説明

電気二重層キャパシタ用電極及びその製造方法

【課題】容量特性に優れた電気二重層キャパシタ用電極及びその製造方法を得る。
【解決手段】活性炭とカーボンナノチューブを抄紙成型したシートを、集電体を構成するエッチング箔の表面に形成された凹凸部を介してエッチング箔と一体化して、電気二重層キャパシタ用電極を作成する。あるいは、基板上の触媒粒子を核として成長させたカーボンナノチューブを、エッチング箔の表面に形成された凹凸部を介してエッチング箔と一体化して、電気二重層キャパシタ用電極を作成する。この電極を製造するには、前記活性炭とカーボンナノチューブのシートを、エッチング箔表面の凹凸部に重ね合わせ、これらを0.1〜100t/cm−2の圧力で加圧してカーボンナノチューブとエッチング箔とを一体化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寿命特性の良好な電気二重層キャパシタ用電極及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一対の分極性電極と電解液とからなる電気二重層キャパシタは一対の分極性電極と、この間に存在するセパレータと、それぞれの分極性電極の集電層とから構成されるものであり、代表的な分極性電極としては活性炭粉末,活性炭繊維などが用いられている。
【0003】
この分極性電極の製造方法は、代表的な分極性電極である活性炭粉末に、アセチレンブラック等の導電性物質及びポリテトラフルオロエチレン、四フッ化エチレン樹脂等の樹脂をバインダーとして添加して混合した後、加圧成型する方法、またこの混合物を集電体に塗布する方法が挙げられる。
【0004】
このような電気二重層キャパシタは、活性炭の表面の官能基による反応が原因と思われる高温放置中の容量の低下という問題点がある。この問題点を解決すべく提案がなされている(特許文献1)が、充分ではない。また、カーボンナノチューブはこのような官能基が少ないため、活性炭に比べて寿命特性が良好であるという知見がある。
【0005】
一方、導電性の向上を目的として、活性炭とカーボンナノチューブを含む分極性電極を用いた試みがある(特許文献2)が、この発明においては、樹脂成分であるバインダーを用いているため、容量特性の良い電極が得られないといった問題点があった。
【特許文献1】特開2001−237149号公報
【特許文献2】特開2007−200979号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、寿命特性が良好で、さらに簡単な方法で製造することができ、しかも、容量特性に優れた電気二重層キャパシタ用電極及びその製造方法を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電気二重層キャパシタ用電極は、活性炭とカーボンナノチューブを抄紙成型したシートが、集電体を構成するエッチング箔の表面に形成された凹凸部を介し凹凸部によってエッチング箔と一体化されていることを特徴とする。
【0008】
そして、前記活性炭とカーボンナノチューブを抄紙成型したシートが、バインダーを用いることなく抄紙成型されていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の電気二重層キャパシタの製造方法は、活性炭とカーボンナノチューブを抄紙成型したシートを、集電体を構成するエッチング箔の表面に形成された凹凸部に押圧して、カーボンナノチューブとエッチング箔とを一体化することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、活性炭とカーボンナノチューブの混合した分極性電極によって、良好な寿命特性を得ることができ、さらにエッチング箔の凹凸部が抄紙した活性炭とカーボンナノチューブに食い込むような状態でカーボンナノチューブとエッチング箔とが一体化されるので、樹脂系その他のバインダーや導電補助材料などの材料を使用する必要がなくなり、導電性材料が直接集電体に接触しあうので、電気抵抗を小さくすることができ容量特性に優れた電気二重層キャパシタ用電極を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本方法の概略は、活性炭(以下、ACと記す)とカーボンナノチューブ(以下、CNTと記す)を、バインダーを用いずに抄紙成型(紙抄き)して活性炭とCNTからなるシート(ペーパーとも呼ばれる)を形成し、このシート(以下、AC/CNTシートと記す)をエッチング処理したアルミ箔などの集電体の箔(以下、エッチング箔という)に押圧して、AC/CNTシートとエッチング箔とを一体化することにより、電極を作製するものである。以下に詳細を示す。
【0012】
