説明

電気二重層キャパシタとこれを用いた脱イオン装置及びその運転方法

【課題】電極部分の電極層の厚みを増やしてイオンの吸着容量を増加でき、一度に大量の液体の脱イオン処理を図ることができるとともに、電極部分を容易にかつ効果的に回復させて高い脱イオン処理能力を持続することができ、電極を簡単に交換できる電気二重層キャパシタとこれを用いた脱イオン装置及びその運転方法を提供する。
【解決手段】セパレータ18の両側に電極20、20を設け、この電極20の外側に導電性材料からなる集電極21を備えた少なくとも一つのユニット10を有し、このユニット10内に流入口12を介して処理流体を流入させて流出口13を介して脱イオン流体を流出させる電気二重層キャパシタであり、ユニット10内にセパレータ18と電極20と集電極21とを収納する電極室27を有し、この電極室27に集電極21に電極部材22を供給する充填口14と、集電極21に付着した廃電極を回収する取出口15とが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動性電極を用いた通液型構造の電気二重層キャパシタに関し、特に、イオンを含む液体から脱イオンをおこなうことを目的とするキャパシタとこれを用いた脱イオン装置及びその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、この種の電気二重層キャパシタ(コンデンサ)は、海水などに脱塩処理を施したり、市水に脱イオン処理を施す場合に用いられ、水不足の解消や超純水製造などに有効な手段として期待されている。このキャパシタとして、例えば、特許文献1、2のキャパシタが知られている。これらのキャパシタは、セパレータを両側から良導電性多孔性物質からなる一対の電極部で挟み込み、この電極部の外側を集電極で挟んだ構造になっている。また、その他の構造のキャパシタとして、図9、10に示した構造の電気二重層式キャパシタ(以下、二重層式キャパシタという)1が知られている。
【0003】
図9、10に示した二重層式キャパシタ1は、フィルム状の絶縁性多孔板で通液性を有するセパレータ部材2と、導電性多孔体より成り非流動性である一対の固定電極部3、3と、導電性の板状体より成る一対の集電極部4、4と、一対の側板部5、5とを有しており、セパレータ部材2が固定電極部3、3により両側から挟まれ、その外側から集電極部4、4と、側板部5、5とに挟まれて一つのユニット部位が構成されている。このユニット部位の内部には、前記の側板部5、5に形成された流入穴7、流出穴8を介して固定電極部3、3の間にイオンを含む流体を通液するようになっている。また、セパレータ部材2、2の間にはスペーサ部材9が介在されている。
この二重層式キャパシタ1は、固定電極部3、3の間に電解液を充填させ、この状態で外部の電源部位より直流電流を印加させて充電するか、又は両固定電極部3、3を短絡させて放電を起こすことにより、いわゆる電気二重層キャパシタの原理を用いた水処理装置として機能するようになっている。すなわち、集電極部4に通電した場合、固定電極部3にイオンが静電吸着されて流体からイオンの除去がおこなわれる脱イオン(充電)工程と、集電極部4に流れる電流を逆接続したり短絡させることにより固定電極部3に吸着したイオンが放出される再生(放電)工程とが繰り返されることによって液体から脱イオンを図ろうとするものである。
【0004】
これらキャパシタには、より高い脱イオン性能が望まれており、脱イオン性能を向上させる場合には、通常、単位当りの表面積が極力大きい材料により電極を形成して導電性を高くし、イオン吸着容量を増やすことが多くなっている。例えば、特許文献1や2のキャパシタでは、粉末状に設けた粉末活性炭にポリエチレンや四フッ化エチレン、フェノール樹脂などをバインダーとして適量混合させ、これを加熱処理によってアルミニウムなどの導電性板や集電極に塗布して電極が形成されている。このように、電極部分は、金属板にバインダーを混合させた粉末活性炭が塗布されて形成される場合が一般的である。
また、図9の二重層式キャパシタでは、固定電極部3として用いられる活性炭の粒径や繊維径・繊維長を小さくすることでこの活性炭の単位当りの表面積を大きくするようになっている。
【0005】
一方、別の構成により脱イオン処理の性能を向上させるようしたキャパシタとして、特許文献3や4の通液型コンデンサが知られている。これらのコンデンサでは、セパレータ、電極、集電極からなるユニットがいわゆるコイル型や円盤積層型になっており、又はユニットをこれら以外の多管型にして複数設けることで電極や集電極を積層させたり複数設けることにより、吸着容量を増加させようとしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−325983号公報
