であっても、試料支持体へ比較的容易に付着させることができる。
【0035】
したがって、本実施形態に係る電子顕微鏡観察用試料の作製方法によれば、上述した第一番目の実施形態に係る電子顕微鏡観察用試料の作製方法と同様な作用効果を奏する上に、溶液の粘度を調整し、溶融粒子の試料支持体への付着力を高めることができる。これにより、揮発性溶液のみの場合と比べて、より小さい粒子径の溶融粒子を試料支持体へ付着させることができる。また、溶液の粘度の調整により、溶融粒子の沈殿速度を調整することができる。これにより、試料支持体に付着させる溶融粒子の大きさを調整することができる。
【0036】
なお、上記では、透過型電子顕微鏡で観察するための電子顕微鏡観察用試料を作製する電子顕微鏡観察用試料の作製方法を用いて説明したが、走査型電子顕微鏡で観察するための電子顕微鏡観察用試料の作製方法とすることも可能である。このような電子顕微鏡観察用試料の作製方法であっても、上述した第一番目および第二番目の実施形態に係る電子顕微鏡観察用試料の作製方法と同様な作用効果を奏する。
【0037】
上記では、ガスタービンや蒸気タービンなどタービンの基材に形成した溶射皮膜の一部を試験片として採取し、これから電子顕微鏡観察用試料を作製する方法として説明したが、タービン以外の基材に形成した溶射皮膜の一部を採取し、これから電子顕微鏡で観察するための電子顕微鏡観察用試料を作製する方法とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明に係る電子顕微鏡観察用試料の作製方法は、比較的簡易な作業にて、電子顕微鏡で容易に観察することができるため、製造産業などにおいて、極めて有益に利用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 試料支持体
10 プラズマ溶射トーチ
11 陰極
12 陽極
13 高圧高温ガス
14 プラズマジェット
15 原料粉末
16 溶融粒子
17 基材
18 溶射皮膜
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子顕微鏡観察用試料の作製方法に関し、詳細にはガスタービンや蒸気タービンなどのタービンの基材に形成した溶射皮膜を直接観察するための電子顕微鏡観察用試料を作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンや蒸気タービンなどのタービンでは、従来から、耐酸化性などの耐食性、耐磨耗性、耐高温性などを高めるために、各種の原料粉末(金属粉末)が溶融した溶融粒子からなる溶射皮膜を基材の表面に形成したものが用いられている。
【0003】
ところで、上述した各種の原料粉末による上述した各特性について研究が進められ、溶射皮膜などセラミックスの特性を明らかにしようとする観点から、種々の分析が行われている。例えば、特許文献1に記載のマイクログリット付メッシュを用いた透過型電子顕微鏡でのその場観察や、走査型電子顕微鏡観察などの電子顕微鏡観察などによる分析が行われている。
これら電子顕微鏡観察では、タービンの製品群から抜き取った試験体や、タービンの製品と一緒に作製されたダミーの試験体を破壊(壁開)したり粉砕したりして作製した電子顕微鏡観察用試料が用いられている。そして、この試料を電子顕微鏡で観察することにより、溶融皮膜そのものの分析や溶融皮膜を構成する溶融粒子の分析などが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−159731号公報(例えば、明細書の段落[0008]−[0011]、[図1]−[図3]など参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した電子顕微鏡観察用試料の作製方法では、電子顕微鏡観察用試料を作製することができるものの、この作製方法で得られた電子顕微鏡観察用試料には、様々な大きさの溶融粒子が含まれ、例えば電子顕微鏡観察に適さない大きさの溶融粒子も含まれる。そのため、この作製方法で得られた試料を電子顕微鏡で観察するときに、電子顕微鏡観察に適さない大きさの溶融粒子により電子顕微鏡の観察視野が狭くなりその分電子顕微鏡観察に多大な労力を要していた。
【0006】
したがって、本発明は上述したような課題を解決するために為されたものであって、比較的簡易な作業にて、電子顕微鏡で容易に観察することができる電子顕微鏡観察用試料を作製する方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決する第1の発明に係る電子顕微鏡観察用試料の作製方法は、
