説明

電極デバイス

電極及び電極デバイス、及び、電極及び電極デバイスを製造する方法を開示する。電極材を製造する例示の方法は、集電体を、第1の電極膜と第2の電極膜との間に位置させ、前記集電体に貫設された複数の開口を通して前記第1の電極膜と前記第2の電極膜を結合し、前記第1の電極膜及び前記第2の電極膜を実質的に接着剤を用いることなく前記集電体に固定するものである。この方法は、限定されないが、ウルトラキャパシタ、スーパーキャパシタのような2重層あるいは他の複層キャパシタを製造することに用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2008年7月9日付け出願の米国特許出願12/170,373の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は一般に、エネルギー蓄積装置で使用される電極デバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
電極デバイスは、1次(充電不能)電池、2次(充電可能)電池、燃料電池、及びキャパシタを含む、電気エネルギーを蓄積することに広く用いられている。これらの電極デバイスの重要な特徴としては、エネルギー密度、電力密度、最大充電速度、内部漏れ電流、等価直列抵抗(ESR)、耐久性(すなわち、回数を重ねた充電−放電サイクルに耐える能力)のいずれかあるいは全部が挙げられる。多くの理由において、「スーパーキャパシタ」または「ウルトラキャパシタ」と称される複層(2重層)キャパシタが多くのエネルギー貯蓄アプリケーションにおいて普及している。上記理由には、複層キャパシタが高電力密度(充電モード及び放電モードの両方において)を伴い、かつ、従来の充電可能電池のエネルギー密度に近いエネルギー密度を伴うものとして利用可能であるということである。
【0004】
複層キャパシタは典型的には、エネルギー蓄積要素として、電解質(電解液)に浸漬された電極を用いる。そのようなものとして、電解質に浸漬されておりかつ含浸してなる多孔性セパレータが、電極が互いに接触しないことを保証し、電極間の直接の電流の流れを防止する。同時に、多孔性セパレータは、電解質を通して電極間の双方向のイオン電流の流れを許容する。以下に議論するように、電荷の複層(2重層)が、固体電極と電解質との間の界面に生成される。
【0005】
複層キャパシタの一対の電極間に電位が印加されると、電解質内に存在するイオンが互いに反対に帯電した電極の表面に引きつけられ、電極へ向かって移動する。こうして、各電極の表面近傍で、反対に帯電したイオンの層が形成され、維持される。電気エネルギーは、これらのイオン化層と対応する電極表面の電荷層との間の電荷分離層に蓄積される。実際、電荷分離層は、本質的に静電キャパシタとして振る舞う。また、電位により生成された電界の影響による電解液の分子の配向および整列を介して静電エネルギーが複層キャパシタに蓄積される。しかしながら、このエネルギー蓄積モードは二次的である。
【0006】
従来のキャパシタと比較して、複層キャパシタは、その容量及び重量に対して高いキャパシタンスを備えている。この容積的及び重量の効率性には二つの主な理由がある。1番目は、電荷分離層が極めて狭いということである。これらの層の幅は典型的にはナノメートルのオーダである。2番目は、単位容積当たり極めて大きな有効表面積を有する多孔性材料から形成することができるということである。キャパシタンスは、電極面積に正比例し、電荷分離層の幅に反比例するので、大きな有効面積と狭い電荷分離層の組み合わせ効果は、同様の寸法及び重量の従来のキャパシタのキャパシタンスに比較して大きいキャパシタンスをもたらす。複層キャパシタの高キャパシタンスは、キャパシタが大きな量の電気エネルギーを受け取り、蓄積し、放出することを可能とする。
【0007】
キャパシタの他の重要なパフォーマンスパラメータはその内部抵抗である。キャパシタの周波数応答は、キャパシタの特有の時定数に依存し、これは、本質的にキャパシタンスと内部抵抗すなわちRCの積である。別の言い方をすると、内部抵抗はキャパシタに流入し、あるいはそこから流出する電流を制限するので、内部抵抗はキャパシタの充電速度及び放電速度の両方を制限する。多くのアプリケーションにおいて、充電速度及び放電速度を最大化することは重要である。例えば、自動車への適用においては、車体のエンジンに電力供給するエネルギー蓄積要素として用いられるキャパシタは、加速時には高い瞬時の電力を提供し、また、再生ブレーキにより生成される電力のバーストの受け取りが可能である必要がある。内燃機関を動力とする車体では、キャパシタは、車体のスターターに対して繰り返し電力を供給し、これもまたキャパシタの寸法に対して高パワーを必要とする。