【特許文献2】特表平11−514289号公報
【特許文献3】特開2000−91169号公報
【特許文献4】特許第3207427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1、2のキャパシタでは、イオン吸着容量を大きくするために電極の活性炭の塗布の厚みを増やすと電極層が脆弱化しやすくなる。これを防ぐためにバインダー量を増やすと、このバインダーによって活性炭表面が被覆されたり流路が閉塞されたりして吸着効率が低下し、活性炭の厚みの増加に伴うイオン吸着容量の増大効果が十分に発揮されないことがある。このように、導電性板等に粉末活性炭を塗布して電極を形成する場合には電極層の厚さに限界があった。
【0008】
一方、図9に示した二重層式キャパシタにおいては、活性炭の粒径や繊維径・繊維長を小さくするときに、より微細化するほどに電極としての取り扱いが困難になり、実際には単位当りの表面積が大きい固定電極部3を形成することは難しくなっている。また、活性炭を不織布や織布などの繊維状に設けてイオン吸着容量を大きくすることも考えられるが、この場合、粉末活性炭と比較して充填密度が低くなったり繊維径の細さに限界が生じるため吸着表面積を大きくすることには限界があった。しかも、繊維状の活性炭を用いるとキャパシタ全体が高価になる。
【0009】
更に、これらのキャパシタの電極部付近には高濃度イオン水がほぼ飽和状態で存在し、この高濃度イオン水によりカルシウム、マグネシウム、鉄、マンガンなどの難溶解性塩の析出、微生物の繁殖、異物の集積などによって不純物が蓄積することがある。これらの場合、電極部位が劣化してイオン吸着能力の急激な低下につながることになる。これを防ぐため、脱イオン水を充填した状態で通電して電極部位を電気洗浄したり、電極部位を逆接続したりして回復させる場合があるが、何れの場合にもこの回復にかかる時間が長くなるとその間には脱イオン処理ができなくなってロスが生じていた。更に、電極部位に対して徐々に不純物が蓄積することになるためこの電極部位を使用可能な状態まで再生することが難しくなってくる。
そのため、キャパシタの装置全体を分解して電極部分を交換する必要が生じることになり、特に、特許文献3、4のように、吸着容量を増加させる構造の場合には余計に手間がかかるとともに、電極部位の急激な劣化等により装置全体の機能が停止すると、メンテナンスや予備の装置の準備などの経済的な損失も大きくなる。
【0010】
本発明は、上記した実情に鑑み、鋭意検討の結果開発に至ったものであり、その目的とするところは、電極部分の表面積を大きくしたイオン吸着容量を増加でき、一度に大量の液体の脱イオン処理を図ることができるとともに、全体を分解することなく電極部分を容易にかつ効果的に回復させて高い脱イオン処理能力を持続することができる電気二重層キャパシタとこれを用いた脱イオン装置及びその運転方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明は、セパレータの両側に電極を設け、この電極の外側に導電性材料からなる集電極を備えた少なくとも一つのユニットを有し、このユニット内に流入口を介して処理流体を流入させて流出口を介して脱イオン流体を流出させる電気二重層キャパシタであって、ユニット内にセパレータと電極と集電極とを収納する電極室を設け、この電極室に外部と連通し、集電極に電極部材を供給する流路である充填口と、集電極に付着した廃電極を回収する流路である取出口とを設けた電気二重層キャパシタである。
【0012】
また、本発明は、電極と電極部材とは、良伝導性で高表面積を有し、かつ気体や水に均一に分散して搬送が可能な、粉末活性炭、短繊維活性炭等の活性炭やカーボンナノチューブよりなる電気二重層キャパシタである。
【0013】
また、本発明の集電極は、ワイヤの間隔が1〜100μmである電気二重層キャパシタである。
【0014】
また、本発明は、セパレータは、相分離法、延伸法などの方法によって製膜された精密ろ過膜又は微細多孔性薄膜である電気二重層キャパシタである。
【0015】
また、他の発明は、電気二重層キャパシタを用いた脱イオン装置であって、少なくとも集電極に電圧を印加する電源と、処理流体を供給する原水層と、電極部材を収納する貯液槽とを有し、流入口と原水槽、充填口と貯液槽をそれぞれ接続した脱イオン装置である。
【0016】
また、更に他の発明は、脱イオン装置において、貯液槽から電極部材を電極室内に供給してこの電極部材を集電極にプリコートさせた後、原水槽からキャパシタ本体に処理流体を供給して、次に電源により集電極に電圧を印加し、処理流体を脱イオン処理するようにした脱イオン装置の運転方法である。