基材に溶射皮膜を施した製品本体から当該溶射皮膜の一部を採取する工程と、
採取した溶射皮膜を溶融粒子に分離する工程と、
前記溶融粒子と溶液を容器に投入し当該溶液を攪拌する工程と、
前記溶液を攪拌して所定時間経過後に、複数の孔が設けられた試料支持体により当該溶液内に浮遊する溶融粒子を掬う工程と、
前記試料支持体に固定膜を形成する工程を順番に行うことにより電子顕微鏡観察用試料を作製する
ことを特徴とする。
【0008】
上述した課題を解決する第2の発明に係る電子顕微鏡観察用試料の作製方法は、
第1の発明に係る電子顕微鏡観察用試料の作製方法であって、
前記溶液として揮発性溶液を用いる
ことを特徴とする。
前記揮発性溶液としては、エタノールやアセトンなどが挙げられる。
【0009】
上述した課題を解決する第3の発明に係る電子顕微鏡観察用試料の作製方法は、
第1の発明に係る電子顕微鏡観察用試料の作製方法であって、
前記溶液として揮発性溶液に水を添加した水溶液を用いる
ことを特徴とする。
【0010】
上述した課題を解決する第4の発明に係る電子顕微鏡観察用試料の作製方法は、
第1乃至第3の発明の何れか一つに係る電子顕微鏡観察用試料の作製方法であって、
前記製品本体がタービンである
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る電子顕微鏡観察用試料の作製方法によれば、試料支持体により溶液内に浮遊する溶融粒子を掬う作業を、溶液を攪拌して所定時間経過後に行うことにより、電子顕微鏡観察に適さない大きさの溶融粒子、すなわち大きな粒子径の溶融粒子が容器の底に沈殿する一方、電子顕微鏡観察に適した大きさの溶融粒子が溶液内に浮遊するため、電子顕微鏡観察に適した大きさの溶融粒子を試料支持体に付着させることができる。また、試料支持体に固定膜を形成することで、試料支持体に付着した溶融粒子を当該試料支持体に固定することができる。これにより、電子顕微鏡観察に適さない大きさの溶融粒子が試料支持体に無く電子顕微鏡の観察視野を狭くすることがないため、電子顕微鏡を用いて、溶融粒子を容易に観察することが可能となり、溶融粒子の大きさを測定することができる。その結果、製品本体の特性の試験を別途行っておくことで、製品本体の特性と溶融粒子の大きさとの関係を評価することができる。また、上述した各工程を比較的簡易な作業で行うことができる。
【0012】
本発明に係る電子顕微鏡観察用試料の作製方法によれば、前記溶液として揮発性溶液を用いることにより、試料支持体により溶液内に浮遊する溶融粒子を掬う作業を行った後に、当該試料支持体に付着する溶液が直ぐに揮発していく。そのため、電子顕微鏡観察用試料の作製に要する時間を短くすることができる。
【0013】
本発明に係る電子顕微鏡観察用試料の作製方法によれば、前記溶液として揮発性溶液に水を添加した水溶液を用いることにより、当該溶液の粘度を調整し、溶融粒子の試料支持体への付着力を高めることができる。これにより、揮発性溶液のみの場合と比べて、より小さい粒子径の溶融粒子を試料支持体へ付着させることができる。また、前記溶液の粘度の調整により、溶融粒子の沈殿速度を調整することができる。これにより、試料支持体に付着させる溶融粒子の大きさを調整することができる。
【0014】
本発明に係る電子顕微鏡観察用試料の作製方法によれば、前記製品本体がタービンであることにより、当該タービンの特性の試験を別途に行っておくことで、タービンの特性と溶融粒子との関係を評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第一番目の実施形態に係る電子顕微鏡観察用試料の作製方法の作業フローを示す図である。
【図2】電子顕微鏡観察用試料の作製方法で用いられる試料支持体の一例を模式的に示す図である。
【図3】攪拌後の放置時間と電子顕微鏡で観察可能な溶融粒子の試料支持体への付着割合との関係の一例を示す図である。
【図4】攪拌後の放置時間と電子顕微鏡で観察可能な溶融粒子の試料支持体への付着割合との関係の他例を示す図である。
【図5】電子顕微鏡観察用試料を透過型電子顕微鏡で観察した図である。
【図6】電子顕微鏡観察用試料の作製方法で用いられる試料の一例を説明するための図である。
【図7】本発明の第二番目の実施形態に係る電子顕微鏡観察用試料の作製方法における攪拌後の放置時間と電子顕微鏡で観察可能な溶融粒子の試料支持体への付着割合との関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る電子顕微鏡観察用試料の作製方法について、各実施形態にて説明する。
【0017】
[第一番目の実施形態]