【0008】
内部抵抗は、また、充電及び放電サイクルの両方において、熱を生成する。熱は、機械的なストレスを引き起こし、また、様々な化学反応を促進させ、キャパシタの老朽化を加速させる。したがって、キャパシタの内部抵抗を低減させることが望ましい。さらに、熱に変換されるエネルギーは損失であり、キャパシタの効率を低減させる。
【0009】
電極構造に用いられる活性材料(例えば、活性炭素)は、通常、より限定された特定のコンダクタンスを備えている。よって、電極とその端子との間の接触抵抗を最小化するために大きな接触面積が望まれる。また、活性材料は、直接端子に連結するにはもろく、あるいは不適当である。さらに、活性材料は、比較的低い張力を備え、幾つかのアプリケーションでは機械的支持を必要とする。これらの理由から、電極は集電体を組み入れている。
【0010】
集電体は、典型的には、導電性材料からなるシートであり、その上に、活性電極が、直接あるいは1つ以上の中間層を介して配置される。多くの場合、多層電極の集電体の材料としてアルミニウムフォイルが用いられる。1つの電極製作プロセスでは、活性炭粉末を含む膜(すなわち、活性電極)が生成され、接着剤を用いて薄いアルミニウムフォイルに付着される。接着剤の使用は、集電体に対する活性電極の結合を向上させる。しかしながら、このプロセスは多くの欠点を有している。
【0011】
接着剤は電極製造のプロセスで消費される材料コストを上昇させる。幾つかの接着剤はとても高価である。さらに、2つの工程が製造プロセスに加えられることになる。接着剤は集電体箔あるいは活性電極膜上に塗布される必要がある。接着剤は乾燥させ硬化させる必要がある。これらの追加の工程は最終製品のコストを上昇させる。接着剤は経年劣化し、電極の内部抵抗の上昇に寄与する。例えば、幾つかの複層キャパシタでは、電解質が接着剤と化学的に反応して、接着剤を弱くし、当該接着剤により生成された結合を不十分なものとする。さらに、接着剤は活性電極の孔に浸透して、電極の合計表面活性面積を減少させるので、接着剤の使用は電極のエネルギー蓄積効率を低減させる。したがって、複層電極における接着剤の使用を低減するか、あるいは無くすことが好ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
活性電極と集電体との間の界面における接着剤の使用が実質的に無いような複層電極の製造のニーズが存在する。さらに、この界面において接着剤を用いないように製造された電極のニーズが存在する。さらに、活性層と集電体の間の界面で接着剤を有しない電極を備えたエネルギー蓄積装置のニーズが存在する。さらに、このような電極や、このような電極材を用いた複層キャパシタを含む電気装置を製造する方法及び材の必要性が存在する。
【0013】
本発明のさまざまな実施形態は、上記ニーズの1つ以上を狙うあるいは満たすような電極、電極デバイス、これらを製造するための方法に関連している。
【0014】
例示的な電極は、第1の電極膜と第2の電極膜を含む。集電体が、製造プロセスにおいて、前記第1電極膜と第2電極膜との間に挟み込まれる。集電体は、それ自体を貫通するように形成された複数の開口を有している。前記第1電極膜と第2電極膜との界面において、結合が、前記集電体に形成された複数の開口を通して製造プロセス後に形成され、前記結合は、実質的に接着剤を用いることなく、前記集電体に対して前記第1電極膜及び第2電極膜を固定する。
【0015】
例示の電極は、例えば、ウルトラキャパシタやスーパーキャパシタのような複層キャパシタ装置の製造に用いられる。例示の複層キャパシタ装置は、2つのバインダー材間に挟まれた多孔性集電体を含む。界面は、実質的に接着剤を用いることなく、前記2つのバインダー材を互いに結合させ、また、前記バインダー材を前記多孔性集電体に対して結合させる。
【0016】
電極材を製造する例示の方法は、集電体を、第1の電極膜と第2の電極膜との間に位置させ、前記集電体に貫設された複数の開口を通して前記第1の電極膜と前記第2の電極膜を結合し、前記第1の電極膜及び前記第2の電極膜を実質的に接着剤を用いることなく前記集電体に固定するものである。
【0017】
例示の実施形態では、前記第1の電極膜及び前記第2の電極膜は、少なくとも炭素を含む。また、例示の実施形態では、前記第1の電極膜と前記第2の電極膜は、少なくとも部分的に、前記第1の電極膜と前記第2の電極膜との間の機械的相互作用(例えば、機械的かみ合い)、および/あるいは、化学反応により、電気的に結合されている。