【0017】
また、脱イオン装置の運転方法において、脱イオン装置本体に廃電極を回収する回収槽を設け、この回収槽と取出口とを接続し、電極によるイオン吸着能力が低下したときに、取出口を介して集電極から回収槽に廃電極を回収し、貯液槽から充填口を介して集電極に電極部材を供給してこの電極部材を集電極にプリコートさせるとよい。
【0018】
更に、電極部材又は廃電極を処理流体に分散して流動化させながら、充填口から供給又は取出口から回収するとよい。
【0019】
更に、集電極に電極部材を供給する前に、電極を逆接続または/及び短絡させて脱イオン装置から高濃度イオン含有排液を排出させるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、集電極に電極材料を供給することで集電極の電極層の厚みを増やすことで表面積を大きくしてイオンの吸着容量を増加させ、一度に大量の液体の脱イオン処理を図ることができる。この場合、集電極に付着した廃電極を回収した後、別途新規電極を供給することで、全体を分解することなく電極部分を容易にかつ効果的に回復させて高い脱イオン処理能力を持続させることが可能になる。
【0021】
また、本発明によると、電極材料を集電極に供給したときに優れた導電性を発揮でき、単位容積当りの表面積を大きくして電極性能を大きく回復させることができる。しかも、電極材料として繊維活性炭を用いた場合には嵩密度を低くして取り扱いが容易となり、粉末活性炭やカーボンナノチューブを用いた場合には単位容積当りの静電容量を大きくできる。
【0022】
また、本発明によると、集電極により目詰まりを防ぎつつ効果的にイオンを吸着させることができ、廃電極を回収する際の逆洗も容易である。更に、ウェッジワイヤスクリーンのスロットサイズを自由に選択することにより、脱イオン処理を施す流体の流量に応じて最適な脱イオン吸着性能を得ることができる。
【0023】
また、本発明によると、電極間にはプリコートや廃電極回収時の逆洗浄圧に耐えうる強度及び構成の相分離法や延伸法による精密ろ過膜や微細多孔膜によるセパレータを用いて電圧を印加した時に、電極部材同士の十分な絶縁性と、流体を流すときの通水性を確保することができ、かつ、粒径の細かい電極材料であってもこの電極材料の流出を十分に防ぐことができる。
【0024】
また、他の発明によると、電気二重層キャパシタに電圧を印加して処理流体の効果的な脱イオン処理を図ることができるとともに、集電極に貯液槽から電極材料を供給して集電極の電極層の厚みを増やしてイオン吸着容量を増加させて一度に大量の液体の脱イオン処理を図ることができる。
しかも、電極が劣化した場合には、集電極に付着した廃電極を回収槽に回収し、新たな電極部材を集電極に付着させることで電極を回復させることが可能となり、高い脱イオン処理能力を常に維持できる。
【0025】
また、更に他の発明によると、電極表面や内部でカルシウムやシリカ、鉄やマンガンなどの難溶解性塩類が凝析した場合や微生物による生物膜などによって電極が劣化して吸着能力が低下した場合にも、本体を分解することなく再度電極を流動化させて内部より廃電極を取出し、新しい活性炭を再充填することにより電極を再生することが可能となり、電極によるイオン吸着能力を常時一定に保つことができる。
【0026】
また、バインダーを使用することなく取り扱いの困難な活性炭を電極として使用でき、事前にバインダー等との混合処理をおこなうことなく容易に電極として使用可能になる。このようにバインダーを使用しないことから、吸着表面積の損失を抑えることが可能になるばかりか、電極の厚みを増やすことが可能になる。
【0027】
また、脱イオン流体の生成によって電極表面に静電吸着して蓄積する高濃度のイオンを、電極の逆接続または/及び短絡によって高濃度イオン含有排液として外部に排出して電極を再生することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明における電気二重層キャパシタの一実施形態を示す模式図である。
【図2】図1の分解模式図である。
【図3】電気二重層キャパシタの分解斜視図である。
【図4】集電極を示した拡大斜視図である。
【図5】側板を示す模式図である
【図6】脱イオン装置の一実施形態を示した模式図である。
【図7】電気二重層キャパシタの他例を示す模式図である。
【図8】脱塩−再生曲線を示すグラフである。
【図9】従来の電気二重層式キャパシタの一例を示す模式図である。
【図10】図9の分解斜視図である。