本発明の第一番目の実施形態に係る電子顕微鏡観察用試料の作製方法について、図1〜図6を用いて具体的に説明する。
本実施形態では、ガスタービンや蒸気タービンなどのタービンの基材の表面に形成された溶射皮膜から電子顕微鏡観察用試料を作製する方法に適用した場合について説明する。
【0018】
タービンの基材17の表面17aには、図6に示すように、溶射皮膜18が形成される。この溶射皮膜18は、プラズマ溶射トーチ10を用いて形成される。プラズマ溶射トーチ10は、陰極11と陽極12とを具備する装置である。陽極12には、プラズマ溶射トーチ10内へプラズマ作動ガスである高圧高温ガス13を供給するガス供給穴12aと、当該ガス供給穴12aに連通し、各種の原料粉末(金属粉末)15を供給する原料供給穴12bとが形成されている。ガス供給穴12aには陰極11が配置される。
【0019】
高圧高温ガス13をガス供給穴12aに供給し、陰極11と陽極12との間に電源(図示せず)によりアーク放電を発生することでプラズマジェット14が生成する。各種の原料粉末15を、原料供給穴12bを介してプラズマジェット14中へ供給する。各種の原料粉末15はプラズマジェット15により酸化・溶融して当該各種の原料粉末15と異なった大きさの溶融粒子16となり、基材17の表面17aに付着して溶融皮膜18を形成する。
【0020】
本実施形態では、図1に示すように、まず、電子顕微鏡観察用試料である試験片を採取する(ステップS1)。この試験片としては、ガスタービンや蒸気タービンなどタービンの基材の表面に形成した溶射皮膜の皮膜厚さを調整するために研削や研磨など成形処理したときに得られる溶射皮膜が挙げられる。すなわち、タービンの製品本体から溶射皮膜の一部を採取する。
【0021】
続いて、得られた試験片(溶射皮膜)を溶融粒子に分離する(ステップS2)。この分離作業方法としては、試験片を乳鉢に入れ乳棒で磨り潰したり、2枚のガラスプレパラートの間に試験片を挟み擦り合わせたりする方法が挙げられる。また、これら作業で細かくなったものをエタノール液で満たされた超音波洗浄器に入れ当該超音波洗浄器により振動を付与する方法も挙げられる。これにより、溶融粒子を確実に分離することができる。ステップS1にて得られた試験片である溶射皮膜は、溶融粒子がそれぞれ付着した塊状となっているので、本ステップS2の作業を行うことにより、各溶融粒子に分離する。なお、磨り潰す作業や擦り合わせる作業などの作業時間や超音波洗浄器により振動を付与する時間は適宜に調整される。
【0022】
ステップS2で得られた溶融粒子と溶液を容器に投入し、溶液および溶融粒子を攪拌する(ステップS3)。これにより、溶融粒子が溶液内にて浮遊する。溶液としては、エタノール液やアセトン液などの揮発性溶液が挙げられる。
【0023】
攪拌作業を行い所定時間経過した後に、試料支持体により溶液内に浮遊する溶融粒子を掬う(ステップS4)。試料支持体としては、図2に示すように、外形が板状の略円形状物であり、所定の大きさの孔1aが複数設けられた試料支持体(メッシュ)1であって、例えば、50メッシュ〜200メッシュの試料支持体が挙げられる。溶融粒子を掬う作業方法としては、溶液における上澄み部分に試料支持体を通過させて溶液内に浮遊する溶融粒子を試料支持体に付着させる方法などが挙げられる。
【0024】
これにより、電子顕微鏡に適さない大きさの溶融粒子、すなわち大きな粒子径の溶融粒子が容器の底に沈殿する一方、電子顕微鏡観察に適した大きさ、すなわち所定の粒子径の溶融粒子が溶液内に浮遊するため、当該所定の粒子径の溶融粒子を試料支持体に付着させることができる。攪拌後の放置時間が短すぎると、電子顕微鏡観察に適さない大きさの溶融粒子が容器の底に沈殿せず、溶液内で浮遊してしまう。他方、攪拌後の放置時間が長すぎると、電子顕微鏡観察に適した大きさの溶融粒子も容器の底に沈殿するため、この溶融粒子を試料支持体に付着させることができない。すなわち、攪拌後の放置時間は、電子顕微鏡観察に適さない大きさの溶融粒子が容器の底に沈殿してから、電子顕微鏡観察に適した大きさであって、目的とする大きさの溶融粒子が容器の底に沈殿する前の長さで適宜に調整される。
【0025】
ここで、攪拌後の放置時間(秒)と電子顕微鏡で観察可能な溶融粒子の試料支持体への付着割合(%)(観察可能な粒子の面積/サンプルの視野面積)との関係について図3および図4を用いて説明する。図3では、150メッシュの試料支持体を用いた場合を示し、図4では、200メッシュの試料支持体を用いた場合を示す。図3から分かるように、攪拌後の放置時間を約30秒〜約65秒の範囲にすることで、溶融粒子の試料支持体への付着割合を約40%以上とすることができる。また、図4から分かるように、攪拌後の放置時間を約90秒〜約120秒の範囲にすることで、溶融粒子の試料支持体への付着割合を約30%以上とすることができる。よって、試料支持体のメッシュ数に応じて攪拌後の放置時間を調整することにより、試料支持体への溶融粒子の付着割合を適切に調整できる。その結果、電子顕微鏡での観察が容易になる。