【0018】
この製造プロセスは、溶剤ベースの接着手段の必要性を低減あるいは完全に無くし、したがって、実質的なあるいは完全なドライプロセスである。結果として得られた電極及び電極デバイスは、向上された界面安定性を有し、したがって、低減されたESRを有する。また、電極および電極デバイスは、経年によるデラミネーションやクラックの形成が無く(あるいはこれらが十分に低減され)、したがって、製品寿命が構造される。さらに、集電体に形成された複数の開口は、電極及び電極デバイスの向上された乾燥、および/または、電解質の含浸を提供する。この複数の開口は、集電体における当該開口を通して、乾燥、および/または、電解質の含浸を可能とすることで、電極膜間の障壁を低減する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明に係る例示の電極を部分的に分解してなる横断面斜視図である。
【図2a】図2aは、電極に対して実施され得る、例示の集電体の代替の形態を示す上面図である。
【図2b】図2bは、電極に対して実施され得る、例示の集電体の代替の形態を示す上面図である。
【図3】図1の3−3線に沿う例示の電極の側面図であり、電極材間の集電体の開口を通して当該電極材間に形成された例示の界面を示している。
【図4a】図4aは、電極から例示される電極デバイスを作るロール工程を示す図である側面図である。
【図4b】図4bは、電極から例示される電極デバイスを作るロール工程を示す図である側面図である。
【図5】図5は、例示の電極を生成する例示のプロセス工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書では用語「実施」および「変形」は、特定の装置、プロセスまたは製品を指すために使用され得るものであり、必ずしも常に、1つのおよび同じ装置、プロセスまたは製品を指すために使用されるものではない。したがって1つの場所または文脈で使用される「1つの実施」(または同様の表現)は、1つの特定の装置、プロセスまたは製品を指すことができ、また異なる場所における同じまたは同様の表現は、同じまたは異なる装置、プロセスまたは製品のいずれかを指すことができる。同様に1つの場所または文脈で使用される「幾つかの実施」、「ある一定の実施」または同様の表現は、1つ以上の特定の装置、プロセスまたは製品を指すことができ、異なる場所または文脈における同じまたは同様の表現は、同じまたは異なる装置、プロセスまたは製品を指すことができる。表現「代替の実施」および同様のフレーズは、多数の異なる可能な実施形態の1つを示すために使用される。可能性のある実施形態の数は、必ずしも2つまたは他の如何なる数にも限定されない。「代表例」または「例示的な」としての実施形態の特徴付けは、この実施形態が一例として使用されていることを意味する。このような特徴づけは、必ずしもこの実施形態が好適な実施形態であることを意味せず、この実施形態は現時の好適な実施形態であり得るが、必ずしもその必要はない
【0021】
用語「膜」の意味は、用語「層」および「シート」の意味と同様であり、用語「膜」は必ずしも材の特定の厚さまたは薄さを意味しない。本明細書における「バインダー(結合剤)」への言及は、その中で材料(例えば、活性炭)の結合を提供することができるポリマー、コポリマーおよび同様の超高分子量物質を意味するものとして意図されている。このような物質は、緩く結集した粒子材料の凝集力を助長するためのバインダー、すなわち特定の用途で、ある有用な機能をもたらす活性フィラー材料としてしばしば採用される。
【0022】
用語「カレンダー(calender)」、「ニップ(nip)」、「ラミネータ(laminator)」および同様の表現は、押圧および圧縮のために適応した装置を意味する。押圧は、必ずしもそうである必要はないが、ローラを使用して実行され得る。動詞として使用されるとき「カレンダー」および「ラミネート」は、必須ではないが、ローラを含み得るプレスでの処理を意味する。本明細書で使用されるmixingまたはblendingは、成分要素を一緒に1つの混合物にすることを含む処理を意味する。高いせん断力または高い衝撃力が、必ずしもそうである必要はないが、このような混合のために使用され得る。ここに記載されたに様々な材料を調合/混合するために使用され得る例示的装置は、非限定的な態様で、ボールミル、電磁ボールミル、ディスクミル、ピンミル、高エネルギーインパクトミル、流体エネルギーインパクトミル、対向ノズルジェットミル、流動層ジェットミル、ハンマーミル、フリッツミル(fritz mill)、ウォリングブレンダ(Warring blender)、ロールミル、機械溶融(mechanofusion)プロセッサ(例えばHosokawa AMS)、またはインパクトミルを含み得る。