活性炭と単層カーボンナノチューブ(以下、SWCNTと記す)をメタノールと混合し、ミキサーで約30秒間撹拌して、AC/SWCNT/メタノール分散液を作製する。この分散液を、PTFE濾紙(直径:35mm、平均細孔0.2μm)を用いて減圧ろ過することにより、抄紙成型したAC/SWCNTシートを得る。このSWCNTシートの厚さは、プレス後において形成される分極性電極層の厚さが1〜60μm程度(より具体的には、電気二重層キャパシタの電極で要求される分極性電極層の厚さ)となるように、予めプレスによる変形分を考慮したものとする。
【0013】
このAC/SWCNTシートを集電体と同じサイズに切り取り、集電体であるエッチング処理したアルミ箔の上に載せ、その上から別途用意したエッチング処理をしていない表面が平坦なアルミ箔で挟み、箔の上下方向から10t/cmの圧力で1分間プレスする。
【0014】
プレスする圧力は0.1〜100t/cmが好ましく、この押圧によって、エッチング処理したアルミ箔の拡面化した凹凸部に圧力がかかり、その結果、凸部に圧力がかかって曲がった状態になり、この凸部が抄紙成型したSWCNTシートに食い込むことにより、優れた接合性を付与することができる。
【0015】
プレス方法としては、0.1〜100t/cmの圧力をかけることができるものであれば、平面的なプレスの他、ロールプレス等の他の手法を用いることができる。
【0016】
このエッチング箔としては、化学エッチングや電気化学的なエッチング方法により表面が拡面化されたアルミ箔などの金属箔の集電体を使用する。この場合、集電体であるエッチング箔の厚みは、10μm〜100μmが望ましい。10μm以下では集電体の強度不足によりキャパシタセル構築が困難であり、厚すぎるとセルあたりの容量密度が低下する。
【0017】
また、エッチング箔に形成される凹凸部の形状としては、プレス時に凸部の先端がシートに食い込んだり、凸部先端が変形してシートを構成する繊維と絡み合うようなものが望ましく、凹凸部がなだらかな小山状の形状を呈するものよりは、尖った棒状(針状)のものが望ましい。
【0018】
また、凹凸部の高さ(凸部先端から凹部の底の部分までの距離)としては、前記カーボンナノチューブ層の厚さ(例えば、1〜60μm程度)よりも低いものとし、集電層がプレス後に形成されたカーボンナノチューブ層で確実に被覆されるように設定する。また、集電体であるエッチング箔の厚み(10μm〜100μm程度)も考慮する必要があり、薄手のエッチング箔にあってはその厚みの2/3以内とすることが、エッチング箔の強度を保つ上で好ましい。
【0019】
活性炭としては、やしがら等の天然植物組織、フェノール等の合成樹脂 、石炭 、コークス、ピッチ等の化石燃料由来のものを原料とし、これを賦活処理して使用するのが好ましい。そして、活性炭の賦活方法としては、用いる原料により異なるが、通常、水蒸気賦活法やKOH賦活法などのアルカリ賦活法がある。本発明においては、水蒸気賦活法やアルカリ賦活法のいずれの賦活法で得られた活性炭も好適に使用される。また、活性炭の比表面積は,1000〜4000m2/g,好ましくは2000〜3000m2/gの範囲にあるものが望ましい。活性炭の平均粒子径としては,0.1〜50μm,好ましくは,1〜10μmが望ましい。この範囲より小さいと活性炭粒子が電極から逸脱し,電解液中に拡散するため,容量密度が低下し好ましくない。また,この範囲より大きいと,活性炭粒子にCNTが絡みにくくなり良好な抄紙成型が困難となるため好ましくない。
【0020】
カーボンナノチューブ(CNT)は,グラフェンシートが1層である単層カーボンナノ
チューブでも,2層以上のグラフェンシートが同軸状に丸まり,チューブ壁が多層をなす多層カーボンナノチューブ(MWCNT)でもよく,それらが混合していてもよい。そして、CNTの外径は,1〜100nm,好ましくは,2〜70nm,さらには3〜40nmの範囲にあることが望ましい。また,カーボンナノチューブの長さは50〜500μm,好ましくは70〜400μm,さらには100〜200μmの範囲にあるものが好ましい。また、CNTのグラフェンシートの層数が少ないほど,CNT自身の容量密度が高いため,層数が50層以下,好ましくは10層以下の範囲のCNTが容量密度の点から好ましい。
【0021】
また、SWCNT は、単層グラファイト層からなる円筒状の繊維であるが、SWCN
Tの先端が開口したものと、先端が単層グラファイトでシームレスに密閉されたものとがある。電気二重層は、グラファイト面よりもグラファイト・エッジで形成され易いため、先端が開口したSWCNTは単位面積あたり静電容量を高くなるため,容量密度の点から好ましい。さらには、先端が開口したMWCNTを用いれば、さらに単位面積あたりの静電容量を高めることができるため,容量密度の点から好ましい。先端が単層グラファイトでシームレスに密閉されたSWCNT及びMWCNTは,グラファイト・エッジが少ないため,グラファイト・エッジに存在する官能基も少ない。そのため,官能基と電解液との反応が原因と思われる高温放置中の容量の低下が起こりにくいので,キャパシタの寿命特性の点で好ましい。
【0022】