【0026】
続いて、試料支持体に炭素や金などを蒸着させて固定膜を形成する(ステップS5)。これにより、試料支持体に溶融粒子が固定される。なお、前記固定膜は、電子顕微鏡観察に影響が無く、試料支持体に溶融粒子を固定できる厚さで形成される。
【0027】
上述した手順で作業を行うことで、所定の大きさの粒子径の溶融粒子を試料支持体に固定した電子顕微鏡観察用試料を得ることができる。
【0028】
ここで、得られた電子顕微鏡観察用試料を透過型電子顕微鏡で観察したところ、図5に示すような観察写真を得ることができた。この図に示すように、溶融粒子が完全に分離できていないが、溶融粒子が囲み線Vで囲まれる領域に存在することを観察でき、溶融粒子の粒子径を測定することができた。
【0029】
したがって、本実施形態に係る電子顕微鏡観察用試料の作製方法によれば、試料支持体により溶液内に浮遊する溶融粒子を掬う作業を、溶液を攪拌して所定時間経過後に行うことにより、電子顕微鏡観察に適さない大きさの溶融粒子、すなわち大きな粒子径の溶融粒子が容器の底に沈殿する一方、電子顕微鏡観察に適した大きさの溶融粒子が溶液内に浮遊するため、電子顕微鏡観察に適した大きさの溶融粒子を試料支持体に付着させることができる。また、試料支持体に固定膜を形成することで、試料支持体に付着した溶融粒子を当該試料支持体に固定することができる。これにより、電子顕微鏡観察に適さない大きさの溶融粒子が試料支持体に無く電子顕微鏡の観察視野を狭くすることがないため、電子顕微鏡を用いて、溶融粒子を容易に観察することが可能となり、溶融粒子の大きさを測定することができる。その結果、製品本体であるタービンの特性の試験を別途行っておくことで、タービンの特性と溶融粒子の大きさとの関係について分析することができる。また、上述した各工程を比較的簡易な作業で行うことができる。
【0030】
前記溶液として揮発性溶液を用いることにより、試料支持体により溶液内に浮遊する溶融粒子を掬う作業を行った後に、当該試料支持体に付着する溶液が直ぐに揮発していく。そのため、電子顕微鏡観察用試料の作製に要する時間を短くすることができる。
【0031】
[第二番目の実施形態]
本発明の第二番目の実施形態に係る電子顕微鏡観察用試料の作製方法について、図7を用いて具体的に説明する。
本実施形態では、試料支持体に溶融粒子を付着させるときに使用する溶液のみを変更し、それ以外は上述した第一番目の実施形態に係る電子顕微鏡観察用試料の作製方法と同一の方法で、電子顕微鏡観察用試料を作製する。
【0032】
本実施形態では、ステップS2にて容器に投入する溶液として、エタノール液やアセトン液などの揮発性溶液に純水を加えた水溶液が用いられる。これにより、純エタノール液や純アセトン液と比べ粘度が高くなり、電子顕微鏡観察に適した大きさの溶融粒子の沈殿速度が遅くなる。また、溶融粒子の試料支持体への付着力も高められる。
【0033】
揮発性溶液への純水の添加量は0.1%〜2%である。この添加量の上限値は、粘度が高くなって溶融粒子の沈殿速度が遅くなりすぎない範囲で、且つ、試料支持体により溶液内に浮遊する溶融粒子を掬った後に、試料支持体および溶融粒子に付着する溶液の揮発速度を低下させない程度の範囲で調整される。
【0034】
攪拌後の放置時間(秒)と電子顕微鏡で観察可能な溶融粒子の試料支持体への付着割合(%)(観察可能な粒子の面積/サンプルの視野面積)との関係について図7を用いて説明する。図7では、揮発性溶液に水を添加した水溶液を用いた場合を示す。図7から分かるように、攪拌後の放置時間を約50秒〜約110秒の範囲にすることで、溶融粒子の試料支持体への付着割合を約40%以上とすることができる。また、図3の場合と比較して、試料支持体へ付着させる溶融粒子の溶液内での浮遊時間が長くなることが分かる。よって、電子顕微鏡で観察可能な大きさであって、比較的早くに容器の底に沈殿する大きさの溶融粒子であっても、試料支持体へ比較的容易に付着させることができる。
【0035】
したがって、本実施形態に係る電子顕微鏡観察用試料の作製方法によれば、上述した第一番目の実施形態に係る電子顕微鏡観察用試料の作製方法と同様な作用効果を奏する上に、溶液の粘度を調整し、溶融粒子の試料支持体への付着力を高めることができる。これにより、揮発性溶液のみの場合と比べて、より小さい粒子径の溶融粒子を試料支持体へ付着させることができる。また、溶液の粘度の調整により、溶融粒子の沈殿速度を調整することができる。これにより、試料支持体に付着させる溶融粒子の大きさを調整することができる。