【0023】
他の更なる定義および定義の説明は、本文書全体を通して見出され得る。これらの定義は、本開示と添付の特許請求の範囲の理解を助けるように意図されるものであり、本発明の範囲と精神は、本明細書に説明された特定の例に厳密に限定されると解釈されるべきではない。
【0024】
次に付属の図面に図示されている本発明の幾つかの説明を詳細に参照する。同じ、あるいは実質的に同じ部分または作業を指すために、これらの図面および説明では同じ参照数字が使用される。図面は単純化された形になっており、正確には原寸に従っていない。単に便宜上および明確さのために、添付図面に関して上部、底部、左、右、上に、下に、上を覆う、上方に、下方に、真下に、後部、および前部といった方向を示す用語が使用され得る。これらおよび同様の方向を示す用語は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0025】
図1は、本発明に係る例示の電極100を部分的に分解してなる横断面斜視図である。電極100は、集電体102と、集電体102の各面に配置された活性電極膜104a、bと、を含んでいる。任意で、電極膜104a,bのそれぞれの外側表面の一方あるいは両方に非集電体106a,bを適用してもよい。非集電体106a,bは、例えば、セパレータ、絶縁体(例えば、装置として用いる場合に、電極膜104a,bを絶縁する)、あるいは他の非集電材を含む。
【0026】
例示の実施形態において、集電体102は、厚さ約40ミクロンのアルミ箔のシートである。ここで、集電体102は特定な寸法や形態には限定されないことに留意されたい。他の例示の実施形態では、箔の厚さは、20ミクロンから100ミクロンの間であり、さらに他のより具体的な態様では、アルミ箔の厚さは30ミクロンから50ミクロンの間である。さらに他の実施形態も考えられる。また、集電体102はアルミニウムには限定されないことに留意されたい。他の導電性材料を集電体102として用いることができ、銀、銅、金、プラチナ、パラジウム、及びこれらのあるいは他の金属の合金が例示される。
【0027】
集電体102は多孔性である。すなわち、集電体102は複数の開口(例えば、集電体102を貫通して形成された複数の開口105)を備えている。したがって、集電体102が上側の電極膜104aと下側の電極膜104bとの間に設けられ、すなわち、挟まれた時に、上側電極膜104aと下側電極膜104bとの間を電気的に結合する界面が形成され、これについては、図3に基づいてより詳細に説明する。
【0028】
さらに進める前に、集電体102は、それを貫通するように形成された、いかなる数、種類、および/または形態の複数の開口105を含みうることに留意されたい。図1に示す例示の実施形態では、複数の開口105は、実質的に方形の形状を有し、集電体102の表面に亘って等間隔(規則的に)で設けられている。図2a、図2bは、それぞれ、電極100に対して実施され得る、例示の集電体102´、102´´の他の形態を示す上面図である。図2aにおいて、複数の開口105´は、実質的に楕円形状を有し、集電体102´の表面に亘って等間隔で設けられている。図2bにおいて、複数の開口105´´は、実質的に方形の形状を有し、集電体102´´の表面に亘って等間隔で設けられている。他の寸法および形状の集電体を貫設する開口が本発明の範囲内で考えられ、図示のものに限定されない。同様に、ここに開示された内容を熟知した当業者によって理解されるように、開口は集電体の表面に等間隔で設けられる必要はない。
【0029】
図3は、図1の3−3線に沿う例示の電極100の側面図であり、電極材104a,b間の集電体102の開口105を通して形成された例示の界面108を示している。簡単に上述したように、界面108は、上側電極膜104aと下側電極膜104bとを電気的に結合する。また、この界面108は、少なくとも接着剤を必要とすること無く、電極材104を集電体102に結合させるように働く。
【0030】