【図11】比較品における電気二重層式キャパシタを用いた脱イオン式装置を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、本発明における電気二重層キャパシタとこれを用いた脱イオン装置及びその運転方法の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1においては、本発明における電気二重層キャパシタの一実施形態の模式図を示し、図2においては、その分解斜視図を示している。
図において、電気二重層キャパシタ本体(以下、キャパシタ本体という)10は、イオンを含む流体から脱イオン流体を生成する少なくとも一つのユニットであり、このユニット10は、流入口12、流出口13、充填口14、取出口15、排液口16を構成するケーシング17を備え、このケーシング17内に、セパレータ18、スペーサ19、電極20、集電極21が設けられている。
【0030】
ケーシング17内のセパレータ18は、例えば、直流5V以下の電圧において電極20、20同士の導通を防ぐ絶縁性と、通液性とを有する適宜の薄膜状材料であって、かつ、電極20に損傷を与えたり電極20を構成する材料の外部への流出を防ぐ適宜の材料により形成され、更に、電極20の流出を十分に妨げることが可能な材料により形成される。このセパレータ18としては、例えば、電池用セパレータとして使用される微細多孔性フィルムや、不織布等により形成され、特に、相分離法、延伸法などの方法によって製膜された精密ろ過膜又は微細多孔性薄膜を用いることが好ましい。本実施形態では、2つのセパレータ18、18が配設され、このセパレータ18により異極の電極20、20同士が直接接触することが防がれている。
【0031】
スペーサ19は、例えば、網、織布、焼結体、発砲体などの内部に流体が流れる隙間を有する材料によって形成され、セパレータ18、18の間に配設されて電極20、20間の間隔を一定に保つようになっている。
【0032】
電極20は、導電性を有する材料であって、単位容積当りの表面積が大きいものにより形成されることが望ましく、例えば、粒状活性炭、繊維状活性炭、粉末状活性炭、カーボンナノチューブ等のカーボン材料により形成される。この場合、繊維状活性炭は取り扱いが容易であり、粉末活性炭、カーボンナノチューブは、単位容積当りの静電容量が大きいという長所がある。
【0033】
集電極21は、導電性の適宜の材料によって形成可能であり、例えば、図4に示したウェッジワイヤスクリーンであることが望ましい。この場合、ウェッジワイヤスクリーン21の網目ピッチPは、1〜100μmであるとよい。集電極21としては、例えば、ステンレス鋼またはチタン合金製のものを用いることが望ましいが、これ以外にも、例えば、グラファイトやアルミニウム製、更には、白金や金のものを用いることも可能である。この場合、通電時にイオンを発生しやすい材料を避けることが好ましい。
【0034】
この集電極21には、外部より電極部材22が供給され、この電極部材22は、電極20と同様に粉末活性炭や繊維状活性炭、カーボンナノチューブなどのカーボン材料からなり、この電極部材22として粉末活性炭を用いる場合には、その平均粒径が1〜100μm、繊維状活性炭やカーボンナノチューブを用いる場合にはその平均繊維長が1〜100μmであることが好ましい。集電極21と電極20とは同じ種類かつ同じ平均粒径や繊維長のカーボン材料によって設けられることが望ましく、その平均粒径や平均繊維長が前記のウェッジワイヤスクリーン21の網目ピッチPよりも大きいものを使用する。
【0035】
図1に示したケーシング17は、側板25とガスケット26とを備えている。図3において、これらを組み合わせる際には内部に電極室27が形成され、この電極室27内にセパレータ18、スペーサ19、電極20、集電極21を収納可能になっている。図5に示すように、側板25には凹状の収納部28が形成され、この収納部28に集電極21を収納可能になっている。ガスケット26は、内側に電極20を収納可能になっている。
【0036】
図2、3において、ケーシング17を組み合わせる際には、2つのセパレータ18、18の間にスペーサ19を介在させて流路を確保した状態で、その両側に内側に電極20が配設されたガスケット26、26が配置され、この電極20の外側に集電極21が収納された側板25が取付けられる。これらの側板25、ガスケット26、スペーサ19は、ケーシング17の外周縁側においてセパレータ18によりシールされて液密状態で一体化され、これにより、キャパシタ本体10内に電極室27が形成される。
【0037】
ケーシング17の組み合わせ後には、前述した流入口12、流出口13、充填口14、取出口15、排液口16が構成される。このうち、流入口12、流出口13は、側板25の外部から内側のスペーサ19まで連通するように形成され、この流入口12からキャパシタ本体10内に流入した流体は、流出口13から流出するように設けられている。