【0036】
なお、上記では、透過型電子顕微鏡で観察するための電子顕微鏡観察用試料を作製する電子顕微鏡観察用試料の作製方法を用いて説明したが、走査型電子顕微鏡で観察するための電子顕微鏡観察用試料の作製方法とすることも可能である。このような電子顕微鏡観察用試料の作製方法であっても、上述した第一番目および第二番目の実施形態に係る電子顕微鏡観察用試料の作製方法と同様な作用効果を奏する。
【0037】
上記では、ガスタービンや蒸気タービンなどタービンの基材に形成した溶射皮膜の一部を試験片として採取し、これから電子顕微鏡観察用試料を作製する方法として説明したが、タービン以外の基材に形成した溶射皮膜の一部を採取し、これから電子顕微鏡で観察するための電子顕微鏡観察用試料を作製する方法とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明に係る電子顕微鏡観察用試料の作製方法は、比較的簡易な作業にて、電子顕微鏡で容易に観察することができるため、製造産業などにおいて、極めて有益に利用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 試料支持体
10 プラズマ溶射トーチ
11 陰極
12 陽極
13 高圧高温ガス
14 プラズマジェット
15 原料粉末
16 溶融粒子
17 基材
18 溶射皮膜
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に溶射皮膜を施した製品本体から当該溶射皮膜の一部を採取する工程と、
採取した溶射皮膜を溶融粒子に分離する工程と、
前記溶融粒子と溶液を容器に投入し当該溶液を攪拌する工程と、
前記溶液を攪拌して所定時間経過後に、複数の孔が設けられた試料支持体により当該溶液内に浮遊する溶融粒子を掬う工程と、
前記試料支持体に固定膜を形成する工程を順番に行うことにより電子顕微鏡観察用試料を作製する
ことを特徴とする電子顕微鏡観察用試料の作製方法。
【請求項2】
請求項1に記載された電子顕微鏡観察用試料の作製方法であって、
前記溶液として揮発性溶液を用いる
ことを特徴とする電子顕微鏡観察用試料の作製方法。
【請求項3】
請求項1に記載された電子顕微鏡観察用試料の作製方法であって、
前記溶液として揮発性溶液に水を添加した水溶液を用いる
ことを特徴とする電子顕微鏡観察用試料の作製方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載された電子顕微鏡観察用試料の作製方法であって、
前記製品本体がタービンである
ことを特徴とする電子顕微鏡観察用試料の作製方法。
【請求項1】
基材に溶射皮膜を施した製品本体から当該溶射皮膜の一部を採取する工程と、
採取した溶射皮膜を溶融粒子に分離する工程と、
前記溶融粒子と溶液を容器に投入し当該溶液を攪拌する工程と、
前記溶液を攪拌して所定時間経過後に、複数の孔が設けられた試料支持体により当該溶液内に浮遊する溶融粒子を掬う工程と、
前記試料支持体に固定膜を形成する工程を順番に行うことにより電子顕微鏡観察用試料を作製する
ことを特徴とする電子顕微鏡観察用試料の作製方法。
【請求項2】
請求項1に記載された電子顕微鏡観察用試料の作製方法であって、
前記溶液として揮発性溶液を用いる
ことを特徴とする電子顕微鏡観察用試料の作製方法。
【請求項3】
請求項1に記載された電子顕微鏡観察用試料の作製方法であって、
前記溶液として揮発性溶液に水を添加した水溶液を用いる
ことを特徴とする電子顕微鏡観察用試料の作製方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載された電子顕微鏡観察用試料の作製方法であって、
前記製品本体がタービンである
ことを特徴とする電子顕微鏡観察用試料の作製方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図5】
【公開番号】特開2011−185687(P2011−185687A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−50039(P2010−50039)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
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