さらに進める前に、結合プロセスをより理解するために、例示の電極膜104について詳述する。電極膜104は、活性電極材(例えば、活性炭粒子)と、膜104内で活性電極材を支持するためのバインダーと、を含んでいる。電極膜は、また、任意で、導電性粒子(例えば、導電性炭素粒子)および/あるいは他の添加剤を含んでいても良い。例示の実施態様では、電極膜104は、活性炭粒子、導電性炭素粒子、および、バインダーを含んでおり、約7.5×107-1よりも大きい容積孔表面率(VPSE)を有している。また、電極膜104は、約40から80%の間の有孔率を有している。さらに具体的な特定の実施形態では、活性電極104の有孔率は、約50から70%の間であり、平均孔寸法は、約1〜3立方マイクロメートルの間である。ここでの“有孔率(porosity)”という用語は、マクロの有孔率(すなわち、粒子間の隙間容積によって定義される大規模な有孔率)である。
【0031】
電極膜104は、既知の方法あるいは新しい方法のいずれによっても製造することができる。例えば、電極膜104は、押し出し成形プロセスによって製造することができる。本発明に用いられるポリマーには、限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE、すなわちテフロン(登録商標))が、ポリプロピレン、ポリエチレン、共重合体、および様々なポリマーブレンド、が含まれる。ポリマーは、電極膜104内で活性電極材のマトリックスとして働く。
【0032】
電極膜104を形成するために、ポリマー、活性電極材、および用いられる可能性のある他の粉末材料の粉末が乾式混合される。1つの例示の実施形態では、用いられる粉末及び配合は以下の通りである:85〜90重量%の活性炭(活性電極材)、5〜8重量%のPTFE、及び2〜10重量%の導電性カーボン(電気伝導のプロモータとして作用するグラファイト)。適切な活性炭粉末は、Westvaco Corporation(Stamford、コネチカット)から販売されているNuchar(登録商標)powderを含む、様々なソースから取得することができる。他の例示の実施形態は、85〜93重量%の活性炭、3〜8重量%のPTFE、及び2〜10重量%の導電性カーボン、を含む。さらに他の実施例は、活性炭及びPTFEを含み、導電性カーボンを用いない。
【0033】
いずれにせよ、得られた複合物は、溶剤と共に、押し出し機に導入され、混合された材料をフィブリル化して、ドウ(パン生地)状(dough-like)の膜を生成する。1つの実施形態では、溶剤に対する粉末混合の割合は、重量比約80/20である。ドウ状物質は、1回以上圧延して所望の厚さ及び密度を生成する。最後に、ドウ状物質は、焼かれあるいは乾燥されて、許容されるレベル(例えば、100万部に数部のオーダ)まで残留溶剤を低減して、電極膜104を生成する。
【0034】
電極膜104を製造する他の手法が、同時継続で同じ出願人に譲渡された2004年4月2日出願の米国特許出願10/817,701に開示されており、参照により本明細書に組み入れられる。さらに、現在知られている、あるいは後に開発されるであろう、他の手法が電極膜104を製造することに実施されるであろう。
【0035】
電極膜104を製造する例示の実施形態を説明したので、集電体102に対する結合プロセスを再び図3を参照しながら説明する。例示の実施形態において、電極膜104a、104bは、圧延機(calender)内において、集電体102に結合される。すなわち、集電体102は、電極膜104a,bの対向する層間に設けられ、すなわち挟み込まれ、圧延機のローラ間に送られる。圧延機は、ギャップが制御されており、すなわち、ローラ間のギャップを予め決定された距離にセットして、集電体102及び電極膜104a,bを圧縮する。
【0036】
例示の実施形態では、電極膜104a、104bのそれぞれの層の厚さは、約160〜180ミクロンの間であり、集電体102の厚さは約40ミクロンである。したがって、圧延機のギャップは、約210〜220ミクロンの間に設定される。集電体102は実質的に圧縮されないので、圧延機は電極膜104a,bを約50%圧縮し、これを集電体102に貫設された複数の開口105内へ押し込み、他方の電極膜の層と接触させる。圧延機から取り出されると、電極膜104a,bは膨らむことから、より恒久的な厚さの減縮は、約5〜20%の間である。
【0037】
集電体102、あるいは、電極膜104a,bの表面に対して接着剤が適用されないので、2つの表面間の界面108は実質的に接着剤及び接着剤が含み得る不純物を有しないことに着目されたい。本発明の幾つかの実施形態では、これらの要素間の付着は、主として圧延機により生成される圧力結合によるものである。しかしながら、他の実施形態では、これらの要素間の付着は、電極膜104a,bの層間の化学反応によるもの、および/あるいは、電極膜104a,bの層間の機械的相互作用及び化学反応によるものである。