【0038】
充填口14は、側板25の外部からガスケット26の内側まで連通するように形成され、電極室27内の集電極21に電極部材22を供給する流路となっている。取出口15は、側板25の外部からこの側板25の収納部28まで連通して形成され、集電極21に付着した廃電極を回収する流路となっている。排液口16は、側板25の外部からガスケット26の内側まで連通するように形成され、処理流体を脱イオン化処理したときに生じる高濃度イオン含有液を排出する流路となっている。
【0039】
上記の構成により、キャパシタ本体10内に流入口12を介して処理流体を流入させ、電極20に通電させたときに、陽イオンと陰イオンとがそれぞれ電極20に吸着する充電状態となり、流出口13から脱イオン流体を流出させることが可能になる。一方、電極20の逆接続と短絡と交互におこなったときには、陽イオン、陰イオンを電極20から脱離させた放電状態となり、排液口16から高濃度イオン含有液を排出させることが可能になる。
【0040】
なお、本実施形態のキャパシタ本体10ではセパレータ18を2枚とし、このセパレータ18、18の間に1枚のスペーサ19を介在させているが、セパレータ18は少なくとも1枚以上であればよく、このセパレータ18の数に応じて必要数のスペーサ19を組み合わせるようにすればよい。
【0041】
次に、本発明の電気二重層キャパシタを用いた脱イオン装置を説明する。
図6においては、脱イオン装置の一実施形態を示しており、この脱イオン装置本体(以降、装置本体という)30は、少なくとも、電源31、原水槽32、処理液槽33、貯液槽34、回収槽35を有し、さらに、この実施形態では排液槽36を備えている。
【0042】
電源31は、例えば、直流電源からなっており、導線37によりキャパシタ本体10内の集電極21に接続されてこの集電極21に電圧を印加可能に設けられている。原水槽32には処理流体である原水が蓄積され、この原水槽32は、キャパシタ本体10の流入口12と接続されてこのキャパシタ本体10に処理流体を供給可能になっている。処理液槽33は流出口13と接続され、この処理液槽33にはキャパシタ本体10によって脱イオン処理された流体が排出されるようになっている。貯液槽34には電極部材22が収納され、この貯液槽34は、キャパシタ本体10の充填口14と接続されて電極室27内に電極部材22を供給可能になっている。貯液槽34には攪拌機38が設けられ、この攪拌機38により貯液槽34内の電極部材22を攪拌するようになっている。回収槽35は、キャパシタ本体10の取出口15と接続され、電極室27内の集電極21に付着した廃電極を回収可能になっている。排液槽36は、キャパシタ本体10の排液口16と接続され、キャパシタ本体10により脱イオン流体を生成した時に排出される高濃度イオン含有液をこの排液槽36に排出可能になっている。
【0043】
キャパシタ本体10と各槽との間や、各槽の一次側にはストップ弁40が設けられている。ストップ弁40のうち、ストップ弁40aは原水槽32と流入口12との間、ストップ弁40bは流出口13と処理液槽33との間、ストップ弁40cは貯液槽34と充填口14との間、ストップ弁40dは取出口15と回収槽35との間、ストップ弁40eは排液口16と排液槽36との間に設けられている。排液口16からの流路は、ストップ弁40eの一次側で分岐しており、この分岐部分には3方弁である切換弁41が設けられている。分岐した流路は、前記のストップ弁40e側と、逆洗液を貯留する逆洗液貯留槽42とにそれぞれ続いており、この逆洗液貯留槽42と切換弁41との間にはストップ弁40fが設けられている。これにより、排液口16からの流路は、切換弁41により排液槽36、又は逆洗液貯留槽42に切換え可能に設けられている。
【0044】
更に、この装置本体30では、原水槽32とストップ弁40aとの間に、原水槽32からの原水を供給可能な送液ポンプ43、貯液槽34の一次側に圧縮空気を流入させる第1圧縮空気流入口44と圧縮空気の流入を制御するストップ弁40g、逆洗液貯留槽42の一次側に圧縮空気を流入させる第2圧縮空気流入口45と圧縮空気の流入を制御するストップ弁40hが設けられている。
【0045】
続いて、この脱イオン装置の運転方法を説明する。
図6における装置本体において、先ず、キャパシタ本体10の電極室27内には電極20が充填されていない状態にあり、この状態から切換弁41により流路が排液槽36側に切換えられ、ストップ弁40a、40eが開放、他のストップ弁40b、40c、40d、40f、40g、40hが閉じた状態になっている。
【0046】