活性炭とCNTの含有率は、活性炭とCNTの合計量に対し、CNTの含有量が3〜95重量%、好ましくは5〜80重量%より、より好ましくは8〜50重量%のである。
【実施例】
【0023】
(実施例1)
水蒸気賦活処理した活性炭とカーボンナノチューブ(外径、20nm,長さ150μm,5層のMWCNT)を,AC重量比が90%,CNT重量比が10%となるように,合計50mg計り取り、50mlのメタノールと混合させ、ミキサーで約30秒間撹拌させ、AC/CNT/メタノール分散液を作製した。この分散液をPTFE濾紙(直径:35mm、平均細孔0.2μm)を用いて減圧ろ過し、抄紙成型したAC/CNTシート(抄紙AC/CNTシート)を得た。これを集電体と同じサイズに切り取り、集電体として、エッチング処理したアルミ箔の上に載せ、それらを別のアルミ箔で挟み、箔の上下方向から10tcm−2の圧力で1分間プレスし,電極(抄紙AC/CNT電極)を得た。抄紙AC/CNT電極2枚を両極に用い、セルロース系セパレーターを介して電気二重層キャパシタ素子を作製した(電極面積:2.1cm)。そして、1M(=1mol/dm)の四フッ化ホウ酸テトラエチルアンモニウムを含むプロピレンカーボネート溶液を電解液として素子に含浸させた後、ラミネートフィルムを用いて熱封止し、評価用セル(抄紙AC/CNTセル)を作製した。
(比較例1)
実施例1と同重量比のCNTと,バインダー(PTFE)分散液を固形分重量比5%と,重量比85%の活性炭を合計50mg計り取り、実施例1と同様の手法で評価用セル(抄紙AC/CNT/PTFEセル)を作製した。
(比較例2)
実施例1と同重量比のケッチェンブラック(KB)と,バインダー(PTFE)分散液を固形分重量比5%と,重量比85%の活性炭を合計50mg計り取り、混合させ,乳鉢にて混練した。その後,ニ軸ローラーで延伸させACシートを得た。これを集電体と同じサイズに切り取り、実施例1と同様のエッチング処理したアルミ箔を集電体として用いて、切り取った前記ACシートの接着面にカーボンペーストを塗布し、その上に、ACシートを接着させ、常圧下120℃にて1時間乾燥し、電極(AC電極)を得た。この電極を両極に用い、実施例1と同様の手法で評価用セル(ACセル)を作製した。
(試験結果)
実施例1で作製した抄紙AC/CNTシートは,バインダーを配合していないものの,比較例1で作製したシートと同様に,良好なシートが形成できた。また、実施例1で作製した抄紙AC/CNT電極は,カーボンペーストなどの接着剤を用いないものの,比較例1で作製したシートと同様に,良好な接触状態であることが分かった。
【0024】
実施例1および比較例1,比較例2のセルについて、定電流充電にて3Vまで電圧を印加後,電圧を30分間保持させ,その後,定電流放電にて0Vまで放電した際の放電曲線より,各セルの容量密度を算出した。結果を表1に示す。表1から明らかなように,実施例1は比較例1より容量密度が高いことがわかった。これは比較例1に比べ実施例1ではバインダーによる容量低減がないためであると推察される。また,実施例1の分極性電極の重量あたりの容量密度は、比較例2より高い。これは実施例1で用いたCNTの容量密度が比較例2で用いたKBより高いためであると推察される。
【0025】
実施例1および比較例2のセルについて、それらの寿命特性を検討するために,定電流充電にて3.7Vまで電圧を印加後,一定時間,印加電圧を負荷したときの電圧負荷時
間と容量密度の関係を測定した。その結果を図1に示す。図1から明らかなように,比較例2に比べ,実施例1の方が高い容量を維持できることがわかった。これは実施例2の電極に含まれるバインダーの分解による容量減少が大きいためであると推測される。
【0026】
【表1】

【0027】
表1,図1の結果より本発明により得られる電気二重層キャパシタは,寿命特性が良好で、比較的簡単な処理で製造することができ、しかも、容量特性に優れることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の電気二重層キャパシタの寿命特性を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性炭とカーボンナノチューブを抄紙成型したシートが、集電体を構成するエッチング箔の表面に形成された凹凸部を介し凹凸部によってエッチング箔と一体化されてなる電気二重層キャパシタ用電極。
【請求項2】
前記活性炭とカーボンナノチューブを抄紙成型したシートが、バインダーを用いることなく抄紙成型されてなる請求項1に記載の電気二重層キャパシタ用電極。
【請求項3】
活性炭とカーボンナノチューブを抄紙成型したシートを、集電体を構成するエッチング箔の表面に形成された凹凸部に押圧して、カーボンナノチューブとエッチング箔とを一体化する電気二重層キャパシタ用電極の製造方法。

【図1】
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