【0038】
本発明において、電極膜104a,bの層を界面108において互いに結合させる、また、集電体102に対して結合させる他のプロセスも考えられる。例えば、圧力が制御された圧延機を用いることができる。圧力結合を向上させるために、圧延機のローラの一方あるいは両方、および/あるいは、電極膜104a,b、および/あるいは集電体102を予め加熱してもよい。集電体102および電極膜104a,bが圧延機205を通して移動する速度を制御してもよい。当業者において、使用される材料、適用される温度、電極膜104a,bの厚さ、圧延機により適用される圧力、所望の付着強度、およびその他の多くの要因に依存して、様々な他の設計パラメータが実施し得ることが理解される。
【0039】
いずれにせよ、電極100は、切断あるいは形作られ、集電体に端子が取り付けられて、ウルトラキャパシタやスーパーキャパシタを含む、限定されない様々な電極材や電極デバイスが形成される。1つの例示の実施形態では、電極100は、様々な種類の容量性デバイスに用いられるようにゼリーロール形態に巻かれている。図4a,4bは、電極から例示される電極デバイスを作るローリングプロセスを示す図である側面図である。図4aにおいて、電極100は図3を参照して説明された結合プロセスの後のものとして示している。電極100は、実質的に図4aに示す矢視110の方向にそれ自身を巻いて行き、図4bに示すようなゼリーロール形態100´を形成し、容量性デバイスとして用いるために集電体にコネクタを装着してなる。円筒状の形態は、ぎっしりした容量かつ巻かれていない形態よりも小さい重量におけるキャパシタンス量を増加することができる。
【0040】
図5は、例示の電極を生成する例示のプロセス工程500を示すフローチャートである。工程500において、第1の電極膜と第2の電極膜が、集電体に隣接して配置される。工程520において、例えば、上述のような様々な実施形態における圧延機の使用を含む製造プロセス中に、前記集電体は前記第1の電極膜と前記第2の電極膜との間で挟まれる。工程530において、前記第1の電極膜と前記第2の電極膜との間の界面において、集電体に形成された複数の開口を通して結合が形成される。この結合は、接着剤を用いることなく前記第1の電極膜及び前記第2の電極膜を前記集電体に固定することに留意されたい。したがって、プロセス工程500は、完全に乾式電極製造プロセスを表している。
【0041】
電極及び電極デバイス(多重層キャパシタ、すなわち、複層キャパシタを含むが、それには限定されない)を作るための本発明の方法を、詳細に説明した。これは、例示目的のために行われた。全体としての本発明の特定の実施形態も、本発明の特徴の特定の実施形態も本発明の基礎を成す一般原理を限定しない。特に本発明は、電極あるいは電極デバイスを作製するのに用いられる材の特定の寸法、形態、種類、および材の構成成分の割合に必ずしも限定されない。本明細書で説明された特定の特徴は、幾つかの実施形態で使用され得るものであるが、説明されたような本発明の精神と範囲からの逸脱することなく、他の実施形態では用いられないこともあり得る。前述の開示では多くの更なる修正が意図されており、幾つかの事例では本発明の幾つかの特徴が他の特徴を用いることなく採用されるであろうことは、当業者によって理解される。したがって、これらの例示の実施例は、本発明の境界および本発明に与えられる法的保護を定義するものではなく、この機能は特許請求の範囲とその均等物によって果たされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極膜及び第2の電極膜と、
製作工程中に前記第1の電極膜と前記第2の電極膜との間に挟まれた集電体と、を含む電極材であって、
前記集電体は、当該集電体を貫通する複数の開口を有しており、
前記製作工程後に前記集電体に貫設された前記複数の開口を通して前記第1の電極膜と前記第2の電極膜との間の界面に結合が形成されており、前記結合は、前記第1の電極膜及び前記第2の電極膜を実質的に接着剤を用いることなく前記集電体に固定している、
電極材。
【請求項2】
前記第1の電極膜及び前記第2の電極膜を前記集電体に固定する前記結合は、接着剤を用いることなく提供される、請求項1に記載の電極材。
【請求項3】
前記製作工程は、前記第1の電極膜、前記第2の電極膜、及び、前記集電体の全体に圧力をかけることを含んでいる、請求項1あるいは2に記載の電極材。
【請求項4】
前記製作工程は、熱の適用を含んでいる、請求項1〜3いずれか1項に記載の電極材。