この状態から送液ポンプ43を始動させ、原水槽32から流入口12を経由してキャパシタ本体10内に処理流体である原水を充満させる。キャパシタ本体10内が原水で満たされた後には原水が排液口16から流出され、切換弁41、ストップ弁40eを経て排液槽36に流れる。排液槽36からの原水の流出を確認したら送液ポンプ43を停止し、ストップ弁40a、40eを閉じるようにする。
【0047】
次いで、電源31により導線37を介して集電極21に電圧を印加した状態で、例えば、市水に1〜20wt%程度に分散させた平均粒径5〜100μmの粉末活性炭(電極部材)22を貯液槽34に予め貯液させておき、ストップ弁40gを開放してこの貯液槽34を圧縮空気で適宜の状態に加圧した状態からストップ弁40c、40dを開放して、分散させた電極部材22を充填口14、14から導入し、電極室27を介して取出口15、15より流出させて回収槽35まで流出させる。
【0048】
この回収槽35への電極部材22の流出を確認した後に、ストップ弁40eを再度開放し、ストップ弁40cを閉じることにより、余剰の水が多孔性の集電極21を通過して排液口16、16より排液槽36に排出される。このとき、電極部材22の平均粒径や平均繊維長をウェッジワイヤスクリーン21の網目ピッチPよりも大きくしていることで電極部材22が網目の間を通過することができず、その結果、電極部材22が集電極21上にプリコートされる。
【0049】
このとき集電極21の厚みはガスケット26の厚みにより規制され、電極室27が電極部材22で満たされて集電極21上に電極部位が形成されたらストップ弁40d、40e40gを閉じ、ストップ弁40a、40bを開いて送液ポンプ43を始動させ、電源31より導線37を経て集電極21に水が電気分解しない電圧で直流電圧を印加する。これにより、キャパシタ本体10の電極室27のセパレータ18と電極20と集電極21との間に水が流れたときにこの水が脱イオン処理される。
【0050】
そして、流出口13より流出する液のイオン(塩)濃度又は電気伝導度と、図1における電極20、20間の直流電流を図示しない適宜の測定器により測定しながら処理液槽33に処理液を貯留し、電極20によるイオン吸着能力が低下したときに、電極20を逆接続又は短絡させるか、或は、逆接続と短絡とを交互に実施すると同時に、ストップ弁40bを閉じ、ストップ弁40eを開放する。この動作によって、排液口16から高濃度イオン含有排液が排出されて排液槽36に蓄積される。
このときの集電極21の逆接続・短絡により生じる電流値をモニターしておき、電極20の再生を確認する。電極20の再生を確認した後にはストップ弁40eを閉じ、ストップ弁40bを開放することにより脱イオン処理を再開することが可能になる。
【0051】
ここで、装置本体30において、上記の再生操作を実施したとき場合にも電極20の再生が十分におこなわれなくなったとき、すなわち、電極20によるイオン吸着能力の低下が続く場合には、送液ポンプ43を停止、ストップ弁40a、40c、40d、40e、40gを閉じ、切換弁41を逆洗液貯液槽42と排液口16とが接続されるように切換えた後に、ストップ弁40hを開放して第2圧縮空気流入口45を介して逆洗液貯留槽42を加圧し、続いて、ストップ弁40d、40fを開放する。
【0052】
これにより、電極室27内に液体と気体との混合体である逆洗液が逆流し、この混合体により電極室27内部の劣化した廃電極である活性炭が集電極21から剥離されて取出口15より噴出されて回収槽35に回収される。このとき、必要に応じてストップ弁40cも開放して充填口14をこの逆洗浄に利用するようにしてもよい。その後、ストップ弁を切換えて、充填口14から取出口15に清浄な液を流すことにより劣化した活性炭(廃電極)の排出の完了を確認することができる。
【0053】
廃電極を排出した後には、貯液槽34から充填口14を介して電極室27に電極部材22を供給して、この電極部材22を電極室27に満たすことにより、集電極21に電極部材22がプリコートされる。これによって、キャパシタ本体10を分解することなく容易にかつ効果的に電極部分を回復させることができる。しかも、電極部材22のプリコート時には、集電極21の表面に多孔体である粉末活性炭、繊維活性炭、カーボンナノチューブ等の微細な電極部材を付着させることで集電極21の表面積が大きくなり、その結果、大容量化を図ってイオンの吸着容量を増加し、一度に大量の液体の脱イオン処理が可能になり、高い脱イオン処理能力を持続することができる。
【0054】
上記の場合、電極部材22又は廃電極を処理流体である水に分散させて流動化させながら充填口14から供給、又は取出口15から回収することにより、バインダーを使用することなく簡単に電極部材や廃電極をキャパシタ本体10や、装置本体30に形成される流路内に流すことができる。
【0055】
図7においては、本発明における電気二重層キャパシタの他例を示している。なお、この実施形態において前記実施形態と同一部分は同一符号によって表し、その説明を省略する。
図において、キャパシタ本体50を構成するユニットは、側板25、25の間に、複数組のセパレータ18、スペーサ19、電極20、集電極21が組み合わされた状態で配設されたものである。このような構造に設けた場合、電極20と集電極21との表面積を大きくして大容量化できるため、イオン吸着容量を増大させて一度に大流量の流体の脱イオン処理を図ることが可能になる。
また、セパレータ18の両側に電極20を有し、この電極20の外側に集電極21を備えた構造のユニットを有する電気二重層キャパシタであれば、図7に示した構造以外であってもよく、例えば、コイル型や円盤積層型等の各種の構造のキャパシタ本体を設けることができる。
【0056】
更に、図示しないが、セパレータと電極と集電極とを有する適宜の態様のキャパシタ本体を複数設け、各キャパシタ本体を一つのユニットとして並列や直列、或は並列及び直列状態に接続して脱イオン装置を構成してもよい。この場合、例えば、キャパシタ本体を並列状態に設けたときには各キャパシタ本体への流路を切換えて使用することができ、一方、キャパシタ本体を直列状態に設けたときにはイオン吸着能力を向上させることができる。
【実施例】
【0057】
次に、本発明における図1に示した構造の電気二重層キャパシタの供試品1、2と、図9に示した構造の電気二重層式キャパシタの比較品との脱イオン(脱塩)性能をそれぞれ測定してその結果を比較した。
【0058】
先ず、比較品としては、図9において、スペーサ部材としてNBC工業株式会社製のナイロン製メッシュNMG52を使用し、このスペーサ部材1枚の両側を日本バイリーン株式会社製のポリエステル不織布MF90よりなるセパレータ部材で挟んだ。電極部は、クラレケミカル株式会社製繊維状活性炭FT300−20厚み0.75mmを10cm角に切断したもの2枚を厚み0.5mmのシリコーンゴムよりなるガスケット3枚によりシールしたものとした。集電極部としては、大塚電気株式会社提供の米国グラフテック社製のグラファイト板SS400−1.19を2枚使用した。これらのスペーサ部材、セパレータ部材、電極部、集電極部を、流入穴、流出穴を設けたアクリル製の側板部で挟み、これらをボルトにより締付けて一体化した。
【0059】
これを電気二重層式キャパシタとして、図11に示した脱イオン装置回路に組み込み、この回路において、0.5%食塩水を1mL/分にて送液し、1.1Vの電流を印加する。この状態で電極間の電流値の変化、流出穴における塩分濃度、電気電導度の変化を測定してイオン吸着状況を確認した。続いて、直流電源部における陽極と陰極とを2分間逆接続し、更に陽極と陰極とを短絡させて前記と同様に電極間の電流の変化、流出穴における塩分濃度、電気電導度を測定した。
【0060】
一方、供試品1においては、電極室内に、セパレータと、10cm角で厚み0.5mmのいわゆる額縁型のガスケットを2枚重ねて厚み1mmとしたものと、多孔性集電極とを配設した。
この供試品1において、集電極としては、図4において目開きの網目ピッチPが10μmである東洋スクリーン工業株式会社製ファインウェッジワイヤスクリーンを使用した。活性炭としては、クラレケミカルの公称平均粒径が10μm、20μm、50μmのものを使用した。電極としては、0.5mm厚のシリコンゴム製ガスケットを適宜枚数重ねて1.0〜2.0mmの厚さに設けたものを使用した。セパレータとしては、公称孔径0.9μmの株式会社ユアサメンブレンシステム製メンブレンフィルタMF−90を用いた。
【0061】
上記の電気二重層キャパシタの電極室内に対して、クラレケミカル株式会社製のスーパーキャパシタ用ファイン活性炭(平均粒径20μm)を水道水に対して5wt%で分散させたものを空気圧10KPaで充填口から流入させて、空気圧による充填圧力を10KPaから50KPaまで段階的に加圧して集電極上に活性炭をプリコートさせた。処理流体としては、0.5%の食塩水を用い、この食塩水を1mL/分にて送液し、1.1Vの直流を集電極に印加させた。また、廃電極を取出す際には、充填口、及び取出口を適宜開閉させながら、排液口より圧縮空気及び水道水を排液口より逆流させておこなった。
一方、供試品2においては、電極のプリコート及び取出しを実施しやすくし、かつ、吸着容量を増大させるために厚み0.5mmのガスケットを5枚重ねとした。
上記の各装置における測定結果を図8に示す。
【0062】