【請求項5】
前記電極材は、前記電極材の少なくとも一方を覆うように設けた非導電性セパレータを含んでいる、請求項1〜4いずれか1項に記載の電極材。
【請求項6】
前記製造工程は、複層キャパシタを生成するものである、請求項1〜5いずれか1項に記載の電極材。
【請求項7】
前記複層キャパシタは、ウルトラキャパシタあるいはスーパーキャパシタである、請求項6に記載の電極材。
【請求項8】
前記製造工程は、前記界面において、前記第1の電極膜と前記第2の電極膜との機械的なかみ合いをもたらす、請求項1〜7いずれか1項に記載の電極材。
【請求項9】
電極材を製造する方法であって、
集電体を、第1の電極膜と第2の電極膜との間に位置させ、
前記集電体に貫設された前記複数の開口を通して前記第1の電極膜と前記第2の電極膜を結合して、前記第1の電極膜及び前記第2の電極膜を実質的に接着剤を用いることなく前記集電体に固定する、
電極材の製造方法。
【請求項10】
前記第1の電極膜と前記第2の電極膜を結合する操作は、接着剤を用いることなく実行される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
各工程はドライ工程である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の電極膜と前記第2の電極膜とを互いに電気的に結合することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の電極膜と前記第2の電極膜との間の結合を増進するために加熱することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記電極材の少なくとも一方に非導電性セパレータを配置することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記集電体に形成された前記複数の開口を通して、前記第1の電極膜と前記第2の電極膜とを機械的にかみ合わせて一体とすることを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の電極膜と前記第2の電極膜とを、少なくとも一部において、前記第1の電極膜と前記第2の電極膜との間の化学反応により結合させることを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の電極膜と前記第2の電極膜とを、前記第1の電極膜と前記第2の電極膜との間の機械的相互作用及び化学反応により結合させることを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の電極膜、前記第2の電極膜、及び前記集電体を、それ自身上に巻くことを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項19】
請求項9に記載の方法により製造された複層キャパシタ。
【請求項20】
2つの電極材間に挟まれた多孔性集電体と、
実質的に接着剤を用いることなく、前記2つの電極材を互いに結合すると共に、前記2つの電極材を前記集電体に結合する界面と、
を備えた複合キャパシタ。
【請求項21】
前記界面は、接着剤を用いることなく、前記2つの電極材を互いに結合すると共に、前記集電体に結合する、請求項20に記載の複合キャパシタ。
【請求項22】
前記2つの電極材は、前記多孔性集電体を通して互いに機械的に結合されている、請求項20あるいは21に記載の複合キャパシタ。
【請求項23】
前記2つの電極材は、前記多孔性集電体を通して互いに化学的に結合されている、請求項20〜22いずれか1項に記載の複合キャパシタ。
【請求項24】
前記2つの電極材は電極膜である、請求項20〜23いずれか1項に記載の複合キャパシタ。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−527838(P2011−527838A)
【公表日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517624(P2011−517624)
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際出願番号】PCT/US2009/050122
【国際公開番号】WO2010/006179
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(505305673)マックスウェル テクノロジーズ, インク (17)
【Fターム(参考)】