図8におけるグラフに示すように、イオン吸着処理の開始後、供試品1ではおよそ57分間、供試品2では40分間、塩濃度比が低く抑えられたのに対して、比較品では塩濃度比の低下がおよそ30分間程度に留まった。しかも、各時間における塩濃度比は、供試品1、供試品2、比較品の順序で低くなっている。この結果、供試品1、2は、比較品に比べて、より長い時間、処理後の塩濃度比がより低く抑えられており、大きな吸着効果が発揮されることが確認された。なお、イオン吸着性能は、活性炭の賦活方法、粒径、電極室への充填密度、原水の流量、原水の塩濃度、塩成分比率、印加電圧、セパレータを介しての電極間抵抗などの各種のパラメータにより左右されることがあり、更に、電極間における流路の厚みが不均一になると流路に偏流が発生して性能が低下する傾向があることが確認された。このため、電気二重層キャパシタによるイオン吸着性能をより向上させるためには、処理流体の種類や流量などに応じて、前記の各パラメータを最適な値に設定するとよい。
【符号の説明】
【0063】
10 キャパシタ本体
12 流入口
13 流出口
14 充填口
15 取出口
18 セパレータ
20 電極
21 ウェッジワイヤスクリーン(集電極)
22 電極部材
27 電極室
30 脱イオン装置本体
31 電源
32 原水層
34 貯液槽
35 回収槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セパレータの両側に電極を設け、この電極の外側に導電性材料からなる集電極を備えた少なくとも一つのユニットを有し、このユニット内に流入口を介して処理流体を流入させて流出口を介して脱イオン流体を流出させる電気二重層キャパシタであって、前記ユニット内に前記セパレータと電極と集電極とを収納する電極室を設け、この電極室に外部と連通し、前記集電極に電極部材を供給する流路である充填口と、前記集電極に付着した廃電極を回収する流路である取出口とを設けたことを特徴とする電気二重層キャパシタ。
【請求項2】
前記電極と電極部材とは、気体または水によりほぼ均一に搬送が出来、良導電性かつ高表面積を有する粉末活性炭、短繊維活性炭等の活性炭やカーボンナノチューブよりなる請求項1に記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項3】
前記集電極は、ワイヤの間隔が1〜100μmであるウェッジワイヤスクリーンである請求項1又は2に記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項4】
前記セパレータは、相分離法、延伸法などの方法によって製膜された精密ろ過膜又は微細多孔性薄膜である請求項1乃至3の何れか1項に記載の電気二重層キャパシタ。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の電気二重層キャパシタを用いた脱イオン装置であって、少なくとも前記集電極に電圧を印加する電源と、処理流体を供給する原水層と、前記電極部材を収納する貯液槽とを有し、前記流入口と原水槽、前記充填口と貯液槽をそれぞれ接続した脱イオン装置。
【請求項6】
請求項5に記載の脱イオン装置において、前記貯液槽から電極部材を前記電極室内に供給してこの電極部材を前記集電極にプリコートさせた後、前記電源により前記集電極に前記原水槽からキャパシタ本体に処理流体を供給して電圧を印加することにより前記処理流体を脱イオン処理するようにした脱イオン装置の運転方法。
【請求項7】
脱イオン装置本体に廃電極を回収する回収槽を設け、この回収槽と前記取出口とを接続し、前記電極によるイオン吸着能力が低下したときに、前記取出口を介して前記集電極から前記回収槽に廃電極を回収し、前記貯液槽から前記充填口を介して前記集電極に電極部材を供給してこの電極部材を前記集電極にプリコートさせるようにした請求項6に記載の脱イオン装置の運転方法。
【請求項8】
前記電極部材又は廃電極を処理流体に分散して流動化させながら、前記充填口から供給又は前記取出口から回収するようにした請求項6又は7に記載の脱イオン装置の運転方法。
【請求項9】
前記集電極に電極部材を供給する前に、前記電極を逆接続または/及び短絡させて脱イオン装置から高濃度イオン含有排液を排出させた請求項6乃至8の何れか1項に記載の脱イオン装置の運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−86192(P2012−86192A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236837(P2010−236837)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(390002381)株式会社キッツ (223)
【Fターム(参考)】